結論
グラフテック・インターナショナルは、鉄スクラップを溶かして鉄鋼を造る電炉に不可欠な黒鉛電極の世界的大手である。筆者の結論は割高だ。製品の需要が10年後も残ることと、現在の普通株主が十分な利益を受け取れることは別問題だからである。
2025年の売上高は約5.0億ドルだった。かつては高い電極価格と長期契約によって大きな利益を上げたが、契約満了と中国を中心とする供給過剰で収益が崩れた。2023年から3期連続で最終赤字となり、2025年末の自己資本は約マイナス2.6億ドルである。さらに2026年9月末の純負債は約10.9億ドルに達した。時価総額より借金の方がはるかに大きく、普通株は電極価格の回復に大きく依存する残余請求権となっている。
2026年10月23日発表の7〜9月期も約0.47億ドルの最終赤字だった。ただし販売価格の改善が始まり、会社は2027年に実現単価が大きく上昇すると見込む。メキシコ工場を閉鎖し、2028年から年間約0.20〜0.25億ドルの現金費用削減を狙う点も前進である。一方、閉鎖後の生産能力は年間12.7万トンに縮むため、需要拡大の恩恵を数量で取り込む余地は小さくなる。
10年後の価値を決めるのは、電炉鋼の成長そのものではなく、価格回復の持続性、2029年の借換え、既存株主の希薄化である。5つの筋書きを合わせた現在価値は約1.39億ドルとなり、台帳上の時価総額約2.21億ドルを約37%下回る。事業再生が成功すれば大幅な上昇余地があるが、その成功を長期保有の標準的な前提にするには財務の安全域が足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、製品の必要性と株式の安全性を厳密に分けたい。黒鉛電極は電炉鋼の製造に欠かせない消耗品であり、10年後も十分な市場が存在するだろう。グラフテックの製造技術とニードルコークスの一貫生産にも価値がある。だが、製品に代替がないことは、供給者が好きな価格を付けられることを意味しない。複数の競合から調達できれば、顧客は価格を厳しく比較する。
長期株主にとっての最大の問題は、元手を誰が出し、稼いだ現金を誰が受け取るかである。2025年末の純負債は約9.6億ドル、2026年9月末には約10.9億ドルに増えた。電極価格が回復しても、最初に増えた現金を受け取るのは利息と元本返済を求める債権者である。2029年の借換え条件が悪ければ、新株発行による希薄化や債務の株式化が起きうる。会社の事業価値が残っても、従来の株主に十分な取り分が残らない場合がある。
オーナー利益は会計上の利益より厳しく見る。年間約0.35億ドルの設備投資に加え、製造途中の在庫に多額の資金が必要である。黒鉛電極は生産に時間がかかり、売上が伸びる局面でも運転資金が先に増える。費用削減を進めても、営業利益と利息の差が薄い間は自由に使える現金は乏しい。過去の高利益期の現金創出力を、今のオーナー利益とみなすことはできない。
良い投資先になる条件は明確である。販売単価が実際に上昇し、稼働率が高まり、2029年の借換えを大幅な希薄化なしに越え、純負債が継続して減ることである。その証拠がそろえば、同じ設備でも資本効率は大きく変わる。しかし現段階では、成功時の上振れは大きくても失敗時の取り分がほとんどない。長期に安心して保有できる事業というより、負債を抱えた市況回復への賭けに近い。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、超高出力の黒鉛電極である。電炉では電極に大電流を通してアークを発生させ、鉄スクラップなどを溶かす。電極は操業中に消耗するため、顧客の生産量に応じて繰り返し購入される。電炉による製鋼では、平均して鉄鋼1トン当たり約1.7キログラムの黒鉛電極が使われる。品質が悪ければ折損や炉の停止につながるため、電極の性能と安定供給には経済的価値がある。
2025年の黒鉛電極売上は約4.61億ドルで、全社売上の約91%を占めた。販売数量は約10.9万トン、会社が開示した年間平均実現単価は約4100ドル毎トンだった。売上から逆算した製品群全体の単価は約4218ドル毎トンとなり、開示単価との差には製品構成や関連品の影響がある。顧客の大部分は電炉鉄鋼メーカーで、2025年の電極販売量の約96%が電炉製鋼向けだった。米州と欧州・中東・アフリカが主力市場である。
競争上の特徴は、原材料である石油系ニードルコークスを自社生産する点にある。テキサス州シードリフト工場の年産能力は約14万トンで、中国を除く世界の石油系ニードルコークス能力の約19%に当たる。その大部分を自社電極の製造に使い、外部調達価格が急騰した場合にも供給を守れる。工程副産物や外部向けニードルコークスなどの売上は2025年に約0.43億ドルだったが、個別の数量と単価は開示されていない。
電極の製造には原料の成形、焼成、含浸、黒鉛化、加工という長い工程が必要で、一般的な製品でも完成まで約6か月かかる。会社はフランスのカレー、スペインのパンプローナ、メキシコのモンテレイを主要生産拠点としてきた。2027年にモンテレイの生産を終え、接続用のピン製造をパンプローナに集約する計画である。これにより設備稼働率と固定費は改善するが、電極の生産能力も約29%減る。
2026年9月には米国の熱電池企業アントラ・エナジーと炭素材料の共同開発・供給で提携した。これは遊休設備と炭素材料技術を新用途へ転用する試みである。ただし売上目標や確定した大量受注額は開示されておらず、現段階で電極事業に代わる大きな利益源とはみなさない。
優良さと弱いところ
事業には一定の参入障壁があるが、強い値決め力を持つ独占的な企業ではない。黒鉛電極の製造には高度な熱処理設備、長い製造期間、品質管理、製鋼炉に合わせた技術支援が必要である。顧客は電極の不良によって操業が止まることを嫌うため、認定済みの供給者を簡単には入れ替えない。グラフテックは約140年の炭素材料技術と、顧客の炉の操業を支援する仕組みを持つ。
しかし、これらの強みは価格競争を止められなかった。黒鉛電極の平均実現単価は2024年から2025年に約13%下がり、2026年7〜9月期も前年同期比で約7%低下した。2026年3月には地域に応じてトン当たり600〜1200ドルの値上げを通知し、9月には新規交渉分について最低30%の値上げを表明した。それでも同年7〜9月期の実現単価は約3900ドルにとどまった。値上げの通知と顧客が実際に支払う価格は分けて評価する必要がある。
原料一貫生産は供給安定性という堀になる一方、需要が弱い局面では設備を維持する固定費の負担にもなる。2025年の設備稼働率は63%で、2026年7〜9月期も64%だった。インドのHEGは大型設備を高稼働で運営し、中国のメーカーは価格で攻める。品質の優位があっても、顧客が受け入れる価格差には限界がある。
資本効率にも注意が必要だ。2018〜2022年の高利益は長期契約と市況の高値に支えられたもので、現在の事業が同じ利益を再現できる証拠ではない。過去の巨額還元とその後の赤字で自己資本はマイナスになり、帳簿上のROEは使いにくい。増分投資の利回りも、価格が十分に回復しなければ資本コストを下回る。堀は技術面では残るが、価格面では弱まっていると判断する。
AIエージェント代替の対象となる人月サービスや席課金ソフトは主要事業にない。AIは製鋼炉の操業改善や電極消費量の低減を通じて間接的に需要へ影響しうるが、人の事務作業を置き換えるリスクをそのまま当てはめる事業ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
黒鉛電極の長期需要には追い風がある。電炉製鋼は高炉・転炉製鋼と比べて設備を柔軟に運用しやすく、鉄スクラップを再利用できる。脱炭素化と電力供給の改善により、電炉の設備比率は長期的に上がる可能性が高い。グラフテックの開示によれば、中国を除く世界の電炉鋼生産は2015〜2024年に年率2〜3%成長した。会社は2025年時点の中国を除く超高出力電極需要を年間約65万トンと推定し、2030年まで約3%の需要成長を見込んでいる。
ただし需要増加が直ちに価格上昇につながるわけではない。2025年末の中国を除く電極生産能力は約77.1万トンで、グラフテックは約17.8万トン、能力シェア約23%を持っていた。レゾナック、HEG、グラファイト・インディア、東海カーボンと合わせた上位5社の能力シェアは約75%である。さらに中国には超高出力品だけで約80万トンの能力があると会社は推定している。中国製品の品質には幅があるが、輸出品は中国以外の需要の相当部分を満たしている。
競争の姿は企業ごとに異なる。HEGは約10万トンの能力を持ち、高い稼働率と低い生産費用で攻める。レゾナックは黒鉛事業の2025年売上が落ち、営業損失が拡大した。東海カーボンは製造拠点の集約で収益改善を進めている。グラフテックも設備縮小を選んだため、世界の供給能力は再編されつつある。ただし競合の閉鎖が電極価格の恒久的な回復につながるかは、中国の輸出とインド企業の増産で決まる。
ここで同じ素材業でも塗料や水処理材料とは区別すべきである。塗料大手はブランドや販売網で価格を守れるが、黒鉛電極は顧客の製鋼コストと競争入札に左右される。2025年の低い価格をそのまま10年先に延ばすのも、2018年の高値を当然のように復活させるのも誤りだ。中立では実質価格の部分回復を見込むものの、価格支配力が十分に戻るとは考えない。
2027年以降の焦点は供給削減と需要成長の時間差である。会社自身の閉鎖後能力は約12.7万トンとなる。市場が年間2〜3%成長しても、そのすべてを販売数量で取ることはできない。長期の価値は、限られた設備を高い稼働率で使い、利益を残せる価格で契約できるかにかかっている。
資本政策と M&A
資本配分の過去には大きな問題がある。2018年の配当は約15.4億ドル、自社株買いは約2.2億ドルに達した。当時の巨額利益を背景に株主へ資金を戻したが、その後の市況悪化で借金の負担が重く残った。2019年にも約3.6億ドルを配当と買い戻しに使った。市況の山での還元と負債の増加は、後年の財務の柔軟性を損なった。単純に過去の還元額を現在の株主価値に足すことはできない。
2024年には債務の借換えと資金調達を行い、2026年6月には追加の第一順位担保付融資1億ドルを引き出した。2026年9月末の総負債は約12.25億ドルで、主要債務は2029年12月に満期を迎える。9.875%の社債や約9.8%の実効金利を持つ融資もあり、利払いが営業利益を圧迫している。2026年1〜9月の利息費用は約0.74億ドルだった。借金の返済期限が近づくほど、債権者の交渉力が強くなる。
現在の還元方針は事実上、防衛的なものだ。2026年1〜9月に自社株買いは実施していない。承認済みの買戻し枠は約0.99億ドル残るが、実行額の約束ではない。一方、株式の市場売出しによる最大約0.5億ドルの調達枠があり、2026年9月末までに約0.055億ドルを調達した。株主への資金還元より、事業の存続資金確保が優先されている。
モンテレイ工場閉鎖は、年間約0.20〜0.25億ドルの現金費用削減と運転資金の解放を狙う。短期の閉鎖費用も約0.20〜0.25億ドル必要である。会社は2026年の設備投資を約0.35億ドルと見込み、売上数量は前年から5〜10%増えると予想する。一方、長期の利益目標や配当再開額について数字の約束はない。
2026年10月23日時点で、買収や非公開化の合意、上場廃止予定、継続企業の前提に重要な疑義がある旨の注記は確認されなかった。ただし同社が今後12か月の流動性を確保できると説明していることは、2029年の借換え成功を保証しない。普通株主には債務再編と増資の条件が決定的に重要となる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
黒鉛電極の需要は世界の電炉化によって着実に増える。高炉から電炉への移行は10年単位の設備更新を伴うため、一時的な景気低迷では消えない。黒鉛電極は必ず消耗し、品質の悪い電極は炉の停止や生産効率の低下を招く。技術と供給実績のある大手は、業界の再編が進めば価格交渉力を取り戻せる。中国を除く上位5社の生産能力が市場の大きな部分を占め、各社が赤字設備を閉鎖していることは、その可能性を高める。
グラフテック自身も供給削減を進めている。メキシコ工場の閉鎖で年間の現金費用を削減し、フランスとスペインの大型設備へ生産を集約する。2026年9月に公表した最低30%の値上げは、価格の低さを是正しようとする明確な行動だ。2026年7〜9月期には以前より高い価格で顧客の発注を獲得し始め、会社は翌年の実現単価改善に自信を示している。この流れが続けば、販売数量を大きく増やさなくても営業利益は急速に回復する。
さらに、シードリフトの石油系ニードルコークス事業は競合が簡単に再現できない。電極向けの安定供給だけでなく、合成黒鉛を使う電池材料や熱電池向けの需要を取り込める。アントラ・エナジーとの提携はその一歩である。世界的な炭素材料需要の拡大によって、これまで十分に使われなかった設備と技術の価値が上がる余地がある。
市場の好転が2029年の借換えに間に合えば、借金の再調達条件は改善しうる。営業利益が大きく回復すれば、毎年の現金創出によって負債を減らし、普通株主の利益を急速に増やせる。現在の時価総額は小さいため、利益回復が数億ドル規模になれば株式価値の上昇幅は大きい。これは値決め力を完全に失った会社ではなく、需要と供給の循環で一時的に収益が壊れた会社だという見方である。
慎重な見方
最大の問題は、業界の好転を待つ時間を財務が許すかである。2023年から赤字が続き、2026年1〜9月も約1.31億ドルの最終赤字だった。2026年9月末の現金は約1.34億ドルで、借金は約12.25億ドルに達する。融資枠を含めた流動性は約2.42億ドルあるが、融資枠には財務制限がある。赤字と在庫への資金流出が続けば、2029年の借換え時点で普通株主に有利な交渉を行う余裕は乏しい。
需要増加だけでは価格を守れないことも実績が示している。電炉鋼の長期需要は伸びてきたにもかかわらず、電極価格は2023年以降大きく下がった。中国のメーカーは供給能力が大きく、インドのHEGやグラファイト・インディアも輸出で競争する。レゾナックや東海カーボンまで設備再編を進めるほど、業界全体の採算は厳しい。各社が閉鎖した設備も、価格が上がれば再稼働や代替設備への投資を誘発する。
2026年の値上げは、通知された額がそのまま全製品に適用されたわけではない。既存契約には時間差があり、新たな価格交渉でも顧客は競合製品を比較する。値上げを優先すれば受注量を失う恐れがある。逆に数量維持を優先すれば、原材料と人件費の上昇を十分に転嫁できない。工場閉鎖による費用削減にも限界があり、生産能力が12.7万トンへ減ることで、価格回復時の数量面の上振れも狭くなる。
最も深刻なのは普通株主の取り分である。債権者は担保や優先順位によって保護されるが、普通株主は最後に残った価値しか受け取れない。借換えのための増資、債務の株式化、あるいは法的再建が起きれば、事業が存続しても既存株主の経済価値は大きく損なわれる。技術や設備が残ることを理由に、マイナスの自己資本を資産価値の床として扱うことはできない。
どちらに重みを置いたか
製品の寿命については前向きな見方が強い。電炉の操業に黒鉛電極は不可欠であり、技術力と原料一貫生産にも価値がある。しかし株主価値の持続性では慎重な見方が勝る。2029年の借換えが近く、価格回復の実績はまだ短い。閉鎖後の能力制約も大きい。そこで楽観とやや楽観を合計21%、中立を27%、やや悲観と悲観を合計52%とした。悲観側を厚くした主な理由は、製品需要の消滅ではなく、回復前に債権者や新規出資者へ価値が移る危険である。資本コストと将来価値を計算すると現在価値は約1.39億ドルとなり、時価総額約2.21億ドルに対して約37%の不足となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 16.44 ドル4 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 −0.35 ドル0 億ドル)。 今の値に割り戻すと 5.33 ドル1 億ドル、今との差 −55.2%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 11.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 106.98 ドル28 億ドル | 3.46 ドル1 億ドル | +828.1% | +25.8% | 6.63 ドル2 億ドル |
| やや楽観 | 15% | 41.76 ドル11 億ドル | −0.38 ドル0 億ドル | +247.7% | +13.2% | 6.21 ドル2 億ドル |
| 中立 | 27% | 12.54 ドル3 億ドル | −1.15 ドル0 億ドル | −4.3% | −0.4% | 3.07 ドル1 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 1.31 ドル0 億ドル | −0.77 ドル0 億ドル | −95.5% | −21.4% | 0.13 ドル0 億ドル |
| 悲観 | 28% | 0.21 ドル0 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −98.2% | −33.2% | 0.06 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 16.44 ドル4 億ドル | −0.35 ドル0 億ドル | +35.2% | +3.0% | 16.09 ドル4 億ドル |
今の株価時価総額 11.90 ドル3 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 6% 楽観:価格正常化と電池材料への展開で大幅な利益回復 利益 3 億ドル · PER 9.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 106.98 ドル28 億ドル
2035年には電炉鋼への転換が進み、中国を除く超高出力電極市場は年間約92万トンへ拡大する。中国の輸出品が高性能用途で制約を受け、レゾナックや東海カーボンなどの能力再編が進んだ結果、価格競争は落ち着く。グラフテックは中核設備を高稼働で運営し、米国の遊休設備の一部を必要な設備投資とともに再稼働する。年間販売量は約15.3万トンとなり、市場シェアは約16.6%を維持する。
黒鉛電極の実現単価は約1万750ドル毎トンまで回復する。これは物価上昇だけでなく、高性能品の構成比向上と供給能力の引き締まりを伴う。ニードルコークスの外販と熱電池向け炭素材料も伸びるが、利益の中心は引き続き電極である。営業利益は約4.71億ドル、最終利益は約3.06億ドルとなる。過去の市況の山のような営業利益率50%台は繰り返さず、固定費削減後の採算改善を利益の源泉とする。
2029年の借換えは営業回復を背景に成立し、以後は借金を減らす。2026年の赤字と再稼働投資を含めても10年間のGAAP純利益累計は約12.4億ドルとなり、正味還元約0.9億ドルを差し引いた自己資本は約8.9億ドルに回復する。既存事業の強みが再評価される一方、将来の成長投資にはなお多額の資本が必要であり、強い独占企業としての評価は与えない。
- 黒鉛電極:数量 153(黒鉛電極の販売数量(千メートルトン))× 価格 0.11(販売千トン当たり売上(億ドル)。会社開示の実現単価を製品群売上に合わせて換算)→ 売上 16 億ドル・営業利益 5 億ドル。中国を除く需要約920千トン×数量シェア16.6%。価格は2025年の製品群換算価格の約2.55倍。閉鎖後の能力127千トンを超える約26千トンは、遊休設備の再稼働と設備投資が実現した場合のみ可能。
- 石油系ニードルコークス外販・工程副産物・その他炭素材料:数量 28.0(外販品のニードルコークス換算数量(千トン相当、推定。実際の出荷トン数ではない))× 価格 0.04(換算出荷千トン当たり売上(億ドル、推定))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。外販換算28千トン相当。電池材料・熱電池向けの量産受注が成立し、単価は高付加価値材料の構成比上昇で回復する。自社電極向け内部供給と重複計上しない。
倍率:資本コストk11.5%、事業のROE約31%、弱い堀による超過収益の残存割合1/3からRONICは約18.0%。長期gは3.0%で、市場の実質数量成長約1.5%、シェア維持、価格上昇約1.5%の名目成長から導いた。正当化PERは(1−0.03/0.18)/(0.115−0.03)で来年利益に対し約9.80倍、10年目の利益に合わせて1.03倍すると約10.10倍。その90%の9.09倍を採用した。楽観でも循環的な超過利益と大きな借金の過去を考慮し、理論上限を使い切らない。3.06億ドル×9.09倍=約27.82億ドル。
確率:電極単価が長期の正常水準を超えて回復し、遊休設備の一部が採算よく再稼働するうえ、2029年の借換えにも成功する必要がある。成功すれば大きな上振れがあるが、供給過剰が長期化した実績から6%にとどめる。
やや楽観 15% やや楽観:価格回復と工場集約が成功し、借金を減らし始める 利益 1 億ドル · PER 8.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 41.76 ドル11 億ドル
2035年、中国を除く超高出力電極の需要は約88万トンへ増える。グラフテックはモンテレイ閉鎖後のカレーとパンプローナを高稼働で運営し、年間約12.5万トンを販売する。市場は伸びるが会社のシェアは約14.2%へ低下する。競合のHEGやグラファイト・インディアにも需要増加の恩恵が及び、グラフテックだけが市場を独占することはない。
電極単価は約9000ドル毎トンへ回復する。北米向けの構成比上昇と原料一貫生産の強みが価格とコストの両方に効く。工場集約によって固定費が減り、電極の営業利益率は23%まで改善する。炭素材料の外販も小幅に伸び、全社営業利益は約2.52億ドルとなる。高い利払いを引いても、最終利益は約1.27億ドルに回復する。
2029年の借換えでは一部に高い金利が残るが、価格改善と顧客契約の積み上がりが信用力を支える。初期の赤字を含めた10年間の純利益累計は約4.0億ドルとなり、増資などによる正味の資金流入約0.1億ドルを加えた自己資本は約1.5億ドルとなる。帳簿のROEは自社資本の薄さで高く見えるため、倍率の判断には事業ROICから修正した利回りを使う。
- 黒鉛電極:数量 125(黒鉛電極の販売数量(千メートルトン))× 価格 0.09(販売千トン当たり売上(億ドル)。会社開示の実現単価を製品群売上に合わせて換算)→ 売上 11 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場880千トン×シェア14.2%。単価約9000ドル毎トン。閉鎖後能力127千トンの範囲内で、ほぼフル稼働が必要。
- 石油系ニードルコークス外販・工程副産物・その他炭素材料:数量 25.0(外販品のニードルコークス換算数量(千トン相当、推定。実際の出荷トン数ではない))× 価格 0.03(換算出荷千トン当たり売上(億ドル、推定))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。外販換算25千トン相当。ニードルコークスの内部供給を優先しつつ、電池関連の外販が増える。
倍率:自己資本が薄いため帳簿ROEは約85%となり、そのまま使用しない。税引き後営業利益約1.92億ドルを自己資本1.5億ドルと想定純負債約8.5億ドルの合計で割ったROIC約19.2%を基礎とし、業界並みに正規化した財務レバレッジを加えた事業ROE約27%を用いる。k11.5%、弱い堀の残存1/3からRONIC約16.7%。g2.8%は市場数量成長約2%、シェアの緩やかな低下、名目価格上昇の合成から導く。来年利益基準の正当化PER約9.56倍を10年目利益へ直すと約9.83倍。その87%である8.55倍とした。1.27億ドル×8.55倍=約10.86億ドル。
確率:2026年の価格改定と供給削減が採算改善につながる可能性は相応にある。ただし能力上限と借換え負担が残るため、楽観より実現しやすいものの15%にとどめた。
中立 27% 中立:需要は残り価格も回復するが、借金が株主利益を削る 利益 0 億ドル · PER 7.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 12.54 ドル3 億ドル
2035年、中国を除く超高出力電極市場は年間約83.5万トンになる。電炉鋼の増加は続くが、中国からの輸出とインド企業の競争も続く。グラフテックはモンテレイ閉鎖後の設備を高稼働で運用し、年間約11.9万トンを販売する。数量は2025年から約9%増えるにとどまり、市場シェアは約16.8%から約14.3%へ低下する。
電極の製品群換算単価は約7800ドル毎トンに回復する。2025年からの名目上昇には物価約1.41倍に加え、実質価格の部分的な正常化が含まれる。それでも長期の高値が恒常化するとは見ない。2028年以降は工場閉鎖による費用削減が効き、電極事業の営業利益率は18%まで回復する。全社売上は約9.90億ドル、営業利益は約1.58億ドルとなる。
高い負債のため、最終利益は約0.45億ドルにとどまる。2029年の借換えは成立するが、利息負担と運転資金が現金を吸収する。2026〜2029年に赤字が残り、その後徐々に回復するため、10年間のGAAP純利益累計は約マイナス2.0億ドルとなる。約0.3億ドルの正味増資を考慮しても2035年の自己資本は約マイナス4.3億ドルである。事業は存続するものの、株主が自由に使える利益はまだ小さい。
- 黒鉛電極:数量 119(黒鉛電極の販売数量(千メートルトン))× 価格 0.08(販売千トン当たり売上(億ドル)。会社開示の実現単価を製品群売上に合わせて換算)→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場835千トン×シェア14.3%。単価7800ドル毎トン。閉鎖後能力127千トンに対する販売量は約94%。市場成長をすべて自社数量に転換しない。
- 石油系ニードルコークス外販・工程副産物・その他炭素材料:数量 23.0(外販品のニードルコークス換算数量(千トン相当、推定。実際の出荷トン数ではない))× 価格 0.03(換算出荷千トン当たり売上(億ドル、推定))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。外販換算23千トン相当。市場需要は伸びるが、自社電極向けへの供給を優先するため外販は限定的。
倍率:k11.5%、弱い堀の残存割合1/3、g2.2%。gは中国を除く電炉市場の実質数量成長約2%、グラフテックのシェア低下、製品価格の長期的な名目上昇約3.5%を合成した事業の持続成長率であり、ROEから逆算していない。期末自己資本がマイナスのため帳簿ROEは不適切。想定純負債約10.8億ドルと自己資本マイナス4.3億ドルから得られる正味投下資本約6.5億ドルに対し、税引き後営業利益約1.23億ドルを生む事業ROIC約19%を基礎に、持続的な事業ROEを保守的に約20%とする。RONIC約14.33%、正当化PERは来年利益に対して約9.10倍、10年目利益基準では約9.30倍。その78%の7.25倍を採用した。0.45億ドル×7.25倍=約3.26億ドル。純負債が大きいためEVは約14億ドル、営業利益約1.58億ドルに対するEV/営業利益は約9倍で、20倍は超えない。
確率:電炉鋼の構造成長と2026年の工場集約を認める一方、2029年の借換えと高い利払いが回復を遅らせる。実現単価は2025年の不況水準から改善するが、完全な価格支配は戻らないという落としどころで27%。
やや悲観 24% やや悲観:価格回復が不十分で、債権者優位の経営が続く 利益 0 億ドル · PER 5.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.31 ドル0 億ドル
2035年も電炉鋼の生産は続くが、世界の黒鉛電極市場には供給過剰が残る。中国製品は高性能分野への進出を進め、インド企業は価格競争力を維持する。グラフテックはモンテレイ閉鎖後も競争力の弱い一部顧客を失い、年間販売量は約10.4万トンとなる。中国を除く市場を約74.5万トンとすると、会社の数量シェアは約14%である。
電極単価は約6500ドル毎トンとなる。名目では2025年を上回るが、物価上昇を考慮すれば実質の改善は小さい。工場閉鎖で固定費は減るものの、エネルギー・原料・物流費の上昇を十分に転嫁できず、電極事業の営業利益率は14%にとどまる。全社営業利益は約0.84億ドルで、金融費用を引くと最終利益は約0.065億ドルに過ぎない。
2029年の借換えでは資産売却や条件変更を迫られ、株式による小規模な追加調達も必要となる。借金の負担が残るため、配当も自社株買いも再開できない。10年間の純利益累計は約マイナス6.0億ドル、正味増資は約0.2億ドルで、自己資本は約マイナス8.4億ドルとなる。電極事業は続くが、普通株主に残る価値は大きく縮む。過去の帳簿価額を株式価値の床にすることはできない。
- 黒鉛電極:数量 104(黒鉛電極の販売数量(千メートルトン))× 価格 0.07(販売千トン当たり売上(億ドル)。会社開示の実現単価を製品群売上に合わせて換算)→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場745千トン×シェア約14.0%。価格6500ドル毎トン。中国製品との競争で物価以上の値上げが難しい。
- 石油系ニードルコークス外販・工程副産物・その他炭素材料:数量 20.0(外販品のニードルコークス換算数量(千トン相当、推定。実際の出荷トン数ではない))× 価格 0.03(換算出荷千トン当たり売上(億ドル、推定))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。外販換算20千トン相当。電池材料向けの事業化が限定的で、規模はほぼ横ばい。
倍率:k11.5%、弱い堀の残存1/3、長期g1.0%。市場は実質で緩やかに成長してもシェアが下がり、価格も物価上昇を十分に転嫁できない。利益の質が低いため事業ROEは約10%と判断し、RONICは約11.0%。来年利益基準の正当化PER約8.66倍、10年目利益基準では約8.74倍となる。構造的に弱った企業として上限の約60%に当たる5.25倍を採用した。0.065億ドル×5.25倍=約0.34億ドル。稼ぐ力の目安0.065÷11.5%=約0.57億ドルを超えず、売れる資産の税後残余はゼロに近い。
確率:電極需要そのものは残るが、供給過剰と借換え難航によって株主利益がほとんど出ない状態は十分にありうる。2023〜2026年の価格実績と負債の重さを踏まえ、24%を配分する。
悲観 28% 悲観:再建で旧株主の取り分がほぼ消失する 利益 0 億ドル · PER 1.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0.21 ドル0 億ドル
2035年、世界の電炉鋼生産は続くものの、中国からの黒鉛電極輸出が増え、世界の供給能力は再び需要を上回る。グラフテックは品質面で一定の顧客を維持するが、低価格競争に勝てず販売量は約8.2万トンへ縮小する。中国を除く市場は約66万トンで、数量シェアは約12.4%となる。高性能品でも競争入札が激しく、製品群の平均単価は約5200ドル毎トンにとどまる。
工場閉鎖と事業縮小を重ねても設備の固定費を十分に回収できない。電極事業の営業利益率は7%まで下がり、炭素材料の外販も小規模なままである。全社売上は約4.55億ドル、営業利益は約0.13億ドルにとどまる。2029年前後に大規模な債務再編や事業売却が起き、債権者が主要な経済価値を取得する。会社の生産技術は残っても、旧普通株主はほぼすべての持ち分を失う。
再建後の継続事業にはごく小さい黒字が残るが、これは旧株主が大きな価値を回収できることを意味しない。期間中の赤字・減損を含むGAAP純利益累計は約マイナス12億ドルで、自己資本は約マイナス14.6億ドルとなる想定である。法的整理と減損に伴う帳簿価額の不連続性は大きい。株式価値は完全なゼロとはせず、偶発的な残余回収に相当する小さな正の価値のみを認める。
- 黒鉛電極:数量 82.0(黒鉛電極の販売数量(千メートルトン))× 価格 0.05(販売千トン当たり売上(億ドル)。会社開示の実現単価を製品群売上に合わせて換算)→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場660千トン×シェア12.4%。単価5200ドル毎トン。実質価格の低下と稼働率悪化が続く。
- 石油系ニードルコークス外販・工程副産物・その他炭素材料:数量 13.0(外販品のニードルコークス換算数量(千トン相当、推定。実際の出荷トン数ではない))× 価格 0.02(換算出荷千トン当たり売上(億ドル、推定))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。外販換算13千トン相当。自社電極の縮小と電池材料向け事業の不振で外販も減る。
倍率:再建後の継続事業に残るごく小さなGAAP利益0.03億ドルを基準とする。k11.5%、長期g0%、弱い堀、持続的な事業ROE約7%では理論上のPER上限は1÷k=約8.70倍である。債務再編に伴う旧株主の経済価値消失、再度の収益悪化、追加減損の危険を反映し、上限の約21%に当たる1.82倍を採用する。0.03億ドル×1.82倍=約0.055億ドル。過去のPBRを利用しておらず、負の自己資本にも倍率を掛けない。継続利益から得る単純な稼ぐ力の上限0.03÷11.5%=約0.26億ドル以下に収まる。
確率:2029年の債務満期までに価格回復が不十分なら、担保付債権者主導の再建に至りうる。2023年以降の赤字、2026年の現金流出、自己資本の欠損から、普通株主の取り分がほぼなくなる確率を28%と見た。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
黒鉛電極
電炉製鋼を中心に使用される超高出力の黒鉛電極と関連製品。売上の約91%を占める中核事業であり、実際の販売トン数と平均単価が開示されている。
| 数量黒鉛電極の販売数量(千メートルトン) | 価格販売千トン当たり売上(億ドル)。会社開示の実現単価を製品群売上に合わせて換算 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 109 | 0.04 | 5 | −1 |
| 10 年後 中立 | 119 | 0.08 | 9 | 2 |
取り方:2025年10-Kの商品別売上は黒鉛電極4.60638億ドル、年間販売量は109.2千トン。割り算による製品群の単価は約4218ドル毎トンで、会社が別途開示する平均実現単価約4100ドル毎トンと約3%違う。製品構成と関連製品の違いを含め、売上の一致を優先した換算価格である。中国を除く世界のUHP電極需要は約650千トンなので、実際の販売数量に基づく会社の需要シェアは約16.8%。世界全体のシェアではなく、中国を除く需要を分母とする。営業利益は会社が単一の報告セグメントしか開示していないため推定配分であり、商品別実績値ではない。2025年の全社営業損失約0.77億ドルから、その他製品の粗利益と共通費を控除して推定した。
石油系ニードルコークス外販・工程副産物・その他炭素材料
自社製の石油系ニードルコークスの外部販売と、炭素材料製造に伴う副産物など。シードリフト工場の主な生産物は自社電極へ内部供給されるため、独立した外販売上は小さい。
| 数量外販品のニードルコークス換算数量(千トン相当、推定。実際の出荷トン数ではない) | 価格換算出荷千トン当たり売上(億ドル、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 0.02 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 23.0 | 0.03 | 1 | 0 |
取り方:2025年10-Kで確認できる『By-products and other』の外部売上は0.43496億ドルである。外販ニードルコークスと副産物の個別数量・単価は非開示なので、実際の販売20千トンという主張はできない。比較のため、これらを仮に20千トン相当の製品バスケットとみなし、平均2175ドル毎トン相当の売上に換算した。中国を除く石油系ニードルコークスの生産能力は約750千トンで、シードリフトは約140千トン。外販換算20千トンは能力市場の約2.7%に相当するが、実際の市場シェアではない。2025年の商品別売上0.435億ドルに対し、その他商品の売上原価約0.305億ドルが開示されているため、約0.13億ドルを営業貢献の目安とした。将来の数量と単価は、外販余力と電池材料向け販売の成否を条件とした推定値である。
リスクと懸念
2029年の借換えと財務再編
2026年9月末の総負債は約12.25億ドルで、主要な満期は2029年12月に集中する。直近の利払いは四半期約0.26億ドルであり、赤字が続けば借換え時の信用力が弱い。債務条件の変更、担保の追加、新株発行、債務の株式化によって普通株主の取り分が失われる可能性がある。事業の存続可能性と既存株主の価値は分けて見る必要がある。
黒鉛電極価格と中国の供給能力
2026年7〜9月期の電極実現単価は約3900ドル毎トンで、前年同期を約7%下回った。中国の超高出力品の生産能力は約80万トンと推定され、輸出の増加が欧州・米州の価格を押し下げる。2026年3月と9月に発表した値上げが既存契約へ浸透しなければ、原材料費の上昇に利益を奪われる。値上げの公表だけでは価格支配力の証拠にならない。
工場閉鎖による供給能力の上限
モンテレイ閉鎖とパンプローナの品目転換により、電極生産能力は年間17.8万トンから12.7万トンへ縮小する。費用削減は利益にプラスだが、世界需要が成長しても数量を大幅に増やせない。需要回復時に遊休設備の再稼働や追加投資が必要になれば、資金不足と高い資本コストが成長を制限する。パンプローナの接続用ピンへの依存も強まる。
石油系ニードルコークスの供給と価格
シードリフト工場は電極の品質と原料供給を守る重要な設備だが、原料のデカント油、エネルギー、物流費には市況の波がある。外部のニードルコークス価格が上がれば競合も値上げを試みるが、電極価格への転嫁が遅れれば利益率が落ちる。工場の事故、環境規制、長期停止によって原料供給が途絶えた場合、独自の垂直統合という強みが集中リスクに変わる。
電炉鋼の需要と鉄鋼業界の景気
電炉鋼への転換は長期的な成長要因だが、鉄鋼需要は建設、自動車、機械設備に強く左右される。世界の鉄鋼生産が低迷すれば、電極の交換需要も減る。鉄スクラップ価格、電力価格、貿易政策も製鋼炉の稼働率を左右する。電極市場の成長率だけでなく、各地域で実際に電炉が何トンの鋼を生産しているかを確認する必要がある。
資本配分と既存株主の希薄化
過去の多額の配当と自社株買いは好況期の資金を株主へ戻したが、結果として不況に耐える財務余力を小さくした。2026年には株式の市場売出しによる資金調達が行われ、今後も増資の可能性がある。資金調達は会社の存続に必要でも、既存株主の取り分を弱める。2018年のような高い利益を再び得られても、その利益を誰が所有するかが最も重要になる。
電池材料・熱電池への新規展開
シードリフトの石油系ニードルコークスとセントメリーズの炭素材料設備には、電池や熱電池への用途拡大の可能性がある。2026年9月のアントラ・エナジーとの提携は具体的な前進だが、長期の販売数量、単価、設備投資、利益率の数字はまだ十分に開示されていない。新事業への期待が先行して設備投資を増やすと、債務返済が後回しになる危険がある。
今後の分かれ目
- 黒鉛電極の四半期平均実現単価が5000ドル毎トンを超え、2四半期以上維持されたら
- 2026年に表明した値上げが実際の取引に浸透し始めた証拠となる。単価の中立回復見通しを引き上げ、やや楽観の確率を高める。ただし借金の利払いと2029年の借換えも同時に確認する。
- 2027年後半から2028年に年間0.20億ドル以上の費用削減が実績として確認されたら
- モンテレイ閉鎖の効果が表れたと判断し、中立の電極利益率を改善する。数量が減少していないことが条件であり、費用削減だけで売上の減少を埋めている場合は評価を変えない。
- 2029年満期の主要債務が大幅な増資なしに前倒しで借り換えられたら
- 存続に関する最大の不確実性が低下する。悲観の確率と資本コストの存続上乗せを見直す。一方で新たな金利水準が高ければ、改善した財務の安全性を利益予想へ過大に反映しない。
- 12か月累計の営業キャッシュフローが黒字に転じ、設備投資後も継続して現金が増えたら
- 営業改善が会計上の利益だけでなくオーナー利益につながり始めたと評価する。運転資金の一時的な解放と継続的な現金創出を分け、純負債が実際に減るかを確認する。
- 閉鎖後の電極販売数量が12.7万トンの能力上限へ近づいたら
- 数量を増やすには遊休設備の再稼働または設備投資が必要になる。価格上昇を伴う場合は楽観方向だが、数量確保のための低採算投資ならオーナー利益を減らす。追加設備に必要な現金と増分ROICを確認する。
- 2027年になっても実現単価が4000ドル毎トン前後で、営業赤字と現金流出が続いたら
- 価格改定の効果が限定的と判断し、やや悲観と悲観の確率を大きく引き上げる。借換えまでの残り時間が短くなるため、普通株主の希薄化と法的再建の危険がさらに増す。
- 電池・熱電池向け炭素材料の確定受注額と利益率が開示され、年0.5億ドル以上の売上規模が見えたら
- これまで任意の上振れとして扱っていた新用途を事業予測に正式に組み込む。内部向けニードルコークスとの二重計上を避け、必要な設備投資と販売先の集中リスクを差し引いて利益を評価する。
見ておくもの
- 黒鉛電極の四半期販売数量、平均実現単価、2026年9月の最低30%値上げが実際の売上に反映される速度
- モンテレイ閉鎖の進捗、2028年の年間現金費用削減0.20〜0.25億ドルの達成度、閉鎖後の年産能力12.7万トンに対する稼働率
- 2029年満期の第一順位担保付融資と社債の借換え条件、利率、担保、財務制限条項
- 営業キャッシュフロー、設備投資、棚卸資産、フリー・キャッシュフローと純負債の四半期推移
- 中国の超高出力黒鉛電極輸出量、レゾナック・東海カーボン・HEG・グラファイト・インディアの能力削減と稼働率
- 中国を除く世界の電炉鋼生産量、米州・欧州の電炉稼働率、鉄鋼の貿易規制と電極への反ダンピング措置
- 市場売出しによる新株発行額、株式報酬、発行済株式数、債務の株式化や大口株主の動き
- シードリフトのニードルコークス販売動向、電池・熱電池向け新規受注の金額と投資負担
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約2.21億ドルを起点に将来の株価を逆算していない。2025年の販売数量約10.9万トン、黒鉛電極の製品群単価約4218ドル毎トン、2027年に予定される年産能力12.7万トンへの縮小を出発点とした。市場の実質成長、シェア、電極の実質価格回復を分けて2035年の売上を算出し、固定費削減と高い利払いを反映したGAAP純利益から価値を求めた。倍率は資本コスト11.5%、弱い堀、ROIC・正規化した事業ROE、長期gの式を利用しており、過去のPER・PBRや現在の株価を根拠としていない。
2025年末の自己資本はマイナスなので、資産簿価を悲観の床には使わない。悲観側では優先債務控除後の清算残余が実質ゼロと判断した。中立の2035年自己資本もマイナスとなるため、帳簿ROEをそのまま倍率へ投入せず、事業ROICを基礎に正規化した。10年間のGAAP純利益累計と正味の増資・還元を自己資本に反映した。現金は借換えと運転資金のために必要で、独立した余剰現金として上乗せしていない。結果が割高となったのは、価格回復の余地を否定したためではなく、その利益に先立って債権者への支払いが必要となるためである。
資本コスト 11.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。米国株の基本8.0%にqualityの3.0%と存続リスクの上乗せ0.5%を加え、株式資本コストを11.5%とする。追加0.5%は一般的な業績不振ではなく、3期連続赤字、マイナスの自己資本、2029年に集中する多額の債務償還という存続・資本再編リスクに限定した。電極価格や市場シェアの不確実性は主に筋書きと確率で扱い、βや過去の株価倍率は使わない。