結論
室町ケミカルは、福岡県大牟田市に本社と工場を置く1917年創業の会社だ。いまの柱は二つある。一つ目は医薬品の原料となる原薬で、欧州や中国、インドの原薬の会社から輸入して国内の製薬会社に売る商社の役割と、自社の工場で合成や粉砕、精製をして納める作り手の役割を兼ねる。主な買い手は後発品の会社だ。二つ目は化学品で、水をきれいにするイオン交換樹脂の輸入と加工、使った樹脂の再生、半導体や電力の工場の水処理、ディーゼル車向けの尿素水、機能性の接着剤を扱う。長く続けたゼリー状の健康食品の受託製造は、2026年5月期の末で撤退を終えた。
2026年5月期は売上78億円、営業利益7.4億円と過去最高だったが、医薬品の受託の合成の設備に4億円の減損を出し、純利益は1.6億円に細った。今期は健康食品の売上12億円が抜けるので、会社は売上71億円、営業利益5.5億円、純利益3.5億円を見込む。
10年の中立は、医薬品は新しい品目を足しながら主力品の値下がりを量で補い、化学品は半導体と電力、PFASの除去で伸びる筋書きだ。営業利益は8億円台、純利益は5億円台になる。今の時価総額37億円は、この稼ぎと悲観の重みを合わせるとほぼ適正で、わずかに安い側にある。ただし主力3品目への集中と、薬価の下げが続く業界の構造は、悲観の筋書きとして重く残る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、医薬品の原薬は持ち続けたい種類の商売に近い。薬は景気に関係なく使われ、一度採用された原薬は簡単に切り替わらない。小さな会社が、海外の原薬の会社と日本の製薬会社の間に立ち、品質の手間を引き受けて稼ぐ形は、長く続きやすい。一方で、主力の3品目への集中は、一つの事故で稼ぎの土台が崩れる危うさを持つ。後発品の会社が相手なので、値上げで稼ぎを守ることも難しい。
経営は資本コストを意識し、借金を返し、累進配当を入れた。ただし買収の準備資金も積んでおり、小さな会社の買収が成功するかは見極めがいる。化学品の伸びは魅力だが、利益率が薄いままなら資本を食うだけになる。今期の純利益は減損の反動で戻る見込みで、ならした稼ぎに対して値段はほぼ適正だ。大きく安いとは言えず、主力品の動きを見ながら少しずつ持つ銘柄だ。
何で稼ぐ会社か
事業は二つに分けて考える。一つ目の医薬品は2026年5月期に売上40億円、営業利益6.3億円で、利益のほとんどを生む。中身は輸入原薬と自社製造原薬に分かれる。輸入原薬は、海外の原薬の会社に製造を頼み、日本の品質の決まりに合うよう試験や小分けをして製薬会社に納める。自社製造原薬は、大牟田の本社工場で合成し、粉砕や精製を加えて出す。高カリウム血症の薬に使う陽イオン交換樹脂の原薬のように、化学品で培った樹脂の技術が医薬品に生きる品目もある。主力の3品目、高カリウム血症、てんかん、ヘルペスの薬の原薬が医薬品の売上の約3分の2を占める。買い手は後発品の会社が多く、2026年5月期はキョーリンリメディオが全社の売上の11%を占めた。上位5社で36%になる。
二つ目の化学品は売上27億円、営業利益0.9億円だ。米国や欧州の樹脂の会社のイオン交換樹脂を国内に売り、自社の工場で加工や再生をする。最近は半導体の工場の超純水、火力や原子力の発電所の水処理、PFASと呼ばれる有機フッ素化合物の除去の装置、AIのデータセンター向けの機能性の接着剤が伸びている。利益率は3%台と薄く、取り次ぎの商売の色が濃い。
健康食品は2026年5月期に売上12億円あったが撤退を終え、空いた工場は化学品の開発の拠点に作り替える。全社の費用は二つの事業に配り終えた形で開示され、事業ごとの利益の合計が全社の営業利益になる。
優良さと弱いところ
優良さの芯は、原薬という切り替えにくい場所にいることだ。製薬会社は承認を受けた薬の原薬の供給元を変えるのに、品質の試験と承認の変更の手続きがいる。一度採用されれば、値下げを求められても取引は長く続きやすい。海外の原薬の会社と日本の製薬会社の間で、日本の品質の決まりに合わせる手間を引き受けることも小さくない役割だ。中国やインドに偏る原薬の供給を国内で複数にしたいという製薬会社の動きも追い風になる。
弱いところははっきりしている。主力の3品目が医薬品の売上の3分の2を占め、そのうち一つが他社に取られたり、その薬が使われなくなったりすれば、利益は大きく揺れる。今期の減損も、受託の合成の品目の見通しが狂ったことから出た。買い手は後発品の会社で、その会社自身が毎年の薬価の下げに苦しんでいるので、原薬の値段にも下げの圧力がかかる。化学品は伸びの種を多く持つが、樹脂の多くを輸入し、利益率は3%台にとどまる。
過去6年のROEの中央値は13%と資本コストを上回る。上場前の借金の多い時期から返済を進め、純負債は2億円まで減った。会社は資本コストを6.5〜7.5%と認識し、ROE10%以上を目標に掲げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
原薬の市場は国内で約5,200億円と、ゆっくり大きくなってきた。高齢化で薬の量は増えるが、国が決める薬価は毎年のように下がる。2021年度からは改定の無かった年にも薬価が下がる中間年の改定が入り、古い薬ほど値段の下げがきつい。後発品は数量の割合がすでに9割に達し、これからの量の伸びは新しく特許の切れる薬と、処方の数の自然な増加に限られる。後発品の会社では2020年以降、製造の不備による業務停止や出荷停止が相次ぎ、国は品質の監査を強めた。その結果、品質の確かな原薬の供給元が求められ、中国やインドだけに頼らず供給元を複数にする動きも続いている。原薬の会社には、量は伸びるが値段は下がるという綱引きの中で、新しい品目をどれだけ取れるかが問われる。
イオン交換樹脂の市場は、水処理、製薬、食品、鉱業と使い道が広く、世界で堅調に伸びている。国内では半導体の工場の新設が続き、超純水の需要が増えた。2026年には水道水のPFASの基準が厳しくなり、除去の設備の需要が見込まれる。ただし樹脂そのものは米国や欧州、日本の大手化学の会社が作り、室町ケミカルは輸入と加工、用途の開発で稼ぐ立場だ。半導体の投資は景気で振れ、樹脂の値段は海外の会社が決めるので、利益率は薄くなりやすい。
資本政策と M&A
配当は2026年5月期から累進配当を入れ、前の年の実績を下回らないと約束した。中間配当も始め、2026年5月期の配当の総額は約1.0億円、配当性向は減損のため64%になった。今期も同じ額を予定する。自社株買いの実績はほとんど無い。中期経営計画では3年で営業の現金14億円と借入5億円を、設備に12億円、人に1.5億円、株主還元に3億円、買収の準備に3億円と配る。自己資本比率は35〜50%を保つ方針で、純負債は約2億円と借金はほぼ消えた。大株主は筆頭の個人株主が15%、社長が9%、従業員持株会が7%で、親会社は無い。買収の準備資金は、医薬品の販路や化学品の技術を補う相手に使うとしている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医薬品は新しい柱が育ち始めている。中期経営計画では新しく22品目を入れ、2028年5月期にそれだけで約12億円を売る計画だ。実際には2026年5月期の医薬品の売上は40億円と、計画の34億円を大きく上回った。原薬の供給元を国内にも持ちたいという製薬会社の動きは、品質の問題と地政学の不安で強まっている。大牟田の工場は健康食品の撤退で場所と人が空き、合成の能力を増やせる。連続で合成する技術が実用になれば、少ない量の品目を効率よく作れ、受託の幅も広がる。
化学品は伸びの種を多く持つ。半導体の工場の新設、発電所の水処理、PFASの除去、データセンター向けの接着剤と、いずれも10年続く需要だ。PFASの除去では実証で効果を確かめ、特許を出した。化学品の利益率が3%から6〜7%に上がれば、全社の営業利益は10年で倍近くになる。会社は2031年5月期に売上100億円、営業利益率10%を目標に掲げ、計画の数値も上方に直した。借金はほぼ無く、累進配当も約束した。今の時価総額は、今期予想の純利益の10倍そこそこで、伸びはほとんど値段に入っていない。
慎重な見方
医薬品の稼ぎは3品目に乗っている。主力3品目で医薬品の売上の3分の2を占め、高カリウム血症、てんかん、ヘルペスの薬はいずれも特許の切れた古い薬だ。買い手の後発品の会社は毎年の薬価の下げで苦しみ、原薬の値下げを求め続ける。中国やインドの原薬の会社がより安い値段を出せば、一つの品目を丸ごと失うこともある。今期の4億円の減損は、受託の合成の品目の見通しが崩れた結果で、新しい品目の立ち上げが計画どおりに進まない例がすでに出ている。
化学品は利益率が3%台と薄く、樹脂の多くは海外の会社から仕入れる。値段を決めるのは仕入れ先で、円安や仕入れ先の方針の変更で利益はすぐに消える。半導体の投資は景気で大きく振れ、PFASの規制も設備の導入まで何年もかかる。中期経営計画2025では営業利益6億円の目標に4.3億円しか届かなかった前例もある。2026年5月期の医薬品の利益率16%は品目の構成が良かった年の値で、今期の予想はすでに営業利益を2億円近く下げている。過去のROEの高さは上場の前後の自己資本が小さかった時期のもので、自己資本が増えた今は10%前後に下がる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。原薬は切り替えにくく、医薬品の売上は計画を上回って伸び、借金も消えた。慎重な見方の突く主力品への集中と薬価の下げは本物だが、中立の筋書きは医薬品の利益率を今期の16%から11%に下げ、主力品の値下がりも織り込んだ。それでも今の値段は、ならした稼ぎに対してほぼ適正で、わずかに安い。主力品の一つを失う筋書きは2割強の重みで残し、新しい品目の売上と化学品の利益率で見方を直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 1,870 円75 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 423 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,108 円45 億円、今との差 +20.1%、 期待の年率 +9.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,829 円154 億円 | 621 円25 億円 | +382.2% | +17.0% | 534 円21 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,799 円113 億円 | 522 円21 億円 | +259.8% | +13.7% | 664 円27 億円 |
| 中立 | 33% | 1,979 円80 億円 | 447 円18 億円 | +162.8% | +10.1% | 801 円32 億円 |
| やや悲観 | 22% | 726 円29 億円 | 323 円13 億円 | +13.7% | +1.3% | 231 円9 億円 |
| 悲観 | 13% | 288 円12 億円 | 199 円8 億円 | −47.2% | −6.2% | 63 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,870 円75 億円 | 423 円17 億円 | +148.4% | +9.5% | 2,293 円92 億円 |
今の株価時価総額 923 円37 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 新しい原薬が柱に育ち、化学品の利益率も上がる 利益 10 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,829 円154 億円
国内で原薬を作れる会社を求める製薬会社が増え、新しい品目の受託と輸入原薬の取り扱いが相次ぐ。大牟田の工場は健康食品の跡地を使って合成の能力を増やし、連続で合成する技術も実用になる。主力の3品目は値段が少しずつ下がるが、他社に取られることはなく、医薬品の出荷は10年で6割増える。
化学品は、水道のPFASの基準が厳しくなって除去の設備の更新が全国で進み、半導体の工場の新設も続く。自社で用途を開発した樹脂が海外の鉱山や食品の工場にも売れ、出荷は10年で2倍を超える。取り次ぎから自社の技術の商売に比重が移り、利益率は7%に上がる。会社は2031年5月期の売上100億円の目標を少し遅れて超え、累進配当を続けながら増配も重ねる。
- 医薬品(輸入原薬・自社製造原薬):数量 160(原薬の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.46(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 73 億円・営業利益 10 億円。出荷の指数160×値段1.15倍、利益率13.0%
- 化学品(イオン交換樹脂・水処理・接着剤):数量 220(化学品の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.35(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 76 億円・営業利益 5 億円。出荷の指数220×値段1.3倍、利益率7.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.1 倍、時価総額 152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新規の22品目の多くが立ち上がり、主力3品目も守り、化学品がPFASと半導体で利益率を倍にする姿。医薬品の売上が計画を上回った今期の実績はあるが、全部がそろう筋なので1割強。
やや楽観 20% 医薬品が着実に増え、化学品も伸びる 利益 8 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 2,799 円113 億円
医薬品は新しい品目の半分ほどが立ち上がり、主力の3品目の値下がりを量で補って、出荷は10年で45%増える。原薬の値段は薬価の下げを受けて物価ほどは上がらないが、品質の手間を引き受ける分の値上げは少しずつ通る。利益率は12%と今期の予想並みを保つ。
化学品は、半導体の工場の超純水と発電所の水処理の需要が続き、PFASの除去も一部の浄水場で設備の導入が始まる。出荷は10年で9割増え、利益率は5.5%に上がる。全社の営業利益は11億円台になり、2031年5月期の目標の売上100億円には数年遅れで届く。借金はほとんど増やさず、累進配当と時々の増配で株主に返す。
- 医薬品(輸入原薬・自社製造原薬):数量 145(原薬の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.45(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 65 億円・営業利益 8 億円。出荷の指数145×値段1.12倍、利益率12.0%
- 化学品(イオン交換樹脂・水処理・接着剤):数量 190(化学品の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.34(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 65 億円・営業利益 4 億円。出荷の指数190×値段1.28倍、利益率5.5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.46 倍、時価総額 110 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい品目の半分ほどが立ち上がり、化学品も半導体と電力で伸びる姿。中期経営計画の方向がおおむね形になる筋で2割。
中立 33% 新しい品目で主力品の値下がりを補い、緩やかに伸びる 利益 6 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 1,979 円80 億円
医薬品は新しい品目の3分の1ほどが立ち上がり、出荷は10年で3割増える。主力の3品目は買い手の後発品の会社から毎年値下げを求められ、原薬の値段は10年で1割ほどしか上がらず物価に負ける。利益率は今期の16%から11%に下がり、品目の構成が良かった年の値には戻らない。
化学品は半導体と発電所の水処理、PFASの除去で出荷が10年で6割増えるが、樹脂の多くは輸入なので利益率は4%にとどまる。全社の営業利益は8億円台、純利益は5億円台になる。会社の掲げた売上100億円と利益率10%は、売上はほぼ届くが利益率は届かない。累進配当は続き、配当性向は4割前後で落ち着く。
- 医薬品(輸入原薬・自社製造原薬):数量 130(原薬の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.44(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 6 億円。出荷の指数130×値段1.1倍、利益率11.0%
- 化学品(イオン交換樹脂・水処理・接着剤):数量 160(化学品の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.33(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。出荷の指数160×値段1.25倍、利益率4.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.72 倍、時価総額 77 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい品目の立ち上げに当たり外れがあり、主力品は値段が少しずつ下がる姿。過去10年の売上の伸び(年5%台)と今期の予想の利益率の延長で、いちばん起きやすいので一番重くした。
やや悲観 22% 主力品の一つが削られ、稼ぎが細る 利益 3 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 726 円29 億円
主力の3品目の一つで、買い手の後発品の会社がインドの原薬の会社に供給元を移す。もう一つの品目も新しい薬に押されて処方が減る。新しい品目はいくつか立ち上がるが、減った分を埋めきれず、医薬品の出荷は10年で5%しか増えない。値段は薬価の下げにそろって上がらず、利益率は8%に落ちる。
化学品は半導体の投資の谷とPFASの設備の導入の遅れで、出荷は10年で3割増にとどまる。樹脂の仕入れの値段は上がるが、売値には十分に移せず、利益率は2.5%に下がる。全社の営業利益は4億円台に戻り、ROEは資本コストを下回る。累進配当の約束で配当は守るが、増配は止まる。
- 医薬品(輸入原薬・自社製造原薬):数量 105(原薬の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.40(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。出荷の指数105×値段1.0倍、利益率8.0%
- 化学品(イオン交換樹脂・水処理・接着剤):数量 130(化学品の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.32(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。出荷の指数130×値段1.2倍、利益率2.5%
倍率:ROE6.3%がk8.5%を下回るので、ためた利益は帳簿の額ほどの値打ちが無く、PERの上限は1÷kの11.8倍。伸びの止まった利益の質を見て上限の約80%に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.4 倍・時価総額 26 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:主力3品目の一つが安い海外の原薬に置き換えられるか使われなくなり、新しい品目でも埋めきれない姿。今期の減損で受託の品目の見通しが崩れた前例があり2割強。
悲観 13% 主力品を失い、医薬品が赤字になる 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 288 円12 億円
大牟田の工場で品質の手順の不備が見つかり、行政の処分で数か月の出荷の停止を受ける。その間に買い手の後発品の会社は、主力の品目の供給元を海外の原薬の会社に切り替える。出荷が戻っても主力の二つの品目は戻らず、医薬品の出荷は10年で4分の3に縮む。合成の設備は動かない時間が長くなり、追加の減損も出て、医薬品は赤字になる。
化学品は細々と続くが、樹脂の仕入れ先が日本での販売を自前に切り替え、利益はほぼ消える。全社では赤字が続き、累進配当の約束も守れなくなる。会社は工場の一部を売り、人を減らして生き残るが、少数株主に残るのは工場と在庫の値打ちの一部だけになる。
- 医薬品(輸入原薬・自社製造原薬):数量 75.0(原薬の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.38(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 −1 億円。出荷の指数75×値段0.95倍、利益率-2.0%
- 化学品(イオン交換樹脂・水処理・接着剤):数量 110(化学品の出荷の指数(2026年5月期=100、実質))× 価格 0.31(出荷の指数1あたりの売上(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。出荷の指数110×値段1.15倍、利益率0.5%
倍率:赤字なのでPERは当てない。床は大牟田とつくばの工場、在庫、現金だが、品質の問題を抱えた工場は買い手が限られるので、今の自己資本25.8億円の0.45倍と見た。
確率:主力3品目のうち二つを失うか、工場の品質の問題で出荷が止まり、医薬品が赤字になる構造的な負け。後発品の業界で2020年以降に工場の停止が相次いだ前例があり1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医薬品(輸入原薬・自社製造原薬)
海外の原薬の会社から輸入し日本の品質の決まりに合わせて製薬会社に納める原薬と、大牟田の本社工場で合成・粉砕・精製する原薬。主な買い手は後発品の会社。主力3品目(高カリウム血症・てんかん・ヘルペス)で売上の約3分の2。
| 数量原薬の出荷の指数(2026年5月期=100、実質) | 価格出荷の指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 100 | 0.40 | 40 | 6 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.44 | 57 | 6 |
取り方:2026年5月期の有報のセグメント情報。売上39.86億円、営業利益6.34億円。品目別の数量の開示が無いので、売上を出荷の指数100と値段に分けた。減損は特別損失で営業利益には入らない。
化学品(イオン交換樹脂・水処理・接着剤)
輸入したイオン交換樹脂の販売と加工・再生、半導体や発電所の水処理の装置、PFAS除去の装置、ディーゼル車向けの尿素水、機能性の接着剤。
| 数量化学品の出荷の指数(2026年5月期=100、実質) | 価格出荷の指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 100 | 0.27 | 27 | 1 |
| 10 年後 中立 | 160 | 0.33 | 53 | 2 |
取り方:2026年5月期の有報のセグメント情報。売上26.69億円、営業利益0.91億円。樹脂の品目と装置が混ざり数量の単位がそろわないので、売上を出荷の指数100と値段に分けた。
リスクと懸念
主力3品目への集中
高カリウム血症、てんかん、ヘルペスの薬の原薬が医薬品の売上の約3分の2を占める。どれも特許の切れた古い薬で、買い手の後発品の会社が安い海外の原薬に切り替えれば、一つの品目を丸ごと失う。今期の減損も受託の品目の見通しの狂いから出た。
薬価の下げと買い手の値下げの要求
国は毎年のように薬価を下げ、後発品の会社は利益を削られている。その圧力は原薬の値段にそのまま来る。値段が物価に負け続ければ、量を増やしても利益率は下がる。
品質の問題と工場の停止
原薬は品質の決まりが厳しく、手順の不備一つで出荷の停止や回収になる。後発品の業界では2020年以降に業務停止が相次いだ。工場は大牟田とつくばの二つで、止まった時の代わりが少ない。
化学品の薄い利益率
イオン交換樹脂の多くは海外の会社から仕入れ、値段は仕入れ先が決める。円安や仕入れ先の方針の変更、半導体の投資の谷で、3%台の利益率はすぐに消える。
今後の分かれ目
- 医薬品の売上が40億円を保ったまま、新しい品目の売上が10億円を超える
- やや楽観の筋書きに近づく。主力品への集中が薄まり、稼ぎの土台が広がった証拠だ。
- 主力3品目のどれかの売上が前の年より3割以上減る、または追加の減損が出る
- やや悲観の側に重みを移す。主力品の値下がりを新しい品目で補えていない。
- 化学品の営業利益率が2期続けて5%を超える
- 化学品が取り次ぎから技術の商売に移り始めた証拠で、中立からやや楽観の側に寄る。
見ておくもの
- 医薬品の売上と営業利益率(主力3品目の比率)
- 新しい品目の数と売上(中期経営計画の22品目)
- 減損と受託の合成の品目の見通し
- 化学品の営業利益率とPFAS関連の売上
- 主要な販売先の比率(上位5社)
- 配当の総額と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPER・PBRから置いていない。医薬品と化学品の出荷の指数と値段、利益率から利益を積み、ROEとk8.5%から正当化PERを式で出した。今期の純利益1.6億円は減損4億円の一過性なので、流れの起点は会社の今期予想の3.5億円にした。中立のPERは約11倍で、会社が目標に掲げる15倍より低い。悲観は今の自己資本に掛けた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.1→15.1 倍・やや楽観 PER 11.7→14.46 倍・中立 PER 10.9→13.72 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.0%。同じ領域の会社はまだ無い。原薬の切り替えにくさは堀で見て、主力品への集中と値決めの弱さをkに入れた。