結論
わかもと製薬は、整腸薬の強力わかもとで知られ、今は眼科の医薬品とヘルスケア商品、アジアへの輸出で稼ぐ小さな製薬会社だ。売上は 99 億円で、営業利益は 2.6 億円。
筆者の結論は「事業の稼ぐ力に比べて、今の時価総額は高い」である。過去 10 年のうち 6 年が営業赤字で、利益率は最高でも 2.6%。ROE は 2% にとどまる。眼科の新製品で売上は前期に 27% 伸びたが、医薬事業は 7 億円近い赤字を出している。
見かけの割安さは、自己資本 120 億円に支えられている。ただし棚卸資産や売掛金、工場の土地建物が大半で、すぐ現金になる分は限られる。営業キャッシュフローもマイナスだ。
中期経営計画は ROE 8% を掲げる。これまで目標を達成できなかった会社で、筆者は達成の確率を低く見る。眼科製品が育つかどうかが分かれ目になる。
小さな会社の再建物語に近い。結果が出るまで、10 年のうち半分は耐える覚悟が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「稼ぐ力に比べて、資産が重い」会社だ。自己資本 120 億円のうち、すぐ現金になるのは 20 億円の現預金と 23 億円の投資有価証券。あとは棚卸資産、売掛金、工場である。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、今はほぼゼロだ。営業キャッシュフローはマイナスで、設備投資を加えると年 9 億円ほどの現金が出ていく。事業が自分の資金を生まない会社に、高い値段は払えない。
筆者は、眼科の新製品が育つ可能性は否定しない。売上は前期に 27% 伸びた。それでも、10 年で医薬事業が黒字化し、ROE が資本コストを超える姿は、確率の低い筋書きと見る。過去に赤字が続き、経営計画を達成できなかった実績が重い。
安全域は、現金と土地が株価の下値を支える点にある。ただしこれは清算に近い話で、少数株主が決められない。割高とみる。
何で稼ぐ会社か
事業は四つに分かれる。医薬事業は眼科が中心で、点眼剤や眼内レンズを医師向けに売る。売上は 48 億円だが、研究開発費と新製品の販売費が重く、7 億円ほどの赤字を出している。
ヘルスケア事業は一般消費者向けで、強力わかもと、薬用歯みがき、フェムケア商品が柱。売上は 25 億円、利益は 4 億円。ブランドの古さが強みでもあり、弱みでもある。
グローバル事業は台湾などアジアへの輸出、ライセンス収入、受託製造、診断薬で、売上は 24 億円、利益は 5 億円。会社の利益のほとんどは、このヘルスケアとグローバルが稼ぐ。
最後は日本橋室町の賃貸ビル。売上 1.9 億円、利益 0.7 億円と小さいが、安定している。主な販売先は医薬品卸のメディセオ、スズケン、アルフレッサで、3 社で売上の 3 割を占める。
販売は卸を通じて、病院・診療所・ドラッグストアに届く。研究開発費は売上の約 5%、従業員は約 300 人。相模大井の工場で製造し、一部は外部委託もする。ヘルスケアの強力わかもとは、胃腸薬として長く親しまれたブランドだ。
優良さと弱いところ
優良さは低めである。医薬品メーカーとしては規模が小さく、研究開発費を負担できる体力が乏しい。過去 10 年のうち 6 年が営業赤字で、利益率の最高は 2.6%。ROE の中央値は 1% 未満だ。
堀と呼べるのは、強力わかもとのブランドと、眼科の販売網くらい。ただしどちらも売上は小さい。眼科医薬品は薬価制度のもとで、年々値が下がる。眼内レンズやヒアルロン酸製品は参入が難しいが、海外や大手との競争も強い。
財務は自己資本比率 7 割と厚い。借金はなく、現金は 20 億円。ただし営業キャッシュフローはマイナスで、設備投資と運転資金で、年 9 億円ほど現金が出ていった。棚卸資産が売上に比べて重いのが気になる。
経営は資本効率を意識し始めた。中計では ROE 8% 以上、配当性向 50% 以上、政策保有株を純資産の 10% 以下に絞る方針を示した。目標を掲げた点は評価できるが、実績はまだ伴わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の医療用眼科薬の市場は、高齢化とともに安定して伸びる。ただし薬価は毎年のように見直され、特に特許が切れた後発品は値下がりが速い。わかもとの点眼剤はこの影響を受ける。眼科は専門医が処方を決めるため、一度採用されると続きやすいが、参入企業も多い。
一般用の分野は、ドラッグストアの自社ブランドとの競争が重い。整腸薬の市場は伸び悩み、新しい商品の育成が難しい。フェムケアは新しい分野で、SNS や EC を使った販売が主戦場になる。
海外では、台湾などアジアの眼科・整腸薬の需要が伸びる。ただし為替は 150 円で固定して考えており、円安の追い風は織り込まない。
再編は進みやすい。小さな製薬会社は、研究開発費と販売網の維持が重く、大手に買われるか、事業を切り売りする。わかもとは今のところ独立を保つ方針だが、10 年のうちに選択を迫られる局面はあるだろう。
眼科は高齢化で最も成長が確実な分野の一つだが、白内障の手術や緑内障の治療は大手が強く、小さな会社は特定の領域で戦うしかない。人口が減っても、白内障など加齢の病気は増えるため、眼科の患者数は底堅い。
資本政策と M&A
還元は配当性向 50% 以上の方針で、2026 年 3 月期は 53% だった。ただ利益が薄いため、年間の配当は 1 億円強にとどまる。自社株買いはない。10 年で約 17 億円の配当を見込む。
中計「Wakamoto 100」は 2028 年度に売上 150 億円、ROE 8% 以上を掲げる。実現すれば営業利益が約 10 億円になる計算だが、この水準は過去 10 年で一度もない。
政策保有株は純資産の 10% 以下に減らす方針で、上場株の持ち分は 23 億円ほど。キッセイ薬品工業などを持つ。売却が進めば現金が増えるが、方針は数字では確認できない。
現金 20 億円は売上の約 2.4 か月分。運転資金と研究開発に約 10 億円が要ると見て、残り約 10 億円を事業に使わない現金に分けた。借金はなく、利払いの影響はほぼない。相模大井の工場は更新の負担がある。減価償却は取得時の値のままで、物価で増やさない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
売上は前期に 27% 伸び、眼科の新製品が通年で効けば、さらに増える。エピナスチンの点眼液、ヒアルロン酸の眼粘弾剤、眼内レンズが揃い、眼科の総合メーカーとして医師に認識され始めた。医薬事業の赤字は、新製品の立ち上げ費用の一時的な重荷だ。
中計は売上 150 億円、ROE 8% を掲げる。ヘルスケアの黒字が 4 億円、グローバルが 5 億円と、すでに稼ぐ事業が二つある。医薬事業が損益ゼロに近づくだけで、営業利益は 10 億円近くになる。
自己資本比率は 7 割で、借金はない。政策保有株の売却で現金が増え、配当性向 50% の方針も明確だ。工場の土地や賃貸ビルも、帳簿よりも高く売れる可能性がある。
大手が眼科の品揃えを補うために、買収を考える場面もありうる。
これまで赤字の理由は、新製品の立ち上げと研究開発費だった。費用が売上に見合うようになれば、利益は大きく動く。
眼科の患者は減らず、医師が採用した薬は長く使われる。新製品の売上が伸びれば、固定費に対する利益率は急に改善する。
慎重な見方
過去 10 年のうち 6 年が営業赤字で、最高でも利益率は 2.6%。中計の目標は毎回のように外れてきた。医薬事業は 7 億円近い赤字で、研究開発費は売上の 5% 近い。
営業キャッシュフローはマイナス 5 億円、設備投資を含めたフリーキャッシュフローはマイナス 9 億円。現金は前期末から 9 億円減った。このペースが続けば、保有株を売らないと資金が持たない。
眼科の薬価は年々下がる。物価が年 3% で上がる世界では、人件費と原材料は上がるのに、売値は上がらない。ヘルスケアと輸出の黒字がなければ、会社は成り立たない。
来期は営業利益が 22% 減る予想で、第 1 四半期は 1.4 億円の営業赤字だった。新製品の販売を伸ばしても、利益の改善は後ろ倒しになっている。
配当性向 50% を掲げても、利益が薄ければ配当は 1 億円強にすぎない。株主還元の厚みは見かけほどない。
眼科の専門医は大手の営業を重視するため、小さな会社の新製品は採用が進みにくい。
どちらに重みを置いたか
赤字の事業が黒字になる証拠は薄く、営業キャッシュフローもマイナスだ。確率は中立に 37% を置き、やや悲観と悲観で 40% と、慎重な側に寄せた。楽観は 5% と低い。10 年の本質価値は今の時価総額を大きく下回る。割高とみる。ただし資産の厚さで、悲観でも極端には落ちない。 眼科製品の売上と医薬事業の赤字幅が、確率を動かす最大の材料だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 171 円59 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 67 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 118 円41 億円、今との差 −61.0%、 期待の年率 −2.4%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 713 円247 億円 | 231 円80 億円 | +212.3% | +12.1% | 47 円16 億円 |
| やや楽観 | 18% | 284 円99 億円 | 144 円50 億円 | +41.7% | +3.5% | 77 円27 億円 |
| 中立 | 37% | 162 円56 億円 | 49 円17 億円 | −30.2% | −3.5% | 78 円27 億円 |
| やや悲観 | 25% | 69 円24 億円 | 35 円12 億円 | −65.8% | −10.2% | 26 円9 億円 |
| 悲観 | 15% | 45 円16 億円 | 17 円6 億円 | −79.4% | −14.6% | 9 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 171 円59 億円 | 67 円23 億円 | −21.4% | −2.4% | 237 円82 億円 |
今の株価時価総額 302 円105 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 眼科の新製品が育ち、医薬事業が黒字化する 利益 18 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 713 円247 億円
眼科の新製品が医師に定着し、点眼剤と眼内レンズで販売量が 2 倍を超える。医薬事業の赤字は消え、利益率 8% の黒字に転じる。ヘルスケアはフェムケアと整腸薬が海外にも広がり、グローバルはアジアへの輸出が 1.5 倍になる。売上は 200 億円を超え、営業利益は 25 億円。ただし医薬品メーカーとして利益率 12% は優れた水準で、過去 10 年の最高 2.6% とは別の会社の姿だ。配当性向 50% を守り、10 年で約 80 億円が株主に戻る。
眼科医の信頼を得るまでには年数がかかる。この筋書きは、その時間を味方にできた場合を置いている。
- 医薬事業:数量 1,760(販売本数相当(万本・推定))× 価格 0.06(1 万本あたり売上(億円。薬価・納入価の水準))→ 売上 110 億円・営業利益 9 億円。数量 2.20 倍・単価 1.05 倍・利益率 8.0%
- ヘルスケア事業:数量 780(販売個数(万個・推定))× 価格 0.06(1 万個あたり売上(億円。店頭価格に近い出荷価格))→ 売上 44 億円・営業利益 7 億円。数量 1.30 倍・単価 1.34 倍・利益率 16.0%
- グローバル事業:数量 1,200(出荷・受託の取扱量(万単位・推定))× 価格 0.04(1 万単位あたり売上(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 9 億円。数量 1.50 倍・単価 1.25 倍・利益率 19.0%
- 不動産賃貸業:数量 1,500(賃貸床面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたり年間賃料(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・単価 1.34 倍・利益率 36.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.5 倍、時価総額 247 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標を何度も外してきた会社で、全部がうまく運ぶ必要がある。
やや楽観 18% 新製品の販売が伸び、赤字が縮む 利益 8 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 284 円99 億円
眼科の新製品が通年で売上に効き、医薬事業の販売量は 1.8 倍に増える。薬価の引き下げが物価の上昇を打ち消して、単価は今と同じ水準にとどまる。赤字は縮むが、研究開発費が重く、利益率は −2% まで。ヘルスケアとグローバルは堅く、合計で営業利益は 11 億円ほどになる。自己資本の伸びは小さく、ROE は 5% 台。中計の ROE 8% は届かないが、赤字体質から抜け出した形になる。
医薬事業の赤字が縮むペースが、利益率の水準を決める。研究開発費をどこまで絞るかも分かれ目になる。高齢化で眼科の患者数が増える流れも、この筋書きの追い風になる。ただ、大手との競争は続き、販売の伸びは限定的だ。
- 医薬事業:数量 1,440(販売本数相当(万本・推定))× 価格 0.06(1 万本あたり売上(億円。薬価・納入価の水準))→ 売上 86 億円・営業利益 −2 億円。数量 1.80 倍・単価 1.00 倍・利益率 -2.0%
- ヘルスケア事業:数量 690(販売個数(万個・推定))× 価格 0.06(1 万個あたり売上(億円。店頭価格に近い出荷価格))→ 売上 38 億円・営業利益 6 億円。数量 1.15 倍・単価 1.30 倍・利益率 15.0%
- グローバル事業:数量 1,040(出荷・受託の取扱量(万単位・推定))× 価格 0.04(1 万単位あたり売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 7 億円。数量 1.30 倍・単価 1.20 倍・利益率 18.0%
- 不動産賃貸業:数量 1,500(賃貸床面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたり年間賃料(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・単価 1.34 倍・利益率 36.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:発売済みの眼科製品が通年で効き始める。足元の増収はその前触れ。
中立 37% 増収は続くが、医薬事業の赤字が重く利益は薄い 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 162 円56 億円
眼科の新製品で医薬事業の販売量は 1.4 倍に増えるが、薬価は物価に連動せず単価は 5% 下がる。赤字は −10% 近い利益率で続く。ヘルスケアとグローバルは物価並みに価格を上げ、合計で 10 億円を超える利益を稼ぐ。ここから医薬の赤字と本社費用を引き、営業利益は 4 億円台。利益率は 3% 強で、過去 10 年の最高 2.6% をわずかに上回るだけにとどめた。物価を考えれば、実質では今と大差ない。配当は性向 5 割を守る。減価償却は有形固定資産 37 億円の分が取得時の値のままで、物価で増やさない。
物価で売値が上がるのは、ヘルスケアとグローバルだけ。薬価が縛る医薬事業は、物価に負けて採算が悪化する。
- 医薬事業:数量 1,120(販売本数相当(万本・推定))× 価格 0.06(1 万本あたり売上(億円。薬価・納入価の水準))→ 売上 63 億円・営業利益 −6 億円。数量 1.40 倍・単価 0.95 倍・利益率 -9.5%
- ヘルスケア事業:数量 630(販売個数(万個・推定))× 価格 0.05(1 万個あたり売上(億円。店頭価格に近い出荷価格))→ 売上 33 億円・営業利益 4 億円。数量 1.05 倍・単価 1.25 倍・利益率 13.0%
- グローバル事業:数量 920(出荷・受託の取扱量(万単位・推定))× 価格 0.03(1 万単位あたり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。数量 1.15 倍・単価 1.15 倍・利益率 17.0%
- 不動産賃貸業:数量 1,500(賃貸床面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたり年間賃料(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・単価 1.34 倍・利益率 36.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 56 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 10 年で営業利益率が 3% を超えたことはない。新製品の効果が出ても、研究開発費と販売費が重い。
やや悲観 25% 新製品が伸びず、赤字が居座る 利益 2 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 69 円24 億円
新製品の伸びが期待を下回り、医薬事業の赤字は −12% 近くにとどまる。薬価は毎年のように下がり、単価は 1 割落ちる。ヘルスケアは広告費がかさみ、利益率が 12% に下がる。グローバルは台湾向けの価格競争に押される。営業利益は 2 億円ほどで、実質では今より少ない。配当は性向 5 割を目安にするが、金額は最低限に近づく。研究開発の優先順位を絞る決断を迫られる。
この筋書きでは、保有株の売却で現金を補いながら、赤字を数年かけて縮める対応が中心になる。赤字の事業を抱える状態が長引くと、経営陣の交代や、事業の売却を求める声が出ることもあるが、それは評価に入れていない。
- 医薬事業:数量 880(販売本数相当(万本・推定))× 価格 0.05(1 万本あたり売上(億円。薬価・納入価の水準))→ 売上 47 億円・営業利益 −6 億円。数量 1.10 倍・単価 0.90 倍・利益率 -12.0%
- ヘルスケア事業:数量 570(販売個数(万個・推定))× 価格 0.05(1 万個あたり売上(億円。店頭価格に近い出荷価格))→ 売上 29 億円・営業利益 4 億円。数量 0.95 倍・単価 1.20 倍・利益率 12.0%
- グローバル事業:数量 800(出荷・受託の取扱量(万単位・推定))× 価格 0.03(1 万単位あたり売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・単価 1.10 倍・利益率 15.0%
- 不動産賃貸業:数量 1,500(賃貸床面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたり年間賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・単価 1.20 倍・利益率 36.0%
倍率:利益が薄く ROE 約 2%。式の PER 上限(1÷k=約 12 倍)に、赤字が続く前提で約 58% を置く。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7 倍・時価総額 22 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:過去 10 年のうち 6 年が営業赤字。体質が変わった証拠はまだ薄い。
悲観 15% 赤字が拡大し、保有資産を取り崩す 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 45 円16 億円
眼科製品の販売が伸びず、薬価の引き下げが続く。医薬事業は赤字が拡大し、ヘルスケアとグローバルの黒字で埋めきれない。営業損益は赤字に沈み、運転資金で現金が出ていく。手元資金は 20 億円しかなく、保有株や土地の売却に動く。配当は大幅に減らす。会社は縮小均衡に向かい、株主にとっては事業の価値より、売れる資産の価値が株価の中心になる。
医薬事業を大手に売る・提携に切り替える選択もありうるが、その場合の対価は評価に入れていない。薬価の引き下げで利益が出なくなった製品は、販売を打ち切って在庫を処分する。棚卸資産の評価損も自己資本を傷める。
- 医薬事業:数量 720(販売本数相当(万本・推定))× 価格 0.05(1 万本あたり売上(億円。薬価・納入価の水準))→ 売上 36 億円・営業利益 −7 億円。数量 0.90 倍・単価 0.85 倍・利益率 -20.0%
- ヘルスケア事業:数量 510(販売個数(万個・推定))× 価格 0.05(1 万個あたり売上(億円。店頭価格に近い出荷価格))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・単価 1.10 倍・利益率 10.0%
- グローバル事業:数量 640(出荷・受託の取扱量(万単位・推定))× 価格 0.03(1 万単位あたり売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。数量 0.80 倍・単価 1.05 倍・利益率 12.0%
- 不動産賃貸業:数量 1,350(賃貸床面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたり年間賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・単価 1.20 倍・利益率 36.0%
倍率:稼ぐ力はほぼ無く、純現金と売れる資産に近い。今の自己資本 120 億円の約 13% を置く(資産の床の参考値 32 億円を下回る。少数株主は清算を決められず、現金が事業に食われる前提)。
確率:営業キャッシュフローがすでにマイナスで、運転資金も重い。資産の取り崩しを迫られる可能性は小さくない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医薬事業
眼科を中心とする医療用医薬品・眼内レンズなどの医療機器。自社の研究開発費を負担し、赤字を出している。
| 数量販売本数相当(万本・推定) | 価格1 万本あたり売上(億円。薬価・納入価の水準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 0.06 | 48 | −7 |
| 10 年後 中立 | 1,120 | 0.06 | 63 | −6 |
取り方:売上 47.6 億円を 1 本あたり約 0.06 万円(点眼剤の卸価格の目安)で割り、約 800 万本相当と推定。眼内レンズなど高単価品を含むため目安。
ヘルスケア事業
整腸薬の強力わかもと、薬用歯みがき、フェムケアなど一般消費者向けの商品。
| 数量販売個数(万個・推定) | 価格1 万個あたり売上(億円。店頭価格に近い出荷価格) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.04 | 25 | 4 |
| 10 年後 中立 | 630 | 0.05 | 33 | 4 |
取り方:売上 25.4 億円を 1 個あたり約 0.042 万円(卸出荷価格の目安)で割り、約 600 万個と推定。
グローバル事業
台湾などアジアへの輸出、ライセンス収入、受託製造、診断薬。
| 数量出荷・受託の取扱量(万単位・推定) | 価格1 万単位あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 0.03 | 24 | 5 |
| 10 年後 中立 | 920 | 0.03 | 32 | 5 |
取り方:売上 24.1 億円を 1 単位あたり約 0.03 万円の取扱いで割った推定。輸出・受託・ライセンスの混合のため目安。
不動産賃貸業
日本橋室町の賃貸ビルの賃料収入。
| 数量賃貸床面積(㎡・推定) | 価格1 ㎡あたり年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 0.00 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.00 | 3 | 1 |
取り方:賃料収入 1.92 億円を 1 ㎡あたり年 12.8 万円で割り約 1,500 ㎡と推定(実数は未開示)。
リスクと懸念
医薬事業の赤字
研究開発費と新製品の販売費で、年 7 億円近い赤字を出している。黒字化が遅れると、ヘルスケアとグローバルの黒字を食い続け、会社全体の利益が薄いままになる。
営業キャッシュフローのマイナス
前期の営業キャッシュフローはマイナス 5 億円。棚卸資産が売上の約 4 割と重く、資金が事業に吸われる。現金が尽きれば、保有株や土地の売却が必要になる。
薬価の引き下げ
眼科の医薬品は薬価が毎年のように下がる。物価は上がるのに売値は下がり、利益率が圧迫される。後発品の台頭も重なる。
卸への依存
メディセオ、スズケン、アルフレッサの 3 社で売上の約 3 割。取引条件の変更や値引き要請が、利益に直結する。
中計未達の繰り返し
2028 年度に ROE 8%、売上 150 億円を掲げるが、過去 10 年の最高 ROE は 1% 台。目標が外れ続けると、株主の信頼が薄れる。
製品の集中
眼科の新製品と強力わかもとに売上が偏る。安全性の問題や競合の登場で、一つの製品が崩れると影響が大きい。
今後の分かれ目
- 医薬事業のセグメント損益が赤字幅を半分に縮める
- 黒字化の道筋が見えてくる。やや楽観の確率を上げる。
- 営業キャッシュフローが 2 期続けてプラスになる
- 運転資金の重さが解消に向かう兆し。悲観の確率を下げる。
- 政策保有株の売却が数字で示され、現金や自社株買いに回る
- 資本効率の改善が実行に移った証拠。評価を引き上げる。
- 営業赤字が来期も続く
- 中計の達成は難しく、悲観の確率を上げる。
- 大手から買収提案が出る
- プレミアムが生じうるが、確率は不確かなので評価には入れない。
見ておくもの
- 医薬事業のセグメント損益と研究開発費
- 営業キャッシュフローと棚卸資産
- 卸 3 社への売上比率
- 政策保有株の売却と配当性向
- 中計の進捗(売上 150 億円)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(ROE が k を下回るので上限は 1÷k)から置き、今の PER や同業の倍率は使っていない。中立は上限の約 70%。brief の純現金 16 億円は現預金と有利子負債の差で、20 億円の現預金のうち約 10 億円は運転資金に使うため、うち約 10 億円を余った現金に分けた。投資有価証券 23 億円の配当は利益に入るので、価値に二重には足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.5 倍・やや楽観 PER 9.5→11.43 倍・中立 PER 8.5→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。