結論
PRISM BioLabは、タンパク質同士の結合を制御する独自技術を持つ創薬企業である。筆者の結論は「割高」だ。研究成果が新薬になる可能性は十分にあるが、その可能性を現在の株主がどれだけ受け取れるかには、大きな不確実性が残る。
同社の売り物は、完成した医薬品ではない。PepMeticsという低分子創薬技術を使って候補化合物を見つけ、製薬会社から研究費、契約一時金、開発の節目に応じた収入を得る。エーザイと共同創出したE7386、小原薬品ではなく大原薬品工業に導出したPRI-724という臨床段階の資産もある。しかし、2025年9月期の売上高6.8億円の大部分は少数の提携先に集中し、営業損失は7.7億円に達した。
評価を分けるのは、E7386の有効性と共同開発契約の更新力である。E7386は初期臨床試験で抗腫瘍効果を示唆する結果を得たが、承認に必要な比較試験を通過したわけではない。一方、PRI-724は2026年10月、MASH由来肝硬変患者の第Ⅱ相試験で主要評価項目の有意な改善が確認できなかった。さらにLilly、Servier、Boehringer Ingelheimとの研究契約が相次いで終了している。
2025年9月末には約29億円の純現金があった。ただし、研究開発で現金が減り続けており、その全額を株主の取り分として数えることはできない。2026年6月末の現預金は23.3億円まで減少した。今後の増資も現実的な前提である。
5つの筋書きを株主の希薄化まで考慮して評価すると、10年価値を現在に割り引いた本質価値は約11.7億円となる。比較対象の現在時価総額は約48.8億円で、差は約マイナス76%だ。技術的成功が大きな上振れを生む余地はあるが、その上振れだけを現在の株価の根拠にするには安全域が足りない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初の問いは「10年後も研究費を集められる会社か」ではなく、「10年後に自分のものになる利益を生む会社か」である。PRISM BioLabには、誰でも簡単に再現できるとは言えない創薬技術がある。創薬が難しいPPI標的から臨床候補品を生み出した実績は、技術の存在を裏付ける。だが、技術を持つことと、それを長期間にわたり高い資本利益率で収益化できることの間には距離がある。
製薬会社は研究契約を結んでも、成果が出なければ契約を終えられる。Lillyとの取引が2025年9月期売上の大部分を占め、その契約が終了した事実は、この弱さを端的に示している。研究の成功率を高めるために研究員や設備を増やすほど、承認や大型契約が遅れた際の損失も大きくなる。
現在の純現金は、無条件に株主へ戻せる余剰資金ではない。研究員の給与、実験設備、継続中の研究義務、提携案件を維持する費用に使うための資金である。現金を使って新しい候補薬が生まれれば価値は増えるが、生まれなければ株主資本が減る。現時点では、その再投資利回りが資本コストを上回ることを確かめるだけの商業実績がない。
筆者はE7386の成功可能性を無視しない。新薬が実際に承認され、一定の市場占有率を獲得した場合、ロイヤルティは研究費よりはるかに高い利益率を持ちうる。その場合、今の事業の姿が10年後には大きく変わっている。一方で、新薬が不成功でも長く持てる事業基盤があるかと問われれば、まだ自信を持って肯定できない。
したがって、この会社は現時点で安定した利益を買う対象というより、複数の創薬オプションを保有する会社に近い。オプションには大きな上振れがあるが、期限が来るまで研究費がかかり、時には増資によって取り分が減る。十分な安全域を要求する理由は、技術を低く評価するためではなく、利益に変わる確率と株主への帰属が読みにくいためである。
何で稼ぐ会社か
PRISM BioLabの事業は、独自のPepMetics技術を使って新薬候補を創り出すことである。従来は薬にしにくかったタンパク質間相互作用、すなわちPPIを標的に、小さな分子で結合や働きを制御する。大きな分子である抗体やペプチドとは異なり、細胞内への到達や経口投与を狙えることが技術上の魅力だ。
会社の開示上は「創薬事業」という単一セグメントである。ただし、経済的な性質は二つに分かれる。一つは製薬会社との共同創薬であり、研究契約、化合物探索、ライセンス契約に伴う一時金やマイルストンが売上になる。もう一つは、過去に導出した候補薬が臨床開発を通過した後の開発マイルストンと販売ロイヤルティである。前者は研究契約の継続と新規獲得に左右され、後者は数年単位の治験の成否に左右される。
共同創薬では小野薬品工業、Roche・Genentech、Merckなどの大手製薬企業との取引実績がある。2025年9月期末には6社と共同開発契約があったが、2026年6月末に実際に共同開発プログラムを進めていた相手先は4社だった。2025年9月期の売上の77.3%はLilly向けで、その契約は期中に終了した。売上の16.2%を占めた小野薬品工業と合わせると、2社で全体の93.5%になる。この集中を無視して売上高を継続収益と見ることはできない。
導出済みのE7386はエーザイが臨床試験を主導し、レンビマとの併用で進行子宮内膜がんなどを対象に開発を進める。PRI-724は大原薬品工業が肝硬変で開発する。自社のFEPなどはさらに初期の探索段階にある。開発費の大きい後期臨床試験を提携先に任せられる半面、開発の優先順位や販売戦略をPRISM BioLabだけでは決められない。
研究基盤の拡張では、2026年9月期に年間10件の標的スクリーニングを行う計画を掲げた。2026年8月の開示時点で、結果を評価した7件のうち5件でヒット化合物を得ている。ただし、ヒット化合物は薬効や安全性が検証された新薬ではない。研究の出発点と、上市して利益を生む製品との間には大きな距離がある。
優良さと弱いところ
同社の強みは、約20年かけて蓄積した化合物ライブラリー、合成化学の知見、PPIに適した評価技術を一体で持っていることだ。PepMetics関連の特許や、エーザイとの共同創出品が臨床段階に進んだ実績は、単なる創薬構想との差を示している。2026年には米国で化合物ライブラリーに関する特許査定も開示した。技術の再現性を高める投資にも意味がある。
ただし、研究技術の独自性と株主にとっての強い堀は同じではない。2025年9月期の売上はLillyへの依存が極めて高く、同社との契約終了後も同水準の対価を他社から継続して受け取れることは確認されていない。契約単価を一方的に引き上げた実績も見つからない。大手製薬会社には自社研究所、競合技術、提携先の変更という選択肢がある。
利益を再投資したときの収益率も未検証だ。2022年9月期には契約収入によって黒字だったが、その後は3期連続で営業赤字となった。2025年9月期には約6.2億円を研究開発に投じたものの、新規の大型契約が恒常的な利益を生む形には至っていない。新薬の成功前にROICやROEを通常の優良企業のように評価することはできない。
2026年6月末には自己資本比率が75%を超えており、有利子負債への依存も小さい。それでも、現金を取り崩して開発を続ける会社にとって、無借金という事実だけでは財務上の堀にならない。研究費の増加が売上獲得を上回れば、資本は時間とともに減少する。
AIエージェント代替については、指定された人月型SI、業務SaaS、BPO、広告運用などの類型には該当しない。共同研究費は単純な人月販売ではなく、知的財産と研究成果を伴う契約である。ただし、AI創薬やタンパク質構造予測が競合技術の探索速度を上げ、PepMeticsの差別化を弱める可能性は別の技術リスクとして見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
創薬の世界市場は大きいが、PRISM BioLabにとって意味がある市場は医薬品売上の総額ではない。対象となる疾患、標的分子に依存する患者、そのうち実際に開発薬を投与できる患者を絞り、最後に製薬会社から受け取るロイヤルティまで落として初めて収益機会になる。候補化合物が成功する前から、対象疾患の患者数をそのまま自社の顧客数として数えることはできない。
2025年12月の会社資料では、E7386の子宮内膜がんについて、対象地域の有症患者を約12.7万人、標的依存性がある患者を約4.1万人と推計した。同じ資料は比較対象としてレンビマの売上約4億9,200万ドルを掲げる。ただし、これはE7386の売上予想でも、PRISM BioLabが受け取るロイヤルティでもない。PRI-724の肝硬変については国内約10.8万人の患者、標的依存性がある約3万人を挙げているが、こちらも臨床試験の成功が前提となる。
競争相手は、他の日本の創薬ベンチャーだけではない。世界の大手製薬会社が持つ創薬研究所のほか、SchrödingerやRelay Therapeuticsの計算創薬、PeptiDreamの特殊ペプチド技術、標的タンパク質を分解するPROTAC、抗体薬物複合体なども、同じ治療課題を異なる方法で解こうとしている。技術の市場は用途ごとに重なり、PPI創薬プラットフォーム全体に関する信頼できる統一市場規模や同社の世界シェアは確認できない。したがって、同社に特定の世界シェアを割り当てることはしない。
E7386は2026年10月に公表された臨床研究で、30例中11例に奏効が見られ、客観的奏効率は36.7%だった。期待を持てる結果だが、比較対照群のない初期段階のデータであり、標準治療を上回る利益や規制当局の承認を証明するものではない。第Ⅱ相以降の有効性、安全性、適切な投与量、競合薬の進歩によって商品価値は変わる。
一方、PRI-724のMASH由来肝硬変患者35例の無作為化比較試験では、2026年10月に主要評価項目の有意な改善が確認されなかった。肝炎ウイルス由来患者を対象とする別の試験群は継続しており、PRI-724全体の可能性が消えたわけではない。しかし、全適応で同じ成功を期待する根拠は弱まった。
10年先にも、未充足の医療需要と新しい創薬技術への需要は残るだろう。問題は、その需要をどの技術が取り込み、研究費と開発リスクを負担するのが誰で、上市後の利益をどの契約当事者が受け取るかである。低分子PPI創薬という領域の成長を、そのままPRISM BioLabの利益成長に読み替えることはできない。
資本政策と M&A
資本配分の中心は、配当や自社株買いではなく研究開発である。2025年9月期の研究開発費は約6.2億円で、2026年9月期第3四半期までの9か月間には約6.4億円を使った。2025年12月の事業計画では年間10件のスクリーニングを掲げ、IPOで調達した資金から2026年に研究開発費約7.6億円を充てる計画を示した。これは開発活動の数量目標と支出計画であり、売上高、営業利益、ROEの達成を約束した中期利益計画ではない。
同社は当面、研究開発資金の確保を優先し、配当を予定していない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額についても、確認した資料に数値の約束はない。安定収益が得られるようになれば配当を検討する方針にとどまる。過去の資本政策は、2024年の上場による資金調達と研究設備・人材への投資が中心であり、上場企業として10年間の買収や株主還元の成否を評価できる履歴はない。
研究費を回収できるかは提携契約の実現額次第だ。エーザイとの契約には研究費や段階的な支払いを含めて250億円以上という契約総額の開示がある。しかし、将来の開発・販売に条件が付いた金額を、現時点で受け取れる現金や確定利益として計上することはできない。
資本構成には注意が必要である。2025年9月末の上位10株主の保有比率は約62%で、ベンチャーキャピタルの存在感が大きい。2026年6月末時点で潜在株式も存在する。新薬承認までの研究費を外部株主から集め続ければ、会社全体の価値が維持されても既存株主の取り分は小さくなる。
製薬大手による買収や追加出資は将来の選択肢だが、公表済みのTOB、MBO、上場廃止予定は確認されなかった。また、2026年8月公表の第3四半期短信には継続企業の前提に関する重要事象等の説明がある一方、正式な継続企業の前提に関する注記は「該当事項はありません」とされている。この二つは区別して評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PepMeticsは、単に研究員の労働時間を販売する事業ではない。化合物ライブラリー、合成化学、PPI評価、構造解析を結び付けた創薬基盤であり、これまで開発が難しかった細胞内標的を低分子化合物で狙える。E7386とPRI-724が実際に臨床段階に進んだことで、研究だけの会社ではないことも示した。大手製薬会社が開発費の重い臨床試験を担う契約形態は、成功後の利益を効率よく受け取るうえで魅力がある。
E7386では、レンビマ併用の30例の試験で11例の奏効が報告された。今後の試験で効果が確認できれば、子宮内膜がん以外への適応拡大も視野に入る。会社が示した標的依存性患者の市場は、子宮内膜がんだけでも約4万人である。薬の販売収入そのものがPRISM BioLabに入るわけではないが、販売ロイヤルティという継続的な収益源が生まれる可能性は大きい。
2026年のスクリーニングでは、評価できた7件のうち5件でヒット化合物が得られた。これは会社が目標とした5割を上回る。AI企業との提携により、今後は構造予測と実験を組み合わせて候補探索の速度を上げられるかもしれない。毎年複数の有望な化合物を新たな提携契約に結び付ければ、個別の失敗に左右されにくい収益構造へ変わる。
提携先に大手製薬企業が含まれ、上市までの大規模臨床試験を自社だけで負担しなくてよい点も評価できる。成功した医薬品のロイヤルティは原価負担が小さい。研究開発の固定費を一度上回れば利益は急拡大する。複数の上市品と継続的な共同研究を持てるようになれば、現在の企業規模を大きく超える価値を生みうる。
慎重な見方
技術の独自性を認めても、その技術を購入する顧客が継続して高い対価を払うとは限らない。2025年9月期の売上の77.3%を占めたLillyとの契約は終了した。その後Servierとの契約も終了し、Boehringer Ingelheimとの契約も2026年に満了した。複数の大手製薬会社と契約した実績はあるが、それが長期の顧客固定化や値上げ力を証明したとは言えない。
2026年6月末の現預金は23.3億円で、前年9月末から減少している。同じ9か月間の営業損失は8.3億円だった。臨床試験の結果が出る前に研究資金の追加調達が必要になる可能性は高く、増資条件が悪ければ既存株主の持分は大きく薄まる。将来会社が成功しても、今日の株主がその成功を十分受け取れないことがある。
臨床開発にも既に警戒信号がある。PRI-724はMASH由来肝硬変患者の無作為化試験で、主要評価項目の有意な改善を示せなかった。別の試験群は続いているものの、全適応の成功を一括して期待するのは適切ではない。E7386についても、初期段階の奏効率は期待材料だが、既存治療との比較、有害事象、治験対象の選び方によって後期試験の結果は変わる。
競争相手は自社技術の模倣品だけではない。大手製薬の内製創薬、計算創薬、標的タンパク質分解技術、抗体薬などが、同じ疾患に別の方法から挑む。AIによる候補探索の高速化はPRISM BioLabにも利益をもたらしうるが、競合にも同じ恩恵を与える。研究技術そのものが陳腐化すれば、過去の契約実績が新規契約を保証することはない。
この会社に必要なのは、研究成果の数ではなく、研究費を超える現金収入である。上市が遅れ、提携収入が小さな一時金にとどまり、毎年赤字を埋めるための資金調達が続けば、10年後の会社の価値も現在の株主の取り分も大きく減る。
どちらに重みを置いたか
技術とE7386の可能性は評価するが、現時点では慎重な見方を重くする。開示済みの共同研究先が6社から実際に稼働する4社へ変わり、売上の大部分を占めたLillyとの契約も終了した。PRI-724のMASH試験で主要評価項目の有意差が出なかったことも、成功を当然視できない具体的な証拠だ。
確率は楽観側24%に対して、やや悲観と悲観の合計を51%とした。下に寄せる理由は、製品がまだ上市していないこと、研究赤字が続くこと、そして増資による希薄化が企業価値と別に既存株主へ影響することである。純現金があるため直ちに事業が消えるとは見ないが、現在の株価には上側の成功が相当程度織り込まれていると判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 71 円26 億円(+ 還元の換算額還元の合計 3 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 32 円12 億円、今との差 −73.1%、 期待の年率 −4.5%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 555 円205 億円 | 28 円10 億円 | +393.8% | +18.0% | 47 円17 億円 |
| やや楽観 | 16% | 143 円53 億円 | 8 円3 億円 | +27.7% | +2.5% | 24 円9 億円 |
| 中立 | 25% | 10 円4 億円 | 0 円0 億円 | −91.3% | −21.7% | 3 円1 億円 |
| やや悲観 | 30% | 5 円2 億円 | 0 円0 億円 | −95.7% | −26.9% | 2 円1 億円 |
| 悲観 | 21% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.7% | −43.3% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 71 円26 億円 | 3 円1 億円 | −36.5% | −4.5% | 75 円28 億円 |
今の株価時価総額 118 円44 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% E7386を含む複数の導出品が成功 利益 20 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 555 円205 億円
E7386が後期試験で有効性を確認され、エーザイによる承認申請と上市が実現する。子宮内膜がんでの採用に加え、一部の追加適応でも売上が生まれる。さらに自社探索プログラムから導出した別の候補品が後期開発に進み、複数の販売ロイヤルティを獲得する。2035年には対象となる実治療患者数が年間1万5,000人に達する。
共同創薬では毎年のスクリーニングから一定数のリード化合物を安定して作れるようになり、提携先が14社相当まで増える。研究費とマイルストンの組み合わせも改善する。技術の独自性が、製薬会社との契約条件にも表れるようになる。研究開発費は増えるが、上市後収入が固定費を大きく上回る。
初期の赤字期を越えるため追加増資を行うが、その後は内部資金で研究を進め、株主還元も始める。累積の純利益は43億円、追加払込資金は10億円、10年間の還元は12億円となり、自己資本は68億円に増える。それでも技術競争と特許期限があるため、独占的な恒久収益を前提にはしない。
- 共同創薬・研究契約収入:数量 14.0(年度内に収益機会を持つ共同創薬先の社数相当(社))× 価格 2.50(1社相当当たり年間認識売上高(億円、研究費と一時金を含む))→ 売上 35 億円・営業利益 16 億円。共同研究先14社相当。物価上昇に加え、候補化合物の進展で高額マイルストンの比率が増える。研究契約の貢献利益率45%。
- 導出品の上市後ロイヤルティ・後期開発収入:数量 15,000(導出品の対象適応における年間実治療患者数相当(人))× 価格 0.00(患者1人・1年当たりのPRISM BioLab受取額(億円、仮定))→ 売上 38 億円・営業利益 36 億円。複数の上市適応における年間実治療患者1万5,000人、1人当たり受取額25万円。販売・製造を提携先が担うため限界利益率95%。
倍率:2035年のROEは20÷68=29.4%、資本コストは9.25%。弱い堀として超過収益の残存割合を3分の1とし、RONIC=9.25%+3分の1×(29.4%−9.25%)=約16.0%。長期名目成長率2%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約12.07倍。市場の過去倍率は用いず、式の上限を適用する。
確率:E7386の開発成功に加え、別の臨床候補品や新規導出品の商業化、共同研究先の大幅増加が重なる筋である。技術的な成功の実例はあるが、複数の成功が連続する条件は厳しいため8%とする。
やや楽観 16% E7386が上市し、共同創薬も黒字化 利益 7 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 143 円53 億円
E7386が臨床開発を通過し、まず一部の子宮内膜がん患者向けに上市される。追加適応の拡大は限定的で、PRISM BioLabに帰属する収入は提携先の売上の一部分にとどまる。それでも年間7,000人に相当する治療収入が生まれ、利益率の高い継続収益源となる。
共同創薬は新たな契約と既存契約の終了を繰り返しながら、稼働先が11社相当へ増える。PepMeticsの実績が評価され、平均契約収入も改善する。ただし、新しい標的や薬剤形態との競争は続き、圧倒的な値決め力を持つには至らない。研究開発部門は現在より大きくなるが、臨床品からの収益で年間の固定費を賄える。
開発の前半には追加資金が必要であり、18億円の増資を実施する。10年間の累計利益は14億円で、安定収益が見えてから4億円の還元を行う。期末自己資本は55億円となるが、既存株主の持分は7割に薄まる。この株主への希薄化を含めても、技術が一定の経済的価値に転じる筋である。
- 共同創薬・研究契約収入:数量 11.0(年度内に収益機会を持つ共同創薬先の社数相当(社))× 価格 2.25(1社相当当たり年間認識売上高(億円、研究費と一時金を含む))→ 売上 25 億円・営業利益 12 億円。共同創薬先11社相当。新規ライセンスの拡大と開発段階の進展により、1社当たりの認識売上が改善。貢献利益率47%。
- 導出品の上市後ロイヤルティ・後期開発収入:数量 7,000(導出品の対象適応における年間実治療患者数相当(人))× 価格 0.00(患者1人・1年当たりのPRISM BioLab受取額(億円、仮定))→ 売上 16 億円・営業利益 15 億円。E7386の限定的な上市・普及。年間実治療患者7,000人、当社の受取額は1人22.5万円。
倍率:2035年のROEは6.8÷55=12.36%。k9.25%、弱い堀の残存割合3分の1からRONICは約10.29%。長期成長率2%を用いると正当化PERは約11.11倍となる。収益化後も研究開発が必要であり、特許期限を越える高成長を永続倍率には含めない。
確率:E7386には初期臨床の有効性を示唆するデータがあり、上市可能性をゼロにはできない。ただし、適応拡大や大型の連続成功まで求めないため、楽観より実現条件が緩い16%とする。
中立 25% 研究成果は出るが、全社黒字化は遠い 利益 −7 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10 円4 億円
PepMeticsによる探索は継続し、技術の価値は失われない。会社は新しい標的からヒット化合物を作り、国内外の製薬会社と契約を結ぶ。ただし、契約終了も続くため、2035年の共同創薬先は8社相当にとどまる。物価上昇分を含めて1社当たりの研究収入は増えるが、2025年に生じた大型の一時的収入が毎年繰り返されるわけではない。
臨床開発品からは限定的な商業収入が生じる。E7386などの一部適応で小規模な上市が実現しても、実際の投与患者は年間1,000人程度にとどまり、提携先から得るロイヤルティは年間2億円ほどとなる。PRI-724のMASH適応は主力収益源にはならない。研究設備や専門人材を維持するため、なお営業赤字が残る。
創薬事業の継続には追加資本が必要になる。10年間の純損失累計は70億円、増資による払込資本の追加は55億円と想定する。2025年9月期末の自己資本27億円は2035年に12億円となる。会社は存続しても既存株主の持分は45%に薄まり、技術の存在がそのまま高い株主価値に結び付かない十年となる。
- 共同創薬・研究契約収入:数量 8.0(年度内に収益機会を持つ共同創薬先の社数相当(社))× 価格 1.52(1社相当当たり年間認識売上高(億円、研究費と一時金を含む))→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。共同創薬先8社相当。平均収入は2025年の代理単価の約1.35倍で、主として物価上昇を反映する。大型一時金の恒常化は仮定しない。
- 導出品の上市後ロイヤルティ・後期開発収入:数量 1,000(導出品の対象適応における年間実治療患者数相当(人))× 価格 0.00(患者1人・1年当たりのPRISM BioLab受取額(億円、仮定))→ 売上 2 億円・営業利益 2 億円。導出品の限定適応で年間1,000人相当の治療収入が生まれる。ただし、十分な市場浸透は実現しない。
倍率:2035年も純損失が続き、ROEは約マイナス58%である。正の利益にPERを掛ける評価はできない。追加増資を含めた2035年の自己資本12億円には継続研究のための資金が含まれるが、赤字事業を維持する負担を考慮し、資産額をそのまま株主価値とは見ない。純現金などの残存資産の利用可能性を考えてPBR0.7倍で評価する。
確率:探索技術が一定の契約収入を生む一方で、2025年の顧客集中と2026年の契約終了、研究赤字の継続を重視する。小規模な上市収入が実現しても固定費を賄えない状態を中心に置き、25%とする。
やや悲観 30% 導出収入が育たず、増資で研究を継続 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5 円2 億円
E7386の後期開発が遅れ、期待された上市の時期が10年の評価期間を越える。PRI-724の開発も適応を絞り込む方向へ進み、安定した販売ロイヤルティは生まれない。PepMeticsは研究技術として使われ続けるが、製薬会社の内製研究や他の創薬手法との競争により、新規契約は伸び悩む。
共同創薬先は5社相当へ縮小し、案件ごとの交渉力も弱まる。研究費単価は物価上昇ほどには増えず、同社は人員と研究対象を減らして支出を抑える。それでも2035年には営業赤字が残り、製薬会社からの大きな一時金に頼る経営から抜け出せない。
会社は存続を目指して累計約70億円の資本調達を実施するが、同額程度の損失がその資本を消費する。期末の帳簿上の自己資本は27億円を維持しても、それは長期の営業収益で作った蓄積ではない。多くは追加出資による資本であり、研究を継続するために必要な資金である。既存株主の持分は約35%に下がり、会社が生き残ることと従来の株主の利益が保たれることの違いが明確になる。
- 共同創薬・研究契約収入:数量 5.0(年度内に収益機会を持つ共同創薬先の社数相当(社))× 価格 1.40(1社相当当たり年間認識売上高(億円、研究費と一時金を含む))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。共同創薬先5社相当。契約単価の実質的な低下と固定的な研究コストにより、貢献利益率が35%へ低下する。
- 導出品の上市後ロイヤルティ・後期開発収入:数量 0.0(導出品の対象適応における年間実治療患者数相当(人))× 価格 0.00(患者1人・1年当たりのPRISM BioLab受取額(億円、仮定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。臨床開発の遅延と失敗により、評価期間内に上市後の販売ロイヤルティは発生しない。
倍率:営業赤字が続くためPERは使用しない。PBRの分母は2025年9月期の自己資本27億円とし、10年間の利益や新規払込資本を上乗せした大きな帳簿価額には倍率を掛けない。将来の売却可能な純資産を、研究義務と必要運転資金控除後の5.4億円と仮定し、その資産床に一致する評価とする。
確率:下に寄せる理由:2025年売上の大部分を占めたLillyとの契約が終了し、2026年にはBoehringer Ingelheimの契約も満了した。既存提携先の離脱と臨床開発の遅れが重なる可能性は低くないため30%とする。
悲観 21% 創薬事業を大幅縮小し、残存資産だけが残る 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
E7386は追加試験で既存治療を上回る効果を確認できず、エーザイが優先順位を引き下げる。PRI-724も残る試験群で十分な有効性を示せず、大きな販売収入を期待できなくなる。新しいPepMetics化合物は探索段階にとどまり、後期臨床品の補充が進まない。複数の製薬会社が契約を終了する。
資金調達環境も厳しくなり、会社は研究領域を大幅に絞る。共同創薬先は2社相当まで減り、研究人員を削減して固定費を落とす。それでも残った契約収入だけでは全社費用を賄えない。製薬会社への事業譲渡、技術資産の売却、追加増資による延命が主な選択肢になる。
10年間では約62億円の純損失が生じ、約40億円の追加出資を受けるが、期末自己資本は5億円に縮む。現金は研究活動と整理費用に消費され、清算可能な資産はわずかとなる。会社が小さな研究所として存続する可能性は残すものの、以前のように多数の新薬候補を生み出せる状態ではない。株主への還元はなく、既存株主の持分も約30%に下がる。
- 共同創薬・研究契約収入:数量 2.0(年度内に収益機会を持つ共同創薬先の社数相当(社))× 価格 1.25(1社相当当たり年間認識売上高(億円、研究費と一時金を含む))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。提携先2社相当。大型一時金が消え、研究費の負担により貢献利益率30%へ低下する。
- 導出品の上市後ロイヤルティ・後期開発収入:数量 0.0(導出品の対象適応における年間実治療患者数相当(人))× 価格 0.00(患者1人・1年当たりのPRISM BioLab受取額(億円、仮定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。臨床開発品が上市できず、販売ロイヤルティはゼロのままである。
倍率:利益はマイナスで、事業価値を正のPERで算定できない。研究資産の減損と累積赤字で自己資本が5億円まで減った状態を想定し、残る換金可能資産の税後回収額0.5億円を評価する。PBR0.1倍は過去の市場倍率ではなく、減損後の純資産5億円に対する回収可能額の割合である。
確率:E7386を含む主力開発品が承認に結び付かず、共同研究先も減る複合的な失敗を想定する。PRI-724の試験で既に主要評価項目の不達が確認されたことを重視するが、技術資産全体が消滅することまでは既定とせず21%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
共同創薬・研究契約収入
製薬企業との共同研究、候補化合物探索、導出契約に伴う研究費、契約一時金、初期開発マイルストンを得る。会計上の単一セグメントを収益源によって分けた分析上の区分である。
| 数量年度内に収益機会を持つ共同創薬先の社数相当(社) | 価格1社相当当たり年間認識売上高(億円、研究費と一時金を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 6.0 | 1.13 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 1.52 | 12 | 5 |
取り方:2025年9月期有価証券報告書の共同開発契約先6社を数量の代理指標とする。全社売上6.773億円を6社相当に対応させると、1社当たり年間売上は約1.129億円となる。これは実際の契約単価ではなく、収益認識額の代理値である。同年度はLillyが売上の77.3%を占め、しかも期中に契約終了しているため、6社に等しい売上力があるとは解釈しない。2026年6月末の稼働共同開発先は4社であり、将来数量の出発点として重視する。2025年度には導出済み臨床開発品からの開発マイルストン収入がなかったため、年度売上の全額をこの区分に帰属させる。売上総利益約2.70億円を研究費・本社費控除前の貢献利益としてop_okuに記載した。これは会社が公表するセグメント営業利益ではなく、営業損失7.74億円との差額約10.44億円は全社研究開発費と販管費に相当する。
導出品の上市後ロイヤルティ・後期開発収入
E7386やPRI-724などの導出品が開発に成功した場合、提携先から後期マイルストンや販売ロイヤルティを受け取る。現在は自社による医薬品の販売がなく、将来の収益は条件付きである。
| 数量導出品の対象適応における年間実治療患者数相当(人) | 価格患者1人・1年当たりのPRISM BioLab受取額(億円、仮定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.00 | 2 | 2 |
取り方:2025年9月期時点でE7386、PRI-724は未上市であり、同年度の臨床開発プログラムによるマイルストン収入もなかったため、実現した上市後収入と治療患者数をゼロとする。将来の数量の上限を考える材料として、2025年12月会社資料にある子宮内膜がんの標的依存性患者約40,500人、国内肝硬変の約29,889人を参照する。ただし、これらは年間実投与患者ではない。患者1人当たりの受取額0.002億円は、仮に年間薬剤売上約667万円に対してロイヤルティ3%を得る場合の20万円という分析上の単価仮定であり、契約に記載された実際のロイヤルティ率や薬価ではない。提携先との契約条件は非開示であり、承認の成否も未確定である。
リスクと懸念
E7386の臨床試験不成功
E7386の初期臨床試験では、レンビマとの併用によって30例中11例に奏効が見られた。ただし、少人数の比較対照群を持たない試験であり、承認を保証するものではない。後期試験で標準治療との差が出ない、安全性上の問題が確認される、あるいはエーザイが開発の優先順位を変更する場合、最大の上振れ要因である上市後ロイヤルティの期待が失われる。
PRI-724の有効性に関する疑義
2026年10月14日、MASH由来非代償性肝硬変患者35例を対象とする第Ⅱ相試験で、主要評価項目のChild-Pughスコアについてプラセボ群に対する有意な改善が認められなかったと公表された。肝炎ウイルス由来患者の試験群は継続しているが、適応全体の成功確率を高く見積もる根拠は弱まった。追加の解析結果が開発継続の判断を左右する。
提携先集中と研究契約の終了
2025年9月期の売上の約94%をLillyと小野薬品工業の2社が占めた。Lillyとの契約は同年度に終了し、Servierとの契約も終了した。さらに2026年にはBoehringer Ingelheimとの契約が期間満了となった。新たな提携先を獲得できても、認識時期が一時金や研究進捗で変わるため、年度ごとの利益を安定して積み上げられるとは限らない。
現金消費と大規模な株式希薄化
2025年9月期の営業キャッシュフローは約14.7億円の流出だった。2026年6月末の現預金は23.3億円で、2025年9月末から減少した。現在の株主にとって、研究の継続に必要な追加資金がどの株価で調達されるかは極めて重要である。増資価格が低いほど発行株数は増え、薬が成功しても既存株主の取り分が小さくなる。
AI創薬と競合技術による差別化の低下
PepMeticsの化合物ライブラリーや評価技術は独自性を持つが、計算創薬、生成AIによる分子設計、タンパク質分解薬、抗体薬などの技術も進歩する。競合技術が同じ標的に対して高い有効性や安全性を実現すれば、製薬会社がPRISM BioLabの技術を選ぶ理由は弱くなる。AIを社内に取り入れて探索効率を高めるだけでは、競合との差が維持される保証にはならない。
共同開発先による意思決定と契約条件
同社は自ら製造販売する医薬品を持たず、導出後の臨床試験や商業化を製薬会社に委ねる。開発の延期、対象疾患の変更、販売地域の選択によって、受け取るマイルストンやロイヤルティは大きく変わる。契約総額として開示された大きな金額にも条件付きの支払いが含まれており、契約発表時点で全額が実現すると考えることはできない。
研究成果と経済的な利益の混同
2026年のスクリーニングでは評価済み7件のうち5件がヒット化合物を得たが、これは新薬承認率ではない。ヒットの後にも薬効、安全性、製造方法、臨床試験、規制当局の審査という多くの段階が残る。探索成功率の改善に研究費を投じても、候補化合物が導出契約や販売利益に結び付かなければ、増分投資収益率は資本コストを下回り続ける。
今後の分かれ目
- E7386の後期第Ⅱ相試験で、事前に定めた主要評価項目について明確な有効性が確認されたら
- 上市成功の確率を引き上げ、やや楽観と楽観の重みを増す。ただし、承認申請の要否、追加の第Ⅲ相試験、契約上のロイヤルティ率、必要資金を確認してから価値に反映する。
- E7386の後期試験で主要評価項目を達成できず、エーザイが開発を縮小・終了したら
- 最大の臨床開発オプションが失われるため、やや悲観・悲観の確率を大幅に引き上げる。共同創薬技術そのものが残っても、上市後収入を中心とした高収益化の見込みは下がる。
- 共同開発先が4社から継続的に増え、Lilly契約終了後も毎期の研究収入が伸びたら
- 研究技術の商業的な競争力が確認される。数量の中心値と1社当たり収入を引き上げ、営業赤字の縮小が実際に確認できれば中立の価値を上方修正する。
- 2026年以降も年間営業キャッシュフローの流出が大きく、十分な契約一時金が入らなかったら
- 今の預金残高と今後の研究費から資金調達までの余裕を見直し、増資を伴う筋書きのholder_shareを下げる。事業の価値と既存株主の取り分を分けて評価する。
- 新しい化合物について大手製薬会社との大型契約が締結され、受領済み一時金の金額まで開示されたら
- 確定した現金受領額を財務に反映する。条件付きの最大マイルストン総額は、実際の達成確率を検討せずに全額を価値へ足さない。
- PRI-724の継続中の肝炎ウイルス由来患者試験群で、有効性が確認されたら
- MASH由来患者の試験不成功とは分けて評価する。対象患者数、治療への採用率、契約上の受取条件を改めて見積もり、上市後収入の上振れとして扱う。
- 自社創薬のヒット化合物が臨床候補化合物に進み、継続的な新規導出契約が生まれたら
- スクリーニング件数ではなく実際の導出率と一時金収入を確認する。少数の既存臨床候補品だけに依存しない基盤が形成されれば、長期の事業継続力と再投資利回りを見直す。
見ておくもの
- E7386の後期第Ⅱ相試験の主要評価項目、比較対象、患者数、安全性、次の試験計画
- PRI-724の肝炎ウイルス由来患者コホートAの解析結果と開発継続判断
- 共同創薬プログラムの稼働提携先数と新規契約数
- 契約一時金、研究費、マイルストン、ロイヤルティの収入内訳
- Lilly契約終了後の売上集中度と小野薬品工業案件の進捗
- スクリーニングからヒット、リード、臨床候補、導出へ進む件数と転換率
- 研究開発費と営業キャッシュフローの流出額
- 3か月超の定期預金を含む現預金残高、契約負債、追加増資の有無
- 新株予約権の残高、発行済株式数、既存株主の持分希薄化
- エーザイとの契約に基づく確定マイルストン受領額と上市後の実際のロイヤルティ率
- AI創薬の提携成果と競合技術に対する探索性能の優位性
- 新薬候補の特許満了時期と独占期間の見通し
倍率と資本コストの決め方
財務と株数の基準には添付factsとbriefの2025年9月期実績、株価は2026年10月23日の132円、発行済株式数は2026年6月末の36,964,000株を用いた。2026年6月末の最新決算は資金繰りと事業進捗の確認に反映した。業績の起点から10期後を2035年9月期として評価している。
研究契約は稼働社数×1社当たり年間認識収入、上市後収入は対象患者の実投与数×1人当たり当社受取額に分けた。患者数とロイヤルティ単価には非開示の推定が含まれるため、実績とは明確に区別した。売上総利益から研究開発費・販管費を控除することで営業利益を組み立て、物価上昇は契約単価と費用に反映した。
黒字の筋書きのPERはROE、資本コスト9.25%、長期成長率2%、弱い堀のRONICから算出した。赤字の筋書きは売却可能資産と消費される現金を考慮したPBRとし、やや悲観では現在の自己資本を分母とした。悲観では減損後の資本だけを評価した。今の株価、過去のPBR、同業他社の市場倍率から逆算していない。
会社全体の時価総額に既存株主の持分係数を最後に掛け、増資による希薄化を別途反映した。確率加重後の将来時価総額と期間中の還元を資本コストで割り引いた本質価値は約11.72億円であり、現在の約48.79億円との差は約マイナス76%となる。増資がなければ株主の取り分は改善するが、継続赤字を賄う資金の調達可能性も同時に低下するため、希薄化だけを取り除いた楽観評価はしない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。基本の資本コスト7.5%に事業品質の0.75%、継続赤字に伴う上乗せ1%を加え、9.25%とする。臨床開発の個別の成否や提携契約終了については、さらに金利を引き上げず、5つの筋書きと確率で表現する。