結論
クリーブランド・クリフスは、鉄鉱石の採掘から製鉄、自動車用鋼板、電磁鋼板まで手掛ける北米の一貫製鉄大手である。筆者の結論は割高だ。2026年の業績回復は力強いが、景気の谷で失う金額が大きく、借金を返した後に株主へ残る利益を慎重に見る必要がある。
2025年は売上186億ドルに対して営業損失14億ドル、純損失15億ドルだった。自動車生産の低迷、カナダの安値競争、不採算のスラブ供給契約が重なったためだ。しかし2026年7〜9月期は売上56億ドル、純利益1.65億ドル、調整後EBITDA6.12億ドルと急回復した。会社は2027年の調整後EBITDAが40億ドルを超える可能性を示しているが、関税と販売契約を前提にした条件付きの見通しである。
強みは、自動車メーカーが求める品質を長年かけて満たしてきたことと、鉄鉱石を自前で調達できることだ。米国内では方向性電磁鋼板の唯一の生産者でもある。一方、高炉は稼働率が下がっても費用が残り、電炉のニューコアやスチール・ダイナミクスより利益の谷が深い。2025年末の純有利子負債は約79億ドルで、時価総額とほぼ同じ大きさだった。
10年後の中立では、年間鋼材出荷が約1780万トン、売上287億ドル、営業利益20億ドル、純利益10億ドルへ回復すると考える。北米の自動車生産とインフラ需要は残るが、国内の電炉新設が価格を抑え、全社の利益率は優良な電炉メーカーに届かない。強い追い風が続く場合は大幅な上昇余地があるものの、財務再建に失敗する下方リスクも大きい。
5つの筋書きを資本コスト11.0%で割り引くと、本質価値は現在の会社全体で約38.4億ドルとなる。基準時価総額約79.5億ドルとの差は約マイナス52%で、割高と判断する。鋼材需要がなくなる会社ではない。問題は、需要が続くことと、その利益が長期株主のものになることが別だという点にある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、鉄鋼が10年後も必要かという問いの答えは明確だ。自動車、橋梁、建物、変圧器はなくならず、鋼材にも長い需要がある。だが、それを作る会社が高い利益率を維持できるかは別の問題である。商品の寿命と企業の競争優位を混同してはいけない。
クリフスには本物の強みがある。自動車用鋼板の品質認定、鉄鉱石の自給、国内唯一の方向性電磁鋼板は、短期間では再現しにくい。一方、売上の大半は市況の影響を受ける鋼材であり、競合の電炉メーカーより固定費が高い。全社を高い値決め力を持つ企業として評価するには、まだ証拠が足りない。
筆者が特に重視するのはオーナー利益である。設備を維持するための支出、借金の利払い、増える運転資金を引いた後で、どれほどの現金が残るか。2021年には高い利益を出したが、2024年と2025年にはフリーキャッシュフローが赤字になった。高炉と鉱山を維持する資本を必要とする以上、好況年の純利益をそのまま永続する稼ぎとみなすことはできない。
過去の大型買収には、原料と鋼材を統合した成果がある。しかし買収後の利益の振れは大きく、2025年には自己資本61億ドルに対して純負債79億ドルを抱えた。新たに投じる資金が資本コスト11%を安定して超えるかについては、現時点で確信を持てない。新設備が売上を増やしても、借金と維持費だけが先に増える場合がある。
安全域は、景気が良いときに得られる利益ではなく、悪いときにも守れる価値から考えたい。高炉、鉱山、製鉄所は帳簿上大きな資産だが、清算時には環境対策、年金、閉鎖費用、債権者への返済が先に来る。したがって帳簿純資産をそのまま株価の床とは見ない。
今の値段で保有するなら、関税の追い風が弱まった後にも利益率が維持され、純負債が継続して減るという証拠が必要になる。2026年の回復には期待が持てるが、それだけで10年分の安全域があるとは言い切れない。長く保有する事業としては理解できるが、高い確信を持って値段を払える企業ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は鉄鋼である。2025年の鋼材出荷は1623万トン、鋼材製品の平均販売価格は1トン1005ドルだった。会社の報告セグメントは実質的に製鉄が中心だが、商品の経済性は大きく異なる。熱延・スラブ、冷延・表面処理、特殊鋼・厚板、原料・加工関連の4つに分けると、費用と需要の違いが分かりやすい。
熱延鋼板とスラブは、加工メーカーや製鉄会社が使う基礎材料である。2025年の合計出荷は約795万トン、売上は57億ドルだった。価格は熱延コイルの市況に強く左右される。カナダのステルコはこの分野で存在感があり、2026年7〜9月期にはカナダの熱延市場の改善で収益が回復した。
冷延鋼板と表面処理鋼板は、自動車の車体、家電、建材などに使われる。2025年の出荷は合わせて約687万トン、売上78億ドルだった。亜鉛めっきなどを施すほど付加価値が上がるが、品質認定や契約更新に時間がかかる。自動車メーカーと長く付き合うことで、単純な熱延鋼板より安定した販売先を確保している。
特殊鋼・厚板には、ステンレス、電磁鋼板、厚板が入る。2025年の出荷は約142万トン、売上28億ドルだった。なかでも方向性電磁鋼板は変圧器に欠かせず、バトラー工場が米国内唯一の供給拠点である。ただし、この独自性がある製品は全社の一部にとどまり、汎用鋼材全体の利益を守るほど大きくはない。
関連事業では、鉄鉱石ペレット、還元鉄、スクラップ、コークスなどを扱う。さらに鋼管、金型、自動車部品のプレス加工などの外部売上がある。鉱山から製鉄、加工までつながることで調達を安定させられるが、設備を抱え込むため資金も多く必要になる。2025年の鉄鋼以外を含む関連売上は約23億ドルだった。
顧客別では、2025年の製鉄事業売上の約28%が自動車メーカー向け、約30%がインフラ・製造業向けだった。約29%が流通・加工会社、約13%が製鉄メーカー向けである。平鋼板の約35〜40%は固定価格契約で販売されるため、鋼材市況の上昇がすぐ利益になるわけではない。この仕組みは値下がり局面では守りになるが、値上がり局面では電炉の競合に遅れやすい。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり競争相手が簡単にはまねできない強みは、製品の品質認定と原料の自給にある。自動車の外板や安全に関わる部品には厳しい品質が求められる。製鉄所を変えるには試験、金型の調整、量産認定が必要であり、買い手も短期間では供給先を変更しにくい。2026年にはゼネラル・モーターズのサプライヤー表彰を受けており、顧客との関係には確かな実績がある。
原料面の強みも大きい。ミネソタ州やミシガン州の鉄鉱石鉱山を保有し、年間約2000万ロングトンの鉱石生産能力を持つ。鉄鉱石、ペレット、還元鉄を内部で供給できるため、スクラップ価格が高騰すると電炉に対して費用上の優位が生まれる。ただし、自前の鉱山があることは、いつでも低コストで製鉄できることを意味しない。
最大の弱点は高炉の固定費である。高炉は止めるにも動かすにも費用がかかり、需要減少に合わせた柔軟な操業が難しい。2021年には営業利益率20%超を達成したが、2024年と2025年は連続赤字となった。これは価格競争だけでなく、設備構成そのものが景気の谷に弱いことを示している。
設備の古さは長期の課題でもある。電炉ではニューコアとスチール・ダイナミクスが低い固定費と短い生産調整時間を生かす。クリフスはミドルタウン工場への投資や、老朽設備の休止で対抗するが、改修費用を株主が負担する期間が続く。過去の利益率が高い年だけを抜き出して、恒久的な優位と考えることはできない。
経営陣の強みは、不採算工場を止め、顧客との契約を取り直す決断力である。一方、大型買収による借金の増加や、2024年の赤字下でも自社株買いを続けた資本配分には厳しい評価が必要だ。鉄鋼という現物を作る事業なので、AIエージェント代替の対象には当たらない。AIによる工程改善は費用を下げうるが、競争力の差を決めるのは設備、品質、原料費、稼働率である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の製鉄所からの鋼材出荷は2025年に約9100万ネットトンで、前年比5%増だった。完成鋼材の輸入シェアは見掛消費の約18%まで低下した。自動車、建設、製造業が需要の中心であり、データセンターや送電網への投資が新しい需要を加えている。10年で鉄鋼需要そのものが消える可能性は低いが、実質の成長は年1%程度にとどまると考える。
2025年の出荷量で比較すると、ニューコアは製鉄所から約2530万トン、スチール・ダイナミクスは約1370万トン、クリフスは約1623万トンだった。ただしクリフスにはカナダのステルコの出荷が含まれる。米国市場9100万トンで単純に割った約18%は比較用の指標であり、厳密な米国内シェアではない。自動車向け高級鋼板ではクリフスの存在感が強い一方、汎用品では電炉勢が優位に立つ。
米国では鉄鋼生産の約7割が電炉であり、高炉の相対的な地位は長期的に低下している。ニューコアは鋼材加工品まで持ち、スチール・ダイナミクスは電炉とスクラップの統合に強い。日本製鉄傘下となったUSスチールも設備更新を進める。クリフスが自動車用鋼板の品質で勝っても、業界全体の供給能力が増えれば、価格の主導権を完全に握ることは難しい。
2026年の鋼材市況は、輸入鉄鋼への50%関税が支えた。クリフスの7〜9月期の鋼材平均売値は1177ドルへ上昇し、前年同期の1032ドルから大きく改善した。しかし2027年以降は、ニューコアやスチール・ダイナミクスなどの新設備が稼働を増やす。関税が続いても、国内供給過剰になれば価格が下がるという構造は変わらない。
中立では、米国の鋼材市場が10年で約1.10倍になると考える。国内の製造業回帰と送電網整備が需要を支えるが、完成車の軽量化や電炉の増設が高炉メーカーの成長を抑える。楽観では市場が約1.20倍となり、クリフスが自動車と電磁鋼板でシェアを守る。悲観では市場が約0.93倍となり、会社の出荷量は市場以上に減る。
価格は物価3.5%の世界で10年後に約1.41倍となるのが基準だ。ただし汎用鋼材は世界の過剰能力と輸入材の影響を受け、物価ほど値上げできない場合がある。反対に、電磁鋼板や自動車向け高級鋼板は品質面の優位によって高い単価を維持しやすい。全社の価値を決めるのは、この製品構成が10年後にどこまで改善しているかである。
資本政策と M&A
経営の歴史は大型買収による事業転換の連続である。2020年にAKスチールとアルセロール・ミッタルの米国事業を取得し、鉄鉱石会社から北米の一貫製鉄大手へ変わった。2024年にはカナダのステルコを買収し、熱延鋼板の供給力を増やした。しかし2025年のカナダ市場の悪化は、買収した設備がすぐに株主利益を生むわけではないことを示した。
2025年末の純有利子負債は約79億ドルだった。2026年9月末の長期有利子負債は約76億ドルで、現金は約0.8億ドルと少ない。32億ドルの流動性には借入枠が含まれるため、その全額を自由に使える現金と考えてはいけない。社債の償還は2029年以降へ延長されたが、借金の負担がなくなったわけではない。
還元は現在、自社株買いより債務削減を優先する段階にある。2024年には約7億ドルの自社株買いを行った一方、2025年の大きな赤字で還元余力は失われた。2026年10月の経営説明では、目標の純負債対EBITDA2.5倍以下を達成した後も、フリーキャッシュフローの最優先用途を債務返済とする考えが示された。配当と自社株買いの10年間の金額について、確約された数字はない。
2026年の設備投資見通しは約7億ドルである。別途、ミドルタウン工場では総額10億ドルの改修計画があり、米エネルギー省による最大5億ドルの支援を前提に2030年の完成を目指す。POSCOとの提携も協議中だが、2026年9月末時点で投資額や事業構造は確定していない。未成立の取引の利益や資金流入は価値に加えていない。
今後の資本配分では、負債削減が最優先である。黒字が戻っても設備の更新と運転資金が必要であり、会計上の利益がそのまま株主に戻るわけではない。既存株主の利益を守るには、好況期に買収や自社株買いを急ぐより、次の不況でも増資せずに済む財務を築くことが重要である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年の業績回復は一時的な市況の反発ではなく、顧客との関係と供給網の変化が利益に表れ始めた証拠である。7〜9月期の調整後EBITDAは6.12億ドルとなり、会社が前四半期に示した5.75億ドルを上回った。鋼材の売値は前年同期から上がり、販売数量も増えた。固定費の大きい高炉メーカーでは、売値と稼働率が同時に改善したときの利益の増え方が大きい。
自動車向けでは、多年契約を結び直したことで販売量と利益率の安定が進む。完成車メーカーの国内回帰と鉄鋼への関税が続けば、クリフスの強みである自動車用鋼板が再評価される。原料の自給はスクラップ価格が高い局面で大きく効く。電炉が増えて良質なスクラップの奪い合いになれば、鉄鉱石と還元鉄を持つ会社の費用優位が広がる可能性がある。
電磁鋼板の需要にも長期の追い風がある。データセンター、送電網、変圧器、電気自動車のモーターには高性能の電磁鋼板が必要である。米国内唯一の方向性電磁鋼板メーカーという立場は、単なる汎用鋼材とは異なる。バトラー工場への投資とミドルタウン工場の改修が予定どおり進めば、製品構成とエネルギー効率が改善する。
ステルコも2026年7〜9月期には買収後で最も良い四半期となった。カナダの熱延価格が改善し、採算の悪いめっき設備を休止することで利益を確保する。POSCOとの協議がまとまれば、新しい顧客と資金を呼び込む余地がある。ただし、未成立の提携は現在の価値には含めず、追加の上振れ材料として考える。
この展開なら、10年後の鋼材出荷は2010万トン、売上は364億ドルに達する。営業利益は47億ドル、純利益は30億ドルとなり、十分な債務返済と還元を両立できる。現在の時価総額から大きな価値の増加が起きる可能性はある。事業の回復力を過小評価してはいけない。
慎重な見方
最大の問題は、関税で守られている時期にさえ、競合と比べて利益率が弱かったことである。2025年にニューコアとスチール・ダイナミクスは黒字を維持したが、クリフスは営業赤字だった。違いは高炉の固定費、古い設備、自動車向け固定価格契約の多さにある。鋼材価格が上がっても、利益に反映される時期が遅く、需要が落ちれば固定費だけが残る。
2026年の回復は、2027年の利益が永続する証拠ではない。50%の輸入関税は政治判断であり、貿易交渉や国内物価の上昇で例外が広がる可能性がある。米国で電炉の新設が進めば、輸入が少なくても国内の供給が余る。ニューコアとスチール・ダイナミクスは需要が落ちれば生産を減らしやすく、固定費の重いクリフスが価格競争の影響を強く受ける。
ステルコの買収は、海外市場に特有の危険も持ち込んだ。カナダでは中国などからの鋼材輸入に加え、米国向け販売の制約が収益を左右する。2026年7〜9月期に熱延事業は改善したが、亜鉛めっき設備は無期限休止となった。大規模な製鉄設備を持つこと自体が強みとは限らない。
借金の多さも看過できない。2025年末の純負債79億ドルは時価総額とほぼ同額だった。現金が少なく、流動性の大部分は借入能力に依存する。利益が回復しても、まず利息と借金の返済に現金が向かい、株主還元は後回しになる。次の不況で資金調達市場が閉じれば、設備売却や増資が必要になる可能性がある。
さらに高炉の維持・改修と炭素排出対策が続く。ミドルタウンの投資が費用を下げるとしても、設備投資そのものをなくすことはできない。10年後に物価が上がっても、鋼材価格だけは競争によって上げられず、利益の大半が利払いに消える筋書きは十分に現実的である。帳簿の自己資本が厚く見えても、清算すれば債権者が先に回収する点も忘れてはいけない。
どちらに重みを置いたか
回復の強さは認めるが、10年の価値では慎重な見方が優勢である。2026年7〜9月期の実績と2027年の会社見通しを無視するべきではないため、楽観とやや楽観には合計28%を与えた。しかし高炉の固定費、借金、電炉の新設、関税の不確実性を考えると、やや悲観と悲観を合計41%と厚くする必要がある。
中立は31%とし、2027年の好況がそのまま2035年まで続くとは考えない。借金が減り、高級鋼板の比率が上がれば大きな上振れ余地がある一方、構造的に負ければ株主に残る価値はごく小さくなる。中立と両端の差が大きいのは、高炉事業の利益が価格と稼働率に敏感だからである。確率加重後の本質価値は約38億ドルであり、現在の時価総額には安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 15.49 ドル89 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 2.12 ドル12 億ドル)。 今の値に割り戻すと 6.72 ドル38 億ドル、今との差 −52.9%、 期待の年率 +2.3%(資本コスト 11.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 50.87 ドル291 億ドル | 9.62 ドル55 億ドル | +324.5% | +17.7% | 6.05 ドル35 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 29.90 ドル171 億ドル | 4.37 ドル25 億ドル | +140.5% | +10.0% | 6.17 ドル35 億ドル |
| 中立 | 31% | 14.86 ドル85 億ドル | 1.40 ドル8 億ドル | +14.1% | +1.4% | 5.04 ドル29 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 1.35 ドル8 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −90.6% | −21.0% | 0.32 ドル2 億ドル |
| 悲観 | 17% | 0.56 ドル3 億ドル | −0.35 ドル−2 億ドル | −98.5% | −28.5% | 0.04 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 15.49 ドル89 億ドル | 2.12 ドル12 億ドル | +23.6% | +2.3% | 17.62 ドル101 億ドル |
今の株価時価総額 14.25 ドル82 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:国産化と高級鋼板が定着し、高炉の固定費を十分に回収する 利益 30 億ドル · PER 9.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 50.87 ドル291 億ドル
2035年、米国の鋼材市場は2025年から約1.20倍に拡大する。国内の自動車工場、データセンター、送電網、公共インフラが鋼材需要を支える。クリフスの年間出荷は2010万トンに伸び、米国市場を比較基準とした見掛けの出荷シェアは約18%台を維持する。カナダの出荷を含むため、これは厳密な米国内シェアではない。
自動車向けでは長期契約が更新され、冷延・表面処理鋼板の数量と価格が伸びる。ステルコでは熱延鋼板の収益が定着し、不採算設備の休止が費用削減につながる。電磁鋼板は変圧器とモーター向けに増産が進み、米国内唯一の供給拠点という強みを維持する。ミドルタウン工場の改修も完成し、高炉の燃料と電力の費用が下がる。
ニューコアとスチール・ダイナミクスも成長するが、クリフスは品質の高い製品を中心に競争する。売上364億ドル、営業利益47億ドル、純利益30億ドルへ拡大する。2025年の赤字からの改善が大きいのは、値上げと稼働率上昇が高炉の固定費を薄めるからだ。
累積純利益は140億ドルとし、初期の回復、2027年以降の利益拡大、設備投資費用を織り込む。正味還元55億ドルを実施しても、自己資本は146億ドルとなる。債務返済を優先しながら配当と買い戻しが再開される展開である。未成立のPOSCO提携による追加利益は含めていない。
- 熱延鋼板・スラブなどの基礎鋼材:数量 10.2(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 11(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。7.112=約711ドル/トン))→ 売上 112 億ドル・営業利益 16 億ドル。出荷1015万トン、平均1100ドル。関税と高稼働率が続き、単価は2025年比1.55倍となる。
- 冷延・表面処理鋼板:数量 8.0(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 18(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。11.405=約1141ドル/トン))→ 売上 145 億ドル・営業利益 30 億ドル。出荷800万トン、平均1810ドル。自動車契約の更新と高級鋼板の比率上昇で利益率が高まる。
- ステンレス・電磁鋼板・厚板:数量 2.0(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 32(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。19.979=約1998ドル/トン))→ 売上 62 億ドル・営業利益 13 億ドル。出荷195万トン、平均3200ドル。電磁鋼板の需要増と国内供給の希少性が利益を支える。
- 製鉄原料・鋼管・プレス加工・関連事業:数量 20.1(本業の鋼材出荷に対応させた数量指標(百万ネットトン。関連事業自体の販売トン数ではない))× 価格 2.25(鋼材出荷1トン当たりの関連事業外販収入換算(億ドル/百万ネットトン))→ 売上 45 億ドル・営業利益 5 億ドル。鋼材出荷2010万トンに対応する関連外販収入換算。加工品と原料販売が増える。
倍率:資本コストk=11.0%、2035年ROE=30.0÷146.2=20.5%。堀はweakで超過ROEの残存割合1/3とし、RONIC=11.0%+(20.5%-11.0%)÷3=約14.2%。長期gは4.0%で、米国鋼材需要の実質約+1.0%、自社シェアの小幅上昇、価格上昇約3.0%の組み合わせによる。正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)×(1+g)=約10.7倍。高炉の固定費と利益の循環を考慮し、上限の約91%に当たる9.7倍。純利益はGAAPで、買収償却や株式報酬を足し戻さない。
確率:50%関税の大部分が残り、自動車の国内回帰、電磁鋼板の増産、設備改修の成功が同時に起きる筋書きである。2026年の収益回復はこの可能性を裏付けるが、電炉との競争と景気循環を考えると全条件が10年間そろう確率は低く、10%とした。
やや楽観 18% やや楽観:自動車契約と国産鋼材の優位が続き、着実に財務を改善する 利益 19 億ドル · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 29.90 ドル171 億ドル
2035年、米国の鋼材市場は2025年から約1.14倍となる。クリフスの出荷は1900万トンとなり、国内回帰の恩恵と既存顧客の維持によって市場並み以上の数量を確保する。熱延鋼板の平均単価は1015ドル、冷延・表面処理鋼板は1720ドルまで上がる。物価上昇の恩恵に加えて、高級鋼板の製品構成が改善する。
ミドルタウン工場の改修は大きな遅延なく進み、エネルギー効率が上がる。ステルコは熱延を中心に黒字を維持し、不採算のめっき設備を再稼働せずとも利益を出す。自動車メーカーは品質と納期の安定を重視し、クリフスとの取引を継続する。一方、ニューコアとスチール・ダイナミクスの増設によって汎用品の利益率は抑えられる。
売上は323億ドル、営業利益は33億ドル、純利益は19億ドルへ回復する。高炉の固定費負担は残るが、2025年の不採算契約終了と操業再編の効果が定着する。借り換えによる利払いを織り込んでも十分な黒字を維持できる。
累積純利益105億ドルのうち正味25億ドルを株主に戻し、残りを負債削減と設備維持に回す。自己資本は141億ドルとなる。POSCOとの未成立の提携は加えず、既存事業だけで成り立つ姿を想定する。
- 熱延鋼板・スラブなどの基礎鋼材:数量 9.4(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 10(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。7.112=約711ドル/トン))→ 売上 95 億ドル・営業利益 11 億ドル。出荷940万トン、平均1015ドル。国内需要と関税の効果が一部続く。
- 冷延・表面処理鋼板:数量 7.8(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 17(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。11.405=約1141ドル/トン))→ 売上 134 億ドル・営業利益 22 億ドル。出荷780万トン、平均1720ドル。自動車用鋼板の品質優位と契約更新が寄与する。
- ステンレス・電磁鋼板・厚板:数量 1.8(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 30(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。19.979=約1998ドル/トン))→ 売上 54 億ドル・営業利益 10 億ドル。出荷180万トン、平均3000ドル。電磁鋼板と厚板で数量が増える。
- 製鉄原料・鋼管・プレス加工・関連事業:数量 19.0(本業の鋼材出荷に対応させた数量指標(百万ネットトン。関連事業自体の販売トン数ではない))× 価格 2.10(鋼材出荷1トン当たりの関連事業外販収入換算(億ドル/百万ネットトン))→ 売上 40 億ドル・営業利益 4 億ドル。鋼材出荷1900万トンに対応する関連外販収入換算。加工関連が着実に増える。
倍率:2035年ROE=19.0÷141.2=13.5%、k=11.0%、weakの残存割合1/3からRONICは約11.8%。gは3.8%で、市場数量約+0.8%、シェアの小幅上昇、価格の年約3%を合成した長期名目成長率である。正当化PERは10年目のGAAP利益基準で約9.8倍。固定費と関税依存を考慮して上限の約92%、9.0倍とした。
確率:新しい自動車向け契約と2027年の改善見通しには具体的な裏付けがある。関税が緩和されても一部は残り、設備の効率化が進む可能性は十分あるため18%とした。ただし高炉全体の利益率が電炉並みに達するとは見ない。
中立 31% 中立:鋼材需要は増えるが、電炉との競争で利益率はほどほどに戻る 利益 10 億ドル · PER 8.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 14.86 ドル85 億ドル
2035年、米国の鋼材市場は2025年から約1.10倍となる。クリフスの年間出荷は1780万トンで、全社出荷量は10年間で約1.10倍となる。国内の鋼材需要が増える一方、ニューコアとスチール・ダイナミクスの増設により、汎用品では価格競争が続く。クリフスは自動車向け高級鋼板を守りながら、全社の出荷量をほぼ市場並みに増やす。
熱延・スラブの平均単価は980ドルとなり、2025年の711ドルから上がるものの、物価上昇率をわずかに下回る。冷延・表面処理鋼板は1605ドルとなり、品質面の優位を保つ。特殊鋼・厚板は2800ドルで、電磁鋼板の需要増と厚板の価格競争が混在する。
全社売上は287億ドル、営業利益20億ドル、純利益10億ドルとなる。営業利益率は約7%で、2025年の赤字からは大きく改善するが、優良な電炉メーカーの中期的な利益率には届かない。利払いは年間約6億ドルを中心に推移し、売上が増えても株主利益の増え方を抑える。
2026年の収益回復と2027年の好調の後、2028〜2030年には価格と数量が調整される。その後は名目価格の上昇と費用削減で利益を積み上げる。10年間の累積純利益を55億ドルとし、正味還元は8億ドルにとどめる。自己資本は108億ドルへ増えるが、資本効率は高くない。借金の返済が株主還元より優先される姿である。
- 熱延鋼板・スラブなどの基礎鋼材:数量 8.7(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 9.80(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。7.112=約711ドル/トン))→ 売上 85 億ドル・営業利益 7 億ドル。出荷865万トン、平均980ドル。価格は物価の10年上昇率1.41倍をやや下回る。
- 冷延・表面処理鋼板:数量 7.5(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 16(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。11.405=約1141ドル/トン))→ 売上 120 億ドル・営業利益 17 億ドル。出荷750万トン、平均1605ドル。高級鋼板の契約を維持し、単価は概ね物価に沿って上がる。
- ステンレス・電磁鋼板・厚板:数量 1.7(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 28(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。19.979=約1998ドル/トン))→ 売上 46 億ドル・営業利益 6 億ドル。出荷165万トン、平均2800ドル。電磁鋼板の強みは続くが、厚板の利益率は競争で抑えられる。
- 製鉄原料・鋼管・プレス加工・関連事業:数量 17.8(本業の鋼材出荷に対応させた数量指標(百万ネットトン。関連事業自体の販売トン数ではない))× 価格 2.00(鋼材出荷1トン当たりの関連事業外販収入換算(億ドル/百万ネットトン))→ 売上 36 億ドル・営業利益 3 億ドル。鋼材出荷1780万トンに対応する関連外販収入換算。単価はほぼ物価に沿って増える。
倍率:2035年ROE=10.0÷108.2=9.2%で、k=11.0%を下回る。weakの残存割合1/3からRONICは約10.4%。長期gは3.5%で、市場数量の実質約+0.8%、シェア横ばい、価格の名目約+2.7%を合わせたもの。10年目利益への正当化PERは約9.1倍だが、ROEがkに届かないため上限は1÷k=約9.09倍。利益の質と固定費負担を考慮し、上限の約94%の8.5倍とした。過去や現在の市場PERは使わない。純利益は利払いと税金を引いたGAAP利益。
確率:米国の鋼材需要の実質成長率は年1%程度とし、クリフスの出荷シェアは概ね維持すると見る。2026年の回復と2027年の契約効果を認めつつ、高炉の固定費と電炉の競争を残した姿であり、最も起こりやすい筋書きとして31%とした。
やや悲観 24% やや悲観:関税が緩み、電炉の供給増で高炉の利益が薄くなる 利益 1 億ドル · PER 7.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.35 ドル8 億ドル
2035年、米国の鋼材市場は2025年とほぼ同じ規模にとどまる。輸入関税は一部緩和され、電炉の新設によって国内市場でも価格競争が強まる。クリフスの出荷は1540万トンへ減少し、米国市場を比較基準にした見掛けのシェアは約17%へ低下する。特に汎用の熱延鋼板は、ニューコアとスチール・ダイナミクスの低い費用構造に押される。
自動車用鋼板は品質認定の強みが残るため、売上の大部分を維持する。しかし価格更新では顧客の値下げ要求が強まり、物価上昇を十分に転嫁できない。ステルコの事業再編は続き、収益性の低い設備を休止する。ミドルタウンの投資でも高炉全体の固定費は解消できない。
売上は216億ドル、営業利益は約10億ドルとなる。利払いと少数株主の取り分を引くと、純利益は約1億ドルに縮む。自己資本に対する利益率は低く、企業は存続しても株主の資本を効率よく増やせない。
2027年の一時的な利益回復の後、2029〜2032年に設備閉鎖や価格競争による損失が発生する。最終年には黒字へ戻るものの、期間累計の純利益はマイナス2億ドルとする。正味還元はなく、利益は設備維持と借金の支払いに消える。自己資本は約59億ドルで、帳簿上の厚さに比べて稼ぐ力は極めて弱い。
- 熱延鋼板・スラブなどの基礎鋼材:数量 7.5(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 8.40(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。7.112=約711ドル/トン))→ 売上 63 億ドル・営業利益 4 億ドル。出荷750万トン、平均840ドル。名目価格は10年で1.18倍にとどまる。
- 冷延・表面処理鋼板:数量 6.8(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 14(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。11.405=約1141ドル/トン))→ 売上 97 億ドル・営業利益 11 億ドル。出荷675万トン、平均1440ドル。自動車用鋼板の数量と利益率が低下する。
- ステンレス・電磁鋼板・厚板:数量 1.2(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 24(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。19.979=約1998ドル/トン))→ 売上 28 億ドル・営業利益 2 億ドル。出荷115万トン、平均2400ドル。電磁鋼板は残るが、厚板は競合に押される。
- 製鉄原料・鋼管・プレス加工・関連事業:数量 15.4(本業の鋼材出荷に対応させた数量指標(百万ネットトン。関連事業自体の販売トン数ではない))× 価格 1.80(鋼材出荷1トン当たりの関連事業外販収入換算(億ドル/百万ネットトン))→ 売上 28 億ドル・営業利益 1 億ドル。鋼材出荷1540万トンに対応する関連外販収入換算。関連事業の売上も減る。
倍率:2035年ROE=1.1÷59.2=1.9%でk=11.0%に大きく届かない。長期gは2.0%で、市場数量の実質減少、シェアの小幅低下、名目価格の上昇を合成したもの。RONICはweakの残存割合1/3から約7.9%となる。通常の正当化式からの上限約8.5倍と1÷kの約9.1倍のうち低い方を守る。構造的に負けて利益が薄い会社であるため、実際の倍率は7.0倍とする。過去の谷のPBRやPERは根拠に使わない。
確率:関税の緩和と電炉の供給能力増加は十分ありうる。クリフスは高炉の固定費を抱えるため、数量が市場より減ると利益率が大きく悪化する。設備の整理で黒字は守るものの、株主利益がほとんど残らない展開を24%とした。
悲観 17% 悲観:高炉の競争力が失われ、大規模な縮小でかろうじて存続する 利益 0 億ドル · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0.56 ドル3 億ドル
2035年、米国の鋼材市場は2025年の約0.93倍へ縮む。輸入鉄鋼への保護が大幅に弱まり、国内では電炉の低コスト供給が増え続ける。クリフスの鋼材出荷は1270万トンへ落ち、米国市場を比較基準にした見掛けのシェアは約15%となる。熱延鋼板とスラブは価格競争で利益が薄くなり、工場の休止が増える。
自動車向けの認定済み鋼板と電磁鋼板は一部残るが、全社の固定費を支えるほどには伸びない。老朽高炉の閉鎖、土地と設備の売却、従業員の削減が続く。ステルコの一部資産は採算悪化によって整理される。ミドルタウンの改修は完了していても、競争力の弱い設備までは救えない。
売上は146億ドルへ縮む。大規模な固定費削減により営業利益は約6.5億ドルを確保するが、借金の利息が利益の大半を吸収する。最終年の純利益は0.4億ドルにすぎず、企業が存続しても株主に帰属する稼ぐ力は極めて小さい。
期間中には設備減損や構造改革費用が発生し、10年間の純損益累計はマイナス30億ドルとなる。流動性を維持するために約2億ドルの純増資を行う筋書きで、正味還元はマイナス2億ドルとする。自己資本は約33億ドル残るが、帳簿の価値を利益価値とはみなさない。2026年9月末の資産を清算価値で評価すると、債権者の請求額を超える確かな残余財産を確認できないため、床はゼロとする。最終的な株式価値は小さな正の額にとどまり、債務再編次第ではさらに大きな損失もありうる。
- 熱延鋼板・スラブなどの基礎鋼材:数量 6.4(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 7.00(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。7.112=約711ドル/トン))→ 売上 44 億ドル・営業利益 3 億ドル。出荷635万トン、平均700ドル。名目価格が2025年とほぼ変わらず、実質では大きく下がる。
- 冷延・表面処理鋼板:数量 5.5(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 12(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。11.405=約1141ドル/トン))→ 売上 65 億ドル・営業利益 6 億ドル。出荷550万トン、平均1190ドル。顧客の内製化や調達先変更で販売を失う。
- ステンレス・電磁鋼板・厚板:数量 0.9(年間外販出荷量(百万ネットトン))× 価格 20(鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。19.979=約1998ドル/トン))→ 売上 17 億ドル・営業利益 1 億ドル。出荷85万トン、平均2000ドル。電磁鋼板は残るが、事業規模は縮小する。
- 製鉄原料・鋼管・プレス加工・関連事業:数量 12.7(本業の鋼材出荷に対応させた数量指標(百万ネットトン。関連事業自体の販売トン数ではない))× 価格 1.50(鋼材出荷1トン当たりの関連事業外販収入換算(億ドル/百万ネットトン))→ 売上 19 億ドル・営業利益 1 億ドル。鋼材出荷1270万トンに対応する関連外販収入換算。加工と原料外販も減少する。
倍率:2035年ROE=0.4÷33.2=約1.2%でk=11.0%を大きく下回る。長期gは0%で、市場数量減少とシェア低下が名目価格上昇を相殺するため、永続的な利益の成長は見込まない。RONICはweakの残存割合1/3により約7.7%。正当化PERの上限1÷k=約9.09倍を下回る8.0倍とした。稼ぐ力による上限は純利益0.4÷0.11=約3.64億ドルであり、時価総額3.2億ドルはその内側にある。売れる資産の税後残余財産は0億ドルと評価しており、過去のPBRを床にしていない。
確率:関税の撤廃、電炉の供給過剰、自動車向け販売の減少、債務負担の重さが重なる展開である。2025年の大幅赤字は高炉の弱さを示したが、2026年の回復と設備売却の余地があるため、即座の消滅を中心にはしない。資本再編を伴う深刻な縮小として17%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
熱延鋼板・スラブなどの基礎鋼材
熱延鋼板、スラブ、その他の半製品を自動車部品メーカー、流通業者、製鉄メーカーへ売る。主に鋼材価格と稼働率が利益を決める。
| 数量年間外販出荷量(百万ネットトン) | 価格鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。7.112=約711ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7.9 | 7.11 | 57 | −8 |
| 10 年後 中立 | 8.7 | 9.80 | 85 | 7 |
取り方:2025年10-Kの熱延鋼板648.4万トン・売上47.70億ドルと、スラブ・その他146.2万トン・売上8.81億ドルを合算した。熱延の平均単価は約736ドル、スラブ等は約603ドルで、加重平均約711ドルとなる。営業利益は商品別に非開示のため、会社全体の製鉄部門の赤字と高炉の固定費を踏まえた配賦推定であり、会社開示値ではない。米国の鋼材出荷9100万トンのうち熱延・半製品に相当する市場は約3000万〜3800万トンと概算するが、品目別の厳密な市場規模は未確認。クリフスの販売にはカナダを含み、単純比較のシェアは約21〜26%の目安にすぎない。競合はニューコア、スチール・ダイナミクス、日本製鉄傘下のUSスチール。
冷延・表面処理鋼板
冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板などを製造し、主に自動車、家電、建材に供給する。品質認定と複数年契約によって顧客との関係が比較的安定する。
| 数量年間外販出荷量(百万ネットトン) | 価格鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。11.405=約1141ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.9 | 11 | 78 | −5 |
| 10 年後 中立 | 7.5 | 16 | 120 | 17 |
取り方:2025年10-Kで冷延鋼板238.2万トン・売上24.02億ドル、表面処理鋼板448.6万トン・売上54.31億ドルが開示されている。冷延単価は約1008ドル、表面処理は約1211ドル、合算平均は約1141ドル。利益は非開示のため、弱い自動車需要と高炉の固定費、製品構成を考慮した推定配賦。米国の冷延・表面処理市場を年間約2500万〜3500万トンと概算すると、北米全社出荷を使った見掛けのシェアは約20〜27%だが、カナダ分を含むため厳密な米国シェアではない。自動車向けで競うのはUSスチール、ニューコア、スチール・ダイナミクスなど。
ステンレス・電磁鋼板・厚板
ステンレス、方向性・無方向性電磁鋼板、厚板を供給する。送電網、変圧器、電動機、自動車、産業設備向けの高付加価値製品を含む。
| 数量年間外販出荷量(百万ネットトン) | 価格鋼材1トン当たり平均売値(億ドル/百万ネットトン。19.979=約1998ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.4 | 20 | 28 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 28 | 46 | 6 |
取り方:2025年10-Kのステンレス・電磁鋼板55.2万トン・売上17.48億ドルと、厚板86.3万トン・売上10.79億ドルを合算した。前者の平均単価は約3167ドル、後者は約1250ドルであり、製品構成による価格差が大きい。営業利益は非開示のため、電磁鋼板の付加価値と厚板の市況変動を踏まえた推定。米国内では方向性電磁鋼板の生産者がクリフスのみという特殊な地位にある一方、厚板ではニューコアやスチール・ダイナミクスと競う。合算対象市場の数量は品種別に異なり、約800万〜1500万トンという幅のある推定以外に確かな市場シェアを置けない。
製鉄原料・鋼管・プレス加工・関連事業
外部向け原料、スクラップ、コークス、鋼管、金型、プレス加工部品などを含む。製鉄事業と結び付いた外販収入が中心である。
| 数量本業の鋼材出荷に対応させた数量指標(百万ネットトン。関連事業自体の販売トン数ではない) | 価格鋼材出荷1トン当たりの関連事業外販収入換算(億ドル/百万ネットトン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.2 | 1.42 | 23 | −1 |
| 10 年後 中立 | 17.8 | 2.00 | 36 | 3 |
取り方:2025年10-Kで製鉄部門の非鋼材製品等の売上16.42億ドルと、Other Businessesの外販6.57億ドルを合算した。後者には鋼管、金型、プレス加工、自動車部品などが含まれる。製品の数量が統一単位で開示されていないため、1622.9万トンの鋼材出荷に対応させた外販収入の換算単価を採用した。これは実際の原料販売単価ではなく、数量感応度を比較するための代用指標である。営業利益は製鉄関連の不採算とOther Businessesの黒字を合算した推定配賦。原料取引ではスクラップ業者、加工品では地域加工業者や自動車部品メーカーと競う。関連事業単独の正確な市場シェアは非開示。
リスクと懸念
輸入関税の緩和と国内の供給過剰
2026年の回復には鉄鋼輸入への50%関税が大きく寄与した。関税が緩和されれば輸入が戻り、熱延コイルの価格が下がる可能性がある。さらにニューコアやスチール・ダイナミクスの電炉新設が進めば、関税が続いても国内の供給が余る。クリフスは固定費が重いため、鋼材の売値が下がると利益の減少率が大きい。
借金と借り換えの負担
2025年末の純有利子負債は約79億ドルで、時価総額とほぼ同額だった。2026年9月末の現金は約0.8億ドルと少なく、流動性の多くは借入枠に依存する。社債償還の延長によって短期の危険は下がったが、景気が悪化すると固定費と利払いが同時に重くなる。次の不況までに十分な負債削減が進むかが株主価値を左右する。
高炉の老朽化と電炉の競争優位
高炉は生産を止めても維持費が必要で、再稼働にも費用がかかる。電炉メーカーは需要に応じて比較的柔軟に操業できるため、景気の谷で優位に立つ。クリフスはミドルタウンなどの設備改修で費用低減を図るが、改修投資が続けばオーナー利益は減る。炭素排出規制やエネルギー価格の変化も高炉の競争力を弱めうる。
自動車メーカーへの依存と価格契約
自動車メーカー向けの売上は製鉄事業の約28%を占める。品質認定によって取引が続きやすい一方、北米の自動車生産が落ちれば工場の稼働率が下がる。複数年契約は需要と価格の安定に役立つが、鋼材市況が上がったときの値上げが遅れる。電気自動車の設計変更、アルミへの素材転換、顧客の調達先変更も長期の数量を左右する。
ステルコとカナダ市場の構造問題
2024年に買収したステルコはカナダ市場の輸入鋼材と価格競争にさらされる。2026年7〜9月期には熱延の収益が改善したが、めっきラインは無期限休止となった。カナダの輸入規制や米国との貿易条件が変われば、収益は再び悪化しうる。買収した設備には雇用維持などの約束もあり、採算が悪くても自由に閉鎖できるとは限らない。
設備投資、増資、資本配分の失敗
ミドルタウン工場の改修や電磁鋼板への投資は費用削減と高付加価値化に必要だが、完成の遅れや予算超過が起きれば回収期間が延びる。POSCOとの提携は未成立であり、期待された資金流入が実現しない可能性もある。好況期に買収や自社株買いを急ぎ、不況期に増資が必要になると、株主への正味還元は損なわれる。資本支出と還元の順序が重要である。
今後の分かれ目
- 2027年の調整後EBITDAが会社の示す40億ドル超に達し、純負債が継続して減少したら
- 2026年の回復が契約と費用削減に支えられたものと判断できる。中立とやや楽観の確率を引き上げる余地がある。ただし好況年のEBITDAをそのまま10年後の利益に延ばさず、設備更新後のフリーキャッシュフローを確認する。
- 熱延コイルとスクラップ・原料の差益が縮み、製鉄所の稼働率が75%未満で長期化したら
- 高炉の固定費を回収できないと考え、熱延と冷延の営業利益率を引き下げる。中立の純利益10億ドルを守れなくなる可能性が高く、やや悲観と悲観の比率を増やす。
- 自動車向け高級鋼板の契約更新で数量と単価がともに改善し続けたら
- 品質認定と顧客関係の堀が利益に結び付いている証拠となる。冷延・表面処理鋼板の数量と利益率を上げて評価する。ただし汎用鋼材の値決め力まで強いとは判断しない。
- POSCOとの提携が正式成立し、資金流入と持ち分の条件が開示されたら
- 売却する資産、受け取る資金、残る利益、将来の利益分配を確認し、会社全体の事業価値と純負債を再計算する。売却代金だけを価値に足し、同時に失う利益を無視することはしない。
- 電炉の新設後もクリフスの粗利益率とフリーキャッシュフローが安定して改善したら
- 高炉の費用改善と製品構成の高度化が進んだと評価する。中立の営業利益率と資本効率を引き上げる余地がある。少なくとも複数年の実績を確認し、短期の鋼材市況による上昇と区別する。
- 資金繰りのための大規模増資や、採算の悪い設備の追加減損が起きたら
- 正味還元を減額し、自己資本と将来の稼ぐ力を見直す。高炉や鉱山の帳簿価値を株価の床とは考えない。債務の条件変更や資産売却が必要なら、悲観の確率を引き上げる。
見ておくもの
- 四半期の鋼材出荷量、平均売値、1トン当たり現金製造費用
- 熱延コイルの市況、スクラップ価格、鉄鉱石とコークスの費用
- 米国の鋼材輸入数量、232条関税の扱い、国内の設備稼働率
- ニューコア、スチール・ダイナミクス、USスチールの生産能力と鋼材出荷
- 自動車向け固定価格契約の更新、数量、価格条件、顧客の生産台数
- ステルコの熱延収益、めっき設備の休止、カナダの鋼材輸入規制
- ミドルタウン工場とバトラー工場の投資進捗と費用削減実績
- 純有利子負債、ABL借入枠、利払い、フリーキャッシュフロー、正味株主還元
- POSCO提携の正式契約、資金流入、事業持ち分の変更
- 方向性電磁鋼板の生産量、変圧器需要、米国内供給の競争環境
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約79.5億ドルから逆算せず、2025年の製品別出荷量と売上を起点に、10年後の数量、単価、費用、利益を先に組み立てた。2026年7〜9月期の急回復と2027年の会社見通しは反映するが、好況の利益を永続させていない。中立の年間鋼材出荷1780万トンは2025年比約1.10倍で、米国の市場成長と整合する。中立の営業利益率7.0%は、2021年の山より大幅に低く、固定費の重い会社として妥当な範囲である。
倍率はk=11.0%、数量と名目価格から出した長期g、ROE、RONIC、弱い堀の残存割合1/3から正当化した。中立のPER8.5倍は利益ベースの上限の内側であり、今のPER、過去の谷のPBR、競合の市場倍率は使っていない。悲観は純利益0.4億ドルの稼ぐ力と売却可能資産の税後残余を比較し、0億ドルの資産の床を上回る小さな正の時価総額とした。期待本質価値は約38.4億ドル、基準時価総額79.5億ドルに対し約52%低い。結論を現在の値段に寄せる調整は行っていない。
資本コスト 11.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは米国株の基本8.0%にqualityの3.0%を加えた11.0%。業績不振と負債の重さはquality、悲観の深さ、確率に反映する。2026年7〜9月期の黒字回復と32億ドルの流動性を確認しており、現時点で継続企業の前提が失われたとは判断しないため、存続危機のextraは加えない。βや株価変動率は使わない。2025年の純負債は時価総額の約99%で、競合のニューコアやスチール・ダイナミクスより財務リスクが大きい。長期成長率gは市場数量、シェア、名目価格から別に決める。