結論
クオリプスは、大阪大学発の「リハート」で、iPS細胞から作った再生医療製品として世界で初めて承認を得た会社だ。筆者の結論は、国内の売上だけでは今の時価総額を支えられず、海外と後続品の成功をほぼ満額で織り込んだ値段だ、というものだ。
リハートは、心臓の表面に貼る心筋細胞のシートである。承認は2026年3月、条件・期限付きだった。保険に載ったのは9月で、1製品の価格は5,320万円だ。対象は、薬も手術も効かなくなった虚血性心筋症の重症心不全の人である。会社が見込むピークの患者は年96人。売上にして約50億円にとどまる。
赤字は続いている。収入の柱だった大手製薬との共同研究費は、承認とともに終わった。9月には産業革新投資機構系のファンドから約40億円を調達し、当面の資金は確保した。ただ、売上が費用を上回るのは数年先だ。
分かれ目は三つある。本承認を取れるか。米国やアジアで売る相手が見つかるか。カテーテルなど次の製品が育つか。三つとも当たれば、会社は数千億円の規模になりうる。だが当たるのはせいぜい一つだと筆者は見る。確率を掛けた10年後の価値は、今の時価総額を大きく下回る。総合では「割高」だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の問題は事業の質ではなく、払う値段にある。
株主が自由に使える利益、つまりオーナー利益は今マイナスだ。年に10億円から15億円を、開発と販売の立ち上げに使っている。リハートの国内のピーク売上は年50億円ほどで、製造と販売の費用を引けば、利益は数億円から20億円台だ。
事業そのものは面白い。世界で初めて承認を通した実績があり、工場を自前で持つ。10年後も存在する可能性は高い。ただ、10年後の姿は読みにくい。効果の根拠は8例で、先に同じ道を進んだ製品が市場から退いた例もある。
筆者が持ち続けたいと思うのは、安全域のある会社だ。ここでは、成功した場合の上振れだけを織り込んだ値段が付いている。失敗した場合に残るのは、現金と工場と特許だ。値段と価値の間に、余裕がない。
資本の使い方は、いまのところ妥当だ。調達は新株と社債に分け、希薄化を抑えた。研究費の使い道は絞られている。ただ、この会社は利益を出して株主に返す段階に、まだ入っていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、リハートの販売ひとつだ。ほかに、細胞を作る技術を他社に貸す受託製造(CDMO)がある。
リハートは、他人のiPS細胞から作った心筋細胞をシート状にしたものだ。胸を小さく開き、傷んだ心臓の表面に貼る。シートが出す物質が血管を呼び込み、心臓の働きを助けると考えられている。手術は約50分で終わる。シートは常温に近い温度で運べ、約2日は形を保つ。
作るのは、大阪府箕面市の自社工場「CLiC-1」だ。がん化のおそれがある未分化の細胞を取り除く技術は、大阪大学から使用許諾を受けた特許で、10か国以上で取得されている。製造を自前で持つことが、この会社の土台である。
承認の根拠は、医師主導の治験8例にすぎない。条件が付き、市販後に75例を集め、7年以内に本承認を申請する。販売の体制は、移植できる病院を増やしながら整えている段階だ。第一三共は2017年に出資し、承認の取得まで共同研究を担ってきたが、その契約は2026年3月末で終わった。
受託製造の売上は2億円ほどだ。2028年1月には、経産省の補助金を使った大量製造の施設が動く計画がある。後続には、第2世代のシート、カテーテルで注入する治療、再生を促す低分子の薬がある。いずれも開発の入口にいる。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の堀(他社がまねできない強み)を「先行はしたが、まだ薄い」と見る。
強みは三つある。承認まで通した実績。未分化の細胞を除く特許と自前の工場。心臓外科で40年近い経験を持つ創業者の澤芳樹氏と、病院との関係だ。後から追う会社は、同じ道を歩くのに数年かかる。
弱みは、根拠の薄さだ。承認の元になった治験は8例で、比べる群がない。報道では、主要な指標の心機能が5%以上よくなったのは2例だった。市販後の75例で効果が確かめられなければ、本承認は取れない。
先例も重い。テルモの筋芽細胞シートは、同じ条件・期限付きの承認を得たが、販売は終わった。保険が付いても、使う医師が増えるとは限らない。国内で追うHeartseedは、ノボ ノルディスクが全世界の権利を持ち、国内の申請を2026年中に予定している。
資本効率を語る段階にはまだない。2026年3月期の自己資本利益率はマイナス22%だった。値段は公定価格で、会社が決められない。単一の製品と技術に偏る点も、堀を薄くしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
心不全は、日本で約130万人の患者がいる大きな病気だ。ただし、リハートが狙う席は狭い。
治療は段階を踏む。まず薬、次にペースメーカーの類、さらに人工心臓。その先に心臓移植がある。移植の登録者は790人、年の移植は117件だ。リハートは、薬も手術も効かないが、移植や人工心臓までは進んでいない人を受け止める。階段でいえば、中ほどに置かれた製品だ。
患者の数は、段階を絞って推し量る。中等度から重い心不全の人は約32万人。そのうち虚血性で、標準治療が効かず、胸を開く手術に耐えられる人は、さらに限られる。会社は国内のピークを年96人と見込む。移植が年に百件規模であることを考えれば、桁は妥当だ。
海外は大きいが、遠い。米国の心不全は約600万人。会社はインドネシアとオーストラリアで交渉中だが、米国は大学との共同研究の段階で、治験の申請はこれからだ。
競争は、同じiPS細胞の心筋を使う陣営と、別の道の治療にまたがる。国内のHeartseedは、シートでなく細胞の球を心臓の筋肉に直接入れる。中国や米国でも、貼る方式の臨床試験が進む。値段は医療機器に準じて決まり、定期的に見直される。物価が上がっても自動では上がらない。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、還元ではなく資金調達だ。配当は出しておらず、当面も出せない。
2026年9月には、産業革新投資機構系のファンドに新株と社債を割り当て、約40億円を調達した。新株は発行済み株式の約7.5%にあたる。社債は10億円で、返済は2036年だ。使い道は、第2世代のシート、カテーテル、再生を促す薬の開発である。
この調達で、赤字を数年は賄える。ただし、売上が費用を上回るまで、増資や借入の選択肢は残る。上場から3年ほどの小さな会社で、資金の出し手に頼る構造は変わらない。
買収の動きは今のところない。第一三共は2017年に出資し、全世界の販売の選択権を持った。大手が買い手になる可能性は消えていない。ただし、本承認の前に高い値段で買う会社は考えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
リハートは第1号にすぎず、本当の価値は、iPS細胞から作った心筋を臓器の治療に使う方法そのものにある。承認で、安全性の記録、製造法、当局との手順がそろった。後に続く会社は、この道をもう一度作り直さなければならない。
国内のピークは年96人と会社は言うが、これは出発点だ。市販後の75例で効果がはっきりすれば、本承認で価格が上がり、使う医師と病院が増える。条件付き承認の価格は、営業利益を半分だけ乗せた値だった。本承認で戻る分は、そのまま利益になる。
海外が本命だ。米国の心不全は約600万人、日本の約5倍である。第2世代のシートは、大手と組めば製造をクオリプスの工場に任せてもらえる。カテーテルで細胞を入れる治療が育てば、胸を開かずに済む患者に広がる。
資金の面でも、産業革新投資機構系のファンドが約40億円を出した。公的な資金の後ろ盾が付いた意味は大きい。承認を通した会社が、再生医療の分野で標準を握る。いま付いた値段は、その入り口にすぎない。
慎重な見方
承認の根拠は8例で、比べる群がない。報道では、主要な心機能の指標が5%以上よくなったのは2例だった。この水準で付いた承認は、条件付きでしかない。市販後の75例で効果が出なければ、本承認は取れない。
先例がある。テルモの筋芽細胞シートも条件・期限付きで承認され、保険に載った。しかし医師は使わず、販売は終わった。心臓の手術は、患者にも医師にも負担が大きい。保険が付いたからといって、使う人が増えるとは限らない。
国内の売上は、うまくいっても年50億円が上限だ。製造と販売の費用を引けば、利益は数億円から20億円台になる。いまの時価総額は500億円を超える。国内だけで、この値段は説明できない。
海外は、まだ交渉の段階だ。米国は大学との共同研究にすぎず、治験の申請はこれからである。Heartseedは、ノボ ノルディスクという世界的な製薬会社を後ろ盾にしている。新株の発行で、株の価値はすでに薄まった。成功を前提にした値段は、失敗したときの傷が深い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。国内の数字は、会社自身の見込みで測れる。ピークの売上は約50億円で、そこから利益を出せる会社の規模は小さい。いまの値段を支えるには、海外と後続品の両方が当たる必要がある。
確率は、中立と悲観に寄せた。本承認が取れない筋書きを26%、国内で小さく止まる筋書きを32%に置いた。強気の筋書きは、承認と保険がついた分だけ現実味が増した。だから楽観の4%とやや楽観の11%は、承認前の水準より少し上げている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 10,242 円846 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 780 円64 億円)。 今の値に割り戻すと 5,392 円445 億円、今との差 −15.4%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 4% | 169,239 円1.40 兆円 | 18,163 円1,500 億円 | +2,841.9% | +40.2% | 7,496 円619 億円 |
| やや楽観 | 11% | 23,510 円1,942 億円 | 484 円40 億円 | +276.7% | +14.2% | 2,639 円218 億円 |
| 中立 | 27% | 2,462 円203 億円 | 0 円0 億円 | −61.4% | −9.1% | 665 円55 億円 |
| やや悲観 | 32% | 545 円45 億円 | 0 円0 億円 | −91.4% | −21.8% | 174 円14 億円 |
| 悲観 | 26% | 182 円15 億円 | 0 円0 億円 | −97.1% | −29.9% | 47 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,242 円846 億円 | 780 円64 億円 | +73.0% | +5.6% | 11,022 円910 億円 |
今の株価時価総額 6,370 円526 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 4% 楽観:本承認を通し、米国とアジアで標準治療の一つになる 利益 688 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 169,239 円1.40 兆円
市販後の75例で、心機能の改善と入院の減少がはっきり出て、本承認が通る。保険の価格も上がる。国内は、重症の虚血性心筋症にとどまらず、症状が軽い段階まで使われ、年の患者は300人になる。
海外は、アジアに続いて米国の治験が進み、大手が販売を担う。大手は製造をクオリプスの工場に頼る。カテーテルで注入する治療は、心筋梗塞の直後にも使える方法として評価され、導出の収入が入る。
会社は10年目に大きな黒字になる。研究費をかけても利益が残り、配当と自社株買いにも手が届く。世界のiPS心筋の分野で、最初に商業化した会社が標準になった、という姿だ。
- リハート(国内の重症心不全):数量 300(年間の移植患者数(人))× 価格 0.80(1人あたりの会社の売上(億円・名目)。保険の償還価格は5,320万円)→ 売上 240 億円・営業利益 132 億円。国内は年300人×1人あたり0.8億円。本承認で価格が上がり、適応も広がる。営業利益率55%
- 海外(アジア・米国の提携先):数量 4,000(提携先での年間の移植患者数(人))× 価格 0.28(1人あたりの会社の受取額(億円・名目)。国内価格の約4割と仮定)→ 売上 1,120 億円・営業利益 762 億円。提携先での年間4,000人×受取0.28億円。米国とアジア。営業利益率68%
- 受託製造(CDMO):数量 1.0(受託収入の束(1))× 価格 45(年間の受託収入(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 14 億円。大量製造の受託が育ち年45億円。営業利益率30%
- 後続品の研究と導出(第2世代・カテーテル・再生促進剤):数量 1.0(導出収入の束(1))× 価格 150(年間の導出収入(億円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 105 億円。後続品の導出収入が年150億円。研究費45億円を引いて営業利益105億円
倍率:事業の純利益 688 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 16.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍。全体の PER 20.33 倍、時価総額 13,977 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本承認、海外の大型提携、後続品の導出がそろう筋書き。一つ当たるだけでも難しく、三つ重なるのは数%と見て4%に置いた。
やや楽観 11% やや楽観:国内で定着し、アジアの提携が広がる 利益 101 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 23,510 円1,942 億円
本承認が通り、国内では年150人が使う。移植できる病院は100を超え、使い方が医師の間で定まる。価格は本承認で営業利益の上乗せが戻り、物価並みに上がる。
海外は、インドネシアやオーストラリアに続いて数カ国で販売が始まる。提携先での患者は年600人になる。第2世代のシートかカテーテル治療のどちらか一つが、国内外の企業に導出される。
会社は大きな黒字ではないが、はっきり利益が出る。研究費を保ちつつ、小さな配当を始められる。
10年後の姿は、安定した中堅の再生医療会社だ。心臓の分野で先行した実績を足がかりに、受託製造も年25億円まで育つ。ただし米国の大型提携には届かず、会社の価値は国内とアジアの安定した利益で測られる。
- リハート(国内の重症心不全):数量 150(年間の移植患者数(人))× 価格 0.70(1人あたりの会社の売上(億円・名目)。保険の償還価格は5,320万円)→ 売上 105 億円・営業利益 58 億円。国内は年150人×1人あたり0.7億円。適応が少し広がる。営業利益率55%
- 海外(アジア・米国の提携先):数量 600(提携先での年間の移植患者数(人))× 価格 0.22(1人あたりの会社の受取額(億円・名目)。国内価格の約4割と仮定)→ 売上 132 億円・営業利益 82 億円。提携先での年間600人×受取0.22億円。アジアが中心。営業利益率62%
- 受託製造(CDMO):数量 1.0(受託収入の束(1))× 価格 25(年間の受託収入(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 8 億円。受託製造が年25億円。営業利益率30%
- 後続品の研究と導出(第2世代・カテーテル・再生促進剤):数量 1.0(導出収入の束(1))× 価格 40(年間の導出収入(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。後続品の導出収入が年40億円、研究費35億円を引いて営業利益5億円
倍率:事業の純利益 101 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.3 倍、時価総額 1,942 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本承認が通り、アジアでの販売が広がるが、米国の大型提携までは届かない筋書き。国内の定着とアジアの提携は、どちらも筋が見えているため11%に置いた。
中立 27% 中立:国内で小さく定着し、海外は数カ国にとどまる 利益 12 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 2,462 円203 億円
国内は年70人が使う。会社の見込み96人には届かないが、重症の人の最後の選択肢として定着する。本承認は条件を満たして取れる。価格は定期の見直しで削られ、10年で1.15倍にとどまる。
海外はアジアの数カ国で販売が始まる。提携先の患者は年100人だ。米国は大学との共同研究の段階を出ない。カテーテルなど後続は、小さな導出が一つ決まる程度である。
会社は10年目にようやく黒字になる。研究費は今の2倍近くに増え、利益の多くを開発に回す。配当は出さない。事業は堅実だが、成長株ではなくなる。リスクが小さくなったかわりに、夢も小さくなった姿だ。
- リハート(国内の重症心不全):数量 70.0(年間の移植患者数(人))× 価格 0.61(1人あたりの会社の売上(億円・名目)。保険の償還価格は5,320万円)→ 売上 43 億円・営業利益 21 億円。国内は年70人×1人あたり0.61億円。価格は10年で1.15倍。営業利益率50%
- 海外(アジア・米国の提携先):数量 100(提携先での年間の移植患者数(人))× 価格 0.20(1人あたりの会社の受取額(億円・名目)。国内価格の約4割と仮定)→ 売上 20 億円・営業利益 12 億円。提携先での年間100人×受取0.2億円。アジア数カ国。営業利益率60%
- 受託製造(CDMO):数量 1.0(受託収入の束(1))× 価格 15(年間の受託収入(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。受託製造が年15億円。営業利益率30%
- 後続品の研究と導出(第2世代・カテーテル・再生促進剤):数量 1.0(導出収入の束(1))× 価格 15(年間の導出収入(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 −10 億円。導出収入が年15億円、研究費25億円で営業利益−10億円
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.66 倍、時価総額 203 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本承認は取れ、国内で小さく黒字になるが、海外はアジアの数カ国にとどまる筋書き。承認と保険収載が済んだ分、承認前の確率の中心から少し上に直した27%。
やや悲観 32% やや悲観:国内の採用が伸びず、研究を絞って生き残る 利益 −4 億円 · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 545 円45 億円
国内の投与は年25人で止まる。効果の根拠が弱く、胸を開く手術を勧める医師が限られる。価格の見直しで単価も伸びない。本承認は取れるが、会社の取り分は小さい。
海外の提携は決まらず、米国の治験にも進めない。研究費は8億円まで絞り、カテーテルなど後続の開発は遅れる。赤字が続くため、途中で30億円ほどの増資をする。
会社は小さな国内製品と受託製造だけの会社になる。生き残るが、成長はしない。
新株の発行で、今の株主の持ち分は薄まる。ここでの時価総額は、増資で増えた株を含めた値だ。工場と承認の実績は残るため、事業を他社に売る道も開けている。
自己資本 36 億円は、今の 77 億円に純利益の合計(約 −71 億円)を足し、増資 30 億円を足した額(77 − 71 + 30 ≒ 36)。増資の分が流れより厚い理由である。
- リハート(国内の重症心不全):数量 25.0(年間の移植患者数(人))× 価格 0.55(1人あたりの会社の売上(億円・名目)。保険の償還価格は5,320万円)→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。国内は年25人×1人あたり0.55億円。固定費が重く営業利益率30%
- 海外(アジア・米国の提携先):数量 15.0(提携先での年間の移植患者数(人))× 価格 0.18(1人あたりの会社の受取額(億円・名目)。国内価格の約4割と仮定)→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。海外は年15人×受取0.18億円。提携は小さい。営業利益率30%
- 受託製造(CDMO):数量 1.0(受託収入の束(1))× 価格 8.00(年間の受託収入(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。受託製造が年8億円。営業利益率20%
- 後続品の研究と導出(第2世代・カテーテル・再生促進剤):数量 1.0(導出収入の束(1))× 価格 4.00(年間の導出収入(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 −4 億円。導出はほぼなく年4億円。研究費を8億円まで絞り営業利益−4億円
倍率:稼ぐ力はなく、価値は現金と、売れる資産の税後に支えられる床で置く。床の倍率は今の自己資本に掛けた(積み上げた利益には掛けない)。市場の倍率からは置いていない。
確率:本承認は取れても、医師の採用が伸びず、海外の提携が決まらない筋書き。根拠の試験が小さく、先例のテルモのシートも退いているため、確率の最大の山に近い32%に置いた。
悲観 26% 悲観:本承認が取れず、期限で販売を終える 利益 −6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 182 円15 億円
市販後の調査で、効果が確かめられない。心機能の改善が出る人は一部にとどまり、医師が使うのを控える。本承認の申請は通らず、期限の7年で販売を終える。
会社は、研究費を大きく絞る。後続の開発は止まり、人員も減らす。増資を重ねて延命するが、株の価値は大きく薄まる。残るのは、受託製造と、工場・特許・承認の実績だ。
10年後の姿は、小さな受託会社である。再生医療の分野で、最初の商品化に成功したが、事業としては続かなかった例になる。
大手が買う場合も、価格は工場と特許の値打ちにとどまる。成功の期待で付いた値段は、ほとんど消える。ここでの時価総額は、増資後の株を含めた値だ。
- リハート(国内の重症心不全):数量 8.0(年間の移植患者数(人))× 価格 0.50(1人あたりの会社の売上(億円・名目)。保険の償還価格は5,320万円)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。国内は年8人×1人あたり0.5億円。ほぼ販売が止まる
- 海外(アジア・米国の提携先):数量 0.0(提携先での年間の移植患者数(人))× 価格 0.18(1人あたりの会社の受取額(億円・名目)。国内価格の約4割と仮定)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。海外の販売はなし
- 受託製造(CDMO):数量 1.0(受託収入の束(1))× 価格 5.00(年間の受託収入(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。受託製造が年5億円。営業利益率20%
- 後続品の研究と導出(第2世代・カテーテル・再生促進剤):数量 1.0(導出収入の束(1))× 価格 1.00(年間の導出収入(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 −3 億円。導出収入はほぼなし。研究費を4億円まで絞る
倍率:稼ぐ力はなく、価値は残る現金と売れる資産の税後に支えられる床で置く。床の倍率は今の自己資本に掛けた(積み上げた利益には掛けない)。市場の倍率からは置いていない。
確率:市販後の75例で効果が確かめられず、期限の7年で販売を終える筋書き。根拠の試験が8例しかなく、先行した同種の製品が退いた例もあるため、4社の中で高めの26%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リハート(国内の重症心不全)
薬も手術も効かない虚血性心筋症の重症心不全に、心臓の表面へ貼る心筋細胞のシート。2026年9月に保険収載。
| 数量年間の移植患者数(人) | 価格1人あたりの会社の売上(億円・名目)。保険の償還価格は5,320万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.53 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.61 | 43 | 21 |
取り方:2026年3月期は未発売で0。会社は国内ピークを年96人と見込み、価格5,320万円と掛けると約50億円。2027年3月期の売上予想5.4億円は、10人前後の移植に当たる。
海外(アジア・米国の提携先)
リハートと第2世代のシートの海外販売。会社の収入は提携先への供給とロイヤリティ。インドネシア・オーストラリアは交渉中。
| 数量提携先での年間の移植患者数(人) | 価格1人あたりの会社の受取額(億円・名目)。国内価格の約4割と仮定 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.20 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.20 | 20 | 12 |
取り方:海外の販売はまだない。10年先は提携先の患者数に受取額を掛けて置く。受取額は、国内価格の約4割と推定した(根拠は開示がなく推定)。
受託製造(CDMO)
自社工場CLiC-1で、他社の再生医療製品の開発と製造を請け負う。経産省の補助金で大量製造の施設を整備中。
| 数量受託収入の束(1) | 価格年間の受託収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 2.12 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 15 | 15 | 5 |
取り方:2026年3月期の売上は約2.1億円で、ほとんどが受託製造。売上総利益ベース(原価0.8億円を引いた約1.3億円)で置いた。販売費・一般管理費は調整に置く。
後続品の研究と導出(第2世代・カテーテル・再生促進剤)
海外向けの第2世代シート、朝日インテックと開発するカテーテル治療、体内再生因子誘導剤。導出の一時金・ロイヤリティを収入に置き、研究費をここに入れる。
| 数量導出収入の束(1) | 価格年間の導出収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.01 | 0 | −6 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 15 | 15 | −10 |
取り方:導出収入はまだない。研究開発費の総額は約9.7億円で、第一三共から受けた共同研究費3.4億円を引いた6.34億円をここに置いた。この受入は承認で終わり、2027年3月期からは研究費が全額負担になる。
リスクと懸念
効果の根拠が薄い
承認の根拠は医師主導の治験8例で、比べる群がない。報道では、心機能の指標が5%以上よくなったのは2例だった。市販後の75例で効果が確かめられなければ、本承認は取れず、7年の期限で販売を終える。
医師が使わないかもしれない
胸を開く手術が要り、価格は1製品5,320万円と重い。テルモの筋芽細胞シートは保険に載ったが、販売は終わった。移植できる病院の数と、一つの病院あたりの使用が伸びなければ、国内の売上は小さいままだ。
追加の資金が要る
9月に約40億円を調達したが、研究費と販売の立ち上げで赤字は数年続く。黒字化が遅れれば、再び増資か借入が要る。新株は発行済み株式を約7.5%増やした。株主の持ち分は、今後も薄まりうる。
価格は国が決める
リハートの価格は、医療機器に準じて決まる公定価格だ。条件付き承認の間は、営業利益の上乗せが半分に抑えられている。定期の見直しで価格が下がれば、物価が上がっても利益は増えない。
競合が先に追いつく
国内のHeartseedは、細胞を直接心筋に入れる方式で、2026年中の申請を目指す。後ろ盾はノボ ノルディスクだ。中国や米国でも貼る方式の試験が進む。先行の利点は、数年で薄まる。
製造が一つの工場に偏る
リハートは、箕面の工場「CLiC-1」で作る。需要が急に増えたり、品質の問題が出たりすれば、供給が止まりうる。大量製造の施設は2028年1月の計画で、それまでは一つの工場が頼りだ。
海外と後続品は夢の段階
米国は大学との共同研究、アジアは交渉中である。カテーテルや再生促進剤は、動物試験の段階だ。いまの値段が織り込む上振れの大半は、これから証明されるものばかりだ。
今後の分かれ目
- 市販後の調査で、移植した患者の心機能の改善が確かめられ、本承認の見通しが立つ
- 中立の確率を厚くし、悲観を薄くする。ただし国内の売上は年50億円規模で、会社の価値は海外に左右される。
- 2027年のうちに、インドネシアやオーストラリア、あるいは米国の大手と販売の契約が決まる
- 海外の数量の見通しを上げ、やや楽観の確率を厚くする。契約一時金が入れば、資金の心配もやわらぐ。
- 発売後1年で、移植できる病院が数十に増えず、使用が年20人を下回る
- 国内の見通しをやや悲観に寄せる。テルモの前例に近づくとみて、悲観の確率を厚くする。
- 市販後の調査で、不整脈や重い副作用の報告が出る
- 医師が使うのを控え、国内の売上が小さくなる。悲観を厚くし、増資の必要も高まる。
- Heartseedが国内で承認され、価格が付く
- 競争が始まる。直接比べる試験の結果によっては、クオリプスのシェアが削られる。中立の患者数を引き下げる。
- 後続のカテーテル治療が大動物で効果を示し、米国での治験の申請に進む
- 後続の導出収入の見通しが上がり、楽観の筋に近づく。研究費は増えるため、黒字化は遅れうる。
見ておくもの
- 発売後の移植件数と、移植できる病院の数(目安は年20件)
- 市販後75例の中間の結果と、本承認の申請時期
- 海外の販売契約の有無と、契約一時金・ロイヤリティの率
- 四半期ごとの営業赤字と手元の現金(追加の資金調達の必要性)
- Heartseedの国内申請・承認の時期と、価格
倍率と資本コストの決め方
国内は、会社が見込むピーク患者数(年96人)を出発点に、中立では70人に置き、価格は公定価格として10年で1.15倍にとどめた。海外と後続品は、提携先の患者数と受取額を推定で積んだ。倍率は、事業のROE・k・g・堀の強さから式で決め、今・過去・同業の倍率は見ていない。10年後の結果が今の時価総額を大きく下回るのは、国内の稼ぎが小さく、残りは当たるかどうかの確率で割り引かれるためだ。今の株価が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。リースはなく、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17→20.33 倍・やや楽観 PER 14.5→19.3 倍・中立 PER 12.5→16.66 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。