結論
IFF は、食品・飲料向けの風味(Taste、2025 年の売上 24.8 億ドル)、酵素・プロバイオティクスなどの健康・バイオ(H&B、22.8 億ドル)、香水・日用品の香りと香料原料(Scent、24.8 億ドル)を残し、食品素材(売上 約 31 億ドル)を 2027 年 4〜6 月末までに投資ファンドの CVC へ売る世界有数の香料・素材会社。2021 年の旧デュポンの栄養・バイオ部門との合併で膨らんだ事業を畳んでいる最中で、2025 年は食品素材ののれんの減損 11.2 億ドルを主因に 3.6 億ドルの純損失だった。
売却後の会社(継続事業)は売上 72 億ドル規模、2026 年の調整後 EBITDA の見通しは 15.3〜16.0 億ドル(率 約 21%)。売却の純収入 38 億ドルを借金の返済と 25 億ドルの自社株買いに回し、純負債÷EBITDA を 2.0〜2.5 倍へ下げる計画。ただし GAAP の純利益は、買収した無形資産の償却(年 3.3 億ドル)と再編費用が重く、2026 年でも 4 億ドル前後。今の時価総額 232 億ドルは GAAP の PER で約 58 倍にあたる。
数量は市場なみ(Taste と Scent が年 +1.8%、H&B が年 +3.0%)、価格は物価並み、EBITDA 率が 20.0% から 23.2% へ上がる中立の筋書きで、10 年後の純利益は 13.2 億ドル。利益ベースの正当化 PER(k 8.5%・帳簿の ROE・堀は普通)の 9 割で 10 年の中立は 12.6 倍、時価総額は 10 年後 167 億ドル。悲観を厚くした確率で割り引いた価値は今の時価総額を約 38% 下回り、総合は割高。バリュー投資の観点では、事業の質は高いが、利益率の改善をすでに織り込んだ値段で、安全域は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後にも香料・風味・酵素は世界の食品・日用品で使われ続け、IFF は今より強いかが最初の問い。需要は景気に強く、堀(配合の切り替えにくさ・規模・酵素の知的財産)は厚い。この点は優良な事業。
次に株主のものになる利益(オーナー利益)。継続事業の 2026 年のフリーキャッシュフロー相当は、GAAP の純利益 約 4 億ドルに D&A 約 6 億ドルを足し、設備投資(売上の 4%、約 3 億ドル)と運転資金を引いた 6〜7 億ドル。買収無形資産の償却 3.3 億ドルは現金が出ない費用なので、オーナー利益は GAAP の純利益より厚い。ただし償却に見合う顧客関係・技術は、販売費と研究費の継続で守るもので、永続的に無視はできない。本分析は式の整合のため GAAP の純利益を使い、償却を戻した場合の上振れは筋書きの文章で触れる。
資本配分は、合併で価値を壊した後の立て直し中。売却代金で借金を減らし、自社株買いをするのは正しい順序だが、買い戻しの価格が割高なら価値を壊す。今の時価総額 232 億ドルに純負債 51.7 億ドルを足し、食品素材の売却代金 約 40 億ドル(現金と持ち分)を引いた継続事業の企業価値は約 244 億ドルで、2026 年の EBITDA 見通し(15.6 億ドル)の約 16 倍。同じ会社が食品素材を EBITDA の約 10 倍で売る点と比べて高く、安全域は厚くない。わかりやすい事業だが、利益率の改善がかなり織り込まれた値段で、確信度は中程度。
何で稼ぐ会社か
IFF は 3 つの事業で食品・飲料・日用品メーカーなどの大企業に「配合(フォーミュラ)」を売る。顧客の製品の中で量は少ないが、味や香りは変えにくく、顧客の開発と承認の手間が切り替えの費用になる。原料(バニラ・柑橘・石油系)の値上がりは契約や値上げで転嫁できる。
Taste(売上 24.8 億ドル)は、清涼飲料・乳製品・菓子・調味料向けの風味と、植物由来の食品向けの原料。2026 年 4〜6 月は売上 6.9 億ドル(有機 +4%)、EBITDA 率 18.0%(上期は 20.2%)。H&B(22.8 億ドル)は、洗剤用の酵素、食品の培養・酵素、プロバイオティクス、バイオ燃料の穀物加工用の酵素で、EBITDA 率が 25% 前後と社内で最も高い。2021 年に合併した旧デュポンの栄養・バイオ部門(酵素の旧ジェネンコアなど)が中心。Scent(24.8 億ドル)は、高級香水・日用品の香り・香料原料・美容素材で、2026 年 4〜6 月は有機 +8%(香料原料が約 +20%)、EBITDA 率 20.2%。
食品素材(たんぱく質・乳化剤・増粘剤・甘味料など、売上 約 31 億ドル、EBITDA 約 4.3 億ドル、率 13%)は、顧客に合わせた配合の余地が小さく、IFF の中で最も利益率が低いため売却する。大豆の濃縮物・レシチン(SCL)は 2026 年 3 月に売却済み、薬品素材は 2025 年 5 月に売却済みで、あとは食品素材の完了待ち。完了後は、取り残される本社費 約 1 億ドルを 2 年で消す計画。
優良さと弱いところ
堀は、①配合の切り替えにくさ(顧客の品質承認と味・香りの一貫性)、②規模(ジボダン・dsm-firmenich・IFF・シムライズの上位 4 社で香料市場の約 6 割)、③H&B の酵素・菌株の知的財産と生産ノウハウ、の 3 つ。香料原料を自社で作る川上までの統合も、価格と供給の安定に効く。
弱みは、利益率が同業に届かないこと。2025 年の継続事業の EBITDA 率は約 20%、ジボダンは 23.4%、dsm-firmenich の香料・美容は 21.7%、酵素の首位ノボネシスは 37%。H&B は 25% 前後で、同じ酵素でも 10 ポイント以上低い。原因は、合併後の統合の遅れ、工場の稼働の低さ、食品素材のような低利益の事業を抱えていたこと。資本効率も弱く、自己資本 142 億ドルのうち、のれんが 81.5 億ドル、買収の無形資産がさらに大きい。
経営は、2024 年からの再編で食品素材など低利益の事業を売る方向に動き、2026 年上期の EBITDA 率は 21.8%(前年同期 21.2%)まで戻した。一方で、2022〜23 年の連続の減損(純損失 19 億ドル・26 億ドル)は、合併の価格が高すぎたことを示す。バリュー投資の観点では、堀は広いが、買収で価値を壊した過去があり、資本配分の信頼は回復の途中。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
香料・風味・食品素材は、世界の食品・飲料・日用品の生産に連動し、数量は年 +2%、価格は原料と人件費の転嫁で物価並みに動く、景気に強い市場。2008〜09 年のリーマン期でも、旧 IFF(香料だけの会社)の売上は 2.5% しか減らず、2025 年に至るまで市場の中で需要は底堅い。成長の源は、新興国の中間層、プレミアム化(高級香水・機能性飲料)、減糖・減塩に伴う風味の技術、植物由来食品。
Taste は、ジボダン(Givaudan、2025 年の売上 74.7 億スイスフラン、EBITDA 率 23.4%)、dsm-firmenich(食品・食感・健康部門 31.5 億ユーロ、有機 +4%)、シムライズ(Symrise、約 49 億ユーロ)、ケリー・グループ(Kerry)などが競う。食品・飲料大手は数量の伸びが鈍く、値下げの要求と内製化・複数社発注の動きがあり、風味の価格交渉は厳しい(IFF の Taste は 2026 年 4〜6 月に有機 +4%)。Scent は、ジボダンと dsm-firmenich が高級香水で強く、香料原料は中国・インドの汎用品との価格競争がある。IFF が汎用の香料原料を重視しない方針なのはこのため。
H&B は、ノボネシス(Novonesis、2025 年の有機成長 +7%・EBITDA 率 37.1%、2026 年の見通しを +7〜8% に上げた)と dsm-firmenich の培養・酵素が競合。洗剤・食品・バイオ燃料・健康(プロバイオティクス)で酵素の用途が広がり、市場は年 +3% ほどと IFF の他の事業より速い。再編は続く(IFF の食品素材の売却、dsm-firmenich の動物栄養の分離)。
資本政策と M&A
2026 年 5 月に食品素材を CVC へ売ると発表(企業価値 約 43 億ドル、EBITDA の約 10 倍、純収入 約 38 億ドル、約 10% の持ち分を持ち越し、完了は 2027 年 4〜6 月末までの予定)。純収入の使い道は、①借金の返済(10 億ドル超)、②自社株買い、③中核への再投資の順。自社株買いは枠を 25 億ドルに増やし、2026 年下期に 5 億ドルの ASR、残り 20 億ドルを完了後〜2027 年末に行う計画。配当は総額 約 4 億ドル。
買収の歴史は重い。2018 年にイスラエルのフルタロム(Frutarom)を約 71 億ドル、2021 年に旧デュポンの栄養・バイオ部門との合併(約 260 億ドル)を行い、のれんと借金(2021 年の純負債 115 億ドル)が膨らんだ。以降は 2022〜23 年に連続の減損、2025 年にも食品素材で 11.2 億ドルの減損。今回の売却で、買った事業の一部を手放す形になる。売却の実行(2027 年の完了)と、売却後の会社が希薄化(完了後 12 か月は調整後 EPS が下がる見込み)を乗り越えるかが分かれ目。
今回の分析では、完了の見込みが高い売却は 10 年の筋書きに入れ(売却後の会社だけで書く)、売却後の自社株買いは 2027 年末までに終えるとして還元に入れた。新たな大型買収は置かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
IFF の利益はこれから上がる。2026 年上期の継続事業の EBITDA 率は 21.8% と前年より 0.6 ポイント上がり、通期の調整後 EBITDA は有機で +4〜8% の見通し。食品素材(EBITDA 率 13%)を売ると、残る 3 事業の平均が約 21% に上がり、座礁費用 約 1 億ドルも 2 年で消えて、それだけで EBITDA 率はさらに 1 ポイント以上上がる。H&B は EBITDA 率 25% 前後で、ノボネシスの 37% との差が大きく、統合の効果と生産の効率化で 27〜31% まで上がる余地がある。Scent は香料原料が +20% で伸び、中東の高級香水が加わる。Taste はライフスタイル飲料・乳製品で中位の成長を目標にしている。
価格は物価並みに上がり、数量は市場と同じか上回る。10 年後に売上は今の 1.9〜2.1 倍、EBITDA 率は 25〜27%、純利益は 16〜20 億ドル(2026 年の 4 倍前後)になる。借金は食品素材の売却で 2 倍台に下がり、利払いも借り換え後も減る。自社株買い 25 億ドルが 1 株あたりの価値を押し上げ、配当も増える。売却後の会社は、同業のジボダンに近い利益率と資本効率に近づき、PER 16 倍が付く(式の 9.5 割)。10 年後の時価総額は 376〜706 億ドルと、今の 1.6〜3.0 倍になる。
慎重な見方
IFF の利益の改善は、食品素材の売却と再編という自助努力に頼る部分が大きく、市場の需要が押し上げているわけではない。2026 年 4〜6 月は売上が +2%(為替中立で +6%)だったが、GAAP の継続事業の純利益は 0.33 億ドルで、実効税率は 48%。2026 年の通期でも純利益は 4 億ドル前後、時価総額 232 億ドルは GAAP の PER で約 58 倍と、利益の質に対して先に高く付きすぎている。2026 年は後半に成長が 0〜4% へ鈍る見通しで、Scent は原料・物流費の高騰を顧客への追加課金で埋めている。
競合は強い。ジボダンの EBITDA 率は 23.4% で、ノボネシスは 37% と、IFF の H&B(25%)に 10 ポイント以上の差があり、この差が簡単に縮むとは限らない。2021 年の合併で買ったものは、のれん 81.5 億ドルと無形資産に重く、純負債 51.7 億ドルは借り換えのたびに高い金利(約 5.75%)に変わる。食品素材の売却後は、座礁費用、希薄化(完了後 12 か月は調整後 EPS が下がる)、完了前の規制の承認などの不確実さが残る。過去の合併で 2022〜23 年に連続の減損を出した経営で、約束どおり利益率を上げる保証はない。
数量が市場並み以下、シェアが少し下がり、EBITDA 率が 19〜21% で止まれば、10 年後の純利益は 9 億ドル前後、PER は 10 倍前後で、時価総額は 89 億ドルと今の 4 割にとどまる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と、食品素材の売却・座礁費用の解消・酵素の利益率の伸びしろは強気の見方が強い。一方で、GAAP の利益が薄い事実、利益率の高い競合との差、合併後の統合と買収の失敗歴、今の PER の高さは慎重な見方が強い。中立の筋書きは、数量 年 +1.8〜3.0%・価格は物価並み・EBITDA 率が 20.0% から 23.2% へ、とした。確率は 10 年で楽観 8%・やや楽観 20%・中立 33%・やや悲観 24%・悲観 15% と、同じ領域のシャーウィン・エコラボ(12/25/…/7〜10)より悲観側を厚く置いた。結論は、利益ベースの倍率では中立の筋書きでも割り引くと今の時価総額を下回り、総合で割高、というもの。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 59.26 ドル152 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 44.94 ドル115 億ドル)。 今の値に割り戻すと 56.10 ドル144 億ドル、今との差 −40.2%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 122.58 ドル314 億ドル | 62.62 ドル160 億ドル | +97.4% | +7.0% | 14.82 ドル38 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 90.04 ドル231 億ドル | 53.98 ドル138 億ドル | +53.5% | +4.4% | 28.80 ドル74 億ドル |
| 中立 | 33% | 65.16 ドル167 億ドル | 46.48 ドル119 億ドル | +19.0% | +1.8% | 36.84 ドル94 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 34.77 ドル89 億ドル | 40.98 ドル105 億ドル | −19.3% | −2.1% | 18.18 ドル47 億ドル |
| 悲観 | 15% | 10.70 ドル27 億ドル | 26.37 ドル68 億ドル | −60.5% | −8.9% | 5.56 ドル14 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 59.26 ドル152 億ドル | 44.94 ドル115 億ドル | +11.1% | +1.1% | 104.20 ドル267 億ドル |
今の株価時価総額 93.83 ドル240 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:H&B と Scent の利益率が同業に近づき、EBITDA 率 27% へ 利益 20 億ドル · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 122.58 ドル314 億ドル
2035 年、売却後の IFF が同業に近い利益率に届く。数量は Taste が年 +2.2%・H&B が年 +4.5%・Scent が年 +2.5%(酵素の用途拡大と高級香水の伸び)、価格は革新の上乗せで物価+0.3%(10 年 1.45 倍)、シェアは Taste 9.6%・H&B 16.4%・Scent 12.2% へ小幅に上がる。Taste は売上 47.0 億ドル・EBITDA 率 24%、H&B は 55.5 億ドル・31%(ノボネシスの 37% との差を 6 ポイントに縮める)、Scent は 47.5 億ドル・24.5%。全社の売上は 149.8 億ドル(年 +7.5%)、EBITDA 40.1 億ドル(率 26.7%)、営業利益 30.3 億ドル、純利息 3.4 億ドル、純利益 19.9 億ドル。純負債÷EBITDA は 1.5 倍へ下がり、自社株買いと配当の正味の還元は 10 年で約 160 億ドル。
- Taste(風味):数量 336(世界の風味・味づけ市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 14.0%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 47 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 336 億ドル × シェア 9.6% × 価格 1.45 倍(EBITDA 率 24.0%)
- 健康・バイオ(H&B):数量 233(酵素・培養・プロバイオティクスの世界市場(億ドル。実質))× 価格 23.8%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 56 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 233 億ドル × シェア 16.4% × 価格 1.45 倍(EBITDA 率 31.0%)
- Scent(香り):数量 269(香水・日用品の香り・香料原料の世界市場(億ドル。実質))× 価格 17.6%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 48 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 269 億ドル × シェア 12.2% × 価格 1.45 倍(EBITDA 率 24.5%)
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 19.9%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 0.50(普通の堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 14.2%、g 4.0%(3 事業(Taste・H&B・Scent)の市場(数量 年 +1.8〜3.0%)× シェア × 価格(物価並み)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 16.0 倍(来年の利益に対して)。食品素材の売却後に利益率が上がる分、上限の 9.5 割(15.2 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 15.8 倍。時価総額 = 純利益 20 × 15.8 倍 = 314 億ドル。
確率:食品素材の売却・座礁費用の解消・H&B の統合効果が全部うまく出て、ノボネシス・ジボダンに近づく筋書き。IFF は合併後の実行で 2022〜23 年に減損を出しており、全部がそろう確率は 8% に絞った。
やや楽観 20% やや楽観:数量は市場以上、EBITDA 率 25% へ 利益 16 億ドル · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 90.04 ドル231 億ドル
2035 年、数量は Taste が年 +2.0%・H&B が年 +3.8%・Scent が年 +2.2%、価格は物価+0.2%(10 年 1.43 倍)、シェアは Taste 9.4%・H&B 15.8%・Scent 11.8% と H&B で少し上がる。Taste は売上 44.1 億ドル・EBITDA 率 22.5%、H&B は 49.3 億ドル・29%、Scent は 44.1 億ドル・23%。座礁費用の解消と酵素の生産の効率化が進み、全社の売上は 137.4 億ドル(年 +6.6%)、EBITDA 34.3 億ドル(率 25.0%)、営業利益 25.1 億ドル、純利息 2.9 億ドル、純利益 16.3 億ドル。純負債÷EBITDA は 1.5 倍、10 年の正味の還元は約 138 億ドル。
- Taste(風味):数量 329(世界の風味・味づけ市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 13.4%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 44 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 329 億ドル × シェア 9.4% × 価格 1.43 倍(EBITDA 率 22.5%)
- 健康・バイオ(H&B):数量 218(酵素・培養・プロバイオティクスの世界市場(億ドル。実質))× 価格 22.6%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 49 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 218 億ドル × シェア 15.8% × 価格 1.43 倍(EBITDA 率 29.0%)
- Scent(香り):数量 261(香水・日用品の香り・香料原料の世界市場(億ドル。実質))× 価格 16.9%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 44 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 261 億ドル × シェア 11.8% × 価格 1.43 倍(EBITDA 率 23.0%)
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 15.4%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 0.50(普通の堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 11.9%、g 4.0%(3 事業(Taste・H&B・Scent)の市場(数量 年 +1.8〜3.0%)× シェア × 価格(物価並み)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 14.8 倍(来年の利益に対して)。食品素材の売却後に利益率が上がる分、上限の 9.2 割(13.6 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 14.1 倍。時価総額 = 純利益 16 × 14.1 倍 = 230 億ドル。
確率:楽観ほどは揃わないが、売却と効率化の効果が中立より出る筋書き。H&B の成長が市場より速い(ノボネシスの有機 +7〜8% が示す市場の強さ)ことと、再編の実行が重なる確率として 20% を置いた。
中立 33% 中立:数量 年 +1.8〜3.0%・価格は物価並み、EBITDA 率 23.2% へ 利益 13 億ドル · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 65.16 ドル167 億ドル
2035 年、市場は Taste・Scent が年 +1.8%(10 年 1.20 倍)、H&B が年 +3.0%(1.34 倍)、価格は物価並み(10 年 1.41 倍)、シェアは横ばい(Taste 9.2%・H&B 15.2%・Scent 11.8%)。Taste は売上 41.8 億ドル・EBITDA 率 21.0%、H&B は 43.3 億ドル・27.0%、Scent は 41.8 億ドル・21.5%。座礁費用 約 1 億ドルの解消、食品素材の売却による構成の改善、H&B の工場の効率化で、全社の売上は 126.8 億ドル(年 +5.8%)、EBITDA 29.4 億ドル(率 23.2%)、営業利益 20.5 億ドル(D&A と再編費用を引いた後)、純利息 2.5 億ドル、純利益 13.2 億ドル。純負債÷EBITDA は 1.5 倍へ下がる。ジボダン(EBITDA 率 23.4%)に並ぶ程度で、ノボネシスには届かない。倍率は ROE 11.9%・g 4%・k 8.5% の式の 9 割で 12.6 倍。10 年の正味の還元は約 119 億ドル(食品素材の売却後の自社株買い 20 億ドルを含む)。
- Taste(風味):数量 323(世界の風味・味づけ市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 13.0%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 42 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 323 億ドル × シェア 9.2% × 価格 1.41 倍(EBITDA 率 21.0%)
- 健康・バイオ(H&B):数量 202(酵素・培養・プロバイオティクスの世界市場(億ドル。実質))× 価格 21.4%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 43 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 202 億ドル × シェア 15.2% × 価格 1.41 倍(EBITDA 率 27.0%)
- Scent(香り):数量 251(香水・日用品の香り・香料原料の世界市場(億ドル。実質))× 価格 16.7%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 42 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 251 億ドル × シェア 11.8% × 価格 1.41 倍(EBITDA 率 21.5%)
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 11.9%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 0.50(普通の堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.2%、g 4.0%(3 事業(Taste・H&B・Scent)の市場(数量 年 +1.8〜3.0%)× シェア × 価格(物価並み)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.5 倍(来年の利益に対して)。食品素材の売却後に利益率が上がる分、上限の 9 割(12.2 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 12.6 倍。時価総額 = 純利益 13 × 12.6 倍 = 167 億ドル。
確率:業界ノートの中立(数量 年 +2%・価格は物価並み・EBITDA 率が 10% 台から同業へ遠く及ばず上がる)に沿った。シェアは横ばい、H&B のみ市場と同じ年 +3.0%。EBITDA 率の改善は経営の目標(売上 +4%・EBITDA +10%)よりやや低く置いた。議論の落としどころ。
やや悲観 24% やや悲観:H&B と Taste でシェアを失い、EBITDA 率 20.8% で止まる 利益 9 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 34.77 ドル89 億ドル
2035 年、再編の効果が半分しか出ない。数量は Taste・Scent が年 +1.2%、H&B が年 +2.2%、価格は物価の 9 割(10 年 1.38 倍)、シェアは Taste 8.9%・H&B 14.4%・Scent 11.5%(各 3〜5% 失う)。Taste は売上 37.4 億ドル・EBITDA 率 19%、H&B は 37.1 億ドル・24%、Scent は 37.5 億ドル・19.5%。座礁費用の解消だけで、新しい利益率の改善は出ない。全社の売上は 112.0 億ドル(年 +4.5%)、EBITDA 23.3 億ドル(率 20.8%)、営業利益 15.0 億ドル、純利息 2.6 億ドル(純負債÷EBITDA は 2.0 倍)、純利益 8.9 億ドル(中立の 7 割)。倍率は ROE 8.4% が k 8.5% と同じ水準なので 1÷k の 85% で 10.0 倍。10 年の正味の還元は約 105 億ドル。
- Taste(風味):数量 304(世界の風味・味づけ市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 12.3%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 37 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 304 億ドル × シェア 8.9% × 価格 1.38 倍(EBITDA 率 19.0%)
- 健康・バイオ(H&B):数量 186(酵素・培養・プロバイオティクスの世界市場(億ドル。実質))× 価格 19.9%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 37 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 186 億ドル × シェア 14.4% × 価格 1.38 倍(EBITDA 率 24.0%)
- Scent(香り):数量 237(香水・日用品の香り・香料原料の世界市場(億ドル。実質))× 価格 15.8%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 38 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 237 億ドル × シェア 11.5% × 価格 1.38 倍(EBITDA 率 19.5%)
倍率:事業の ROE 8.4% が k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)以下なので、ためた利益は 1 ドル未満の価値。PER は 1 ÷ k = 11.8 倍が上限。H&B と Taste でシェアを失う分、上限の 8.5 割(10.0 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 10.0 倍。時価総額 = 純利益 9 × 10.0 倍 = 89 億ドル。
確率:合併後の再編が計画より遅れ、H&B でノボネシスと dsm-firmenich にシェアを取られ、Scent の汎用原料が中国・インドの価格競争を受ける筋書き。IFF の 2022〜23 年の連続の減損と、利益率の改善の遅れの実績から、同領域の会社(18〜20%)より厚い 24% を置いた。
悲観 15% 悲観:シェアを失い、優良な香料会社ではなくなる 利益 3 億ドル · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 10.70 ドル27 億ドル
2035 年、構造的に負ける。ノボネシスと dsm-firmenich が H&B の酵素・培養で主要顧客を取り、ジボダンが高級香水で、ケリー・シムライズ・内製化が Taste でシェアを奪い、IFF のシェアは Taste 8.1%・H&B 12.9%・Scent 10.4% へ下がる。価格は物価の 7 割(10 年 1.30 倍)、市場の数量は年 0〜1%。Taste は売上 29.8 億ドル・EBITDA 率 15%、H&B は 27.9 億ドル・18.5%、Scent は 28.4 億ドル・15.5%。全社の売上は 86.0 億ドル、EBITDA 14.0 億ドル(率 16.3%)、営業利益 6.7 億ドル、純利息 2.0 億ドル(純負債÷EBITDA 2.4 倍)、純利益 3.1 億ドル。構造的に負けた後の利益で ROE 2.7% は k を下回るので、稼ぐ力(純利益 ÷ k)の 75% の 27 億ドル(PER 8.8 倍・PBR 0.24 倍)。のれんの減損が再び出ても現金は減らないが、もう優良な香料会社ではなく、普通の化学会社の評価に落ちる。10 年の正味の還元は約 68 億ドルで、うち 2026〜27 年の売却代金による自社株買いが約 27 億ドル(純利益の合計を超える分)。
- Taste(風味):数量 284(世界の風味・味づけ市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 10.5%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 30 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 284 億ドル × シェア 8.1% × 価格 1.30 倍(EBITDA 率 15.0%)
- 健康・バイオ(H&B):数量 166(酵素・培養・プロバイオティクスの世界市場(億ドル。実質))× 価格 16.8%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 28 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 166 億ドル × シェア 12.9% × 価格 1.30 倍(EBITDA 率 18.5%)
- Scent(香り):数量 210(香水・日用品の香り・香料原料の世界市場(億ドル。実質))× 価格 13.5%(IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 28 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 210 億ドル × シェア 10.4% × 価格 1.30 倍(EBITDA 率 15.5%)
倍率:利益ベースで測る。事業の ROE 2.7% は k 8.5% を下回るので、価値は稼ぐ力(10 年目の純利益 3.1 億ドル ÷ k 8.5% = 36 億ドル)で測る。構造的に負けて普通の化学会社の評価に落ちる筋書きなので、稼ぐ力の 75%(27 億ドル、PER 8.8 倍・PBR 0.24 倍)に置いた。純利益は GAAP。
確率:構造的に負ける筋書き。H&B でノボネシスと dsm-firmenich に酵素・培養の主要顧客を取られ、Taste と Scent でも食品・日用品大手の内製化と複数社発注、中国・インド勢の価格破壊が進み、リーマン級の不況も重なる。IFF は 2022〜23 年に 2 年連続で減損を出し、2025 年にも食品素材で 11.2 億ドルの減損を出した実績があり、同領域の他社より厚い 15% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
Taste(風味)
食品・飲料・乳製品・菓子・調味料向けの風味(フレーバー)と食品原料。顧客ごとの配合で売る。
| 数量世界の風味・味づけ市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 270 | 9.2% | 25 | 3 |
| 10 年後 中立 | 323 | 13.0% | 42 | 6 |
取り方:世界の風味・味づけ市場を 270 億ドル(推定。ジボダン 約 44 億ドル・dsm-firmenich の食品部門 約 34 億ドル・シムライズ・ケリー・IFF 24.8 億ドルほか上位 5 社で約 4 割)と置き、売上 24.8 億ドルからシェア 約 9.2% を逆算した。2025 年の継続事業の組み替えは未開示のため、2026 年見通しと上期の組み替えから逆算した推定:調整後 EBITDA 4.55 億ドル(率 18.3%)、D&A の割り当て 1.9 億ドルを引いた営業利益 2.65 億ドル。2026 年 4〜6 月は売上 6.88 億ドル(有機 +4%)、EBITDA 率 18.0%。競合と照らすと、風味はジボダン(EBITDA 率 23.4% の同社全体)が首位級、dsm-firmenich とシムライズが続き、IFF は規模は同格でも利益率が低い。
健康・バイオ(H&B)
洗剤・食品・穀物加工の酵素、食品の培養、プロバイオティクス。社内で最も利益率が高い。
| 数量酵素・培養・プロバイオティクスの世界市場(億ドル。実質) | 価格IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 150 | 15.2% | 23 | 3 |
| 10 年後 中立 | 202 | 21.4% | 43 | 9 |
取り方:酵素・培養・プロバイオティクス・バイオ素材の世界市場を 150 億ドル(推定。首位のノボネシスの売上 約 50 億ドル、IFF 22.8 億ドル、dsm-firmenich ほか)と置き、売上 22.8 億ドルからシェア 約 15.2% を逆算した。推定の EBITDA 5.5 億ドル(率 24.1%)から D&A の割り当て 2.2 億ドル(買収無形資産の償却が最も多い)を引いて営業利益 3.3 億ドル。2026 年 4〜6 月は売上 6.01 億ドル(有機 +5%)、EBITDA 率 25.0%。競合と照らすと、首位のノボネシスは有機 +7%・EBITDA 率 37.1% で、IFF の同じ酵素と 10 ポイント以上の利益率の差がある。
Scent(香り)
高級香水・日用品の香り・香料原料・美容素材。香料原料は川上までの自社生産を持つ。
| 数量香水・日用品の香り・香料原料の世界市場(億ドル。実質) | 価格IFF のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 210 | 11.8% | 25 | 3 |
| 10 年後 中立 | 251 | 16.7% | 42 | 7 |
取り方:香水・日用品の香り・香料原料・美容素材の世界市場を 210 億ドル(推定。ジボダンの香料・美容 約 44 億ドル、dsm-firmenich の香料・美容 約 41 億ドル、IFF 24.8 億ドル、シムライズ 約 23 億ドルの上位 4 社で約 6 割)と置き、売上 24.8 億ドルからシェア 約 11.8% を逆算した。推定の EBITDA 4.9 億ドル(率 19.8%)から D&A の割り当て 1.8 億ドルを引いて営業利益 3.1 億ドル。2026 年 4〜6 月は売上 6.65 億ドル(有機 +8%、香料原料 約 +20%)、EBITDA 率 20.2%。競合と照らすと、ジボダンの香料・美容が首位、dsm-firmenich の香料・美容(EBITDA 率 21.7%)が続く。IFF は汎用の香料原料を重視しない方針に変え、特殊な原料と高級香水へ寄せている。
リスクと懸念
食品素材の売却が遅れる・崩れる
完了は 2027 年 4〜6 月末までの予定で、規制の承認が要る。遅れると、自社株買い 20 億ドル(完了後)と借金返済の計画がずれ、座礁費用の削減も遅れる。買い手が CVC のファンドで資金は確保されているが、承認や市況の悪化で条件が変われば、売却額(企業価値 約 43 億ドル)が下がる可能性がある。
売却後の希薄化と座礁費用
食品素材の EBITDA 約 4.3 億ドルを失い、完了後 12 か月は調整後 EPS が下がる見込み。本社費 約 1 億ドルが取り残され、3 分の 2 を 1 年、ほぼ全部を 2 年で削る計画。削減が遅れると、利益率の改善(20.0% から 21〜23% へ)が数年ずれ、中立の筋書きの純利益が数年のあいだ 1 割ほど下がる。
利益率の改善の遅れ(H&B・Scent)
H&B の EBITDA 率はノボネシスの 37% に対し 25% で、統合と効率化で 27% に上げる計画。2026 年の Scent は原料・物流費の高騰を顧客への追加課金で埋めている段階で、汎用の香料原料は中国・インドの価格競争を受ける。改善が止まれば、10 年後の純利益は中立の 13.2 億ドルから 9 億ドル前後へ 3 割落ちる。
借金と金利
純負債は 60.6 億ドル(2025 年末)から 2027 年に 34 億ドル前後(EBITDA の 2.0 倍)へ下がる計画だが、自社株買いと配当を続ければ余裕は薄い。借り換えのたびに金利は約 5.75% へ上がり、10 年で全額が置き換わる。景気後退で EBITDA が 15% 落ちると、純負債÷EBITDA は 2.7 倍に上がり、格下げのリスクが出る。
顧客の食品・日用品大手の需要と価格圧力
食品・飲料大手は数量の伸びが鈍く、値下げの要求を強めている。大手は自社で風味を作る内製化や、ケリー・シムライズなど他社への分散も進める。IFF の Taste(売上 24.8 億ドル)は、シェアが 9.2% から 8% へ落ちるだけで、10 年後の EBITDA が約 1.2 億ドル減る。
合併後の資本配分と減損
2022〜23 年に連続の減損(純損失 19 億ドル・26 億ドル)、2025 年にも食品素材で 11.2 億ドル。残るのれん 81.5 億ドルは H&B(43.9 億ドル)・Taste(22.7 億ドル)・Scent(14.9 億ドル)に残り、H&B の利益が計画に届かなければ減損が再び出る。減損は現金を出さないが、経営への信頼と、自己資本・PBR の見え方に響く。
今後の分かれ目
- 食品素材の売却が 2027 年 4〜6 月末までに完了し、純収入 約 38 億ドルが入ったら
- 借金の返済と 20 億ドルの自社株買いが予定どおり進み、純負債÷EBITDA が 2.0 倍台へ下がる。中立の筋書きの確率を保ち、悲観のうち「再編の失敗」の確率を下げる。
- 売却が遅れる・条件が悪化する、または完了前に規制の承認が下りないとしたら
- 自社株買いの時期がずれ、座礁費用の削減も遅れる。中立の純利益を 1 割下げ、やや悲観の確率を 24% から 30% へ上げる。
- 2026 年下期〜2027 年に、継続事業の EBITDA 率が 21% を下回って後退したら
- 座礁費用と H&B の統合の効果が出ていないことを意味する。中立の EBITDA 率 23.2% を 22% へ下げ、10 年の悲観の確率を上げる。
- H&B の有機成長が +5% 以上を続け、EBITDA 率が 27% へ近づいたら
- ノボネシスとの差が縮み始めた証拠。やや楽観・楽観の確率を 5 ポイントずつ上げ、中立の H&B 利益率 27% を上方へ見直す。
- 食品・飲料大手の数量が 2027 年も減り、Taste の有機成長が +2% を下回り続けたら
- Taste の市場の数量(年 +1.8%)の前提を見直し、シェアを失う筋書き(やや悲観)の確率を上げる。
- 完了後に大型の買収(売上 20 億ドル以上)を発表したら
- 売却で下げた借金が再び増え、のれんが積み上がる。資本配分の信頼を下げ、悲観の確率を上げる。完了前の買収発表は今回の筋書きに入れていない。
見ておくもの
- 食品素材の売却の進み(規制の承認・完了時期)と純収入 約 38 億ドルの使い道(借金の返済 10 億ドル超・自社株買い 20 億ドル)
- 継続事業の調整後 EBITDA 率(上期 21.8% から 2027 年に 22% 台へ)と、座礁費用 約 1 億ドルの削減の進み
- H&B の有機成長(+5% 前後)と EBITDA 率(25%→27%)。ノボネシス・dsm-firmenich との差
- Scent の香料原料(+20%)の持続と、原料・物流費の転嫁(追加課金)の剥がれ
- 純負債÷EBITDA(2.0〜2.5 倍)と借り換えの実効金利(5.75% 前後)
- GAAP の純利益(償却と再編費用を引いた後)が 2027 年に 5〜6 億ドルへ増えるか
倍率と資本コストの決め方
今の GAAP の PER(約 58 倍)・今の時価総額 232 億ドル・過去の PER の中央値 21.6 倍を見る前に、3 事業で「市場 × シェア × 価格」を積み上げ、EBITDA から D&A(買収無形資産の償却 3.3 億ドルを含む)と再編費用を引き、利払いを借り換え後の約 5.75% で置いて純利益を出した。倍率は k 8.5%(基本 8.0% + quality +0.5%:借金 +0.5%)・g 4%(市場・シェア・価格から出し、ROE からは出していない)・帳簿の ROE の式(堀は普通)の 8.5〜9.5 割に置き、10 年の中立は 12.6 倍。悲観は ROE が k を下回るので稼ぐ力(純利益 ÷ k)の 75% で測った。償却は戻さず GAAP で置いた(戻せば純利益が約 2.5 億ドル増える)。割高と出たのは今の値段が利益率の改善を先に織り込んでいるためで、悲観を厚くしたからだけではない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。