結論
ニューモントは世界最大の産金会社で、2026 年のガイダンスは金 526 万オンスと、銅・銀・鉛・亜鉛の副産物を持つ。2025 年の売上 221 億ドル、営業利益 104 億ドル(営業利益率 47%)、純利益 71 億ドル。金価格が 2025 年の年平均から 4 割高の 4,414〜4,661 ドルに乗った 2026 年の上期は、売上 134 億ドル、純利益 55 億ドル、フリーキャッシュフロー 53 億ドルと過去最高を更新した。
バリュー投資の観点では、強みは三つある。Tier 1 の鉱山(年 50 万オンス超・コスト曲線の下半分・鉱山寿命 10 年超・格付けの高い国)への集中、純現金 34 億ドルの財務、60 億ドルの自社株買いの承認(残り 43 億ドル)である。弱みは、金の価格を決める力が全くないこと(産金量は世界の 2〜3%)、利益の大部分が金価格の変化で何倍にも動くこと、そして今の株価が金 1 オンス 4,400 超の水準を恒久とみなしていることである。
数量 × 価格で積み上げると、金の実質価格が 10 年後に 3,800 ドルへ平準化する中立では、純利益は 95 億ドル(2035 年)で、2026 年の約 100 億ドルとほぼ同じに留まる。資本コストは 9.5%、倍率は利益ベースの正当化 PER(堀は弱い・資源を掘り減らすので寿命 20 年の年金で頭を押さえる)の上限の 9 割で 10 年後 約 8.5 倍、10 年で積み上がる純現金(中立で約 210 億ドル)は 1 ドルで足した。中立の 10 年後の時価総額は約 989 億ドルで、配当込みの年率は約 2.4%。確率で加重した価値は今の時価総額 1,263 億ドルの約 0.63 倍で、割高。金が実質で 3 割下がるやや悲観・悲観に 10 年で合計 40% を置き、そこでは時価総額が今の 3 割以下まで下がる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、鉱山会社の本質価値は、掘れば減る資産から取り出せる利益を、枯渇と再投資の費用で割り引いたものとして見る。ニューモントは 10 年後も存在し、鉱山の寿命は 10 年以上あるので事業は続く。ただし堀は広がらない。金は価格を決める力が無く、同じ商品を作る競合が多いので、強いのは低コストの鉱山と純現金にとどまる。
オーナー利益は、純利益から維持投資(2026 年 19.5 億ドル)と開発投資を引いた金額に近い。2025 年は純利益 71 億ドル、FCF 73 億ドルで、2026 年上期の FCF は 53 億ドルに達した。ただしこれは金 4,400〜4,660 ドルの利益で、2023 年は営業利益率 5.5%、2015 年の PBR は 0.82 倍だった。4,400 ドルが続く前提で買うか、2,500〜3,500 ドルへ戻る前提で買うかが分かれ目。中立の平準化(実質 3,800 ドル)でも、資本コスト 9.5% の式(寿命 20 年の年金)の倍率と積み上がる純現金を数えて、価値は今の時価総額の約 63% にとどまる。
資本配分は、非中核の売却・自社株買い・固定配当と整ってきた。一方、PER 17.8 倍・PBR 3.7 倍での自社株買いは、鉱山会社として価値を壊す方向になりうる。予測が難しい価格に依存する事業なので、確信度は低く、確率の読み違いで結論は動きうる。
何で稼ぐ会社か
売上の約 9 割は金である。主な鉱山は、オーストラリアの Cadia(金・銅)と Tanami、パプアニューギニアの Lihir(火山島の大型露天掘り)、西オーストラリアの Boddington(金・銅)、ガーナの Ahafo、メキシコの Peñasquito(金・銀・鉛・亜鉛)、カナダの Red Chris(銅・金)などである。2023 年のニュークレスト買収(約 190 億ドル)で Cadia・Lihir・Telfer を取り込んで年 590 万オンス規模になり、非中核の資産を 2025 年 4 月までに売って Tier 1 に絞った(Akyem を Zijin に 10 億ドル、Porcupine、Telfer と Havieron の 70% を 4.75 億ドル、CC&V を SSR に最大 2.75 億ドルなど)。
2026 年のガイダンスは金 526 万オンス(上期 49%・下期 51%)、銅 10.2 万トン、銀 3,200 万オンス、鉛 9 万トン、亜鉛 22 万トン。副産物の費用控除後の AISC(維持費込みの総費用)は 1,680 ドル/オンス、維持投資 19.5 億ドルと開発投資 14 億ドル、D&A 28 億ドル、税率 33%。上期は Cadia が 4 月の地震で Q2 の産金が 3.4 万オンスまで落ち(Q1 は 9.4 万)、6 月に正常化した。Tanami(Q2 9.0 万)・Ahafo North(6.8 万、増加中)・Lihir(15.7 万、下期にニアショアバリアの工事)が下期の伸びを担う。
収益の構造は、費用の大半が固定的なので金価格の変化が利益を何倍にも増幅する営業レバレッジである。2023 年は金 1,940 ドル前後で営業利益率 5.5%、2025 年は 3,400 ドル前後で 46.9% と、価格が約 1.8 倍になる間に営業利益は 18 倍に増えた。
優良さと弱いところ
優良さの核は、規模と鉱山の質、財務である。世界最大の産金量でも世界の 2〜3% にすぎず、価格を決める力は無い(価格受容者)。強みはコストの位置で、2026 年の AISC 1,680 ドル/オンスは、競合のバリック(2026 年 1,760〜1,950)より低く、世界の主要産金会社の中央値(1,600〜1,750 の推定)とほぼ並ぶ。アグニコ・イーグル(2026 年 330〜350 万オンス)は鉱山が低リスクの国(カナダ・フィンランド・メキシコ)に集まり、1 オンス当たりの利益で最も強いと見られる。規模ではニューモントが上である。
財務は純現金 34 億ドル(現金 90 億・流動性 130 億)、自己資本比率 59%。純現金の目標 10 億ドル(±20 億)を超える分は還元に回す方針で、配当 年 11 億ドルと自社株買いを続ける。2024 年 2 月以降で株数を 9%(1 億株超)減らした。
弱みは三つ。第一に、資源は掘るほど減るので、枯渇を補う新規鉱山と買収(ニュークレストの統合は 2023 年に純損失 25 億ドルを生んだ)への再投資が要る。第二に、ガーナ・メキシコ・パプアニューギニアの許認可・税・労使の資源ナショナリズム。第三に、Cadia の地震のような操業の中断。堀は広くなく、低コストと Tier 1 の鉱山寿命が実質的な堀である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
金は価格を決める力がなく、需給と実質金利で動く。2026 年第 2 四半期の世界の金需要は 1,269 トン(横ばい)、中央銀行の購入は 289 トン(+62%)、ETF は 45 トンの流出と、買い手の主役は中央銀行で、価格は 4,000 ドル台で高止まりしている。ゴールドマンとモルガン・スタンレーは 4,800〜5,200 ドル、ワールド・ゴールド・カウンシルは 4,100 前後のレンジと、予想は割れる(出典の質が低い資料を含む)。
産金量は世界で年 約 3,600 トン(約 1.16 億オンス、推定)で横ばい。新規の大型鉱山の発見が減り、鉱山の品位は低下し、許認可の期間が伸びて、供給は増えにくい。コストは人件費・エネルギー・薬品・ロイヤルティで年 3.5% 以上の上昇が続き、バリックの 2026 年 AISC は 1,760〜1,950 ドルと前年から大きく上がる。価格が実質で動かなくても、費用の上昇が利益率を削る。
競合は、バリック(Nevada Gold Mines・Kibali・Loulo・Pueblo Viejo、2025 年の産金は 17% 減)、アグニコ・イーグル、アングロゴールド・アシャンティ、Zijin(Akyem を取得)、ゴールドフィールズ、キンロスなど。上位でも世界の産金の一部で、価格に影響しない。M&A は鉱山の枯渇を補う手段で、買収の対価が高騰した価格に乗ると価値を壊しやすい。循環の中では、金が 2025〜26 年に過去の実質高値を更新した直後で、鉱山会社の利益は山にいる。
資本政策と M&A
配当は年 11 億ドルを目標とする固定の水準で、残りの余剰キャッシュを自社株買いに回す。自社株買いの承認は 60 億ドル(残り 43 億ドル)で、直近の決算の間に 17 億ドルを買い付け(7 月に 6 億ドル超)、株主還元の合計は 19 億ドルになった。純現金の目標は 10 億ドル(±20 億)、最低現金 50 億ドルで、枠を超える分は還元か投資に回る。
買収の歴史は課題を含む。2019 年のゴールドコープ買収と 2023 年のニュークレスト買収は、ともに規模を大きくしたが、2023 年は純損失 25 億ドルと統合の費用・減損が重く、2025 年に非中核資産を売って整理した。今後の大型 M&A(買う側・買われる側)は、金の価格が高い今は対価も高く、価値を壊すリスクがある。ガバナンスは成熟した米国の大企業の形で、株式報酬による株数の増加は自社株買いで相殺している。自社株買いを割高な株価で行っていないか(今の PBR 3.7 倍は、2015 年の 0.82 倍や 2023 年の 1.20 倍より高い)が、バリュー投資の目で見た最大の論点になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ニューモントは、世界最大の Tier 1 の金鉱山の束で、純現金・費用の低さ・還元の三つを持つ。2026 年は金 4,414〜4,661 ドルに対し AISC 1,680 ドルで、1 オンスの利益が 2,700 ドルを超え、上期だけで FCF 53 億ドルを稼いだ。年 11 億ドルの配当と 60 億ドルの自社株買いが可能で、2024 年から株数を 9% 減らした。
金の需要は、中央銀行の購入(2026 年第 2 四半期 289 トン、前年比 +62%)という構造の買い手に支えられ、ドルの信認、財政の拡大、地政学の不安が続く限り、実質の金価格は過去の水準に戻らない。物価が 3.5% 続く世界では、金は名目で上がり続ける。一方で新規鉱山の発見が減り、供給は増えない。Tanami Expansion 2・Ahafo North・Cadia のパネルケービングで産金量は 2028 年に 550〜570 万オンスへ戻り、副産物の銅の比率も高まる。k は 9.5% と高めに置いたので、利益が名目で維持されるだけでは倍率は寿命 20 年の年金の 9 倍台にとどまる。
慎重な見方
金の価格を決められない会社に、価格が山の年の利益の高い倍率を払うのは危うい。2011 年のピークから 2015 年まで金は 45% 下落し、その期間のニューモントの PBR は 0.82 倍まで落ちた。2023 年は営業利益率 5.5%、純損失 25 億ドルだった。今の営業利益率 47% は、金価格の 4 割高が生んだもので、費用は物価で上がるため、価格が実質で動かなくても利益率は縮む(バリックの AISC は 1,760〜1,950 ドル)。
Cadia の地震(4 月、Q2 の産金が 3.4 万オンス)が示す通り、鉱山の操業は中断が多い。ガーナ・メキシコ・パプアニューギニアの資源ナショナリズムと、ニュークレスト買収の統合の遅れも続く。今の PER 17.8 倍・PBR 3.7 倍は、4,400 ドルの金が恒久という前提を織り込んでおり、金が実質で 1 割下がるだけで利益は 2〜3 割減る。さらに、割高な PBR での自社株買いは、価値を壊す資本配分になりうる。
どちらに重みを置いたか
金の実質価格は今が過去最高圏にあるため、中立の価格は 10 年後で実質 3,800 ドルへ平準化する形に置いた(業界ノートの「営業利益率が 47% から 35〜40% へ縮む」に沿う)。財務と低コストの厚みを突く見方は正しいので、純現金は 1 ドルで数え、悲観の床も稼ぐ力に余った現金を足して置いた。価格受容者であることと費用の上昇を突く見方も正しいので、確率はやや悲観と悲観に合計 40% と厚めに寄せた。資本コストは循環と値決めの弱さを載せて 9.5%、倍率は寿命 20 年の年金の上限の 9 割に置いたので、確率で加重した価値は今の時価総額の約 63% で割高に出る。強気の見方の財務の強さは認めても、この値段に安全域は無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 101.96 ドル1,086 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 53.11 ドル566 億ドル)。 今の値に割り戻すと 74.88 ドル797 億ドル、今との差 −34.4%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 312.61 ドル3,329 億ドル | 84.51 ドル900 億ドル | +248.0% | +13.3% | 31.77 ドル338 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 193.62 ドル2,062 億ドル | 73.24 ドル780 億ドル | +133.9% | +8.9% | 48.04 ドル512 億ドル |
| 中立 | 34% | 92.85 ドル989 億ドル | 58.22 ドル620 億ドル | +32.4% | +2.8% | 51.36 ドル547 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 32.72 ドル349 億ドル | 39.44 ドル420 億ドル | −36.8% | −4.5% | 17.32 ドル184 億ドル |
| 悲観 | 16% | 16.74 ドル178 億ドル | 24.41 ドル260 億ドル | −63.9% | −9.7% | 6.58 ドル70 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 101.96 ドル1,086 億ドル | 53.11 ドル566 億ドル | +35.9% | +3.1% | 155.07 ドル1,652 億ドル |
今の株価時価総額 114.11 ドル1,215 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:金は実質 1.5 倍の 6,600 ドルへ、新しい価格の水準が定着 利益 268 億ドル · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 312.61 ドル3,329 億ドル
2035 年の金価格は名目 9,300 ドル/oz(実質 6,600)。世界の準備資産が金に傾き、投資の需要も続く。産金量は 600 万 oz(Tier 1 の拡張が終わり、Cadia・Red Chris のパネルケービングが銅も押し上げる)。単位コストは高い価格に連動する税・ロイヤルティで 3,150 ドル/oz へ。金の営業利益率は 66%、営業利益 394 億ドル、純利益 268 億ドル(2025 年の 3.8 倍。物価で 1.41 倍になる分を含む)。新しい価格の水準が定着する筋書きなので倍率は ならさず、事業の ROE・g 1%・k 9.5% の式(寿命 20 年の年金の上限)に純現金 約 920 億ドルを足す。還元は 10 年で 900 億ドル。実質で見れば 2026 年の利益を 1 割強上回るだけで、構造の変化を伴わない価格の上振れである。
- 金:数量 6.0(産金量(帰属ベース、百万オンス))× 価格 9,300(実現金価格(ドル/オンス))→ 売上 558 億ドル・営業利益 369 億ドル。産金量×実現金価格(単位コストは名目 3150 ドル/oz)
- 銅:数量 175(銅の生産(千トン))× 価格 21,000(実現銅価格(ドル/トン))→ 売上 37 億ドル・営業利益 15 億ドル。銅の生産×実現価格
- 銀・鉛・亜鉛:数量 30.0(銀の生産(百万オンス))× 価格 150(銀 1 オンス当たりの実効売上(鉛・亜鉛を含む、ドル/オンス))→ 売上 45 億ドル・営業利益 18 億ドル。銀の生産×鉛・亜鉛込みの実効価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 59.0%(純利益 ÷ 自己資本、余った現金を除く)、k 9.50%、堀は弱い(残る割合 0.33)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 26.0%。長期の g 1.0%(先細りの資源は 1% まで) で (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 上限 9.4 倍、寿命 20 年の年金で頭を押さえた値。新しい価格の水準が定着する姿。期末の純現金 924 億ドルは額面どおり足し、寿命 20 年の年金の値は終わりのある利益の価値そのものなので、上限の 10.0 割の 9.4 倍に置いた。純利益は GAAP。
確率:金の実質 1.5 倍は、ドルの信認が構造的に傷み、中央銀行が金を準備資産の主役に据え直す筋書き。起こりうるが、ビットコインなど代替資産もあるので 8%。
やや楽観 18% やや楽観:金は実質 5,200 ドル、鉱山の質の改善で費用が抑えられる 利益 179 億ドル · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 193.62 ドル2,062 億ドル
2035 年の金価格は名目 7,330 ドル(実質 5,200)。産金量は 570 万 oz。Tier 1 の鉱山(Cadia・Lihir・Boddington・Tanami・Ahafo など)の寿命が伸び、コストは 3,000 ドル/oz に収まる。副産物は銅 16.5 万トン・銀 2,900 万オンス。金の営業利益率は 59%、営業利益は 263 億ドル、純利益 179 億ドルと 2025 年の 2.5 倍(物価で 1.41 倍になる分を含む)。倍率は式(寿命 20 年の年金の上限)に純現金 約 520 億ドルを足し、時価総額は約 2,062 億ドル。バリュー投資の目には、計画と価格の両方が小さく上振れする筋書き。還元は 10 年で 780 億ドル。
- 金:数量 5.7(産金量(帰属ベース、百万オンス))× 価格 7,330(実現金価格(ドル/オンス))→ 売上 418 億ドル・営業利益 247 億ドル。産金量×実現金価格(単位コストは名目 3000 ドル/oz)
- 銅:数量 165(銅の生産(千トン))× 価格 18,500(実現銅価格(ドル/トン))→ 売上 31 億ドル・営業利益 11 億ドル。銅の生産×実現価格
- 銀・鉛・亜鉛:数量 29.0(銀の生産(百万オンス))× 価格 135(銀 1 オンス当たりの実効売上(鉛・亜鉛を含む、ドル/オンス))→ 売上 39 億ドル・営業利益 13 億ドル。銀の生産×鉛・亜鉛込みの実効価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 39.7%(純利益 ÷ 自己資本、余った現金を除く)、k 9.50%、堀は弱い(残る割合 0.33)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 19.6%。長期の g 1.0%(先細りの資源は 1% まで) で (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 上限 9.4 倍、寿命 20 年の年金で頭を押さえた値。価格が今より 2 割高い姿。期末の純現金 524 億ドルは額面どおり足し、寿命 20 年の年金の値は終わりのある利益の価値そのものなので、上限の 9.5 割の 9.0 倍に置いた。純利益は GAAP。
確率:実質 5,200 ドルは今より 2 割高い水準。中央銀行の買いが 10 年続き、実質金利が下がる局面があれば届く。18%。
中立 34% 中立:金は実質 3,800 ドルまで平準化し、ROE は 14% 利益 95 億ドル · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 92.85 ドル989 億ドル
2035 年の金価格は名目 5,400 ドル/oz(実質 3,800。今の 4,400 から名目で 1.23 倍にとどまり、物価の 1.41 倍より 13% 下)。産金量は 540 万 oz で、新規鉱山が枯渇を打ち消して 2026 年の 526 万 oz とほぼ同じ。単位コストは物価で 1.41 倍になる所に品位低下の実質 5% が乗り 2,950 ドル/oz。金の営業利益率は 45%(2025 年の 51% から縮む。業界ノートの 35〜40% より高いのは、中立の価格をならした水準より高く置いたため)。営業利益は 141 億ドル、純利益 95 億ドル。価格の実質低下と費用の上昇で、利益は 2026 年の水準とほぼ同じ。倍率は事業の ROE・g 1%・k 9.5% の式(寿命 20 年の年金の上限)に純現金 約 210 億ドルを足し、時価総額は約 989 億ドル。還元は 10 年で 620 億ドル。
- 金:数量 5.4(産金量(帰属ベース、百万オンス))× 価格 5,400(実現金価格(ドル/オンス))→ 売上 292 億ドル・営業利益 132 億ドル。産金量×実現金価格(単位コストは名目 2950 ドル/oz)
- 銅:数量 150(銅の生産(千トン))× 価格 15,500(実現銅価格(ドル/トン))→ 売上 23 億ドル・営業利益 7 億ドル。銅の生産×実現価格
- 銀・鉛・亜鉛:数量 28.0(銀の生産(百万オンス))× 価格 120(銀 1 オンス当たりの実効売上(鉛・亜鉛を含む、ドル/オンス))→ 売上 34 億ドル・営業利益 9 億ドル。銀の生産×鉛・亜鉛込みの実効価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 21.3%(純利益 ÷ 自己資本、余った現金を除く)、k 9.50%、堀は弱い(残る割合 0.33)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 13.4%。長期の g 1.0%(先細りの資源は 1% まで) で (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 上限 9.4 倍、寿命 20 年の年金で頭を押さえた値。期末の純現金 208 億ドルは額面どおり足し、寿命 20 年の年金の値は終わりのある利益の価値そのもので、価格の振れは k の循環で入れてあるので、上限の 9.0 割の 8.5 倍に置いた。純利益は GAAP。
確率:実質価格が今の高値から 1 割下で落ち着くのが 10 年の最も自然な中心と考えた。過去 40 年の実質の平均を大きく上回る水準で、下げ幅は小さく置いている。確率は最も厚く 34%。
やや悲観 24% やや悲観:金は実質 3,000 ドルへ、費用の上昇が利益を削る 利益 44 億ドル · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 32.72 ドル349 億ドル
2035 年の金価格は名目 4,230 ドル(実質 3,000)。高い金価格に誘われた新規供給とリサイクルが増え、中央銀行の買いが頭打ちになる。産金量は 500 万 oz へ減り(高コストの鉱山は閉める)、単位コストは 2,900 ドル/oz。金の営業利益率は 31%、営業利益 66 億ドル、純利益 44 億ドルと 2025 年の 6 割。ROE は 7% で k を割る。それでも純現金と低い費用の Tier 1 の鉱山は持ちこたえ、配当は維持する。時価総額は(純利益 − 余った現金の利息)× PER + 余った現金(今の 4 分の 3)で測る。還元は 10 年で 420 億ドル。
- 金:数量 5.0(産金量(帰属ベース、百万オンス))× 価格 4,230(実現金価格(ドル/オンス))→ 売上 212 億ドル・営業利益 66 億ドル。産金量×実現金価格(単位コストは名目 2900 ドル/oz)
- 銅:数量 140(銅の生産(千トン))× 価格 12,000(実現銅価格(ドル/トン))→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。銅の生産×実現価格
- 銀・鉛・亜鉛:数量 26.0(銀の生産(百万オンス))× 価格 95(銀 1 オンス当たりの実効売上(鉛・亜鉛を含む、ドル/オンス))→ 売上 25 億ドル・営業利益 4 億ドル。銀の生産×鉛・亜鉛込みの実効価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 10.2%(純利益 ÷ 自己資本、余った現金を除く)、k 9.50%、堀は弱い(残る割合 0.33)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 9.7%。長期の g 1.0%(先細りの資源は 1% まで) で (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 上限 9.4 倍、寿命 20 年の年金で頭を押さえた値。ROE が k に届かず資源を掘り減らす姿で、年金の値を割り引き過ぎず、上限の 8.0 割の 7.5 倍に置いた。純利益は GAAP。
確率:実質 3,000 ドルは今より 3 割安いが、2011 年のピークの実質 2,800 ドルに近く、過去の高値圏の下限。10 年という長さでは起こりやすいので 24%。
悲観 16% 悲観:実質 2,640 ドル(0.6 倍)に張り付く構造の負け 利益 19 億ドル · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 16.74 ドル178 億ドル
2035 年の金価格は名目 3,720 ドル(実質 2,640)。コストは品位低下で 3,000 ドル/oz へ上がり、金の営業利益率は 19%。Cadia・ペニャスキートなど高コストの鉱山は閉山か縮小になり、産金量は 460 万 oz。営業利益 26 億ドル、純利益 19 億ドル(ROE 5%)。もう優良な金の鉱山会社ではなく、費用に追われる資源会社になる。稼ぐ力(純利益 19 億ドル × 寿命 20 年の年金の倍率)に余った現金(今の半分)を足して測る。還元は 10 年で 260 億ドル。 10 年の純利益の累計は約 368 億ドル(2025 年の 70.8 億ドルから 2035 年の 19 億ドルへ下がる)に、減損 60 億ドルを引いて約 308 億ドル。自己資本は今の 339 億ドルにこの 308 億ドルを足し、還元 260 億ドルを引いた約 387 億ドル。
- 金:数量 4.6(産金量(帰属ベース、百万オンス))× 価格 3,720(実現金価格(ドル/オンス))→ 売上 171 億ドル・営業利益 33 億ドル。産金量×実現金価格(単位コストは名目 3000 ドル/oz)
- 銅:数量 125(銅の生産(千トン))× 価格 9,500(実現銅価格(ドル/トン))→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。銅の生産×実現価格
- 銀・鉛・亜鉛:数量 24.0(銀の生産(百万オンス))× 価格 75(銀 1 オンス当たりの実効売上(鉛・亜鉛を含む、ドル/オンス))→ 売上 18 億ドル・営業利益 0 億ドル。銀の生産×鉛・亜鉛込みの実効価格
倍率:事業の ROE 5.0% が k 9.50% 以下なので、ためた利益の価値は額面未満で PER は 1÷k = 8.8 倍まで。構造的に負けた筋書きで、稼ぐ力(寿命 20 年の年金)の値まで、上限の 10.0 割の 8.8 倍に置いた。純利益は GAAP。
確率:代替資産(ビットコイン等)への資金の移動と、中央銀行の買いの頭打ち、新規の増産が重なれば金は実質 0.6 倍に落ちる。ニューモントは費用が高い鉱山を多く持つので、他社より打撃が大きい。16%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
金
ニューモントの収益の約 9 割を占める。Cadia・Lihir・Boddington・Tanami・Ahafo・Peñasquito などの Tier 1 鉱山。
| 数量産金量(帰属ベース、百万オンス) | 価格実現金価格(ドル/オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.9 | 3,260 | 192 | 98 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 5,400 | 292 | 132 |
取り方:2025 年の産金量は約 590 万オンス(ガイダンスの 590 万。推定)。実現価格は、年の合計の売上から副産物を引いて逆算した約 3,260 ドル(連結と帰属のずれを含む。推定)。営業利益は全体の 104 億ドルを副産物の分を引いて配分した。2026 年上期は実現価格が 4,661 ドル/oz と 4 割高い。
銅
Cadia・Red Chris・Boddington・Lihir の副産物。
| 数量銅の生産(千トン) | 価格実現銅価格(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 130 | 9,800 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 150 | 15,500 | 23 | 7 |
取り方:2025 年の銅の生産は約 13 万トン(推定。2026 年ガイダンスは 10.2 万トンで、Cadia の地震と鉱山の順番で減る)。実現価格は LME の 1 万ドル前後。rev_factor 0.00001 は 千トン×ドル/トン = 千ドルを億ドルへ直した値。
銀・鉛・亜鉛
Peñasquito などから出る副産物。
| 数量銀の生産(百万オンス) | 価格銀 1 オンス当たりの実効売上(鉛・亜鉛を含む、ドル/オンス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28.0 | 57 | 16 | 3 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 120 | 34 | 9 |
取り方:2025 年の銀は約 2,800 万オンス(推定。2026 年ガイダンスは 3,200 万オンス・鉛 9 万トン・亜鉛 22 万トン)。鉛と亜鉛の売上を銀の量で割って実効価格(約 57 ドル/oz)とした。売上の合計 221 億ドルに合わせた。
リスクと懸念
金価格の実質の下落と費用の上昇
2011〜15 年は金が 45% 下がり、2023 年のニューモントは営業利益率 5.5% だった。今の 4,400 ドルは過去の実質高値圏で、実質金利の上昇・ドル高・中央銀行の買いの鈍化のどれでも下がる。コストは物価で上がるので、価格が動かなくても利益率は縮む。
鉱山の操業と地震・事故
2026 年 4 月の Cadia の地震で Q2 の産金は 3.4 万オンス(Q1 は 9.4 万)に落ちた。パネルケービングの開発費は下期へ繰り延べた。Lihir・Tanami・Ahafo でも工事の遅れやコストの超過がありうる。
資源ナショナリズムと税
ガーナ(Ahafo)・メキシコ(Peñasquito)・パプアニューギニア(Lihir)で、ロイヤルティ・税・許認可・労使の条件が変わりうる。金の高値は政府の取り分の引き上げを呼びやすい(2026 年の税率ガイダンスは 33%)。
枯渇と再投資・買収の失敗
鉱山は掘るほど減るので、産金量を保つには年 33 億ドル(維持 19.5 億・開発 14 億)の投資と探鉱 5 億ドルが要る。大型 M&A は金の高値で買収対価が高く、ニュークレストの統合が 2023 年の純損失につながったような前例がある。
割高な自社株買い
今の PBR 3.7 倍・PER 17.8 倍で買い戻す自社株は、中立の筋書きの価値を上回る可能性がある。60 億ドルの承認のうち 43 億ドルが残り、金価格の山の年に買えば価値を壊す。2015 年の PBR は 0.82 倍で、同じ金額でも底で買う方が株主に得になる。
代替資産・需要の構造変化
ビットコインなど代替資産への資金の移動、金の ETF の流出(第 2 四半期は 45 トン)、中央銀行の買いの頭打ち、高い価格に誘われた新規の供給とリサイクルの増加は、金の価格を実質 0.6 倍に押し下げる悲観の筋書きである。ニューモントは費用の高い鉱山を含むので、価格の下落が利益を何倍にも削る。
副産物(銅・銀)の価格
銅 10 万トン・銀 3,200 万オンス・鉛・亜鉛の価格は景気で動く。AISC は副産物の売上を費用から引いて計算するので、景気後退で金と同時に副産物の価格が落ちると、控除が減って AISC が悪化し、金の下落の打撃が二重になる。
今後の分かれ目
- 金が実質で 3,400 ドルまで下がり、3 年のうちに 2013 年型の調整が起きる
- やや悲観に移る。営業利益率は 42% へ縮み、自社株買いを年 25 億ドルに減らす。倍率も 15 倍へ下がる。
- 金が実質 5,000 ドルを超えて定着する(中央銀行の買いが 10 年続く)
- やや楽観〜楽観に移る。ただし費用(ロイヤルティ・人件費)も上がるので、利益の増え方は価格の増え方より小さい。
- Cadia・Tanami・Ahafo North が 2028 年までに計画どおり稼働し、産金量が 570 万オンスを超える
- やや楽観に近づき、中立の利益が 1 割増える。10 年の中立の確率を下げ、やや楽観を上げる。
- ニューモントが金の高値で大型の買収をし、株を発行する
- 買収対価が高く、価値を壊した前例があるので、確率を悲観側に寄せる。時価総額の価値は薄まる。
- ガーナ・メキシコ・パプアニューギニアで税・ロイヤルティが大きく引き上げられる
- 税率が 33% から 40% 近くへ上がり、中立の純利益が 1 割減る。
- 自社株買いが PBR 3 倍以上で続き、株数が減るのに価値が減る
- オーナーへの還元の質が下がる。時価総額の割高さを確認するまで還元を割り引く。
見ておくもの
- 金の実質価格(実質金利・ドル・中央銀行の購入量・ETF の流出入)
- 2026 年第 3 四半期以降の決算(産金量・AISC・Cadia の回復・Lihir のニアショアバリア工事)
- Tanami Expansion 2・Ahafo North・Cadia パネルケービングの稼働と 2027〜28 年のガイダンス
- 自社株買いの買い付け価格(PBR)と純現金(目標 10 億ドル)
- ガーナ・メキシコ・パプアニューギニアの税・ロイヤルティ
- バリック・アグニコ・イーグルとの 1 オンス当たりの利益の差(AISC)
倍率と資本コストの決め方
今の PER 17.8 倍・PBR 3.7 倍と金 4,400 ドルは見ずに、金・銅・銀の 3 つの数量×価格で積み上げた。金は今の実質高値から 10 年後で 14% 実質で下がる中立とし、費用は物価に加え品位低下で実質 5% 上げた。倍率は k 9.5%・g 1%(鉱山の枯渇で実質は伸びない)・純現金とのれんを除いた事業の ROE の式を、埋蔵量の寿命 20 年の年金で頭を押さえた上限の 9 割(中立は 8.5 倍)に置き、積み上がる純現金は 1 ドルで足した。商品の鉱山であることは、価格の筋書き(中立でも実質 14% 下落)と確率(10 年の悲観側 40%)で表した。悲観側は稼ぐ力(純利益 × 年金の倍率)に余った現金を足して二重に下げていない。割高・割安に寄せる調整はしていない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β 0.69 × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.5% = 9.5%。金価格で営業利益率が 5% から 47% まで振れるので循環に +1.0%、価格は市場に決められるので値決めに +0.5%。純現金で借金は 0、主力の鉱山は寿命が 10 年を超え埋蔵量は年産の約 20 年分あるので寿命は 0。価格の振れの深さは筋書き(金価格の幅)と確率(やや悲観・悲観に 40%)で表し、k には二重に入れていない。上乗せは 0。