結論
ワークマンは、作業着と作業用品の専門店から出発し、今は機能性ウエアの低価格チェーンへ広がった会社だ。店の9割以上は加盟店で、本部は商品を供給して手数料を得る。在庫と販売のリスクを加盟店と分け合う、身軽な仕組みである。
稼ぐ力は強い。営業利益率は2割近く、自己資本比率は8割を超え、現金が借金を上回る。筆者が見ているのは、ここ2年の追い風がどこまで続くかだ。熱中症対策の義務化と、低価格のリカバリーウエアがあわさり、既存店の売上は1年で9%伸びた。この上振れは、天候と流行に支えられた部分を含む。
新業態のWorkman Colorsが店を増やし、重点商品も育つ。会社の計画は2030年の目標をすでに超えそうで、中計が保守的に見える。
10年で見ると事情が違う。国内の店は飽和に近く、客数は人口とともに細る。物価の分だけ客単価が上がり、新業態が店数を押し上げても、売上の伸びは年6%ほどに落ち着くと筆者は見る。海外は2029年から試す段階で、10年の数字にはほとんど入れていない。
結論:今の値段はこの会社の力をほぼ織り込んでいる。本質価値は今より3割台半ば低く、割高の範囲で、安全域は乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、ワークマンは良い事業である。安さと機能で客を呼び、在庫と運営の重荷を加盟店に分ける。資本をほとんど使わずに2割近い利益率を出す形は、長く持ちたい種類の会社だ。
気になるのは、足元の利益が普通の年より高いことだ。熱中症対策の義務化とリカバリーウエアの需要が、利益を押し上げている。この上振れが剥がれた時に、どこまで戻るかで価値が変わる。筆者は、利益の一部は戻ると見て、10年の利益を保守的に置いた。
オーナーとして取り出せる利益は、純利益の7割ほどだ。新店と改装に使う資金が少なく、残りは配当に回せる。経営は資本の配分を誤っていない。
安全域は厚くない。今の値段は、作業着だけの会社なら高すぎ、機能服の勝者になれる会社なら妥当、という中間にある。確信が持てないのは、機能服が流行に左右されやすい点で、そのぶん確率は慎重な側に寄せた。
結論として、会社の質は高い。ただし払う値段に余裕は少なく、強気の筋書きが続く前提でちょうど釣り合う。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は、全国に約1,100ある店舗網である。ワークマンとワークマンプラスが主力で、作業着・安全靴・防寒着に加え、アウトドアやスポーツに使える機能服を売る。新業態のWorkman Colorsは、街着としてのカジュアル衣料を中心に、ショッピングセンターにも出る。
店の運営は、個人や法人の加盟店が担う。本部は商品を企画・調達して加盟店に卸し、売上に応じた手数料も受け取る。営業総収入の約6割が加盟店への商品供給で、残りの多くがこの手数料だ。店に在庫を持たせず、売れ残りのリスクを本部と加盟店で分ける形で、直営の小売より利益のぶれが小さい。
商品は自社企画が中心だ。強みは価格と機能の釣り合いで、同じ機能の服を有名ブランドより大きく安く出す。重点は5つの商品群で、リカバリーウエアのMEDiHEAL、独自素材のXshelter、UVカット、ファン付きウエア、機能性インナーがある。会社は各群でチェーン全店売上の1割を狙う。
MEDiHEALは2025年9月からの7か月で約684万着、約115億円を売った。欠品が続くほどの勢いで、客層は職人から一般の客へ広がった。ただし、この商品は流行と猛暑の両方に左右される。
客は職人から一般客へ移りつつある。職人の高齢化で、作業着だけの店は先細りになるためだ。会社が新業態に出店の中心を移すのは、この変化への備えである。
セグメントは開示されていない。ここでは、既存の業態と、Workman Colorsの2つに分けて数字を組んだ。
優良さと弱いところ
優良さの核は、価格を自分で決められる点にある。自社企画の商品が多く、素材や工場、物流まで束ねるので、同じ機能なら他社より安く出せる。安さがそのままブランドになっており、値上げしても客が逃げにくい。
資本の使い方も堅い。店の運営を加盟店に任せるので、出店の資金と在庫の負担が軽い。自己資本利益率は13%台で、現金が借金を上回り、利益率は2割近くを保つ。小売としては質が高い。
弱い点は3つある。1つ目は、ここ2年の好調に天候と流行が混ざっていることだ。2023年度と2024年度は2期連続で営業利益が減り、在庫の値引きが利益を削った。2つ目は、競合の動きだ。イオンがリカバリーウエアを再開し、ユニクロやしまむらも機能服で寄ってくる。3つ目は、加盟店との関係だ。人件費の上昇で加盟店の取り分が薄くなれば、出店のペースが落ちる。
過去の谷では、利益率が10%台に落ちたことがある。必需性のある商品が多く、ファッション専門店ほど深くは落ちないが、無傷ではない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、価格と機能の釣り合いと、全国に張った加盟店網だ。どちらも強いが、機能服という分野は参入が続くので、10年先まで守れるかは言い切れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は2つの顔を持つ。1つは作業服の市場で、職人と現場の仕事に支えられ、人口と同じように緩やかに細る。もう1つは機能性ウエアの市場で、アウトドア、スポーツ、暑さ寒さ対策へと広がり、まだ需要が伸びている。ワークマンの成長は、この2つ目の市場から来ている。
国内のアパレル小売は8兆5千億円ほどで、4年続けてプラスだった。ただし伸びの多くは値上げで、人の数も服の枚数も増えてはいない。数量は横ばいから微減、価格は物価並みに上がる、というのが筆者の置き方だ。
追い風は規制から来ている。熱中症対策の義務化で、現場の作業員が空調服やファン付きウエアを着るようになった。MEDiHEALのようなリカバリーウエアは、価格が下がり、日用品になりつつある。この需要は猛暑の年に強く出て、冷夏の年には引っ込む。
競合は増えている。ユニクロは機能素材で、しまむらは低価格で、イオンはリカバリーウエアで近づいている。ホームセンターやドラッグストアも作業用品を扱う。ワークマンの強みは、機能と値段の釣り合いと、ロードサイドに張った店網である。
人件費は業界全体で年3〜5%上がっている。加盟店は人手不足に悩み、本部が商品と運営の手間を軽くできるかが勝負になる。
海外は、会社が2029年から試し、2030年から本格化する構えだ。台湾が第1号になる予定で、ここでの成否が10年後の景色を変えうる。ただし、国内で作った『安くて機能的』という型がそのまま通じるかは、まだわからない。
資本政策と M&A
資本政策は堅実である。利益の3分の1強を配当に回し、残りは出店と新業態の改装に使う。自己資本比率は8割を超え、現金が借金を上回る。会社の仕組みが加盟店中心で、出店に大きな資金がいらないためだ。
大型の買収はほとんどない。成長は自前の出店と業態転換で進める方針で、この点は筆者が好ましく見ている。買収で価値を壊す心配が小さい。
直近は、新業態の出店と、既存店の改装に年200店超を回す。法人の加盟店をショッピングセンターに出す動きも強まる。海外は2029年にトライアルを始める計画で、投資額は今のところ小さい。
現金は積み上がりやすい構造だ。純現金は約820億円で時価総額の2割弱ある。月商1.5か月の約200億円を事業に残し、余る約620億円を戻り方0.5で足した。これから還元が増えるかが焦点になる。
TOBや再編の可能性は、外部の試算で10年内に16%ほどとされる。大株主の構成や支配の形を確かめていないので、筆者は断定しない。家賃など固定の約束がどれだけあるかも有報で確認していないため、純現金を見かけ通りの強さとは書かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2年連続の最高益は、一時の流行ではなく客層の入れ替わりである。作業着の店に、主婦、高齢者、学生が来るようになった。リカバリーウエアは約684万着が売れ、それでも欠品が続くほど需要が強い。会社は5つの重点商品群で、各1割の売上を狙う。
店の数も伸びる。計画は2030年に1,300店、2035年に1,500店だ。2027年3月期の計画だけで、すでに2030年の売上目標に届く。中計は保守的で、上方修正の余地が大きい。
新業態のWorkman Colorsは、ショッピングセンターに出られる。作業着だけの店ではできなかった立地で、街着の市場に入る。1店の年商2億円という目標が達成されれば、利益率の高い店が増える。
仕組みも強い。加盟店が運営し、本部は在庫を持たない。売上が伸びれば本部の利益が伸び、落ちても加盟店と痛みを分けられる。純現金で自己資本比率は8割あり、財務の不安がない。
海外の台湾から始まる展開が当たれば、10年先の数字は今の想像を超える。日本で磨いた『安くて機能的』という型は、他国でも通じる余地がある。
慎重な見方
足元の利益は、猛暑と流行で膨らんだ水増しを含む。熱中症対策の義務化は一度きりの追い風で、需要は先食いされる。MEDiHEALは参入が続き、イオンも再開した。価格が下がり、粗利が薄くなるのは時間の問題だ。
過去に同じことが起きた。2023年度と2024年度は、天候と在庫の値引きで2期連続の減益になった。需要の山の後には、売れ残りと値引きが来る。
国内は人口が減る。店数が増えても、1店当たりの客数は細り、新業態は既存店の客を奪う食い合いになりやすい。Workman Colorsの収益性は、まだ開示されていない。
人件費の上昇で、加盟店の取り分が薄くなる。加盟店が離れれば、出店のペースが落ちる。本部の利益は加盟店の元気に左右される。
今のPERは21倍で、成長の続きを織り込んでいる。成長が年6%に落ち、利益率が下がれば、倍率は縮む。安全域は薄く、悪い筋書きの下振れの方が大きい。
加盟店の数や出店のペースが鈍れば、本部の手数料収入も止まる。過去の谷の利益率10%台に戻る可能性は、今の値段にほとんど織り込まれていない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも理があるが、筆者は慎重な側にやや重みを置いた。事業の質と仕組みは強気の言い分が正しい。一方、利益の上振れが戻る可能性と、競合の増加は慎重な側の指摘が重い。そこで確率は、中立を中心にして、やや悲観と悲観を合わせて3割半、楽観とやや楽観を合わせて3割強とした。流行の剥落で利益が戻る場合の下振れは、上振れより大きいと見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,332 円5,984 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,605 円1,310 億円)。 今の値に割り戻すと 4,871 円3,976 億円、今との差 −5.0%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 11,268 円9,197 億円 | 2,047 円1,671 億円 | +159.6% | +10.0% | 1,332 円1,087 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,088 円8,233 億円 | 1,886 円1,539 億円 | +133.4% | +8.8% | 2,634 円2,150 億円 |
| 中立 | 33% | 9,074 円7,406 億円 | 1,755 円1,432 億円 | +111.1% | +7.8% | 3,573 円2,917 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,584 円2,925 億円 | 1,233 円1,006 億円 | −6.1% | −0.6% | 1,108 円904 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,392 円1,136 億円 | 1,022 円834 億円 | −53.0% | −7.3% | 290 円236 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,332 円5,984 億円 | 1,605 円1,310 億円 | +74.2% | +5.7% | 8,937 円7,294 億円 |
今の株価時価総額 5,130 円4,187 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 機能服の覇者になり、海外も立ち上がる 利益 439 億円 · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 11,268 円9,197 億円
ワークマンは作業着の専門店から、日本の機能服の標準へ育つ。Workman Colorsは街着の市場に入り、海外の店も含めて650店規模に広がる。リカバリーウエアや空調服は日用品となり、客数は既存店で2割以上伸びる。物価並みの値上げが通り、営業利益率は2割近くを保つ。2030年代半ばには、国内の人口減を、新業態と海外が打ち消す。10年の売上は3兆円台半ばに届く。売上の天井が上がるので、倍率も高めの水準が続く。ただし、ここまで当たる条件は多く、確率は低く置いている。海外の台湾などは、2030年から本格化する。ここで型が通じれば、10年後の景色は大きく変わる。
- ワークマン・ワークマンプラス(既存業態):数量 1,125(店舗数 × 既存店の客数指数(2026/03 期=1.0))× 価格 1.98(1 店・客数指数 1.0 当たり営業総収入(億円))→ 売上 2,227 億円・営業利益 434 億円。客数は25%増
- Workman Colors(新業態):数量 682(店舗数 × 客数指数(今=1.0))× 価格 1.81(1 店当たり営業総収入(億円))→ 売上 1,234 億円・営業利益 185 億円。新業態と海外で650店に
倍率:事業の純利益 430 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)465 億円。全体の PER 20.23 倍、時価総額 9,170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の機能服で一般客を取り込み、新業態が1,500店規模まで育ち、台湾など海外も伸びる筋書き。必要な条件が多いので1割にとどめた。
やや楽観 22% 新業態が育ち、増収が続く 利益 391 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 10,088 円8,233 億円
新業態は店数を伸ばし、既存業態の店を転換する形で580店に育つ。国内の店数は1,500店に近づくが、1店当たりの客数は小さく伸びる。機能服の需要は広がるが、競合も増え、利益率は少しずつ低下する。海外は台湾などで数十店にとどまり、10年の売上への寄与は小さい。新業態の成功が前提だが、これは中計の延長線上にある。ただし国内の人口減と競合の増加は残り、伸びは年6%ほどにとどまる。会社の目標は、2035年に1,500店である。この筋書きは、その目標に届かない水準にとどまる。加盟店の数も増え、本部の手数料収入は売上と歩調を合わせて伸びる。重点商品は広がるが、MEDiHEALのような目立つ大型商品が次々に出るとは限らず、伸びの勢いは3年目以降に落ち着く。
- ワークマン・ワークマンプラス(既存業態):数量 1,080(店舗数 × 既存店の客数指数(2026/03 期=1.0))× 価格 1.98(1 店・客数指数 1.0 当たり営業総収入(億円))→ 売上 2,138 億円・営業利益 402 億円。客数は18%増
- Workman Colors(新業態):数量 580(店舗数 × 客数指数(今=1.0))× 価格 1.81(1 店当たり営業総収入(億円))→ 売上 1,049 億円・営業利益 145 億円。新業態が580店に
倍率:事業の純利益 382 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)465 億円。全体の PER 20.11 倍、時価総額 8,154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新業態が成功し、機能服の需要も保たれる筋書き。会社の中計の延長に近いが、国内の人口減と競合を考えると中立より薄くなる。
中立 33% 店は1,450店へ。物価分の増収と控えめな利益率 利益 352 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 9,074 円7,406 億円
店数は新業態を中心に1,450店ほどに増え、中計の目標に近づく。国内の客数は人口の減少で細り、店数の増加で補う形になる。既存店の客数は、重点商品の効きで今より1割強高いところにとどまる。値段は物価並みに上がり、人件費の上昇も同じペースで吸収する。利益率は新業態の割合が増えるぶん、今より1〜2ポイント下がる。売上は3兆円ほど、営業利益は500億円近くまで伸びる。数字の上では、物価の分と店数の増加がほとんどを占める。実質の稼ぎの伸びは小さく、それでも株主の取り分は積み上がる。ただし国内の人口は年0.5%ずつ減り、客数の自然増は望めない。1店の稼ぎを太らせるのが、利益を伸ばす唯一の道になる。
- ワークマン・ワークマンプラス(既存業態):数量 1,042(店舗数 × 既存店の客数指数(2026/03 期=1.0))× 価格 1.98(1 店・客数指数 1.0 当たり営業総収入(億円))→ 売上 2,062 億円・営業利益 371 億円。客数は12%増
- Workman Colors(新業態):数量 520(店舗数 × 客数指数(今=1.0))× 価格 1.81(1 店当たり営業総収入(億円))→ 売上 941 億円・営業利益 118 億円。新業態が520店に
倍率:事業の純利益 343 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)465 億円。全体の PER 19.9 倍、時価総額 7,297 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界のノートの置き方(国内は数量が横ばい、価格は物価並み、新業態で店数が伸びる)に沿った中心の筋書き。慎重な側の指摘が重いので3割強にした。
やや悲観 23% 機能服の競争が激しくなり、利益率が落ちる 利益 247 億円 · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 3,584 円2,925 億円
機能服は参入が続き、安さの優位が薄れる。値上げは物価に追いつかず、価格の伸びは3割にとどまる。新業態は店数こそ増えるが、1店の収益は伸び悩む。人件費の上昇を吸収できず、営業利益率は13%前後まで下がる。店数は計画ほど伸びず、既存店の客数も横ばいにとどまる。それでも赤字には陥らない。価格競争に巻き込まれた後も、加盟店網と現金の厚みは残る。利益の水準が下がり、倍率も縮むので、株価の下振れは大きい。本部は価格を下げて対抗するが、粗利率が下がり、利益の伸びは売上の伸びに追いつかない。加盟店の数も減る。加盟店の取り分が薄れ、新規の出店希望は減る。本部は商品の値下げで客を守るが、その分だけ粗利が削られ、利益の伸びは売上より遅れる。
- ワークマン・ワークマンプラス(既存業態):数量 930(店舗数 × 既存店の客数指数(2026/03 期=1.0))× 価格 1.92(1 店・客数指数 1.0 当たり営業総収入(億円))→ 売上 1,786 億円・営業利益 268 億円。客数が横ばい
- Workman Colors(新業態):数量 450(店舗数 × 客数指数(今=1.0))× 価格 1.76(1 店当たり営業総収入(億円))→ 売上 790 億円・営業利益 75 億円。新業態が450店に
倍率:事業の純利益240億円・事業 ROE 10.2%。RONIC=k 7%+1/2×(ROE−k)=9.1%、g 4.0% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.0倍。成長が鈍り、利益の質が下がる筋書きのため、上限へは引き上げない。上限の約7割の9.8倍に置いた。余った現金は今の4分の3の465億円に減り、戻り方0.5で足す。
確率:競合の増加、価格競争、人件費の上昇で利益率が構造的に下がる筋書き。この領域の競争は激しく、2割強まで厚くした。
悲観 12% 構造的に負け、安さも機能も優位を失う 利益 107 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,392 円1,136 億円
競合が機能服の安さに追いつき、ワークマンの優位が消える。MEDiHEALなどの重点商品は値崩れし、新業態は不採算店を抱える。加盟店は人件費の負担に耐えられず、閉店が増える。価格は物価に追いつかず、既存店の客数は1割強減る。営業利益率は1割を切り、純利益は今の半分以下になる。ただし、無借金で現金があり、店の網も残るので、存続の問題はない。加盟店の撤退と新業態の失敗は、本部の手数料収入を直撃する。それでも在庫を持たない仕組みなので、損失は限られ、会社は小さくなっても存続する。最悪でも、全国に残る店網と現金が価値の下支えになる。ただ、伸びる会社ではなくなり、倍率は大きく縮む。
- ワークマン・ワークマンプラス(既存業態):数量 792(店舗数 × 既存店の客数指数(2026/03 期=1.0))× 価格 1.77(1 店・客数指数 1.0 当たり営業総収入(億円))→ 売上 1,404 億円・営業利益 126 億円。客数が12%減
- Workman Colors(新業態):数量 300(店舗数 × 客数指数(今=1.0))× 価格 1.62(1 店当たり営業総収入(億円))→ 売上 486 億円・営業利益 19 億円。新業態が300店で止まる
倍率:事業の純利益103億円・事業 ROE 5.4% は k 7% 以下なので、上限は 1÷k=12.5倍。事業のROEが資本コストを下回る構造的な負け。上限1÷kの約7割に置いた。純現金・無借金と全国の店網は倒産を防ぐ。上限の約7割の8.8倍に置いた。余った現金は半分の310億円に減り、戻り方0.5で足す。
確率:10年のうちに、機能服で優位を失う筋書き。ユニクロやしまむら、大手スーパーの攻勢と、加盟店の疲弊、新業態の失敗が重なる場合。10年の悲観として1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ワークマン・ワークマンプラス(既存業態)
作業着から機能服まで売る主力の店舗網。加盟店が運営し、本部は商品供給と手数料で稼ぐ。
| 数量店舗数 × 既存店の客数指数(2026/03 期=1.0) | 価格1 店・客数指数 1.0 当たり営業総収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,034 | 1.48 | 1,527 | 289 |
| 10 年後 中立 | 1,042 | 1.98 | 2,062 | 371 |
取り方:2026/03 期末の全 1,094 店のうち、新業態 Workman Colors を約 60 店と推定し(開示なし)、残り約 1,034 店を既存業態とした。営業総収入 1,608 億円から Colors の推定 81 億円を引いた 1,527 億円を店数で割り、1 店当たり 1.477 億円とした。営業利益は全体 297 億円から Colors の推定 8 億円を引いた。客数指数は今を 1.0 とし、実質の量(客数)はここに入れ、物価の分は価格の欄に入れる。中立は 3 年で価格 1.09 倍・10 年で 1.34 倍、客数は MEDiHEAL など重点商品の効きで 3 年 1.14・10 年 1.12 とした。
Workman Colors(新業態)
街着のカジュアル衣料を中心にした新業態。ショッピングセンターにも出店し、今後の出店の中心になる。
| 数量店舗数 × 客数指数(今=1.0) | 価格1 店当たり営業総収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 1.35 | 81 | 8 |
| 10 年後 中立 | 520 | 1.81 | 941 | 118 |
取り方:店数・1 店当たり収入・利益率はすべて推定(開示なし)。2027/03 期に Colors を 34 店出す計画と、既存店の業態転換 55 店の報道から、今は約 60 店とみた。新しい店は立ち上がりで利益率が低いので約 10% とした。価格は中立で 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍。店数は転換と新規で増えるが、既存業態の店数がその分減る。数量は実物(店舗数)。伸びの理由は既存店の業態転換と新規出店で、名目の市場の伸びではない。
リスクと懸念
リカバリーウエアの反動
MEDiHEALは約684万着が売れた主力だが、流行の山を越えれば需要が細る。競合の参入で価格が下がると、粗利も削られる。会社は重点商品群で各1割の売上を狙うが、1つが崩れると全体の伸びが鈍り、在庫の値引きで利益を削る恐れがある。
天候と熱中症需要への依存
空調服やファンウエアなど夏物の売上は猛暑の年に強く出る。冷夏や暖冬になれば既存店が大きく落ちる。月次の客数は2026年4月に116%、6月に90%と振れており、1年を通した天候の影響が大きい。利益の伸びに直結するので、月次の動きを毎月確かめたい。
加盟店との関係
店の9割以上が加盟店で、本部の成長は加盟店の元気に左右される。人件費の上昇と人手不足で加盟店の取り分が薄くなると、出店のペースが落ち、既存店も疲れる。新業態への転換や改装の負担も、加盟店に重くのしかかる。利益の伸びに直結するので、毎月の数字で確かめたい。
新業態の食い合い
Workman Colorsを増やすと、近くの既存店と客を分け合う恐れがある。新業態の収益性は開示されていないので、新店が既存店より利益率の低い店を増やすだけになる懸念が残る。利益の伸びに直結するので、月次の動きを毎月確かめたい。
競合の機能服参入
ユニクロは機能素材で、しまむらは低価格で、イオンはリカバリーウエアで同じ客を狙う。ホームセンターやECも作業用品を売る。安さで勝つ型は、まねされやすく、価格競争に巻き込まれると利益率が下がる。利益の伸びに直結するので、月次の動きを毎月確かめたい。
海外展開の不確実性
海外は2029年にトライアル、2030年に本格化の計画で、国内で育てた型がそのまま通じるかはまだわからない。失敗すれば投資が無駄になるが、現時点では規模が小さく、国内の稼ぎを大きく損なう心配は薄い。利益の伸びに直結するので、月次の動きを毎月確かめたい。
最低賃金と店舗の固定費
最低賃金は上がり続け、人件費は年3〜5%で膨らむ。家賃や光熱費も固定費として残る。売上が落ちる年に、固定費が利益を削る度合いが大きくなる。利益の伸びに直結するので、月次の動きを毎月確かめたい。利益の伸びに直結するので、毎月の数字で確かめたい。
今後の分かれ目
- 猛暑が続き、リカバリーウエアの需要が衰えない
- 既存店の売上が高く保たれ、利益率は2割近くを維持する。強気の筋書きに近づき、今の値段は適正に近づく。
- MEDiHEALの競合が増えて価格が下がり、在庫が余る
- 粗利が薄くなり、値引きで利益が削られる。2023〜2024年度のような減益に戻り、慎重な筋書きが厚くなる。
- Workman Colorsの1店当たり売上が既存店並みに育つ
- 店数の伸びがそのまま利益の伸びになる。10年の店数が1,500店を超える強気の筋書きが現実味を帯びる。
- 加盟店の離脱や出店ペースの鈍化が目立つ
- 店数の伸びが止まり、売上は物価分の伸びにとどまる。倍率も縮み、やや悲観の筋書きに寄る。
- 台湾など海外店が国内並みの収益を出す
- 10年後の売上の天井が上がる。海外の店数を今は入れていないので、上振れの余地になる。
- 景気が急に悪化して消費が冷える
- 必需性のある作業着は底堅いが、機能服は落ちる。既存店が1〜2割減り、固定費の重さで利益率は10%台前半へ下がる。
見ておくもの
- 月次の既存店売上と客数(猛暑と冷夏で振れる)
- MEDiHEALの欠品の解消と、競合の価格・参入
- Workman Colorsの出店数と1店当たり売上
- 加盟店の数と、出店・閉店の動き
- 2029年に始まる海外(台湾)のトライアルの結果
- 最低賃金の上昇と、加盟店の取り分
- 中期経営計画の目標の上方修正
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、その時点の自己資本利益率・資本コスト(8.0%、基本7.5%、quality 合計+0.5%)・長期の成長率から出した正当化PERの上限に対し、楽観〜中立では8.5〜9割に置いた。悲観は谷の年と構造的な負けを事業の稼ぐ力(1÷kの手前)で測り、谷のPBRは使っていない。余った現金は有報の定期預金を含む約620億円(月商1.5か月を残した額)を、戻り方0.5で足した。今のPERが20倍台なので、結果が割高寄りに出ても調整していない。 店舗の家賃は加盟店と本部で分かれるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた(新リース会計基準で開示の形が変わっても比べられるように)。悲観では売上が落ちても家賃は残るので、利益率を大きく落とした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.2→20.23 倍・やや楽観 PER 13.2→20.11 倍・中立 PER 12.7→19.9 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.00%。