結論
ゴールド・フィールズは南アフリカに本拠を置き、オーストラリア、チリ、ガーナなどで金を採掘する大手鉱山会社である。筆者の結論は割高だ。鉱山の質と株主還元には見るべきものがあるが、現在の時価総額に十分な安全域は見つからない。
2025年の売上は約88億ドル、営業利益は約43億ドル、純利益は約36億ドルだった。ただし純利益には、豪州グルイエール鉱山の残余持分取得に伴う再測定益などが含まれる。通常の稼ぐ力はこの数字より低い。2026年上期は金換算生産量が前年同期比12%増え、調整後フリーキャッシュフローも22億ドルを超えた。チリのサラレス・ノルテが本格稼働した成果は本物である。
長期の強みは、世界各地に分散した鉱山、長い寿命を持つ南アフリカのサウス・ディープ、そしてカナダのウインドフォール開発計画にある。しかし、金の販売価格は会社が決められない。ガーナでは2026年4月にダマン鉱山を政府へ移管し、主力タルクワでも2027年4月に主要鉱区の期限が来る。鉱山の寿命は投資で補わなければならず、現在の高収益を永続する利益とは扱えない。
2035年の中立では、金換算販売量を274万オンス、主な金価格を約4,900ドル、営業利益を約49億ドル、純利益を27億ドルと見る。10年間の正味還元は204億ドルで、期末時価総額は約227億ドルになる。強気と弱気を会社固有の条件で加重し、資本コスト9.5%で割り引いた現在価値は約208億ドルである。基準時価総額310億ドルを約33%下回る。金価格がさらに上がる可能性は認めるが、それを必要条件として持ち続けるには価格が高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、金鉱山会社は普通の優良消費財企業とは違う。毎年商品を売ることはできても、売るための鉱石そのものが減っていく。金価格が上がった年に大きな利益が出ても、その利益の一部は次の鉱石を確保するために使わなければならない。株主が自由に受け取れる現金と、地下から取り出した資本の回収を分けて考える必要がある。
ゴールド・フィールズには買いたい理由がある。サラレス・ノルテは高品位で、ウインドフォールも実現すれば低コストの生産基盤になる。サウス・ディープには数十年に及ぶ鉱山寿命がある。資源を多く持つことに加え、経営が株主還元を明確にしている点も好ましい。しかし、企業全体として価格を決める力はなく、豪州やチリの複数鉱山では10年程度で既存の埋蔵量を使い切る見通しである。
筆者が最も気にするのは、よい鉱山を持っていることと、よい投資対象であることを混同しないことだ。鉱山の運営技術は簡単にまねできないが、商品である金に高い値段を付ける権利はない。新鉱山への再投資が資本コストを十分に超えなければ、企業規模が増えても一株主の取り分は豊かにならない。
2025年の報告純利益36億ドルを永続利益として扱わず、実物の産金量と平準化した実現価格から利益を見直した。中立の2035年純利益は27億ドルで、過去のROE中央値に近い効率へ戻る。資源寿命20年の制約を受けた事業価値に、期間中の正味還元を加えても、現在の時価総額には安全域が乏しい。高い金価格が続く可能性は否定しないが、長期保有の判断をそこだけに依存させたくない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、鉱山から金を採り、精錬会社や金融機関などに販売する事業である。売上は基本的に販売オンス数と実現価格の掛け算で決まる。製品の違いによる値段の上乗せはほとんどなく、利益は金価格と採掘費用の差に左右される。金換算オンスには、ペルーの銅やチリの銀も一定の換算率で含まれる。
オーストラリアにはセント・アイブス、アグニュー、グラニー・スミス、グルイエールがある。2025年の地域売上は約37億ドルで、全社最大の稼ぎ手だ。2025年秋のゴールド・ロード・リソーシズ買収により、グルイエールの持分は50%から100%になった。2025年の同鉱山の連結実績には取得前の50%分しか含まれない期間があるため、2026年以降は通年保有の効果が出る。
南アフリカのサウス・ディープは深い地下に鉱体を持つ長寿命の鉱山である。2025年の売上は約11億ドルで、採掘効率と労使関係が利益を左右する。ガーナのタルクワは大規模な露天掘り鉱山で、同年の売上は約16億ドルだった。保有比率は90%で、政府が残り10%を持つ。ダマンは同年に約3億ドルを売り上げたが、2026年4月に政府へ移管済みであり、将来の継続事業には含めない。
チリのサラレス・ノルテは、同社の成長を担う高品位の金・銀鉱山である。2025年8月末に商業生産水準に達し、2026年上期の生産量は約33.7万金換算オンスまで増えた。ペルーのセロ・コロナは金と銅を生むが、2025年に採掘を終え、残された鉱石の処理が中心になった。2031年ごろまでの生産を会社は見込むものの、2035年の継続利益には含めない。
カナダのウインドフォールは開発段階で、まだ売上を生まない。2024年のオシスコ・マイニング取得で100%保有となった高品位鉱床であり、会社は年間約30万オンスの生産を構想している。2026年上期時点では環境許可と最終投資決定が残る。ここが計画どおり稼ぎ始めるかで、既存鉱山の減産を補えるかどうかが変わる。
優良さと弱いところ
ゴールド・フィールズには、鉱山を長く運営してきた経験と、有力な鉱床を持つ強みがある。採掘権、許認可、処理設備、鉱山周辺の探鉱権を一体で保有するため、新規参入者が同じ立地と設備を短期間で複製することは難しい。これは鉱山事業に固有の参入障壁である。ただし金の売値を高くできる力ではない。
2025年の全社AISCは金換算1オンス当たり約1,645ドルだった。AISCは維持投資まで含む総費用の目安である。2026年のガイダンスは1,800〜2,000ドルへ上昇しており、同年のアグニコ・イーグルの1,400〜1,550ドル、ニューモントの約1,520ドルという計画に対して費用面で明確な優位があるわけではない。チリは銀の副産物収入によって低いAISCを実現しているが、ガーナと豪州の一部鉱山は費用が高い。
2025年末の自己資本は約84億ドルで、純有利子負債は約14億ドルだった。2026年6月末にはリースを含む純負債が約4億ドルまで減り、財務の余裕は増した。問題は再投資の利回りだ。既存の処理設備を使う増産や、高品位鉱床の延長開発なら高い利益率を期待できる。一方、鉱山を維持するための剥土、坑道開発、環境対策、資源の補充には継続的な支出が必要である。
2025年のROE42.4%は長期の実力を表していない。金価格の上昇に加えて一時的な会計利益もあったからだ。過去10年のROE中央値16.3%を長期の参考にする方が慎重である。AIエージェント代替は同社の鉱石生産や販売の数量を直接奪う事業類型には当たらない。自動運転やAIによる採掘効率の改善はありうるが、それだけで金価格を決める堀ができるわけではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
金の需要は宝飾品、投資、中央銀行、電子部品などに分かれる。原油や鉄鉱石と違い、過去に採掘された金の大部分が社会に残っている。したがって鉱山会社の収益を決めるのは、宝飾需要の増減だけではない。中央銀行の準備資産への考え方、実質金利、通貨への信認、ETFへの資金流入が価格を大きく動かす。
ワールド・ゴールド・カウンシルによると、2025年の世界の鉱山生産は約3,672トンで、約1億1,800万オンスに相当する。金価格を同年の実現平均水準で評価した鉱山産金市場は、概算で4,100億ドル規模である。ゴールド・フィールズの帰属金換算生産量は約244万オンスで、世界生産の約2%に当たる。ニューモントは約5%、アグニコ・イーグルは約3%、バリックも約3%を占める。どの会社も単独では国際金価格を動かせない。
金の鉱山生産は近年ほぼ横ばいである。新しい大型鉱床を見つけ、許可を取り、採掘を始めるまでには長い時間がかかる。既存鉱山では品位低下と採掘場所の深部化が進むため、供給は急に増えにくい。しかし価格が高くなれば、低品位鉱石の採算改善やリサイクルの増加も起こる。供給の制約がそのまま鉱山株主の超過利益につながるとは限らない。
2026年上期には金の実現価格が4,600ドルを超え、各社の利益が大きく膨らんだ。一方、10月下旬の国際価格は4,000ドル前後に調整している。中央銀行の購入は2026年第2四半期に約289トンへ増えたが、上期全体では2022年以来の低水準だった。中央銀行が永遠に同じペースで買い続けると考えるのは危険である。
2035年に世界の鉱山生産が大幅に増えるとは考えにくい。中立ではほぼ横ばいの約3,700トンとし、ゴールド・フィールズの世界シェアは約2.3%へ小幅に上がる。これは市場そのものの急成長ではなく、サラレス・ノルテの通年生産、グルイエールの完全保有、ウインドフォールの開発成功による。反対にガーナの権益を失い、豪州の老朽鉱山の補充にも失敗すれば、シェアは約1.5%まで下がりうる。競争の核心は価格ではなく、限られた鉱床と資本をいかに効率よく次の生産につなぐかである。
資本政策と M&A
経営の資本配分は、過去の大型投資の成果が出始めた段階にある。2024年にカナダのオシスコ・マイニングを取得し、ウインドフォールを完全保有した。2025年にはゴールド・ロード・リソーシズの取得を完了し、豪州グルイエールを100%保有にした。後者は生産基盤を強めたが、2025年の会計上の利益には取得前持分の再測定益が含まれるため、買収の成功をその利益額だけで判定してはいけない。
株主還元では、裁量的な成長投資前のフリーキャッシュフローの35%を配当に回す方針を示している。さらに2025年11月から2026年8月までに、特別配当と自社株買いによる追加還元枠を累計12.5億ドルへ拡大した。2026年7月までに約3億ドルの買い戻しが完了している。利益が現金になった分を株主へ戻す仕組みは評価できる。
一方、2026年の設備投資計画は16〜18億ドルで、維持投資だけでも13〜14億ドルを要する。ウインドフォールの当初開発費計画は17〜19億ドルだったが、許認可の遅れによる変更余地がある。2026年10月には豪州カンバルダのニッケル選鉱設備と探鉱資産の取得契約も発表されたが、未完了の取引から将来利益を見込まない。新しい設備を買うこと自体が価値創造ではなく、取得費と追加投資を上回る現金を生むことが必要である。
株式報酬や増資による希薄化は還元から控除して考える。2025年の純利益には一時益が含まれたが、同年のフリーキャッシュフローは約31億ドルと大きかった。経営が今後10年も利益と現金を混同せず、高値での買収を避けられるかを重視したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
鉱山の質はここ数年で大きく改善した。サラレス・ノルテは2025年に商業生産へ移り、2026年上期の金換算生産量は前年同期の約2.7倍になった。グルイエールを完全保有したことで、処理設備の拡張と周辺鉱床の開発を一体で進められる。カナダのウインドフォールも高品位であり、計画どおり稼働すれば既存鉱山の枯渇を補える。
世界の金供給は短期間では増やせない。新鉱山の許認可が長引き、鉱石の品位が低下しているからだ。中央銀行が外貨準備を分散し、各国の財政不安が続けば、金の実質価格が高い水準に定着する余地はある。ゴールド・フィールズのように、既存の設備で増産できる会社では、売値の上昇が営業利益を大きく押し上げる。2026年上期の現金創出は、その構造を示した。
財務面でも改善は明確だ。2026年6月末の純有利子負債はリース込みでも約4億ドルまで縮小した。配当に加えて自社株買いを行い、余剰資金を抱え込まない方針がある。開発計画が成功し、2035年の生産量が300万オンスを超えれば、金価格の強さと数量の伸びが重なる。新しい高品位鉱山への投資が資本コストを超えれば、資産の枯渇を補いながら株主への現金還元を続けられる。
この場合でも、金の価格を決める力が生まれるわけではない。高い利益は価格環境と優良鉱床から得られるものであり、鉱山寿命に応じた再投資が必要である。それでも、投資を回収した後の潤沢な現金と還元を含めれば、現在の企業価値を上回る結果になる。
慎重な見方
最大の弱点は、価格を決められないうえに、鉱山の寿命が有限なことである。2025年の報告利益には買収に伴う一時的な利益が含まれ、2026年の高収益も高い金価格に支えられている。価格が下がっても労務費、電力費、剥土、坑道開発、環境対策は同じ速さでは減らない。利益率が縮むと、鉱山の埋蔵量を補充する資金も乏しくなる。
ガーナでは既に警告が現実になった。ダマンは2026年4月に政府へ移管された。タルクワでも主要な鉱区と開発協定が2027年4月に期限を迎え、更新条件はまだ確定していない。増税や高いロイヤルティだけでなく、鉱山の権益そのものを失う可能性を無視できない。2026年上期のタルクワは約19万オンスを生産しており、失うには大きすぎる資産である。
カナダのウインドフォールには許認可と建設の不確実性がある。2026年8月時点で環境影響評価の承認を待っており、最終投資決定後にも建設費の増加や立ち上げの遅れがありうる。豪州ではアグニューのように埋蔵量寿命が短い鉱山があり、サラレス・ノルテでも品位の低下が進めば現在の高い利益率は維持しにくい。ペルーのセロ・コロナは2030年代前半に生産を終える見込みだ。
鉱山株の危険は、金の高値が設備投資と買収を誘い、その後に価格が下がることにある。金が実質で大幅に下落し、タルクワの条件悪化と新鉱山の開発失敗が重なれば、売上だけでなく資産価値も下がる。株主還元は減り、残るのは閉山費と再投資義務を抱えた会社になる。2025年の利益の大きさだけでは、この下振れを防げない。
どちらに重みを置いたか
チリの稼働改善、豪州の完全保有化、2026年の強い現金創出は実績として認める。一方、ガーナの鉱区更新とカナダの許認可には未解決の部分があり、金価格はなお高い。下振れの原因が一つではないため、やや悲観と悲観に合計42%を配分した。
中立は会社の2035年生産目標の範囲内に収め、金の実質価格は2026年上期の高値から平準化すると考えた。上振れは金価格と新鉱山の成功が同時に起こる場合に限る。5つの筋書きの加重現在価値は約208億ドルで、基準時価総額約310億ドルに対して割高となる。財務が健全になったことは重要だが、事業の価値と現在の値段の差を埋めるには足りない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 29.45 ドル264 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 20.01 ドル180 億ドル)。 今の値に割り戻すと 24.59 ドル221 億ドル、今との差 −25.3%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 80.48 ドル722 億ドル | 40.12 ドル360 億ドル | +266.3% | +18.0% | 9.65 ドル87 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 51.02 ドル458 億ドル | 31.20 ドル280 億ドル | +149.8% | +12.5% | 13.98 ドル125 億ドル |
| 中立 | 33% | 29.50 ドル265 億ドル | 22.73 ドル204 億ドル | +58.7% | +6.2% | 17.24 ドル155 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 15.44 ドル139 億ドル | 12.26 ドル110 億ドル | −15.9% | −2.2% | 7.20 ドル65 億ドル |
| 悲観 | 16% | 3.71 ドル33 億ドル | 5.01 ドル45 億ドル | −73.5% | −15.9% | 1.40 ドル13 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 29.45 ドル264 億ドル | 20.01 ドル180 億ドル | +50.2% | +5.3% | 49.46 ドル444 億ドル |
今の株価時価総額 32.92 ドル295 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:金の実質的な高値が定着し、カナダと既存鉱山の増産が重なる 利益 76 億ドル · PER 9.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 80.48 ドル722 億ドル
中央銀行の金需要と投資需要が長く続き、金の実質価格が一段高い水準へ移る。世界の鉱山生産は大きく増えないが、ゴールド・フィールズは開発と探鉱に成功し、2035年の金換算販売量を313万オンスまで伸ばす。世界の鉱山生産に対するシェアは約2.6%になる。
豪州ではグルイエールの処理能力拡張と周辺鉱床の開発が成果を出す。サウス・ディープの採掘効率も改善し、タルクワは有利な条件で鉱区を更新する。サラレス・ノルテは高品位鉱石の生産を維持し、ウインドフォールは年間34万オンスを販売する。ペルーとダマンの退出は、この増産で補われる。
高い売値に対して費用の上昇を抑えられ、営業利益は約130億ドル、純利益は約76億ドルになる。金の値段を決める堀が生まれたわけではないが、優良鉱山へ投資した資金が大きな現金を生む。10年間の純利益累計は540億ドル、正味還元は360億ドルとなり、自己資本は約264億ドルへ増える。正味還元は配当と自社株買いの総額約369億ドルから希薄化相当の約9億ドルを控除したものとする。高値での大型買収を避け、増分投資が十分な利益を生んだ姿である。
- 豪州金鉱山群:数量 1.3(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 7,500(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 97 億ドル・営業利益 54 億ドル。グルイエールの拡張と豪州周辺鉱床の開発が成功し、地域販売量が約129万オンスへ増える。
- 南アフリカ・サウス・ディープ:数量 0.4(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 7,500(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 30 億ドル・営業利益 17 億ドル。サウス・ディープが地下採掘の効率改善を実現する。
- ガーナ・タルクワ:数量 0.5(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 7,500(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 36 億ドル・営業利益 16 億ドル。鉱区更新に成功し、タルクワの長寿命計画が実現する。
- ガーナ・ダマン(移管済み):数量 0.0(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 7,500(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。2026年に政府へ移管済みであり、金高騰でも売上に戻さない。
- チリ・サラレス・ノルテ:数量 0.6(金・銀の金換算販売量(百万オンス))× 価格 7,850(金・銀の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 49 億ドル・営業利益 32 億ドル。高品位の金と銀の生産を長期間維持し、副産物収入が費用を抑える。
- ペルー・セロ・コロナ:数量 0.0(金・銅の金換算販売量(百万オンス))× 価格 7,500(金・銅の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。セロ・コロナは既存計画による操業を終了している。
- カナダ・ウインドフォール:数量 0.3(将来の金販売量(百万オンス))× 価格 7,500(金の実現価格(ドル/オンス))→ 売上 26 億ドル・営業利益 16 億ドル。ウインドフォールが稼働し、高品位鉱床の増産と低い単位費用を実現する。
倍率:k9.5%、長期g1.0%、moatはweakで残る割合1/3。帳簿ROEは75.6÷264.3=28.6%で、RONICは約15.9%。正当化PERは約11倍となるが、金鉱山の埋蔵量を有限とする20年年金の上限は9.43倍なので、これを優先した。継続的に高価格を実現する強い筋書きでは、年金上限の約99.7%で9.40倍を適用する。GAAP相当の純利益に会計上の償却戻しや一時益を加算しない。
確率:2035年の主な実現金価格7,500ドルは2025年の実現価格を大きく上回り、2026年の高値圏からも実質的に上昇する筋書きである。中央銀行の購入、通貨への不信、供給制約が長期間重なる必要がある。ウインドフォールとタルクワの成功まで同時に起こるため8%とした。
やや楽観 17% やや楽観:金価格の強さが続き、2035年も約300万オンスを維持 利益 50 億ドル · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 51.02 ドル458 億ドル
金価格は2026年上期の高水準から大きく崩れず、2035年の主な実現価格は6,300ドルになる。世界の産金市場が横ばいに近い中で、ゴールド・フィールズは既存鉱山の改良と新規開発によって297万オンスを販売する。世界シェアは約2.5%となり、会社が掲げる2035年の生産目標の上側に近づく。
豪州ではグルイエールと周辺鉱床の一体開発が進み、サウス・ディープも安定する。タルクワは更新を得るもののロイヤルティの負担が増えるため、2025年ほどの高い利益率は維持できない。サラレス・ノルテは2026年の高水準から一部減産するが、なお重要な稼ぎ手である。ウインドフォールは2030年前後に生産を始め、2035年には33万オンスを販売する。
売上は約189億ドル、営業利益は約87億ドルとなる。純利益は約50億ドルで、2025年の一時益を含む数字を超える継続利益が得られる。10年間の純利益累計は410億ドルで、配当と買い戻しの総額約287億ドルから希薄化相当約7億ドルを控除した正味還元は280億ドルとする。自己資本は214億ドルへ増え、買収と開発に使った元手を上回る利益を得られる。
- 豪州金鉱山群:数量 1.2(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 6,300(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 77 億ドル・営業利益 36 億ドル。完全保有化したグルイエールと周辺鉱床が安定生産し、既存鉱山の減耗を補う。
- 南アフリカ・サウス・ディープ:数量 0.4(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 6,300(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 25 億ドル・営業利益 11 億ドル。地下採掘の生産性改善が進み、長寿命の利点が表れる。
- ガーナ・タルクワ:数量 0.5(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 6,300(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 29 億ドル・営業利益 11 億ドル。鉱区更新を得るが、税とロイヤルティの条件はやや厳しくなる。
- ガーナ・ダマン(移管済み):数量 0.0(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 6,300(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。政府へ移管済み。
- チリ・サラレス・ノルテ:数量 0.6(金・銀の金換算販売量(百万オンス))× 価格 6,600(金・銀の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 38 億ドル・営業利益 21 億ドル。銀の副産物収入と高品位鉱石が収益を支える。
- ペルー・セロ・コロナ:数量 0.0(金・銅の金換算販売量(百万オンス))× 価格 6,300(金・銅の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。既存鉱山の操業終了。
- カナダ・ウインドフォール:数量 0.3(将来の金販売量(百万オンス))× 価格 6,300(金の実現価格(ドル/オンス))→ 売上 21 億ドル・営業利益 11 億ドル。ウインドフォールの許可と建設が実現し、商業生産が安定する。
倍率:k9.5%、g1.0%、moatはweakで残る割合1/3。帳簿ROEは49.5÷214.3=23.1%、RONICは約14.0%。通常の正当化PERは約11倍だが、20年の資源年金上限9.43倍を適用する。価格の循環と開発投資の必要性を考慮し、その95%に相当する8.95倍とした。純利益はGAAP相当で株式報酬と償却を費用に含む。
確率:2026年の高い金価格が一時的な山ではなく、中央銀行の購入と金鉱山の供給制約に支えられる場合である。金価格だけでなく、グルイエールとウインドフォールの生産が順調に立ち上がる必要がある。会社の長期目標に近いが複数の実行条件を伴うため17%とした。
中立 33% 中立:金は物価に沿って上がるが実質では平準化し、生産量は274万オンス 利益 27 億ドル · PER 8.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 29.50 ドル265 億ドル
2035年の主な実現金価格は4,900ドルになる。2025年平均からは約1.4倍で、共通前提の物価上昇に近い。一方、2026年上期の高い実現価格を起点とすれば実質では調整する。世界の鉱山生産は約3,700トンとほぼ横ばいで、ゴールド・フィールズの金換算販売量は274万オンス、シェアは約2.3%となる。
豪州ではグルイエールの通年保有と周辺開発が効くが、アグニューやセント・アイブスなど既存鉱山の減耗を完全には消せない。タルクワは更新に成功するものの、以前より高いロイヤルティを負担する。サラレス・ノルテは安定生産し、ウインドフォールは年30万オンスを販売する。セロ・コロナとダマンの退出は確実に反映する。
売上は約135億ドル、営業利益は約49億ドル、純利益は27億ドルとなる。2025年の買収再測定益などの一時利益は将来に持ち越さない。2026〜2030年の純利益累計を175億ドル、2031〜2035年を125億ドルと見て、期間合計は300億ドルとする。配当と買い戻しの総額約210億ドルから希薄化相当約6億ドルを差し引いた正味還元は204億ドルで、自己資本は約180億ドルへ増える。投資による生産の維持には成功するが、資本効率は過去の中央値付近に落ち着く。
- 豪州金鉱山群:数量 1.1(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 4,900(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 55 億ドル・営業利益 20 億ドル。グルイエールの通年保有効果と延長開発が、既存鉱山の品位低下をおおむね補う。
- 南アフリカ・サウス・ディープ:数量 0.4(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 4,900(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 18 億ドル・営業利益 7 億ドル。サウス・ディープは長い鉱山寿命を生かすが、地下採掘の費用と労務制約が残る。
- ガーナ・タルクワ:数量 0.4(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 4,900(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 21 億ドル・営業利益 6 億ドル。タルクワの鉱区更新は成立するが、剥土費とロイヤルティの負担が増える。
- ガーナ・ダマン(移管済み):数量 0.0(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 4,900(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。2026年4月の移管を反映し、売上ゼロ。
- チリ・サラレス・ノルテ:数量 0.5(金・銀の金換算販売量(百万オンス))× 価格 5,050(金・銀の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 26 億ドル・営業利益 13 億ドル。サラレス・ノルテの金・銀生産が成熟し、品位低下を一定程度補う探鉱が成功する。
- ペルー・セロ・コロナ:数量 0.0(金・銅の金換算販売量(百万オンス))× 価格 4,900(金・銅の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。セロ・コロナの鉱石在庫処理は2035年より前に終了する。
- カナダ・ウインドフォール:数量 0.3(将来の金販売量(百万オンス))× 価格 4,900(金の実現価格(ドル/オンス))→ 売上 15 億ドル・営業利益 6 億ドル。ウインドフォールが許認可と建設の遅れを経て商業生産を実現する。
倍率:中立の帳簿ROEは27.0÷180.3=15.0%で、過去10年の中央値16.3%を上回らない。k9.5%、長期g1.0%、moatはweakで残る割合1/3とするとRONICは約11.3%、正当化PERは約10.8倍になる。しかし鉱山の埋蔵量は有限であり、20年年金の上限9.43倍を適用する。既存鉱山の減耗と次の鉱床への再投資を考慮して上限の約89%である8.40倍とした。成長率はROEから逆算せず、世界の産金量ほぼ横ばい、会社シェア約2.1%から2.3%への上昇、金価格の名目変化から決めた。
確率:世界の産金量はほぼ横ばいで、金価格は2025年の平均価格から物価並みに上昇するが、2026年上期の高値からは実質的に下がる。グルイエールとサラレス・ノルテの稼働改善は実績に支えられ、ウインドフォールは計画より遅れても2035年には生産する。会社の長期生産目標の中央付近にあり、最も自然な筋書きとして33%とした。
やや悲観 26% やや悲観:金の実質価格が下がり、鉱区更新の負担と鉱山の減耗が重なる 利益 11 億ドル · PER 7.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 15.44 ドル139 億ドル
金価格への投資需要が鈍り、2035年の主な実現価格は3,800ドルとなる。名目では2025年平均を上回るが、物価を差し引くと金の価値は下がる。世界の産金量はほぼ横ばいでも、ゴールド・フィールズは老朽鉱山の縮小と開発の遅れで販売量が227万オンスへ減る。世界シェアは約1.9%になる。
タルクワは鉱区を維持するものの、新しいロイヤルティと増加した剥土費によって利益率が落ちる。グルイエールの拡張効果は限定的で、豪州の一部鉱山では低品位の採掘を減らす。サラレス・ノルテも品位の低下が進み、ウインドフォールは建設費超過の後に縮小した規模で稼働する。高価格を前提とした追加の買収は行わない。
営業利益は約21億ドル、純利益は11億ドルへ縮む。2026〜2030年に140億ドル、2031〜2035年に55億ドルの純利益を得るが、その累計には減損12億ドルが含まれる。10年間の正味還元は110億ドルに減り、自己資本は169億ドルとなる。ROEは資本コストを下回り、残った資産の額面よりも将来の稼ぐ力を重視する。配当と買い戻しの総額約114億ドルから希薄化相当約4億ドルを控除した。
- 豪州金鉱山群:数量 1.0(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,800(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 36 億ドル・営業利益 10 億ドル。高費用鉱山の採掘を減らし、残る鉱山でも品位低下と費用上昇が利益を削る。
- 南アフリカ・サウス・ディープ:数量 0.3(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,800(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 13 億ドル・営業利益 3 億ドル。地下鉱山の採掘費が上がり、効率改善が遅れる。
- ガーナ・タルクワ:数量 0.3(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,800(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。タルクワの更新条件が厳しくなり、経済性の低い採掘区域を縮小する。
- ガーナ・ダマン(移管済み):数量 0.0(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,800(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。政府へ移管済み。
- チリ・サラレス・ノルテ:数量 0.4(金・銀の金換算販売量(百万オンス))× 価格 3,920(金・銀の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 17 億ドル・営業利益 6 億ドル。サラレス・ノルテの高品位部分が減り、副産物の利益も小さくなる。
- ペルー・セロ・コロナ:数量 0.0(金・銅の金換算販売量(百万オンス))× 価格 3,800(金・銅の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。既存計画の操業終了。
- カナダ・ウインドフォール:数量 0.2(将来の金販売量(百万オンス))× 価格 3,800(金の実現価格(ドル/オンス))→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。ウインドフォールの開発が遅れ、当初構想より小さい販売規模となる。
倍率:帳簿ROEは11.0÷169.3=6.5%でk9.5%を下回り、留保利益が額面どおりの価値を生まない。通常の利益価値の上限1÷kは約10.5倍だが、鉱山は資源寿命の年金上限9.43倍にも制約される。構造的な利益率の低下を受け、7.40倍に引き下げる。稼ぐ力による時価総額81.4億ドルは、税後売却資産の参考床44億ドルを上回るため、PBRで床をかさ上げしない。
確率:国際金価格が2026年上期の高値から実質的に大きく調整し、費用は物価とともに上がる筋書きである。タルクワの鉱区更新が成立しても条件悪化が残り、豪州の老朽鉱山の補充も一部遅れる。鉱山事業では十分起こりうるため26%とした。
悲観 16% 悲観:金の実質価格が長期低迷し、鉱区喪失と減損が重なる 利益 5 億ドル · PER 6.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.71 ドル33 億ドル
中央銀行の購入が鈍り、投資資金は他の資産へ向かう。2035年の主な金価格は3,100ドルとなる。これは名目で2025年平均を下回り、物価を考慮すればさらに厳しい水準である。世界の鉱山生産は大きく減らないが、ゴールド・フィールズの販売量は176万オンスまで縮み、世界シェアも約1.5%へ低下する。
タルクワは更新に失敗するか、厳しい条件で操業の一部だけを維持する。豪州では高費用の鉱山を閉じ、サウス・ディープでも地下採掘量が減る。サラレス・ノルテは高品位鉱石の減耗で数量が落ちる。ウインドフォールは投資額を回収しきれず、小規模な生産にとどまる。過去の買収や鉱山開発に投じた資金の一部は減損になる。
2035年の営業利益は約10億ドル、純利益は約5億ドルである。2026〜2030年の減損前利益累計を105億ドル、2031〜2035年を30億ドルとし、鉱山の減損55億ドルを控除した10年間の純利益累計は80億ドルとなる。正味還元は45億ドルに縮み、自己資本は約119億ドルとなる。配当と買い戻しの総額約48億ドルから希薄化相当約3億ドルを引く。株主の取り分を守るのは、残る鉱山の稼ぐ力と売れる資産だけである。
- 豪州金鉱山群:数量 0.7(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,100(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 22 億ドル・営業利益 4 億ドル。高費用鉱山の閉鎖と品位低下が進み、主要な低コスト鉱山だけが残る。
- 南アフリカ・サウス・ディープ:数量 0.3(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,100(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。深部採掘の費用上昇により、生産を縮小する。
- ガーナ・タルクワ:数量 0.2(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,100(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。タルクワの重要鉱区の権利を失うか、条件悪化により採掘規模が半減する。
- ガーナ・ダマン(移管済み):数量 0.0(金換算販売量(百万オンス、管理ベース))× 価格 3,100(実現価格(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。政府へ移管済み。
- チリ・サラレス・ノルテ:数量 0.3(金・銀の金換算販売量(百万オンス))× 価格 3,350(金・銀の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 11 億ドル・営業利益 4 億ドル。高品位鉱石の減耗により減産するが、銀の副産物収入が一定の利益を残す。
- ペルー・セロ・コロナ:数量 0.0(金・銅の金換算販売量(百万オンス))× 価格 3,100(金・銅の実効売上(ドル/金換算オンス))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。鉱山の操業終了。
- カナダ・ウインドフォール:数量 0.2(将来の金販売量(百万オンス))× 価格 3,100(金の実現価格(ドル/オンス))→ 売上 7 億ドル・営業利益 3 億ドル。高品位部分は利益を残すものの、開発費が膨らみ、投資回収の総合成績は悪化する。
倍率:帳簿ROEは5.2÷119.3=4.4%でk9.5%を大幅に下回る。長期gは資源の制約から1.0%以下、moatはweakである。利益の永続式ではなく、埋蔵量20年の年金上限9.43倍とROEが資本コストを下回る制約を使う。鉱区喪失と減損の後に残る利益の質が低いためPER6.40倍とした。時価総額33.28億ドルは純利益5.2億ドルによる稼ぐ力から求め、売却可能資産の税後床30億ドルも上回る。将来の自己資本にPBRを掛けて床を膨らませない。
確率:金価格の実質下落だけでなく、タルクワの鉱区喪失、豪州の老朽鉱山の閉鎖、ウインドフォールの投資採算悪化が重なる筋書きである。すべての悪材料が同時に起こる必要はないが、個別の権益喪失はダマンで実際に起きた。長期の構造的な負けとして16%を配分する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
豪州金鉱山群
セント・アイブス、アグニュー、グラニー・スミス、グルイエールの金販売。グルイエールは2025年に完全保有化した。
| 数量金換算販売量(百万オンス、管理ベース) | 価格実現価格(ドル/金換算オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.1 | 3,467 | 37 | 18 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 4,900 | 55 | 20 |
取り方:会社の2025年地域別操業表にある販売量はアグニュー24.37万、セント・アイブス36.96万、グラニー・スミス26.65万、グルイエール18.49万オンス。売上36.917億ドルを販売量106.47万オンスで割った平均実現価格が約3,467ドル。鉱山別の税・ロイヤルティ前利益の豪州合計20.27億ドルを起点に、共通費と連結分類差額を控除した分析用営業利益を17.5億ドルと推定した。グルイエールは2025年9月下旬まで50%持分で、その後100%を連結する。
南アフリカ・サウス・ディープ
長寿命の地下金鉱山。採掘深度、労働生産性、坑道の整備が収益を左右する。
| 数量金換算販売量(百万オンス、管理ベース) | 価格実現価格(ドル/金換算オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.3 | 3,451 | 11 | 5 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 4,900 | 18 | 7 |
取り方:2025年操業表で販売30.88万オンス、地域売上10.659億ドルを確認。税・ロイヤルティ前利益5.83億ドルから本社共通費等を控除して分析用営業利益5.0億ドルとした。2025年のAISCは約1,841ドルで、埋蔵量寿命は約83年だが地下採掘の能力制約を持つ。
ガーナ・タルクワ
政府が10%を保有する大規模露天掘り鉱山。2027年の鉱区更新とロイヤルティ条件が長期利益の重要な分岐点になる。
| 数量金換算販売量(百万オンス、管理ベース) | 価格実現価格(ドル/金換算オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.5 | 3,463 | 16 | 7 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 4,900 | 21 | 6 |
取り方:2025年の販売量47.42万オンス、売上16.426億ドルは会社の鉱山別資料による。税・ロイヤルティ前利益8.67億ドルから共通費等を控除して営業利益7.4億ドルと推定した。2026年上期の生産は19.19万オンスに落ち、AISCは2,671ドルに上昇した。2027年4月の主要5鉱区の更新は未確定として将来数量を分岐させる。
ガーナ・ダマン(移管済み)
2025年には売上があったが、2026年4月18日にガーナ政府へ正式に移管された鉱山。2035年の継続事業には含めない。
| 数量金換算販売量(百万オンス、管理ベース) | 価格実現価格(ドル/金換算オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.1 | 3,438 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 4,900 | 0 | 0 |
取り方:2025年の販売量9.69万オンス、売上3.331億ドル、税・ロイヤルティ前利益0.919億ドルを会社資料から採用した。共通費を控除した営業利益は約0.8億ドル。2026年4月18日に鉱山が政府へ移管されたため、全シナリオで10年後の販売量と利益をゼロとする。
チリ・サラレス・ノルテ
高品位の金・銀鉱山。銀の副産物収入が金換算の費用を引き下げ、近年の利益成長を主導した。
| 数量金・銀の金換算販売量(百万オンス) | 価格金・銀の実効売上(ドル/金換算オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.4 | 3,628 | 14 | 9 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 5,050 | 26 | 13 |
取り方:2025年の販売量39.18万金換算オンス、売上14.214億ドルを会社の鉱山別操業表から取得。税・ロイヤルティ前利益10.17億ドルから共通費等を控除して営業利益8.9億ドルと推定した。銀収入は金換算単価に含む。2026年上期の生産は33.69万金換算オンスに増えたが、長期の品位と鉱山寿命は別途考慮する。
ペルー・セロ・コロナ
金と銅を生産する鉱山。2025年に採掘を終了し、2031年ごろまでの鉱石在庫処理に移行した。
| 数量金・銅の金換算販売量(百万オンス) | 価格金・銅の実効売上(ドル/金換算オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.2 | 3,577 | 6 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 4,900 | 0 | 0 |
取り方:2025年の販売量16.68万金換算オンス、売上5.967億ドルは会社開示。地域の税・ロイヤルティ前利益3.118億ドルから共通費を控除して分析用営業利益2.9億ドルとした。連結の2025年銅売上2.281億ドルは主にこの鉱山に由来する。2035年には現計画の生産が終了しているため全シナリオで売上ゼロとする。
カナダ・ウインドフォール
2024年に完全保有化したケベック州の高品位地下金鉱山開発計画。2025年は建設前で売上ゼロ。
| 数量将来の金販売量(百万オンス) | 価格金の実現価格(ドル/オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 3,496 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 4,900 | 15 | 6 |
取り方:2025年に商業生産はなく売上と営業利益はゼロ。価格3,496ドルは同年の全社平均実現価格を将来販売用の参考指数として示したもので、実際の販売価格ではない。会社は開発後の年産約30万オンスを構想するが、2026年8月時点では環境許可と最終投資決定が未完了であり、2025年実績へ将来売上を加算していない。
リスクと懸念
金の実質価格が下がるリスク
金は中央銀行、投資家、宝飾品需要、実質金利、通貨への信認で価格が動く。2026年上期の実現価格は4,600ドルを超えたが、10月下旬の市場価格は4,000ドル前後まで下がった。採掘費は売値ほど速く下がらない。実質価格が下がれば売上だけでなく営業利益率も縮み、鉱山資産の減損につながる。
タルクワ鉱区更新とガーナの資源政策
2026年4月にダマンの鉱山が政府へ移管された事実は、鉱業権の更新を当然と考えてはいけないことを示す。タルクワでは主要5鉱区と開発協定が2027年4月に期限を迎える。政府は鉱業法やロイヤルティ制度も見直している。更新されても税負担が増える可能性があり、更新に失敗すれば金の生産量と資産価値を同時に失う。
ウインドフォールの許認可と投資回収
カナダのウインドフォールは長期の成長の柱だが、2026年上期時点で環境許可と最終投資決定が未了だった。先住民との協定は進展したものの、許認可、工事費、工程、設備の立ち上げには不確実性が残る。当初の17〜19億ドルという開発費を上回れば、金の生産が始まっても株主の投資利回りは低くなる。
既存鉱山の枯渇と埋蔵量補充
全社の金埋蔵量は年産の約20年分あるが、個々の鉱山寿命は大きく異なる。サウス・ディープは非常に長い一方、アグニューなどは短い。セロ・コロナは既に採掘を終えており、サラレス・ノルテでも高品位部分はいずれ減る。採掘量を維持する探鉱と設備投資が不成功に終われば、利益を配当で返す力も弱まる。
採掘費、労務、安全、電力供給
地下採掘と露天掘りは、労働者の安全、設備の稼働率、岩盤条件、電力、用水、剥土量に左右される。2026年上期の全社AISCは前年同期から13%上昇した。特に豪州の一部鉱山とガーナでは費用が高い。事故や生産停止が起きても維持費と設備投資は直ちに消えず、フリーキャッシュフローへの打撃が大きくなる。
買収の価格と資本配分
オシスコ・マイニングとゴールド・ロードの取得で資産の質と規模は改善したが、買収に払った金額に見合う回収ができるかはこれから決まる。2025年の一時的な会計利益は、投資資金を回収した証拠ではない。金高騰時は鉱山権益の買収価格も高くなる。大型買収や高値での自社株買いが続くと、会社の規模が増えても株主の価値が減る可能性がある。
為替、税制、環境修復の負担
売上は主として米ドル建てでも、費用は豪ドル、南アフリカランド、その他の現地通貨で発生する。金価格が同じでも、現地通貨高によってドル換算費用は上がりうる。政府の税制やロイヤルティの変更、閉山時の修復義務も長期の現金流出につながる。分析上はドル円を150円に固定し、個別国通貨の不確実性は利益率と悲観確率に含めた。
今後の分かれ目
- タルクワの主要鉱区が2027年に更新され、税・ロイヤルティ条件も大幅に悪化しない
- 中立からやや楽観へ近づく。年間40万オンス前後の金生産基盤が残り、鉱山寿命の延長に投資できる。更新条件と政府取り分を確認して、ガーナの数量と利益率を見直す。
- タルクワの鉱区更新が拒否されるか、ロイヤルティ負担が大幅に増える
- やや悲観から悲観側に移る。金価格が高くても主力資産の稼ぐ力が失われるため、営業利益だけでなく税後の鉱区売却価値も下げる。
- ウインドフォールの環境許可と最終投資決定が成立し、建設費を抑えて年産30万オンス規模に達する
- 新規開発の不確実性が減り、中立の生産量を支える。建設費、工期、商業生産開始後のAISCが計画に近いことまで確認できれば、やや楽観の確率を高められる。
- 金の実現価格が物価上昇後も実質で高い水準を維持し、2030年代にも6,000ドルを上回る
- やや楽観または楽観の方向に近づく。ただし採掘費とロイヤルティも増えるので、金価格だけでなく1オンス当たりの費用控除後利益が維持されているかを確かめる。
- 全社AISCが生産量の減少とともに上昇し、金の実質価格も低下する
- 中立の営業利益率を維持できなくなり、やや悲観に近づく。設備の閉鎖が始まれば埋蔵量の減損と修復費を合わせて考え、純利益と正味還元の両方を引き下げる。
- 追加還元枠の実行後も、会社が裁量的投資前FCFの35%配当と適切な自社株買いを継続する
- 10年間の正味還元の信頼性が高まる。ただし買い戻しの価格が本質価値を上回る場合は評価せず、純負債、維持投資、残りの埋蔵量との均衡を確認する。
見ておくもの
- 国際金価格の実質水準、実質金利、中央銀行の金純購入量、金ETFへの資金流出入
- 2026年通期以降の帰属金換算生産量と全社AISC、特に2026年ガイダンス240万〜260万オンスの達成状況
- タルクワの2027年4月の鉱区更新、開発協定、ガーナの新しいロイヤルティ条件
- ウインドフォールの環境承認、最終投資決定、開発費、商業生産開始時期
- サラレス・ノルテの金・銀生産量、品位、AISC、残存埋蔵量
- グルイエールの年40万オンス構想と周辺鉱床開発、豪州既存鉱山の埋蔵量補充
- サウス・ディープの生産性、労使関係、長期の地下採掘費
- 正味還元額、株式報酬や新株発行の影響、純負債と維持投資の推移
- 報告純利益と一時益を除いた利益の差、設備投資後のフリーキャッシュフロー
- 世界の産金市場におけるニューモント、アグニコ・イーグル、バリックとの生産量とAISCの差
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や市場PER、過去のPBRを倍率の出発点にしていない。2025年の地域別販売オンスと実現価格を基礎にし、2035年の鉱山別数量と名目価格、費用構造から営業利益と純利益を積み上げた。会社開示の2025年地域売上合計約87.51億ドルと添付factsの87.8億ドルには約0.3億ドルの差があるが、地域内訳は会社の実際の販売量と実現単価を優先し、全社財務の基準はfactsとした。2025年純利益35.8億ドルにはグルイエール持分再測定益などが含まれるため、将来利益へ機械的に延長しない。資本コストは基本8%とquality1.5%、倍率はRONICによる正当化PERと埋蔵量20年の年金上限の小さい方を使った。中立の8.4倍は年金上限9.43倍の約89%であり、現在の市場倍率との一致を狙ったものではない。各シナリオの自己資本は2025年末84.3億ドルに10年間の純利益累計を加え、希薄化控除後の還元を引いて算出した。悲観の床は将来の帳簿純資産を倍率で膨らませず、税後に回収できる資産と稼ぐ力から確認した。割安・割高の結論は、算出した加重価値と基準時価総額の差による。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の基本8.0%+quality1.5%=9.5%。金鉱山会社ニューモントと同じ資本コストだが、ゴールド・フィールズはチリとカナダの新鉱山に成長余地がある反面、ガーナの鉱区更新リスクを持つ。この相違は数量、利益率、確率に反映した。β、規模、市場のPERは用いない。