結論
塩野義製薬はHIV治療薬の開発・販売をViiV Healthcare(GSK系)に集約した合弁の枠組みから生まれるロイヤルティが収益の柱で、2025年度(2026年3月期)はロイヤルティ収入2,615億円のうちHIVフランチャイズが2,450億円と、売上収益4,997億円の約半分を占める。2026年1月にはViiVへ約3,348億円を追加出資し、持分比率を10%から21.7%へ引き上げて持分法適用関連会社化し、ロイヤルティに加えて持分法投資利益も取り込む構図になった。
ここでは「HIV事業」「感染症治療薬(ゾコーバ・ゾフルーザ)」「M&Aで積み上げる新規事業(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio)」「国内既存薬」の4つに積み上げた。ドルテグラビル(Tivicay)の米特許は2027年10月に切れるが、長時間作用型注射剤カボテグラビル(Cabenuva・Apretude)が2025年に前年比4割前後伸びており、経口から注射剤へのシフトで崖をどこまで緩やかにできるかが最大の論点になる。ゾコーバは2026年6月に米国でFDA承認(曝露後予防)を得て8月に発売し、新しい成長ドライバーになり得る一方、COVID-19の季節感染症化で需要は不規則である。直近1年半でJT医薬事業(1,600億円)・ラジカヴァ(3,900億円)・IntraBio(3,155億円)と約8,650億円のM&Aを実行し、HIVロイヤルティの潤沢な現金を「次の柱」に積極展開している。
結果、中立は 10 年後に ROE 7.7%・PER 11.2 倍で時価総額約 26,186 億円(それまでの還元約 8,500 億円は別)。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額(約 24,974 億円)より -30.8%、「割高」。上振れは HIV 長時間作用型の伸長とゾコーバの米国浸透、下振れは HIV の崖の前倒しと 3 件の M&A の統合リスクにかかる。資本コストは基本 7.5% に quality(循環 −0.5%・寿命 +1.0% で +0.5%)を足した 8.0%。
結果、中立は 10 年後に ROE 7.7%・PER 11.2 倍で時価総額約 26,186 億円(それまでの還元約 8,500 億円は別)。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額(約 24,974 億円)より -30.8%、「割高」。上振れは HIV 長時間作用型の伸長とゾコーバの米国浸透、下振れは HIV の崖の前倒しと 3 件の M&A の統合リスクにかかる。資本コストは基本 7.5% に quality(循環 −0.5%・寿命 +1.0% で +0.5%)を足した 8.0%。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、HIVロイヤルティ(及び持分法投資利益)はViiVという専業大手の販売網と研究開発体制に乗せて回収できる、自社で世界展開するより資本効率の高いキャッシュフローであり、質の高い利益源である。しかし、その経済的な実権をGSK側が握っている以上、塩野義が単独でコントロールできる堀ではなく、ドルテグラビルの特許切れという予め分かっている崖が迫っている点は、本質価値を考えるうえで慎重にならざるを得ない要素である。
資本配分については、配当を安定的に積み増す規律を保ちながら、HIVロイヤルティの現金を使って感染症・HIV以外の新しい柱(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio)を買う判断は、一本足打法から脱する狙いとして理解できる。ただし3件を短期間に積み重ねた統合リスクと、買った事業が稼ぐ力(再投資した資金に対する実際の回収率)はまだ検証されておらず、経営の資本配分の巧拙はこれから数年の実績で判断されるべきである。
安全域については、今の値段に対し、10年後の視点ではHIVの崖とM&Aの成否が綱引きし、資本コスト 7.5% で測ると中立でも今の時価総額に届かず、確率を重みづけた価値は今の値段を 3 割ほど下回る「割高」になった。わからない部分(M&Aの統合、HIVの崖の深さ)が多い事業だけに確信度は高くないが、今の値段は崖の後の稼ぎを高く織り込んでいるとバリュー投資の観点では見える。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は大きく4つに分かれる。第1は「HIV事業」で、2012年にHIV治療薬の合弁事業をViiV Healthcare(英GSKグループ)に譲渡し、見返りにViiV株式10%とドルテグラビル関連製品のロイヤルティ(平均で十数%台)を受け取る構造を作った。2026年1月にはViiVへ約3,348億円を追加出資して持分比率を21.7%に高め、持分法適用関連会社とした。これにより、これまでのロイヤルティ収入に加え、ViiVの純利益(年16〜20億ポンド規模)の取り込み分(持分法投資利益)が新たに加わる。第2は「感染症治療薬」で、自社創製のCOVID-19治療薬ゾコーバ(エンシトレルビル)とインフルエンザ治療薬ゾフルーザ(海外はロシュへのライセンス供与)の国内販売・海外ロイヤルティ。ゾコーバは2026年6月に米国で曝露後予防(PEP)用途としてFDA承認を得て8月に発売し、リトナビルを併用しないため薬物相互作用が少ないという特長を米国市場でどう活かすかが注目点。第3は「M&Aで積み上げる新規事業」で、2025年のJTグループ医薬事業(鳥居薬品・米Akros Pharma、約1,600億円)買収によりアレルギー・皮膚・腎疾患などQOL疾患の低分子創薬力を強化し、田辺三菱製薬からALS治療薬ラジカヴァ事業を3,900億円で取得(2026年3月期末までに完了予定)、さらに2026年10月には米IntraBio(希少神経疾患薬AQNEURSA)を約3,155億円で買収発表するなど、1年半で約8,650億円を投じて感染症・HIV以外の収益源を広げている。第4は「国内既存薬」で、薬価制度の下にある感染症以外の自社創薬品・仕入れ品の販売である。国内では薬価の毎年の引き下げが単価を押し下げる一方、高齢化による処方件数の緩やかな増加がこれを部分的に補う。海外はHIVロイヤルティとゾコーバの米国展開が中心で、ドル・ポンドの実質的な動向と米国の薬価交渉制度(IRA)の運用が収益に影響する。
優良さと弱いところ
堀の中心は、世界のHIV治療の標準治療(WHOの第一選択レジメン)に組み込まれたドルテグラビル・カボテグラビル関連の知財と、それをViiVという専業大手の販売網で回収する珍しいロイヤルティ型のビジネスモデルにある。自社で世界展開する大手より研究開発負担を抑えて高い資本効率を実現しており、ROEは12%台、自己資本比率は65%、純有利子負債は実質ネットキャッシュと財務は健全。ゾコーバもリトナビル併用不要・1日1回投与という差別化要因を持つ。
ただし、HIV事業の経済的な実権はGSK側にあり、塩野義は出資比率を21.7%まで高めたとはいえ取締役1名の派遣にとどまり、ロイヤルティ条件やViiVの経営判断そのものを塩野義が主導できるわけではない。ドルテグラビルの米特許切れ(2027年10月)という崖が迫り、ギリアドの長時間作用型レナカパビルなど競合の技術革新も続く。ゾコーバはCOVID-19の季節感染症化で需要が年によって大きく振れ、大型薬として定着するかは未確定。直近のM&A(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio)は資本配分としての規律は保たれているが、買収した事業の投資回収と利益率の維持はまだ実績で確認できておらず、「次の柱」としての質は今後数年の執行で判断される。経営は手代木功会長兼社長CEOが2008年から約18年にわたり続ける長期体制で、意思決定の速さと一貫性は強みだが、後継者への移行は中長期の論点として残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内医療用医薬品市場は薬価ベースで2024年度に11兆4,874億円と過去最高を更新したが、2021年度からの中間年改定の定着で診療報酬改定のない年にも薬価が下がる実質ほぼ毎年の薬価引き下げが続く。世界市場は2025年に約1.6兆ドル規模で、COVID関連を除く成長率は年3〜6%、業界全体では2026〜2030年にかけて超大型薬の特許切れ(パテントクリフ)が相次ぐ。塩野義にとっての最大のパテントクリフはHIVロイヤルティの柱であるドルテグラビル(Tivicay)の米特許切れ(2027年10月)で、長時間作用型注射剤カボテグラビル(Cabenuva・Apretude)が2025年に前年比4割前後伸びていることがどこまで崖を緩和できるかが最大の論点になる。ViiV Healthcareは世界HIV治療薬市場でシェア約32%とギリアド・サイエンシズに次ぐ2位で、GSKのHIV事業売上は2025年に11%増の77億ポンドと拡大を続けている。
国内の競合は武田薬品工業・アステラス製薬・第一三共・エーザイ・中外製薬などの大手新薬各社で、HIV領域ではギリアドが世界的な最大手として競合し、カボテグラビルの長時間作用型レジメンにはギリアドの半年に1回投与のレナカパビルが対抗する新技術として浮上している。COVID-19治療薬の領域ではファイザーのパクスロビド(Paxlovid)が国際的な競合で、ゾコーバは薬物相互作用の少なさと曝露後予防データの優位性を武器にする。希少疾患・QOL疾患領域(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio)では、各疾患領域ごとに専門性の高い中堅・新興企業との競合になる。
今後の分かれ目は、①HIV長時間作用型レジメンの浸透とドルテグラビル特許切れの相殺度合い、②ゾコーバの米国での浸透、③3件のM&A(JT医薬・ラジカヴァ・IntraBio)の統合と投資回収、④国内薬価制度の見直しの方向、である。
資本政策と M&A
株主資本配当率(DOE)4%以上を還元の指標とし、2026年3月期は14期連続増配、2027年3月期も15期連続の増配を見込む。自己株買いは2026年3月期は実質ゼロに近く、還元の中心は配当にある。一方で、HIVロイヤルティがもたらす潤沢なキャッシュフローを、直近1年半でJTグループ医薬事業(約1,600億円)・田辺三菱製薬からのラジカヴァ事業(3,900億円)・米IntraBio(約3,155億円)という3件、合計約8,650億円の買収に積極的に投じ、感染症・HIV以外の「次の柱」を外部から買う資本配分を鮮明にしている。買収先の多くが負ののれん益を生んでおり、割高な買収を避ける規律はうかがえるが、投資の回収と利益率の維持はまだ実績で確認できていない。
大株主に支配株主はおらず、他社からのTOB・買収のリスクは大手製薬の中で特別に高いわけではない。手代木功会長兼社長CEOが2008年から長期にわたり経営を続け、「アクティビストは上手に使え」と述べるなど物言う株主との対話にも前向きな姿勢を示している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
HIV事業は2026年1月のViiV追加出資で出資比率が10%から21.7%に高まり、ロイヤルティに加えて持分法投資利益(年600億円規模の見込み)が新たに乗ることで、ドルテグラビルの特許切れという既知のリスクを上回る増収要因が生まれている。長時間作用型注射剤カボテグラビル(Cabenuva・Apretude)は2025年に前年比4割前後伸びており、2ヵ月に1回・将来は半年に1回といった投与間隔の延伸が進めば、経口薬の特許切れの痛みを吸収して崖そのものを緩やかにできる可能性がある。ゾコーバは2026年6月に米国でFDA承認(曝露後予防)を得て8月に発売し、リトナビル併用不要・相互作用が少ないという特長を武器に、ファイザーのパクスロビドが苦戦してきた米国市場で新たな成長軸になり得る。
直近1年半で実行したJTグループ医薬事業(鳥居薬品)・田辺三菱製薬からのラジカヴァ事業・米IntraBioという3件、合計約8,650億円のM&Aは、いずれも確立した製品や人材・ノウハウを獲得する実利重視の買収で、負ののれん益を伴うものもあり割高な買収を避ける規律が保たれている。ラジカヴァは患者数は限られるが確立した大型薬を「時間を買う」形で獲得し、2027年3月期には会社計画で売上収益7,000億円・営業利益2,200億円への急拡大を見込む。希少疾患・QOL疾患という高い専門性が必要な領域に次々と布石を打てているのは、HIVロイヤルティという安定したキャッシュフローの強みであり、ネットキャッシュの財務体質がさらなる機動的なM&Aや株主還元の余地を残している。14期連続、2027年3月期には15期連続の増配という実績も、経営の規律と自信の表れである。
慎重な見方
HIV事業の経済的な実権はGSK側にあり、出資比率を21.7%に高めても塩野義は取締役1名の派遣にとどまる。ドルテグラビル(Tivicay)の米特許切れ(2027年10月)は目前で、長時間作用型注射剤へのシフトが完全に崖を打ち消すとは限らず、ギリアド・サイエンシズの半年に1回投与のレナカパビルなど競合の技術革新も続いている。ViiVの世界シェアは約32%とギリアドに次ぐ2位にとどまり、首位を奪えていない。ゾコーバは米国で承認を得たものの、COVID-19が季節感染症化する中で需要は年によって大きく振れ、会社自身も過去にHR試験(院内感染拡大予防)で主要評価項目未達を経験しており、大型薬として定着する保証はない。
直近1年半で実行した3件のM&A(JT医薬・ラジカヴァ・IntraBio)、合計約8,650億円は短期間に積み重ねた統合リスクを抱える。ラジカヴァは患者数が世界で数万人規模にとどまるALS治療薬に3,900億円を払う判断で、投資回収のペースと利益率の維持はまだ実績で確認できていない。国内の薬価制度は中間年改定の定着で実質ほぼ毎年の薬価下げが続き、既存薬・長期収載品の収益性は構造的に下がり続ける。米国の薬価交渉制度(IRA)の運用強化はViiV経由のロイヤルティにも間接的に影響しかねない。手代木功会長兼社長CEOの約18年にわたる長期体制は意思決定の速さという強みの裏返しとして、後継者への移行という中長期のガバナンス上の論点を抱えている。2025年度の純利益はJT医薬事業買収に伴う負ののれん益などの一時要因で押し上げられており、実力の利益はそれより小さい点にも注意が必要である。
どちらに重みを置いたか
HIV事業の持分拡大とカボテグラビルの長時間作用型シフト、ゾコーバの米国展開という近い将来の増収要因は強気の見方に説得力があり、崖の直前まではその効果が痛みを上回ると判断した。一方で、ドルテグラビルの特許切れという既知のリスクと、短期間に積み重ねた3件のM&Aの統合リスクという慎重な見方も的を射ており、10年後の視点ではHIVの崖の深まりと新しい柱の定着が綱引きしてほぼ打ち消し合うとみた。確率は中立を中心に置きつつ、崖とM&Aの不確実性を映して悲観側をやや厚めに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,742 円3.19 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 923 円7,855 億円)。 今の値に割り戻すと 2,458 円2.09 兆円、今との差 −18.8%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,730 円6.58 兆円 | 1,351 円1.15 兆円 | +199.9% | +11.6% | 908 円7,730 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,318 円4.53 兆円 | 1,151 円9,800 億円 | +113.7% | +7.9% | 1,423 円1.21 兆円 |
| 中立 | 33% | 3,722 円3.17 兆円 | 999 円8,500 億円 | +55.9% | +4.5% | 1,558 円1.33 兆円 |
| やや悲観 | 22% | 2,124 円1.81 兆円 | 681 円5,800 億円 | −7.4% | −0.8% | 617 円5,252 億円 |
| 悲観 | 13% | 796 円6,773 億円 | 423 円3,600 億円 | −59.8% | −8.7% | 158 円1,349 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,742 円3.19 兆円 | 923 円7,855 億円 | +54.1% | +4.4% | 4,665 円3.97 兆円 |
今の株価時価総額 3,028 円2.58 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% HIVの長時間作用型と希少疾患の新しい柱が開花 利益 4,017 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 7,730 円6.58 兆円
長時間作用型レジメン(2ヵ月〜半年に1回投与)が世界のHIV治療の主流になり、ViiVの出資拡大(21.7%)による持分法投資利益も成長を続け、ドルテグラビル経口薬の特許切れの痛みを大きく上回る。ゾコーバは米国で曝露後予防の標準治療となり、新しい変異株への対応も含め大型製品に育つ。ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBioに続く追加のM&Aで希少疾患・QOL疾患のポートフォリオが拡充し、「次の柱」が確立する。研究開発投資を積み増しながら営業利益は5,400億円規模に達し、ROEは11%台を保つ10年になる。
- HIV事業(ViiV Healthcareのロイヤルティ・持分法投資利益):数量 175(ViiV の世界 HIV 治療薬売上(億ドル、推定))× 価格 0.20(塩野義の取り分(ロイヤルティ+持分法投資利益の実効比率))→ 売上 5,300 億円・営業利益 5,300 億円。長時間作用型が世界の主流に
- 感染症治療薬(ゾコーバ・ゾフルーザ):数量 220(国内外の処方件数(万件、推定))× 価格 13(1 件あたりの売上(億円/万件、名目))→ 売上 2,900 億円・営業利益 1,392 億円。ゾコーバが大型製品に育つ
- M&Aで積み上げる新規事業(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio等):数量 110(対象患者数(万人、推定))× 価格 25(1 人あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 2,700 億円・営業利益 864 億円。追加M&Aでポートフォリオ拡充
- 国内既存薬・その他:数量 118(国内の処方患者数(万人、推定))× 価格 11(1 人・1 年あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 1,350 億円・営業利益 473 億円。新薬投入で底堅い
倍率:事業の純利益 4,017 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.38 倍、時価総額 65,798 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:HIV長時間作用型の世界的な定着、ゾコーバの大型化、M&Aで積み上げた希少疾患事業の成功が同時に要るため1割にとどめた。
やや楽観 22% 長時間作用型とM&Aの柱が崖をおおむね上回る 利益 3,022 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 5,318 円4.53 兆円
長時間作用型レジメンの浸透がドルテグラビルの特許切れを上回り、HIV事業は緩やかに成長を続ける。2026年に高めたViiVへの出資(21.7%)は配当・持分法投資利益の両面で定着し、キャッシュの柱として安定する。ゾコーバは米国・欧州で一定のシェアを確立し、ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBioの統合も軌道に乗り、希少疾患事業が年々拡大して追加のM&Aを呼び込む好循環が続く。国内既存薬は薬価の引き下げに新薬投入が追いつき横ばいを保つ。営業利益は4,100億円規模に乗り、ROEは9%台で推移し、配当も増え続ける10年になる。
- HIV事業(ViiV Healthcareのロイヤルティ・持分法投資利益):数量 150(ViiV の世界 HIV 治療薬売上(億ドル、推定))× 価格 0.20(塩野義の取り分(ロイヤルティ+持分法投資利益の実効比率))→ 売上 4,500 億円・営業利益 4,500 億円。長時間作用型が崖を上回る
- 感染症治療薬(ゾコーバ・ゾフルーザ):数量 180(国内外の処方件数(万件、推定))× 価格 12(1 件あたりの売上(億円/万件、名目))→ 売上 2,200 億円・営業利益 990 億円。米国・欧州でシェア確立
- M&Aで積み上げる新規事業(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio等):数量 92.0(対象患者数(万人、推定))× 価格 22(1 人あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 2,000 億円・営業利益 560 億円。希少疾患事業が拡大
- 国内既存薬・その他:数量 112(国内の処方患者数(万人、推定))× 価格 11(1 人・1 年あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 1,200 億円・営業利益 384 億円。新薬投入で横ばい
倍率:事業の純利益 3,022 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.98 倍、時価総額 45,270 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:承認済みの品の成長とM&Aの統合の成功が揃う上側の筋書きとして2割強を置いた。
中立 33% HIVの崖と新しい柱がほぼ相殺する「普通の優良企業」 利益 2,338 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 3,722 円3.17 兆円
ドルテグラビル経口薬の特許切れが本格化し、HIVロイヤルティの単価は2026年より下がるが、長時間作用型と持分法投資利益の拡大がこれを部分的に埋める。ゾコーバは米国でニッチな地位を確立するが大型化はせず、COVID-19の季節感染症化で需要は変動したまま。ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBioの希少疾患ポートフォリオは収益源として定着するが、追加のM&Aがなければ成長は緩やかにとどまる。国内既存薬は薬価の引き下げが続き縮小気味。売上は年2%強の成長、営業利益は3,200億円前後で、利益の積み上がりでROEは8%前後に落ち着く「普通に強い優良企業」の評価に収まる10年になる。
- HIV事業(ViiV Healthcareのロイヤルティ・持分法投資利益):数量 135(ViiV の世界 HIV 治療薬売上(億ドル、推定))× 価格 0.19(塩野義の取り分(ロイヤルティ+持分法投資利益の実効比率))→ 売上 3,900 億円・営業利益 3,900 億円。崖が本格化、長時間作用型が部分的に相殺
- 感染症治療薬(ゾコーバ・ゾフルーザ):数量 155(国内外の処方件数(万件、推定))× 価格 11(1 件あたりの売上(億円/万件、名目))→ 売上 1,700 億円・営業利益 680 億円。米国でニッチな地位。ジェネリック競合・薬価下げで単価は物価並み(1.34倍)には上がらない
- M&Aで積み上げる新規事業(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio等):数量 75.0(対象患者数(万人、推定))× 価格 20(1 人あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 1,500 億円・営業利益 345 億円。希少疾患事業が定着
- 国内既存薬・その他:数量 115(国内の処方患者数(万人、推定))× 価格 10(1 人・1 年あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 1,150 億円・営業利益 334 億円。国内の薬価の毎年の引き下げで単価は物価並み(1.34倍)には上がらない
倍率:事業の純利益 2,338 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.55 倍、時価総額 31,680 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:崖の深さと新しい柱の立ち上がりがおおむね相殺する中心の筋書きで、業種ノートの中立(谷を新薬でおおむね埋める)に沿う。
やや悲観 22% 崖を埋めきれず「ロイヤルティ頼み」が後退 利益 1,254 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 2,124 円1.81 兆円
ドルテグラビルの特許切れとギリアドの長時間作用型レナカパビルなど競合の攻勢で、ViiVのシェアが徐々に低下し、HIVロイヤルティの伸びが頭打ちになる。ゾコーバは米国で浸透せず、COVID-19需要の低迷が続く。ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBioの統合は当初の期待を下回り、のれんの減損リスクも意識される。国内既存薬も薬価下げで縮小する。研究開発費を維持すると営業利益は1,700億円規模にとどまり、ROEは5%前後に落ち、市場は塩野義を「ロイヤルティ頼みの会社」として慎重に見るようになる10年になる。
- HIV事業(ViiV Healthcareのロイヤルティ・持分法投資利益):数量 100(ViiV の世界 HIV 治療薬売上(億ドル、推定))× 価格 0.18(塩野義の取り分(ロイヤルティ+持分法投資利益の実効比率))→ 売上 2,700 億円・営業利益 2,700 億円。ViiVのシェア低下
- 感染症治療薬(ゾコーバ・ゾフルーザ):数量 120(国内外の処方件数(万件、推定))× 価格 8.75(1 件あたりの売上(億円/万件、名目))→ 売上 1,050 億円・営業利益 347 億円。米国で浸透せず
- M&Aで積み上げる新規事業(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio等):数量 55.0(対象患者数(万人、推定))× 価格 16(1 人あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 900 億円・営業利益 144 億円。統合が期待未達
- 国内既存薬・その他:数量 100(国内の処方患者数(万人、推定))× 価格 8.50(1 人・1 年あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 850 億円・営業利益 204 億円。薬価下げで縮小
倍率:事業の ROE 4.5% が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍(ためた利益は額面未満)。崖を埋めきれずロイヤルティ頼みが後退する年なので、稼ぐ力(純利益 ÷ k)から、上限の 8 割の 10.6 倍に置いた。
確率:HIVの崖が長時間作用型で埋まらず、M&Aの新しい柱も期待未達となる筋書きで2割強を置いた。
悲観 13% HIVロイヤルティを失い、M&Aも外れる 利益 639 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 796 円6,773 億円
ViiVがギリアドなど競合に大きくシェアを奪われ、ドルテグラビル関連のロイヤルティがほぼ消える。ゾコーバはCOVID-19の感染症としての重要性が薄れる中で小型の製品にとどまり、ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBioも治験の失敗や想定外の競合でのれんの減損に至る。国内既存薬も薬価下げで縮小が続く。研究開発費を維持すると利益はほぼ消え、「独自のロイヤルティモデルを持つ優良企業」という評価は外れ、純現金と研究基盤を持つ普通の中堅製薬として評価される10年になる。配当は前半の年の利益と純現金で続けるが、後半は減らす。
- HIV事業(ViiV Healthcareのロイヤルティ・持分法投資利益):数量 65.0(ViiV の世界 HIV 治療薬売上(億ドル、推定))× 価格 0.16(塩野義の取り分(ロイヤルティ+持分法投資利益の実効比率))→ 売上 1,550 億円・営業利益 1,550 億円。ギリアド等にシェアを奪われる
- 感染症治療薬(ゾコーバ・ゾフルーザ):数量 88.0(国内外の処方件数(万件、推定))× 価格 6.82(1 件あたりの売上(億円/万件、名目))→ 売上 600 億円・営業利益 132 億円。COVID-19の重要性が薄れる
- M&Aで積み上げる新規事業(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio等):数量 33.0(対象患者数(万人、推定))× 価格 15(1 人あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 480 億円・営業利益 38 億円。のれんの減損リスク
- 国内既存薬・その他:数量 78.0(国内の処方患者数(万人、推定))× 価格 7.44(1 人・1 年あたりの売上(億円/万人、名目))→ 売上 580 億円・営業利益 93 億円。薬価下げで縮小続く
倍率:事業の ROE 2.4% が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍(ためた利益は額面未満)。ロイヤルティを失い M&A も外れる筋書きなので、PBR の床は使わず、稼ぐ力(純利益 ÷ k)から、上限の 8 割の 10.6 倍に置いた。
確率:HIV・感染症・M&Aのすべてが外れる複合の筋書きで、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
HIV事業(ViiV Healthcareのロイヤルティ・持分法投資利益)
HIV治療薬の開発・販売をViiV Healthcare(GSK系)に集約した合弁の枠組みから生まれるロイヤルティと、2026年1月に持分比率を21.7%へ高めたことによる持分法投資利益。
| 数量ViiV の世界 HIV 治療薬売上(億ドル、推定) | 価格塩野義の取り分(ロイヤルティ+持分法投資利益の実効比率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 98.0 | 0.17 | 2,450 | 2,450 |
| 10 年後 中立 | 135 | 0.19 | 3,900 | 3,900 |
取り方:ロイヤルティ収入2,615億円のうちHIVフランチャイズが2,450億円(2025年度開示)。ViiVの世界HIV事業売上は2025年に77億ポンド(約98億ドル、GBP/USD 1.27で換算)で、塩野義の取り分(ロイヤルティ平均+2026年1月にViiV出資比率を10%→21.7%に高めた持分法投資利益を売上換算した実効比率)は逆算で約16.7%(開示されている「ロイヤルティ平均十数%台」とおおむね整合)。ドルテグラビル(Tivicay)の米特許は2027年10月に期限切れ、長時間作用型注射剤カボテグラビル(Cabenuva・Apretude)が2025年に前年比4割前後伸び後継の柱になっている。原価がほぼ無いため営業利益率はほぼ100%とした。
感染症治療薬(ゾコーバ・ゾフルーザ)
COVID-19治療薬ゾコーバ(エンシトレルビル)とインフルエンザ治療薬ゾフルーザなど、自社創製の感染症治療薬の国内販売と海外ロイヤルティ。
| 数量国内外の処方件数(万件、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円/万件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 9.69 | 1,260 | 567 |
| 10 年後 中立 | 155 | 11 | 1,700 | 680 |
取り方:ロイヤルティ収入のうちHIV以外(Zofluza海外分等)約165億円と、国内の自社販売分を合わせて推定1,260億円。処方件数130万件(国内中心、推定)× 1件あたり9.69億円/万件。ゾコーバは2026年6月に米国でFDA承認(曝露後予防)を得て8月に発売、リトナビル併用不要・相互作用が少ない点をPaxlovidとの差別化材料にしている。COVID-19の季節感染症化で需要は年によって不規則。
M&Aで積み上げる新規事業(ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBio等)
2025年のJTグループ医薬事業(鳥居薬品等)買収、田辺三菱製薬からのALS治療薬ラジカヴァ取得、2026年のIntraBio(希少神経疾患薬AQNEURSA)買収など、M&Aで積み上げる感染症・HIV以外の「次の柱」。
| 数量対象患者数(万人、推定) | 価格1 人あたりの売上(億円/万人、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 13 | 400 | 60 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 20 | 1,500 | 345 |
取り方:2025年5月のJTグループ医薬事業買収(鳥居薬品・米Akros Pharma、約1,600億円)の2026年3月期の部分連結分。対象患者数30万人(推定、アレルギー・皮膚・腎疾患等のQOL疾患患者を含む)× 1人あたり13.3億円/万人で約400億円。田辺三菱製薬からのラジカヴァ(ALS治療薬、3,900億円)取得は2026年3月期末までに完了予定で、本格寄与(会社計画で2027年3月期に売上寄与約1,087億円)は次期から。IntraBio(約3,155億円)は2026年11〜12月に買収完了予定で現時点では未寄与。買収関連の無形資産の償却負担が大きく営業利益率は低め。 数量は対象患者数(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は買収したラジカヴァ・IntraBio の本格寄与。1 人あたりの金額が物価の 1.34 倍を超えるのは希少疾患薬の高い薬価による事業の理由。
国内既存薬・その他
薬価制度の下にある既存の国内処方薬(感染症以外の自社創薬品・仕入れ品)の販売。
| 数量国内の処方患者数(万人、推定) | 価格1 人・1 年あたりの売上(億円/万人、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 8.87 | 887 | 266 |
| 10 年後 中立 | 115 | 10 | 1,150 | 334 |
取り方:総売上収益4,997億円から上記3セグメントを除いた残り。処方患者数100万人(推定)× 1人あたり8.87億円/万人で887億円。薬価の毎年の引き下げ(中間年改定の定着)で単価は物価並みには上がらない。
リスクと懸念
HIVロイヤルティの柱への依存度の高さ
2025年度のロイヤルティ収入2,615億円のうちHIVフランチャイズが2,450億円と、売上収益の約半分を占める一本足に近い構造である。ドルテグラビル(Tivicay)の米特許は2027年10月に切れ、長時間作用型注射剤(Cabenuva・Apretude)への切り替えが追いつかなければ、業績全体への打撃が大きい。
ViiV Healthcareの経営をGSKが握るガバナンス構造
2026年1月の追加出資で出資比率を10%から21.7%に高めたが、GSKが78.3%を保有し続け、塩野義は取締役1名の派遣にとどまる。ロイヤルティ条件やViiVの経営判断そのものを塩野義が主導できるわけではなく、少数株主としての立場に変わりはない。
ゾコーバの需要の振れとCOVID-19の季節感染症化
ゾコーバは2026年6月に米国でFDA承認(曝露後予防)を得たが、過去にはHR試験(院内感染拡大予防)で主要評価項目未達を経験している。COVID-19が季節感染症として扱われる中で需要は年によって大きく振れ、大型薬として定着する保証はない。
短期間に積み重ねた3件のM&Aの統合リスク
2025年のJTグループ医薬事業(約1,600億円)、田辺三菱製薬からのラジカヴァ事業(3,900億円)、2026年のIntraBio(約3,155億円)と、1年半で合計約8,650億円のM&Aを実行した。買収した事業の投資回収と利益率の維持はまだ実績で確認できておらず、統合が計画どおり進まなければのれんの減損リスクも生じる。
国内薬価制度の構造的な下げ圧力
2021年度からの中間年改定の定着で、診療報酬改定のない年にも薬価が下がる実質ほぼ毎年の薬価下げが続いている。既存薬・長期収載品の収益性は構造的に下がり続け、新薬の投入ペースがこれを上回れなければ国内事業の収益性が恒常的に低下する。
HIV領域における競合の技術革新
ギリアド・サイエンシズは世界HIV治療薬市場でViiVを上回るシェアを持ち、半年に1回投与の長時間作用型レナカパビルなど次世代技術を展開している。ViiVの長時間作用型(Cabenuva・Apretude)が優位性を保てなければ、塩野義のロイヤルティ収入も競合に奪われるリスクがある。
経営体制の長期化と後継者リスク
手代木功会長兼社長CEOは2008年から約18年にわたり経営を続けており、意思決定の速さと一貫性という強みの裏返しとして、次の世代への移行という中長期のガバナンス上の論点を抱えている。長期に及ぶ単独のトップ体制は、HIVロイヤルティを原資にした大型M&Aのような重い資本配分の判断が一人の経営者の継続性に依存しやすいという副作用も伴う。
今後の分かれ目
- ViiVの長時間作用型レジメン(Cabenuva・Apretude、及び次世代の超長時間作用型)が世界シェアを順調に広げたら
- HIV事業の筋書きを楽観側に寄せてよい。ドルテグラビルの特許切れ懸念も大きく後退する。
- ゾコーバの米国での処方が曝露後予防を中心に大きく伸びたら
- 感染症治療薬セグメントの前提を上方修正し、楽観・やや楽観側の確率を上げる。
- ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBioの統合でのれんの減損が生じたら
- 新規事業セグメントの前提を下方修正し、やや悲観側に重みを移す。
- ギリアドのレナカパビルなど競合の長時間作用型がViiVのシェアを明確に奪い始めたら
- HIV事業の筋書きを悲観側に寄せ、崖の前倒しを想定する。
- 塩野義がViiVへの出資比率をさらに引き上げる、または追加のM&Aで希少疾患事業を拡大したら
- 新規事業セグメントの前提を上方修正し、「次の柱」の確立が近いと見て楽観側の確率を上げる。
- 国内の薬価制度見直しでイノベーション評価がさらに拡充されたら
- 国内既存薬セグメントの下げ前提を緩め、中立の筋書きを上方修正する。
- 手代木功会長兼社長CEOの後継体制が明確になったら
- ガバナンス上の論点として再評価し、資本配分の継続性への確信度を見直す。
見ておくもの
- ViiV Healthcareの四半期決算(HIV事業売上・Cabenuva・Apretude・Dovatoの伸び)
- ドルテグラビル(Tivicay)の米特許切れ(2027年10月)後の売上動向
- ゾコーバ(XOCOVA)の米国での処方状況と適応拡大
- ラジカヴァ・鳥居薬品・IntraBioの統合進捗と業績への寄与
- 塩野義のViiV出資比率・持分法投資利益の開示
- 国内薬価制度見直し(中間年改定・イノベーション評価)の方向
- ギリアド・サイエンシズ等のHIV長時間作用型新薬の承認・浸透状況
倍率と資本コストの決め方
HIV 事業は「ViiV の世界 HIV 売上×塩野義の取り分」、感染症・新規事業・国内既存薬は「患者数(処方件数)×1人あたりの売上」で積み、ドルテグラビルの米特許切れ(2027 年 10 月)という崖と、長時間作用型レジメン・ゾコーバ米国展開・3 件の M&A という埋める力を筋書きごとに書き分けた。資本コストは基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限の 9 割(中立は ROE が k に届かず 1÷k が上限)、やや悲観・悲観は稼ぐ力の 8.5 割で置き、谷の PBR の床は使っていない。今の PER・PBR は見ずに決めた。崖と M&A という双方向に大きいリスクを確率の広がり(10 年の悲観 13%・楽観 10%)で表した。総合の差は -30.8%(割高)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.2→16.38 倍・やや楽観 PER 12.1→14.98 倍・中立 PER 11.2→13.55 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。
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読んだ資料
- 中期経営計画「STS2030 Revision」(2023年6月改訂)
- ViiV Healthcare Ltd.への追加出資による持分法適用関連会社化について(塩野義製薬、2026年1月20日)
- 塩野義製薬、HIV薬の英ヴィーブ社に3300億円追加出資 成長投資へキャッシュ創出(日本経済新聞)
- GSK's oncology and HIV drugs drive 7% sales rise in 2025(Pharmaceutical Technology)
- 塩野義製薬のコロナ薬「ゾコーバ」、アメリカで承認取得 予防向け(日本経済新聞)
- 塩野義製薬が低分子創薬加速へJTグループの医薬事業を買収、JTは医薬事業から撤退(日経バイオテクONLINE)
- 3900億円で「時間を買った」塩野義製薬。ALS治療薬買収が映す、日本製薬の生存戦略(セオドア アカデミー)
- 塩野義製薬、希少疾患薬の米イントラバイオ買収 3100億円で(日本経済新聞)
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