結論
日本ケミファは、売上の 7 割をジェネリック医薬品で稼ぐ中堅の製薬会社だ。もう 1 つの柱が、血液 1 滴で 41 種類のアレルギーを 30 分で調べる検査機器「ドロップスクリーン」である。筆者の結論は、帳簿の純資産の 3 割という株価でも割高寄りというものだ。理由は、本体のジェネリックがほとんど利益を生まず、借入の利息がこれから重くなるからだ。
ジェネリックは国が値段を決め、毎年のように下げる。数量の置き換えはほぼ終わり、規模の小さい会社ほど苦しい。日本ケミファの営業利益率は 10 年前の 9% から 0.5% まで落ちた。
光る部分もある。ドロップスクリーンは設置が 1,800 台を超え、検査薬の売上は年 1 割伸びている。ただ会社全体の利益を支えるにはまだ小さい。借入は 160 億円を超え、今の低い金利が 3.5% に上がれば、利息だけで今の営業利益の 2 倍近くになる。純資産が厚く見えても、その多くは在庫と売掛金と工場で、すぐ現金にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「良い小さな事業」と「儲からない大きな事業」が同じ箱に入っている。ドロップスクリーンは、機器を置いて試薬で稼ぐ、まねされにくい仕組みだ。ジェネリックは国に値段を決められ、規模で負ける事業である。
株主のものになる利益は、会計上の利益より小さい。工場を保つ設備投資と、借入の返済に現金が回るからだ。しかも利息は今後上がる。純資産 195 億円の 3 割という株価は安く見えるが、その純資産から生まれる利益が年 2 億円なら、帳簿の値段に意味は無い。
安全域を探すなら、検査薬の事業がどこまで育つかに賭けることになる。それは良い賭けかもしれないが、その価値は今の株価にすでにかなり映っている。筆者には、払う値段に見合う安全域は見えない。事業を分けて検査薬だけを持てるなら話は別だが、それは株主には選べない。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つに分かれる。1 つ目は医療用医薬品で、売上 254 億円のうち 244 億円がジェネリックだ。降圧薬や消化器薬など多くの品目を、メディセオやアルフレッサなどの卸を通じて病院と薬局に売る。上位 2 社の卸で売上の 35% を占める。つくばの日本薬品工業とベトナムの工場で作り、他社への製造受託も 11 億円ある。
2 つ目が臨床検査薬で、売上は 54 億円。主役のドロップスクリーンは、クリニックの診察室で指先の血液を 1 滴取るだけで、41 項目のアレルゲンを 30 分で調べる。採血して外部の検査会社に送る従来のやり方より早く、子どもにも負担が軽い。機器を置いてもらい、検査のたびに試薬が売れる仕組みで、設置台数が増えるほど売上が積み上がる。
3 つ目は新薬の種まきだ。自社で見つけた NC-2800 は、うつや不安に効くことを狙う飲み薬で、臨床試験の第 2 相の前半にある。研究開発費は年 21 億円で、売上の 6% を超える。
このほか、受託試験やヘルスケア商品、不動産の賃貸で 12 億円ほどの売上がある。稼ぎの構図を一言でいえば、大きいが儲からないジェネリックを、小さいが伸びる検査薬が支え、その上に新薬の研究費が乗っている形だ。
優良さと弱いところ
優良さは、事業によってはっきり分かれる。ジェネリックには堀、つまり他社がまねできない強みがほとんど無い。同じ成分の薬を何十社が作り、値段は国が決めて毎年下げる。日本ケミファの売上規模はサワイや東和薬品の数分の 1 で、工場の稼働や品目の数で負ける。
ドロップスクリーンは別だ。クリニックに機器が入ると、検査のたびに専用の試薬が売れる。医師と看護師が使い方に慣れれば、他社の機器に替える理由は小さい。設置台数の積み上げはそのまま堀になる。
資本の効率は低い。ROE は 1〜4% が続き、資本コストを大きく下回る。純負債は 100 億円で、償却前の利益の 7 倍に当たる。経営は安定配当を掲げ、利益を上回る配当を払っている。株主を大事にする姿勢とも、稼ぐ力を超えた配当とも読める。筆者は後者だと見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ジェネリックの数量はもう天井に近い。国の目標どおり、数量で 8〜9 割がジェネリックに置き換わった。これからの数量の伸びは、新しく特許の切れる薬と、高齢化による処方の自然な増加だけだ。値段は 2 年に 1 度の改定に加え、間の年にも下がる。数量が少し増えても、売上の額は横ばいにとどまる。
業界は再編の入り口にいる。2020 年以降、品質の不正で工場が止まる会社が相次ぎ、国は少ない品目を多くの会社が作る形を改めるよう求めている。会社どうしで品目を分け合い、工場を集める動きが速まっている。規模の小さい会社は、自ら大手に寄るか、品目を絞って残るかを迫られる。
アレルギー検査は伸びる市場だ。花粉症や食物アレルギーの患者は多く、クリニックでその場で結果を出したい需要は強い。保険の点数は国が決めるので、試薬の値段は物価ほどには上がりにくい。一方で、検査の件数は機器の普及とともに増える。筆者は、検査薬の数量が 10 年で 1.5 倍になる余地は十分あると見る。競合は大手の検査会社の外注検査で、その場で結果が出る手軽さが武器になる。
資本政策と M&A
配当は年 1 回、1 株あたりの額を据え置く安定配当で、総額は年 1.8 億円になる。2026 年 3 月期の純利益 2.0 億円に近く、2027 年 3 月期の会社予想 0.6 億円は大きく上回る。借入の返済も続けており、配当と返済の両方を利益で賄える状態ではない。
株主優待は自社のヘルスケア商品の割引販売で、会社が負う費用は小さい。政策保有の上場株は 11 銘柄で 17 億円あり、配当は利益に入っている。売る方針の数字は示されていない。
再編の当事者になる可能性は高いと筆者は見る。国の後押しでジェネリックの会社どうしの連携が進み、品目の移管や工場の統合が起きている。日本ケミファが他社と組む形も、大手に事業を渡す形もありうる。社長の山口一城氏が大きな議決権を持つので、その判断が株主の運命を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうだ。株価は純資産の 3 割にすぎない。ドロップスクリーンは設置が 1,800 台を超え、検査薬の売上は年 1 割で伸びている。機器を置けば試薬が売れ続けるので、10 年で売上が倍になれば、それだけで今の営業利益の何倍もの利益を生む。海外に出る道もある。
ジェネリックにも底打ちの兆しがある。国は少ない品目を多くの会社で作る形を改め、品目の集約と値段の下げ方の見直しに動いている。2026 年度の薬価の改革では、先発の会社が出すジェネリックの位置付けも変わった。生き残った会社には値段の安定が返ってくる。日本ケミファが品目を絞り、工場を他社と分け合えば、10 年前の 9% の利益率の半分でも利益は今の 10 倍近くになる。
新薬の NC-2800 が当たれば、それだけで今の時価総額を超える価値がある。再編で大手に買われる時は、純資産に近い値段が付く可能性もある。どの道が開いても、今の株価は下値の方が近い。
慎重な見方
慎重な見方はこう突く。ジェネリックは 10 年かけて利益率が 9% から 0.5% まで落ちた。値段は国が決め、毎年下がる。規模の大きいサワイや東和薬品でさえ利益率は 1 割前後で、売上が数分の 1 の日本ケミファが同じ所まで戻る理由は無い。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業赤字だった。
借入は 160 億円を超える。今は 1.4% ほどの金利で済んでいるが、3.5% に上がれば利息は年 6 億円近くになり、今の営業利益の 3 倍を超える。それでも配当は利益を上回る額を払い続けている。どこかで配当か返済のどちらかを諦めることになる。
ドロップスクリーンは良い製品だが、検査の点数は国が決めるので単価は上がりにくい。大手の検査機器メーカーが同じ仕組みを出せば、伸びは鈍る。新薬は第 2 相の前半にあり、成功の確率は低い。純資産の 3 割という株価は、安いのではなく、稼げない資産の値段だ。
どちらに重みを置いたか
数字に支えられているのは慎重な見方だ。ジェネリックの利益率の長い下げと、上がっていく金利は、検査薬の伸びより確かに起きる。ただ検査薬の伸びも実績のある話で、再編で事業の形が変わる余地もある。確率は中立を厚くし、楽観とやや楽観に合わせて 3 割強を残した。悲観側は、配当を続けながら借入が重くなる筋を 3 割に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,734 円99 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 507 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 1,546 円56 億円、今との差 +0.3%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,212 円261 億円 | 828 円30 億円 | +421.4% | +18.0% | 804 円29 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,561 円165 億円 | 607 円22 億円 | +235.1% | +12.9% | 1,137 円41 億円 |
| 中立 | 38% | 2,461 円89 億円 | 524 円19 億円 | +93.6% | +6.8% | 1,134 円41 億円 |
| やや悲観 | 20% | 290 円11 億円 | 386 円14 億円 | −56.1% | −7.9% | 135 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 166 円6 億円 | 138 円5 億円 | −80.3% | −15.0% | 30 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,734 円99 億円 | 507 円18 億円 | +110.2% | +7.7% | 3,241 円117 億円 |
今の株価時価総額 1,542 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 検査薬が育ち、再編でジェネリックも稼げる形に 利益 21 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 7,212 円261 億円
ドロップスクリーンの設置は 10 年で 4,000 台に近づき、アジアへの輸出も始まる。検査薬の売上は 150 億円に届き、利益率は試薬の積み上げで 16% に上がる。ジェネリックは国の後押しで品目の集約が進み、日本ケミファも赤字の品目を他社に移して工場の稼働を上げる。値段の下げ方も緩み、利益率は 3.5% まで戻る。利益で借入を少しずつ返し、利息の増加を吸収する。会社全体の営業利益は 30 億円を超え、10 年前の水準に戻る。それでも ROE は資本コストに届かず、倍率は大きく上がらない。株主にとっての上積みは、利益の回復と配当の増額の分だけだ。
- 医療用医薬品(ジェネリック・主力品・製造受託):数量 29.0(出荷錠数(億錠・年、推定))× 価格 9.80(1 錠あたりの平均単価(円・名目))→ 売上 285 億円・営業利益 10 億円。錠数 1.10 倍 × 単価 0.98 倍、利益率 3.5%
- 臨床検査薬(ドロップスクリーンなど):数量 3,960(累計設置台数(台))× 価格 3.78(1 台あたりの年間売上(百万円・名目、機器と試薬))→ 売上 149 億円・営業利益 24 億円。設置 2.2 倍 × 1 台の売上 1.25 倍、利益率 16%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 252 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ドロップスクリーンの伸びと、再編によるジェネリックの立て直しが同時にそろう筋。どちらも実績の延長だけでは届かず、1 割にとどめる。
やや楽観 22% 検査薬が柱に育ち、利益は 10 年前の 3 分の 2 まで戻る 利益 13 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,561 円165 億円
ドロップスクリーンの設置は 10 年で 3,400 台まで増え、検査薬の売上は 120 億円を超える。ジェネリックは数量がわずかに増え、値段は物価に負けて名目で 5% 下がる。品目を絞った効果で利益率は 2% に戻る。営業利益は 20 億円を超えるが、利息の増加で純利益は 13 億円台にとどまる。配当は据え置きのまま、借入を少しずつ返す。新薬は提携に出し、研究費の負担を軽くする。会社の稼ぎの半分以上を検査薬が生む形に変わり、ジェネリックは品目を絞った守りの事業になる。借入は 10 年で 3 割ほど減り、利息の重さも少し和らぐ。
- 医療用医薬品(ジェネリック・主力品・製造受託):数量 27.7(出荷錠数(億錠・年、推定))× 価格 9.50(1 錠あたりの平均単価(円・名目))→ 売上 263 億円・営業利益 5 億円。錠数 1.05 倍 × 単価 0.95 倍、利益率 2%
- 臨床検査薬(ドロップスクリーンなど):数量 3,420(累計設置台数(台))× 価格 3.62(1 台あたりの年間売上(百万円・名目、機器と試薬))→ 売上 124 億円・営業利益 17 億円。設置 1.9 倍 × 1 台の売上 1.2 倍、利益率 14%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 158 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:検査薬の年 1 割の伸びという実績を延ばし、ジェネリックは小幅な黒字に戻る筋。実績に支えられる部分が多く 2 割強。
中立 38% 検査薬の伸びでジェネリックの低迷を埋める 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,461 円89 億円
ドロップスクリーンの設置は 10 年で 1.5 倍の 2,700 台になり、検査薬の売上は 94 億円になる。試薬の値段は保険の点数に縛られ、物価ほどは上がらない。ジェネリックは数量が横ばいで、値段は名目で 8% 下がる。品目の整理で赤字は止まるが、利益率は 0.5% にとどまる。営業利益は 12 億円前後まで戻る。ただ借入の金利が 3.5% に上がり、利息が年 3 億円以上増えるので、純利益は 6 億円ほどだ。配当は据え置き、借入の返済は細々と続く。会社の形は今とほとんど変わらず、検査薬が少しずつ重みを増すだけの 10 年になる。
- 医療用医薬品(ジェネリック・主力品・製造受託):数量 26.4(出荷錠数(億錠・年、推定))× 価格 9.20(1 錠あたりの平均単価(円・名目))→ 売上 243 億円・営業利益 1 億円。錠数横ばい × 単価 0.92 倍(薬価は国が毎年下げるので物価に逆らって下がる)、利益率 0.5%
- 臨床検査薬(ドロップスクリーンなど):数量 2,700(累計設置台数(台))× 価格 3.47(1 台あたりの年間売上(百万円・名目、機器と試薬))→ 売上 94 億円・営業利益 12 億円。設置 1.5 倍 × 1 台の売上 1.15 倍(保険の点数に縛られ物価ほど上がらない)、利益率 13%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 81 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:検査薬の伸びとジェネリックの低い利益率という、今の傾向をそのまま延ばした中心の筋。4 割弱。
やや悲観 20% ジェネリックが赤字を続け、利息が利益を食う 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 290 円11 億円
ジェネリックは値下げが続き、品目を絞っても工場の固定費が重い。数量は 5% 減り、値段は名目で 12% 下がり、利益率は −1% の赤字が続く。ドロップスクリーンは大手の検査機器メーカーとの競争で伸びが鈍り、設置は 3 割増にとどまる。営業利益は 5 億円前後で、上がった利息でほとんど消える。配当は途中で半分に減らす。再編の話は出ても、条件の良い相手は見つからない。純資産は帳簿に残るが、そこから生まれる利益は資本コストの数分の 1 にすぎない。新薬の研究も予算を削られ、成長の種は細っていく。株価を支えるのは、検査薬の事業がいつか切り出される期待くらいしか残らない。
- 医療用医薬品(ジェネリック・主力品・製造受託):数量 25.1(出荷錠数(億錠・年、推定))× 価格 8.80(1 錠あたりの平均単価(円・名目))→ 売上 221 億円・営業利益 −2 億円。錠数 0.95 倍 × 単価 0.88 倍、利益率 −1%
- 臨床検査薬(ドロップスクリーンなど):数量 2,340(累計設置台数(台))× 価格 3.32(1 台あたりの年間売上(百万円・名目、機器と試薬))→ 売上 78 億円・営業利益 8 億円。設置 1.3 倍 × 1 台の売上 1.1 倍、利益率 10%
倍率:事業の ROE 0.6%(事業の純利益÷現金を除いた自己資本)が k 8.5% に届かないので、ためた利益は額面未満の価値しか持たず PER の上限は 1÷k=11.4 倍。利益が細く借入に振り回されるので、上限の 70% の 8.0 倍。純資産に対しては 0.05 倍と低いが、売れる資産は借入と預り金で消えるので、床は稼ぐ力で測る。EV(時価総額+純負債)÷営業利益は約 21 倍で、借金を含めて見ても安い値ではない
確率:10 年続いた利益率の下げと 2027 年 3 月期第 1 四半期の営業赤字から、この筋も十分ありうる。2 割。
悲観 10% ジェネリックの赤字が膨らみ、事業を手放す 利益 −9 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 166 円6 億円
ジェネリックで品質の問題が見つかり、工場が数か月止まる。取引先の薬局は他社の薬に切り替え、戻ってこない。値段の下げも続き、ジェネリックは利益率 −4% の大きな赤字になる。ドロップスクリーンは伸びが止まり、設置は今と同じ水準に張り付く。借入の返済に追われ、配当は大きく減らす。最後はジェネリックの品目と工場を大手に安く手放し、残る検査薬の事業で立て直しを図る。売却で受け取る額は借入の返済に消え、株主に残るのは小さな検査薬の会社だけになる。その再建も、借入の条件を貸し手に握られた中で進むことになる。
- 医療用医薬品(ジェネリック・主力品・製造受託):数量 22.4(出荷錠数(億錠・年、推定))× 価格 8.50(1 錠あたりの平均単価(円・名目))→ 売上 191 億円・営業利益 −8 億円。錠数 0.85 倍 × 単価 0.85 倍、利益率 −4%
- 臨床検査薬(ドロップスクリーンなど):数量 1,800(累計設置台数(台))× 価格 3.17(1 台あたりの年間売上(百万円・名目、機器と試薬))→ 売上 57 億円・営業利益 3 億円。設置横ばい × 1 台の売上 1.05 倍、利益率 6%
倍率:赤字なので PER は当てない。売れる資産は借入と預り金で消えるので、価値は再建の見込みの分だけで、今の自己資本 195 億円の 0.03 倍の 6 億円。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.031 倍・時価総額 6 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:品質問題や大きな値下げが重なればこの筋に入る。業界で工場の停止が相次いだ実例があり、1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医療用医薬品(ジェネリック・主力品・製造受託)
ジェネリック 244 億円、自社の主力品・新薬 10 億円、他社からの製造受託 11 億円。卸を通じて病院・薬局へ。
| 数量出荷錠数(億錠・年、推定) | 価格1 錠あたりの平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 26.4 | 10 | 264 | −6 |
| 10 年後 中立 | 26.4 | 9.20 | 243 | 1 |
取り方:短信のジェネリック 244.0・主力品 9.7・製造受託 10.7 億円の合計を、ジェネリックの平均薬価を 1 錠 10 前後と推定して約 26 億錠に割った(錠数は開示なし・推定)。営業利益は医薬品事業 1.87 億円から検査薬の推定 8.2 億円を引き、研究開発費の大半をこちらに負わせた推定。
臨床検査薬(ドロップスクリーンなど)
クリニックに置くアレルギー検査機器と、検査のたびに使う専用の試薬。国内の累計設置は 1,800 台超。
| 数量累計設置台数(台) | 価格1 台あたりの年間売上(百万円・名目、機器と試薬) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,800 | 3.02 | 54 | 8 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 3.47 | 94 | 12 |
取り方:短信の臨床検査薬の売上 54.36 億円を、累計設置 1,800 台で割って 1 台あたり年 302 万円(機器の販売と試薬)とした。営業利益は試薬で稼ぐ形から利益率 15% と推定(セグメント別の利益は開示なし)。
リスクと懸念
借入の利息が営業利益を食う
借入とリースは 165 億円あり、今の利息は年 2.3 億円ほどだ。借り換えで金利が 3.5% に上がれば利息は年 6 億円近くになり、2026 年 3 月期の営業利益 1.8 億円の 3 倍を超える。利益が戻らないまま金利だけが上がると、配当と返済の両立が崩れる。
ジェネリックの値下げと品質問題
国は毎年のようにジェネリックの値段を下げる。品目を増やして値下げを補ってきたが、工場の稼働が追いつかない。業界では品質の不正で工場が止まる例が相次いだ。1 度でも業務停止を受ければ、売上の 7 割を占める事業が数か月止まる。
ドロップスクリーンの伸びの鈍化
検査薬は会社の利益の柱だが、検査の点数は国が決めるので単価は上がりにくい。大手の検査機器メーカーが同じようにその場で結果の出る機器を出せば、設置の伸びは鈍る。今の伸びをそのまま 10 年延ばすのは強気すぎる。
配当が利益を上回る
年 1.8 億円の配当は、2027 年 3 月期の会社予想の純利益 0.6 億円の 3 倍だ。安定配当を守れば借入の返済が遅れ、利息がさらに膨らむ。減配すれば株価の支えが外れる。どちらに転んでも株主には痛い。
再編の条件と大株主の判断
業界の再編で日本ケミファが他社と組む時、条件が少数株主に有利とは限らない。社長が大きな議決権を持つので、事業の譲渡や統合の判断は社長と一部の株主で決まりやすい。安い値段で事業を手放す筋もありうる。
新薬の開発の失敗
NC-2800 は臨床試験の第 2 相の前半にあり、ここから承認まで届く薬は一般に 1〜2 割しかない。研究開発費は年 21 億円で、失敗すればその分は戻らない。成功しても、自社で売る力は限られ、提携の条件しだいになる。
今後の分かれ目
- ドロップスクリーンの設置が 3,000 台を超え、検査薬の売上が 80 億円に乗ったら
- 検査薬が会社の利益の柱として育った証拠で、やや楽観に重みを移す。
- ジェネリックの品目を他社に移す・工場を分け合うなど、再編の具体策が出たら
- 赤字の品目が減り、利益率が戻る道が見える。条件しだいで中立から楽観側へ寄せる。
- 営業利益が 2 期続けて利息を下回り、配当を減らしたら
- やや悲観の筋書きが現実になっている。悲観の確率を上げる。
- 品質の問題で工場の業務停止を受けたら
- 売上の 7 割が数か月止まり、借入の返済が苦しくなる。悲観に寄せる。
- NC-2800 が第 2 相で良い結果を出し、大手と提携したら
- 契約の一時金で借入を減らせる。楽観の筋書きの確率を上げてよい。
見ておくもの
- 臨床検査薬の売上とドロップスクリーンの累計設置台数
- ジェネリックの売上と、薬価改定の下げ幅
- 支払利息と借入の残高、借り換えの金利
- 配当の額と純利益の比
- ジェネリック業界の再編(品目の移管・工場の統合)の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE がどの筋書きでも k 8.5% に届かないので、PER の上限を 1÷k とし、利益の質に応じて 6〜9 割に置いた。今の PBR 0.29 倍や過去の PBR の底は使っていない。純資産が厚くても稼ぐ力が細い会社なので、帳簿の値段を価値の根拠にしなかった。悲観は赤字なので、稼ぐ力でなく再建の見込みの分だけを残した。借入の利息は 3.5% への借り換えを全部の筋書きの純利益に入れた。今の株価が倍でも半分でも価値の数字は動かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.29→11.76 倍・やや楽観 PER 9.71→11.76 倍・中立 PER 9.14→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。