結論
ヴァルカン・マテリアルズ(Vulcan Materials)は、米国で出荷量が最大の骨材(砕石・砂利・砂)の会社で、本社はアラバマ州バーミングハム。2025 年の売上は 79 億ドル、うち骨材が約 73%、アスファルト合材と生コンなどが約 27%。骨材の出荷は 2.27 億トン、運賃調整後の売値は 1 トン約 22 ドルで前年比 +4.3%、1 トンあたりの現金粗利は 11.33 ドルだった。純利益は 11 億ドル、営業利益率は 20%。2026 年 4〜6 月期も出荷 +1%・価格 +5%(ミックス調整後)で、通期の調整後 EBITDA 24〜26 億ドルの見通しを据え置いた。
強みは、骨材が重くて遠くへ運べないため採石場の半径数十キロが地域の独占になること、新しい採石場の許認可が難しいこと。このため価格を物価以上に上げ続けてこられた。2026 年 3 月の投資家説明会では 1 トンあたり現金粗利 20 ドル(出荷 2.6〜2.7 億トン前提)への道筋を示した。弱みは、景気と住宅・非住宅の着工に数量が大きく振れること(リーマン期は 2006〜10 年に数量約 5 割減、株価 −62%)、人件費・ディーゼル・補修費が物価で上がること、純負債 48 億ドルでの買収の積み上げ。
バリュー投資の観点では、事業の質は米国の素材で最上位。ただし本質価値は式で測る。数量(市場 × シェア)と価格から積み上げた中立の筋書きは、10 年後の純利益が今の約 1.9 倍(年 +6.7%)。利益ベースの正当化 PER(ROE 14% 台・長期の成長 4%・資本コスト 7.5%・強い堀)の 9 割で 10 年の中立は 17.9 倍で、今の GAAP の PER 32 倍はそこから大きく離れている。割り引いた価値は今の時価総額を約 29% 下回り、『やや割高』になる。楽観の筋書き(確率 10%)でも 10 年の年率は +9.7% で、良い事業を最高値圏で評価している形。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、骨材は『10 年後も確実に存在し、物価に沿って値上げできる』数少ない事業で、堀(立地と許認可)は広がるとも狭まるとも言いにくいが、少なくとも崩れにくい。道路もデータセンターも発電所も石なしでは作れない。
オーナー利益で見ると、純利益 11 億ドルに対し、減価償却は約 7.5 億ドル、設備投資は 7.5〜8 億ドル。維持の設備投資を引いた FCF は 2025 年に 11.4 億ドルあり、純利益並みに現金が残る。この現金の大半を配当と自社株買いに回し、残りで買収する資本配分は筋がよい。買収で価値を壊した過去(2007 年のフロリダ・ロック買収は景気の山で高く買い、のれんの痛みと負債を長く引きずった)があり、そこは経営の学習として評価できる。
問題は値段。今の GAAP の PER は 32 倍、PBR は 4 倍。式(ROE 14%・g 4%・k 7.5%)が示す成熟後の PER は 19 倍で(9 割に置いて 17.9 倍)、今の値段は『ずっと物価を超える値上げと数量の伸びが続く』ことをほぼ織り込んでいる。良い事業を妥当な値段で買うなら、悲観の下げ(リーマン期 −62%)が現実にありうる事業ではなおさら、安全域が要る。割り引いた価値は今の時価総額の約 71% で、安全域は無い。事業の質と値段は別に考える必要がある。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つ。①骨材(2025 年の売上 約 58 億ドル、粗利 19.6 億ドル、1 トンあたり粗利 8.66 ドル):花崗岩・石灰石・砂利の採石場とその分配拠点を、テキサス、ジョージア、フロリダ、カリフォルニア、バージニア、アラバマ、テネシー、ノースカロライナなど米国南部・西部の高成長地域に持つ。顧客は道路・橋の公共工事、データセンターや工場などの非住宅、住宅の請負業者で、売上は州の高速道路予算と民間の着工に連動する。採石場は半径数十キロにしか売れず、同じ地域の競合は数社。価格は『この地域でこの品質の石を運べる者は誰か』で決まる。
②アスファルト・生コン・その他(売上 約 21 億ドル、粗利 2.1 億ドル):骨材を使って舗装用アスファルト合材と生コンを作って売る。骨材の出口を握る目的で、利益率は骨材の約 4 分の 1。2026 年 6 月にはカリフォルニアの生コン事業を売却し(上期の売却収入はカリブ海の資産と合わせ約 5.7 億ドル)、コロラドとダラスの骨材資産(ブランナン、0.75 億ドル)を買った。骨材中心への集中がはっきりしている。
稼ぎ方の核は 3 つ。①毎年の値上げ(2026 年の見通しは 4〜6%)、②買収と採石場の新設(17 件のグリーンフィールドが進行)、③費用管理(『プロセス・インテリジェンス』で採石の費用の伸びを抑える)。設備投資は年 7.5〜8.0 億ドル、売上の 1 割弱。配当と自社株買いは 2025 年に合計約 7 億ドル。
優良さと弱いところ
堀は許認可と立地。採石場の新設は 5 年以上かかり、近隣の反対・環境許可を通す必要があり、既存の採石場の埋蔵量(約 165 億トン、今の出荷で 70 年分超)がそのまま参入障壁になる。骨材は買う側にとって工事費の数%にすぎないので、値上げに耐えやすい。2025 年の 1 トンあたり現金粗利は 11.33 ドルで、3 年連続で年 13% ずつ伸びた。2015 年の営業利益率 17% から 2025 年の 20% へ、物価を上回る値上げを利益に残してきた実績がある。
弱みも明確。第一に、価格を決める力は地域の独占の裏返しで、公共発注者の反発・規制のリスクを抱える。第二に費用の伸び(運賃調整後の現金費用は 2026 年 Q2 でディーゼル除き +3%、ディーゼルだけで 0.26 億ドルの逆風)。第三に数量の振れ:2010 年は営業赤字(営業利益率 −1%)で、固定費の重さが景気後退で一気に効く。第四にマーチン・マリエッタ(Martin Marietta)との比較で、1 トンあたり粗利と利益率はやや低く、買収と資産交換で追う立場。経営陣(ロニー・プルーイット CEO)はプロセス・インテリジェンスと価格規律を前面に出し、実績は良い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の骨材は年約 25 億トン。需要は公共インフラ、民間の非住宅、住宅が各 3 分の 1 前後。2026 年は K 字:強い側は公共(ヴァルカンの市場の高速道路の受注は直近 12 か月で 2 割増)とデータセンター・発電・LNG・工場の建設(発電は 4〜5 年の柱とされる)、弱い側は戸建住宅(住宅ローン金利と価格で買えない)と倉庫。IIJA(インフラ投資法)の資金は約 6 割が未執行で、後継法(BUILD America 250 Act)は下院委員会を通過したが最終は不透明、つなぎの予算が続くと見られる。
競合は骨材専業のマーチン・マリエッタ(ライホースト北米との合併で石灰へ展開。2026 年 Q2 は売値 22.74 ドル/トン、既存の価格 +3.7%)、CRH(北米最大の建設資材グループで骨材は 2 億トン前後、アスファルトと舗装まで一体)、ホルシム、ハイデルベルク、セメックス。骨材は重く、輸入や中国の過剰供給で崩れにくいのが他の素材との違い。一方、セメント・生コンは輸入や競争で価格が崩れうる。費用側ではディーゼル・人件費・補修費が物価で上がり、2026 年は中東紛争によるエネルギーの上昇も逆風。
10 年の見方では、米国全体の骨材の数量は年 +1〜1.5%(人口増・老朽インフラ・データセンター・国内回帰)、ヴァルカンの商圏は南部・西部の人口流入でそれより 0.5% ほど速い。価格は物価 3.5% に骨材の価格を決める力の上乗せが 0.5〜1% 付き、10 年で 1.5 倍前後(過去 10 年の VMC・MLM は年 +5〜6%)。
資本政策と M&A
資本配分は、買収と採石場の新設を優先し、配当(年 +6% の増配)と自社株買い(2026 年上期 4 億ドル)を続ける。2025 年は FCF 11.4 億ドルのうち配当 2.6 億ドル、自社株買い 4.4 億ドル(株式報酬 0.6 億ドルの分は株数が増えるので正味 3.8 億ドル)。純負債は 48 億ドル(純負債÷EBITDA 1.7 倍、目標 2.0〜2.5 倍)で、買収の余力を残している。
M&A は骨材を中核に、小さな買収(ブランナン、ウェイク・ストーン、スーペリアなど)を積み、非中核(カリフォルニア生コン、カリブ海の資産)を売る。マーチン・マリエッタがライホースト北米との合併(約 135 億ドル、石灰最大手になる)で別の方向へ動いたこともあり、骨材の採石場の取り合いで競り上がる可能性がある。ここは未成立の案件を足さず、今の会社だけで置いた。株式報酬を費用として見て、還元は配当+自社株買い−株式報酬の正味で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
骨材の価格を決める力は、2022 年の物価高でも 2025 年でも証明された。2025 年は価格 +6%(ミックス調整後)、1 トンあたり現金粗利は 11.33 ドルで 3 年連続年 13% の伸び。2026 年も Q2 で価格 +5%、年末は見通しの上限(+6%)に向かう。説明会で示した現金粗利 20 ドル/トンは、価格が年 5% 上がり費用が年 3% 上がるだけで届く計算で、出荷 2.6〜2.7 億トン(今より 2〜3 割増)なら EBITDA は 45〜50 億ドルに達し、今の約 2 倍になる。公共インフラの資金は 6 割が未執行、後継法でも予算は続く公算が大きい。データセンターと発電は 4〜5 年続く柱で、骨材はコンクリートの 8 割を占める。住宅は戸建が弱いだけで、金利が下がれば戻るとき最も効く。
資本面でも、純負債÷EBITDA は 1.7 倍と目標の 2.0〜2.5 倍より低く、年 2〜3 億ドル規模の買収と自社株買いを両立できる。採石場の新設 17 件はこれから稼働する。10 年後に純利益が今の 3 倍になれば、PER 25 倍でも今の時価総額の 2 倍超になる。
慎重な見方
今の PER 32 倍・PBR 4 倍は、骨材の質を最大限に評価した値段で、しかも利益率 20% は 2010 年代前半の 5〜10% に比べ過去最高圏にある。2025 年第 4 四半期は補修費と保険の想定外の増加で利益が市場予想を下回り、株価は 1 日で 8% 近く下がった。2026 年は住宅が弱く、ディーゼルだけで Q2 に 0.26 億ドルの逆風、通期の EBITDA の見通しは 24〜26 億ドルと横ばいに近い。米国の骨材は 2022 年の出荷水準をまだ回復していない。
価格は物価を上回って上げられるという前提は、公共発注者(州の道路局)と議会の目に留まる。値上げが政治問題になり、予算が数量に回らなくなる。競合のマーチン・マリエッタとの価格差、CRH の買収攻勢も採石場の取り合いで買収価格を押し上げる。リーマン期には出荷が約 5 割減り、2010 年は営業赤字、株価は 62% 下がった。式(ROE 14%・g 4%・k 7.5%)の 9 割でも PER は 17.9 倍で、今の値段より 4 割強低い。10 年後に今の利益の 2 倍に届いても、倍率が縮めば時価総額は今を大きく上回らない。
どちらに重みを置いたか
価格を決める力と費用管理の実績は強気の見方が強く、楽観とやや楽観を合わせ 10 年で 35% を置いた。一方、利益率が過去最高圏であること、数量が景気と住宅で大きく振れること(景気の谷で数量が大きく落ちる分を悲観側に厚く置いた)、10 年では構造的に負ける(公共投資の縮小・買収の失敗)確率も 12% と置いた。倍率は式どおりで、今の値段に寄せていない。結論は式が決める。 割り引いた価値は今の時価総額を約 29% 下回り、やや割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 273.99 ドル364 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 72.98 ドル97 億ドル)。 今の値に割り戻すと 183.77 ドル244 億ドル、今との差 −31.6%、 期待の年率 +2.6%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 453.05 ドル601 億ドル | 88.17 ドル117 億ドル | +101.4% | +7.3% | 54.12 ドル72 億ドル |
| やや楽観 | 25% | 372.87 ドル495 億ドル | 83.65 ドル111 億ドル | +69.9% | +5.4% | 114.13 ドル151 億ドル |
| 中立 | 35% | 277.84 ドル369 億ドル | 74.60 ドル99 億ドル | +31.2% | +2.7% | 123.36 ドル164 億ドル |
| やや悲観 | 18% | 177.17 ドル235 億ドル | 65.56 ドル87 億ドル | −9.7% | −1.0% | 43.69 ドル58 億ドル |
| 悲観 | 12% | 52.75 ドル70 億ドル | 44.46 ドル59 億ドル | −63.8% | −9.7% | 11.67 ドル15 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 273.99 ドル364 億ドル | 72.98 ドル97 億ドル | +29.1% | +2.6% | 346.97 ドル460 億ドル |
今の株価時価総額 268.72 ドル357 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:公共・データセンター・発電が長く続き、現金粗利が 20 ドル/トンを超える 利益 29 億ドル · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 453.05 ドル601 億ドル
2035 年、公共インフラとデータセンター・発電の建設が長く続く。商圏の市場は 10 年で 30% 伸び、シェアも採石場の新設と買収で 5% 上積みされて出荷は 300 百万トン(今の 1.32 倍)。運賃調整後の価格は年 +5.2% で 10 年 1.66 倍(物価 1.41 倍に 18% の上乗せ)。骨材の営業利益率は 31%、1 トンの現金粗利は 22 ドル台で、説明会の 20 ドル目標を超える。アスファルト・生コンは 9%。売上は 170 億ドル超、純利益は 29.4 億ドル(今の 2.7 倍、年 +11%)。純負債÷EBITDA は 1.5 倍、配当と自社株買いは 10 年で約 117 億ドル。競合と照らすと、マーチン・マリエッタ(骨材の営業利益率が高い)に近づくところまで利益率が上がる形で、マーチン・マリエッタが石灰・セメントに資本を広げる間にヴァルカンは骨材に集中してシェアを取る。この筋書きがうまくいけば純利益は今の 2.7 倍、競合の価格が崩れれば中立に戻る。
- 骨材(砕石・砂利・砂):数量 300(出荷(百万トン)=米国の骨材市場(年約 25 億トン)× 当社の出荷の割合)× 価格 37(運賃調整後の売値(ドル/トン))→ 売上 128 億ドル・営業利益 40 億ドル。出荷 300 百万トン(市場の伸び×シェアで置いた)× 運賃調整後の売値 36.6 ドル/トン(今の 1.67 倍)
- アスファルト・生コン・その他:数量 1,000(当社の商圏のアスファルト・生コンの市場(億ドル。推定))× 価格 4.2%(当社のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 42 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 1000 億ドル × シェア 2.72%(カリフォルニア売却後)× 価格 1.55 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 18.0%、k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.5%)、残る割合 0.67(強い堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 14.5%、g 4.0%(骨材の出荷(市場の伸び 1%)× シェア × 価格(物価+上乗せ 3.5〜4%)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 20.7 倍(来年の利益に対して)。骨材の値決めが物価を超えて続く分、上限の 9.5 割(19.7 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 20.4 倍。時価総額 = 純利益 29 × 20.4 倍 = 601 億ドル。
確率:10 年間、公共インフラの予算が続き、南部・西部の人口流入と国内回帰の工場・発電の建設で数量が積み上がり、価格が過去 10 年の VMC・MLM 並み(年 +5〜6%)に上がり続ける展開。10 年でこれが揃うのは 1 割。
やや楽観 25% やや楽観:数量 年 +2%・価格 年 +5% が続き、利益は年 +9% で積み上がる 利益 26 億ドル · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 372.87 ドル495 億ドル
2035 年、公共とデータ・電力向けが住宅の弱さを補い続ける。商圏の市場は 10 年で 20% 増にシェア +4%、出荷は 283 百万トン。価格は 10 年 1.60 倍(年 +4.8%)。骨材の営業利益率は 30%、1 トンの現金粗利は 20 ドル前後で目標に届く。アスファルト・生コンは 8.5%。売上 153 億ドル、純利益 25.6 億ドル(今の 2.4 倍、年 +9%)。配当は年 +6%、自社株買いは年 6〜7 億ドル、小さな買収も続く。競合との関係では、CRH の買収攻勢で採石場が高く売れる局面があっても、ヴァルカンは新設で費用を抑え、1 トンあたり粗利でマーチン・マリエッタとの差を縮める。うまくいけば純利益は今の 2.4 倍。
- 骨材(砕石・砂利・砂):数量 283(出荷(百万トン)=米国の骨材市場(年約 25 億トン)× 当社の出荷の割合)× 価格 35(運賃調整後の売値(ドル/トン))→ 売上 116 億ドル・営業利益 35 億ドル。出荷 283 百万トン(市場の伸び×シェアで置いた)× 運賃調整後の売値 35.2 ドル/トン(今の 1.60 倍)
- アスファルト・生コン・その他:数量 920(当社の商圏のアスファルト・生コンの市場(億ドル。推定))× 価格 4.1%(当社のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 38 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 920 億ドル × シェア 2.72%(カリフォルニア売却後)× 価格 1.50 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 16.7%、k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.5%)、残る割合 0.67(強い堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 13.7%、g 4.0%(骨材の出荷(市場の伸び 1%)× シェア × 価格(物価+上乗せ 3.5〜4%)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 20.2 倍(来年の利益に対して)。骨材の値決めが物価を超えて続く分、上限の 9.2 割(18.6 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 19.3 倍。時価総額 = 純利益 26 × 19.3 倍 = 495 億ドル。
確率:業界ノートの楽観寄り(数量 年 +2%、価格 年 +5%)。立地と許認可が値上げを支え、費用は物価並み。
中立 35% 中立:数量は年 +1.5%、価格は物価の約 1 割増、利益は年 +6.7% で伸びる 利益 21 億ドル · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 277.84 ドル369 億ドル
2035 年、公共とデータセンター・発電が住宅の弱さを補い、市場は緩やかに伸びる。ヴァルカンの商圏の市場は 10 年で 16% 増にシェア +1.5%(カリフォルニアの生コンを売却した分は別)、出荷は 262 百万トン。運賃調整後の価格は 10 年 1.52 倍(物価 1.41 倍に 8% の上乗せ。骨材は寡占だが、値上げが政治問題になり上乗せは縮むと置いた)。骨材の営業利益率は 28%、1 トンの現金粗利は 18 ドル台で、説明会の 20 ドルには届かない。売上 134 億ドル、営業利益 31 億ドル、利息は借り換えで 4.3 億ドル、純利益 20.6 億ドル。10 年の還元は約 99 億ドル。
- 骨材(砕石・砂利・砂):数量 262(出荷(百万トン)=米国の骨材市場(年約 25 億トン)× 当社の出荷の割合)× 価格 33(運賃調整後の売値(ドル/トン))→ 売上 102 億ドル・営業利益 29 億ドル。出荷 262 百万トン(市場の伸び×シェアで置いた)× 運賃調整後の売値 33.4 ドル/トン(今の 1.52 倍)
- アスファルト・生コン・その他:数量 850(当社の商圏のアスファルト・生コンの市場(億ドル。推定))× 価格 3.8%(当社のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 33 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 850 億ドル × シェア 2.72%(カリフォルニア売却後)× 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 14.4%、k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.5%)、残る割合 0.67(強い堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.1%、g 4.0%(骨材の出荷(市場の伸び 1%)× シェア × 価格(物価+上乗せ 3.5〜4%)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 19.1 倍(来年の利益に対して)。骨材の値決めが物価を超えて続く分、上限の 9 割(17.2 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 17.9 倍。時価総額 = 純利益 21 × 17.9 倍 = 369 億ドル。
確率:業界ノートの中立(数量 年 +1.5%、価格 年 +4.5%、利益率はゆっくり改善)に沿う。議論の落としどころ。
やや悲観 18% やや悲観:公共投資が頭打ちで数量が伸びず、価格も物価並み 利益 16 億ドル · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 177.17 ドル235 億ドル
2035 年、公共投資が頭打ちになり、住宅の弱さが続く。商圏の市場は 10 年で 7% しか増えず、シェアは変わらず、出荷は 243 百万トン。価格は物価並みの 1.43 倍で、骨材の物価超えの値上げは止まる。費用も物価で上がるので骨材の営業利益率は 24.5% と今から上がらない。売上 118 億ドル、純利益 15.5 億ドル(年 +3.6%)。買収の対象は割高で、純負債÷EBITDA は 1.8 倍。ROE は 12% 台に落ちる。競合との関係では、CRH やホルシムが買収で採石場を押さえ、価格決定力が分散して、ヴァルカンの価格はマーチン・マリエッタと同じく物価並みに収れんする。この筋書きで競合に負けると純利益は今の 1.4 倍にとどまる。
- 骨材(砕石・砂利・砂):数量 243(出荷(百万トン)=米国の骨材市場(年約 25 億トン)× 当社の出荷の割合)× 価格 31(運賃調整後の売値(ドル/トン))→ 売上 89 億ドル・営業利益 22 億ドル。出荷 243 百万トン(市場の伸び×シェアで置いた)× 運賃調整後の売値 31.4 ドル/トン(今の 1.43 倍)
- アスファルト・生コン・その他:数量 780(当社の商圏のアスファルト・生コンの市場(億ドル。推定))× 価格 3.8%(当社のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 29 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 780 億ドル × シェア 2.72%(カリフォルニア売却後)× 価格 1.38 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 11.9%、k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.5%)、残る割合 0.67(強い堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.4%、g 3.8%(骨材の出荷(市場の伸び 1%)× シェア × 価格(物価+上乗せ 3.5〜4%)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.2 倍(来年の利益に対して)。数量の谷と買収の失敗の分、上限の 8.5 割(14.6 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 15.2 倍。時価総額 = 純利益 16 × 15.2 倍 = 235 億ドル。
確率:後継法がなく公共の発注が実質で細り、住宅も弱い展開。価格を物価並みとし、のれんの積み上がりで ROE も下がる。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける。公共の縮小・シェア低下・買収の失敗で優良な素材会社ではなくなる 利益 7 億ドル · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 52.75 ドル70 億ドル
2035 年、公共投資の縮小と住宅の低迷が重なり、商圏の市場は 5% 縮む。さらに地域の寡占が崩れ(新設の採石場・再生骨材・輸入の増加)、シェアを 6% 失って出荷は 203 百万トン。価格は 1.28 倍にとどまり、物価の 1.41 倍に届かない。骨材の営業利益率は 17% へ下がる。純利益は 6.8 億ドル(今の 0.6 倍)、ROE は 6% 台。純負債÷EBITDA は 2.7 倍、配当は守るが自社株買いは止まる。それでも採石場は残るので、利益はゼロにはならない。競合との関係では、マーチン・マリエッタや CRH が先に地域を押さえ、ヴァルカンはテキサス・南東部でシェアを失う。うまくいかなければ純利益は今の 6 割になり、骨材の価格を決める力という長所が消える。
- 骨材(砕石・砂利・砂):数量 203(出荷(百万トン)=米国の骨材市場(年約 25 億トン)× 当社の出荷の割合)× 価格 28(運賃調整後の売値(ドル/トン))→ 売上 66 億ドル・営業利益 11 億ドル。出荷 203 百万トン(市場の伸び×シェアで置いた)× 運賃調整後の売値 28.1 ドル/トン(今の 1.28 倍)
- アスファルト・生コン・その他:数量 690(当社の商圏のアスファルト・生コンの市場(億ドル。推定))× 価格 3.4%(当社のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 24 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 690 億ドル × シェア 2.72%(カリフォルニア売却後)× 価格 1.25 倍
倍率:利益ベースで測る。事業の ROE 6.1% は k 7.5% を下回るので、価値は稼ぐ力(10 年目の純利益 7 億ドル ÷ k 7.5% = 93 億ドル)で測る。減損後の自己資本 111 億ドルに対し、構造的な悲観(公共投資の縮小・買収の失敗)なので稼ぐ力の 7.5 割(70 億ドル、PER 10.3 倍・PBR 0.63 倍)に置いた。純利益は GAAP。
確率:後継法がなく公共投資が実質で 3 割減り、住宅も低迷、さらに高値の買収で資本効率が崩れる。もう優良ではなくなっている状態。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
骨材(砕石・砂利・砂)
採石場から建設現場へ。米国の公共インフラ・非住宅・住宅向けの砕石・砂利・砂を南部・西部の地域ごとに売る最大の利益源。
| 数量出荷(百万トン)=米国の骨材市場(年約 25 億トン)× 当社の出荷の割合 | 価格運賃調整後の売値(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 227 | 22 | 58 | 15 |
| 10 年後 中立 | 262 | 33 | 102 | 29 |
取り方:2025 年の出荷 2.268 億トン(会社の開示)、運賃調整後の売値 21.98 ドル/トン(+4.3%、ミックス調整後は +6%)。出荷 = 米国の骨材市場(年約 25 億トン)× 当社の割合(約 9%)で、ヴァルカンの商圏(テキサス・南東部・カリフォルニア・バージニアなど)は人口流入で全国より 0.5% ほど速く伸びる前提。売上 58.0 億ドルは出荷 × 運賃調整後の価格に運賃・配送料・その他収入の分(約 16%)を rev_factor に入れた。骨材の営業利益 14.7 億ドルは粗利 19.65 億ドル(1 トン 8.66 ドル)から販管費の骨材分(約 5 億ドル)を引いた値。競合と照らすと、マーチン・マリエッタは 2026 年 Q2 の売値 22.74 ドル/トンでヴァルカンの 22.97 ドルとほぼ同じ、CRH は米州素材で 1 トンの粗利が低い。
アスファルト・生コン・その他
骨材を使う舗装用アスファルト合材と生コン。骨材の出口として持つが、利益率は骨材の約 4 分の 1。2026 年にカリフォルニアの生コンを売却した。
| 数量当社の商圏のアスファルト・生コンの市場(億ドル。推定) | 価格当社のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 3.1% | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 850 | 3.8% | 33 | 2 |
取り方:アスファルト合材・生コンなど。売上 21.4 億ドル(2025 年)、粗利 2.10 億ドル、営業利益は販管費を引いて約 1.3 億ドル(6%)。当社の商圏の市場を 700 億ドル(推定)とし、シェア 3.06% を置いた。2026 年 6 月にカリフォルニアの生コン事業を CalPortland へ売却したので、将来の筋書きではシェアを約 2.72% へ下げた(上期のアスファルト −12%・生コン −17%)。価格は中立で物価並み(3 年 1.11 倍、10 年 1.41 倍)。
リスクと懸念
景気後退と着工の落ち込み
数量は景気と着工に大きく振れる。2006〜10 年のリーマン期にヴァルカンの骨材の出荷は約 5 割減り、2010 年と 2011 年は営業赤字、株価は 2007 年 6 月から 2009 年 2 月で 62% 下がった。固定費(採石場・設備・人)が重く、数量が落ちると利益率が一気に落ちる。
価格を上げ続けることへの政治・規制の反発
骨材の値上げは、州の道路局や議会の目に留まる。物価超えの値上げが数年続くと、発注者が輸入・代替材・再生骨材へ動く、入札の仕様を変える、独占を問題視されるといった形で値上げの力が削られうる。中立の筋書きでは価格を物価の約 1 割増(10 年 1.52 倍)まで置いた。
費用の上昇(ディーゼル・人件費・補修費)
2026 年 Q2 はディーゼルだけで 0.26 億ドル、エネルギー全体で約 0.4 億ドルの逆風で、調整後 EBITDA は前年とほぼ同じ 6.54 億ドル。2025 年第 4 四半期の補修・保険費用の急増は利益を市場予想より 2 割下げた。価格が上がっても費用が追いつくと、1 トンの現金粗利が伸びない。
インフラ後継法の遅れ
IIJA は 2026 年 9 月に期限を迎え、後継法の最終的な形と時期は不透明。資金の約 6 割が未執行で当面は支えるが、後継法がなく公共の発注が細ると、2028 年以降の数量の伸びが年 1% を割る。ヴァルカンは公共(高速道路)が売上の約 4 割で、影響が大きい。
買収の価格競争とのれん
骨材の採石場の取り合いは激しく、マーチン・マリエッタ、CRH、ホルシムが競る。買収価格が EBITDA の 12〜15 倍に上がると、相乗効果で埋められず、のれんと負債が増えて ROE が下がる。2007 年のフロリダ・ロック買収は山で高く買い、10 年以上の重荷になった。
住宅・倉庫の低迷が長引く
戸建は手が出ない価格と金利で弱く、倉庫は横ばい。データセンター・発電の建設が補うが、こうした工事は骨材の使用量が住宅ほど多くなく、長期に続く保証もない。住宅の戻りが遅いと、1 トンあたり現金粗利の改善が遅れ、説明会で示した 20 ドルへの道筋が後ろへずれる。
今後の分かれ目
- IIJA の後継法が成立し、公共の予算が 2028 年以降も実質で維持される見通しになったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。出荷が年 2〜3% で伸び、1 トンの現金粗利が 20 ドルに近づく。ただし倍率が先に織り込むので、値段が追いつく保証はない。
- 骨材の価格改定が 5% を割り、物価並みの 3.5% 前後に下がったら
- 価格を決める力が落ちたと見て、中立の営業利益率を 2〜3 ポイント下げ、やや悲観の確率を上げる。
- ディーゼルと人件費で、運賃調整後の現金費用が 2 年続けて +5% を超えたら
- 価格の上昇が利益に残らない形になる。1 トンの現金粗利が伸びず、中立の利益率の改善が止まる。
- 骨材の大型買収(EBITDA の 13 倍超)を発表したら
- 資本配分が悪化する兆し。買収価格が高いほど、ROE の低下と純負債の増加で、式の倍率が縮む。
- 景気後退で出荷が 2 四半期続けて前年比 10% 以上減ったら
- 悲観が近づいたと見る。PBR の底(1.3〜1.5 倍)が下値の目安。
- 住宅着工が持ち直し、戸建の骨材需要が戻ったら
- 数量の上振れ。楽観側の確率を上げるが、金利が下がらないと戻らないので過度に期待しない。
見ておくもの
- 骨材の出荷(百万トン)と運賃調整後の売値(2026 年 Q2 は 5,990 万トン・+3.9%)
- 1 トンあたり現金粗利(2025 年 11.33 ドル、目標 20 ドル)
- ディーゼル・人件費など現金費用の伸び(Q2 ディーゼル除き +3%)
- 純負債÷EBITDA(1.7 倍。目標 2.0〜2.5 倍)と買収の倍率
- IIJA の後継法と州の高速道路の受注
- 住宅着工(戸建)とデータセンター・発電の建設
- マーチン・マリエッタ・CRH の価格と買収の動き
倍率と資本コストの決め方
今の PER 32 倍・株価を見る前に、骨材の出荷(市場 × シェア)× 運賃調整後の売値で売上を積み、営業利益率から純利益を出した。倍率は k 7.5%(基本 8.0% + quality −0.5%:景気の振れ +0.5%、骨材の値決め −1.0%)・g 4%(市場の伸び 1% + 価格 3〜3.5% から出し、ROE からは出していない)・帳簿の ROE(のれんは除かない)の式(堀は強い)の 8.3〜9.5 割に置き、10 年の中立は 17.9 倍。悲観は ROE が k を下回るので稼ぐ力(純利益 ÷ k)で測った。式の倍率が今よりずっと低く出るのは、今の値段が『物価超えの値上げが長く続く』を織り込んでいるため。価格を物価で打ち止めにせず 10 年 1.5 倍前後と置いたので保守的すぎない。今の値段には寄せていない。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。