結論
ペルセウスプロテオミクスは、独自の抗体ライブラリを使って新薬候補を生み出し、製薬会社への導出で収入を得ることを目指す創薬会社だ。筆者の結論は「割高」である。薬が患者に届く前に資金が尽き、追加の株式発行で既存株主の取り分が薄まる危険が、今の時価総額には十分織り込まれていない。
2026年3月期の売上は約1.36億円だが、営業損失は約7.45億円に上る。実際に売上を生むのは研究用抗体・試薬の販売と抗体研究支援であり、最も大きな価値を狙う新薬の導出収入はまだない。2026年6月末には約15.92億円の現金があったものの、その背後には補助事業に関する長期預り金があり、研究開発を続ければ手元資金は減る。
最も有望なPPMX-T003には、真性多血症の小規模試験で瀉血を長く避けられた患者がいたという明るい材料がある。さらに希少な白血病への医師主導治験や、UBEとの抗体薬物複合体の研究も進む。ただし、真性多血症では武田薬品などの競合薬が先に米国承認を得た。会社が2027年3月期の売上・利益予想を公表できないのは、導出の成否と時期が読めないからだ。
長く持つ株主にとっては、薬の将来売上よりも、承認までに必要な資金と、その間に自分の持分がどれほど残るかが決定的である。成功時の上振れは大きいが、期待値を現在に引き戻すと安全域が乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、同社は医薬品市場の成長株というより、資金を払い続けて得る複数の研究成果の権利である。抗体ライブラリには再利用できる価値があるが、株主が自由に受け取れる利益はまだ生まれていない。研究開発費を毎年支払って初めて候補薬の価値を保てる以上、現金残高をそのまま株主の資産と見ることもできない。
見るべき堀は特許の件数ではなく、契約交渉での力だ。製薬会社が臨床開発を肩代わりするだけの差別化がなければ、たとえ実験でよい結果が出ても、一時金は小さく、成果報酬の大半は遠い将来になる。逆にT003の有効性が対照試験で裏づけられ、適応拡大と強い導出契約が結び付けば、少ない設備で大きなロイヤリティを受け取る経済性へ変わりうる。
経営陣には、候補薬を増やすよりも、どの研究に資金を集中し、いつ外部へリスクを渡すかの判断力が問われる。研究支援の受注増や新しい共同研究はよい兆候だが、研究開発投資の利益率が資本コストを超えた証拠ではない。今の値段に対して必要なのは、薬が成功する確率だけでなく、その前に何度増資し、成功の利益の何割が既存株主に残るかまで見通せるだけの安全域である。
何で稼ぐ会社か
会社の収益構造は、会計上は医薬品の単一セグメントだが、経済的には三つに分かれる。第一は抗体医薬品の研究・導出であり、PPMX-T003、PPMX-T002、PPMX-T004が核になる。
T003はトランスフェリン受容体を狙い、真性多血症やアグレッシブNK細胞白血病を対象とする。T002はCDH3を標的とした放射性医薬品、T004は同標的の抗体薬物複合体である。導出が決まれば契約一時金や開発段階ごとの支払、将来のロイヤリティが収入になるが、2026年3月期のこの部門の売上はゼロだった。
第二は抗体研究支援である。顧客の研究目的に合わせ、抗体の探索、配列の解析、作製や最適化を請け負う。2025年にはラクダ由来のVHH抗体ライブラリを使った受託サービスも始め、2026年3月期の売上は0.40億円と伸びた。研究用データを自社の創薬へ生かせる一方、顧客案件が増えても人手と実験設備が必要で、大手の研究支援企業ほどの規模を持たない。
第三は抗体・試薬販売で、同じ期に0.95億円を売り上げた。研究者が実験で繰り返し使う抗体、測定キットや関連試薬を販売する。抗エストロゲン受容体β抗体や抗MMAE抗体など、独自性のある品目を持つが、世界の大手試薬販売網と比べれば非常に小さい。いずれの事業も研究に貢献するが、試薬と受託の収入だけで新薬の研究開発費を賄う構造にはまだなっていない。
優良さと弱いところ
模倣しにくさの源は、ヒト抗体やラクダ由来VHH抗体のライブラリと、それを使って難しい標的から抗体を見つける実験技術にある。会社は膨大な抗体候補群を持ち、東京科学大学との機械学習研究や、UBEとの共同研究によって用途を広げている。PPMX-T003の初期臨床で得られた経過も、抗体そのものの価値を示す手掛かりだ。ただし、こうした技術の厚みと、顧客が高い値段を継続して払う独占力は同じではない。
堀、すなわち競争相手が容易に越えられない強みは、現時点では狭い。研究支援には長期契約の解約率や強い値上げの実績が見当たらず、試薬の流通ではThermo Fisher、Abcam、Merckなどと競う。新薬は成功すれば特許が価値を守るが、T003やT004の基幹特許の一部は2030年代前半に満了する。追加の用途特許はあるものの、2036年時点の排他性を当然視できない。
増分の投下資本利益率を測る土台もまだない。2018年3月期以降、毎期営業赤字であり、研究開発に投じた資金が反復的な営業利益として戻った実績は示されていない。負債が少なく現金があることは長所だが、それを超える速度で資金を使う限り、財務の強さは恒久的な堀にはならない。投資の成否を研究成果だけでなく、導出契約の現金受領額で判断したい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
抗体医薬品は世界的に需要が拡大する領域だが、研究段階の会社がその伸びを自動的に売上へ変えられるわけではない。必要なのは、候補薬ごとの治験で安全性と有効性を示し、製薬会社から開発費を引き受けてもらうことだ。日本のアグレッシブNK細胞白血病は患者数が極めて少なく、国内の臨床需要だけでは大きな製品売上になりにくい。T003の事業価値は、より患者数の多い真性多血症への展開と提携条件に大きく左右される。
その真性多血症では、武田薬品とProtagonist Therapeuticsのrusfertideが2026年8月に米国で承認された。米国の患者は約9万人と説明されるが、治療対象や薬価は製品ごとに違い、市場総額を単純に同社の売上へ割り振ることはできない。T003の承認製品シェアは現時点でゼロであり、競合薬の発売直後の市場シェアも十分に確定していない。T002とT004のがん領域では、ADCや放射性医薬品を手掛ける国内外の創薬企業、大手製薬の内製研究が競合する。
研究用抗体の世界市場は、民間推計で2025年に約19億ドルである。為替を150円とすると約2,850億円で、同社の抗体・試薬売上は、この市場の約0.03%に相当するにすぎない。品目と地域の範囲が一致しないため厳密なシェアではなく、規模の目安である。世界市場の拡大は数量の追い風だが、Thermo Fisher、Abcam、Cell Signaling、Merckなどの競合別シェアを同じ定義で確定できる資料はなく、同社のシェア上昇を中立に見込まない。
資本政策と M&A
資本配分の中心は一貫して研究開発費である。2026年3月期には研究開発費が約5.74億円を占め、営業活動による現金流出も約6.53億円だった。会社は設立以来無配で、自社株買いで発行株式数を減らした実績も確認できない。
配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について数字の約束なしであり、2026年6月の成長計画にも売上・営業利益・ROEの定量的な中期目標はない。添付にある2027年3月期の売上20億円という推計は会社の業績予想ではなく、会社が公表したのは同年度の販管費約9.71億円(うち研究開発費約6.63億円)という費用見通しである。
足元の資金は新株予約権の行使で補われている。2026年6月25日に第29回新株予約権の行使が完了し、同月末の発行済株式から自己株式を差し引いた株数は1,842万9,410株になった。この行使済みの希薄化は今回の株数に織り込まれており、将来の希薄化として重ねて数えていない。それでも今後の臨床開発費を賄うには、追加の導出収入、共同開発による費用負担、あるいは新たな資本調達が必要になる。
UBEとの共同研究、Eurus Therapeuticsとの新たな共同研究、EirGenixとの協業検討は、買収によらず技術を現金へ変えるための布石である。しかし共同研究契約や覚書は、承認薬の販売契約や多額の一時金受領とは異なる。買収される可能性も残るが、公開買付けを確定した事実はなく、買収価格の上乗せは本質価値の中立に入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PPMX-T003は真性多血症の第Ⅰ相試験後の追跡研究で、6人中4人に投与終了後17か月以上の瀉血不要期間が確認された。症例数は小さいものの、既存治療とは異なる受容体標的の抗体が長く作用する可能性を示した点は見逃せない。2026年7月の米国での用途特許査定に加え、後続の用途特許も2040年前後まで残る。製薬会社が大きな適応領域での開発を引き受ければ、早期段階の研究費負担から脱却できる。
PPMX-T004ではUBEの薬物結合技術と独自の抗CDH3抗体を組み合わせ、毒性と効果の均衡を検証している。T002の放射性医薬品開発やEurusとの抗体遺伝子研究も、単独候補への依存を少しずつ下げる。東京科学大学との機械学習研究は、実験から得た抗体の選定を速め、候補数を増やす可能性がある。ここで生まれた新しい権利を複数の相手へ導出できれば、研究資産の回転率が大きく上がる。
売上の過半を占める試薬販売は小さいが、抗体研究支援は6期連続の増収となった。VHHの受託作製や高付加価値試薬が増えれば、創薬の合間に得る収入が強まり、必要な増資を抑えられる。巨額の自社販売組織を作らず契約金とロイヤリティを得る姿に移れば、営業利益の伸びは売上以上に大きい。
慎重な見方
最大の弱点は、よい研究結果と株主の利益の間に長い距離があることだ。T003の瀉血不要期間は6人を対象とした観察結果であり、承認に必要な無作為比較試験の結果ではない。真性多血症では武田薬品とProtagonistのrusfertideがすでに第Ⅲ相を終えて米国承認を得た。同じ疾患に新薬として入るには、効き方、安全性、使いやすさを改めて証明しなければならない。
導出の遅れはすでに実績として表れている。T002とT003は2025年3月期までの導出を目指していたが、2026年の計画でも活動継続にとどまる。
T003の希少白血病の治験も患者登録の遅れで2027年3月まで延びた。T002には過去の導出権が戻された経緯があり、T004はまだ前臨床である。既存特許の満了が近づく間に、競合の技術も前進する。
2026年3月期の営業現金流出を見れば、現在の現金だけで十年間の研究を続けることはできない。2025年と2026年に株式数は大きく増え、2026年6月にも新株予約権が行使された。赤字を補うため株を安値で増発すれば、たとえ後に薬が成功しても一株当たりの回収額は著しく小さくなる。試薬売上が数割伸びても、数億円規模の研究費を埋めるには遠い。
どちらに重みを置いたか
臨床の小さな成功と抗体ライブラリの再利用性は評価する。しかし、導出収入の不在、長年の営業赤字、真性多血症の競合薬承認、追加資金調達の必要性を重く見る。確率は上側23%に対して下側48%と慎重側へ寄せた。下に寄せる理由は、治験の遅延と契約未達がすでに起きている一方、成功時の現金受領と旧株主の持分維持は未検証だからである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 51 円9 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 20 円4 億円、今との差 −85.2%、 期待の年率 −9.2%(資本コスト 10.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 459 円85 億円 | 13 円2 億円 | +247.0% | +13.5% | 38 円7 億円 |
| やや楽観 | 15% | 79 円15 億円 | 2 円0 億円 | −40.4% | −5.1% | 12 円2 億円 |
| 中立 | 29% | 8 円2 億円 | 0 円0 億円 | −94.0% | −24.5% | 2 円0 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.3% | −39.0% | 0 円0 億円 |
| 悲観 | 20% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −100.0% | −54.8% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 51 円9 億円 | 1 円0 億円 | −61.3% | −9.2% | 53 円10 億円 |
今の株価時価総額 136 円25 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 臨床価値が証明され複数導出が定着 利益 11 億円 · PER 10.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 459 円85 億円
PPMX-T003の真性多血症で有効性と安全性が対照試験によって裏づけられ、武田薬品のrusfertideと異なる利点が確認される。医薬品会社が後期試験の費用を引き受け、T003の用途拡大や新しい抗体候補の導出が続く。UBEと共同研究するT004も毒性の壁を越え、抗体薬物複合体の候補として正式な導出に至る。
ヒト抗体とVHHのライブラリは実験と機械学習による候補探索を速めるが、AIそのものの売上を新たに見込むのではない。物理的な実験を伴う研究支援の規模は現状程度で残り、研究用試薬は高単価製品の構成比が増えて収益を支える。導出による現金受領で赤字の連鎖が止まり、必要な資本調達も小さくなる。旧株主の持分は希薄化後もかなり残り、製品価値を享受できる。
- 抗体医薬品の創薬・導出:数量 2.0(年間の導出・マイルストン受領案件換算数(件、端数は複数年平均))× 価格 12(1件当たりの当年契約金等の実現額(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 16 億円。年2件相当の契約・マイルストン等24億円。開発費8.5億円を差し引く。
- 抗体研究支援:数量 50.0(受託プロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.01(1案件当たり平均実現売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIによる工数圧縮を受け、数量は現状50件まで。名目価格は案件高度化で上昇。
- 抗体・研究用試薬販売:数量 8,000(抗体・試薬の標準小分け製品換算販売数(本・セット/年))× 価格 0.00(1本・セット当たり当社実現売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 4 億円。高機能抗体などの製品ミックス改善、数量8,000本換算。
倍率:k=10.25%、10年後の事業ROE=10.78014÷47=22.94%。弱い堀の超過利益が3分の1残るRONIC=14.48%、g_long=1%からPER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=10.064倍。余剰現金は0。
確率:真性多血症で追加の比較臨床試験が成功し、T003に加えT004も導出に進む上位の筋書き。複数の製薬会社が継続的に対価を払うまで進展する確率は小さい。
やや楽観 15% 主力導出に成功し小幅な黒字を維持 利益 2 億円 · PER 9.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 79 円15 億円
T003の希少疾患治験から有用な安全性データが得られ、製薬会社が真性多血症を含む後続開発を引き受ける。契約金と段階ごとの支払は入るが、初期の支払条件は慎重で、承認や大きなロイヤリティはなお遠い。T004はUBEとの開発を進めるものの、収益化の速度は限られる。Eurusとの共同研究も新しい候補を生むが、大型売上には直結しない。
研究支援はAIによる解析の効率化と顧客内製化を受けて案件数をむやみに増やせず、受託実験の品質を維持する。研究用抗体は品揃えが改善し、規模を広げる。研究開発費には物価上昇と追加試験の負担が残るため、黒字は薄い。創薬会社として必要な資金の一部を増資で賄い、旧株主が受け取れる成果も会社全体の利益ほど大きくならない。
- 抗体医薬品の創薬・導出:数量 1.4(年間の導出・マイルストン受領案件換算数(件、端数は複数年平均))× 価格 9.00(1件当たりの当年契約金等の実現額(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。年1.4件相当の一時金・節目収入12.6億円、開発費7.8億円。
- 抗体研究支援:数量 45.0(受託プロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.01(1案件当たり平均実現売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。研究支援はAI代替による効率化を受けて45案件相当。
- 抗体・研究用試薬販売:数量 6,000(抗体・試薬の標準小分け製品換算販売数(本・セット/年))× 価格 0.00(1本・セット当たり当社実現売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。販売数量6,000本相当、当社実現単価4.5万円。
倍率:2036年のROE=2.416925÷28=8.63%で資本コストk10.25%未満。新規投資の超過利益を評価せず、稼ぐ力の上限1÷k=9.756倍をそのまま適用する。余剰現金0。
確率:T003の導出またはT004の提携が成立し、費用負担の一部が相手に移るが、複数の承認薬収入を得るほどには進まない可能性。
中立 29% 小型導出はあるが研究費を賄えない 利益 −6 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8 円2 億円
T003は一部の希少疾患で臨床評価を続けるが、真性多血症では先行承認薬との比較が難しく、条件のよい包括導出には届かない。T002は放射性医薬品へ設計を切り替えても資金と時間を要し、T004も前臨床から先の進展が緩やかになる。抗体ライブラリを使った小型の共同研究や契約一時金は得るが、それだけで研究開発費を回収する構造にはならない。
研究支援では配列解析や候補抽出をAIエージェントが代替し、実質案件数は現在の7割になる。湿式の抗体作製需要は残るため事業そのものは消えない。試薬販売は物価に沿った価格改定と販売数量の小幅増で伸びるが、費用全体を支えるには足りない。新株発行で研究を継続し、その資金の多くを累積赤字で消費するため、企業としての技術は残っても旧株主の持分は大きく薄まる。
- 抗体医薬品の創薬・導出:数量 0.5(年間の導出・マイルストン受領案件換算数(件、端数は複数年平均))× 価格 7.00(1件当たりの当年契約金等の実現額(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 −4 億円。2年に1件相当の小型導出3.5億円。費用7.8億円が残る。
- 抗体研究支援:数量 35.0(受託プロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.01(1案件当たり平均実現売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人月型のAIエージェント代替で数量50件→35件、単価はCPI3%10年分の1.34倍。
- 抗体・研究用試薬販売:数量 4,300(抗体・試薬の標準小分け製品換算販売数(本・セット/年))× 価格 0.00(1本・セット当たり当社実現売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。実質数量3,175→4,300個、単価は約1.34倍。世界市場のシェア上昇は前提にしない。
倍率:10年後も純損失でありPERは正の値にならない。導出候補の未確定な権利と、将来増資で残る純資産7億円のうち4割は追加損失で消費されるとみて、事業資産の残余価値4.2億円を評価する。過去・現在の市場PBRからではなく、資金消耗と権利の回収可能性による資産アプローチ。
確率:T003の臨床知見と試薬事業が残る一方、大型の開発費負担付き契約が定着する証拠はまだない。小規模な案件受領はありつつ赤字が続く中立とする。
やや悲観 28% 導出不成立で資金調達に依存 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1 円0 億円
T003は真性多血症の治療競争に後れ、希少疾患の治験も症例の少なさから時間がかかる。T002は放射性標識抗体の研究を続けても開発費を負担する相手が現れず、T004は前臨床の段階にとどまる。収益を生む導出契約がないまま研究費が積み重なり、研究課題の整理と人員縮小を迫られる。
抗体研究支援はAIによる解析内製化の影響で案件が減り、試薬販売にも世界の大手の販路と価格競争が重くのしかかる。会社は株式発行を繰り返して研究継続資金を得るが、調達額の大半を赤字補填に費やす。残存する現金と売れる研究資産はわずかになり、現在の自己資本を十年後にも保有していると考えることはできない。少数株主には技術の所有権が残っても、現金として回収できる価値は乏しい。
- 抗体医薬品の創薬・導出:数量 0.0(年間の導出・マイルストン受領案件換算数(件、端数は複数年平均))× 価格 6.00(1件当たりの当年契約金等の実現額(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 −5 億円。導出0件。臨床研究縮小後も開発費5.2億円が残る。
- 抗体研究支援:数量 20.0(受託プロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.01(1案件当たり平均実現売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AI代替と受託研究予算減で20件。
- 抗体・研究用試薬販売:数量 3,000(抗体・試薬の標準小分け製品換算販売数(本・セット/年))× 価格 0.00(1本・セット当たり当社実現売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。試薬の小分け販売3,000個、価格は物価上昇分のみ。
倍率:悲観側のPBR分母は将来の未実現増資で膨らんだ純資産ではなく、直近実績の自己資本11.37388億円に固定。十年間の研究資金流出と補助金返済・優先請求を経た回収可能現金の床1億円を会社価値とするため、資産比例0.0879207倍。利益は赤字で事業稼得価値は0と判断。
確率:下に寄せる理由:T002・T003の導出目標未達、T003希少白血病試験の登録遅れ、長年の営業赤字が同時に現実となっている。資金調達環境が悪い年も避けられない。
悲観 20% 開発中止と資金枯渇で実質的な清算 利益 −3 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
T003は臨床的な優位性を示せず、T002とT004も資金を引き受ける製薬会社を得られない。2030年代に一部の基幹特許が満了し、新しい権利も事業上の独占を生まない。会社は候補薬を整理し、研究所と人員を縮小する。抗体ライブラリは残るが、競合企業が類似技術を開発し、買い手との交渉力を失う。
研究支援はごく小規模な湿式試験だけが続き、試薬も限られた研究者に販売する事業へ縮む。既存株主は資金調達が困難になるたびに発行比率が薄まり、最後には大半の経済的持分を失う。訴訟、特許維持、原状回復や補助事業の条件に伴う費用を支払えば、売却できる資産も小さい。事業の法的存続を前提としても、旧株主に残る価値はほぼ消える筋書きである。
- 抗体医薬品の創薬・導出:数量 0.0(年間の導出・マイルストン受領案件換算数(件、端数は複数年平均))× 価格 5.00(1件当たりの当年契約金等の実現額(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 −2 億円。創薬をほぼ中止し、一部の技術・特許維持費だけが残る。
- 抗体研究支援:数量 8.0(受託プロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.01(1案件当たり平均実現売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。小型実験のみ8件、解析業務はAI等に内製化される。
- 抗体・研究用試薬販売:数量 1,500(抗体・試薬の標準小分け製品換算販売数(本・セット/年))× 価格 0.00(1本・セット当たり当社実現売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。限られた製品群の細い反復需要、単価にも競争圧力。
倍率:悲観側のPBRは現在の自己資本11.37388億円にのみ適用する参照倍率。長年の資金流出後に優先支払を清算して残る評価可能資産0.15億円を上限かつ床とする。赤字で稼ぐ力は正でなく、将来の架空の積み上げ自己資本にPBRを掛けていない。
確率:T003の適応拡大が不成立で共同開発も止まり、重要な権利の存続期間が短くなる。現金流出と希薄化が相互に悪化する構造的な敗北を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
抗体医薬品の創薬・導出
PPMX-T003、PPMX-T002、PPMX-T004などを開発し、承認取得を担う企業へ導出して契約金・マイルストン・ロイヤリティを得る候補群。
| 数量年間の導出・マイルストン受領案件換算数(件、端数は複数年平均) | 価格1件当たりの当年契約金等の実現額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 8.00 | 0 | −6 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 7.00 | 4 | −4 |
取り方:2026年3月期の導出・マイルストン売上は0件・0円。単価8億円は公表契約条件ではなく、将来の収入を案件換算数×実現単価へ分解するための仮説。現在の営業損益には同期間の研究開発費5.73593億円を割り当てた。米国真性多血症の対象者約9万人は潜在需要であり、承認済み製品を持たない同社の現在のシェアは0。
抗体研究支援
製薬企業・研究機関向けに抗体探索、遺伝子配列解析、VHH抗体の選抜と実験作製を受託する。
| 数量受託プロジェクト換算件数(件/年) | 価格1案件当たり平均実現売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 0.01 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 0.01 | 0 | 0 |
取り方:実績売上4,027万円は会社の2026年3月期有価証券報告書による。案件数・平均単価は非開示なので年間50件、1件80.54万円と逆算した作業仮説であり、実測単価ではない。粗利益を出すため売上原価1,934.3万円のうち600万円を仮配分し、研究開発費・本社費は別扱いとした。比較可能な抗体受託市場の金額・同一範囲の競合別シェアは確認できない。
抗体・研究用試薬販売
独自の研究用抗体、測定試薬、ADC関連の抗体などを研究機関や販売代理店へ供給する。
| 数量抗体・試薬の標準小分け製品換算販売数(本・セット/年) | 価格1本・セット当たり当社実現売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,175 | 0.00 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,300 | 0.00 | 2 | 1 |
取り方:2026年3月期売上9,523.7万円は会社開示。販売個数・卸売実現単価は非開示。研究用抗体の小分け定価数万円の例を参照し、会社取り分を1個約3万円と仮定すると約3,175個となる。試薬・キットを含むため実物の本数ではない。原価は総原価1,934.3万円から研究支援への仮配分600万円を引いた1,334.3万円と推計した。世界の研究用抗体市場19億ドルとの売上比は約0.03%だが、対象製品・地域が異なる粗い尺度。
リスクと懸念
PPMX-T003の治験・承認と競合薬
真性多血症の追跡研究で6人中4人が長期の瀉血不要期間を示したのは有望だが、無対照の少数例であり承認に足る比較試験ではない。2026年8月には武田薬品とProtagonistのrusfertideが米国で承認を得た。競合より明確に優れた有効性、安全性、投与の利便性を示せなければ、導出時の一時金も将来のロイヤリティも小さくなる。
導出交渉の長期化と契約条件の非対称性
T002とT003は以前の導出目標期を過ぎても未成約である。T002には過去の権利返還の経緯もあり、研究段階の会社の交渉力は弱い。大型契約が実現しても、費用負担、開発中止条項、将来の販売額に条件付けた成果報酬が多ければ、発表額の大半が直ちに現金になるわけではない。
資金流出・長期預り金・追加希薄化
2026年3月期の営業活動による現金流出は約6.53億円である。2026年6月末の預金残高約15.92億円に対して、約3.65億円の長期預り金という負債もある。導出が成立しないまま試験費用が続けば、資金は数年で減り、第三者割当や新株予約権の再発行に頼る。現在の株主に将来利益がどれだけ残るかを大きく変える。
特許満了・標的競争と開発費増大
T003の基幹特許には2032~2033年の満了があり、T004にも2031~2034年に満了する権利がある。新しい用途特許は残るが、薬の保護範囲と独占期間は別途確かめる必要がある。競合のADCや放射性医薬品が先に有用性を示せば、製薬会社の関心は離れる。試験が大規模化するほど資金需要も増える。
AI エージェント代替と抗体探索の価格圧力
抗体研究支援のうち、配列の解析、候補の絞り込み、調査報告などはAIエージェントが内製化できる領域である。湿式実験、抗体の作製と品質検証は残るが、仕事を工数で売る部分の数量は中立で十年間に約7割とみる。会社のAI共同研究は有用な防御策だが、AI製品の売上実績や低解約率の証拠がなく、価格決定力を強く評価できない。
株主の出口・事業売却に関する不確実性
技術や抗体ライブラリを大手へ売却する道はあり得るが、現時点で確定したTOBやMBOは確認できない。買収では買い手が臨床開発の負担と特許の残存期間を厳しく評価するため、希望する金額を受け取れるとは限らない。失敗した候補薬の整理に時間がかかれば、売却前に現金が減り、買収価値と旧株主への取り分がともに小さくなる。
今後の分かれ目
- T003の対照群を持つ臨床試験で有効性と安全性が再現され、製薬大手との導出契約一時金が現金で入ったら
- 導出件数・平均現金単価と開発費負担割合を実額で更新し、上振れ筋の確率を引き上げる。同時に必要な追加増資の株数を引き下げる。
- アグレッシブNK細胞白血病の治験登録が再び遅れ、規制当局との協議が長期化したら
- 短期収入の時期を遅らせ、開発費と資金調達額を増やす。希少疾患は患者数も少ないため悲観側を厚くする。
- 2027年3月期以降の研究支援・試薬販売が合計で年5億円を超え、粗利益で本社費を支え始めたら
- 創薬の成否に依存しない収益源として中立利益を引き上げる。契約件数と実現単価を分け、AIエージェント代替の影響を再評価する。
- 配当ではなく追加の新株予約権発行が続き、発行済株式が2年間で3割以上増加したら
- 会社全体のパイプライン価値は直ちには変えず、既存株主に帰属する持分比率を下げて本質価値を再計算する。
- T004の毒性試験で十分な安全域が確認され、UBEとの共同研究が開発資金負担付きの正式な導出に進んだら
- T003への一極集中を緩め、上振れの案件換算数を増やす。ただし契約が研究協力にとどまる間は収益を先取りしない。
- 資金残高から長期預り金と翌年度の臨床開発費を差し引くと1年分の運営費を賄えなくなったら
- 倒産に近い下振れを重くし、清算で残る現金から優先請求、試験の終了費用、税金を差し引いて床を見直す。
見ておくもの
- PPMX-T003真性多血症の試験規模・対照群データ・追加の医薬用途特許の範囲
- PPMX-T003アグレッシブNK細胞白血病治験の登録とPMDAとの協議
- PPMX-T002とPPMX-T003の実際の導出契約金・ロイヤリティ・開発費負担の内訳
- PPMX-T004とUBEとの共同研究の毒性試験、治験届、マイルストン収入
- 抗体研究支援の案件実数・平均単価・粗利益率とAI解析の内製化動向
- 営業キャッシュフロー、AMED長期預り金、新株予約権の発行・行使後株数
- 武田薬品のMIMRYLOの販売実績・T003との差別化
- 研究試薬の販売個数と顧客継続率、2030年代の特許満了対応
倍率と資本コストの決め方
基準株価は価値を算定し終えるまで倍率・契約単価の根拠に用いていない。現在の創薬収入0、研究支援4,027万円、試薬販売9,523.7万円を起点に、受託案件数・製品小分け本数・導出契約換算数をそれぞれ分けた。研究支援の中立数量はAIエージェント代替で0.70倍、価格は物価3%の10年分1.34倍とし、製薬候補には一件の契約額を市場の既存株式倍率から逆算せずに別の仮説として記した。中立はなお赤字なので純資産の小部分を残余価値に数え、黒字化した上側だけは資本コスト10.25%と名目永続成長1%から正当化PERを求めた。2026年6月までに行使された株式は分母に反映済みで、各筋書きの将来発行分だけholder_shareを下げる。悲観側の床は今ある現金を10年間そのまま残したものではなく、毎年の赤字と優先支払を経た残余である。
資本コスト 10.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 2.5%。無リスク金利3%+株式リスクプレミアム4.5%=7.5%、品質補正+0.25%、事業の継続赤字に対する特別上乗せ2.5%で資本コスト10.25%。