結論
ソレイジア・ファーマは、がん治療と副作用対策の医薬品を導入し、日本と中国を中心に開発・販売する小型製薬会社である。筆者の結論は「割高」だ。承認済みの製品はあるが、その売上総利益は研究開発費と組織維持費に届かず、今の株価には臨床試験の成功と増資後も既存株主に十分な利益が残る未来が必要になる。
事業の芯は、吐き気を抑える貼付剤Sancuso、再発・難治性の末梢性T細胞リンパ腫向けダルビアス、口内炎の痛みを緩和するエピシルの三つである。中国でのSancusoの新販売提携とエピシルの製造移管は事業を立て直す機会になる。ただし、中国のSancusoの特許保護は既に切れ、ジェネリックとの競争が始まり得る。販売数量が増えても、製造を提携先に移すと会社が受け取る単価は下がりやすい。
開発品のSP-05は、過去の国際第III相試験で主要評価項目を達成できなかった。2026年の初期試験では少数例で腫瘍縮小の報告があるが、比較対照を置いた有効性は未証明であり、成功を中立の利益として先取りできない。SP-04も第III相試験の失敗後、非臨床段階に戻っている。医療上の可能性と株主に帰属する将来利益は別物である。
2025年の売上は4億円台で赤字が続き、2026年10月には中国向けエピシルの不振で当年の製品売上見込みも引き下げた。過去には大規模な新株予約権による資金調達が続いた。10年後に会社そのものが生き残っても、今日の持ち分は薄くなり得る。事業と資金繰りを別々に評価すると、既存株主の確率加重した現在価値は約5.6億円にとどまり、約71億円の現時点の時価総額を大きく下回る。ただし数値は製品別の非開示単価と将来の資金調達条件に敏感な推計である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主がまず問うべきは、患者に役立つ製品があるかではなく、それを売ることで必要な追加資金を差し引いても自分の取り分が増えるかである。ソレイジアの三つの承認製品には存在理由がある。だが今は、製品売上よりも研究費と管理費が大きく、株主が自由に使えるオーナー利益が生まれていない。持ち分を増資で薄めて研究開発を続ける会社では、黒字化という一つの出来事だけでも投資判断には足りない。
堀、つまり競争相手が簡単に奪えない強みが10年以上広がるかも厳しく見るべきだ。Sancusoの貼付剤という差別化には価値があるが、特許切れ後の価格やMAABの現地生産への移行は、数量増がそのまま利益増にならない構造を生む。ダルビアスは規模の小さい希少がん市場、エピシルは販売提携先の実行力という上限がある。成功した商品の売上総額と、自社が受け取れる取り分を混同しない。
SP-05の再開発が成功すれば、既存の葉酸製剤を置き換える大きな機会がある。それでも過去に第III相試験が不成功だった事実を考えれば、成功を確実な資産として評価できない。むしろ投資家は、追加の研究資金を何回、誰が負担し、どの条件で株数が増えるかを先に考えるべきである。
現在の貸借対照表に純現金があるのは救いだが、近年の赤字規模なら数年で消費し得る。実際に資本コストを超える増分の利益が出て、既存株主に帰属する利益が継続して初めて高い価値を払える。今はその証拠が不足しており、事業の夢に対して払う値段には厚い安全域が必要だ。
何で稼ぐ会社か
この会社の仕事は、自ら画期的な化合物を基礎研究から発見することではない。外部の会社から日本・中国などの権利を導入し、臨床試験や薬事承認を進め、販売を製薬会社へ任せる。稼ぎは製品を販売提携先へ出荷する対価と、権利を導出した際の契約金・開発節目金・販売ロイヤルティに分かれる。連結従業員が少ない身軽さはあるが、提携先の発注、承認、試験結果を自社だけで動かせない構造だ。
中国のSancuso(SP-01)は、抗がん剤投与時の悪心・嘔吐を数日間抑える貼り薬である。Lee's PharmaからMAAB Pharmaへ販売体制を切り替え、2026年にMAABが中国市場で販売を開始した。現地製造への移行後は製品の出荷益からロイヤルティへ収益構造が変わる見通しだ。これは製造と在庫の負担を軽くするが、患者一人当たり会社が受け取る額も変える。中国では特許切れによる価格競争が最大の論点になる。
ダルビアス(SP-02)は日本で承認済みの希少がん治療薬で、日本化薬が販売する。医療現場の患者数、治療サイクル数、投与瓶数が実際の売上を決める。エピシル(SP-03)は医療機器で、Meiji Seikaファルマ、GenSci、韓国の提携先などが販売を担い、ブラジルでも導出が進んだ。2026年には中国出荷の低迷が明らかになり、承認や契約がそのまま継続的な出荷増を意味しないことを示した。
将来の上振れの大半は、SP-05の国内権利とSP-04などの導出に依存する。SP-05はスウェーデンのIsofolが開発し、大腸がん治療で使われる既存葉酸製剤の置換を狙う。成功時でも会社が国内市場の売上をすべて得るわけではなく、提携先に権利を渡すなら契約条件に従う。販売済み製品と開発品の利益を同じ確度で足さないことが大切だ。
優良さと弱いところ
強みは薬事経験と地域別の販売提携を組み合わせ、少人数で複数製品の承認・販売を実現したことである。Sancusoには飲み薬を使いにくい患者へ一度の貼付で対応できる特徴があり、中国の制吐療法の指針にも位置付けられた。ダルビアスは希少がんで国内承認にこぎ着け、エピシルも口腔粘膜に保護膜を作る独特の使い方を持つ。これらは製品そのものの医療価値であり、事業が空手形だけではない根拠になる。
だが、他社が容易にまねできない経済的な堀はまだ細い。Sancusoは中国で特許期間を終え、安価な5-HT3受容体拮抗薬や新しい制吐薬と競う。ダルビアスは医師の採用と保険薬価、エピシルは提携先の販売力に左右される。自社が売価を自由に引き上げた証拠は見つからない。自社販売組織を縮小したことで固定費は減ったが、患者への到達方法を相手方に委ねた。
SP-05の2026年第Ib相では少数例の腫瘍縮小と用量制限毒性の未確認が報告されたが、対照群との有効性比較は今後の試験課題だ。資本効率では2025年まで12期連続の最終赤字が重い。承認済み三製品から生じる粗利益は、研究開発費と販管費を賄うには小さい。過去の増資で損失を埋めながら次の試験へ進む構造では、会社全体の開発成果が良くても既存株主一人当たりの価値が増えたとは言えない。直近に現金があることと、稼いだ利益から自由な現金が残ることは違う。
AIエージェント代替の指定五類型には該当しない。医薬品の承認と臨床データは事務作業の自動化だけでは置き換えられない一方、AIによって創薬探索が効率化しても既存製品の特許切れや治験失敗を帳消しにできない。堀は強いとは判定せず、投じた追加資本が資本コストを超える実績ができるまで慎重に見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
がん患者と副作用を和らげる治療への需要は10年後も残る。中国の抗がん剤市場について会社が引用する調査は2025年約8.3兆円、2030年約13.7兆円を見込む。ただし、この大きな数字は制吐剤や口腔粘膜保護剤の売上の上限ではない。中国の5-HT3受容体拮抗薬による制吐剤市場には800億円以上との業界推定もあるが、貼付剤の対象はその一部に限られる。先発のブランド認知より、価格、病院採用、償還、提携先の営業力が数量を左右する。
Sancusoは一回の貼付で数日間作用する便益があるが、グラニセトロンの内服・注射剤、パロノセトロン、NK1受容体拮抗薬、オランザピンなど異なる治療選択肢と競う。中国での物量シェアは開示されていない。2025年の会社受取売上を中国市場800億円超と比べると約0.25%にとどまる。ただし卸供給額と患者が払う額は違い、これを処方数量のシェアと断定できない。10年で数量を伸ばす余地と、特許切れで収益単価が低下する危険が共存する。
ダルビアスの日本の発売時、厚生労働省の薬価算定資料はピークで投与患者361人、薬価ベースの市場11億円を見込んでいた。競合にはイストダックスなどの既存薬や新たな血液がん治療がある。薬価そのものは3%の物価上昇に機械的に連動しない。エピシルの国内保険適用時の推定も、ピーク患者約1.9万人、販売額約1.44億円にとどまる。中国・韓国・ブラジルへの展開は国内市場を超える機会だが、2026年の中国出荷不振は実行の難しさを物語る。
SP-05の国内比較対象となる葉酸製剤市場は約300億円との説明がある。会社が持つのは日本の権利であり、仮に承認され標準治療に採用されても売上総額が直接ソレイジアに入るわけではない。開発元のIsofol、国内販売提携先、薬価制度との配分が必要になる。SP-04は過去の第III相の未達と安全性の問題を踏まえ、追加の前臨床検証中である。競争相手は海外の新薬開発企業だけでなく、大手製薬の内製研究、医師の処方習慣、ジェネリックでもある。
資本政策と M&A
会社は配当と自社株買いで資本を還元する段階にない。2025年までの実績では配当はなく、販売粗利益以上の研究開発費を外部資金で賄ってきた。2025年4月に発行した新株予約権の行使で約17.18億円を調達し、SP-05等に投じた。さらにIsofolに2025年7月に0.77億円、2026年3月に0.34億円を出資し、開発元と利害を合わせた。投資の回収は試験の成功次第であり、希薄化は一時的な事故でなく事業モデルの一部になっている。過去の調達を既存株主の持ち分の変化と一緒に見る必要がある。
2026年3月公表の「事業計画及び成長可能性に関する事項」は、提携強化、既存製品の販売拡大、SP-04・SP-05の開発、早期の損益黒字化を掲げる。ただし、複数年の売上、営業利益、ROEについて達成年限と額を伴う数字の約束なし。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額についても数字の約束なし。2026年単年度については研究開発費7億円、販管費6.5億円を見込むが、ライセンス収益と連結利益の見通しは非開示だ。
2026年10月19日には、中国のエピシル出荷低迷を受けて製品販売計画を4.2億円から3.5億円へ、原価見通しを2.2億円から1.9億円へ下げた。Sancuso契約金の一部受領は前進だが、額は非開示である。SP-05が成功すれば外部導出や大手製薬による資本提携、買収の余地がある。他方で、試験が続く限り再増資や新株予約権を要する可能性が高い。10年後の会社価値だけでなく、発行株数がどれほど増えるかを必ず区別する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医療上の差別化と既存の販路は、赤字企業でも軽んじられない資産である。Sancusoは抗がん剤治療中の嘔吐を貼り薬一枚で数日間抑えられ、中国の臨床ガイドラインでも選択肢として紹介される。MAABへの販売移管によって現地製造と価格見直しが進めば、安価な競合品が増えても市場への浸透率を高められる。製造を提携先が担う分、在庫や製品原価を抱えずにロイヤルティへ収益が変わる可能性もある。
ダルビアスは再発・難治性末梢性T細胞リンパ腫向けに国内承認された独自成分である。既存の販売提携に加えて中国や欧州への権利導出が実れば、小さい国内市場だけに依存しない。エピシルは口腔粘膜を保護する医療機器として日本で承認・保険適用され、アジアとブラジルに販路を広げている。中国の一時的な出荷停滞が解け、原価低減が効けば、薬価を上げなくても粗利益は増やせる。
もっとも大きいのはSP-05だ。過去の国際第III相で未達となった原因が用量と投与方法にあるという仮説が検証されれば、日本の大腸がん患者という大きな市場で提携収益を得られる。日本の既存葉酸製剤市場は約300億円という推定があり、その一定部分が切り替わるだけでも現在の売上を超えるロイヤルティになる。2026年第Ib相の早期症例で腫瘍縮小が報告されたことは臨床開発を続ける根拠になるが、比較試験での有効性は未検証だ。成功後の提携条件が良ければ、開発費を回収しながら新規製品も取得できる。上振れは既存三製品の単なる成長率では測れない。
慎重な見方
現実の数字は、承認製品があっても採算が取れていないことを示す。2025年の売上総利益は約2億円だが、研究開発費と販管費は合わせて約11億円に上った。2026年上期も赤字が続き、10月にはエピシルの中国出荷不振による販売計画の下方修正が公表された。出荷が遅れただけなら取り戻せるが、販売提携先の営業能力と病院での採用に問題があるなら、損益分岐点は遠いままである。
Sancusoは中国で特許の保護期間が終わっている。MAABの現地製造は競争に生き残るための合理策だが、低価格化に伴いソレイジアが受け取る一治療当たりの収益は下がり得る。ダルビアスは患者母数が限られ、中国への導出も希望した条件ではまとまっていない。エピシルの国内推定市場規模も大きくない。販売済みの権利をすべて足しても、長年の赤字を埋める継続利益は確かめられていない。
SP-04は第III相で安全性の問題を含む壁に直面し、SP-05も2022年の国際第III相で主要項目未達となった。再挑戦の説明には一定の理屈があるが、追加試験の成功は保証されない。成功が遅れるほど研究費が発生し、会社は増資や新株予約権を重ねる。過去に繰り返された発行株数の増加を考えると、将来の買収や製品成功が起きても、現在の株主に残る割合は小さくなり得る。会社が存続することと今の持ち分が守られることは同義ではない。
どちらに重みを置いたか
判断では慎重な側が勝る。三つの承認製品と中国販路の再編は本物の強みだが、12期連続の最終赤字、SP-05の過去の第III相未達、中国でのSancusoの特許切れ、2026年のエピシル下方修正が同時に存在する。SP-05の初期試験で腫瘍縮小が見られた好材料も評価するが、比較対照試験の結果はまだない。下に寄せる理由は業界一般の失敗確率だけではなく、この会社で既に表れた採算不足と発行株数の増加にある。楽観側に十分な上振れを残しても、既存株主の確率加重価値は時価総額から大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 5 円15 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 2 円6 億円、今との差 −92.2%、 期待の年率 −14.5%(資本コスト 10.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 39 円106 億円 | 0 円0 億円 | +49.9% | +4.1% | 4 円10 億円 |
| やや楽観 | 17% | 10 円27 億円 | 0 円0 億円 | −62.0% | −9.2% | 2 円5 億円 |
| 中立 | 30% | 1 円2 億円 | 0 円0 億円 | −97.7% | −31.5% | 0 円0 億円 |
| やや悲観 | 25% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.4% | −40.1% | 0 円0 億円 |
| 悲観 | 19% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −100.0% | −54.5% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5 円15 億円 | 0 円0 億円 | −79.2% | −14.5% | 5 円15 億円 |
今の株価時価総額 26 円71 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% SP-05が標準治療入りし中国事業も再成長 利益 15 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 39 円106 億円
SancusoはMAABの現地生産が立ち上がり、中国で貼付剤を必要とする患者へ広く普及する。ジェネリックの登場で一治療から会社が受け取る額は下がるが、処方相当件数が大幅に増えてこれを補う。ダルビアスは日本での採用が進み、適応拡大と海外提携が付加価値を生む。エピシルも中国の出荷低迷を脱し、ブラジルなどの販売網が加わる。販売製品から生まれる粗利益は開発投資の土台になる。
SP-05は新しい用量と投与方法の検証に成功し、日本で承認・導出される。既存葉酸製剤からの置き換えが進み、大腸がんの標準治療を受ける患者の過半が使う規模になる。提携先の医薬品売上を会社の売上と混同せず、同社が受け取るロイヤルティだけが厚くなる。SP-04や次の導入品からも契約金が発生し、事業規模の小ささを脱する。
ただし、成功までには追加開発費が要る。途中で新株を発行しても、後半の利益成長が希薄化を上回る筋である。既存株主の持ち分を守るというより、研究成果が大きく増資を吸収するケースだ。
- Sancuso(SP-01、中国制吐貼付剤):数量 200,000(中国のSancuso貼付剤の使用相当件数/年(枚・治療コースの近似))× 価格 0.00(一件から同社に入る出荷益・製品供給対価・ロイヤルティ相当の平均収入(億円/件、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 7 億円。現地生産後の受取単価は下がるが使用相当数は10倍
- ダルビアス(SP-02):数量 14,000(135mg製剤の卸向け販売瓶数/年)× 価格 0.00(同社が1瓶の供給で受け取る額(億円/瓶、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。国内採用拡大と一部の海外事業化
- エピシル(SP-03、口腔粘膜保護医療機器):数量 80,000(10mL製品の販売本数/年(日本・中国・韓国等の合計))× 価格 0.00(同社が1本の販売提携先供給で受け取る額(億円/本、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。複数国販路と製造原価低減
- 既存製品の導出契約・一時金:数量 3.0(年間の収益計上契約・節目金の期待発生件数(件/年))× 価格 3.00(1件当たり会社に帰属する契約金・節目金(億円/件、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 8 億円。SP-02などの権利導出が相次ぐ年換算
- SP-05等の新規パイプライン実現収益:数量 80,000(日本でSP-05が使用される年間患者数(人/年))× 価格 0.00(販売提携先を経由して同社が受け取る患者1人当たり年換算ロイヤルティ(億円/人、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 22 億円。国内市場の過半を使用、提携先売上に対し約15%のロイヤルティ
倍率:2035年ROE20.71%、k10.25%、弱い堀の超過利益残存1/3よりRONIC13.74%。10年以降の名目g1.0%を使い、(1−g÷RONIC)÷(k−g)=10.0239倍の正当化PER上限をそのまま採用。市場の倍率には寄せない。
確率:過去の国際第III相未達からの再挑戦に成功し、日本の大腸がんの標準治療に入り、中国の販売網も修復するという条件が重なる。医療上の可能性はあるが、連続成功の確率は低い。
やや楽観 17% SP-05が部分的に普及し営業黒字へ 利益 5 億円 · PER 9.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10 円27 億円
SP-05は再開発に成功して日本の一部の病院で標準的な治療の選択肢となる。製薬会社に国内販売を任せ、患者数に応じたロイヤルティを受け取る。競合する既存の葉酸製剤や新しい大腸がん治療が残るため、全面置換には至らない。SP-04の進展は契約収益には寄与するが、大型の新製品としては扱わない。
MAABのSancuso販売は拡大し、貼付剤の使い勝手が医師に認められる。しかし中国で特許が切れているため、今と同じ高い供給収入を1件から得続けることはできない。エピシルは中国での納入問題が解け、韓国・日本との合計で本数が増える。ダルビアスは国内の希少がん治療市場で使用が広がるが、競争と薬価改定が売上の上限になる。
開発費は十分に残しつつ、提携先を通じた販売で研究開発費と販管費を賄う。利益は黒字化するが、資本コストを明確に超えるほどの資本効率には届かない。過去の赤字をつなぐために行った増資による既存株主持分の縮小が、上値を制約する。
- Sancuso(SP-01、中国制吐貼付剤):数量 130,000(中国のSancuso貼付剤の使用相当件数/年(枚・治療コースの近似))× 価格 0.00(一件から同社に入る出荷益・製品供給対価・ロイヤルティ相当の平均収入(億円/件、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。数量拡大・単価縮小
- ダルビアス(SP-02):数量 12,000(135mg製剤の卸向け販売瓶数/年)× 価格 0.00(同社が1瓶の供給で受け取る額(億円/瓶、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。希少がんの採用進むが薬価は横ばい圧力
- エピシル(SP-03、口腔粘膜保護医療機器):数量 50,000(10mL製品の販売本数/年(日本・中国・韓国等の合計))× 価格 0.00(同社が1本の販売提携先供給で受け取る額(億円/本、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。中国復調・複数国の販売
- 既存製品の導出契約・一時金:数量 2.0(年間の収益計上契約・節目金の期待発生件数(件/年))× 価格 2.50(1件当たり会社に帰属する契約金・節目金(億円/件、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 5 億円。年換算2件相当の契約収入
- SP-05等の新規パイプライン実現収益:数量 50,000(日本でSP-05が使用される年間患者数(人/年))× 価格 0.00(販売提携先を経由して同社が受け取る患者1人当たり年換算ロイヤルティ(億円/人、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 11 億円。国内患者の約3分の1に普及し年2.5万円を受取
倍率:将来ROE9.64%は資本コスト10.25%以下なので増分投資に超過価値がない。長期利益の上限1÷k=9.7561倍をそのまま使い、現在・同業の株価倍率は用いない。
確率:SP-05の再試験で一定の有効性が認められ導出に成功するが、市場の全体を取るわけではない。既存製品の回復と契約金の積み増しも必要なため、上側でも楽観より小さい確率と利益を置く。
中立 30% 承認品は残るが研究開発の赤字が続く 利益 −8 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1 円2 億円
承認済みの三製品は販売を続け、患者の需要も消えない。ただし、それぞれの市場は実際に会社が得られる収入よりはるかに大きい。SancusoはMAABが中国で処方を増やしても、ジェネリック競争と現地生産のため一件当たりの会社受取額が大きく下がる。エピシルの中国向け出荷はゆっくり戻るが、病院への浸透は限定的だ。ダルビアスは国内の希少がん患者向けに残るものの、薬価改定と新薬との競争で数量は急拡大しない。
SP-05は過去の第III相試験の未達を覆す十分な有効性を示せず、2035年の継続ロイヤルティはまだ生まれない。SP-04も非臨床の研究成果は出るが、大きな導出価値には届かない。既存権利の更新や一時的な節目金で売上が振れても、毎年続く収益にはなりにくい。
経営は研究テーマを絞り、少人数化と外部委託見直しによって現行の費用構造を大きく縮める。それでも粗利益が固定費に届かず、赤字を新株予約権で補う状態が続く。会社は存続できても、今日の株主の持ち分と将来の資本効率はともに弱く、資産価値が評価の中心となる。
- Sancuso(SP-01、中国制吐貼付剤):数量 90,000(中国のSancuso貼付剤の使用相当件数/年(枚・治療コースの近似))× 価格 0.00(一件から同社に入る出荷益・製品供給対価・ロイヤルティ相当の平均収入(億円/件、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。中国で数量増・ロイヤルティ単価大幅減
- ダルビアス(SP-02):数量 6,000(135mg製剤の卸向け販売瓶数/年)× 価格 0.00(同社が1瓶の供給で受け取る額(億円/瓶、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。国内採用は限定的で薬価低下
- エピシル(SP-03、口腔粘膜保護医療機器):数量 22,000(10mL製品の販売本数/年(日本・中国・韓国等の合計))× 価格 0.00(同社が1本の販売提携先供給で受け取る額(億円/本、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。日本・中国・韓国を合わせ小幅増
- 既存製品の導出契約・一時金:数量 1.0(年間の収益計上契約・節目金の期待発生件数(件/年))× 価格 1.00(1件当たり会社に帰属する契約金・節目金(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。契約金は年平均1件にとどまる
- SP-05等の新規パイプライン実現収益:数量 0.0(日本でSP-05が使用される年間患者数(人/年))× 価格 0.00(販売提携先を経由して同社が受け取る患者1人当たり年換算ロイヤルティ(億円/人、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2022年第III相不成功を払拭できず未上市
倍率:2035年も純損失7.70億円であるため赤字にPERを掛けない。増資後の残存現金3.800億円と、回収率70%とした売掛債権2.000億円の処分価値合計5.200億円を先に算出した。2035年自己資本8.00億円に対応する表示上のPBRは0.6500倍であり、今や過去の株式市場の倍率からは決めていない。
確率:下に寄せる理由:12期連続の純損失、SP-05の第III相未達、中国Sancusoの特許切れ、2026年のエピシル出荷不振が既に表れている。大きな市場があるだけでは採算改善の中立根拠にならない。
やや悲観 25% 既存品の採用低迷と研究事業の縮小 利益 −6 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
中国のSancusoでジェネリックが低価格の注射・内服剤とともに浸透する。MAABとの契約は維持されるが、現地製造への移行後のロイヤルティ単価が大幅に下がり、従来の製品供給の利益を埋められない。エピシルは中国で病院採用が広がらず、日本の販売契約更新でも有利な条件を得られない。ダルビアスは希少疾患の患者母数が狭いままで、新しい治療薬との競争が増す。
SP-05は再試験でも十分な効果を示せず、国内権利の大きな導出には結び付かない。SP-04も動物試験の先には進めない。経営陣は研究開発テーマをさらに絞り、販管費を削りながら承認済み製品の収益を守ろうとする。ただし、残った小規模事業では固定費を賄えず赤字が続く。
販売事業の価値は稼ぐ力ではなく処分可能な資産と手元流動性に近づく。生き残るために大幅な増資を重ね、既存株主の取り分は一段と薄まる。買収提案が来ても新しい資金の提供者の回収が優先され、現在の株主の利益は小さい。
- Sancuso(SP-01、中国制吐貼付剤):数量 35,000(中国のSancuso貼付剤の使用相当件数/年(枚・治療コースの近似))× 価格 0.00(一件から同社に入る出荷益・製品供給対価・ロイヤルティ相当の平均収入(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。ジェネリック普及でシェアは低迷し、会社の受取単価が急落
- ダルビアス(SP-02):数量 1,500(135mg製剤の卸向け販売瓶数/年)× 価格 0.00(同社が1瓶の供給で受け取る額(億円/瓶、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。競合治療への置換
- エピシル(SP-03、口腔粘膜保護医療機器):数量 10,000(10mL製品の販売本数/年(日本・中国・韓国等の合計))× 価格 0.00(同社が1本の販売提携先供給で受け取る額(億円/本、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。販売提携の失速
- 既存製品の導出契約・一時金:数量 0.3(年間の収益計上契約・節目金の期待発生件数(件/年))× 価格 0.70(1件当たり会社に帰属する契約金・節目金(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約イベントは平均3年に一度以下
- SP-05等の新規パイプライン実現収益:数量 0.0(日本でSP-05が使用される年間患者数(人/年))× 価格 0.00(販売提携先を経由して同社が受け取る患者1人当たり年換算ロイヤルティ(億円/人、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。SP-05が承認できない
倍率:2035年も純損失5.60億円であるため赤字にPERを掛けない。増資後の残存現金1.300億円と、回収率70%とした売掛債権0.500億円の処分価値合計1.650億円を先に算出した。2035年自己資本3.00億円に対応する表示上のPBRは0.5500倍であり、今や過去の株式市場の倍率からは決めていない。
確率:下に寄せる理由:Sancusoの後発品競争と2026年のエピシル下方修正により、事業縮小は抽象的な不況ではなく既に兆候がある。資金調達時の希薄化も中立より大きい。
悲観 19% 資金繰りが尽き清算に近づく 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
Sancusoは中国の特許切れ後に競争力を失い、会社へのロイヤルティがほとんど残らない。エピシルの販売提携も縮小し、ダルビアスは新しい治療選択肢に患者を奪われる。承認済み製品が形式上残っても、仕入れと品質保証、最低限の薬事対応にかかる費用の方が大きい。個別の製品権利を売却しようとしても、継続利益を生まない権利には高値が付かない。
SP-05は新投与法での開発にも失敗し、SP-04も臨床再開を断念する。大手製薬の買収が救済になる可能性はゼロではないが、開発資産の価値が既に失われていれば、資金の出し手が好条件を提示する根拠は乏しい。経営は研究所の外部委託契約を終え、残る製品と上場維持に必要な最低限の支出だけを負担する。
資金繰りを保つための増資は既存株主の持ち分を大きく薄め、最終的には清算や事業譲渡に近い状態となる。2025年末の純現金はその後の長年の営業損失で既に使われており、当初の帳簿額を株主の床として期待できない。
- Sancuso(SP-01、中国制吐貼付剤):数量 5,000(中国のSancuso貼付剤の使用相当件数/年(枚・治療コースの近似))× 価格 0.00(一件から同社に入る出荷益・製品供給対価・ロイヤルティ相当の平均収入(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。ロイヤルティはほぼ消滅
- ダルビアス(SP-02):数量 0.0(135mg製剤の卸向け販売瓶数/年)× 価格 0.00(同社が1瓶の供給で受け取る額(億円/瓶、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。事業撤退
- エピシル(SP-03、口腔粘膜保護医療機器):数量 1,000(10mL製品の販売本数/年(日本・中国・韓国等の合計))× 価格 0.00(同社が1本の販売提携先供給で受け取る額(億円/本、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。残る契約の端数
- 既存製品の導出契約・一時金:数量 0.0(年間の収益計上契約・節目金の期待発生件数(件/年))× 価格 0.70(1件当たり会社に帰属する契約金・節目金(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約収入が発生しない
- SP-05等の新規パイプライン実現収益:数量 0.0(日本でSP-05が使用される年間患者数(人/年))× 価格 0.00(販売提携先を経由して同社が受け取る患者1人当たり年換算ロイヤルティ(億円/人、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。開発失敗
倍率:2035年も純損失2.80億円であるため赤字にPERを掛けない。増資後の残存現金0.125億円と、回収率70%とした売掛債権0.000億円の処分価値合計0.125億円を先に算出した。2035年自己資本0.50億円に対応する表示上のPBRは0.2500倍であり、今や過去の株式市場の倍率からは決めていない。
確率:中国の特許切れと開発中止が同時に発生し、研究開発資金の調達条件も急速に悪くなる可能性がある。現時点で上場廃止は決定していないが、長期の下方尾部は明確に残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Sancuso(SP-01、中国制吐貼付剤)
中国の抗がん剤に伴う悪心・嘔吐の治療用貼付剤。MAABへの製品供給から現地生産後のロイヤルティへ移るため、処方相当数を共通の数量単位とする。
| 数量中国のSancuso貼付剤の使用相当件数/年(枚・治療コースの近似) | 価格一件から同社に入る出荷益・製品供給対価・ロイヤルティ相当の平均収入(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20,000 | 0.00 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 90,000 | 0.00 | 2 | 1 |
取り方:2025年の物品販売収入3.77億円は製品別非開示。2026年のMAAB向けSancuso出荷入金129万9,240米ドル(1ドル150円で約1.95億円。https://financialfilings.com/filings/solasia-pharma-kk/earnings-release/2026/55965284/)が確認されているため、2025年の同製品収入を約2億円とする独自推計。会社受取単価1万円/貼付相当を仮定して約2万件に割り戻したので、実際の患者・出荷枚数の開示値ではない。中国の5-HT3制吐剤市場800億円超との業界推定と、特許切れ・MAABの現地生産を数量と単価の方向付けに用いた。既存の分割契約金は他のライセンス欄へ分離し、二重計上しない。
ダルビアス(SP-02)
日本で承認された再発・難治性末梢性T細胞リンパ腫の治療薬。販売提携先の日本化薬へ供給し、投与瓶数で需要を測る。
| 数量135mg製剤の卸向け販売瓶数/年 | 価格同社が1瓶の供給で受け取る額(億円/瓶、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6,000 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:2025年の物品販売3.77億円から約1億円を仮配分。2026年の公表薬価は1瓶31,692円、販売提携先への移転価格は未開示のため約2.5万円と推定し、4,000瓶に換算。厚労省の承認時ピーク予測は患者361人・保険薬価ベース11億円で、推計瓶数はその潜在規模と照合した(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000974956.pdf)。価格は薬価改定と競争で物価3%未満とする。実出荷数量は非開示。
エピシル(SP-03、口腔粘膜保護医療機器)
口内炎の疼痛を緩和する10mLの医療機器。日本、中国、韓国等の販売提携先へ製品を供給する。
| 数量10mL製品の販売本数/年(日本・中国・韓国等の合計) | 価格同社が1本の販売提携先供給で受け取る額(億円/本、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15,400 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 22,000 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:2025年の物品販売3.77億円からSP-01約2.0億円とSP-02約1.0億円を推計控除した残り約0.77億円。厚労省の償還価格752円/mL、10mL当たり約7,520円に対し、販売先への供給額5,000円/本を仮定し15,400本とした。国内承認時のピーク患者1.9万人・売上約1.44億円(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000192797.pdf)に加え海外販路があるが、2026年10月の中国出荷低迷を悲観側に織り込む。製品別の確定売上・本数は未開示。
既存製品の導出契約・一時金
エピシルのブラジル権利、Sancuso契約変更、ダルビアス海外権利などから生じる契約金と節目金。SP-01の将来の販売ロイヤルティはSP-01に計上する。
| 数量年間の収益計上契約・節目金の期待発生件数(件/年) | 価格1件当たり会社に帰属する契約金・節目金(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 0.51 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.00 | 1 | 1 |
取り方:2025年有価証券報告書の注記「売上収益」のライセンス収入51百万円を正とし、エピシルのブラジル導出などを含む計上イベント1件相当と扱う。将来の小数件数は実際の契約の分割ではなく発生確率を掛けた年換算件数である。将来のSP-05治療人数に連動した収益とSP-01ロイヤルティは別欄に置く。
SP-05等の新規パイプライン実現収益
再開発中のarfolitixorin(SP-05)の国内権利が承認・導出された場合の患者使用に連動する収益。SP-04等は契約金イベント欄の上振れに含める。
| 数量日本でSP-05が使用される年間患者数(人/年) | 価格販売提携先を経由して同社が受け取る患者1人当たり年換算ロイヤルティ(億円/人、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:2025年は未承認・製品収益ゼロ。国内の既存葉酸製剤市場約300億円、国内大腸がん患者年間15万人超という会社説明(https://ssl4.eir-parts.net/doc/4597/tdnet/2783327/00.pdf)から、単純平均の基礎治療売上を患者1人約20万円と推定。10〜15%程度の導出先からの取り分なら1人2万〜3万円であり、これを楽観側の価格に用いる。現在の価格0.0002億円は比較のための仮定値であり実際の販売単価ではない。2022年の第III相未達のため中立は患者ゼロとする。
リスクと懸念
資金調達と既存株主の希薄化
販売粗利益が固定費と研究開発費に届かない限り、新株予約権や第三者割当による資金調達が必要になる。会社全体の時価総額が維持されても持ち分の割合が減れば、既存株主の利益は小さくなる。2025年にも約17.18億円を新株予約権で調達しており、単なる仮定ではない。
SP-05の再開発と治験失敗
arfolitixorinは2022年の国際第III相試験で主要評価項目を達成しなかった。新しい用量と投与方法が効くという仮説に一定の根拠はあるが、再度の検証が必要である。既存の葉酸製剤から置き換わらなければ、楽観側に見込むロイヤルティの大半は消える。
中国Sancusoの特許切れと受取単価低下
中国市場でのSancusoの特許期間は既に満了している。MAABによる現地製造は販売数量を増やす機会だが、ジェネリックとの競争で価格が下がり、製品売上がロイヤルティに変わると会社が受け取る額も減る。中国の制吐剤市場全体の成長をそのまま自社売上の成長にできない。
エピシルの販路と病院採用
2026年10月には中国向けエピシル出荷が低迷し、会社が製品販売見込みを減額した。2028年には日本のMeiji Seikaファルマとの現行契約が満了するため、再契約条件も重要になる。既存の承認を持ちながら販売を伸ばせない場合は、粗利益率を改善しても固定費は賄えない。
ダルビアスの市場規模と償還価格
ダルビアスの国内対象は希少な末梢性T細胞リンパ腫で、承認時のピーク患者予測は361人に限られた。医薬品の単価は物価に沿って自由に上げられず、後発品や新しい治療選択肢により減価の圧力がかかる。中国などへの権利導出も条件が折り合わない状態が続けば、期待値を切り下げる必要がある。
SP-04の安全性・研究開発費の固定性
SP-04は先行する国際第III相で主要項目を達成できず、一部で安全性の問題が確認されて開発が止まった。別の末梢神経障害での動物試験は医療的な仮説の段階であり、製品化の確約ではない。研究費がかかる期間だけが延びると、その後の発行株数が増え、既存株主の取り分に影響する。
今後の分かれ目
- SP-05の第Ib/II相で既存標準療法を上回る臨床有効性が再現され、国内導出の経済条件が数値で開示されたら
- 未承認としてゼロにしている中立の患者数を見直し、導出先から受け取る患者当たりのロイヤルティと追加開発費を再積算する。承認と導出まで必要な資金調達の株数も一緒に修正する。
- MAABによるSancusoの中国現地生産が始まり、販売数量とロイヤルティ収入が安定して公表されたら
- 移行後の会社受取単価が見えるため、SP-01の数量増と単価減を分けて評価し直す。特許切れ後に処方が増えても会社収益が増えなければ、強気の確率は上げない。
- 中国エピシルの出荷が回復し、2026年10月修正後の製品販売見込みを継続して上回ったら
- 販売先の在庫調整だけだった可能性を織り込み、SP-03の数量と採算を引き上げる。ただし国内契約の更新条件と製造原価の低下実績を確認する。
- 研究開発費と販管費の合計が売上総利益の伸びを伴わず毎年増加したら
- 資金調達の必要額と新株発行の想定を増やし、既存株主の保有比率を下方修正する。現金残高だけで事業の継続性を楽観視しない。
- ダルビアスの新適応取得や中国・欧州での導出が相次ぎ、契約金額と継続ロイヤルティ率が開示されたら
- 一時金と継続する販売利益を区分したうえで既存製品のライセンス収入を上方修正する。国内の小市場を超えた収入の繰り返しを確かめる。
- 会社が配当・自社株買いを始め、黒字を連続して計上したら
- 外部資金依存の収益構造が変わったと判断し、将来の希薄化率と資本コストの経営難上乗せを再検討する。単年の契約金による黒字化では判定を急がない。
見ておくもの
- SP-05第Ib/II相の正式な有効性・安全性データと日本権利導出条件
- Sancuso中国におけるMAABの現地生産開始、貼付剤の処方数量と実収ロイヤルティ
- エピシル中国GenSci向け出荷と日本の2028年5月契約更新
- ダルビアス日本販売瓶数、適応追加及び中国等でのライセンス成立
- 四半期ごとの営業現金流出、現金残高と研究開発費・販管費
- 新株予約権行使額・発行済株式総数・既存株主持分の推移
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額や過去のPBRから目標倍率を決めていない。2025年の製品販売3.77億円とライセンス収入0.51億円を起点に、非開示の製品別数量・単価は薬価、患者数、MAAB向け出荷金額から推計した。SP-01の現地生産後は受取単価を下げ、物価3%は数量に含めない。研究開発費と販管費は名目額で予測し、減価償却を物価で一律に増やさない。正当化PERはk10.25%、弱い堀の超過利益残存率1/3、10年以降の名目成長1%による式の上限を使う。赤字時は利益倍率を使わず、回収可能な現金・債権からPBRを決めた。将来の新株発行による既存株主の持分変化は最後に一度だけ適用し、払込額は自己資本へ含める。純現金は研究費の資金であり余剰資産として二重計上しない。IFRS適用済みで新リース基準の影響を重ねない。
資本コスト 10.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 2.0%。