結論
ヘリオスは、骨髄由来幹細胞とiPS細胞を使った再生医薬品の実用化を目指す創薬企業である。筆者の結論は「割高」だ。主力のARDS治療薬HLCM051には世界市場を開く可能性があるが、まだ承認を取得しておらず、現在の株主が将来の成功から受け取れる取り分にも大きな不確実性がある。
事業の中心は、急性呼吸窮迫症候群、略してARDSと呼ばれる重い肺障害の治療薬である。国内では条件及び期限付き承認の申請準備を進め、海外では第3相試験REVIVE-ARDSが成功するかどうかが分かれ目になる。国内先行承認と米国での本格的な承認は別の出来事であり、前者が実現しただけで後者の巨大市場を獲得したことにはならない。過去の脳梗塞試験では主要評価項目の達成に至らなかった経験もあり、細胞の作用機序への期待と、臨床上の有効性の証明は区別すべきだ。
会社資料によれば、米国では年間約26万人がARDSを発症し、価格と治療適格性を考慮した潜在的な投与対象は年間約2万人と推定されている。しかし、これは会社が外部調査を基に示す市場機会であって、確定した販売数量ではない。2026年10月には培養上清を韓国のJENECELLに1億4,400万円分初出荷した。実際の売上が生まれた点は評価できるものの、継続発注や利益率はまだ証明されていない。
2025年12月期の売上は約1億円、営業損失は33億円超だった。2026年6月末には増資で現金が増えたが、同年上期だけでも営業活動による現金支出は約25億円に達する。手元資金は余剰資産というより、承認と製造立ち上げまで事業をつなぐ命綱である。さらに新株予約権と将来の増資が既存株主の取り分を薄めうる。
10年後の五つの筋書きから求める現在の本質価値は、既存株主に帰属する分で約123億円となり、基準時価総額約363億円を約66%下回る。米国展開まで成功すれば企業価値は大きく伸びるが、その結果に至るまでの試験、承認、製造、資金調達の連続成功を、今の時点で当然視することはできない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、研究成果そのものよりも、その研究成果から生まれる現金を誰がどれだけ受け取れるかが本質である。ヘリオスには、重症患者を救える治療薬を生み出す可能性がある。成功すれば社会的価値は非常に大きい。しかし、社会的価値が大きいという理由だけでは、今日の株主が高い経済的利益を得られるとは限らない。
まず確かめたいのは、HLCM051が比較試験で明確な有効性を示し、承認後も同じ品質で製造できるかどうかだ。承認前の特許や細胞株は、将来の独占利益を保証しない。仮に承認されても、病院への普及には時間がかかる。高額な治療価格を維持できるか、患者の選別によって市場がどこまで狭くなるかも未確定だ。製造能力や技術への投資が資本コストを超える収益につながる証拠は、販売実績が積み上がって初めて得られる。
次に資本配分を見る。2014年以降の長期にわたり営業赤字が続き、外部資金で研究をつないできた。研究開発企業にとって赤字自体は異常ではないが、株主にとって重要なのは一株当たりの価値である。大きな市場に参入して会社全体の利益が増えても、その前に株数が何倍にも増えていれば旧株主の成果は小さくなる。2026年の現金増加を見て割安と判断しないのは、この現金が今後の試験と製造に使われる性格を持つからだ。
ここで求める安全域は、株価が下がったという事実ではなく、悲観的な開発結果でも現存株主に残る経済価値である。ヘリオスの場合、赤字が続くと資産の床も短期間で減るため、その安全域は厚くない。一方、米国で成功した場合の上振れは無視できない。したがって、事業機会は高く評価しつつ、現時点では成功確率と資金調達条件の双方に大きな余裕を求めるのが妥当だ。
筆者は、最も大きな価値の変化は株価の材料発表ではなく、検証試験の結果、承認、継続出荷、資本効率の改善という順番で起きると考える。その過程を通じて初めて、期待される技術が長く利益を生む事業へ変わる。
何で稼ぐ会社か
ヘリオスが売ろうとしているものは、患者に投与する生きた細胞を使った医薬品である。主力のHLCM051は骨髄由来の体性幹細胞を培養した製品で、炎症や免疫反応を調節する働きを狙う。重症のARDS患者が人工呼吸器から離脱するまでの時間を短くできれば、病院にとって医療上の価値が生まれる。ただし、その価値を薬価と販売数量に変えるには、規制当局が認める臨床データと安定した商用製造が必要だ。
国内では、肺炎に伴うARDSを対象とするONE-BRIDGE試験などの結果を基に、条件及び期限付き承認の申請準備を進めている。海外ではREVIVE-ARDSという無作為化比較試験を進め、最大550人を対象に人工呼吸器を使用しない日数などを検証する計画だ。国内の承認、米国の承認、保険償還、実際の処方の広がりは、それぞれ別の壁である。国内承認が先行した場合にも、販売開始後の検証試験や安全性監視の負担は残る。
もう一つの収益候補は細胞培養上清である。細胞を培養した後の液体に含まれる成分を、化粧品などの原材料として供給する事業だ。2026年10月のJENECELL向け初回出荷は1億4,400万円で、研究開発型の会社が具体的な製品販売へ踏み出した事実として意味がある。一方、これは医薬品としての承認に基づく治療売上ではなく、一度の出荷額を毎年繰り返せる保証もない。
さらに、細胞を大量に培養する技術を他社向けの製造受託に転用する構想がある。神戸の製造基盤や培養技術は、HLCM051を自社販売できなかった場合にも一定の用途を持ちうる。ただし、GMP対応設備は建設すれば受注が入るものではなく、顧客ごとの品質確認、工程移管、原価低減が求められる。建設能力と受注数量を混同してはいけない。
iPS細胞分野では、免疫拒絶を抑えるユニバーサルドナーセル技術や、がんを攻撃するeNK細胞の研究を進めている。eNK細胞の開発はAkatsuki Therapeuticsを中心とした体制へ移し、ヘリオスは受託研究や将来の技術収入を得る構想に転換した。経済的な取り分は契約に左右され、研究成果がそのままヘリオスの販売利益になるわけではない。
会社の開示上の報告セグメントは一つの「医薬品事業」である。この分析では経済性を確かめるため、国内ARDS、米国ARDS、培養上清、製造受託、技術契約という五つの収益源に分けた。いずれも会社が公表する独立した会計セグメントではない。主力二市場の数量は潜在患者数と普及率、価格は承認後の実現売上で考え、単なる全社売上の按分にはしていない。
優良さと弱いところ
現時点のヘリオスに、確立した収益上の堀があるとは言いにくい。細胞株、培養ノウハウ、知的財産、規制当局との協議経験には価値がある。しかし、競合がまねしにくい技術を持つことと、その技術を使って高い利益率を長く維持できることは同じではない。承認薬がない段階では、値上げ実績も継続顧客の維持率も確認できない。
それでも競争力の芽はある。骨髄由来細胞を大量に製造する工程と、海外試験まで進んだ臨床データの蓄積は、新規参入者が短期間で入手できるものではない。2024年に米国Athersysの資産を取得し、技術や製造関連の権利を集約したことは、成功時の取り分を広げる手段になりうる。ただし、取得元が経営破綻した企業だった事実は、技術の潜在価値と事業化の難しさが同時に存在することを示している。
再投資の成績は厳しい。2014年以降、営業赤字が続き、2025年までの期間に株式発行による資金調達を何度も行った。投下した資本から株主が継続的な利益を受け取った実績はまだない。研究が成功すれば増分投資収益率は高くなりうるが、それを現在の確かなROICとして評価するのは早い。
値決め力にも条件がある。希少な再生医薬品として差別化できれば高い薬価を得る可能性があるものの、日本の公定薬価や費用対効果の議論、米国保険者との交渉が実際の販売価格を決める。自社が希望する価格をそのまま受け取れる事業ではない。加えて、細胞医薬品の製造原価や品質管理費は大きく、販売数量が少ない間は工場の固定費が利益を圧迫する。
AIエージェント代替リスクの指定対象には基本的に当たらない。患者への細胞投与や細胞製造は、人月販売の事務作業や画面操作型ソフトウェアでは代替できないからだ。AIによる創薬研究や治験設計の効率化は起こりうるが、それは競合にも利用できるため、ヘリオスだけの堀とは数えない。10年先の強さは、臨床上の有効性、製造再現性、費用に見合う治療効果の三つで決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ARDSは感染症や肺炎などをきっかけに肺が重い炎症を起こし、人工呼吸器による管理が必要になることもある病態だ。患者や医療機関の負担は大きく、死亡率や人工呼吸器使用期間を改善する新しい治療への需要は存在する。既存の治療は呼吸管理と原因疾患への対応が中心であり、細胞医薬品が確かな効果を示せば新市場を開ける。ただし、医療上の必要性が大きいことと、薬剤が臨床試験で効くことは別の問題である。
会社の2026年8月の説明資料では、日本のARDS患者は年間約2万8,000人、米国は約26万2,000人と推定されている。米国では重症度や治療適格性を絞り、実際の価格とアクセス条件を考えた対象患者を約2万人とする市場調査が示されている。これはヘリオスの受注残でも確定需要でもない。国内の投与対象については、全年間発症者の約1割、2,800人程度という分析上の仮定を設け、承認適応や投与時期によって上下すると考える。
米国の市場資料には、1回当たり20万ドル前後という高額な治療価格を想定した試算がある。しかし、これは実際の償還価格ではない。人工呼吸器使用期間の短縮による医療費削減を臨床試験で立証できるか、病院が導入できるか、競合する支持療法や新薬より十分優れているかが、実現価格を左右する。2035年の米国売上は、想定患者数から治療薬を処方できる人数をさらに絞って考える。
日本ではJCRファーマのテムセルHS注など、別の疾患を対象とする間葉系幹細胞製品の商業化例がある。これは細胞医薬品の製造と承認が現実に可能なことを示すが、ARDSに対する競合薬の市場シェアを示すものではない。クオリプスや住友ファーマなども再生医療等製品の開発と事業化を進めており、技術基盤や製造人材の獲得では競合する。将来は大手製薬の抗炎症薬や免疫調節薬、他の細胞治療も競争相手になりうる。
臨床開発の最大の関門は、症例数の少ない探索的試験で示された傾向が、大規模な比較試験でも統計学的に確認されるかどうかだ。HLCM051の脳梗塞を対象としたTREASURE試験では主要評価項目の達成に至らなかった。ARDSの試験結果を一律に否定する事実ではないが、探索試験から承認可能な有効性へ進む難しさを示している。規制上の指定や当局との相談実績も、承認そのものを保証しない。
細胞医薬品の供給面では、培養工程の拡大と品質の一貫性が競争の中心になる。研究室で再現できた品質を商用設備で同じように作り続けるには、工程適格性確認と品質保証への継続投資が必要だ。神戸の製造拠点の整備や国内委託製造体制は前進だが、設備能力を市場シェアと取り違えるべきではない。医療需要の人口減少による縮小よりも、試験成否と承認適応の広狭が数量を大きく動かす業界である。
資本政策と M&A
過去10年の資本配分は、研究開発を継続するための外部資金調達が中心だった。2016年にAthersysから細胞治療技術を導入し、2018年にはARDS用途へ広げた。2024年には同社の破綻後に関連資産を取得して権利を集約した。研究開発の選択肢を広げた判断である一方、取得した技術から黒字を生むまでの時間は長く、投資額に見合うリターンはまだ実証されていない。
2025年12月期には配当がなく、2026年12月期も配当予想はゼロである。過去5年に確かな増配や継続的な自社株買いによる株数削減も確認できない。したがって、資金が余ったときに株主に戻ると無条件に考えることはできない。2026年3月公表の事業計画にはARDSの開発と細胞製造の方向性が示されているが、売上、営業利益、ROEの拘束的な中期目標と、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については数字の約束なしである。
2026年上期には新株発行を伴う資金調達が行われ、6月末の親会社所有者帰属持分は約87.7億円に増えた。しかし、その増加は既存事業が利益を生んだ結果ではない。上期の営業キャッシュフローは約25.1億円の支出で、製造設備投資も必要になる。現金を研究開発費として使う判断は事業の生存に必要かもしれないが、少数株主の立場からは新株発行の価格と条件を厳しく見る必要がある。
さらに、2026年までに発行された未行使新株予約権やストックオプションがあり、その一部には国内承認や売上達成などの行使条件が付く。成功時にも旧株主の利益は新しい株主や権利者と分け合う。失敗時には条件付き権利が失効しても、別の低価格増資による希薄化が起こりうる。Akatsukiへの研究開発移管は資金負担を抑える可能性がある反面、将来の成功利益をヘリオスが全額保持する構造ではない。
大手製薬へのライセンス供与や資本提携、買収は現実的な出口として考えられる。しかし、正式な公開買付けや上場廃止の決定を前提とする段階ではない。事業を売る場合には、現金対価の額、技術の権利範囲、外部投資家の持分、既存株主の希薄化を分けて評価する必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ARDSは医療上の必要性が非常に大きく、有効な細胞治療が実用化すれば世界的な新市場が開ける。ヘリオスは骨髄由来細胞の臨床データと培養技術を蓄積し、Athersysの資産取得によって関連権利を集約してきた。日本での条件及び期限付き承認を先に得られれば、実際の患者への投与から安全性と製造データを積み重ねられる。これは国外での交渉や病院への導入にも有利に働く。
米国の事業機会は特に大きい。会社が示す潜在投与対象は年間約2万人で、2035年にその2割へ到達するだけでも年4,000コースとなる。治療効果が人工呼吸器使用期間や死亡率に明確に表れれば、保険者が高額な治療を受け入れる根拠が生まれる。日本での販売数量も増えれば、共通する培養技術や品質管理を活用でき、製造固定費の負担は大きく軽くなる。
2026年10月の培養上清の商業出荷は小さいが、製薬承認より早く現金を得る仕組みを育てる手掛かりだ。JENECELL以外の企業にも出荷が広がれば、研究開発一本足の資金繰りから脱却しやすくなる。製造受託にも取引先が付き、工場の稼働率が上がれば、主力製品の製造原価も下がる。こうした補完的な収益が開発費を支え、追加増資を減らす効果は大きい。
外部資金が必要な段階でも、臨床データが良好であれば資本提携やライセンス契約の条件は改善する。Athersysから集めた権利は、承認後には希少な商業資産になりうる。大手製薬による買収も成功した技術を世界へ広げる選択肢の一つだ。長年の研究が報われる筋書きでは、現在の時価総額を何倍も上回る企業価値が成立する。
慎重な見方
一番大きな弱点は、価値の大半が未承認の一つの細胞治療に依存していることだ。ARDS患者が多いことは疑いないが、臨床試験でその患者に意味のある利益を示せなければ販売数量はゼロのままである。探索的試験の症例数は限られ、重症度別の良好な傾向を大規模な比較試験へそのまま延長することはできない。脳梗塞のTREASURE試験で主要評価項目を達成できなかった歴史も軽視できない。
国内の条件及び期限付き承認も、事前の期待どおりに得られるとは限らない。申請までには製造工程の確認が必要であり、承認後も検証試験が残る。米国では第3相試験の成功とFDAの審査が別途必要で、国内承認から機械的に米国売上を推定することはできない。米国の治療価格は希望額ではなく保険者との交渉結果で決まり、患者数も治療適格条件によって絞られる。
経営面の弱さは資金が減り続けることだ。2026年上期の売上は極めて小さく、営業活動だけで約25億円の現金を使った。いまの現金をすべて株主の資産価値に加算すると、試験、設備、品質保証に必要な将来支出を無視することになる。培養上清の初回売上も、その何十倍もの開発支出をすぐには埋められない。
加えて、希薄化の危険は成功時にも失敗時にもある。承認が近づけば新株予約権の行使が進み、失敗して調達条件が悪化すれば安い価格で大量の新株を発行することになりうる。技術を譲渡して会社全体が生き残っても、旧株主に十分な取り分が残るとは限らない。事業の持続可能性が実証される前に高い価値を認めることは、研究の成功可能性だけでなく、資本市場が長期間支え続けることまで先払いする判断になる。
どちらに重みを置いたか
医療上の潜在需要と会社の技術蓄積では強い見方に相応の根拠がある。しかし、企業価値から既存株主の価値へ橋を架けるには、承認、製造、普及、資金調達という複数の関門を越える必要がある。2025年まで続いた赤字、2026年上期の現金支出、脳梗塞試験の失敗、繰り返された増資を踏まえ、確率は上側26%に対し下側44%と慎重側に寄せた。これは臨床失敗を確定視するためではなく、成功しても途中の資金調達で取り分が薄まる会社固有の事情を重く見た結果である。中立には国内での限定的な実用化を含めたが、米国での承認や本格販売までは当然視していない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 230 円311 億円(+ 還元の換算額還元の合計 7 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 91 円123 億円、今との差 −65.0%、 期待の年率 −0.9%(資本コスト 10.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,752 円2,366 億円 | 62 円84 億円 | +595.1% | +22.1% | 181 円245 億円 |
| やや楽観 | 16% | 294 円397 億円 | 8 円10 億円 | +15.7% | +1.5% | 48 円65 億円 |
| 中立 | 30% | 22 円30 億円 | 0 円0 億円 | −91.5% | −21.8% | 7 円9 億円 |
| やや悲観 | 28% | 4 円6 億円 | 0 円0 億円 | −98.4% | −33.9% | 1 円2 億円 |
| 悲観 | 16% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.9% | −50.8% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 230 円311 億円 | 7 円10 億円 | −9.0% | −0.9% | 238 円321 億円 |
今の株価時価総額 261 円352 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 国内承認と米国第3相成功で世界展開 利益 299 億円 · PER 10.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,752 円2,366 億円
HLCM051が国内で正式な販売基盤を築き、米国でもREVIVE-ARDSの明確な有効性が認められる。病院での導入が進み、2035年には日本で年間1,500コース、米国で4,000コースの投与が実現する。米国の数量は会社の市場調査で示された潜在対象約2万人の2割に相当する。国内の対象を約2,800人と仮定すれば、日本でも半数を超える普及が必要であり、医療上の有効性が十分に評価される強い筋書きだ。
米国の実現売上は、一コース当たり2,400万円とする。会社が示す20万ドル相当の潜在価格より低く、保険償還の制約や商業提携による取り分を反映した金額である。国内でも投与体制が整い、製造規模の拡大で一コース当たりの原価が下がる。ARDSの販売から高い営業利益が生まれ、培養上清と外部製造受託が工場の稼働率をさらに高める。
大手製薬との提携や買収の申し出も起こりうるが、買収プレミアムを別途足さず、本業の利益として成功を評価する。研究開発は継続するものの、売上に対する固定費の負担は大きく下がる。新株予約権の行使は成功の結果として進み、既存株主の取り分は薄まるが、会社全体の利益拡大がそれを上回る。再生医療企業から世界市場を持つ製薬企業へ変わる10年である。
- 国内ARDS細胞治療:数量 1,500(国内で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.18(一治療コース当たりヘリオスに帰属する国内売上・億円)→ 売上 270 億円・営業利益 108 億円。国内年間発症者約28000人の5.4%、推定適格者約2800人の54%に投与。高薬価を維持し製造原価低減に成功。
- 米国ARDS細胞治療:数量 4,000(米国で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.24(一治療コース当たりヘリオスに帰属する米国売上・億円)→ 売上 960 億円・営業利益 365 億円。米国潜在適格者20000人の20%へ普及。実現単価2400万円は会社の提示する潜在価格3000万円より低い。
- 細胞培養上清の原材料販売:数量 35.0(年間の初回JENECELL発注相当の出荷ロット数)× 価格 1.80(初回発注相当ロット当たり売上・億円)→ 売上 63 億円・営業利益 16 億円。2026年初回受注額1.44億円相当を基準に35ロット、取引先の拡大と製造効率改善が必要。
- 細胞医薬品の製造受託:数量 110(年間の標準的な受託製造ロット相当数)× 価格 1.25(一受託製造ロット当たり売上・億円)→ 売上 138 億円・営業利益 33 億円。年間110標準ロット相当の外部受託を獲得。設備稼働率が上がるが品質保証費を控除。
- 技術契約・共同研究・既存のその他収益:数量 8.0(年間有償契約の標準契約相当件数)× 価格 4.00(標準契約相当一件当たり売上・億円)→ 売上 32 億円・営業利益 16 億円。年間8件の大型契約相当。研究用技術の契約一時金やマイルストンが複数実現し、外部持分の取り分は除く。
倍率:k10.25%、2035年のROEは299÷1000=29.9%。現時点の堀が弱いので資本コスト超過分の残存割合は1/3とし、RONIC=10.25%+(29.9%−10.25%)÷3=16.8%。長期名目成長率g1.5%から正当化PER=(1−0.015÷0.168)÷(0.1025−0.015)=10.41倍。市場での現在や過去の倍率は使っていない。
確率:国内の承認、米国での検証試験成功、商用製造の拡大、高額治療の保険償還、継続的な資金調達という複数の関門を連続して越える場合。医療需要は大きいが成功に必要な条件が多いため10%とする。
やや楽観 16% 国内定着と米国の限定的な販売成功 利益 58 億円 · PER 9.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 294 円397 億円
国内ではHLCM051の有効性と安全性が評価され、承認後の検証にも対応できる。2035年には年間1,000コースが投与され、医療機関への導入が進む。ただし、適格患者を広げる追加データは十分でなく、薬価改定もあるため、一回の治療から得る売上は上限まで伸びない。製造設備の稼働率が改善し、国内事業は利益の柱になる。
米国でも承認を得るが、対象患者は重症度や投与時期で絞られ、普及には時間がかかる。実際の投与は年間900コースにとどまり、大手との商業提携を通じた販売となる。ヘリオスの取り分は治療全体の潜在価格より低く、世界市場の一部を着実に獲得する姿になる。海外の販路を持つ企業との提携が成立しても、利益を分け合う必要がある。
培養上清ではJENECELLへの追加出荷が続き、複数の取引先へ広がる。外部製造受託も立ち上がり、ARDSの研究開発費を補える程度の現金を生む。iPS細胞技術は独立した大型事業にはならないが、共同研究や技術契約から少額の収入が残る。増資と新株予約権の行使によって既存株主の持分は薄まるものの、会社は黒字の医薬品事業として生き残る。
- 国内ARDS細胞治療:数量 1,000(国内で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.16(一治療コース当たりヘリオスに帰属する国内売上・億円)→ 売上 160 億円・営業利益 58 億円。国内対象約2800人の36%に投与。薬価改定と導入施設数の限界を反映。
- 米国ARDS細胞治療:数量 900(米国で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.19(一治療コース当たりヘリオスに帰属する米国売上・億円)→ 売上 171 億円・営業利益 60 億円。米国適格者約20000人の4.5%に投与。保険償還と販売提携の取り分で実現単価を低めに見る。
- 細胞培養上清の原材料販売:数量 20.0(年間の初回JENECELL発注相当の出荷ロット数)× 価格 1.70(初回発注相当ロット当たり売上・億円)→ 売上 34 億円・営業利益 9 億円。JENECELL以外にも顧客を獲得し、初回出荷額換算で年間20件。
- 細胞医薬品の製造受託:数量 70.0(年間の標準的な受託製造ロット相当数)× 価格 1.10(一受託製造ロット当たり売上・億円)→ 売上 77 億円・営業利益 17 億円。複数社から標準70ロット相当を受託するが、製造原価と監査費用が残る。
- 技術契約・共同研究・既存のその他収益:数量 6.0(年間有償契約の標準契約相当件数)× 価格 2.00(標準契約相当一件当たり売上・億円)→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。研究委託と技術契約で年6件相当の収益。大型マイルストンの連続計上は見込まない。
倍率:ROE=58.3÷460=12.67%、k10.25%、弱い堀で超過収益の残存割合1/3とするとRONICは約11.06%。長期名目成長率g1.5%から正当化PER=(1−0.015÷0.11058)÷(0.1025−0.015)=約9.88倍。利益の質を別の裁量的割引で二重に引かない。
確率:国内販売に加えて海外でも販売が始まるが、薬価や投与施設の制約によって普及が限定される場合。世界市場への足掛かりは現実的な選択肢だが、米国の承認という独立した高い壁があるため16%に抑える。
中立 30% 国内で限定的に事業化、米国は収益化に至らず 利益 5 億円 · PER 9.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 22 円30 億円
日本ではHLCM051が一定の有効性を示し、規制当局との協議を経て限定的な適応で販売される。患者選別と投与時期の制約が残り、2035年の治療件数は年間650コースにとどまる。推定適格患者約2,800人の4分の1弱である。医薬品としての実現価格は1コース当たり1,400万円で、物価上昇をそのまま上乗せすることはできない。導入施設が限られるため、国内事業だけで世界的な製薬企業へ変わるわけではない。
米国では、試験結果が追加検証を要するか、承認と保険償還の条件が整わず、2035年時点の販売売上をゼロとする。海外企業への技術売却の可能性はあるが、具体的に保証された対価ではないため織り込まない。かつて注力した脳梗塞やiPS細胞の研究も、独立した大きな製品収入には結びつかず、少額の共同研究契約が残る。
培養上清はJENECELLでの初回販売を足掛かりに複数の顧客を得るが、年間の売上は16億円程度にとどまる。細胞製造受託も少数の顧客の工程移管に成功し、開発費の一部を回収する。会社はようやく営業黒字に達するものの、過去の研究投資を取り戻すほどの資本効率には届かない。国内承認までの赤字と設備投資を賄うための増資が必要となり、既存株主の持分は現在より大きく薄まっている。
- 国内ARDS細胞治療:数量 650(国内で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.14(一治療コース当たりヘリオスに帰属する国内売上・億円)→ 売上 91 億円・営業利益 34 億円。国内の推定適格者約2800人の23%に投与。日本の薬価制度により物価3%を全額転嫁できない。
- 米国ARDS細胞治療:数量 0.0(米国で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.17(一治療コース当たりヘリオスに帰属する米国売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。米国では2035年時点で承認・償還・商業化の条件がそろわず、売上はゼロ。単価は販売可能になった場合の参考値。
- 細胞培養上清の原材料販売:数量 10.0(年間の初回JENECELL発注相当の出荷ロット数)× 価格 1.60(初回発注相当ロット当たり売上・億円)→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。初回発注額相当の年間10件まで拡大するが、大口顧客への価格交渉力は限定的。
- 細胞医薬品の製造受託:数量 20.0(年間の標準的な受託製造ロット相当数)× 価格 1.00(一受託製造ロット当たり売上・億円)→ 売上 20 億円・営業利益 4 億円。標準20ロット相当の商用受託を獲得。工程監査と設備維持の費用を差し引く。
- 技術契約・共同研究・既存のその他収益:数量 3.0(年間有償契約の標準契約相当件数)× 価格 1.00(標準契約相当一件当たり売上・億円)→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。小規模な共同研究や技術使用契約が年3件相当。大型契約一時金は見込まない。
倍率:2035年のROEは5.4÷135=4.0%でk10.25%を下回る。再投資による価値創出を認めず、利益の稼ぐ力としてPERの上限を1÷k=9.756倍とする。長期g1.5%を使って利益率の弱い事業に高い成長倍率を付けない。現在のPERや同業の倍率は根拠にしない。
確率:日本では条件付き承認などから実販売へ進む可能性を認める一方、独立した米国第3相試験の成功と本格普及を中立の必須条件にはしない。培養上清と受託製造は初期商業化の延長で成長するが、過大な市場浸透を見込まない。
やや悲観 28% 国内承認が遅れ、材料販売だけが残る 利益 −20 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4 円6 億円
国内のHLCM051について有効性や製造品質の追加確認が必要となり、2035年になっても承認薬としての売上が生まれない。米国の第3相試験も十分な結果を出せず、海外販売に進めない。研究費を削減して残せる技術へ経営資源を集中するが、これまで想定された高額な治療市場への道は細る。大手製薬へのライセンス供与も条件が悪く、会社の交渉力は低下する。
培養上清の販売は一部継続する。しかし、競争する原材料企業が増え、年間4件の初回発注相当しか売れない。製造受託では少数の試験的な注文を受けるものの、設備維持と品質保証の負担が重く、十分な利益を生まない。iPS細胞の研究は外部企業に移すか、提携の範囲を縮小し、契約収入だけが細く残る。
経営は存続のために低価格で新株を繰り返し発行する。新株予約権のうち承認を条件とするものは行使されないが、新規増資による希薄化はむしろ大きい。2026年6月末の現金の大半は、その後の研究開発と設備維持に使われている。会社は小規模な研究・材料販売企業として生き残るものの、既存株主にとって過去の投資を取り返せない10年となる。
- 国内ARDS細胞治療:数量 0.0(国内で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.12(一治療コース当たりヘリオスに帰属する国内売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。国内で商業承認に至らず、投与患者数ゼロ。参考価格は売上に計上しない。
- 米国ARDS細胞治療:数量 0.0(米国で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.18(一治療コース当たりヘリオスに帰属する米国売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。米国第3相試験の有効性が確認できず商業化しない。
- 細胞培養上清の原材料販売:数量 4.0(年間の初回JENECELL発注相当の出荷ロット数)× 価格 1.50(初回発注相当ロット当たり売上・億円)→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。出荷は年4件相当にとどまり、低稼働と値引きで利益率は10%。
- 細胞医薬品の製造受託:数量 5.0(年間の標準的な受託製造ロット相当数)× 価格 0.90(一受託製造ロット当たり売上・億円)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。外部受託は年間5標準ロット相当で、固定費を賄うのが精いっぱい。
- 技術契約・共同研究・既存のその他収益:数量 2.0(年間有償契約の標準契約相当件数)× 価格 0.50(標準契約相当一件当たり売上・億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。共同研究の収入は年2件相当だけ残り、経費控除後の利益はない。
倍率:2035年に営業損失と純損失が続くため、継続的な稼ぐ力にPERを掛けない。国内外のARDS承認に至らず、増資で研究を続けた後に残る現金・換金可能資産の税後額は12億円と見積もる。これを残存価値の上限かつ資産の床として採用した。PBRを表示する分母には2025年12月末の自己資本48.9億円を用い、12÷48.9=約0.2454倍とする。2026年6月の増資後自己資本87.73億円は将来の自己資本の起点にのみ使い、悲観評価のPBRを掛ける分母にはしない。将来の自己資本25億円や過去の市場PBRにも倍率を掛けていない。
確率:臨床試験、製造工程、薬事審査のいずれかが長期化する可能性は小さくない。過去の開発遅延、長期赤字、設備と研究への資金需要を踏まえ、28%とする。下に寄せる理由:ヘリオスは製品売上で研究費を賄った実績がなく、遅延がそのまま追加増資へつながる。
悲観 16% 主力開発中止と大幅希薄化で事業を縮小 利益 −10 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
REVIVE-ARDSで臨床的な有効性を十分に確認できず、国内の条件付き承認も実現しない。主力製品への研究費を回収できないまま開発を中止する。脳梗塞などへの用途拡大も進まず、細胞技術に対する投資家や提携先の評価は大きく低下する。技術資産の一部を譲渡して現金を確保しようとしても、買い手が評価するのは将来の研究用途に限られ、高い売却対価は得られない。
培養上清では初期顧客との取引が年1件相当だけ細く続くが、競争と取引条件の悪化で採算も崩れる。大型の細胞製造設備は稼働せず、減損と閉鎖費用が生じる。研究開発の人員を減らし、iPS細胞事業の権利も提携先へ移すが、固定費と法務・品質管理の費用はすぐにゼロにならない。
経営が事業を続けるための株式発行は、低い評価額で行われる。優良な権利の行使が進まなくても、救済的な増資や事業再編によって既存株主の持分は大幅に低下する。2035年に会社が上場を維持していたとしても、小さな研究・材料販売企業に変わっている。清算や上場廃止に至れば回収額はさらに小さくなりうるが、この筋書きではわずかな事業価値と資産価値を残す。
- 国内ARDS細胞治療:数量 0.0(国内で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.12(一治療コース当たりヘリオスに帰属する国内売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。国内開発を中止し承認薬売上ゼロ。
- 米国ARDS細胞治療:数量 0.0(米国で実際に投与される年間患者数・治療コース数)× 価格 0.18(一治療コース当たりヘリオスに帰属する米国売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。米国試験が失敗し開発中止。潜在市場の数字は価値を持たない。
- 細胞培養上清の原材料販売:数量 1.0(年間の初回JENECELL発注相当の出荷ロット数)× 価格 1.40(初回発注相当ロット当たり売上・億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。初回発注相当の年間1件しか継続せず、維持費が粗利益を上回る。
- 細胞医薬品の製造受託:数量 0.0(年間の標準的な受託製造ロット相当数)× 価格 0.90(一受託製造ロット当たり売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。設備は休止・閉鎖し外部受託売上はない。
- 技術契約・共同研究・既存のその他収益:数量 0.0(年間有償契約の標準契約相当件数)× 価格 0.50(標準契約相当一件当たり売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。新規共同研究契約はなく、権利の一部を手放している。
倍率:主力開発の中止と設備整理で純損失が続くため、継続事業の利益にPERを掛けて評価しない。治験費・撤退費用を支払った後の純現金と売却可能資産から未払費用等を差し引くと、株主に残る資産価値は約1億円と見積もる。この価値を超える未承認技術の売却益は認めない。PBRの分母は2025年12月末の自己資本48.9億円であり、1÷48.9=約0.02045倍。2026年6月末の増資後自己資本87.73億円は将来の自己資本の流れに使うが、この床のPBRの分母にはせず、2035年の自己資本5億円にも掛けない。
確率:ARDS試験の失敗、次世代技術による優位性低下、資金調達条件の悪化が重なる構造的な負け筋。今すぐ倒産すると決めつけないが、2025年までの連続赤字、過去の大型希薄化、収益基盤の小ささから16%の確率を認める。下に寄せる理由は開発失敗を埋める既存承認薬がないこと。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ARDS細胞治療
HLCM051を国内のARDS患者に投与する再生医薬品。2025年時点では未承認で販売数量はゼロ。
| 数量国内で実際に投与される年間患者数・治療コース数 | 価格一治療コース当たりヘリオスに帰属する国内売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.12 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 650 | 0.14 | 91 | 34 |
取り方:2025年末時点でARDS向けHLCM051は未承認なので数量と売上はゼロ。単価0.12億円は承認後の仮の比較基準であって実際の薬価ではない。会社が2026年8月説明資料で示す国内年間発症者約28000人から、投与時期や適格条件を考えた対象を約1割の2800人と推定した。2035年の数量はこの対象の何割に投与されるかで積み上げる。日本の医薬品は公定薬価と価格改定の制約があり、物価3%の上昇がそのまま販売単価に転嫁されるとは考えない。
米国ARDS細胞治療
グローバル第3相試験とFDA承認が成功した場合に開ける米国市場。国内承認とは独立した開発リスクを持つ。
| 数量米国で実際に投与される年間患者数・治療コース数 | 価格一治療コース当たりヘリオスに帰属する米国売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.30 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.17 | 0 | 0 |
取り方:米国で未承認なので売上と投与数量はゼロ。会社の2026年8月説明資料にある年間ARDS患者約262000人と、価格・重症度・適格性を考慮した潜在投与対象約20000人を別物として扱う。基準単価0.30億円は会社資料が示す20万ドルを固定為替150円で換算した仮定であり、確定販売価格ではない。2035年の実現単価は保険償還、値引き、提携先への取り分によりこれより低く設定する。米国で承認がなければ売上はゼロのままとする。
細胞培養上清の原材料販売
JENECELL向け出荷で販売実績が生まれた細胞培養上清。化粧品などの原材料向けであり、承認薬の患者売上とは異なる。
| 数量年間の初回JENECELL発注相当の出荷ロット数 | 価格初回発注相当ロット当たり売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 1.44 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 1.60 | 16 | 4 |
取り方:2025年実績には2026年10月の初回出荷は含まれないので数量と売上はゼロ。2026年10月5日の会社開示によるJENECELL向け初回発注1億4400万円を一ロット相当の比較単価1.44億円として使う。出荷した物理的な容器数や液量は開示されていないため、数量は実ロット数ではなく初回発注額を基準にした換算件数である。継続発注の確約はない。中立では新規取引先の開拓を見込む一方、価格は物価上昇を全額転嫁できない。
細胞医薬品の製造受託
神戸の製造基盤や大量培養技術を他社製品向けの製造業務に転用する事業機会。2025年時点の確定商用受注は確認できない。
| 数量年間の標準的な受託製造ロット相当数 | 価格一受託製造ロット当たり売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 1.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 1.00 | 20 | 4 |
取り方:独立した受託製造の契約数量と単価は開示されていない。2025年に商用CDMO売上が確認できないため数量と売上はゼロとする。単価1億円は細胞製造工程の複雑さを考慮した試算用の標準ロット収入で、会社公表の契約単価ではない。2035年の数量は製造設備の最大能力から機械的に取らず、外部顧客の品質監査と工程移管に成功して獲得できる年間受注ロット数として考える。競争によって物価上昇のすべてを単価に転嫁できない。
技術契約・共同研究・既存のその他収益
UDC関連技術、ライセンス、共同研究およびその他既存収益をまとめた分析上の収益源。eNK関連収益は契約による取り分だけを含む。
| 数量年間有償契約の標準契約相当件数 | 価格標準契約相当一件当たり売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 1.04 | 1 | −33 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 1.00 | 3 | 1 |
取り方:2025年12月期の会社全体の売上1.04億円と営業損失33.4億円を、独立した内訳が開示されていない既存収益・研究開発費の暫定集計先としてここに置く。一件は実際の契約数ではなく年間既存売上一式を表す換算単位で、全社売上を特定のUDC契約に帰属させる意味ではない。2025年の営業損失には全社研究開発費と本社費を含む。2035年には研究開発と本社の共通費を各筋書きのadjust_okuへ移し、この欄には契約から生じる営業利益のみを計上する。
リスクと懸念
ARDSの臨床試験と承認の成否
HLCM051の価値は、探索的試験で見えた有効性が検証試験でも再現されるかどうかに集中している。国内承認申請の準備と海外第3相試験の進行は前進だが、承認や実販売とは異なる。人工呼吸器を使用しない日数や死亡率の改善が十分に確認できない場合、最も大きな収益源を失う。
製造工程の再現性と設備投資
生きた細胞を用いる製品では、培養規模を拡大しても一貫した品質と効力を維持する必要がある。工程適格性確認、品質保証、委託先の切り替え、工場稼働までには費用と時間を要する。設備が完成しても製造承認や受注が得られなければ固定費だけが残る。
株式発行による継続的な希薄化
新株予約権の行使と追加増資は、会社が成功したときにも既存株主の取り分を下げる。過去にも株数が大きく増えた時期が繰り返されている。失敗時には株価が低い中で大量の新株を発行する可能性があり、会社全体の生存と旧株主の価値は一致しない。
薬価と米国保険償還の制約
会社の米国潜在市場の試算は高額な治療価格を前提とするが、実際の収入は臨床効果と医療経済性の証拠、保険者との交渉で決まる。日本でも公定薬価の改定を受ける。物価が上がっても薬価に同率転嫁できるとは限らず、販売数量と単価の両方が期待を下回る恐れがある。
培養上清の初回出荷を過大評価する危険
2026年10月にJENECELLへの初回出荷が実現したことは明確な進展だ。しかし、1億4,400万円は単発の初回発注額であり、毎年の最低購入数量や長期的な粗利益率の保証ではない。顧客の追加発注、他社への横展開、製造費用を確認しなければ、安定収益と評価できない。
iPS細胞事業の外部持分と技術の陳腐化
eNK細胞の開発を外部資金による体制へ移すことは研究費を抑える利点があるが、将来の経済的な取り分を共有することにもなる。Saisei関連の金融資産には外部投資家の持分があり、帳簿額を全額親会社株主のものとみなせない。新しい細胞治療が登場すれば、既存技術の競争力や特許価値も薄れうる。
継続企業に関する重要事象と資金繰り
2026年8月の決算短信では継続企業の前提に関する正式な注記は該当事項なしとされているが、重要な疑義を生じさせる状況は説明されている。増資によって資金は増えたものの、営業活動による支出が続く。追加調達が必要な時期に資本市場が閉じれば、試験中断や事業売却など不利な選択を迫られる。
今後の分かれ目
- 国内HLCM051について条件及び期限付き承認が実際に得られ、商用出荷が始まったら
- 国内売上ゼロの筋書きから実販売数量へ重みを移す。ただし、年間投与患者数と実際の薬価、承認後に必要な検証試験を確認するまでは米国売上を上乗せしない。
- REVIVE-ARDSの中間解析または最終解析で主要評価項目が明確に達成されたら
- 米国での販売成功の確率を引き上げる。承認に至る追加手続き、対象となる患者の条件、保険償還、提携先との収益配分を改めて確認する。
- REVIVE-ARDSで主要評価項目を達成できず、追加試験が必要となったら
- 米国販売の中立価値を引き続きゼロとし、国内事業の独立した継続可能性と資金繰りを再計算する。追加試験の規模に応じて希薄化の前提も悪化させる。
- JENECELLからの継続発注と新規顧客向け出荷が複数四半期にわたって確認されたら
- 培養上清の数量と営業利益率を実績に合わせて見直す。初回発注相当ロットが年間10件を持続的に超えれば、中立の非医薬品収益を引き上げる根拠になる。
- 神戸の商用製造基盤と委託製造先で工程適格性確認が完了し、品質と製造原価が開示されたら
- 国内ARDSの粗利益率と設備投資額を精緻化する。製造能力ではなく、適格性確認を終えた販売可能数量と稼働率を価値へ反映する。
- 大規模な新株発行や新株予約権の行使が発表されたら
- 調達による資金増加と発行株数増加を同時に反映する。現金を追加するだけ、または持分を減らすだけの片側計算はしない。発行価格と用途で旧株主の価値が改善したか判断する。
- 大手製薬による資本提携、ライセンス契約、公開買付けの正式発表があったら
- 契約一時金、達成条件、販売ロイヤリティ、譲渡する権利の範囲を分けて評価する。正式な公開買付けや上場廃止予定が決まった場合は通常の独立上場企業としての10年評価を見直す。
見ておくもの
- 国内ARDSの条件及び期限付き承認申請の正式受理、審査結果、承認条件
- REVIVE-ARDSの組入れ進捗、予定症例数、300例・400例の中間解析、主要評価項目
- 国内ARDSの実際の投与患者数、薬価、製造原価、販売開始後の安全性情報
- 米国FDAとの協議結果、承認の有無、保険償還、販売提携契約の取り分
- Minaris等での商用製造工程確認、神戸製造施設の設備投資額と稼働率
- JENECELL向け2回目以降の出荷額、契約先の拡大、培養上清事業の粗利益率
- 四半期ごとの営業キャッシュフロー、自由に使える現金残高、社債やその他負債の返済予定
- 新株予約権の未行使残高、増資価格、発行済株式数、既存株主の持分比率
- Saisei関連の外部投資家持分、技術契約による親会社への実際の分配額
- 中期計画に売上、営業利益、ROE、配当性向、自社株買いなど数値目標が追加されるか
倍率と資本コストの決め方
基準価格269円と株数135001900株から現在の時価総額は約363.16億円となるが、2035年の数量、価格、営業利益率、資本コスト、倍率を決める際にはこれを使っていない。国内ARDSは年間発症者約28000人からの投与人数、米国は会社が示す潜在適格者約20000人からの普及率を出発点とし、培養上清には2026年10月に確認できた初回出荷額を使った。事業を五つに分けたのは報告セグメントの分割ではなく、数量と単価を独立に検証するためである。強い成功筋でも米国の販売数量と実現単価を会社の潜在市場全体から大幅に絞った。
資本コスト10.25%は事業品質と長期赤字から決めた。楽観から中立のPERは2035年のROE、資本コスト、再投資収益率、長期成長率1.5%から正当化した上限そのものを使い、現在や過去のPER、同業PBRに寄せていない。赤字の悲観側は基準決算期の自己資本48.9億円をPBRの分母とし、各筋書きで残る純現金と換金可能資産の税後価値を上限とする評価で見た。特に資金繰りが苦しくなれば2026年の現金を研究費と製造費で消費するため、現時点の純現金を2035年の不変の床とはしない。
2035年の会社全体の時価総額を旧株主に帰属させる際には、各筋書きで将来の株式希薄化を別に反映する。発行で会社に入る資金は自己資本の流れに含め、時価総額と還元に取り分の係数を二度掛けしない。各筋書きの時価総額は、楽観約3113億円、やや楽観約576億円、中立約53億円、やや悲観約12億円、悲観約1億円となる。各確率と取り分で10年後価値を評価し、資本コストで現在に割り引き、期間中還元を中間時点の現在価値で加えると約123億円、基準時価総額に対し約66%下回る。これは現在の株価に合わせて数字を調整した結果ではない。
資本コスト 10.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 2.5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業品質+0.25%と継続的な赤字への上乗せ2.5%を加えた10.25%。株価のベータや小型株プレミアムは使用せず、個別の治験失敗と希薄化は筋書きと確率に反映する。