結論
インターナショナル・ペーパー(IP)は、北米の段ボール原紙・箱を主力に、2025 年 1 月の DS スミス買収で欧州(EMEA)の包装を取り込んだ会社。2026 年 1 月に繊維事業(グローバル・セルロース・ファイバー)を売り終え、継続事業の売上は年約 240 億ドル。調整後 EBITDA の 2026 年見通しは 1 月の 35〜37 億ドルから 32〜34 億ドルへ下がった。
減価償却が約 20 億ドルと大きく、GAAP の営業利益は EBITDA の 4 割、そこから支払利息 3.7 億ドルを引くと 2026 年の純利益は 7 億ドル弱にしかならない(2025 年は欧州ののれん減損 24.7 億ドルで赤字)。純負債は約 85 億ドルで EBITDA の 2.6 倍。
数量 × シェア × 価格で積んだ中立は、2035 年に北米の EBITDA 率 19.5%・欧州 14.5%、純利益 約 23 億ドル、倍率は利益ベースの正当化 PER(k 10.0%、堀は弱い)の 9 割で 9.7 倍(ROE が k を上回るので 1÷k 付近が下限)。競合の PKG(EBITDA 率 21%)には届かない。2026 年 1 月に発表した欧州の分離(独立上場、IP は約 20% を保有)は価値を生む可能性があるが、実行と費用が確かでなく、見通しの引き下げが続いた経緯から、確率は悲観側を厚くした。結論は総合の差のとおり。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後も段ボールは存在し、通販・食品・日用品の出荷が続くかぎり需要は底堅い。ただし IP は商品事業の中で費用が高い側にいて、北米の EBITDA 率は競合に 5〜9 ポイント劣る。堀は広がらず、今後 10 年で費用を競合に近づけられるかどうかがすべて。
オーナー利益を見ると、2026 年の EBITDA 約 32〜34 億ドルから設備投資 約 21 億ドル、利息 3.7 億ドル、税などを引くと残りは年 6 億ドル前後で、配当 9.8 億ドルに届かない。成長のための再投資が減価償却を上回る間は、株主に出せる利益は小さい。再投資の収益率は会社が「10 台半ば〜20 台半ば」と言うが、過去の ROE(2023〜24 年の 4〜7%)はそれに届いていない。
安全域:今の時価総額(約 180 億ドル)は自己資本の約 1.2 倍、純負債を含む企業価値は EBITDA の約 8 倍。式どおりの倍率(k 10%・ROE 約 12% で約 10 倍)を 2035 年の純利益 約 23 億ドルに掛けた中立の時価総額 約 219 億ドルは今の約 1.2 倍で、年率 6〜7% と資本コスト 10% に届かない。確信度は低い。
何で稼ぐ会社か
IP は①北米の包装(売上の約 61%)と②EMEA の包装(約 39%)の 2 本で稼ぐ。2026 年 1 月に売却を終えた繊維事業は継続事業に入らない。
①北米:原紙工場で段ボール原紙を作り、自社の箱工場で箱にする垂直統合型。2026 年 Q2 の売上は 36.9 億ドル、調整後 EBITDA は 4.25 億ドルで EBITDA 率は約 11.5%(上期 12.3%)と、PKG(21%)・スマーフィット・ウェストロック北米(14%)に劣る。工場の閉鎖(サバンナなど)と改造(リバーデール)、2026 年上期の NORPAC(ワシントン州)・デルマーバ(デラウェア州の箱工場)の買収で費用の低い体制へ移している途中。ピンヒル工場(アラバマ州)は屋根の修理で一時停止し、Q3 に 0.85 億ドルの押し下げ(保険で大半を回収見込み)。
②EMEA:旧 DS スミス。欧州の段ボール箱・産業用包装・リサイクル。2026 年 Q2 は売上 22.9 億ドル、EBITDA 1.82 億ドル(8.0%)、営業損益は −0.8 億ドル。31 工場の閉鎖と 3,000 人超の削減を進め、発表済みの年率の費用削減は 2.1 億ドルを超える。
稼ぎ方の核は、(1) 原紙の価格と稼働率(6 月に +50 ドル/トンを公表、実現は 2027 年が中心。価格 1 ドル/トンで年 0.09 億ドル)、(2) 箱の数量(北米は 2026 年 Q2 で前年比 +1.7%、通期で業界を約 2 ポイント上回る見込み)、(3) 費用削減(北米は 2027 年へ 3.5〜4.0 億ドルの持ち越し、欧州は 2027 年に追加 2.0〜2.5 億ドル)。設備投資は 2026 年上期で 10.5 億ドルと減価償却を上回り、FCF は上期 0.9 億ドル、配当は上期 4.9 億ドルで FCF を超える。
優良さと弱いところ
堀は北米では広くない。原紙は商品で、北米は IP・PKG・スマーフィット・ウェストロック・ジョージア・パシフィックなど少数が大半を握り、2025 年 2 月〜2026 年 3 月に約 390 万トン(Fastmarkets 推定)の能力が閉じて規律は戻りつつあるが、IP の北米の EBITDA 率は 2026 年上期で 12%、PKG の 21% の約 6 割にとどまる。理由は、工場が古く費用の高い原紙工場が残っていること、箱工場の配置、過去の設備投資不足。会社自身が 3 つの工場を「投資に値しない」と閉鎖の対象にしている。
欧州は DS スミスの段ボール・産業用包装の規模が強みで、再利用・リサイクルの規制(PPWR)が追い風になりうる一方、2025 年にのれんを 24.7 億ドル減損し、EBITDA 率 8% は 2 割近い同業の水準に遠い。
資本効率は低い。ROE は 2024 年で 6.8%、2023 年で 3.6%。買収で膨らんだ自己資本(148 億ドル、のれん 52.9 億ドル)に対し利益が小さい。経営は大胆に組み替える一方、2026 年の見通しを 1 月の 35〜37 億ドルから 32〜34 億ドルへ下げ、実行費用も想定を上回っており、計画の達成を前提にできない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北米の段ボール原紙は 2023〜25 年に不況で、2025 年に約 10% の能力が閉じて需給が締まり始めた。2026 年に PKG が +140 ドル/トン、IP が +80 ドル/トン、スマーフィット・ウェストロックが +100 ドル/トンを公表したが、実現は IP の電話会見で「2027 年が中心」。Fastmarkets の指数の認定は 100 ドル/トン台で、IP は 6 月の +50 ドル/トンのみを織り込む。需要は 2026 年下期の業界が横ばいで、箱の団体 AICC は値上げに反対している。
競合は北米で PKG(利益率最高)・スマーフィット・ウェストロック・ジョージア・パシフィック・クラフト。2025 年に IP・スマーフィット・ウェストロック・PKG の 3 社が大型の買収・統合を済ませ、新設の能力は小さい。ただし能力が戻れば価格はすぐ崩れる。
欧州は需要が小幅増にとどまり、価格は需要次第。EU の包装規則(PPWR)は再利用・リサイクルを増やすが、薄肉化・軽量化は数量の逆風。
10 年の見方:市場の実質成長は北米で年 0.5〜0.8%(電子商取引の箱が軽量化を上回る)、欧州で年 0.8〜1%。価格は中立で物価 3.5% 並み。2026 年は費用(運賃・古紙・ディーゼル・医療)の上昇で値上げが吸収された年で、会社も「過去の値上げは大半が物価に消えた」と述べている。
資本政策と M&A
資本配分は大型買収が中心で、成功と言い切れない。2025 年 1 月の DS スミス買収(全株式)で株数が約 45% 増え(台帳の 2025 年の株数 +45.6%、今の 5.295 億株に入っている)、欧州ののれんを減損した。2026 年 1 月に GCF を AIP へ売り(現金約 11 億ドルと優先株、2026 年上期の売却収入 10.8 億ドル)、純負債を減らした。分離(欧州の独立上場)は 2026 年 1 月に発表、12〜15 か月で完了見込み、IP は約 20% を 12〜18 か月保有する。CEO は「適切な相手の提案なら検討する」とも述べた。
配当は年約 9.8 億ドルで、2026 年上期の FCF(0.9 億ドル)を大きく上回る。純利益(約 7 億ドル)も下回るので、配当の維持は借金の増加か資産売却に頼る面がある。自社株買いは行っていない。2026 年 6 月末の現金は 7.3 億ドル、負債 約 92 億ドル、純負債 約 85 億ドル。2026 年の利息は 3.7 億ドルで、借り換えのたびに上がる。人についての事実(経営者の続柄・年齢など)は確認が取れないため書かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
北米の原紙は 2025〜26 年に約 390 万トンの能力が閉じて締まり、2026 年の値上げの大半が 2027 年に実現する。IP の北米の EBITDA は 2026 年上期の 9.0 億ドルから下期は約 15 億ドルへ上がる見通しで、リバーデールの改造、サバンナなど工場の閉鎖、2027 年へ持ち越す 3.5〜4.0 億ドルの費用削減が効けば、競合の PKG(21%)・スマーフィット・ウェストロック(18% 目標)に近づく余地は大きい。欧州も 31 工場の閉鎖と 2027 年の追加削減 2.0〜2.5 億ドルで EBITDA 率が 8% から 12〜15% へ上がり、2025 年のれん減損後の自己資本 148 億ドルに対する利益が戻る。
分離は欧州の独立上場で価値を可視化する。IP が約 20% を保有し、北米中心の会社に純化すれば倍率も上がる。2026 年に NORPAC・デルマーバの買収で費用の低い体制ができ、GCF の売却で純負債が減った。式どおりの倍率で 10 年の中立は今の時価総額を上回る。
慎重な見方
IP は 2026 年の見通しを 1 月の 35〜37 億ドルから 32〜34 億ドルへ下げ、実行費用は想定より高く、当初の費用削減目標 約 12 億ドルのうち約 4 分の 1 がまだ実行されていない。下期の北米業界需要は横ばいで、値上げの実現は 2027 年に先送りされ、会社自身が「過去の値上げは大半が物価に消えた」と認める。EBITDA が 2026 年の下期で急に上がる見通し自体が、達成されないリスクを抱える。
財務は重い。純負債は EBITDA の 2.6 倍で、2026 年上期の FCF は 0.9 億ドル、配当は 4.9 億ドルで FCF を上回る。純利益は 7 億ドル弱、減価償却は 20 億ドルで、買収の無形資産の償却と設備投資が利益を食う。ROE は 2023〜24 年で 4〜7%、今の PBR は 1.2 倍、リーマンの山から谷の下げは −84% と同業で最も深い。分離は費用と欧州の再建の遅れで価値を壊す可能性があり、配当の維持が資本を削る。
どちらに重みを置いたか
北米の需給が締まり、費用削減が出始めているのは事実で、2027〜28 年の利益の戻りは強気の見方に分がある。ただし IP は見通しの引き下げが続き、財務が重く、FCF が配当を賄えない。確率は 10 年で楽観側 25%・悲観側 41% と、慎重な見方に寄せた(財務が軽い PKG より悲観を厚く、SW とほぼ同じ)。式どおりの倍率で割り引いた価値の結果は、総合の差のとおり。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 37.39 ドル198 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 23.82 ドル126 億ドル)。 今の値に割り戻すと 29.21 ドル155 億ドル、今との差 −13.3%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 10.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 92.43 ドル489 億ドル | 37.77 ドル200 億ドル | +286.6% | +14.5% | 7.81 ドル41 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 63.25 ドル335 億ドル | 31.16 ドル165 億ドル | +180.3% | +10.9% | 17.94 ドル95 億ドル |
| 中立 | 34% | 41.32 ドル219 億ドル | 24.55 ドル130 億ドル | +95.6% | +6.9% | 22.40 ドル119 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 16.92 ドル90 億ドル | 20.40 ドル108 億ドル | +10.8% | +1.0% | 9.70 ドル51 億ドル |
| 悲観 | 15% | 9.18 ドル49 億ドル | 13.22 ドル70 億ドル | −33.5% | −4.0% | 3.36 ドル18 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 37.39 ドル198 億ドル | 23.82 ドル126 億ドル | +81.7% | +6.2% | 61.21 ドル324 億ドル |
今の株価時価総額 33.68 ドル178 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:北米が競合並みの 22% に届き、欧州も 17% で定着 利益 44 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 92.43 ドル489 億ドル
2035 年、北米は閉鎖・改造と競合並みのコスト水準で EBITDA 率 22%(63.5 億ドル)。市場は 12.8% 増、シェアは 20.5%(買収と軽量化の箱で取り込み)、価格は物価 1.41 倍に 13% 上乗せした 1.60 倍。欧州は PPWR(EU の包装規則)に沿った再利用・リサイクルの需要を取り、EBITDA 率 17%(31.2 億ドル)、シェア 15%。売上 472 億ドル、純利益 43.7 億ドル。純負債は EBITDA の約 1.0 倍まで下がり、自社株買いと増配で 10 年の還元は正味 200 億ドル。競合の PKG(EBITDA 率 21〜23%)・スマーフィット・ウェストロックと並ぶ位置。自己資本が小さくなる分 ROE が上がる点には注意。
- 北米の包装(段ボール原紙・段ボール箱):数量 880(北米の段ボール・原紙・紙器の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。推定。PKG・SW と同じ定義))× 価格 32.8%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 289 億ドル・営業利益 48 億ドル。市場 880 億ドル × シェア 20.5% × 価格 1.60 倍(EBITDA 率 22.0%、減価償却 15.5 億ドル)
- EMEA の包装(欧州の段ボール・産業用包装。旧 DS スミス):数量 790(EMEA の段ボール・産業用包装・紙器の市場(億ドル。実質。推定。調査会社の幅が大きい))× 価格 23.3%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 184 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 790 億ドル × シェア 15.0% × 価格 1.55 倍(EBITDA 率 17.0%、減価償却 14.0 億ドル)
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 17.6%、k 10.00%(基本 8.0% + quality +2.0%)、残る割合 0.33(弱い堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.5%、g 4.0%(市場の数量(段ボールの実質 年 +0.5〜1%)× シェア × 価格(物価並みに届かない年もある)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.3 倍(来年の利益に対して)。堀が弱く商品相場に左右される利益なので、上限の 9.5 割(10.8 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 11.2 倍。時価総額 = 純利益 44 × 11.2 倍 = 489 億ドル。
確率:10 年にわたり北米が競合並みの利益率に届き、欧州の分離後も費用削減が定着する展開。IP は北米・欧州とも利益率を競合並みに引き上げた実績が乏しく、6% に置いた。
やや楽観 19% やや楽観:北米 21%、欧州 15.5% で、分離後の 2 社が安定 利益 32 億ドル · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 63.25 ドル335 億ドル
2035 年、費用削減と設備投資が計画どおり効き、北米の EBITDA 率は 21%(53.7 億ドル)、欧州は 15.5%(24.9 億ドル)。市場は 10.9% 増、シェア 19.7%、価格 1.50 倍。売上 416 億ドル、純利益 32.2 億ドル。分離後の IP(北米)と欧州の新会社は、どちらも投資適格で配当を増やし、10 年の還元は正味 165 億ドル。競合のスマーフィット・ウェストロックが北米の利益率を 18% 近くまで上げる中、IP も差を縮める。PKG(21〜23%)との差は 1〜2 ポイント残り、工場の改造は終えても古い原紙工場の一部は残る。欧州は PPWR に沿った再利用・リサイクルの需要を取りつつ、薄肉化の逆風を電子商取引が相殺する。
- 北米の包装(段ボール原紙・段ボール箱):数量 865(北米の段ボール・原紙・紙器の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。推定。PKG・SW と同じ定義))× 価格 29.5%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 256 億ドル・営業利益 39 億ドル。市場 865 億ドル × シェア 19.7% × 価格 1.50 倍(EBITDA 率 21.0%、減価償却 15.0 億ドル)
- EMEA の包装(欧州の段ボール・産業用包装。旧 DS スミス):数量 770(EMEA の段ボール・産業用包装・紙器の市場(億ドル。実質。推定。調査会社の幅が大きい))× 価格 20.9%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 161 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 770 億ドル × シェア 14.2% × 価格 1.47 倍(EBITDA 率 15.5%、減価償却 13.8 億ドル)
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 15.1%、k 10.00%(基本 8.0% + quality +2.0%)、残る割合 0.33(弱い堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 11.7%、g 3.8%(市場の数量(段ボールの実質 年 +0.5〜1%)× シェア × 価格(物価並みに届かない年もある)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 10.9 倍(来年の利益に対して)。堀が弱く商品相場に左右される利益なので、上限の 9.2 割(10.0 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 10.4 倍。時価総額 = 純利益 32 × 10.4 倍 = 335 億ドル。
確率:費用削減と設備投資(リバーデール・ウォータールー。会社の目標は 10 台半ば〜20 台半ばの収益率)が計画どおり効き、北米が 21% に近づく展開。19% に置いた。
中立 34% 中立:北米 19.5%、欧州 14.5%。競合には届かないが借金は下がる 利益 23 億ドル · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 41.32 ドル219 億ドル
2035 年、北米は EBITDA 率 19.5%(44.6 億ドル)で、費用削減と改造の効果が残る一方、競合の PKG(21〜23%)・スマーフィット・ウェストロック(18% 目標)には届かない。市場は 9% 増(年 0.85%)、シェアは 18.8% を維持、価格は物価 1.41 倍に 2% 強上乗せした 1.43 倍。欧州は 14.5%(20.4 億ドル)、価格 1.41 倍で、再利用・軽量化の逆風を電子商取引が相殺する。売上 369 億ドル、純利益 22.6 億ドル。純負債は EBITDA の約 1.5 倍へ下がり、配当は年 3% 増、2030 年から自社株買いを再開して 10 年の還元は正味 130 億ドル。
- 北米の包装(段ボール原紙・段ボール箱):数量 850(北米の段ボール・原紙・紙器の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。推定。PKG・SW と同じ定義))× 価格 26.9%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 229 億ドル・営業利益 30 億ドル。市場 850 億ドル × シェア 18.8% × 価格 1.43 倍(EBITDA 率 19.5%、減価償却 14.6 億ドル)
- EMEA の包装(欧州の段ボール・産業用包装。旧 DS スミス):数量 756(EMEA の段ボール・産業用包装・紙器の市場(億ドル。実質。推定。調査会社の幅が大きい))× 価格 18.6%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 141 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 756 億ドル × シェア 13.2% × 価格 1.41 倍(EBITDA 率 14.5%、減価償却 13.5 億ドル)
倍率:利益ベースの正当化 PER:事業の ROE 12.3%、k 10.00%(基本 8.0% + quality +2.0%)、残る割合 0.33(弱い堀)で RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.8%、g 3.5%(市場の数量(段ボールの実質 年 +0.5〜1%)× シェア × 価格(物価並みに届かない年もある)から出した値。ROE から出していない)、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 10.4 倍(来年の利益に対して)。堀が弱く商品相場に左右される利益なので、上限の 9 割(9.4 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 9.7 倍。時価総額 = 純利益 23 × 9.7 倍 = 219 億ドル。
確率:北米は閉鎖と改造で効率が上がるが、競合(PKG の 21%・SW の 18% 目標)には届かず、欧州は費用削減で 14.5% へ。最大の 34% に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:利益率が今の水準に張り付き、ROE が資本コストを下回る 利益 11 億ドル · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 16.92 ドル90 億ドル
2035 年、数量は横ばい(市場 4.5% 増)、価格は物価に届かない 1.36 倍で、費用削減が賃金・エネルギーの上昇に消えて北米の EBITDA 率は 17.5%(34.9 億ドル)、欧州は 12%(14.5 億ドル)に張り付く。シェアは競合(PKG・スマーフィット・ウェストロック)に 0.8 ポイント取られ 18.0%。売上 320 億ドル、純利益 11.2 億ドル。純負債は EBITDA の 2.3 倍で、設備投資に追われて自社株買いはなく、配当は物価に追いつかず、10 年の還元は正味 108 億ドル。ROE が資本コストを下回り、価値を作らない事業になる。
- 北米の包装(段ボール原紙・段ボール箱):数量 815(北米の段ボール・原紙・紙器の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。推定。PKG・SW と同じ定義))× 価格 24.5%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 200 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場 815 億ドル × シェア 18.0% × 価格 1.36 倍(EBITDA 率 17.5%、減価償却 14.0 億ドル)
- EMEA の包装(欧州の段ボール・産業用包装。旧 DS スミス):数量 720(EMEA の段ボール・産業用包装・紙器の市場(億ドル。実質。推定。調査会社の幅が大きい))× 価格 16.8%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 121 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 720 億ドル × シェア 12.5% × 価格 1.34 倍(EBITDA 率 12.0%、減価償却 13.0 億ドル)
倍率:事業の ROE 8.7% が k 10.00%(基本 8.0% + quality +2.0%)以下なので、ためた利益は 1 ドル未満の価値。PER は 1 ÷ k = 10.0 倍が上限。利益率が今の水準に張り付く分、上限の 8 割(8.0 倍)に置き、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 8.0 倍。時価総額 = 純利益 11 × 8.0 倍 = 90 億ドル。
確率:数量が横ばいで価格が物価に届かず、費用削減が賃金・エネルギーの上昇に消えて利益率が今の水準に張り付く展開。2023〜26 年の実績がこれに近いので、SW(26%)と同じ 26% に置いた。
悲観 15% 悲観:構造的に負ける。数量・シェアを失い配当を半分にする 利益 7 億ドル · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 9.18 ドル49 億ドル
2035 年、構造的に負ける。軽量化・薄肉化・再利用で北米の市場が 2% 縮み、シェアも PKG・スマーフィット・ウェストロックとのコスト競争で 16.8% へ下がる。価格は物価に届かない 1.30 倍。欧州は再建が実を結ばず EBITDA 率 11.5%(11.0 億ドル)。北米は 17.5%(29.2 億ドル)。減損と工場閉鎖で減価償却は減るが、純利益は 7.1 億ドルにとどまる。配当は 2029 年に半分にして 10 年の還元は正味 70 億ドル。もう優良ではなくなった状態で、自己資本 × 式の PBR で測る。
- 北米の包装(段ボール原紙・段ボール箱):数量 765(北米の段ボール・原紙・紙器の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。推定。PKG・SW と同じ定義))× 価格 21.8%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 167 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 765 億ドル × シェア 16.8% × 価格 1.30 倍(EBITDA 率 17.5%、減価償却 12.5 億ドル)
- EMEA の包装(欧州の段ボール・産業用包装。旧 DS スミス):数量 650(EMEA の段ボール・産業用包装・紙器の市場(億ドル。実質。推定。調査会社の幅が大きい))× 価格 14.7%(IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 96 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場 650 億ドル × シェア 11.5% × 価格 1.28 倍(EBITDA 率 11.5%、減価償却 11.0 億ドル)
倍率:構造的に負けて自己資本 ROE は 5.1%(10 年目の純利益 ÷ 自己資本 139 億ドル)。長期の g 2.5%(市場 実質 −1%(軽量化・薄肉化・再利用)× シェア 0 × 価格は物価並み。伸びに要る元手も減る)・k 10.0% を式 PBR = (ROE − g)/(k − g) に入れた値 0.35 倍。ROE が k を下回るので帳簿は床にならない。企業価値は EBITDA の約 3 倍(時価総額 49 + 純負債 約 60 億ドル)の安値圏で、衰退する紙の水準。
確率:10 年のうちに北米で数量・シェアを失い、欧州の再建も実を結ばず、優良でなくなる展開。商品事業で深い不況が一度は来る確率も含め、IP は財務が重く、SW と同じ 15% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
北米の包装(段ボール原紙・段ボール箱)
北米の原紙工場から自社の箱工場へ回す垂直統合型。2026 年に NORPAC(ワシントン州)と箱工場デルマーバ(デラウェア州)を買い足した。売上の約 61%。
| 数量北米の段ボール・原紙・紙器の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。推定。PKG・SW と同じ定義) | 価格IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 780 | 18.9% | 147 | 14 |
| 10 年後 中立 | 850 | 26.9% | 229 | 30 |
取り方:「今」は 2026 年の会社見通し(下限寄り)の年率で置いた。市場を約 780 億ドル(PKG・SW と同じ推定。調査会社の幅が大きい)、売上は 2026 年上期(36.26+36.88 億ドル)の 2 倍に買収分を足して 147 億ドルとし、シェアは約 18.8%。EBITDA は 2026 年の北米見通し 23.5〜24.5 億ドルの下限の 23.5 億ドル(EBITDA 率 16.0%。上期の実績は 12.3% で、下期の改善が前提)、減価償却 9.3 億ドルを引いて営業利益 14.2 億ドル。競合の EBITDA 率は PKG 21.1%(2026 年 Q2)、SW 北米 14.1%(上期)。価格は中立で物価 3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍が基本。
EMEA の包装(欧州の段ボール・産業用包装。旧 DS スミス)
2025 年 1 月に買収した DS スミス。欧州の段ボール箱・産業用包装・紙リサイクル。2026 年 1 月に分離を発表(独立上場、IP は約 20% を保有)。売上の約 39%。
| 数量EMEA の段ボール・産業用包装・紙器の市場(億ドル。実質。推定。調査会社の幅が大きい) | 価格IP のシェア × 価格指数(2026 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 13.2% | 92 | −1 |
| 10 年後 中立 | 756 | 18.6% | 141 | 7 |
取り方:市場を約 700 億ドル(欧州の段ボール・産業用包装・紙器の推定。開示が無いので幅が大きい)と置き、売上は 2026 年上期(23.23+22.87 億ドル)の 2 倍の 92.2 億ドルからシェア約 13.2%。EBITDA は 2026 年の EMEA 見通し 9〜10 億ドルの下限の 9.0 億ドル(EBITDA 率 9.8%。上期 3.9 億ドル・下期 5.1〜6.1 億ドルの見通し)、減価償却(買収の無形資産の償却を含む)10.2 億ドルを引くと営業利益は −1.2 億ドル。2025 年の EMEA の疑似通年 EBITDA は約 8 億ドル。価格は中立で物価並み。
リスクと懸念
見通しの未達(下期の急な改善が前提)
2026 年の調整後 EBITDA は 1 月の 35〜37 億ドルから 32〜34 億ドルへ下がった。上期は 12.6 億ドルで、下期に約 20 億ドルを出す前提(北米の下期は上期より約 6 億ドル増)。下期の業界需要は横ばいで、運賃・古紙・医療費の上昇もあり、下限にも届かなければ再び引き下げになる。「今」は下限寄りに置いた。
財務が重く、配当が FCF を上回る
純負債は約 85 億ドル(EBITDA の 2.6 倍)、利息は年 3.7 億ドルで借り換えのたびに上がる。2026 年上期の FCF は 0.9 億ドルで、配当 4.9 億ドルを賄えない。設備投資は減価償却を上回る水準が 2〜3 年続く。不況が来ると純負債は EBITDA の 4 倍超になり、配当を削る筋書きがある。
欧州の再建と分離の実行
2025 年に欧州ののれんを 24.7 億ドル減損した。EBITDA 率は 8% で、31 工場の閉鎖と 3,000 人超の削減には費用がかかり、当初の費用削減目標 約 12 億ドルのうち約 4 分の 1 は未実行。分離(独立上場、IP は約 20% を保有)の費用と二重の費用で利益が削られる可能性。
値上げの実現が遅れる・物価に消える
原紙の値上げは 2026 年に PKG +140・IP +80・SW +100 ドル/トンと公表されたが、実現は 2027 年が中心で、IP は 6 月の +50 ドル/トンのみ織り込む。会社自身が過去の値上げは大半が物価に消えたと述べる。能力が戻れば価格はすぐ崩れる。
北米の費用格差が埋まらない
北米の EBITDA 率は 2026 年上期で 12.3%、PKG は 21%、SW 北米は 14%。IP は閉鎖と改造で格差を縮める計画だが、古い工場・箱工場の配置・過去の設備投資不足は一度には直らない。3 つの工場を「投資に値しない」と閉鎖の対象にしている。
のれん・買収の高値づかみと分離後の位置
のれんは 52.9 億ドルと自己資本の約 36%。DS スミス買収は減損になった。分離後の北米の IP は、より小さく、競合の PKG・スマーフィット・ウェストロックとの買収競争にも直面する。新たな大型買収は資本配分の質を問われる。
景気の谷と商品事業の波
リーマンの山から谷(2007-06→2009-02)で IP は −84%。コロナ(2020)−32%、2022 年の利上げ −36%。2022 年の PER 底 7.3 倍、2020 年は利益が谷で PER 81 倍。純利益が小さい今の水準ではわずかな EBITDA の下振れが赤字に直結する。
今後の分かれ目
- 2026 年の Q3・Q4 で調整後 EBITDA が見通し(Q3 7.8〜8.3 億ドル)の上半分に入り、2027 年の見通しが 36 億ドルを超えたら
- 費用削減と値上げが見通しどおり出ているとみて、楽観・やや楽観の確率を上げる。北米の EBITDA 率が 19% 台へ戻り、2028 年の純利益が 15 億ドルを超える。
- 2026 年の見通しが再び引き下げられ、下限の 32 億ドルを割ったら
- 費用削減の実行が遅れ、見通しの信頼が崩れたとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。純負債の EBITDA 倍率が 3 倍に近づき、配当が焦点になる。
- 欧州の分離が計画どおり完了し、欧州の新会社の EBITDA 率が 2027 年に 12% を超えたら
- IP が保有する約 20% の価値が顕在化し、北米中心の会社に純化できたとみて、中立の価値が上がる。
- 原紙の指数が 2 四半期続けて下がり、競合が能力を再稼働したら
- 2026 年の締まりが一時とわかり、北米の EBITDA 率が 16% 前後から戻らず、やや悲観の筋書きになる。
- 配当が減額される、または大型の買収・資産売却で純負債が EBITDA の 2 倍を切ったら
- 配当の減額は短期の悪材料だが借金を減らす選択で、純負債が 2 倍を切れば財務の確信度が上がる。逆に高値の買収は価値を壊す。
- 別の会社(PKG・スマーフィット・ウェストロックなど)から IP の北米または全体への提案が公表されたら
- CEO は「適切な相手の提案なら検討する」と述べた。買い値と借金次第で、のれんと負債の増減が筋書きの確率を動かす。
見ておくもの
- 調整後 EBITDA(2026 年の通期見通し 32〜34 億ドル、Q3 は 7.8〜8.3 億ドル)と、北米・EMEA の通期見通し(23.5〜24.5、9〜10 億ドル)
- 北米の箱の数量(2026 年 Q2 は前年比 +1.7%、業界を約 2 ポイント上回る見込み)と、北米の EBITDA 率(上期 12.3%)
- 原紙の価格指数(Fastmarkets RISI など)と、6 月の +50 ドル/トンの実現
- 純負債(2026 年 6 月末 約 85 億ドル)の EBITDA 倍率、FCF と配当の差
- 欧州の分離の進み方と費用、EMEA の EBITDA 率(2026 年 Q2 は 8.0%)
- 費用削減の実現(北米 3.5〜4.0 億ドルの持ち越し、欧州の追加 2.0〜2.5 億ドル)と実行費用
- 競合の能力の閉鎖・新設と、PKG・スマーフィット・ウェストロックの北米の利益率
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額(約 180 億ドル)や PBR(1.2 倍)を見る前に、北米と欧州を市場 × シェア × 価格指数で積み、EBITDA 率と減価償却から営業利益・純利益を出した。倍率は k 10.0%(基本 8.0% + 商品相場 0.5%・値決め 0.5%・借金 1.0%)・g 3〜4%(市場の実質伸び × シェア × 価格。ROE からは出していない)・自己資本 ROE の式の 8〜9.5 割に置いた(堀は弱い。ROE が k を上回る中立でも式の値は 1÷k に近い)。今の純利益が小さく赤字に近いので PER で今を測らず、ならした利益で見た。悲観は自己資本 ROE と k から PBR 0.35 倍。借金が重く、悲観側の確率を 41% と厚く置いた。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。
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