結論
持田製薬は、消化器・循環器・婦人科に強い中堅の製薬会社だ。長年の稼ぎ頭だった魚油由来のエパデールが後発品に押され、いま新薬 5 品へ柱を入れ替えている。
筆者の結論は「やや割高」である。新薬の勢いは本物だが、営業利益率は 10 年で 6〜9% 台にとどまってきた。利益が積み上がるより先に、自己資本が現金と持ち合い株で膨らむ会社だ。
新薬の中ではオンボーが 1 年で売上を 2 倍近くに伸ばし、ユリスとトレプロストも 3〜5 割の伸びを続ける。会社は 2031 年度に売上 1,400 億円・営業利益率 15% を掲げる。筆者は途中までは届くが、15% には届かないと見る。
既存薬の目減りは構造的だ。薬価は毎年下がり、後発品のある長期収載品は選定療養で患者負担が増える。新薬が伸びても、既存薬の減りと研究開発費の重さが利益を吸い取る。
持田記念財団が 16% を持ち、買収される心配は小さい。政策保有株の売出しと自社株買いに動いたのは前向きだ。ただ還元の規模はまだ小さい。中立の ROE は 6% 前後で、資本コストの 7.5% に届かない。
中立で 10 年後の時価総額は約 1,200 億円。今と同じ水準で、そこまでの還元を足しても、割り引くと今の値段に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「利益を生まない資産を抱えた、中堅の導入品販売会社」と見る。
良い点は、事業が単純で、国内の高齢化という追い風が続くことだ。財務は堅く、倒産の心配はほぼない。新薬 5 品はいま伸びており、短期の数字は悪くない。
気になる点は 3 つある。1 つ目は、稼ぐ力に比べて資産が重いことだ。自己資本は 1,400 億円だが、純利益は 80 億円にとどまり、ROE は 6% に届かない。ためた利益を資本コスト以下でしか使えない会社の資産は、帳簿の額では評価されない。
2 つ目は、堀の質だ。導入品は提携先の都合で条件が変わる。自社創薬の比率が低く、特許切れの後に残る力が読みにくい。3 つ目は、研究開発費が営業利益を上回り、売上が増えても株主のものになる利益が増えにくいことだ。
オーナーとして持ち続けたいかといえば、いまの値段では答えは「いいえ」に近い。持ち合い株の縮小と還元の拡大が本物になれば、評価は変わる。安全域は、純現金と持ち合い株の価値が支える下値にあるが、上値の余地は今の値段が先に織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
持田製薬は、医療用医薬品を中心に、ヘルスケアとバイオマテリアルを持つ会社だ。売上の 9 割超は医薬品が占める。創業から 100 年にわたり産婦人科の薬を手がけ、消化器・循環器・泌尿器にも広がった。
稼ぎの源は大きく 3 つある。1 つ目は、会社が「コア事業」と呼ぶ新薬 5 品だ。潰瘍性大腸炎のオンボーとコレチメント、痛風のユリス、慢性便秘症のグーフィス、肺高血圧症のトレプロスト。2026 年 3 月期はオンボーが 104 億円、ユリスが 63 億円、トレプロストが 61 億円(薬価ベース)まで育った。多くは外から導入した品で、取り分は提携先と分け合う。
2 つ目は、既存薬とバイオシミラーだ。高純度 EPA 製剤のエパデールは国内の数量シェア首位を保つが、後発品が出て久しい。子宮内膜症薬のジエノゲスト製剤は、会社が 2027 年度に 150 億円を狙う。バイオシミラー(バイオ医薬品の後続品)は国内の売上シェア首位で、新たに 3 品の承認取得を計画している。
3 つ目は、一般用医薬品・機能性食品のヘルスケアと、再生医療などに使うバイオマテリアルだ。小さいが、会社が成長事業と位置づける。
研究開発費は年 140 億円台で、営業利益より大きい。核酸医薬、細胞医薬、バイオマテリアル、バイオシミラーに回す。中期経営計画(25-27)は、2027 年度に売上 1,200 億円・営業利益 120 億円、新薬 5 品の売上を 2024 年度の 235 億円から 480 億円へ倍にすると掲げる。
優良さと弱いところ
堀は「消化器と婦人科の現場での顔」にある。広く浅く売る総合大手と違い、専門医との長い付き合いと、導入品を育てる販売力が武器だ。エパデールの数量首位、バイオシミラーの国内首位は、その表れだ。
ただ、堀は広くない。強みの多くは導入品の販売力にあり、自社で薬を創る力は大手に及ばない。導入品は契約が切れれば手元に残らず、提携先との取り分も重い。
いちばんの弱点は利益率だ。営業利益率は過去 10 年で 5〜13% を行き来し、最近は 8% 台にとどまる。研究開発費が営業利益を上回る構造で、売上が伸びても利益が伸びにくい。
資本の面では、自己資本比率は 77%、純現金は 211 億円と堅い。だが堅さは優良さの証拠にならない。ROE は直近で 5.6%、過去 10 年の中央値は 6.2% で、資本コストを下回り続けてきた。厚い資産が利益を生んでいない。
経営の姿勢は変わりつつある。政策保有株の売出しと自社株買いを同時に決めたのは、資本効率を意識し始めた証拠だ。筆者は評価するが、規模はまだ小さい。ここが本当に変わるかが、10 年後の評価を分ける。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の医療用医薬品は、薬価ベースで 11 兆円を超え、過去最高を更新している。それでも既存薬の値段は毎年のように下がる。2021 年度から、改定のない年にも薬価を下げる中間年改定が入った。
この会社に効く逆風は 2 つある。1 つ目は後発品で、価格競争に巻き込まれる。2 つ目は長期収載品の選定療養だ。後発品のある先発薬を選ぶと、患者が差額の一部を負担する。エパデールのような古い主力品の数量が、じわじわ削られる。
追い風は、高齢化で消化器・循環器の患者が増えることだ。潰瘍性大腸炎は生物学的製剤の時代に入り、痛風・高尿酸血症、慢性便秘症も患者が多い。新薬は薬価が高く、旬の数年は下げ幅も小さい。
競合は領域ごとに違う。潰瘍性大腸炎では武田薬品や田辺ファーマなど大手の生物学的製剤と戦う。痛風では帝人ファーマなどの既存薬と戦う。バイオシミラーでは、日本化薬・サンド・ファイザーなどと競う。持田は大手に挑む位置で、導入品の販売力で穴を埋める形だ。
特許切れも見ておく。コア 5 品の多くは発売から日が浅く、2030 年代まで独占期間がある品が多い。ただ、抗体医薬は後続品が出れば薬価が急に下がる。筆者は、新薬の波が 2030 年代前半に頭打ちになると見る。
資本政策と M&A
資本政策は、このところ動き出した。2026 年 3 月に、政策保有株の売出しと自社株買い(上限 20 億円)を同時に発表した。持ち合い株を市場に戻し、一部を自社株の買い戻しに回す。
配当は、中期経営計画の間は 下限を決めた配当を守る方針だ。2027 年 3 月期は 小幅な増配を予想する。年間の配当は約 30 億円で、純利益の 3〜4 割にとどまる。
株主は、公益財団法人の持田記念医学薬学振興財団が 16% で筆頭だ。2026 年 4 月には買い増しも出た。創業家筋と財団で安定株主が厚く、敵対的な買収は起きにくい。
大型の M&A は少ない。成長の手段は、導入と提携が中心だ。計画では循環器・消化器で 3 品の導入を目指す。小さな導入を重ねる方針で、買収で価値を壊すリスクは低いが、大きな柱を買ってくる力も弱い。
純現金は 211 億円ある。研究開発は先に費用が出るので、全部を余りとは言えない。それでも持ち合い株の縮小が進めば、資本の使い道が問われる。筆者は、還元の拡大が最大の上振れ材料だと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新薬の波は本物だ。オンボーは 1 年で売上が倍近くになり、ユリスとトレプロストも 3〜5 割伸びた。5 品の売上は 2024 年度の 235 億円から 2027 年度に 480 億円へ倍にする計画で、すでに 3 品だけで 228 億円まで来ている。
この流れは、会社が 2031 年度に掲げる売上 1,400 億円・営業利益率 15% にまっすぐつながる。研究開発費は先行して重いが、新薬が育つほど売上に対する比率は下がる。利益率が 12% 台まで戻れば、営業利益は 200 億円を超える。
既存薬の減りも、バイオシミラーが埋める。国内で売上首位の強みがあり、新たに 3 品の承認を狙う。トシリズマブの申請も終え、がんや希少疾患へ広げる。婦人科はジエノゲスト製剤だけで 150 億円を狙う。
資本政策が動いたことも大きい。政策保有株を売り、自社株買いを始めた。この流れが続けば、遊んでいた資産が株主に戻り、ROE は 9% 台に上がる。持田記念財団が株を買い増している点も、経営の安定を裏づける。
導入の手腕もある。計画の 3 年で循環器・消化器の 3 品を新たに導入すると言い、実績を重ねている。中堅が外から良い薬を拾ってくる力は、自社創薬よりも当たり外れが小さい。
慎重な見方
稼ぐ力はもともと弱い。過去 10 年の営業利益率は 5〜13% を行き来し、ROE は 6% 前後だった。2027 年度の計画(営業利益 120 億円)は、直近の 2025 年 3 月期の 81 億円から 5 割増だ。計画は届かなかった前例が多い。
新薬は導入品が多く、利益の一部は提携先に流れる。導入契約は更新のたびに条件が見直され、販売が育ったあとに取り分が下がることもある。自社創薬の比率が低く、特許が切れたあとの次の柱を自力で作る力は弱い。
既存薬の減りは速い。エパデールは後発品が出て久しく、選定療養で患者の自己負担も増えた。ジエノゲスト製剤も後発品が入る。薬価は毎年下がり、数量で埋め続けるのは年々難しくなる。
バイオシミラーも安泰ではない。同業が増え、薬価は先発の 7 割程度から始まって、下がり続ける。開発費は重く、利益になるまでに時間がかかる。
研究開発費は 140 億円台で、営業利益を上回る。核酸医薬や細胞医薬は当たるかどうかわからない。資産は厚いが、自己資本が利益を生まない会社に払う倍率は高くならない。政策保有株の縮小も、売出し規模は 38 億円とまだ小さい。
どちらに重みを置いたか
新薬の勢いは強気の見方に説得力がある。ただ、営業利益率が 10 年にわたり 9% 以下で、資本コストを下回る ROE が続いてきた事実は重い。慎重な見方の指摘を、より強いと見る。
中立でも新薬が柱になるまでは認める。そのうえで利益率は 10% 台前半、ROE は 6% 前後と置き、倍率は式から導いた上限の 85% にとどめた。ためた利益は、帳簿の額では評価されない。
確率は、強気側に約 3 割、慎重側に約 3 割半を置いた。導入品が外れる筋と後発品に削られる筋の重みを見たためだ。結果として、10 年の価値は今の値段を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,888 円1,368 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,374 円484 億円)。 今の値に割り戻すと 2,736 円963 億円、今との差 −16.2%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 7,020 円2,470 億円 | 2,132 円750 億円 | +180.3% | +10.9% | 824 円290 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,978 円1,751 億円 | 1,705 円600 億円 | +104.7% | +7.4% | 1,470 円517 億円 |
| 中立 | 34% | 4,742 円1,668 億円 | 1,421 円500 億円 | +88.8% | +6.6% | 2,096 円737 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,856 円653 億円 | 1,137 円400 億円 | −8.3% | −0.9% | 659 円232 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,081 円380 億円 | 568 円200 億円 | −49.5% | −6.6% | 214 円75 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,888 円1,368 億円 | 1,374 円484 億円 | +61.2% | +4.9% | 5,262 円1,851 億円 |
今の株価時価総額 3,265 円1,149 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 新薬 5 品が計画線を超え、バイオシミラーと導入品も当たる 利益 175 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 7,020 円2,470 億円
新薬 5 品が計画の延長線上で育ち、国内の売上は 10 年で 6 割近く増える。オンボーが潰瘍性大腸炎の標準治療の一角に定着し、ユリスとトレプロストも適応や使い方が広がる。
バイオシミラーは国内首位を守り、がんや希少疾患へ範囲を広げて、既存薬の減りを埋める。導入した新薬が相次いで当たり、売上に対する研究開発費の比率は下がっていく。
バイオマテリアルは再生医療向けに育ち、ヘルスケアの利益率も上がる。営業利益率は 14% 近くまで戻り、会社が掲げる 15% に近づく。
資本政策も前向きに進む。政策保有株の縮小と自社株買いが続き、遊んでいた資産が株主へ戻る。自己資本が膨らまないので、ROE は 9% 台に上がる。
- コア新薬 5 品(国内):数量 7,400(対象疾患の国内処方薬市場(億円、2026 年の価格で実質。推定))× 価格 9.2%(持田のシェア × 薬価の指数(2026 年=1、名目))→ 売上 681 億円・営業利益 272 億円。市場×シェア 10%×価格の指数 0.92
- 既存薬・バイオシミラーほか(国内):数量 14,700(関連する国内処方薬市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 4.6%(持田のシェア × 薬価の指数(名目))→ 売上 676 億円・営業利益 149 億円。市場×シェア 5.0%×価格の指数 0.92
- ヘルスケア・バイオマテリアルほか:数量 9,500(関連市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 3.5%(持田のシェア × 価格の指数(名目))→ 売上 331 億円・営業利益 46 億円。バイオマテリアルが育つ
倍率:事業の純利益 174 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 13.65 倍、時価総額 2,470 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新薬 5 品が計画線を超え、利益率が 12% 台まで戻る筋書き。複数の導入品とバイオシミラーが同時に当たる必要があり、過去 10 年の利益率の実績を踏まえると確度は低い。
やや楽観 22% 新薬は伸びるが、既存薬の目減りが一部を打ち消す 利益 133 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,978 円1,751 億円
新薬 5 品は計画をやや下回りながらも伸び続け、国内の売上は 10 年で 3 割強増える。コア事業の利益率は高まるが、既存薬の減りが一部を打ち消す。
バイオシミラーは追加の承認で下げ幅を抑える。導入品も 1〜2 品が当たり、研究開発費の比率はゆっくり下がる。営業利益は 170 億円台まで戻る。
資本政策は、配当を少しずつ増やし、自社株買いを続ける程度だ。ROE は 7% 前後で、資本コストにほぼ届く。会社計画の 2031 年度の目標には届かないが、5 年前より明らかに強い会社になった 10 年だ。
- コア新薬 5 品(国内):数量 7,200(対象疾患の国内処方薬市場(億円、2026 年の価格で実質。推定))× 価格 8.1%(持田のシェア × 薬価の指数(2026 年=1、名目))→ 売上 583 億円・営業利益 227 億円。市場×シェア 9%×価格の指数 0.90
- 既存薬・バイオシミラーほか(国内):数量 14,400(関連する国内処方薬市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 4.2%(持田のシェア × 薬価の指数(名目))→ 売上 609 億円・営業利益 128 億円。市場×シェア 4.7%×価格の指数 0.90
- ヘルスケア・バイオマテリアルほか:数量 9,500(関連市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 3.2%(持田のシェア × 価格の指数(名目))→ 売上 303 億円・営業利益 38 億円
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,745 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新薬 5 品が計画を大きくは外さずに伸び、利益率が 11% 台に戻る標準的な上振れ。オンボーの伸びが現にあるので、同領域の会社より少し厚めに置いた。
中立 34% 中立:新薬が柱を入れ替え、利益は緩やかに戻る 利益 114 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,742 円1,668 億円
新薬 5 品は、国内で 10 年かけて売上が 7 割ほど増える。薬価の下げと後発品の影響で、既存薬は 2 割弱減る。ヘルスケアは緩やかに育つ。
総売上は 1,360 億円ほどで、今より 16% 増にとどまる。物価の 3% を考えれば、実質では縮む。
営業利益率は、10% 台前半まで戻る。新薬の売上が増えても、研究開発費が毎年物価並みに膨らみ、既存薬の減りが利益率を押し下げる。
資本政策は、配当を中計の下限以上に保ち、自社株買いを小刻みに続ける。ROE は 6% 前後で、資本コストを下回ったままだ。持田記念財団が筆頭株主で居続け、敵対的な買収は起きない。
- コア新薬 5 品(国内):数量 7,150(対象疾患の国内処方薬市場(億円、2026 年の価格で実質。推定))× 価格 7.2%(持田のシェア × 薬価の指数(2026 年=1、名目))→ 売上 515 億円・営業利益 206 億円。市場×シェア 8%×価格の指数 0.90
- 既存薬・バイオシミラーほか(国内):数量 14,280(関連する国内処方薬市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 4.0%(持田のシェア × 薬価の指数(名目))→ 売上 565 億円・営業利益 119 億円。市場×シェア 4.4%×価格の指数 0.90
- ヘルスケア・バイオマテリアルほか:数量 9,500(関連市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 3.0%(持田のシェア × 価格の指数(名目))→ 売上 284 億円・営業利益 31 億円
倍率:事業の純利益 113 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,508 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新薬は伸びるが、既存薬の減りと研究開発費の重さで利益率は 10% 台前半にとどまる。会社計画を途中まで達成する中心の筋。
やや悲観 22% 新薬が伸び悩み、既存薬の落ち込みを埋められない 利益 56 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 1,856 円653 億円
コア新薬は伸びるが、勢いは長続きしない。オンボーの競合が増え、ユリスとトレプロストも薬価の下げを受ける。国内の売上は 10 年で 3 割ほどの増加にとどまる。
既存薬は、エパデールとジエノゲスト製剤の後発品、選定療養で想定より速く縮む。バイオシミラーも競争が強まり、薬価の下落が早い。売上は今から 1 割ほど縮む。
研究開発費は減らせないので、営業利益は 60 億円台に沈む。過去 10 年で最も悪かった 2024 年 3 月期に近い水準で、ROE は 3% 台に落ちる。
配当は下限の方針を守るが、自社株買いは止まる。財団と創業家筋の持ち株は変わらず、再編の動きは出ない。
- コア新薬 5 品(国内):数量 7,000(対象疾患の国内処方薬市場(億円、2026 年の価格で実質。推定))× 価格 5.5%(持田のシェア × 薬価の指数(2026 年=1、名目))→ 売上 382 億円・営業利益 122 億円。市場×シェア 6.2%×価格の指数 0.88
- 既存薬・バイオシミラーほか(国内):数量 14,000(関連する国内処方薬市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 3.2%(持田のシェア × 薬価の指数(名目))→ 売上 444 億円・営業利益 75 億円。市場×シェア 3.6%×価格の指数 0.88
- ヘルスケア・バイオマテリアルほか:数量 9,500(関連市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 2.4%(持田のシェア × 価格の指数(名目))→ 売上 228 億円・営業利益 18 億円
倍率:ROE 3.2%。RONIC = k 8% + 残る割合 1/2 ×(3.2 − 7.5)= 5.4%、g 4.0% から正当化 PER = 7.2 倍。構造的に利益率が下がる筋書きなので、7 割へは引き上げず、上限をやや下回る 7.0 倍に置いた。
確率:導入品の伸びが想定より鈍く、既存薬の落ち込みが先に来る筋。利益率が 6% 台に張り付いた過去 10 年に近い。
悲観 13% 導入品が外れ、既存薬は後発品と選定療養で痩せる 利益 −12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,081 円380 億円
導入した新薬が相次いで期待に届かず、コア 5 品の伸びは頭打ちになる。オンボーには競合の生物学的製剤が増え、提携先との契約の見直しで取り分も下がる。
既存薬は、後発品と選定療養で痩せる。バイオシミラーは同業が増えて薬価が下がり、利益にならない。売上は 10 年で 4 割縮む。
研究開発費は大きく削るが、核酸医薬や細胞医薬の芽は育たない。営業損益は赤字に落ちる。もう「柱を入れ替えられる会社」ではなくなる。
配当は途中で減らし、自社株買いはやめるが、10 年の還元の合計は赤字の穴を手元の純現金と持ち合い株の売却で埋めて払う。残るのは純現金と持ち合い株で、会社は事業の縮小か、他社との統合を迫られる。
- コア新薬 5 品(国内):数量 6,800(対象疾患の国内処方薬市場(億円、2026 年の価格で実質。推定))× 価格 3.8%(持田のシェア × 薬価の指数(2026 年=1、名目))→ 売上 260 億円・営業利益 47 億円。市場×シェア 4.5%×価格の指数 0.85
- 既存薬・バイオシミラーほか(国内):数量 13,500(関連する国内処方薬市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 2.1%(持田のシェア × 薬価の指数(名目))→ 売上 287 億円・営業利益 23 億円。市場×シェア 2.5%×価格の指数 0.85
- ヘルスケア・バイオマテリアルほか:数量 9,000(関連市場の合計(億円、実質。推定))× 価格 1.9%(持田のシェア × 価格の指数(名目))→ 売上 168 億円・営業利益 5 億円
倍率:純利益は赤字に近く、稼ぐ力(利益 ÷ k)では値が付かない。純現金と売れる資産の税後(約 380 億円)を、今の自己資本 1,403 億円に掛ける PBR 0.27 倍で置いた。
確率:導入品が外れ、後発品と選定療養で既存薬が痩せて売上が 4 割縮む構造的な負け筋。単一領域ではなく分散している分、同領域の参天・科研より深さは浅く、確率は 13% 止まり。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コア新薬 5 品(国内)
潰瘍性大腸炎のオンボー・コレチメント、痛風・高尿酸血症のユリス、慢性便秘症のグーフィス、肺高血圧症のトレプロスト。会社が「コア事業」と呼ぶ成長の柱。
| 数量対象疾患の国内処方薬市場(億円、2026 年の価格で実質。推定) | 価格持田のシェア × 薬価の指数(2026 年=1、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,500 | 4.6% | 300 | 105 |
| 10 年後 中立 | 7,150 | 7.2% | 515 | 206 |
取り方:コア新薬 5 品の売上を 300 億円と置いた(決算で確認できたのはオンボー 104・ユリス 63・トレプロスト 61 の合計 228 億円。残りのコレチメントとグーフィスは推定)。対象疾患の国内市場(潰瘍性大腸炎・痛風・慢性便秘症・肺高血圧症)を合計 6,500 億円(実質・推定)、持田のシェアを約 4.6% とした。市場の数量は高齢化で 10 年 1.10 倍。薬価は毎年下がるが、新薬は新薬創出の加算などで下げが小さく、価格の指数は中立で 0.90。シェアはオンボーなどの伸びで 8% まで上がる。競合は武田・田辺ファーマ・アッヴィなどの生物学的製剤、帝人ファーマなどの痛風薬。決算短信の製品別表は開けず、この区分は推定。
既存薬・バイオシミラーほか(国内)
高純度 EPA 製剤エパデール、子宮内膜症薬ジエノゲスト製剤(ディナゲスト)、バイオシミラー、そのほかの処方薬と導入・販売品。
| 数量関連する国内処方薬市場の合計(億円、実質。推定) | 価格持田のシェア × 薬価の指数(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14,000 | 4.9% | 680 | 140 |
| 10 年後 中立 | 14,280 | 4.0% | 565 | 119 |
取り方:既存薬・バイオシミラー・導入販売品を 680 億円と置いた(推定。エパデールは数量シェア首位だが、後発品と選定療養で縮む。ジエノゲスト製剤とバイオシミラーは増える)。関連市場を 14,000 億円(実質)、シェアを約 4.9% とした。市場の数量は横ばい(10 年 1.02 倍)。価格の指数は毎年の薬価引き下げで中立 0.90。シェアは後発品に削られ 4.4% まで下がる。ここまで削られても、バイオシミラー 3 品の追加で下げ幅は一部抑える。競合は後発品各社とバイオシミラーの日本化薬・サンド・ファイザーなど。
ヘルスケア・バイオマテリアルほか
一般用医薬品・機能性食品などのヘルスケア、再生医療向けのバイオマテリアル、海外へのライセンス収入ほか。
| 数量関連市場の合計(億円、実質。推定) | 価格持田のシェア × 価格の指数(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,500 | 2.0% | 190 | 20 |
| 10 年後 中立 | 9,500 | 3.0% | 284 | 31 |
取り方:ヘルスケア(一般用医薬品・機能性食品)、バイオマテリアル、ライセンス収入ほかを 190 億円と置いた(推定)。関連市場を 9,500 億円(実質)、シェアを 2.0% とした。市場の数量は人口減と健康志向でほぼ横ばい。価格の指数はブランド品の値上げで中立 1.30(物価 1.34 に近い)。シェアはバイオマテリアルなど成長事業の拡大で 2.3% まで上がる。利益率は低く 11%。
リスクと懸念
新薬 5 品への依存
成長のほとんどを 5 品が担う。オンボーは 1 年で売上が倍近くになったが、競合の生物学的製剤が増えれば伸びが鈍る。1 品でも想定を外すと、計画全体が崩れる。
導入品の契約リスク
多くの新薬は外から導入した品で、取り分を提携先と分け合う。契約が更新で見直されれば、育った品の利益が減る。自社創薬の薄さが、特許切れ後の次の柱を作る力の弱さにつながる。
既存薬の後発品と選定療養
エパデールやジエノゲスト製剤は、後発品と長期収載品の選定療養で数量が削られる。薬価は毎年下がるので、売上の減りが早く、新薬の伸びを打ち消しやすい。
研究開発費の重さ
研究開発費は年 140 億円台で営業利益を上回る。核酸医薬・細胞医薬・バイオマテリアルは当たるまで長く、外れれば費用だけが残る。売上が伸びても利益率が上がりにくい。
資本効率の低さ
過去 10 年の ROE の中央値は 6%台で、資本コストを下回ってきた。現金と持ち合い株で自己資本が膨らみ、利益を生まない。政策保有株の縮小と還元の拡大が遅れれば、倍率は上がらない。
バイオシミラーの競争激化
国内首位だが、同業の参入が相次ぎ、薬価も先発の 7 割程度から始まる。開発費が重く、利益が出るまで時間がかかる。3 品の追加承認が遅れると、既存薬の減りを埋められない。
株主構成と持ち合い
財団と創業家筋の持ち株が厚く、買収圧力は弱い。安定の反面、外からの還元の圧力も弱い。政策保有株の売出しは 38 億円とまだ小さく、本気で変わるのか見極めが要る。
今後の分かれ目
- オンボーの売上が計画どおり 150 億円を超えて伸びる
- コア新薬の柱がはっきりし、強気側の筋書きに近づく。利益率は 10% を超える。
- 2028 年度までに循環器・消化器で導入品が 3 品決まる
- 既存薬の減りを埋める手段が確保され、中立から強気側へ寄る。
- エパデールやジエノゲスト製剤の数量が後発品で想定より速く減る
- 既存薬の減りが先に来て、利益率が上がらず、慎重側の筋書きに近づく。
- 政策保有株の縮小が進み、自社株買いが年 100 億円規模に拡大する
- 遊んでいた資産が株主に戻り、ROE が上がって、評価が強気側に動く。
- 導入契約の更新で取り分が下がる品が出る
- 育った新薬の利益が減り、慎重側の筋書きに近づく。
- バイオシミラーの追加承認が遅れる、または新規品の薬価が想定より低い
- 成長事業が利益にならず、研究開発費の負担だけが残る。
見ておくもの
- オンボー・ユリス・トレプロストの四半期売上と、コア 5 品の合計(会社目標 2027 年度 480 億円)
- 営業利益率の推移(会社目標 2027 年度 120 億円、2031 年度 15%)
- エパデール・ジエノゲスト製剤の数量と、選定療養の影響
- 導入品の決定数(循環器・消化器で 3 品)とバイオシミラーの追加承認
- 政策保有株の売出しと自社株買いの規模、配当(中計の間は下限を守る方針)の水準
- 研究開発費の営業利益比(核酸医薬・細胞医薬の臨床の進み)
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに市場(実質)× シェア × 価格の指数(名目)で 10 年を積み、薬価の毎年の下げは価格の指数に入れた。資本コストは基本 7.5% に quality(循環 −0.5・値決め 0・借金 0・寿命 +0.5 で 0)を足した 7.5%。倍率は正当化 PER の上限に対し、楽観 9 割・やや楽観 8 割・中立 85%・やや悲観 約 97%(構造的な負けとして上限の内側)に置き、悲観は純現金と売れる資産の税後から出した(谷の PBR は使っていない)。今の PER・PBR・株価からは出発していない。製品別・セグメント別の開示が開けなかったので、売上の分け方は推定である。リースの形の変更(2028/03 期以降)は、医薬品の製造販売で店舗を持たないので影響は小さく、10 年後は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.4→13.65 倍・やや楽観 PER 10.2→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。