結論
ヴァーレは、ブラジルの巨大な鉄鉱石鉱山と鉄道・港湾を一体で運営し、銅とニッケルも生産する世界有数の資源会社である。筆者の結論は、現在の約530億ドルの時価総額に対してやや割安である。ただし、それは中国の鉄鋼需要が回復するからではない。銅の増産と、資源価格が低迷しても続けられる株主還元が価値を支えるからだ。
2025年の売上は382億ドル、営業利益は111億ドル、純利益は25億ドルだった。純利益には減損などの大きな影響があり、通常の稼ぐ力を表す数字としては弱い。2026年上期には売上が198億ドル、親会社株主に帰属する純利益が33億ドルとなり、操業の改善が確認できた。第2四半期の鉄鉱石生産は8430万トン、銅は9.84万トンだった。第3四半期決算は10月29日発表予定であり、この分析にはまだ含まない。
長期の価値を左右するのは三つある。第一に、鉄鉱石の価格が中国の不動産不況とギニアのシマンドゥ鉱山の増産に耐えられるか。第二に、カラジャス地域の銅事業を計画どおり伸ばせるか。第三に、鉱山の維持費と過去のダム事故の賠償を払いながら、無理のない配当と自社株買いを続けられるかである。
中立の2035年には、鉄鉱石の販売量が緩やかに増え、銅が現在より大きな利益の柱になる。純利益は82億ドル、時価総額は697億ドルと見る。10年間の正味の株主還元は540億ドルを見込む。五つの筋書きを資本コスト9.5%で割り引いた価値は約616億ドルとなり、現在の時価総額を約16%上回る。安全域は存在するが、資源価格の読み違いを十分に吸収できるほど厚くはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヴァーレは長く必要とされる事業だが、利益を予測しやすい優良企業ではない。鉄鉱石の巨大な鉱床と港までの物流設備は、10年後にも簡単に代替できない。銅は送電網や電化に使われ続ける。人工知能の普及もデータセンターや送電設備を通じて金属需要を支える可能性がある。しかし鉱石そのものを高い価格で売る権利まで持っているわけではない。物の価値が長く残ることと、株主の利益が高く安定することは別である。
株主に帰属する利益を見る時は、鉱山を維持する投資と環境負担を忘れられない。2025年のフリーキャッシュフローは添付データで約31億ドルだった。会社が示す一時要因を除いた継続的なキャッシュフローはこれより大きいが、賠償の現金流出は実際に株主の取り分を減らす。減価償却をすべて利益に戻すことはしない。鉄鉱石の品位低下、廃さい設備の更新、銅鉱山の開発費は、資源を掘り続けるために必要な支出だからだ。
筆者が評価するのは、銅の成長を既存設備の周辺で進める方針である。2025年の約38万トンから2035年に約70万トンを目指す構想は、需要の伸びを根拠にしており、ROEの高さから将来成長を逆算した計画ではない。バカバなどの新鉱山が予定どおり稼働し、増分の投資利回りが資本コストを上回れば、銅は株主価値を本当に増やす。
ただし、鉄鉱石と銅の利益は資源価格の変化に大きく左右される。長期の利益に永久成長の倍率をそのまま掛けるのではなく、埋蔵量を掘り減らす事業として寿命のある利益を評価する必要がある。中立では鉱山利益を20年の年金として扱い、長期の成長率を1%にとどめた。現在の価値には約16%の安全域があるという結果になったが、鉄鉱石価格が実質で大きく下がれば容易に消える。価格の不確実性を考えると、魅力はあるが安心して放置できる銘柄ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は鉄鉱石である。2025年には鉄鉱石製品を約3億1400万トン販売し、鉄鉱石関連事業から約301億ドルの売上を得た。主力は鉄鉱石粉で、販売量は2億7300万トン、平均実現価格は1トン約92ドルだった。ペレットは約3280万トンを販売し、通常の鉄鉱石粉より高い単価を得ている。鉄鋼会社が鉄鉱石を高炉や直接還元炉で使い、鋼材を作るたびに需要が生まれる。
最大の競争力は、パラー州のカラジャス鉱床にある。S11Dを含む北部の鉱石は鉄分が約65%と高く、一般的な62%品位の指標商品より不純物が少ない。品位の高い鉱石は製鉄所でのコークス使用量や排出量の削減に役立つ。ヴァーレは鉱山からカラジャス鉄道を通じてサンルイス近郊の港まで運ぶ設備を持つ。この一体運営は新規参入者が容易に再現できない。ミナスジェライス州にも広大な鉱山群があり、南東部・南部の鉄道と港湾を通じて輸出する。
しかし顧客は集中している。2025年の鉄鉱石とペレットの出荷の63%は中国向けで、アジア全体では80%だった。製鉄所は鉱石の品質に合わせて配合を調整するため、切り替えには手間がかかる。それでもヴァーレが市況を離れて自由に値上げできるわけではない。リオ・ティントやBHPの鉱石と比較され、輸送費と品位の差を考慮した価格で取引される。
第二の柱はヴァーレ・ベースメタルズである。2025年の銅販売は約36.8万トン、ニッケルは約17.3万トンで、金・銀・コバルト・白金族金属も産出する。銅の中心はブラジルのサロボとソセゴであり、カナダのサドベリーやボイジーズベイでも銅とニッケルを採掘する。ニッケルはカナダやブラジルの設備に加え、インドネシア関連の権益と供給を持つ。金などの副産物収入が銅やニッケルの実質的な生産コストを引き下げる。
ベースメタルズ会社の持分はヴァーレが90%、マナラ・ミネラルズが10%である。連結売上には全額が入るが、親会社株主の利益を考えると少数株主の取り分を控除しなければならない。鉄鉱石が現在の収益を作り、銅が将来の成長を担い、ニッケルは競争力の再構築を求められているというのが事業の全体像である。
優良さと弱いところ
ヴァーレには本物の参入障壁がある。ただし、強い価格決定力がある会社ではない。カラジャスの高品位鉱床、鉄道、港湾、選鉱設備、鉱業権を新規企業が一からそろえるには、巨額の資金と長い許認可期間が必要になる。2025年末の鉄鉱石の確認・推定埋蔵量は鉱石原位置ベースで約135億トンに達する。高品位の北部システムだけでも約55億トンの埋蔵量があり、10年後も事業そのものが必要とされる確度は高い。
費用面では、2025年の鉄鉱石C1現金生産コストは1トン21.3ドルだった。これは十分競争力のある水準だが、フォーテスキューの2025年度の約18ドルと比べて圧倒的に安いわけではない。ブラジルから中国までの輸送距離も豪州勢より長い。品質の高さと港湾までの一体運営が、この距離の不利を補う。2026年第2四半期には銅の副産物控除後の総コストがマイナス257ドル、ニッケルが約1万340ドルまで改善した。ただし金などの副産物価格が高い時期の数字であり、恒久的な低コストを保証するものではない。
経営の質には厳しい評価が必要だ。2015年のサマルコのダム決壊と2019年のブルマジーニョのダム決壊は、人命と地域社会に甚大な被害を与えた。これは単なる一時費用ではなく、鉱山の管理と投資判断を誤った歴史である。その後の安全対策と賠償履行は進んだが、鉱山会社の堀が地域社会からの操業許可に依存することを忘れてはならない。
資本効率は市況で大きく揺れる。2021年のROEは65%だったが、2025年は7%台だった。高い年の利益を再投資利回りの証明と見なすのは危険である。成長投資では、新規の銅鉱山が総投資額に対して資本コストを超える利益を生むかが肝心だ。既存の鉱床とインフラを使うバカバなどの拡張は、完全な新規鉱山より有利な条件を持つ。一方、品位低下や安全対策で必要になる維持投資は、株主に自由に配れる利益ではない。
堀は狭くはないが、広がり続けるとも言い難い。シマンドゥの高品位鉱石が市場に入り、インドネシアのニッケル供給が増えれば、商品価格を決める力はむしろ弱まる。持続する強みは、低コストの埋蔵量と物流設備の質に限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鉄鉱石市場は成熟している。2025年の世界の海上鉄鉱石貿易量は約16.6億トンで、ヴァーレの販売量はその約19%に相当する。リオ・ティントのピルバラ出荷量は約3.26億トン、BHPの西豪州事業は約2.9億トン、フォーテスキューは約2億トンだった。四大供給者が世界の海上輸送市場の大きな部分を占めるが、各社は市況価格を受け入れる。ヴァーレのシェアは10年前から大きく拡大したわけではなく、事故で失った生産能力を回復しながら競争力を保ってきた。
最大の変数は中国である。世界鉄鋼協会は2026年10月の見通しで、世界の鋼材需要を2026年約17.22億トンとし、2027年の伸びを1.7%と予想した。中国の需要は2026年に2%、2027年に1%減る見通しである。インドは2026年に7.9%、2027年に8.0%伸びる予想だが、中国の絶対量は非常に大きい。インドや東南アジアの成長だけで、中国の不動産向け需要減少を短期間に埋められるとは限らない。
供給側ではギニアのシマンドゥが重要になる。リオ・ティントと中国系企業などの共同事業で、全体の設計輸出能力は年1.2億トンに達する計画だ。2026年10月時点で操業拡大が進み、リオ・ティント側の鉱山は2028年後半に年6000万トンの稼働水準を目指している。高品位鉱石が増えればヴァーレの品質上の優位も一部薄まる。中立では世界の海上貿易量が2035年に約17.5億トンとなり、ヴァーレの販売量が約3.43億トンに増えてもシェアは20%弱にとどまると見る。
銅は事情が異なる。2025年の世界の銅鉱山生産は約2320万トンで、ヴァーレの生産量約38万トンは1.6%程度だった。国際エネルギー機関は2025年の重要鉱物見通しで、2035年に既存の鉱山開発計画だけでは銅供給が需要を最大約30%下回る可能性を指摘した。送電網、電化、データセンターが需要を支える。ただし国際銅研究会の2026年10月時点の見通しでは、2026年と2027年の精製銅市場は小幅な供給過剰であり、長期の供給不足を足元の高値が永続する根拠にしてはならない。
ニッケルはさらに厳しい。国際ニッケル研究会の2025年時点の見通しでは、世界の一次ニッケル生産は約381万トンで、インドネシアが鉱山生産の約66%を占める。中国系の製錬投資が供給を押し上げ、電池需要が増えても価格は伸びにくい。ヴァーレの高品質ニッケルには用途があるものの、10年先の成長を銅と同じように扱うべきではない。
資本政策と M&A
ヴァーレの株主還元方針は、調整後EBITDAから維持投資を引いた額の30%を最低年間還元額とし、原則として年2回に分けて配当・資本利子として支払う仕組みである。定款上の利益配分要件もあるが、追加配当や自社株買いは取締役会の判断になる。2025年の添付財務データでは配当が約36億ドルだった。2021年と2022年には市況高騰で大規模な配当と自社株買いを行い、2023年以降も買い戻しを続けた。市況が悪い時に借金を増やしてまで高配当を守る約束ではないことは、むしろ健全である。
2026年7月には約17億ドルの配当・資本利子を承認し、新たに最大1億株、約18カ月の自社株買い枠を設定した。これは承認枠であって、必ず全額を買うという約束ではない。2026年上期の買い戻しは約1380万株だった。買い戻した株は自己株式として保有・消却されるため、普通株主の持分を増やす効果がある。ただし鉱山の本質価値を超える価格で大量に買えば、その効果は薄れる。
会社は2026年の設備投資を約54億〜57億ドルとし、2027年以降も年60億ドル未満を目指している。維持投資は年約45億ドル、成長投資は約10億ドル超という構成が当面の目安である。拡大純負債の管理目標は100億〜200億ドルの範囲で、ダム事故関連の将来支払いも含む。2026年第2四半期の通常の純負債は約132億ドル、拡大純負債は約167億ドルだった。財務危機に近い状態ではないが、現金を自由な余剰資産と考えることはできない。
資本配分の弱点は事故の後始末と銅事業への集中投資である。サマルコの2015年の事故に関する2024年の和解は総額1700億レアルの枠組みであり、ヴァーレにも長期の支払い義務がある。ブルマジーニョの賠償とダム廃止工事も続く。2026年6月末の関連引当金は約39億ドルだった。過去の失敗の支払いと将来の鉱山投資が、配当原資を取り合う。
ヴァーレには2020年以降、明確な支配株主はいない。ただしブラジル政府は12株の黄金株を保有し、社名変更、事業目的の変更、鉄鉱石の鉱山・鉄道・港湾の重要な処分などを拒否できる。ベースメタルズの10%はマナラに帰属する。鉱山の売却や事業再編で普通株主が自由に選択できない余地は残る。現時点で会社全体の買収・非公開化・上場廃止について合意済みの事実は確認できず、単独の上場会社として評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ヴァーレの最大の強みは、世界最大級の鉱床を既に持ち、そこから港までの物流システムを完成させていることだ。新規参入者は鉱石を発見しただけでは競争相手になれない。鉄道、港湾、鉱業権、環境許可、地域社会との合意が必要になる。ヴァーレは過去の大きな事故から高い費用を払って操業体制を立て直し、2025年には鉄鉱石生産量が2018年以来の高水準へ戻った。2026年もカラジャスのS11Dなどが好調で、鉄鉱石は世界有数の供給者という位置を維持している。
鉄鉱石の需要が世界全体で急増する必要はない。中国の不動産向けの落ち込みをインド、東南アジア、アフリカの鋼材需要が補い、世界の海上貿易量が緩やかに増えればよい。高品位鉱石を使うほど製鉄の燃料消費と排出量を減らせるため、カラジャスの優位性は残る。ペレットや低炭素製鉄向け製品の割合が上がれば、鉄鉱石の販売単価と利益率が改善する余地もある。
さらに銅の成長は会社の構造を変えうる。2025年の銅生産は38万トン程度だが、会社は2035年に約70万トンを目指す。バカバやアレマンなどの開発で既存の鉄道・人員・電力を活用すれば、新しい鉱業地域を一から開発するより投資効率は高い。電力網、電気自動車、データセンターの需要が拡大するほど、この銅事業の価値は増す。金などの副産物収入がコストを下げることも強みである。
経営陣は設備投資を抑えながら最低還元方針を維持し、2026年にも新しい自社株買い枠を承認した。大きな買収を重ねる代わりに、既存鉱山の周辺を開発して配当を払うなら、資源価格が平凡でも高い現金還元が続く。2035年の鉄鉱石価格が名目で大きく上昇し、銅の生産量が計画を上回れば、ヴァーレは現在より利益率の高い会社になる。
慎重な見方
最大の問題は、会社に優れた鉱山があっても、鉄鉱石の価格を決められないことである。中国の鋼材需要は人口動態、不動産在庫、輸出規制、鉄スクラップ利用の増加という複数の構造的な圧力を受けている。2026年10月に世界鉄鋼協会は中国の需要見通しを下方修正した。鉄鉱石需要の中心が弱る間に、ギニアのシマンドゥで高品位鉱石が増産される。供給の質でも量でも競争が強まる局面だ。
高品位鉱石の価値を過大評価してもいけない。製鉄所は鉱石の配合を変えることができ、鉄分65%の鉱石でも価格差が広がれば別の供給者に切り替える。ヴァーレは豪州勢より中国への輸送距離が長い。フォーテスキューやBHPも低い生産コストを持つため、価格競争になるとヴァーレだけが高い利益率を守れるとは限らない。鉄鉱石の名目価格が10年後も現在並みにとどまれば、物価で上がる採掘費や労務費が利益を大きく削る。
銅の増産も確定した利益ではない。新規鉱山には許認可、地域社会との交渉、鉱石品位、建設費、操業開始の遅れが付きまとう。会社の2035年の目標は可能性を示したものであり、保証された生産量ではない。電化の需要が伸びても、コンゴ、チリ、ペルー、モンゴルなどで増産が進めば、銅価格は期待ほど上がらない。ニッケルにはインドネシアの大規模な増産があり、競争環境はさらに厳しい。
経営の過去も忘れられない。2015年と2019年のダム事故は、利益追求より安全性を優先しなければ事業そのものが傷むことを示した。賠償とダム廃止工事の支払いは今後も続く。ブラジル政府の黄金株による拒否権もあり、不採算資産を自由に処分できるとは限らない。資源価格が弱い時期に負債と設備投資が重なれば、配当も自社株買いも減る。ROEが資本コストを下回る会社に変わった時、現在の自己資本を額面どおり株主価値とみなすことは危険である。
どちらに重みを置いたか
鉄鉱石の市況と中国の需要には慎重な見方が優勢だが、銅の成長余地と既存の巨大な物流資産は無視できない。したがって、やや悲観と悲観の確率を合計35%とし、楽観側の29%より厚くした。中立は36%で最も大きい。これは左右対称の景気循環ではなく、鉄鉱石の実質価格が弱くなる可能性と、銅の増産が成功する可能性を別々に考えた結果である。
資本コストは9.5%とし、世界的な低コスト鉱山という強みがあっても、商品価格を決められない弱い堀として評価した。10年後の加重価値は約616億ドルで、現在の時価総額に対して約16%の上振れ余地がある。やや割安という結論だが、十分な安全域があるとは言い切れない。配当を含めて長期保有できる可能性はあるものの、中国の鉄鋼需要、シマンドゥの増産、銅の開発計画、環境負担を継続的に見直す必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 18.11 ドル774 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 11.29 ドル483 億ドル)。 今の値に割り戻すと 14.48 ドル619 億ドル、今との差 +27.1%、 期待の年率 +13.1%(資本コスト 9.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 47.28 ドル2,021 億ドル | 21.05 ドル900 億ドル | +499.9% | +25.9% | 6.15 ドル263 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 28.42 ドル1,215 億ドル | 15.91 ドル680 億ドル | +289.2% | +19.4% | 8.87 ドル379 億ドル |
| 中立 | 36% | 16.30 ドル697 億ドル | 12.63 ドル540 億ドル | +154.1% | +13.4% | 10.42 ドル445 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 7.50 ドル321 億ドル | 6.08 ドル260 億ドル | +19.3% | +2.3% | 3.13 ドル134 億ドル |
| 悲観 | 12% | 4.80 ドル205 億ドル | 2.22 ドル95 億ドル | −38.4% | −5.5% | 0.84 ドル36 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 18.11 ドル774 億ドル | 11.29 ドル483 億ドル | +158.1% | +13.1% | 29.40 ドル1,257 億ドル |
今の株価時価総額 11.39 ドル487 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:高品位鉄鉱石の需給が締まり、銅の生産が目標を超える 利益 215 億ドル · PER 9.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 47.28 ドル2,021 億ドル
2035年の世界の海上鉄鉱石需要は約19億トンまで拡大する。インド、東南アジア、中東、アフリカの鉄鋼生産が伸び、中国の需要減少を補う。リオ・ティントのシマンドゥ増産は進むが、高品位鉱石への需要が強く、ヴァーレは鉄鉱石粉3億1500万トンとペレット6200万トンを販売する。高品位鉱石のプレミアムが高まり、鉄鉱石粉の実現価格は1トン150ドルとなる。
カラジャスの銅開発は計画を上回り、銅販売は72万トンに達する。電化と送電網向け需要が供給を上回り、複合実効価格は1トン1万8500ドルに上昇する。ニッケルも高品質品と副産物を組み合わせ、インドネシア勢との競争に耐える。銅事業の増分ROICは資本コストを十分に上回る。
2035年の営業利益は350億ドル、純利益は215億ドルとなる。2026年から2035年の純利益累計は1350億ドル、正味の配当と自社株買いは900億ドルで、自己資本は786億ドルとなる。ブラジル政府の黄金株による大きな再編阻止や新しい賠償事故は起こらず、経営は既存鉱山の開発と株主還元を優先する。鉄鉱石も銅も良好な資源価格が定着する、かなり強い筋書きである。
- 鉄鉱石粉:数量 315(販売量(百万トン))× 価格 150(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 473 億ドル・営業利益 217 億ドル。高品位鉱石の需給が締まり、販売量は増加。名目価格は2025年の1.64倍で実質でも上昇。
- 鉄鉱石ペレット:数量 62.0(ペレット販売量(百万トン))× 価格 235(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 146 億ドル・営業利益 63 億ドル。低炭素製鉄向けの高品位ペレットと関連製品の拡販が成功。
- ROM鉄鉱石・物流サービス:数量 10.0(ROM販売量換算(百万トン))× 価格 125(ROM販売と物流収益を合算した実効単価(ドル/トン))→ 売上 13 億ドル・営業利益 3 億ドル。鉱石輸送量と付随物流収入が増加。
- 銅・銅鉱山の副産物:数量 720(銅の総販売量(千トン、銅含有量))× 価格 18,500(銅販売と関連副産物を含む複合実効単価(ドル/トン))→ 売上 133 億ドル・営業利益 73 億ドル。バカバ等の開発が成功し、2035年の会社目標約70万トンを上回る。
- ニッケル・併産貴金属等:数量 240(ニッケル販売量(千トン、ニッケル含有量))× 価格 40,000(ニッケルと併産物の実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 96 億ドル・営業利益 29 億ドル。高純度ニッケルと金・白金族などの副産物が高付加価値で販売される。
倍率:資本コスト9.5%、長期名目成長率1.0%、弱い堀の残存割合3分の1を使用する。2035年ROEは215÷786.3=27.3%、RONICは約15.4%。正当化PERの永久成長式は翌期利益基準で約11倍となるが、資源の寿命20年の年金倍率約9.43倍、2035年利益基準では約9.52倍が上限となる。高い価格水準が定着し、銅開発も成功するため上限の約99%の9.4倍を採用した。GAAP純利益を用い、純現金の別加算はしない。
確率:中国以外の製鉄需要拡大、シマンドゥの増産を吸収する高品位鉱石需要、カラジャスの銅鉱山開発の成功が同時に起きる場合。鉄鉱石の実質価格が上がり、銅の生産が2035年の会社目標を上回るには複数の好条件が必要なので9%とする。
やや楽観 20% やや楽観:鉄鉱石の価格が物価に追随し、銅が利益を押し上げる 利益 135 億ドル · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28.42 ドル1,215 億ドル
2035年には中国の鉄鋼需要が縮小を止め、インドや東南アジアが世界の需要を支える。ヴァーレの鉄鉱石粉販売量は3億トン、ペレットは5500万トンとなる。鉄鉱石粉の価格は130ドルで、おおむね物価の上昇に沿って増える。リオ・ティントとBHPは低コストを保つが、ヴァーレの高品位品も製鉄所から選ばれ続ける。
銅販売量は65万トンとなり、カラジャスの増産が大きく寄与する。銅鉱山の利益率は改善し、複合実効価格は1万6000ドルになる。ニッケルも生産効率と副産物回収が改善するが、インドネシアの供給があるため、販売数量と価格の伸びは銅より小さい。
営業利益は229億ドル、親会社株主に帰属する純利益は135億ドルとなる。10年間の純利益累計975億ドルから正味680億ドルを株主に還元し、自己資本は631億ドルとなる。買収で規模を大きくするより、鉱床周辺の開発と維持投資を優先する。事故関連の追加支払いも大きくは増えず、資源価格と操業の両方が会社の計画よりやや良く進む。
- 鉄鉱石粉:数量 300(販売量(百万トン))× 価格 130(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 390 億ドル・営業利益 152 億ドル。世界の海上鉄鉱石需要が緩やかに増え、シェアを維持する。
- 鉄鉱石ペレット:数量 55.0(ペレット販売量(百万トン))× 価格 193(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 106 億ドル・営業利益 37 億ドル。直接還元製鉄向けの増加が価格と数量を支える。
- ROM鉄鉱石・物流サービス:数量 9.5(ROM販売量換算(百万トン))× 価格 107(ROM販売と物流収益を合算した実効単価(ドル/トン))→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。鉄鉱石の増産に物流サービスが追随する。
- 銅・銅鉱山の副産物:数量 650(銅の総販売量(千トン、銅含有量))× 価格 16,000(銅販売と関連副産物を含む複合実効単価(ドル/トン))→ 売上 104 億ドル・営業利益 51 億ドル。既存鉱区周辺の増産が進み、銅の世界需要拡大の恩恵を受ける。
- ニッケル・併産貴金属等:数量 220(ニッケル販売量(千トン、ニッケル含有量))× 価格 33,000(ニッケルと併産物の実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 73 億ドル・営業利益 15 億ドル。高品質品への集中と副産物収入で採算が改善する。
倍率:2035年ROEは135÷631.3=21.4%、資本コスト9.5%、弱い堀のRONICは約13.5%。gは鉄鉱石の成熟、銅の数量成長、ニッケルの供給競争を総合して資源事業の長期上限である1.0%とする。永久成長式より低い寿命20年の年金倍率が上限となり、2035年利益基準の約9.52倍に対して約95%の9.0倍とした。利益には少数株主持分の控除と借り換え後の金利負担を含む。
確率:鉄鉱石の数量が緩やかに増え、銅の生産が2035年の会社目標に近づく筋書き。低コストの既存鉱床を利用する開発計画には実行可能性があるが、中国の需要と銅鉱山建設には不確実性が残るため20%。
中立 36% 中立:鉄鉱石は実質安、銅の成長で利益を維持する 利益 82 億ドル · PER 8.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 16.30 ドル697 億ドル
世界の海上鉄鉱石需要は2035年に約17.5億トンとなり、現在から緩やかに増える。中国の鉄鋼需要は減少するが、インド、東南アジアなどの成長が補う。シマンドゥが増産するため高品位鉱石の供給も増え、ヴァーレの鉄鉱石粉の実現価格は112ドルにとどまる。2025年から名目では約22%上昇するが、物価上昇率3.5%を考慮すると実質では約13%下がる。販売数量は2億8600万トンへ増え、ペレットは4800万トンになる。
銅はカラジャスの既存設備と新しい鉱体の開発で販売量が56万トンとなる。これは2025年比で約52%増加するが、会社の2035年目標約70万トンより保守的である。銅の複合実効価格は1万3500ドルとなり、2025年比の上昇率は物価をやや下回る。ニッケルはインドネシアの増産が価格を抑え、数量の増加と副産物の利益改善だけを見込む。
2035年の売上は約542億ドル、営業利益は153億ドル、純利益は82億ドルとなる。純利益÷営業利益は0.54で、長期の実績と大きく変わらない。2026年上期の純利益の回復を出発点とし、途中の操業停止や一時費用も含めた10年間の純利益累計は710億ドルとする。正味540億ドルを株主に還元し、自己資本は506億ドルへ増える。鉱山の寿命を延ばす維持投資と銅の成長投資を払いながら、資源会社として無理のない還元を続ける姿である。
- 鉄鉱石粉:数量 286(販売量(百万トン))× 価格 112(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 320 億ドル・営業利益 109 億ドル。世界の海上鉄鉱石需要約17.5億トンに対し、ヴァーレの全鉄鉱石製品の販売シェアを約20%に維持。価格は実質約13%低下。
- 鉄鉱石ペレット:数量 48.0(ペレット販売量(百万トン))× 価格 160(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 77 億ドル・営業利益 25 億ドル。直接還元用需要で数量は増えるが、競争により価格の伸びは物価以下。
- ROM鉄鉱石・物流サービス:数量 9.0(ROM販売量換算(百万トン))× 価格 95(ROM販売と物流収益を合算した実効単価(ドル/トン))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。ROM販売と物流サービスは鉄鉱石の増産に連動する。
- 銅・銅鉱山の副産物:数量 560(銅の総販売量(千トン、銅含有量))× 価格 13,500(銅販売と関連副産物を含む複合実効単価(ドル/トン))→ 売上 76 億ドル・営業利益 33 億ドル。2025年の銅販売約37万トンから56万トンへ増加。世界鉱山市場でのシェアは約1.6%から約2%へ高まる。
- ニッケル・併産貴金属等:数量 205(ニッケル販売量(千トン、ニッケル含有量))× 価格 29,500(ニッケルと併産物の実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 60 億ドル・営業利益 9 億ドル。インドネシア勢の増産により実質価格が低下するが、効率化と併産物の回収で利益は残る。
倍率:2035年ROEは82÷506.3=16.2%、資本コスト9.5%、弱い堀の残存割合3分の1からRONICは約11.7%となる。長期のgは1.0%。銅の数量は成熟後も増える余地があるが、鉄鉱石の世界市場は実質で低成長であり、埋蔵量の置き換えに投資が必要なため1%を超える永久成長は採用しない。正当化PERの永久成長式は約10.9倍だが、寿命20年の年金上限は2035年利益基準で約9.52倍となる。資源価格のばらつきと鉱山更新の費用を考慮して上限の約89%の8.5倍とした。純利益はGAAPベースで、減価償却の二重加算をしない。
確率:中国の鉄鋼需要は成熟し、シマンドゥの供給も増えるため、鉄鉱石価格が物価ほど上がらないと見る。ヴァーレの販売数量は微増し、銅は2035年目標の約70万トンに届かないが増産する。複数の現実的な制約を織り込んだ中心の筋書きとして36%。
やや悲観 23% やや悲観:中国不況と供給増で鉄鉱石の実質価格が低下 利益 40 億ドル · PER 7.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7.50 ドル321 億ドル
中国の不動産とインフラ向け鋼材需要が弱い状態が続き、鉄鉱石の海上貿易量は2035年にも大きく増えない。シマンドゥと豪州勢の増産により、ヴァーレは高品位鉱石の価格プレミアムを一部失う。鉄鉱石粉の販売量は2億6000万トン、実現価格は95ドルとなる。価格は2025年とほぼ同じで、10年間の物価上昇を考えると実質では大幅な下落である。人件費、燃料、鉱滓処理費は上昇し、鉄鉱石粉の営業利益率は25%まで低下する。
銅の開発は遅れ、販売量は49万トンにとどまる。銅の需要自体は増えるが、他社の鉱山増産と建設費の上昇で期待したほどの利益を得られない。ニッケルはインドネシアの供給過剰が長引き、売上は増えても採算は弱い。高い価格での買収はせず、資本配分を維持投資と負債管理に集中する。
営業利益は77億ドル、純利益は40億ドルとなる。2035年のROEは約7.5%で資本コストを下回る。2026年の好調な利益から減益へ向かい、10年間の純利益累計は460億ドルとなる。市況の谷で還元を減らし、正味の配当と自社株買いは260億ドルにとどめる。自己資本は536億ドルとなるが、その全額が株主にとって額面どおりの価値を持つわけではない。
- 鉄鉱石粉:数量 260(販売量(百万トン))× 価格 95(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 247 億ドル・営業利益 62 億ドル。中国需要の減少で販売数量が縮小し、実現価格は物価に追随しない。
- 鉄鉱石ペレット:数量 35.0(ペレット販売量(百万トン))× 価格 138(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 48 億ドル・営業利益 10 億ドル。高品位鉱石の供給増で価格プレミアムが縮小する。
- ROM鉄鉱石・物流サービス:数量 8.0(ROM販売量換算(百万トン))× 価格 80(ROM販売と物流収益を合算した実効単価(ドル/トン))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。ROM販売と物流需要が減り、固定費負担が重くなる。
- 銅・銅鉱山の副産物:数量 490(銅の総販売量(千トン、銅含有量))× 価格 12,000(銅販売と関連副産物を含む複合実効単価(ドル/トン))→ 売上 59 億ドル・営業利益 21 億ドル。鉱山建設の遅れと競合の供給増で数量と採算が中立を下回る。
- ニッケル・併産貴金属等:数量 185(ニッケル販売量(千トン、ニッケル含有量))× 価格 24,500(ニッケルと併産物の実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 45 億ドル・営業利益 4 億ドル。インドネシア産ニッケルとの価格競争で実質採算が低下する。
倍率:2035年ROEは40÷536.3=7.5%で、資本コスト9.5%に届かない。したがってPERは1÷9.5%の約10.53倍を超えられず、寿命20年の年金という制約も受ける。鉱石価格が物価に追随せず、投下資本が十分に稼がないため、中立の8.5倍より低い7.3倍とした。悲観側は上限の7割以上へ引き上げる決まりを適用せず、利益の質の悪化で評価する。純利益は親会社株主に帰属する額である。
確率:中国の鋼材需要が想定以上に弱く、シマンドゥなどの新規供給が価格を圧迫する場合。鉄鉱石価格は名目でも2025年からほとんど上昇せず、銅の増産も遅れる。鉱山事業として十分起こりうるため23%。
悲観 12% 悲観:鉄鋼需要が構造的に縮み、ニッケルと銅の投資も失敗する 利益 5 億ドル · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4.80 ドル205 億ドル
2035年の世界の海上鉄鉱石需要は約15.5億トンに縮む。中国の人口と不動産投資が減り、電炉と鉄スクラップの利用が進む。シマンドゥなどの新規供給が高品位市場の競争を激しくし、ヴァーレの鉄鉱石粉販売量は2億3000万トン、実現価格は75ドルまで低下する。ペレットも2750万トンに減り、採掘費と鉱滓管理費の上昇で鉄鉱石事業の採算は大きく悪化する。
銅開発は許認可や工事の遅れで販売量が44万トンにとどまり、販売価格も物価上昇を吸収できない。ニッケルはインドネシアの増産に敗れ、一部の高コスト施設が停止する。大規模買収で成長を取り戻す余裕はなく、鉱山の減損と環境費用の追加計上が発生する。もはや成長する良質な資源会社ではなく、既存資産を守りながら負債を管理する会社となる。
2035年の営業利益は約16億ドル、純利益は5億ドルまで低下する。10年間の純利益は、初期の利益約325億ドルから鉱山の減損など約120億ドルを差し引いた累計205億ドルとなる。初期の配当を除いて還元は大きく縮小し、10年間の正味還元は95億ドル、自己資本は446億ドルとなる。利益による価値より売却可能な鉱山・鉄道・港湾・銅資産の税後価値が大きいため、悲観の床で評価する。操業継続は可能だが、株主に多額の利益が戻る状態ではない。
- 鉄鉱石粉:数量 230(販売量(百万トン))× 価格 75(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 173 億ドル・営業利益 26 億ドル。世界の海上鉄鉱石需要が縮み、ヴァーレのシェアも低下する。
- 鉄鉱石ペレット:数量 27.5(ペレット販売量(百万トン))× 価格 115(平均実現販売価格(ドル/トン))→ 売上 32 億ドル・営業利益 3 億ドル。高品位品のプレミアムが失われ、高コスト設備を縮小する。
- ROM鉄鉱石・物流サービス:数量 6.0(ROM販売量換算(百万トン))× 価格 65(ROM販売と物流収益を合算した実効単価(ドル/トン))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。輸送数量の縮小で物流設備の固定費負担が増える。
- 銅・銅鉱山の副産物:数量 440(銅の総販売量(千トン、銅含有量))× 価格 9,800(銅販売と関連副産物を含む複合実効単価(ドル/トン))→ 売上 43 億ドル・営業利益 11 億ドル。鉱山開発が遅れ、価格も実質で大きく低下する。
- ニッケル・併産貴金属等:数量 145(ニッケル販売量(千トン、ニッケル含有量))× 価格 18,000(ニッケルと併産物の実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 26 億ドル・営業利益 −1 億ドル。インドネシアの低コスト品に敗れ、高コスト施設は赤字になる。
倍率:2035年のROEは約1.1%と資本コスト9.5%を大きく下回り、利益ベースの価値は小さい。売却可能な資産の保守的な税後価値約200億ドルを床として評価する。PBRの分母は利益留保後の2035年自己資本446.3億ドルではなく、現在の自己資本336.3億ドルを使用する。336.3×0.61=約205.1億ドルで、推定床の200億ドルをわずかに上回る。過去の株価や谷のPBRから倍率を決めていない。
確率:中国の鉄鋼需要縮小、世界の鉄スクラップ利用増加、シマンドゥなどの低コスト高品位鉱山の供給増、銅開発の遅延が重なる筋書き。事故や許認可問題による大きな減損も加わる。すべての悪条件が重なる確率は中立より低いが、鉱山会社の過去の損失を踏まえて12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
鉄鉱石粉
カラジャス、南東部、南部の鉱山から生産する主力商品。中国、日本、欧州などの製鉄所へ供給し、世界の鉄鋼生産と品位別の鉄鉱石市況で販売量と実現単価が決まる。
| 数量販売量(百万トン) | 価格平均実現販売価格(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 273 | 92 | 249 | 94 |
| 10 年後 中立 | 286 | 112 | 320 | 109 |
取り方:Valeの2025年Form 20-Fに、鉄鉱石粉の販売量2億7302.7万トン、平均実現価格約91.6ドル/トン、製品売上250.10億ドルが開示されている。数量と価格は一次開示を採用した。添付factsの連結売上382.3億ドルを優先するため、製品分類の売上は約0.5%以内で調整している。営業利益94億ドルは製品別調整後EBITDAと償却・本社費の構成からの分析上の推定で、会社開示の独立したGAAP営業利益ではない。2025年の鉄鉱石C1現金生産コストは21.3ドル/トン。
鉄鉱石ペレット
高炉用と直接還元製鉄用のペレット。高品位化と製鉄の排出削減が需要を支える一方、エネルギー価格と鉄鉱石の品位別プレミアムが利益率を左右する。
| 数量ペレット販売量(百万トン) | 価格平均実現販売価格(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 32.8 | 134 | 44 | 16 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 160 | 77 | 25 |
取り方:2025年Form 20-Fの販売量3280.1万トン、実現価格134ドル/トン、製品売上43.96億ドルを基礎とする。会社の製品分類では高炉向けペレットが生産の51.3%、直接還元向けが48.7%。販売数量は2024年比14.4%減少した。営業利益は製品別調整後EBITDA20.52億ドルから償却と関連費用を考慮した推定。連結売上の基準は添付factsに合わせた。
ROM鉄鉱石・物流サービス
未選鉱鉱石の販売と、鉄道・港湾を中心とする鉄鉱石関連の物流サービス。鉄鉱石事業の販売数量に連動する補完的な収益である。
| 数量ROM販売量換算(百万トン) | 価格ROM販売と物流収益を合算した実効単価(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.5 | 85 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 95 | 9 | 1 |
取り方:2025年Form 20-FではROM販売853万トン、その他鉄鉱石製品・物流売上7.24億ドルを開示している。物流サービスだけの処理トン数と単価は同じ区分で独立して示されていないため、ROM販売量を数量の代理変数とし、7.24億ドルを853万トンで割った約84.9ドルを複合的な実効単価とした。この値はROM単独の実現価格ではない。営業利益は物流収益と固定費の構造による推定。
銅・銅鉱山の副産物
サロボ、ソセゴ、カナダの多金属鉱山などの銅。金などの副産物販売とストリーミング契約の影響を含む。既存鉱山周辺の開発による数量成長を期待する事業である。
| 数量銅の総販売量(千トン、銅含有量) | 価格銅販売と関連副産物を含む複合実効単価(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 368 | 10,200 | 37 | 15 |
| 10 年後 中立 | 560 | 13,500 | 76 | 33 |
取り方:2025年Form 20-Fの銅販売量は36.78万トンで、銅事業とニッケル事業から生じる銅を含む。銅製品売上は37.53億ドルで、販売量当たりの複合売上は約1万200ドル/トンとなる。サロボ・ソセゴの銅実現価格は9763ドル/トン、ニッケル副産物としての銅は9313ドル/トンと開示されている。複合実効価格との差には製品構成、貴金属、販売の帰属区分が含まれるため、LME銅単価と同一視しない。営業利益は製品別EBITDAと償却を踏まえた推定。
ニッケル・併産貴金属等
カナダ、ブラジル、インドネシア関連のニッケル事業。金、銀、コバルト、白金族金属などの併産物を含み、ニッケル価格だけでなく副産物価格が採算を左右する。
| 数量ニッケル販売量(千トン、ニッケル含有量) | 価格ニッケルと併産物の実効売上単価(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 173 | 26,100 | 45 | 4 |
| 10 年後 中立 | 205 | 29,500 | 60 | 9 |
取り方:2025年Form 20-Fのニッケル販売量は17.28万トン、ニッケル製品売上は42.91億ドル、その他ベースメタル売上は2.29億ドル。両者をニッケル販売量で割った複合単価は約2万6160ドル/トンとなる。会社が開示するニッケル自体の平均実現価格は1万5555ドル/トンであり、複合単価は独立したニッケル商品価格ではない。貴金属、コバルトなどの副産物売上を同じ数量単位に換算した指標である。営業利益はEBITDA、減価償却、ニッケル事業の収益性からの推定。
リスクと懸念
中国の鉄鋼需要とシマンドゥの供給増
2025年の鉄鉱石・ペレット出荷の63%は中国向けだった。中国の不動産不況が長引けば、鉄鉱石の需要は構造的に弱くなる。同時にギニアのシマンドゥで年最大1.2億トンの高品位鉱石が新たに供給される計画がある。ヴァーレは品質で優位でも、低コストの供給量が増える市場では実現価格が物価ほど上がらない。中立ではこの実質価格の低下を既に考慮しているが、下落幅がさらに深ければ悲観へ移る。
ダム事故の再発と長期賠償
サマルコとブルマジーニョのダム事故は、大きな人的被害と長期の賠償責任を生んだ。2026年6月末のブルマジーニョ関連の賠償・ダム廃止引当金は約39億ドルだった。サマルコの和解でも将来の現金拠出が必要になる。追加事故、工事費の高騰、和解条件の見直しが起これば、設備投資と配当に回る資金が減る。安全管理に投じる資金は費用削減の対象にできず、固定的なオーナー負担と考えるべきだ。
銅の増産計画が投資利回りを下回る
2035年に銅の生産能力を約70万トンへ増やす計画は魅力的だが、鉱山の建設、許認可、品位、設備の歩留まりに左右される。投資額が膨らみ、銅価格が想定を下回れば増分ROICは資本コスト9.5%に届かない。会社は既存インフラを使った低資本集約の開発を目指すが、その優位は完成後の実績で判断する必要がある。高い銅価格の年だけ利益が出る案件を、恒常的な成長資産と評価してはいけない。
インドネシアのニッケル供給過剰
世界のニッケル市場ではインドネシアの鉱山と製錬設備が急速に拡大している。2025年時点で同国は世界のニッケル鉱山生産の約3分の2を占めると推定される。中国系企業の資本と技術を使う供給者は価格競争力が強い。ヴァーレのカナダ産高純度ニッケルには用途があるが、価格を自由に決められない。副産物価格が下落すればコスト控除効果も弱まり、ニッケル事業が長期の赤字となる可能性がある。
ブラジル政府の黄金株と資源政策
ブラジル政府が保有する12株の黄金株には、鉱山・鉄道・港湾の重要な処分や会社の事業目的の変更を拒否する権利がある。現在は明確な支配株主がいないが、すべての再編を普通株主の経済合理性だけで決められるわけではない。鉱業権、税制、輸出、環境規制、地域社会との関係が変化すれば、価格が高い時でも利益の取り分が減る。必要な資産売却を阻まれる場合は、少数株主の価値に大きく響く。
高い還元と維持投資の競合
ヴァーレの大きな配当と自社株買いは魅力だが、鉱山の維持に必要な投資を削って実現した還元では価値を増やさない。会社は2026年に54億〜57億ドルの設備投資を計画している。高品位鉱体の開発、鉄道・港湾の維持、鉱滓設備の更新、環境修復は先送りしにくい。市況が悪い時に配当のため借金を増やせば、数年後に資本配分の自由を失う。還元額は利益だけでなく、設備投資後の現金創出額と純負債で検証する必要がある。
鉄鋼技術の変化、リサイクル、AIの位置付け
電炉の普及と鉄スクラップの再利用が進めば、新しい鉄鉱石を必要とする鉄鋼生産の割合が減る。水素直接還元製鉄は高品位鉱石やペレットへの需要を支える面もあるが、技術ごとに必要な鉱石の品質が異なる。AIエージェント代替については、鉱物資源の採掘・選鉱・物流は人月サービスや席課金ソフトではないため、指定された事業代替の型には該当しない。AIによる自動化は生産効率の改善とデータセンター向け金属需要には影響するが、鉱石そのものをデジタル業務として置き換えるものではない。
今後の分かれ目
- 2030年までに鉄鉱石生産が約3.6億トンに達し、中国以外の顧客への販売が増える
- 中立からやや楽観へ近づく。数量増加が会社の計画どおりに進み、中国の弱さをほかの地域で補えるなら、鉄鉱石価格の下落に対する耐久性が増す。
- シマンドゥの高品位鉱石の増産により、ヴァーレの鉄鉱石粉実現価格が長期にわたり物価に追随しなくなる
- やや悲観へ近づく。名目の売上が横ばいでも費用は上がるため、利益率の低下は数量の減少より大きな影響を持つ。
- バカバなどの銅開発が計画どおりに進み、2030年の銅生産が42万〜50万トンに達する
- 2035年に56万トンを見込む中立の確度が高まる。銅事業の増分ROICが9.5%を上回れば、やや楽観の確率を引き上げる根拠となる。
- 銅の新規プロジェクトが大幅に遅れ、投資額も膨らむ
- 中立の純利益を下方修正する。数量が増えないだけでなく償却・金利・維持費が残るため、銅の営業利益率も引き下げる必要がある。
- 拡大純負債が200億ドルを長期に超え、設備投資と賠償支払いのため借り入れが増える
- 株主還元を減らし、やや悲観・悲観の確率を高める。金利を資本コストに二重加算するのではなく、金融費用と資金制約を純利益と還元額に反映する。
- ブルマジーニョとサマルコの賠償・ダム廃止支出が計画より早く縮小し、重大事故も発生しない
- フリーキャッシュフローの質が改善する。負債削減または追加還元に回る余力が生まれ、中立の価値を押し上げる。
見ておくもの
- 2026年10月29日公表予定の第3四半期決算と、その後の2026年通期ガイダンス
- 鉄鉱石粉の販売量、実現価格、C1現金コスト、総コストの推移
- 中国の粗鋼・鋼材需要、鉄鉱石輸入量、港湾在庫と高品位鉱石プレミアム
- シマンドゥの出荷量、2028年の増産進捗、リオ・ティント・BHP・フォーテスキューとの競争
- カラジャスのバカバ・アレマンなどの鉱山開発と2030年・2035年の銅生産目標
- 銅・ニッケルの副産物控除後コスト、世界需給、インドネシアの供給
- 2026年の設備投資54億〜57億ドルの達成と、その後の維持投資・成長投資の内訳
- 通常純負債と拡大純負債の推移、100億〜200億ドルの管理目標
- ブルマジーニョとサマルコの賠償支出・引当金・ダム廃止工事の進捗
- 配当と自社株買いの正味還元額、買い戻し枠の実行率、増分ROIC
- ベースメタルズの少数株主持分と、ブラジル政府の黄金株が資産再編に与える影響
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額530億ドルや過去のPER・PBRから10年後の利益と倍率を逆算していない。鉄鉱石粉、ペレット、ROM・物流、銅、ニッケル・併産物を実際の販売数量と実現単価で分け、2035年の数量は世界市場の大きさとヴァーレのシェアから考えた。2025年Form 20-Fの製品別売上合計384.03億ドルと添付factsの382.3億ドルの約0.5%の差は、財務台帳の連結値を優先して製品別売上を小幅に調整した。利益率は銅の増産、ニッケルの供給過剰、鉄鉱石の実質価格低下を反映し、2026年の高い利益を恒久化しない。
倍率は資本コスト9.5%、弱い堀、成長率1%、資源寿命20年の年金から決めた。2035年の利益を用い、現金を別建てで足すべき純現金はない。2025年末の純負債約113億ドルと2026年第2四半期の約132億ドルは、資産価値の別加算をしない理由になる。株主還元は実際に持分所有者に戻る正味の配当・自社株買いとし、自己資本の道筋を合わせた。悲観では将来の積み上がった自己資本を床にせず、売却可能資産の保守的な税後価値を使った。
10年後の時価総額は順に2021億、1215億、697億、292億、205億ドルで単調に減少し、悲観の時価総額は推定資産床200億ドルを上回る。資本コストで割り引いた確率加重価値は約616億ドルとなり、現在の時価総額に対して約16%高い。結論はやや割安であり、数字に合わせて倍率や確率を調整したものではない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に、事業の循環性1.0ポイントと市場価格への依存0.5ポイントを加えて9.5%。βや現在の市場倍率を使わない。金利の前提は長期5%前後、借り換え約5.75%。純負債の金利負担が増える影響は純利益に反映し、事業存続が危うい状態ではないため追加の資本コストは置かない。