結論
クリングルファーマは、組換えヒトHGFという再生・修復を促すタンパク質を、脊髄損傷や声帯瘢痕の治療薬に育てる創薬企業である。筆者の結論は「割高」だ。2026年10月の米国治験開始申請の発効や丸石製薬との販売契約は確かな前進だが、承認薬の販売はまだ一件もない。現在の企業価値の大半は、実現していない将来利益への期待である。
期待に根拠がないわけではない。声帯瘢痕では患者65人の第Ⅲ相試験の登録が終わり、2027年に成績が明らかになる予定だ。脊髄損傷も日本で第Ⅲ相まで到達し、米国でも臨床試験を始めるための手続きが進んだ。HGFを薬として量産する技術と、丸石製薬・東邦ホールディングスの販売網は、成功時に効く財産である。
問題は、臨床の成功と株主の成功が同じではないことだ。日本の脊髄損傷薬には追加の有効性試験が必要となり、米国は治験の出発線に立っただけである。2025年9月期の収入はクラリス社からの技術アクセス料だけで、営業赤字は約9億円だった。今後の試験と上市準備にはさらに資金が要り、増資を重ねれば、成功した薬の価値も既存株主の取り分は減る。
10年先の価値を左右するのは、希少疾患の潜在市場が大きいかではない。規制当局が薬効を認めるか、実際に何人へ投与できるか、そしてその前に資金が尽きないかである。強い成功筋には大きな価値が残るが、その実現確率と希薄化を合わせると、確率加重した現在価値は約28億円で、基準時価総額約51億円を大幅に下回る。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、この会社の最も難しい点は「成功すれば役立つ薬」と「成功すれば高く売れる株式」を分けることだ。HGFが重い脊髄損傷患者の機能回復を確かな形で改善するなら、長年満たされなかった医療需要があり、独自の製造技術と治験データは簡単に模倣されない。丸石製薬へ販売を委ねる方式なら、自前の営業部隊を膨らませずに薬を届けられる可能性もある。そうなって初めて、研究費を除いた継続的なオーナー利益が見えてくる。
しかし、現在の株主が保有するのは完成済みの薬の独占権ではなく、承認へ向けて現金を使い続ける会社の持分である。2025年9月期の利益は赤字で、利益を再投資すれば高い利回りで戻ることを示した事実はない。2025年のPMDAとの協議で脊髄損傷に追加試験が必要になった事実は、臨床開発の時間も費用も経営者の思いどおりにならないことを示している。声帯瘢痕の第Ⅲ相が好結果でも、承認・薬価収載・製造準備の間にはさらに支出が生じる。
企業の手元資金は株主に帰属する財産だが、いつでも分配できる資産とは違う。担保に入った預金は返済義務と対で見なければならず、自由な現金も治験費に消える。開発が延びれば増資が必要になり、たとえ10年後に大きな利益を稼ぐ会社へ育っても、今の株主はその利益を丸ごと受け取れない。
筆者が評価を変える条件は明確だ。主力品が再現性のある臨床データで承認され、患者への実際の投与と提携後の受取額が示され、追加増資なしで研究開発を賄う収益を生み始めることである。それまでは、市場規模や特許数よりも、薬効の不確実性と株主の取り分の薄さに大きな安全域を求めたい。
何で稼ぐ会社か
報告上は「医薬品開発事業」の単一セグメントである。売り物は、成長因子HGFを医薬品の品質で作る技術と、適応症ごとの臨床データ、製造販売権である。会社は原薬供給、製薬会社への導出・共同開発、承認後の販売を組み合わせる。2025年9月期の売上高約0.72億円は米国クラリス・バイオセラピューティクス社への技術アクセス料が100%を占め、現時点で患者への承認薬販売による収入はゼロである。
主力のKP-100ITは、脊髄損傷急性期に脊髄腔内から投与するHGF製剤だ。国内の新規患者は年間約5,000〜6,000人だが、実際の投与対象は重症度、損傷部位、受傷からの時間で大幅に絞られる。第Ⅰ/Ⅱ相45人で安全性と一部の改善傾向を示し、第Ⅲ相も実施したものの、PMDAとの協議を経て2025年7月に追加第Ⅲ相試験を決めた。丸石製薬と東邦ホールディングスが国内の販売・流通を担う契約はあるが、承認前なので患者数も薬価も確定していない。
次の柱は声帯瘢痕のKP-100LIだ。日本では年間新患が約350人、患者総数が約1万人と推定される。65人規模のプラセボ対照二重盲検第Ⅲ相試験は組入れを終え、2027年に主要成績が見込まれる。2026年9月には丸石製薬との独占販売契約が正式に成立し、契約一時金1億円が確定した。会社は開発・承認取得・製造供給を受け持ち、販売実績に応じた対価を受け取るが、ロイヤルティ率は非開示である。
米国の脊髄損傷は年間約1万8,482人の発症が推定され、2026年10月にFDAで治験開始申請が発効した。ただし米国第Ⅲ相は未開始であり、海外の販売提携条件も未確定だ。クラリス社はHGF点眼薬CSB-001を角膜上皮幹細胞疲弊症向けに開発し、2026年10月に前向きな初期臨床データを発表した。なお、ALSでは第Ⅱ相の主要・副次評価項目に統計的有意差がなく、収益の中心に数える段階ではない。人月受託、席課金、広告・情報提供で稼ぐ事業ではないため、指定されたAIエージェント代替の型には該当しない。
優良さと弱いところ
価値を生む可能性があるのは、大学発のHGF研究を製造技術と臨床開発へ結びつけてきた蓄積である。医薬品グレードの組換えタンパク質を安定して製造し、原薬の品質・安全性を管理するのは簡単ではない。2025年時点で出願中を含む特許が24件あり、日本で後期臨床試験が二つ進む。丸石製薬との2020年からの資本業務提携が声帯瘢痕の販売契約へ発展したことも、事業実行力の証拠になる。
しかし、特許の数は利益を守る堀そのものではない。売る許可のない薬は価格を決められず、承認後も薬価は公的制度と比較対照治療の価値に左右される。国内の脊髄損傷患者は数千人規模でも、追加治験の対象は重症の一部だ。医師が投与を選ぶ根拠となる有効性の再現性こそが参入障壁になり、これが証明されなければ高い製造技術も株主利益へ変わらない。
販売量に対する価格交渉力も限定的だ。日本では保険償還と費用対効果による見直しがあり、米国では自ら営業組織を持たず提携先に販売権を渡す必要がある。販売後ロイヤルティ、原薬供給価格、マイルストーンの取り分をどこまで保持できるかが、患者1人当たりの利益を左右する。会社が薬を独占して販売する場合ほどの粗利を、世界市場の全額について得られるわけではない。
資本効率を測る過去のROEは一貫して負で、2025年9月期は約マイナス72%に落ちた。現段階の研究開発費は将来利益を生む権利への投資であり、増分ROICが資本コストを超えた実績はまだない。声帯瘢痕で確実な薬効が確認されれば、必要な販売設備を丸石側へ委ねる軽い資本構造が強みになる。他方、二つの主力品が同じHGFに依存するため、規制・安全性・製造品質に共通の失敗要因も抱える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
創薬ベンチャーの市場は、患者数に薬価を掛ければ自然に売上が生まれる産業ではない。承認確率、対象患者の選別、医療現場への導入、保険適用、提携先への取り分という門を順番に通らなければならない。脊髄損傷は日本で年間約5,000〜6,000人、米国で約1万8,482人の新規患者が推定されるが、HGF追加試験はそのうち重い頚髄損傷の一部が対象である。全患者を投与可能人数として扱うと、売上を過大に見積もる。
会社は脊髄損傷薬の潜在市場について、国内約100億円、海外約500億円などの上限規模を示している。声帯瘢痕では国内患者総数約1万人と推定されるが、新患は年約350人にとどまる。これらは承認を前提にした企業側の潜在市場であって、現存する同社の売上でも確定した保険支出でもない。声帯瘢痕の10年後の投与数が新患を上回る楽観筋には、既存患者の未治療分を取り込むという条件を付けた。
競争相手はHGFの同一成分薬だけではない。脊髄損傷では手術とリハビリテーションが現在の治療の柱で、日本ではニプロの細胞医薬ステミラック注も異なる時期・条件の治療選択肢となっている。厚労省の薬価算定資料ではステミラック注のピーク患者を249人、売上を37億円と予測しており、これは実販売シェアではないが希少疾患で到達しうる治療人数の桁を示す。神経再生の研究ではNervGenなどの新規候補や幹細胞療法も進むため、今の薬剤が承認されない場合に市場が空白のまま待ち続けるとは考えにくい。声帯瘢痕でも音声訓練、手術、局所注射などの治療選択と費用対効果を争う。
医薬品の価格は通常の物価上昇に完全連動しない。分析上は10年間で物価が約34%上がる共通前提を単価の側に反映するが、薬価の引下げや販売提携先の交渉力が実際の受取額を抑える可能性を残す。国内成功と米国成功は独立ではなく、同じ薬の有効性データを基礎にする。反対に、クラリス社の眼科開発が順調でも脊髄損傷の承認を直接保証するわけではない。
資本政策と M&A
資本配分の最優先は研究開発を完遂し、承認後の製造と供給を始めることだ。2025年9月期は研究開発費が約6.8億円、営業赤字が約9.1億円に達した。2026年9月期の会社予想は9月16日に売上高4.42億円、営業損失8.00億円へ修正されたが、収益の増加には丸石製薬からの契約一時金が含まれる。製品販売による黒字化とは区別して見る必要がある。
新株予約権による資金調達はすでに繰り返されている。2026年6月末の発行済株式から自己株式を除いた数は838万3,017株で、8月にはさらに21万株の行使が開示された。これは資金繰りをつなぐ反面、既存株主の利益請求権を薄める。成功筋にも将来の臨床試験費、米国での提携費、製剤開発費が必要なため、株数の増加を無視していない。
2025年末の現預金約16.19億円には、AMEDからの長期預り金6.28億円を担保する同額の定期預金が含まれる。純現金約9.9億円は対応する長期預り金負債を控除した後の概数であり、担保額を二重に差し引かない。残る現金も赤字を補い試験を続けるための資金で、余剰現金として株主価値に別加算する性質ではない。
確認できた中期の経営方針は、国内の脊髄損傷と声帯瘢痕の承認、海外導出、HGFの適応拡大を重視するものだ。売上高、営業利益、ROEの数値目標を約束した中期経営計画と、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数値目標は確認できないため、いずれも「数字の約束なし」である。無配が基本で、大型買収より製薬会社との提携・資本参加を想定する。将来の買収は確定価値に含めない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
HGFは、既存の対症療法だけでは回復が難しい神経障害と線維化疾患に対し、複数の臨床後期パイプラインを持つ。2001年設立から蓄積した医薬品製造技術と、大学研究者との協働を経て、創薬ベンチャーでは到達の難しい第Ⅲ相試験に二本進んだ。2026年には声帯瘢痕薬の第Ⅲ相で症例組入れが完了し、丸石製薬との正式契約から一時金1億円も得られた。日本の脊髄損傷薬には販売会社と卸売会社の網があり、薬効さえ確かなら商業化の準備をゼロから始めずに済む。
米国の展開にも進展がある。2026年10月のFDAのIND発効は米国第Ⅲ相の準備を進める前提となり、日米欧での希少疾病用医薬品指定は開発の支援制度を活用する可能性を開く。米国だけで年約1万8,482人の脊髄損傷患者が新たに発生し、重症患者の少数に投与されるだけでも高額な希少疾患薬なら売上余地がある。日本の脊髄損傷、声帯瘢痕、米国への導出が同時に実現した時の営業利益は、今の研究開発費を大きく上回り得る。
クラリス社のHGF点眼薬も無視できない。角膜上皮幹細胞疲弊症の初期臨床で2026年10月に視力改善の前向きなデータが発表され、2027年前半に次の主要試験を始める計画が示された。これは会社独自の二つの適応症と違う販売経路を開く余地がある。将来、臨床資金の一部を導出一時金で賄い、株式発行を抑えられれば、現時点の時価総額に比べて価値が何倍にもなる可能性は残る。
慎重な見方
今まで製薬会社として一つも上市できなかった事実の重さを軽く見てはならない。脊髄損傷の第Ⅰ/Ⅱ相では主要評価項目で統計的有意差が示されず、二次解析や特定群の改善傾向が期待を支えている。第Ⅲ相を終えても日本の規制当局との協議で追加試験が必要になった。国内治験は少数例で患者の選別も難しく、承認は予定より何年も遅れる可能性がある。2026年の米国IND発効は安全性・治験手続きを進められるという意味であって、薬が効いたことの承認ではない。
もう一つの主力である声帯瘢痕も、2027年の二重盲検試験の結果次第だ。症例65人という規模では小さな効果の差を安定して示せないことがあり、会社の期待した優越性が出ないかもしれない。ALSではすでに第Ⅱ相の主要・副次項目に統計的有意差がなく、HGFが多くの疾患へ効くと外挿する根拠は限られる。クラリス社の角膜薬も比較的新しい臨床段階で、その売上の100%を生む技術アクセス契約は提携先一社への依存である。
承認より先に、株式の希薄化が進む可能性が高い。2025年9月期の研究開発費は約6.8億円、営業赤字は約9億円で、2026年9月期も会社予想は約8億円の営業赤字だ。AMED預り金と見合う担保預金を配当原資のようには扱えない。資金調達市場が閉じれば治験そのものを縮小せざるを得ないし、調達に成功しても現株主の持分割合は減る。最悪は複数の試験が不成功となり、研究開発事業を縮小して資産がほぼ残らないことだ。
どちらに重みを置いたか
医療上の意義とHGF製造の独自性では前向きな見方に分がある。しかし、評価額を決める上では、未承認、規制上の追加試験、過去の累積赤字、すでに起きた新株発行という慎重な見方の指摘が重い。2026年に提携とINDの具体的進展があったため、成功側をゼロとは見ない。それでも上側23%に対し下側50%とした。下に寄せる理由は、成功までの残り費用を確定的な利益で賄えず、成功時でさえ既存株主の取り分が薄まるためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 813 円68 億円(+ 還元の換算額還元の合計 15 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 330 円28 億円、今との差 −42.5%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,427 円623 億円 | 150 円13 億円 | +1,220.1% | +30.1% | 530 円44 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,773 円149 億円 | 29 円2 億円 | +213.9% | +12.3% | 288 円24 億円 |
| 中立 | 27% | 29 円2 億円 | 0 円0 億円 | −95.0% | −25.8% | 8 円1 億円 |
| やや悲観 | 27% | 7 円1 億円 | 0 円0 億円 | −98.8% | −35.8% | 2 円0 億円 |
| 悲観 | 23% | 1 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.9% | −49.0% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 813 円68 億円 | 15 円1 億円 | +44.3% | +3.8% | 829 円69 億円 |
今の株価時価総額 574 円48 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 日米SCIと国内声帯瘢痕が相次いで承認・上市 利益 82 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,427 円623 億円
国内SCIで追加第Ⅲ相が所定の改善を示し、PMDAが承認する。丸石製薬と東邦ホールディングスの供給網を通じ、重症頚髄損傷から対象患者群が段階的に広がり、年間400人へ投与される。国内年5,000〜6,000人の発症者のうち約7%にすぎないが、疾患の重さと病院での投与管理を考えると極めて良い普及結果である。希少疾患薬の薬価と供給料率に恵まれ、会社への受取単価も高い。
声帯瘢痕も第Ⅲ相で明瞭な効果を示し、丸石製薬の専門販売網に定着する。年間600人への投与は新規患者約350人を上回るが、国内約1万人と推定される既存の未治療患者の一部を取り込むことを前提とする。米国ではIND発効に続いて十分な規模の第Ⅲ相を成功させ、海外製薬会社が試験と販売を担う。米国の年間患者約1万8,482人のうち1,700人へ投与され、原薬供給とライセンス対価が入る。
さらにクラリス社の眼科薬が承認に進み、別のHGF適応症の導出も成立する。承認後の費用増を吸収して大きな営業黒字を生むが、この成果を得るまでの増資で既存株主の取り分は約7割に縮む。これは複数の規制上・商業上の関門をすべて越えた場合だけの強い上振れである。
- 国内・脊髄損傷急性期薬:数量 400(国内で1年間にHGF薬の投与を受ける患者(人/年))× 価格 0.25(会社に帰属する製品供給対価と実効ロイヤルティの合計(億円/人、薬価そのものとは異なる))→ 売上 98 億円・営業利益 54 億円。国内発症5,000~6,000人の約7%。広い重症対象と高単価が必要。
- 国内・声帯瘢痕薬:数量 600(声帯瘢痕薬を年間に投与する国内患者(人/年、既存患者への投与を含む))× 価格 0.05(会社に帰属する製品供給収入と実効ロイヤルティの合計(億円/人))→ 売上 30 億円・営業利益 14 億円。年間新患350人超の投与を既存患者の未治療需要で補う。
- 米国・脊髄損傷薬の導出:数量 1,700(米国提携先がHGF薬を年間投与する患者(人/年))× 価格 0.06(提携先の販売額から当社へ残る実効対価(億円/人、患者の薬価ではない))→ 売上 102 億円・営業利益 87 億円。米国の年間発症18,482人の約9%。製造供給+ライセンス対価が高位。
- 海外HGF技術アクセス料・原薬供給・追加契約:数量 8.0(年間に売上を認識する外部の有償技術アクセス・ライセンス等の契約先(社/年))× 価格 3.00(契約先1社当たりの年間技術アクセス料・原薬供給・進捗対価の合計(億円/社))→ 売上 24 億円・営業利益 8 億円。Clarisの上市と新たなHGF適応拡大で年8契約先を獲得。
倍率:2036年度の全社純利益82.250億円、自己資本300.0億円からROE 27.4%と推計する。資本コストk=9.75%、通常の堀の残存率1/2よりRONIC=k+0.5×(ROE-k)=18.58%。2036年以降は特許・薬価・患者数制約を理由に名目g=1%とし、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=10.814倍。これは上限そのもので、個別の治験失敗確率や希薄化は確率とholder_shareで別途反映する。
確率:国内SCI追加試験、国内VFSの二重盲検試験、米国SCIの本格第Ⅲ相の全てが成功し、米国販売提携と原薬増産まで連続して遂行する必要があるため、希少だが無視できない大成功筋を7%とした。
やや楽観 16% 国内2品目が上市し米国は限定的な導出成功 利益 23 億円 · PER 10.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,773 円149 億円
2027年の声帯瘢痕第Ⅲ相が主要評価項目を満たし、その後の承認と薬価収載も進む。国内の専門医が治療法として受け入れ、2036年には年間330人が投与を受ける。新患約350人と近い規模のため、過去の未治療患者の一部を取り込めば無理な普及率ではない。丸石製薬の販促で一定の知名度を得るが、会社の取り分は独占販売会社との契約で抑えられる。
SCIでは国内追加試験が成功し、厳格な重症患者の条件付きで販売が始まる。年間260人が投与され、年5,000〜6,000人の発症者の約4〜5%へ届く。米国でも製薬会社との共同開発がまとまり、試験費用を軽くして500人程度の投与へ至るが、普及は一部の専門センターが中心だ。クラリス社の眼科薬の開発も前進し、HGFの技術アクセス・製剤供給の契約先が増える。
研究開発費を増やし続けなくても製品収益が積み上がる状態になり、営業利益は黒字に転じる。会社は製造品質と追加適応に再投資を続け、株主還元は後半に少額だけ始める。しかし、薬事承認より前の研究費の大半は株式発行で調達したため、現在の株主の持分は約6割に薄まる。
- 国内・脊髄損傷急性期薬:数量 260(国内で1年間にHGF薬の投与を受ける患者(人/年))× 価格 0.20(会社に帰属する製品供給対価と実効ロイヤルティの合計(億円/人、薬価そのものとは異なる))→ 売上 53 億円・営業利益 26 億円。国内の年間新患の約4~5%。会社受取単価は現在仮定の約1.35倍。
- 国内・声帯瘢痕薬:数量 330(声帯瘢痕薬を年間に投与する国内患者(人/年、既存患者への投与を含む))× 価格 0.04(会社に帰属する製品供給収入と実効ロイヤルティの合計(億円/人))→ 売上 14 億円・営業利益 6 億円。新患350人に近い投与。会社受取単価は未承認時仮定より上。
- 米国・脊髄損傷薬の導出:数量 500(米国提携先がHGF薬を年間投与する患者(人/年))× 価格 0.05(提携先の販売額から当社へ残る実効対価(億円/人、患者の薬価ではない))→ 売上 26 億円・営業利益 20 億円。米国全新患の2.7%程度に限定。共同開発先の販売額から会社取り分を推定。
- 海外HGF技術アクセス料・原薬供給・追加契約:数量 6.0(年間に売上を認識する外部の有償技術アクセス・ライセンス等の契約先(社/年))× 価格 2.10(契約先1社当たりの年間技術アクセス料・原薬供給・進捗対価の合計(億円/社))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。眼科薬と追加適応の導出で年6件の有償契約先。
倍率:2036年度の全社純利益22.719億円、自己資本100.0億円からROE 22.7%と推計する。資本コストk=9.75%、通常の堀の残存率1/2よりRONIC=k+0.5×(ROE-k)=16.23%。2036年以降は特許・薬価・患者数制約を理由に名目g=1%とし、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=10.725倍。これは上限そのもので、個別の治験失敗確率や希薄化は確率とholder_shareで別途反映する。
確率:声帯瘢痕の第Ⅲ相と国内SCI追加試験は成功する一方、米国では提携により治験費用を分担し投与患者も限定的にとどまる。臨床の前向きな証拠はあるが複数の規制承認が必要なので16%とした。
中立 27% 声帯瘢痕に限定的な商業化、SCIは承認に届かない 利益 −8 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 29 円2 億円
声帯瘢痕は第Ⅲ相の結果が承認に耐え、数年の追加開発を経て日本で限定的に販売される。丸石製薬との契約は有効だが、専門医の導入はゆっくり進み、2036年の投与患者は年間250人ほどになる。国内新患約350人と既存患者の治療需要を踏まえれば十分考えられる数量でも、製薬会社として研究開発費を支えるには小さな市場だ。価格は保険償還と販売先の交渉で抑えられ、会社の実効受取額は物価並みの増加にとどまる。
SCIの国内追加試験は成績が明瞭でなく承認まで届かない。米国でのIND発効は試験の検討材料にはなったが、大規模治験を賄う提携先が見つからず、継続的な米国製品売上は生じない。クラリス社の眼科薬は開発を継続し、HGF関連の有償開発契約が数件に増えるものの、契約一時金と継続的な薬剤販売を同じ収益源には扱わない。
営業収益は上市前より増えるが、医薬品の品質管理、追加の臨床、次の適応症の研究費が残り、営業赤字は解消しない。資金需要の一部を増資と提携資金で補う結果、会社は存続しても基準時点の株主の取り分は44%程度になる。将来の自己資本はその追加資本と赤字の累計で決まり、過去の赤字企業に高い事業倍率は与えられない。
- 国内・脊髄損傷急性期薬:数量 0.0(国内で1年間にHGF薬の投与を受ける患者(人/年))× 価格 0.20(会社に帰属する製品供給対価と実効ロイヤルティの合計(億円/人、薬価そのものとは異なる))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。追加第Ⅲ相のデータ不足で国内SCIは非承認。潜在患者を実売上にしない。
- 国内・声帯瘢痕薬:数量 250(声帯瘢痕薬を年間に投与する国内患者(人/年、既存患者への投与を含む))× 価格 0.03(会社に帰属する製品供給収入と実効ロイヤルティの合計(億円/人))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。国内新患350人の約7割に相当、既存患者も含め投与250人。
- 米国・脊髄損傷薬の導出:数量 0.0(米国提携先がHGF薬を年間投与する患者(人/年))× 価格 0.05(提携先の販売額から当社へ残る実効対価(億円/人、患者の薬価ではない))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。IND発効後の後期治験・承認が進まず米国薬剤販売なし。
- 海外HGF技術アクセス料・原薬供給・追加契約:数量 4.0(年間に売上を認識する外部の有償技術アクセス・ライセンス等の契約先(社/年))× 価格 1.60(契約先1社当たりの年間技術アクセス料・原薬供給・進捗対価の合計(億円/社))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。Claris等の研究継続と限られた新規有償契約先4社。
倍率:純利益が赤字でPERが経済的に意味を持たないため、2036/09期の自己資本11.0億円に対する資産価値ベースのPBR0.5倍で評価する。10年後自己資本11.0億円には追加増資と累積損失が反映されており、時価総額は11.0億円×0.5倍=5.5億円である。2025/09期の自己資本12.8億円に掛けた旧試算6.4億円は採用しない。事業は継続赤字で、将来の自己資本全額が株主価値となるとは見込まない。売却可能資産の推定床1.0億円は上回る。
確率:二重盲検で進むVFSに小さな成功余地を残す一方、SCIでは追加試験が必要になった事実から日本と米国の同一薬効の成功を中立では認めない。技術アクセス料が残るが持続赤字と増資が続く筋を27%とする。
やや悲観 27% 国内主要治験が不成功で原薬技術だけが残る 利益 −11 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7 円1 億円
2027年に声帯瘢痕の第Ⅲ相は主要な有効性基準を満たせず、丸石製薬との販売契約は商業売上を生まない。国内SCIの追加試験でも期待した機能改善が再現できず、規制当局が追加の証拠を要求する。米国ではIND発効から先の治験を賄う共同開発先を確保できず、開発が凍結する。潜在患者数や希少疾病用医薬品指定は残っても、売れる薬がないため治療患者数はゼロとなる。
海外クラリス社の眼科薬や原薬開発サービスは完全には消えず、技術アクセス・原薬供給の契約先が二社程度残る。会社は研究人員や試験施設を縮小するが、製造・品質保証と知的財産の維持費は続く。固定費の削減が売上喪失に追いつかず、2036年も赤字が続く。会社の独自技術には買収交渉の余地が残るものの、未承認薬の買収価格には大きな不確実性がある。
その10年間は第三者割当や新株予約権で資金をつなぎ、事業の再編も繰り返される。現在の株主の取り分は30%ほどにまで減少する。元の自己資本12.8億円の多くは研究費に使われ、過去の帳簿価額をそのまま清算価値とみることはできない。
- 国内・脊髄損傷急性期薬:数量 0.0(国内で1年間にHGF薬の投与を受ける患者(人/年))× 価格 0.18(会社に帰属する製品供給対価と実効ロイヤルティの合計(億円/人、薬価そのものとは異なる))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。日本で追加データ不足、承認・投与実績ゼロ。
- 国内・声帯瘢痕薬:数量 0.0(声帯瘢痕薬を年間に投与する国内患者(人/年、既存患者への投与を含む))× 価格 0.03(会社に帰属する製品供給収入と実効ロイヤルティの合計(億円/人))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。VFS第Ⅲ相が主要評価項目を満たさず承認なし。
- 米国・脊髄損傷薬の導出:数量 0.0(米国提携先がHGF薬を年間投与する患者(人/年))× 価格 0.04(提携先の販売額から当社へ残る実効対価(億円/人、患者の薬価ではない))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。米国開発提携が未成立で商業売上ゼロ。
- 海外HGF技術アクセス料・原薬供給・追加契約:数量 2.0(年間に売上を認識する外部の有償技術アクセス・ライセンス等の契約先(社/年))× 価格 1.05(契約先1社当たりの年間技術アクセス料・原薬供給・進捗対価の合計(億円/社))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。Clarisほか限定的な原薬・研究契約先が存続。
倍率:純利益が赤字でPERが経済的に意味を持たないため、2025/09期の自己資本12.8億円に対する資産価値ベースのPBR0.15倍で評価する。10年後自己資本3億円には追加の増資と損失が含まれるため、同じ資本を新たに二重計上せず基準日の12.8億円を分母とする。貸借対照表の資産の大部分は先行投資で償却・消費され、負債を控除した売却可能資産の床1.2億円以上に留める。
確率:国内SCI追加試験とVFS第Ⅲ相のどちらも承認に至らず、Claris契約のみ続く可能性は十分ある。累積赤字、希薄化、国内の規制交渉難を反映してやや悲観に27%を配分した。
悲観 23% 開発の中核を失い延命的な増資と縮小が続く 利益 −6 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1 円0 億円
脊髄損傷の国内追加第Ⅲ相で治療効果を立証できず、米国の本格試験も始まらない。声帯瘢痕では第Ⅲ相の失敗または薬事上の重大な追加課題により開発を中止する。HGFという同じ原材料に多くの期待を集中させた事業構造が裏目に出て、新しい神経再生技術と既存の治療法が医療現場で進歩する。販売契約と希少疾病用医薬品指定の存在自体は収益を生まない。
クラリス社の眼科薬も商業化へ届かず、現在の年間技術アクセス料すら縮小する。研究員の多くを減らし、原薬供給と知財管理を細々と続けるが、残す必要のある品質保証費用だけで小さな売上を上回る。研究設備や未承認特許には確かな買い手がなく、大手製薬による高額な買収も実現しない。
会社は治験を止めても負債、原薬保管、残務処理の支出が続き、過去の純現金をほぼ使い切る。継続できる場合も著しい希薄化によって現株主の取り分は18%程度まで低下し、上場廃止や清算に近い事象が起きれば価値はさらに失われる。現金を床に残すとしても、現時点の帳簿ではなく10年後に費用を払い終えた後の僅かな換金資産だけである。
- 国内・脊髄損傷急性期薬:数量 0.0(国内で1年間にHGF薬の投与を受ける患者(人/年))× 価格 0.17(会社に帰属する製品供給対価と実効ロイヤルティの合計(億円/人、薬価そのものとは異なる))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。国内SCI開発断念で商業投与なし。
- 国内・声帯瘢痕薬:数量 0.0(声帯瘢痕薬を年間に投与する国内患者(人/年、既存患者への投与を含む))× 価格 0.03(会社に帰属する製品供給収入と実効ロイヤルティの合計(億円/人))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。声帯瘢痕開発断念で売上なし。
- 米国・脊髄損傷薬の導出:数量 0.0(米国提携先がHGF薬を年間投与する患者(人/年))× 価格 0.03(提携先の販売額から当社へ残る実効対価(億円/人、患者の薬価ではない))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。米国でも承認・上市なし。
- 海外HGF技術アクセス料・原薬供給・追加契約:数量 1.0(年間に売上を認識する外部の有償技術アクセス・ライセンス等の契約先(社/年))× 価格 0.75(契約先1社当たりの年間技術アクセス料・原薬供給・進捗対価の合計(億円/社))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。Claris等の技術アクセス料が1社だけ細る形で残る。
倍率:純利益が赤字でPERが経済的に意味を持たないため、2025/09期の自己資本12.8億円に対する資産価値ベースのPBR0.025倍で評価する。10年後自己資本0.8億円には追加の増資と損失が含まれるため、同じ資本を新たに二重計上せず基準日の12.8億円を分母とする。貸借対照表の資産の大部分は先行投資で償却・消費され、負債を控除した売却可能資産の床0.25億円以上に留める。
確率:国内2品目の臨床不成功、米国提携難、唯一の実績取引先であるClaris社の契約縮小が重なる構造的敗北。資金が切れる前に新規発行できる保証もないため、上場維持不能を含む深い下側に23%を割いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内・脊髄損傷急性期薬
KP-100ITが承認された場合の国内年間投与患者から得る原薬供給利益と販売後対価。正式な製造販売承認はまだない。
| 数量国内で1年間にHGF薬の投与を受ける患者(人/年) | 価格会社に帰属する製品供給対価と実効ロイヤルティの合計(億円/人、薬価そのものとは異なる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 0.15 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.20 | 0 | 0 |
取り方:2025年度は未承認で投与0人・売上0。日本の急性脊髄損傷新患約5,000~6,000人/年は会社開発資料とSCI疫学に基づくが、追加第Ⅲ相はAIS Aの重症頚髄損傷等の少数例に限定する。仮の会社受取単価0.15億円/人はニプロの細胞医薬ステミラック注の公定薬価約1,500万円を比較材料として作った未承認段階の試算であり、同薬は投与時期・作用が異なりHGFの薬価を保証しない。丸石・東邦の販売対価と会社の製造・供給収益の取り分は非開示。
国内・声帯瘢痕薬
KP-100LIの承認後に国内で投与される患者から得る製品供給収入とロイヤルティ。販売と販促は丸石製薬に委ねる。
| 数量声帯瘢痕薬を年間に投与する国内患者(人/年、既存患者への投与を含む) | 価格会社に帰属する製品供給収入と実効ロイヤルティの合計(億円/人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 0.03 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 250 | 0.03 | 9 | 4 |
取り方:2025年度は未承認で投与0人・売上0。丸石製薬との2026年9月16日共同開示は国内新患約350人/年、患者数約1万人と記載。0.025億円/患者は公表薬価でなく希少疾患の新薬対価から当社へ入る供給代金とロイヤルティを合わせた仮定であり、2026年9月の契約一時金1億円と将来の販売時対価を混同しない。実際のロイヤルティ率は非開示。
米国・脊髄損傷薬の導出
米国第Ⅲ相、販売承認、販売提携が順に成立した場合のライセンス・原薬供給等の受取額。
| 数量米国提携先がHGF薬を年間投与する患者(人/年) | 価格提携先の販売額から当社へ残る実効対価(億円/人、患者の薬価ではない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 0.04 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.05 | 0 | 0 |
取り方:2025年度は米国未治験・未承認で患者投与0人・収入0。2026年10月19日のFDA IND発効は米国第Ⅲ相準備を許す手続きで承認ではない。米国の外傷性脊髄損傷発生は年18,482人(米国National Spinal Cord Injury Statistical Center・会社10月19日リリース)。0.035億円は将来販売先から受け取る製剤供給・ロイヤルティを含む仮の実効単価であり契約条件はまだない。
海外HGF技術アクセス料・原薬供給・追加契約
米国クラリス社との技術アクセス料を基礎に、眼科薬等で増える可能性のある供給・開発契約の年次収入。
| 数量年間に売上を認識する外部の有償技術アクセス・ライセンス等の契約先(社/年) | 価格契約先1社当たりの年間技術アクセス料・原薬供給・進捗対価の合計(億円/社) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1.0 | 0.72 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 1.60 | 6 | 2 |
取り方:2025/09期の有価証券報告書は売上72,215千円の100%がクラリス・バイオセラピューティクス社であると開示し、内訳は臨床試験の初回投与を起点とする年間技術アクセス料。従って数量は実在の支払先1社、単価はその年間契約収入0.72215億円。製品売上原価は2025年度0で全額を粗利益とし、全社販管費と研究開発費約9.81667億円は将来の筋書きでは本社・治験費adjustで別計上する。実際の供給ロット数は非開示で勝手に実績化しない。
リスクと懸念
主要評価項目と追加治験の失敗
SCI第Ⅰ/Ⅱ相では主要評価項目に有意差がなく、国内第Ⅲ相終了後も2025年7月にPMDAとの協議を受けて追加試験が必要となった。小規模な単群・非盲検試験で改善を示せても、自然回復や患者選別との切り分けを規制当局が十分と判断しない可能性がある。承認が遅れるだけでも年間の研究費が積み上がり、製造設備と既存特許の経済的寿命を縮める。
声帯瘢痕第Ⅲ相の2027年成績
第Ⅲ相の患者65人の組入れは完了したが、無作為化・二重盲検試験の統計的結果はまだ公表されていない。新患約350人という小さい市場では、安全性・有効性が良好でも実際に投与する医療機関が限られ、販売網に払う対価を差し引くと収益性が低くなる恐れがある。契約一時金1億円を将来の製品販売収入と取り違えない。
資金燃焼と新株予約権による希薄化
2025年9月期の営業赤字約9.1億円は、純現金約9.9億円に近い規模だ。試験の延期や米国での本格治験が必要となれば、事業収益だけで支払えず追加調達が要る。2026年に新株予約権の行使が進んだ実績からも、株数は固定ではない。承認に成功した企業の将来価値が大きくても、発行株数が増えれば現在の株主に帰属する価値は大幅に小さくなる。
複数パイプラインに共通するHGF依存
SCI、VFS、ALS、クラリス社の眼科薬は、適応症は異なっても同じ組換えヒトHGF技術に依存する。安全性や免疫原性、品質、製造コストに共通の問題が発生すると、すべての製品候補の価値が同時に傷つく。ALS第Ⅱ相では主要・副次評価項目で統計的有意差がなかったため、疾患が増えれば成功確率が独立に積み上がるという見方は危険だ。
提携先一社への実績売上集中
2025年9月期の実績売上はクラリス社への技術アクセス料が100%で、医薬品の市販収益ではない。角膜上皮幹細胞疲弊症薬CSB-001の初期成績が前向きでも、後期試験の失敗、相手の資金調達難、条件変更により契約収入が途切れ得る。国内の丸石製薬も販売と販促を担うため、商業化後の売上数量だけでなく交渉条件が利益に直結する。
薬価・競合治療・特許の消耗
米国の希少疾病用医薬品指定や国内の未充足医療需要は、想定する高単価をそのまま保証しない。日本では保険薬価と費用対効果、米国では保険者と販売提携先の価格交渉が効く。再生細胞医薬や新しい神経保護薬、手術・リハビリの改善が進めばHGFの患者シェアは小さくなる。承認が遅れるほど初期特許の残存保護期間も短くなる。
財務数値上の預金と実際に使える現金の差
2025年度末の現預金約16.19億円のうち6.28億円はAMED長期預り金と見合う担保預金である。純現金9.9億円は対応する負債を差し引いた概数なので担保を二重控除しないが、自由な現金も治験費、給与、製剤開発に使われる。悲観筋で10年後もこの9.9億円がそのまま清算価値として残るとは考えられない。
今後の分かれ目
- 2027年の声帯瘢痕第Ⅲ相で主要評価項目の統計的有意差が確認され、安全性に新しい懸念が出なければ
- 国内声帯瘢痕の承認確率と投与人数の見通しを上方修正する。ただし丸石製薬の非開示ロイヤルティと上市までの製造費が判明するまで、潜在市場の全額を売上にはしない。
- 国内SCIの追加第Ⅲ相で事前に定めたAIS改善基準を達成し、PMDAとの承認相談が具体化したら
- 日本のSCI投与患者数を0人とした中立筋を見直し、収益化の前倒しを評価する。承認申請の準備と薬価交渉が残るため、申請と承認を混同しない。
- 米国SCI第Ⅲ相が資金と提携先を伴って実際に開始され、十分な症例を登録したら
- 海外からの将来の実効ロイヤルティ収入をやや楽観側に織り込める。単なるIND発効より、契約で固定された前受金と必要資金の分担割合を強く評価する。
- 新株予約権の行使や追加増資で発行済株式がさらに増えれば
- 会社全体の創薬価値はそのままでもholder_shareを引き下げ、現在の株主の現在価値を再計算する。特に調達資金が臨床の節目へ届くかを合わせて確かめる。
- クラリス社が眼科薬CSB-001の後期試験で有意な成績を示し、原薬供給数量と契約対価が開示されたら
- 実績のある技術アクセス料以外の経常収入が増えるため、海外HGF契約の件数と1社当たりの単価を見直す。開示がない先行ニュースだけでは収益を増やさない。
- 現金同等物が研究開発費の年額を下回り、非希薄化の大型契約も決まらなければ
- 資金不足による試験遅延・縮小を織り込み、やや悲観と悲観の確率を上げる。継続企業の前提の正式注記や上場維持状況も継続確認する。
- 承認後に投与患者数、会社の実効受取単価、供給原価が初めて開示されたら
- 市場上限の想像ではなく投与人数×会社取り分による実績値へ切り替え、営業費用を差し引いた継続利益と増分ROICを再評価する。
見ておくもの
- 声帯瘢痕KP-100LIの2027年トップライン、主要評価項目のp値と安全性
- 国内SCI追加第Ⅲ相の登録10人・症例除外基準・AIS改善割合・PMDAとの協議
- 米国SCI第Ⅲ相の開始日、治験費用、共同開発・導出の前受金とロイヤルティ
- クラリス社CSB-001の2027年前半ピボタル試験開始と技術アクセス料・原薬供給額
- 半期ごとの自由に使える現金・担保預金・年間営業キャッシュ流出
- 新株予約権行使と新規株式数、既存株主取り分の変化
- 国内SCI・VFSの承認・薬価収載後の実際の投与人数と当社実効収入
- 中期経営計画の数値目標・資本政策の新設、提携先丸石製薬の出資の拘束力
倍率と資本コストの決め方
2025年9月期の実績売上はクラリス社1社への年間技術アクセス料0.72215億円であり、実在しない医薬品販売量に置き換えていない。2036年の国内SCI・VFS・米国SCIは投与患者数×会社に残る実効対価で計算した。物価3%・10年間の約1.34倍は単価にのみ反映し、患者数には二重に加えていない。黒字の楽観・やや楽観はk9.75%、長期名目成長1%、堀の残存比率1/2とROEから正当化PERの上限を算出した。赤字の中立筋では2036年の自己資本11.0億円にPBR0.5倍を掛けて時価総額5.5億円とした。やや悲観・悲観は2025年の自己資本12.8億円を基準にした床のPBRで測った。10年後に残る現金の床は赤字による支出を反映した。増資を時価総額から二度差し引かず、会社全体の価値に対して既存株主の持分だけを最後に反映した。現行株価や同業の市場倍率を逆算には使わず、価値の計算後に初めて比べた。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 2.0%。基本7.5%に価格決定力+0.5%、純現金-0.25%、継続赤字による事業継続上乗せ+2.0%を加え9.75%。個々の治験失敗と希薄化は確率と株主取り分で表し、さらに資本コストへ重ねない。