結論
東和薬品は、国内で後発医薬品(ジェネリック)を作って売る大手だ。山形工場を中心に 3 つの工場を持ち、高血圧や糖尿病など飲み続ける薬が中心になる。筆者の結論は、今の値段はやや高い、である。借金が重く、薬の値段を国が決めるので、数量が伸びても株主の取り分は増えにくい。
稼ぎの形は単純だ。薬は国が決めた値段で売る。数量は作った分だけ売れる状態が続いてきたが、ここへきて増産が追いついてきた。山形工場の新棟は 2025 年 10 月に立ち上がり、限定出荷の品目は 242 から 129 まで減った。取りこぼしていた注文が戻ってくる。
問題は値段のほうだ。薬価は毎年のように下がる。人件費や原材料は物価で上がる。この挟み撃ちを、規模と効率でどこまで埋められるか。会社の計画は営業利益率 10% 台の半ばだが、10 年続く保証のある数字ではない。
もう一つの傷が三生医薬だ。健康食品の受託製造会社で、約 477 億円で買った。2026 年 3 月期にのれん(買収の上乗せ分)を 147 億円減らし、最終利益は 52 億円に沈んだ。本業の利益は崩れていないが、買い物の失敗は残る。
それでも事業は消えない。供給不足の市場で、増産できる会社は強い。ただ、純有利子負債は自己資本の 1 倍近くある。金利が上がれば利払いが利益を削る。10 年後の価値は、確率を寄せた加重で今の時価総額を 2 割ほど下回る。「やや割高」だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は長く持ちたい事業とは言いにくい。需要は安定している。だが儲けの大きさを決めるのは国で、会社ではない。
持ち続けたいのは、値決めの力を持つ会社だ。後発品はその逆に近い。薬価は毎年下がり、各社が同じ成分を売る。費用の上昇を転嫁できない事業は、稼ぐ力が資本コストの手前で止まりやすい。
それでも強みはある。供給が足りない時代に、増産できる体力だ。数量が戻り、工場が埋まれば、固定費が薄まって利益率は上がる。三生医薬ののれんの償却も、減損でなくなる。計画どおりなら、ROE は資本コストを超える。
ただ、借金が重い。金利が上がる世界では、利払いが毎年じわじわ利益を削る。10 年の中立でも、ROE は資本コストにわずかに届かない。
安全域は、まだ十分に厚くない。今の PER は 10 倍を割るが、会社の計画どおりに利益が戻る前提の数字だ。結論として、筆者は 10 年後の価値を今の時価総額よりやや低いと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの大部分は国内のジェネリック医薬品だ。特許が切れた先発薬と同じ成分を、国が決めた安い薬価で売る。錠剤が中心で、注射薬も扱う。病院や薬局へは卸を通して届く。
売上は「何錠売れたか」と「1 錠いくらか」の掛け算で決まる。会社は数量を開示する。2024 年 4〜9 月の販売は約 75 億錠だった。ところが同じ期間の生産は約 68 億錠で、不足分は在庫を崩して埋めた。作れば売れるのに作れない。そういう状態が数年続いた。
その解消が今の最大の話題だ。山形工場は第三固形製剤棟を 2025 年 10 月に立ち上げ、来期は 3 工場で 175 億錠を作れる見通しだ。能力が増えれば、限定出荷(供給が足りず出荷を絞ること)を解いて、売上を取り戻せる。中期経営計画「PROACTIVE Ⅲ」は 2024〜2026 年度の営業利益の累計目標を 800 億円以上に引き上げた。
もう一つの柱が、完全子会社の三生医薬だ。健康食品やサプリの企画から製造までを請け負う。2025 年 3 月期の売上は約 287 億円で、全体の 1 割ほどになる。国内の健康食品は競争が激しく、海外向けの新しい事業も競争が厳しくなった。のれんの減損は、その結果だ。
当面の見どころは二つある。限定出荷の解除で数量がどこまで戻るか。同業他社との協業が、どんな形で品質と製造の基準をそろえるか。この 2 つが、後発品の利益率を決める。
優良さと弱いところ
優良な会社とは言いにくい。事業は安定しているが、儲けは薄い。値段を国が決める産業では、強い堀(他社がまねできない強み)は築きにくい。
強みは三つある。一つは品ぞろえの広さだ。病院や薬局は、多くの薬を一社でそろえたがる。二つめは工場の規模だ。3 工場で 175 億錠を作れる体制は、小さな会社には持てない。三つめは、増産に踏み切る体力だ。品質問題で業界の供給が細る中、新棟を建てた会社に注文が集まる。
弱みは値決めの力がないことだ。薬価は毎年下がる。同じ成分を各社が売るので、差別化の余地も小さい。人件費と原材料は物価で上がる。この差は、効率でしか埋まらない。
資本の稼ぎも安定していない。過去 10 年の ROE(自己資本利益率)の中央値は 10% 台だが、2023 年 3 月期は 1.6%、2026 年 3 月期は 2.9% まで落ちた。営業利益が 55 億円まで縮んだ年もある。景気に強い薬の会社にしては、利益の振れが大きい。
筆者は、いちばんの弱点を借金と見る。純有利子負債は 1,674 億円。自己資本比率は 37% で、会社が目標に掲げる 50% には遠い。工場の投資と三生医薬の買収が、そのまま借金に変わった。品質面では大きな不祥事は確認できていないが、供給不足が長引いたことは、現場の力の限界を示している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
後発品の市場は、成熟した規制産業だ。数量シェアは 9 割に近く、政府が掲げる目標に届いた。数量の伸びしろは、高齢化による処方の自然増と、新しく特許が切れる薬の置き換えに限られる。
価格は逆向きだ。薬価は毎年の改定で下がる。業界の売上は、数量の増加と価格の下げが打ち消し合って、横ばいから微増になる。業界の前提は、この見通しで統一している。
競争の形は、分散から集約へ向かっている。2021 年に小林化工と日医工が業務停止を受けた。日医工は 2022 年に事業再生の手続きに入り、翌年に上場を廃止した。供給の穴を埋められる会社に需要が集まり、同業の協業も動き出した。東和薬品も、同業他社と品質・製造の基準を共有する新しい枠組みを交渉中と説明している。
競合は沢井製薬(サワイグループ)、日医工、先発メーカー系の後発部門などだ。勝つ条件は、安く安定して作ること、品質問題を起こさないこと、薬価の下げを上回る原価の低減を続けることだ。
景気の波は小さい。景気が悪くても処方は減らないからだ。大きく動くのは、薬価の改定、供給と品質の問題、原価の三つになる。三生医薬が属する健康食品の受託は、消費者の好みと競争で動く別の世界だ。国内の薬の会社が、買収で入った分野でもある。
資本政策と M&A
資本の使い方は、設備と買収に寄っている。山形工場の増設に加え、2022 年に三生医薬を約 477 億円で買った。この 2 つが借金を増やし、2026 年 3 月期には 147 億円の減損という形で、買い物の失敗が表に出た。
還元は控えめだ。配当は、配当性向 20〜30% と、自己資本に対する配当の割合 2% 程度を目安にしている(第三者サイトによる)。自社株買いの実績は確認できなかった。配当の総額は年 40 億円弱で、利益の 2 割前後にとどまる。
M&A は買う側の失敗が教訓になる。今後は、同業他社との協業が焦点だ。社名は出ていないが、会社は品質と製造の基準を共有する枠組みと説明している。吸収や TOB(株式公開買い付け)の話は確認できていない。
筆者が見るのは、借金の返し方だ。利益が増えても、先に借金を減らすのか、配当を増やすのか。ここで、株主のものになる利益の厚みが決まる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
数量は戻る。限定出荷の品目は 242 から 129 まで減り、山形工場の新棟も動き出した。来期は 3 工場で 175 億錠を作れる。取りこぼしていた注文を拾うだけで、売上は一段上がる。
利益率も上がる。三生医薬ののれんは 147 億円を減らしたので、毎年の償却費がなくなる。会社は 2027 年 3 月期の営業利益を 310 億円と見ている。2028 年 3 月期は 360 億円の見通しだ。工場が埋まれば固定費が薄まり、計画どおりに届く。
価格の下げも、新製品と先発品から後発品への切り替えで、かなり補える。業界の再編で、供給を担える会社が減っている。取引先は、確実に作れる会社と長く組みたい。同業との協業が実現すれば、少量多品目という業界の無駄も減る。
借金も、利益が増えれば重荷でなくなる。営業利益が 400 億円に近づけば、利払いは利益の 1 割を割る。10 年で ROE が 12% を超える姿は、会社の計画の延長で十分描ける。
慎重な見方
薬価は毎年下がる。中間年改定が入り、実質は年に一度だ。物価が 3% で上がる世界では、人件費と原材料は毎年重くなる。価格が下がり費用が上がる。この挟み撃ちで、利益率は上がるより下がるほうが自然だ。
会社の計画は、これまでも届かなかった。2026 年 3 月期の営業利益は、計画の 85% で終わった。限定出荷の後の売上が想定を下回ったことと、三生医薬の落ち込みが理由だ。増産が数字に結びつくという筋書きは、まだ確かめられていない。
借金は重い。純有利子負債は自己資本の 1 倍近くある。借り換えで金利が上がると、10 年で税引き前の利益が 40 億円ほど減る推計だ。本業が少し崩れるだけで、株主に残る利益は大きく減る。
三生医薬は、買った値段に見合わなかった。健康食品の受託は競争が厳しく、のれんの減損の後も稼ぐ力が戻るとは限らない。大手が価格で攻め、供給不足も 10 年は続かない。供給が戻れば、後発品の値引き競争は再び激しくなる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。数量の回復には根拠があるが、価格の下げと原価の上昇を埋める材料は、増産と協業に限られる。借金の重さは、中立でも ROE を資本コストの手前に抑える。
確率は中立に最も多く置いたうえで、やや悲観をやや楽観より厚くした。楽観は計画が通り、数量・利益率・三生医薬がそろって良い場合に限り、1 割弱にとどめた。悲観は品質や供給の事故と値引き競争が重なる場合で、1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,711 円2,812 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,454 円716 億円)。 今の値に割り戻すと 3,424 円1,686 億円、今との差 −5.1%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,153 円5,492 億円 | 3,046 円1,500 億円 | +293.3% | +14.7% | 1,136 円559 億円 |
| やや楽観 | 17% | 8,444 円4,158 億円 | 2,031 円1,000 億円 | +190.2% | +11.2% | 1,781 円877 億円 |
| 中立 | 38% | 6,819 円3,358 億円 | 1,422 円700 億円 | +128.3% | +8.6% | 3,132 円1,542 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,756 円1,357 億円 | 1,015 円500 億円 | +4.5% | +0.4% | 1,018 円501 億円 |
| 悲観 | 10% | 473 円233 億円 | 508 円250 億円 | −72.8% | −12.2% | 98 円48 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,711 円2,812 億円 | 1,454 円716 億円 | +98.5% | +7.1% | 7,165 円3,528 億円 |
今の株価時価総額 3,610 円1,778 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:数量が戻り、増産と協業で利益率が戻る 利益 419 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 11,153 円5,492 億円
10 年後、販売は 230 億錠を超え、国内シェアは 2 割を超える。限定出荷はなくなり、新棟は満杯で動く。同業との協業が実を結び、少量多品目の無駄が減る。原価は薬価の下げを上回って下がる。
価格は、1 錠の売上で今の 1.1 倍まで上がる。新製品と、先発品から後発品への切り替えが穴を埋める。物価の 1.34 倍には届かないが、下げ続ける構図は止まる。営業利益率は 15% を超える。
三生医薬は、のれんの償却がなくなり、受託の量も増えて黒字が定着する。借金は利益で減り、利払いの負担は軽くなる。資本の稼ぎは資本コストをはっきり超え、還元も厚くなる。
- 国内ジェネリック医薬品(注射薬などを含む):数量 232(販売数量(億錠))× 価格 17(1 錠あたりの売上(円。薬価の下げと品目構成の変化を含む名目))→ 売上 3,828 億円・営業利益 593 億円。販売 232 億錠 × 1 錠の売上(今の 1.10 倍)、営業利益率 15.5%
- 三生医薬(健康食品・サプリの受託製造):数量 328(国内の健康食品・サプリ受託市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0・名目))→ 売上 440 億円・営業利益 53 億円。受託の取引量は今の 1.25 倍、値段の指数 1.34、営業利益率 12%
倍率:事業の純利益 419 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.56 倍、時価総額 5,263 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画がほぼ通り、数量・利益率・三生医薬の三つが同時に良い方向へ出る筋書き。過去 10 年で営業利益率 15% を超えたのは 2019〜2020 年だけで、条件が重なる 1 割弱に絞る。
やや楽観 17% やや楽観:数量は戻り、薬価の下げは物価の半分を負担 利益 310 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 8,444 円4,158 億円
販売は 215 億錠まで伸び、シェアは 2 割弱に上がる。山形工場の新棟が働き、限定出荷は解ける。協業は一部の品目で動き、原価が少し下がる。
価格は今の 1.05 倍にとどまる。薬価は毎年下がるが、新製品と切り替えが穴を埋める。物価の 1.34 倍にはほど遠い。営業利益率は 13% 台になる。
三生医薬は、のれんの償却がなくなり、1 割の利益率を取り戻す。借金は利益で少しずつ減る。ROE は 10% 近くで資本コストを超えるが、堀は弱く、利益は薬価の改定のたびに揺れる。品質の大きな事故は起きず、訴訟や追加の減損も限られる。計画の線に近いが、10 年続けて上振れが出るほどではない。会社は還元を少し厚くするが、自社株買いは借金が減るまで控える。
- 国内ジェネリック医薬品(注射薬などを含む):数量 215(販売数量(億錠))× 価格 16(1 錠あたりの売上(円。薬価の下げと品目構成の変化を含む名目))→ 売上 3,386 億円・営業利益 457 億円。販売 215 億錠 × 1 錠の売上(今の 1.05 倍)、営業利益率 13.5%
- 三生医薬(健康食品・サプリの受託製造):数量 294(国内の健康食品・サプリ受託市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.27(値段の指数(今を 1.0・名目))→ 売上 373 億円・営業利益 37 億円。受託の取引量は今の 1.12 倍、値段の指数 1.27、営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 310 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.13 倍、時価総額 3,760 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:限定出荷が解け、薬価の下げと原価の上昇がほぼ釣り合う、会社計画の 8 掛けほどの筋書き。計画未達の実績があるので、楽観より厚く置く。
中立 38% 中立:数量は 2 割増、価格は横ばいで利益率は計画の延長 利益 239 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 6,819 円3,358 億円
10 年後、販売は 200 億錠、シェアは 2 割弱。会社の計画には届かない。新棟の稼働で生産は追いつくが、薬価の下げが毎年それを削る。
価格は、1 錠の売上で今とほぼ同じだ。薬価の下げを、新製品と品目構成の変化が打ち消す。物価の 1.34 倍に比べれば、実質で約 25% の値下がりになる。この分を、規模と効率でどこまで原価に落とせるかが勝負になる。
営業利益率は 12% 台で、会社の計画の 10% 台の半ばと、過去の好調期の間に収まる。三生医薬は、のれんの償却がなくなり、7% の利益率で稼ぐ。一方で借金の金利は上がり、純利益の営業利益に対する比は今より下がる。ROE は 7% 台で、資本コストにわずかに届かない。
- 国内ジェネリック医薬品(注射薬などを含む):数量 200(販売数量(億錠))× 価格 15(1 錠あたりの売上(円。薬価の下げと品目構成の変化を含む名目))→ 売上 3,000 億円・営業利益 375 億円。販売 200 億錠 × 1 錠の売上(今の 1.00 倍)、営業利益率 12.5%
- 三生医薬(健康食品・サプリの受託製造):数量 263(国内の健康食品・サプリ受託市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.0・名目))→ 売上 315 億円・営業利益 22 億円。受託の取引量は今の 1.00 倍、値段の指数 1.20、営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 239 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.8 倍、時価総額 2,820 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:限定出荷の解除と自然増で数量が戻り、薬価の下げと新製品が相殺するという、業界ノートの中立に、増産の一部を足した筋書き。議論の落としどころ。
やや悲観 27% やや悲観:薬価の下げが原価の低減を上回り続ける 利益 114 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,756 円1,357 億円
販売は 185 億錠にとどまる。能力は増えたが、稼働率が上がらない。限定出荷の解除で埋まるはずの注文が、値引きの競争に取られる。新棟の減価償却だけが重くなる。
価格は、1 錠の売上で今の 9 割に下がる。物価の 1.34 倍と比べれば、実質で約 3 割の値下がりだ。人件費と原材料は物価で上がり、利益率は 8% 台に沈む。
三生医薬は、国内でも海外でも値段を叩かれ、利益はほとんど出ない。借金は金利の上昇で重くなり、純利益は今のならした額の 7 割ほどに減る。ROE は 4% 台に落ち、株主の価値は増えない。
- 国内ジェネリック医薬品(注射薬などを含む):数量 185(販売数量(億錠))× 価格 14(1 錠あたりの売上(円。薬価の下げと品目構成の変化を含む名目))→ 売上 2,553 億円・営業利益 217 億円。販売 185 億錠 × 1 錠の売上(今の 0.92 倍)、営業利益率 8.5%
- 三生医薬(健康食品・サプリの受託製造):数量 223(国内の健康食品・サプリ受託市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0・名目))→ 売上 245 億円・営業利益 5 億円。受託の取引量は今の 0.85 倍、値段の指数 1.10、営業利益率 2%
倍率:ROE 4.3%(事業の純利益÷自己資本)が k 以下で、PER は 1÷k=12.1 倍が上限。やや悲観は構造的な負け(薬価の下げと原価の逆転、三生医薬の不振)で、上限の 7 割の 8.5 倍に置いた。
確率:薬価の下げが続いて原価を落とせない、数量が戻らない、三生医薬が立て直せない、のどれかが出る筋書き。計画未達の実績から、やや楽観より厚く置く。
悲観 10% 悲観:供給と品質の事故、値引き競争で薄利が定着 利益 30 億円 · PER 7.9 倍 · 株価時価総額 473 円233 億円
10 年後、品質か供給の事故で工場の一部が長く止まり、取引先の信用を失う。販売は 165 億錠にとどまる。同業の集約が進み、大手が価格で攻める。
価格は、1 錠の売上で今の 8 割まで下がる。薬価の下げに加え、入札での値引きも効く。営業利益率は 5% 台まで落ちる。
三生医薬は赤字になる。山形の新棟と買収で買った資産は回収できず、約 400 億円の減損が出る。借金の利払いが利益のほとんどを食い、配当は最低限になる。会社は、信頼の回復と借金の返済を最優先にする。増産より品質の立て直しに人と金を戻し、売上は縮む。国内シェアは 1 割台の半ばまで下がる。借金の返済が終わるまで、株主への還元は細る。後発品の再編で、規模で負けた会社の典型になる。
- 国内ジェネリック医薬品(注射薬などを含む):数量 165(販売数量(億錠))× 価格 12(1 錠あたりの売上(円。薬価の下げと品目構成の変化を含む名目))→ 売上 1,980 億円・営業利益 109 億円。販売 165 億錠 × 1 錠の売上(今の 0.80 倍)、営業利益率 5.5%
- 三生医薬(健康食品・サプリの受託製造):数量 184(国内の健康食品・サプリ受託市場(実質・億円)× シェア)× 価格 1.00(値段の指数(今を 1.0・名目))→ 売上 184 億円・営業利益 −6 億円。受託の取引量は今の 0.70 倍、値段の指数 1.00、営業利益率 -3%
倍率:ROE 1.4%(事業の純利益÷自己資本)が k 以下で、稼ぐ力(純利益÷k)から出す。PER は 1÷k=12.1 倍が上限で、利益が薄く不安定で借金が重いので、上限の 6.5 割の 7.9 倍に置いた。床は稼ぐ力から出し、帳簿や過去の株価の水準は使っていない。工場は専用で売れる資産の価値を見込まず、純有利子負債が大きいので、純現金+売れる資産の床は立てない。
確率:品質か供給の事故で工場が止まり、取引先の信用を失い、大手との規模の差が開く筋書き。後発品業界では実際に起きており、1 割を置く。倒産のような極端な筋書きは取らない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ジェネリック医薬品(注射薬などを含む)
東和薬品が国内で作って売る後発医薬品。錠剤が中心。
| 数量販売数量(億錠) | 価格1 錠あたりの売上(円。薬価の下げと品目構成の変化を含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 165 | 15 | 2,475 | 236 |
| 10 年後 中立 | 200 | 15 | 3,000 | 375 |
取り方:2024 年 4〜9 月の販売約 75 億錠(薬事日報)から、限定出荷の緩和を加えて 2026 年 3 月期を約 165 億錠と推定(会社の通期の数量は確認できず)。連結売上 2,737 億円から三生医薬の約 262 億円を引いた分を数量で割って価格とした。営業利益は連結 231 億円に三生医薬の推定 −5 億円(のれん償却後)を戻した値。価格は中立で名目横ばい(薬価の毎年の下げを新製品と品目構成が打ち消す)。業界ノートの中立(数量は横ばい〜微増、価格は下がり圧力)に、4887 と同じ物差しを当てた。
三生医薬(健康食品・サプリの受託製造)
健康食品やサプリの企画から製造までを請け負う完全子会社。2022 年に約 477 億円で買収。
| 数量国内の健康食品・サプリ受託市場(実質・億円)× シェア | 価格値段の指数(今を 1.0・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 263 | 1.00 | 263 | −5 |
| 10 年後 中立 | 263 | 1.20 | 315 | 22 |
取り方:2025 年 3 月期の売上は約 287 億円(EDINET 系のサイト)。2026 年 3 月期は国内の健康食品と海外の新規事業の不振で減ったと見て約 262 億円とした。市場規模 3,500 億円 × シェア 7.5% は推定で、開示はない。営業利益は、のれんの償却(年 30 億円台)後でほぼ 0 の推定。数量は実質、価格は物価を含む名目の指数。
リスクと懸念
薬価の下げが原価の低減を上回り続ける
薬価は毎年のように下がり、物価で上がる人件費と原材料を価格に転嫁できない。数量が増えても、1 錠あたりの利益が縮めば稼ぎは増えない。会社の計画する利益率の改善は、この差を規模と効率でどこまで埋められるかにかかっている。
増産が数字に結びつかない
山形工場の新棟で能力は増えたが、人員の習熟が遅れ、稼働が上がらなければ、減価償却と人件費だけが先に重くなる。限定出荷が解けても、値引きの競争に注文を取られれば、増えた能力は利益にならない。2026 年 3 月期の営業利益は、計画の 85% で着地した。
三生医薬の立て直しが進まない
約 477 億円で買った三生医薬は、147 億円ののれんを減らした後も、国内の健康食品の競争と海外の新規事業の不振という課題を抱える。減損の後も追加の減損が起きる可能性がある。のれんの償却がなくなる分は、本業の改善には数えない。
借金と金利の上昇
純有利子負債は 1,674 億円で、自己資本の 0.94 倍。借り換えが進めば金利は今より高くなり、推定で 10 年後の税引き前の利益は 40 億円ほど減る。本業の利益が少し崩れるだけで、株主に残る利益は大きく減る。自己資本比率は 37% で、会社の目標の 50% には遠い。
品質・供給の事故
後発品の業界では、2021 年に小林化工と日医工が業務停止を受けた。一度の事故が、工場の停止や出荷の制限につながり、取引先の信用を失う。東和薬品でこうした事故は確認していないが、品目が多く、限定出荷の長期化がすでに現場の余力の乏しさを示している。
業界再編で規模負けする
業界は大手に集約される方向にある。東和薬品は同業他社との協業を交渉中だが、中身はまだ見えない。協業が品質と原価の改善につながれば上振れ要因になる。ただ、他社が先に効率を高めれば、価格で攻められる側に回る。
今後の分かれ目
- 限定出荷の品目がさらに減り、通常出荷が増えたら
- 増産が数量に結びつく証拠になる。やや楽観以上の確率を上げる根拠になる。
- 薬価の中間年改定の下げ幅が拡大し、営業利益率が 10% を割ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。価格の下げが原価の低減を上回る構図の確認になる。
- 同業他社との協業の内容が公表され、品目や工場の分担が進んだら
- 少量多品目の無駄が減り、原価の低下が進む。やや楽観以上の根拠が増える。
- 三生医薬で追加の減損が出る、または売却・再編が決まったら
- 追加の減損なら、悲観の確率を上げる。売却で借金が減るなら、重荷が軽くなり、利益の質は上がる。
- 品質問題で工場が停止する、または行政処分を受けたら
- 悲観の確率を上げる。信用の回復に年単位がかかり、利益率が数年にわたり落ちる。
- 配当や自社株買いを大きく増やす方針が出たら
- 借金が先に減らないなら、財務の余裕が削られる。還元の増額と借金の返済の順番を見る。
見ておくもの
- 営業利益率(会社の計画は 2027 年 3 月期 10% 台、2028 年 3 月期 11% 近く)と薬価改定の影響
- 限定出荷の品目数(2025 年 10 月末 129 品目)と生産能力(来期 175 億錠)
- 同業他社との協業の発表
- 三生医薬の売上と利益、追加の減損の有無
- 純有利子負債と自己資本比率(会社の目標は 50% 以上)
倍率と資本コストの決め方
1 錠の売上(名目)は、薬価の毎年の下げを新製品と品目構成が補う形で、中立は横ばいとした。物価の 1.34 倍とは違うので理由を story に書いた。同じ領域の 4887 と物差しをそろえ、確率の配分(8/17/38/27/10)も同じにした。違うのは、純有利子負債が自己資本の 0.94 倍あって k に +0.5% 足した点と、三生医薬の失敗の分を別セグメントで見た点。倍率は k 8.75% と事業の ROE から式で決め、今の株価や PER、過去の株価の水準は根拠にしていない。中立の ROE は 7% 台で k に届かないので、PER は上限 1÷k の 7.5 割に置いた。純利益は 2026 年 3 月期の一過性(減損 147 億円、デリバティブ評価益 53 億円)を除いてならした値から出した。リースは店舗を借りる事業ではなく影響は小さいが、新リース会計基準で営業利益と負債の形が変わる点は、今と同じ形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→12.56 倍・やや楽観 PER 12.1→12.13 倍・中立 PER 10.3→11.8 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。