結論
イーストマン・ケミカルは、自動車の安全ガラス、特殊樹脂、塗料添加剤、化学中間体、セルロース繊維を製造する米国の化学会社である。筆者の結論は適正評価であり、現在の株価には大きな安全域がない。優れた製品技術は持つものの、全社の利益が強い堀によって守られているわけではない。
2025年の売上は約88億ドル、純利益は約5億ドルだった。2024年から利益が大きく減った原因は、化学中間体の価格競争と、たばこフィルター用繊維の数量減少である。純負債は約44億ドルあり、収益の回復が遅れるほど株主の取り分は薄くなる。
2026年4〜6月期には売上が前年同期比10%増え、利益も改善した。ただし、化学中間体の好転には中東の供給混乱による一時的な価格上昇が含まれる。2026年上期の純利益は前年同期を下回っており、持続的な回復が証明された段階ではない。7〜9月期決算は10月29日の発表予定であり、現時点では未公表である。
10年先の鍵は、特殊樹脂と添加剤の数量が世界経済以上に伸びるか、そして再生ポリエステルの技術が利益を生むかにある。キングスポートの再生設備は稼働実績を積み始めた。一方、フランスの新工場計画は停止中で、米国の追加計画も資金と採算の見直しが必要になった。技術の成功と株主利益の成功を同一視してはいけない。
2035年の中立では、売上が約140億ドル、純利益が約12億ドルへ伸びると考える。それでも必要な設備投資と借金を考慮すれば、化学業界でも特に高い評価を与える会社ではない。5つの筋書きから得る現在価値は約76億ドルで、添付データの時価総額約75億ドルとほぼ等しい。長期保有に耐える事業基盤はあるが、まだ十分に安く買える状況ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に10年後も商品が必要かを問う。イーストマンが製造する安全ガラス用樹脂、塗料添加剤、航空用作動油、医療用材料は、10年後にも必要だろう。顧客の設計に組み込まれる製品が多く、規模と技術の蓄積もある。事業が突然消える可能性は低い。
しかし、次に問うのは競争相手が同じものをもっと安く供給できないかである。先端材料には一定の障壁があるが、化学中間体は市況によって利益が消える。繊維も品質と供給能力だけでは最終需要の縮小を止められない。会社全体の利益を、強い堀を持つ製品と同じ確実さで評価することはできない。
オーナー利益を見ると、2025年の純利益約5億ドルに対してフリー・キャッシュフローは約4億ドルだった。2024年以前には良好な現金創出力を見せたが、再生設備への投資で自由に使える現金が減った。設備投資は将来の利益の種になる一方、失敗すれば株主資本の損失となる。新しい再生工場の増分利益が、投下資金に対して十分な利回りを生むことが重要だ。
純負債約44億ドルも軽くない。手元現金を余剰資産として別に加算できる状態ではなく、事業の利益から借金を返していく必要がある。現在の自己資本約60億ドルには買収によるのれんが約37億ドル含まれ、清算価値の厚さを意味しない。
10年後の中立的な株主利益は今より大きくなると考える。それでも現在の値段では、技術の普及が遅れたり、市況の回復が一時的だったりした場合の損失を十分に吸収できない。長く持てる製品群はあるが、長く持つために必要な購入価格の規律は緩めたくない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は4つある。最も成長が期待できる先端材料は、2025年に約29億ドルを売り上げた。自動車の合わせガラスに使うSaflex、窓用フィルムのLLumar、耐久性の高いTritan樹脂などを製造する。自動車メーカー、ガラス加工会社、建築資材メーカー、医療機器メーカーが顧客である。いったん製品の性能や工程が認証されると、材料の変更には試験と品質保証のやり直しが必要になる。
添加剤・機能製品も売上は約29億ドルである。塗料の乾燥と塗膜形成を助けるTexanol、航空機用作動油のSkydrol、熱媒体のTherminol、農業・水処理・日用品向けのアミン類を販売する。顧客の製品全体から見れば材料費は小さいが、品質不良の損失は大きい。こうした用途では、単純な価格差だけで採用先を変えにくい。
化学中間体は約19億ドルを売る。オキソアルコール、酢酸誘導体、可塑剤などを大型設備で製造し、自社の特殊化学品にも原料を供給する。米国の原料調達と設備の一体運営は強みだが、外部販売の価格は世界の需給に左右される。2025年には部門の調整後営業損益が赤字になった。
繊維部門は約11億ドルで、売上の約7割がたばこフィルター向けの酢酸セルロース・トウである。長期契約と一貫生産は利益を守るが、たばこの消費減少という構造問題を抱える。衣料用のNaiaなどで用途を広げているものの、まだフィルター事業を置き換える規模ではない。
事業は物理的な材料製造と用途別の技術開発が中心である。人月、席課金、広告運用、情報サービスの事業ではないため、AIエージェント代替リスクの指定類型には該当しない。AIは配合研究や生産計画の効率化には役立つが、素材の製造と品質認証そのものを消すわけではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単に奪えない強みは、製品によって大きく異なる。最も守りが堅いのは、安全性や耐久性の認証を要する樹脂とフィルムである。自動車のガラス材料や航空用作動油は、安い製品が現れただけでは切り替わらない。顧客の仕様に合わせる開発力と、安定供給の実績が効く。
添加剤にも一定の価格決定力がある。2025年は数量が弱くても、原料価格を転嫁する契約によって値上げを維持した。2026年4〜6月期も添加剤部門の販売価格は約4%上がった。ただし、これは主に原材料費の転嫁であり、利益率を自由に引き上げられる証拠ではない。数量を増やして固定費を吸収できるかが、利益の改善を左右する。
会社全体を強い堀の企業とは評価しない。化学中間体はBASF、ダウ、ライオンデルバセル、セラニーズなどと競争し、2025年には価格と数量の両方が落ちた。繊維も顧客が大きく集中し、たばこ需要が減れば工場の稼働率が下がる。特殊製品の強さが、汎用品の弱さを完全には覆えない。
資本効率は改善の余地が大きい。添付データでは2025年のROEは約8%で、過去10年の中央値15.5%を大きく下回った。営業利益を税引き後にして自己資本と純負債の合計で割る簡便なROICも、2025年はおおむね7%台である。これは想定する株主資本コスト9.5%を下回る。景気の谷だけでなく、新しい設備への投資が十分な利益を生むかを見なければならない。
一方、研究開発と顧客の共同開発には積み重ねがある。Tritan、Saflex、LLumar、Skydrolのような製品群は、会社が長年築いた技術と販売網の成果である。10年後も必要とされる可能性は高い。ただし、利益を増やすための追加投資が大きいため、優れた技術を持つことと優れた株主利回りを生むことは別問題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
特殊化学品は、世界の製造業の数量成長と物価上昇の双方から恩恵を受ける。自動車、建築、医療、電子材料などでは、耐久性や安全性を高める材料の需要が続く。業界ノートの中立的な考え方である数量の年1〜2%成長と、物価に沿う値上げは、先端材料と添加剤には妥当である。ただし、化学中間体とたばこ用繊維に同じ成長を期待してはいけない。
先端材料では市場ごとに競争相手が違う。合わせガラス用PVBではクラレ、積水化学、長春石化が競合する。窓用・塗装保護フィルムではスリーエム、エクスペル、サンゴバンが強い。特殊樹脂ではSKケミカルズやコベストロが競う。市場調査では2025年の世界PVB市場は約36億ドル、窓用フィルム市場は約129億ドルとされる。ただし、これらは範囲が異なり、加工・施工費を含む市場もあるため、そのまま厳密なシェアにはできない。
添加剤では、世界の塗料添加剤市場が2025年に約114億ドル、アミン市場が約239億ドルと推定されている。BASF、ダウ、エボニック、アルケマ、クラリアントなどが主な競合である。市場全体は名目で拡大するが、中国の生産能力増加が標準品の価格を押さえる。イーストマンは用途別の特殊製品で競争する必要がある。
化学中間体は供給過剰と需要不足の影響が大きい。2025年は中国・アジアからの競争で価格が下落し、採算が悪化した。2026年は中東の供給混乱でオレフィン系製品の需給が引き締まり、利益率が改善した。しかし、競合設備が戻れば利ざやも縮む。ここでは2026年の一時的な価格上昇を、長期の競争力向上とは扱わない。
繊維では世界の酢酸セルロース・トウ市場を約50億ドルとする推計がある。セラニーズ、ダイセル、セルディア、済南大自然などが競合し、中国のたばこ関連企業との関係が重要である。生産能力の再編は価格を支える可能性があるものの、紙巻きたばこの消費量と規制が長期需要を決める。数量の構造的な縮小を、名目価格の上昇だけで隠してはいけない。
再生ポリエステルは新しい競争領域である。キングスポートでは難再生プラスチックを分子まで分解し、食品容器にも使える材料へ戻す。技術上の成果は確認されているが、再生材の価格差を顧客が長く負担するかは未確定である。安いバージン樹脂との価格競争、回収原料の調達費、欧州の再生材規制が普及速度を決める。
資本政策と M&A
経営陣は、配当、成長投資、自社株買いを組み合わせ、投資適格の財務格付けを維持する方針を示している。2025年の配当は約3.8億ドル、自社株買いは約1億ドルだった。2021年に承認した自社株買い枠は25億ドルで、2026年6月末までの実施額は約12億ドルである。ただし、残る枠をいつ使うかという確定した数字の約束はない。
2026年7月の会社見通しでは、年間設備投資は約4億ドル、営業キャッシュフローは約9億ドルを見込む。純利益の大幅な回復を期待しつつ、コスト削減は年間1.25〜1.50億ドルを目標とする。設備投資額が2023〜2025年より小さいのは、再生設備への大型投資が一段落したためである。だが、今後の新工場建設には再び巨額の資金が必要になる。
過去の大型買収では、2012年のソルーシア買収がフィルム、2014年のタミンコ買収がアミン類の事業基盤を作った。一方、現在も多額ののれんと借金が残る。2022年には接着樹脂事業を約10億ドル、2023年にはテキサスシティの一部事業を約5億ドルで売却した。汎用品を減らし、特殊材料へ移す方向は合理的である。
資本配分の最大の試験は分子再生事業である。2024年に示した2029年の循環型事業の追加EBITDA目標は5億ドル超だったが、その達成には追加設備の実現が必要である。フランス計画は規制を巡って停止し、米国ロングビュー計画も補助金の打ち切りと計画見直しの影響を受ける。利益回収が見えない段階で借金を増やして建設するより、既存設備の稼働率と販売契約を先に確立すべきである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
イーストマンの強みは、表面上の化学品の種類ではなく、顧客の設計に入り込んだ製品群にある。Saflexの自動車用合わせガラス、Tritanの高性能樹脂、航空用Skydrolなどは、単なる原料ではない。材料を変更すれば試験、認証、品質保証をやり直す必要がある。これは値上げを受け入れてもらう力になる。添加剤も顧客の製品コストに占める比率が小さく、性能不良の損害は材料代の節約をはるかに上回る。
2025年の弱い利益は、会社の通常の稼ぐ力を過小評価させている可能性がある。化学中間体は供給過剰によって赤字だったが、2026年4〜6月期には数量と利ざやが改善した。先端材料と添加剤も、原料高を転嫁しながら数量を戻し始めている。2026年のコスト削減計画が定着し、工場の稼働率が上がれば、固定費負担は軽くなる。これまで積み上げた設備を使って利益を増やせるため、新たな買収に頼る必要はない。
最も大きな価値は分子再生技術にある。キングスポート工場は2025年に前年の2.5倍以上の生産量を実現し、利益貢献も増やした。2026年には追加の利益増加を目指している。原料となる廃プラスチックの安定調達と、再生材の価格を受け入れる顧客契約が増えれば、世界の包装・耐久消費財メーカーに販売する余地は大きい。既存のTritanなどの製品技術と組み合わせられることも有利である。
フランスやロングビューの新工場を急がない判断も、必ずしも悪材料ではない。最初の工場で商業条件を固め、設備効率を高めてから追加投資すれば、投資利益率は改善する。10年後には特殊材料の数量とシェアが増え、化学中間体の採算も正常化する。純利益は2025年の数倍となり、配当と自社株買いの原資も十分に増える。景気の谷にある現在の利益だけを見て、事業の潜在力を見逃すべきではない。
慎重な見方
この会社を高品質の特殊化学会社として評価するには、全社の利益構造を詳しく見る必要がある。2025年の売上の約3分の1は化学中間体と繊維だった。化学中間体は、BASF、ダウ、セラニーズ、アジアの生産者との競争で値段が決まる。2025年には部門の調整後利益が赤字となった。2026年の回復も中東の供給混乱に助けられた面が大きく、競合工場の再稼働によって利ざやが戻る可能性がある。
繊維の問題はさらに根深い。売上の大半を占めるたばこ用フィルターは、先進国の紙巻きたばこ消費減少に直面する。中国などの大市場も永続的な数量増加を保証しない。生産者の再編は価格を支えるかもしれないが、顧客の購買力を強める面もある。2025年に繊維の売上が大幅に減り、2026年上期も減少した事実は、一時的な在庫調整だけでは説明できない可能性がある。
先端材料も無敵ではない。PVBではクラレと積水化学、フィルムではスリーエムとエクスペル、特殊樹脂ではSKケミカルズなどが競争する。中国の材料メーカーが品質と価格の差を縮めれば、標準品の取り分は減る。価格を維持するために高機能品へ移行すると、研究開発費や販売費が増える。売上が伸びても利益率が上がらない展開は十分にある。
分子再生事業には技術と商業採算の間に大きな隔たりがある。原油価格が低く、通常の樹脂が安ければ、顧客は再生材に高い価格を払いたがらない。フランスの計画停止と米国の補助金打ち切りは、政策と資本回収への依存を示している。既に多額の資金を投じ、純負債は約44億ドルある。追加工場が失敗すれば、のれんや設備の減損だけでなく、将来の現金創出力も損なわれる。配当を守るために借金を減らせなければ、株主の安全域はさらに薄くなる。
どちらに重みを置いたか
10年後も事業が存続し、先端材料と添加剤が利益を伸ばすという見方には十分な根拠がある。しかし、全社の利益を安定的に成長させる力については慎重な判断が勝る。化学中間体の市況回復と再生技術の投資回収は、まだ検証すべき部分が大きい。
確率は楽観側25%、中立33%、悲観側42%とした。悲観側を厚くしたのは、単なる景気変動ではなく、たばこ用繊維の需要縮小、アジアの化学品供給能力、追加再生工場の採算不確実性が重なるためである。資本コストに織り込んだ一般的な景気循環だけで二重に悲観しているわけではない。
確率加重後の現在価値は約75.6億ドルで、基準時価総額約75.1億ドルとの差は約0.8%にとどまる。結論は適正評価である。技術の成功を楽観しすぎるべきではないが、今の利益の落ち込みを永続的と決めつけるのも誤りだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 96.68 ドル112 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 41.58 ドル48 億ドル)。 今の値に割り戻すと 65.42 ドル76 億ドル、今との差 −1.7%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 9.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 243.60 ドル282 億ドル | 65.74 ドル76 億ドル | +365.0% | +19.8% | 21.65 ドル25 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 165.99 ドル192 億ドル | 56.23 ドル65 億ドル | +234.0% | +15.5% | 40.00 ドル46 億ドル |
| 中立 | 33% | 109.12 ドル126 億ドル | 47.58 ドル55 億ドル | +135.5% | +11.0% | 51.71 ドル60 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 42.15 ドル49 億ドル | 34.60 ドル40 億ドル | +15.4% | +1.9% | 20.72 ドル24 億ドル |
| 悲観 | 15% | 15.72 ドル18 億ドル | 12.11 ドル14 億ドル | −58.2% | −10.2% | 4.17 ドル5 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 96.68 ドル112 億ドル | 41.58 ドル48 億ドル | +107.8% | +9.3% | 138.26 ドル160 億ドル |
今の株価時価総額 66.53 ドル77 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 楽観:特殊材料のシェア拡大と再生事業の本格収益化 利益 22 億ドル · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 243.60 ドル282 億ドル
2035年、再生ポリエステルが特殊樹脂の成長の柱になっている。キングスポートの設備増強で原価が下がり、包装メーカーと耐久消費財メーカーが再生材に対する価格上乗せを受け入れる。フランスや米国の追加設備も、既存工場で実証した技術と販売契約を基に段階的に建設される。再生材の採用増加により、先端材料の世界市場は実質で約1.54倍となり、イーストマンの実効シェアは11.1%から13.0%へ高まる。
添加剤では塗料、水処理、医療、航空の高機能製品が増え、世界対象市場が600億ドルへ拡大する。実効シェアも7.3%へ上がり、利益率は21.5%になる。化学中間体は中国の過剰能力が整理され、米国の統合設備が高い稼働率を維持する。利益率は9.5%へ改善する。繊維ではたばこ用途が減っても、他の酢酸セルロース用途へ設備を転換できる。
全社売上は約193億ドル、営業利益は約34億ドル、GAAP純利益は22億ドルとなる。資本を使って増やした利益が十分な利回りを生み、10年間で正味76億ドルを株主へ還元する。大規模な買収は必要なく、新しい設備は需要に合わせて建設する。技術の強みが価格と数量の両方に表れる、最も好ましい道筋である。
- 先端材料(Advanced Materials):数量 52.0(2025年価格で評価した世界の対象市場規模×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 148.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 77 億ドル・営業利益 16 億ドル。世界市場260→400億ドル、シェア11.1→13.0%、価格1.48倍。Tritan Renewと高機能フィルムが伸びる。
- 添加剤・機能製品(Additives & Functional Products):数量 43.8(2025年価格で評価した世界の対象添加剤・アミン・特殊流体市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 147.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 64 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場460→600億ドル、シェア6.3→7.3%、価格1.47倍。塗料・医療・水処理で高付加価値化。
- 化学中間体(Chemical Intermediates):数量 26.8(2025年価格で評価した世界のオキソ・酢酸・溶剤・可塑剤市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質外販数量))× 価格 1.41(平均販売単価指数(2025年=1。需給と原料価格による変動を含む))→ 売上 38 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場480→610億ドル、シェア4.0→4.4%、価格1.41倍。業界再編で需給が改善。
- 繊維(Fibers):数量 9.9(2025年価格で評価した世界の酢酸セルロース・トウと関連繊維市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質出荷数量))× 価格 142.0%(契約販売単価指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場65→62億ドル、シェア16.2→16.0%、価格1.42倍。新しいセルロース用途で数量を補う。
倍率:k9.5%、2035年の事業ROEは22.0÷119.6=18.4%。企業全体の堀は普通なので超過利益の残存割合は1/2、RONICは13.95%ではなく、9.5%+(18.4%−9.5%)÷2=約13.95%とする。精密値ではROE18.39%、RONIC13.94%となり、g4.0%の場合の来期利益に対する正当化PERは約12.96倍、2035年利益に対して約13.48倍である。gは先端材料・添加剤の実質市場成長、シェア増加、価格上昇を合わせ、成熟後の利益成長が名目4%に収束する前提。技術の商業化成功でも競争と設備更新が残るため上限の約95%となる12.8倍を採用。22.0×12.8=281.6億ドル。純現金の別加算はない。
確率:キングスポートで商業採算が定着し、追加設備が高い投資収益率で稼働するうえ、先端材料と添加剤のシェアも上昇する。複数の好条件を同時に要するため7%にとどめる。
やや楽観 18% やや楽観:高機能品が伸び、化学中間体の採算が正常化 利益 16 億ドル · PER 11.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 165.99 ドル192 億ドル
2035年、世界の自動車・建築需要が緩やかに伸び、先端材料の販売は高機能品へ移っている。Tritan、Saflex、LLumarは顧客の認証と販売網を生かして競争力を維持し、再生樹脂も着実に採用される。先端材料の世界対象市場は実質で約1.38倍、実効シェアは12.2%へ上昇する。利益率は18.5%まで改善し、固定費の吸収と製品構成の改善が利益を押し上げる。
添加剤では塗料・水処理・電子材料向けが伸び、シェアは6.8%になる。契約による価格転嫁が続き、利益率は20%を確保する。化学中間体では供給過剰が緩み、価格競争が一段落する。利益率は8%へ戻るが、2026年の供給混乱による異常な利ざやを恒常化させない。繊維はたばこ需要の減少を衣料・産業向けの拡大で一部補う。
全社売上は約165億ドル、営業利益は約25億ドル、純利益は約16億ドルとなる。10年間の累計純利益は106億ドルで、配当と買い戻しから株式報酬を引いた正味還元は65億ドルとなる。新たな大型買収をせず、成長設備の採算を確かめながら投資を進める。持続可能な範囲で特殊化学会社としての質を高める筋書きである。
- 先端材料(Advanced Materials):数量 43.9(2025年価格で評価した世界の対象市場規模×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 144.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 63 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場360億ドル、シェア12.2%、価格1.44倍。高性能樹脂と再生材が安定成長。
- 添加剤・機能製品(Additives & Functional Products):数量 38.4(2025年価格で評価した世界の対象添加剤・アミン・特殊流体市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 144.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 55 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場565億ドル、シェア6.8%、価格1.44倍。高機能添加剤の構成比が上がる。
- 化学中間体(Chemical Intermediates):数量 24.1(2025年価格で評価した世界のオキソ・酢酸・溶剤・可塑剤市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質外販数量))× 価格 1.38(平均販売単価指数(2025年=1。需給と原料価格による変動を含む))→ 売上 33 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場580億ドル、シェア4.15%、価格1.38倍。需給の正常化で利ざや回復。
- 繊維(Fibers):数量 9.1(2025年価格で評価した世界の酢酸セルロース・トウと関連繊維市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質出荷数量))× 価格 139.0%(契約販売単価指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 13 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場59億ドル、シェア15.5%、価格1.39倍。非たばこ向け用途が一部成長。
倍率:2035年ROE16.4÷100.6=16.30%、k9.5%、普通の堀の残存割合1/2からRONIC12.90%。g3.8%は先端材料・添加剤の実質需要が成熟後も増え、繊維の縮小と化学中間体の低成長がそれを一部相殺する前提。正当化PER=(1−0.038÷0.1290)÷(0.095−0.038)×1.038=約12.85倍。景気と原料価格の振れを考慮し上限の91%にあたる11.7倍。16.4×11.7=191.88億ドル。
確率:特殊材料の市場拡大と原価改善は十分に起こり得る。ただし、再生材料の普及とシェア拡大が同時に進む必要があるため、中立より低い18%とする。
中立 33% 中立:特殊材料は着実に拡大し、汎用品の重さが残る 利益 12 億ドル · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 109.12 ドル126 億ドル
2035年、先端材料の対象市場は実質で2025年の1.20倍となり、イーストマンのシェアは11.1%から11.3%へわずかに上がる。TritanとSaflexが新しい用途へ広がり、キングスポートの再生設備も利益に寄与する。ただし、再生樹脂の価格上乗せは限定的で、フランスとロングビューの大型工場が当初の計画どおりに進むとは考えない。追加投資は需要を確保してから段階的に行う。
添加剤の市場は実質で約17%成長し、シェアは6.5%へ上昇する。原料費の転嫁を続けながら製品構成が改善し、利益率は18.5%となる。化学中間体は需要の伸びが鈍く、中国の供給能力も残るが、赤字から通常の利益へ戻る。営業利益率は7.5%にとどめる。繊維は市場の実質数量が縮小し、シェアも15%へ下がる。契約単価は上がるが、利益への貢献は伸びない。
全社売上は約140億ドル、営業利益は約19億ドルとなる。借金の借り換え金利が5.75%前後になることを含め、GAAP純利益は約12億ドルとする。期間の純利益累計は84億ドル、正味還元は55億ドルで、自己資本は約89億ドルとなる。配当を維持しながら適度な買い戻しは続けるが、巨額の買収や第二の大型再生工場に無条件で資金を投じない。成熟した特殊化学会社としての成長が続く筋書きである。
- 先端材料(Advanced Materials):数量 35.3(2025年価格で評価した世界の対象市場規模×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 141.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 50 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場260→312億ドル、シェア11.1→11.3%、価格1.41倍。数量は約22%増加。
- 添加剤・機能製品(Additives & Functional Products):数量 35.0(2025年価格で評価した世界の対象添加剤・アミン・特殊流体市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 141.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 49 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場460→538億ドル、シェア6.3→6.5%、価格1.41倍。数量は約21%増加。
- 化学中間体(Chemical Intermediates):数量 22.1(2025年価格で評価した世界のオキソ・酢酸・溶剤・可塑剤市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質外販数量))× 価格 1.34(平均販売単価指数(2025年=1。需給と原料価格による変動を含む))→ 売上 30 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場480→552億ドル、シェア約4.0%を維持。価格は物価の1.41倍を下回る1.34倍で、世界的な供給過剰を反映。
- 繊維(Fibers):数量 8.3(2025年価格で評価した世界の酢酸セルロース・トウと関連繊維市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質出荷数量))× 価格 136.0%(契約販売単価指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場65→55億ドル、シェア16.2→15.0%。実質出荷は約21%減少し、契約価格の上昇が売上減を部分的に補う。
倍率:2035年ROE=11.9÷88.6=13.43%。k9.5%、全社の堀は普通なのでRONIC=9.5%+(13.43%−9.5%)÷2=約11.47%。成熟後のg3.5%は、先端材料と添加剤の実質数量が年1%前後伸びる一方、化学中間体と繊維が減速し、価格上昇と合わせ全社利益が物価程度に伸びる前提であり、ROEから逆算していない。正当化PER=(1−0.035÷0.1147)÷(0.095−0.035)×1.035=約11.98倍。市況変動と設備投資の負担を考慮し、その約88%である10.6倍とする。11.9×10.6=126.14億ドル。純負債を別に差し引いたり、現金を二重に足したりしない。参考として純負債を約44億ドルとしたEV÷営業利益は約8.8倍であり、20倍を超えない。
確率:特殊材料の数量成長と物価転嫁は業界の一般的な見通しに沿う。一方、繊維の数量減少、化学中間体の競争、追加再生設備の慎重な投資を織り込む。最も起こりやすい単独の筋書きとして33%。
やや悲観 27% やや悲観:競争と需要低迷で利益率の回復が鈍い 利益 6 億ドル · PER 8.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 42.15 ドル49 億ドル
2035年、先端材料の世界市場は拡大するが、価格の安い競合品が性能差を縮める。PVBではアジアの供給者が増え、フィルムではエクスペルやスリーエムとの競争が激しくなる。イーストマンの実効シェアは10.0%へ下がり、価格も物価ほど上げられない。再生樹脂は技術的には使えるが、顧客が高い価格を継続して払わず、既存設備の稼働率改善が遅れる。先端材料の利益率は12.5%にとどまる。
添加剤は配合技術によって一部の顧客を維持するものの、BASFやダウなどの競争でシェアが5.8%に低下する。化学中間体では中国の供給能力が残り、通常の利益率は3.5%にとどまる。繊維ではたばこ需要が減り、工場の統合と稼働率低下が固定費の負担を重くする。Naiaなどの新用途は一定の利益を作るが、主力製品の減少を完全には補えない。
全社売上は約116億ドルと名目では増えるが、営業利益は約11億ドルにとどまる。借り換え金利と維持費の負担が重く、純利益は約6億ドルとなる。配当は慎重に維持しながら、買い戻しを抑える。10年間の正味還元は40億ドル、自己資本は約72億ドルとなる。会社は存続するが、以前ほど高い資本利益率を持たない特殊化学会社となる。
- 先端材料(Advanced Materials):数量 31.0(2025年価格で評価した世界の対象市場規模×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 137.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 42 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場310億ドル、シェア10.0%、価格1.37倍。樹脂・フィルムの競争が激化。
- 添加剤・機能製品(Additives & Functional Products):数量 30.2(2025年価格で評価した世界の対象添加剤・アミン・特殊流体市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 135.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 41 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場520億ドル、シェア5.8%、価格1.35倍。原料転嫁とシェア維持に苦戦。
- 化学中間体(Chemical Intermediates):数量 19.6(2025年価格で評価した世界のオキソ・酢酸・溶剤・可塑剤市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質外販数量))× 価格 1.23(平均販売単価指数(2025年=1。需給と原料価格による変動を含む))→ 売上 24 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場530億ドル、シェア3.7%、価格1.23倍。アジアの供給過剰で低採算。
- 繊維(Fibers):数量 7.0(2025年価格で評価した世界の酢酸セルロース・トウと関連繊維市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質出荷数量))× 価格 127.0%(契約販売単価指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場52億ドル、シェア13.5%、価格1.27倍。たばこフィルター需要の減少が継続。
倍率:2035年ROEは5.8÷71.6=約8.1%でk9.5%を下回る。RONICは普通の堀で約8.8%。g2.5%は価格が物価を下回り、実質数量とシェアが停滞する構造から設定。式の10年目利益に対する上限は約10.5倍であり、ROEが資本コスト未満のため1÷kの上限も確認した。競争で利益の質が下がることを反映し8.4倍とする。中立の10.6倍より低い。5.8×8.4=48.72億ドル。
確率:原料価格の転嫁が遅れ、アジアの化学品供給過剰が続く筋書き。特殊材料の事業基盤は残るが、繊維の縮小と財務負担が収益を抑える可能性を高めに評価して27%。
悲観 15% 悲観:特殊材料の優位が弱まり、再生投資も十分に回収できない 利益 2 億ドル · PER 7.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 15.72 ドル18 億ドル
2035年、イーストマンは化学品の供給者として存続しているが、かつての高い収益力は戻っていない。先端材料ではアジアのPVB、樹脂メーカーが高機能品へ進出し、フィルムでも競合の販売網が拡大する。実効シェアは7.2%まで下がる。再生ポリエステルは技術的に成立しても、通常の樹脂との価格差を埋められず、追加設備が中止される。既存設備にも減損が発生する。
添加剤ではBASF、ダウ、その他の競合が価格と開発力で追い上げ、シェアは4.5%へ低下する。化学中間体は世界の過剰能力が解消されず、営業利益率は2%にとどまる。繊維の実質市場は約4割縮小し、たばこ用トウの長期契約を維持しても数量が減る。非たばこ用途への転換には新たな費用がかかる。
全社売上は約73億ドル、営業利益は約6億ドル、純利益は約2億ドルまで落ちる。期間中にのれんと設備の減損・整理損が約23億ドル発生し、10年間のGAAP純利益累計は12億ドルにとどまる。還元は配当中心に縮小し、正味14億ドルとなる。新しい大型買収は行わず、資産売却と借金の管理を優先する。会社は倒産しないものの、株主資本のかなりの部分が十分な利回りを生まない状態に陥る。
- 先端材料(Advanced Materials):数量 20.5(2025年価格で評価した世界の対象市場規模×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 120.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 25 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場285億ドル、シェア7.2%、価格1.20倍。競合への流出と再生設備の稼働不足。
- 添加剤・機能製品(Additives & Functional Products):数量 21.4(2025年価格で評価した世界の対象添加剤・アミン・特殊流体市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量))× 価格 122.0%(販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 26 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場475億ドル、シェア4.5%、価格1.22倍。用途別の堀が一部残る。
- 化学中間体(Chemical Intermediates):数量 15.3(2025年価格で評価した世界のオキソ・酢酸・溶剤・可塑剤市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質外販数量))× 価格 1.12(平均販売単価指数(2025年=1。需給と原料価格による変動を含む))→ 売上 17 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場510億ドル、シェア3.0%、価格1.12倍。供給過剰が長期化。
- 繊維(Fibers):数量 4.4(2025年価格で評価した世界の酢酸セルロース・トウと関連繊維市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質出荷数量))× 価格 110.0%(契約販売単価指数(2025年=1。市場シェアを含まない))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場40億ドル、シェア11.0%、価格1.10倍。フィルター数量と稼働率が大幅低下。
倍率:2035年ROEは2.3÷57.6=約4.0%、k9.5%を大きく下回る。普通の堀で残る割合1/2、RONIC約6.75%、成熟後g2.0%は実質数量の縮小を価格上昇が一部補う前提。式の10年目利益に対する上限は約9.6倍、ROEがk以下のため1÷k=10.53倍の制約も満たす。資産の劣化と利益の不確実性を踏まえて7.9倍。2.3×7.9=18.17億ドル。稼ぐ力の資本コスト還元値2.3÷0.095=約24.2億ドルを超えず、売れる資産の税後床7.0億ドルも上回る。過去のPBRの谷を参照せず、今の自己資本をそのまま床とは扱わない。
確率:たばこフィルターの構造縮小、化学中間体の供給過剰、先端材料での競争、再生設備の回収失敗が重なる。すべてが同時に進む必要があるため15%とするが、債務が重く損失幅は大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
先端材料(Advanced Materials)
Saflexなどの合わせガラス用中間膜、LLumar・SunTekなどの窓用・塗装保護フィルム、Tritanなどの特殊樹脂と再生樹脂を製造する。2025年売上構成は特殊樹脂49%、中間膜32%、フィルム19%。
| 数量2025年価格で評価した世界の対象市場規模×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量) | 価格販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28.8 | 100.0% | 29 | 3 |
| 10 年後 中立 | 35.3 | 141.0% | 50 | 8 |
取り方:2025年10-Kによる売上28.80億ドルと調整後EBIT3.49億ドル。製品別では特殊樹脂14.11億ドル、中間膜9.22億ドル、フィルム5.47億ドル。市場調査では世界PVB市場約36億ドル、窓用フィルム市場約129億ドル。特殊樹脂・塗装保護フィルム等の重複を調整した広義の対象市場を約95億ドルと仮定し、合計市場約260億ドル、同社の実効シェア約11.1%と推定する。PVBに限れば売上÷市場規模が約26%となるが、製品範囲の差があるため確定シェアではない。競合はクラレ、積水化学、長春石化、スリーエム、エクスペル、SKケミカルズ。数量の実トン数と単価は非開示のため、各製品市場と同社の売上から実質販売数量を再構成する。市場資料はGrand View Researchの2026年PVB・Window Filmレポート。2025年の価格指数は1。
添加剤・機能製品(Additives & Functional Products)
塗料添加剤、セルロース系添加剤、特殊アミン、農業・水処理用品、航空機用作動油、熱媒体などを製造する。2025年売上構成はケア添加剤38%、塗料添加剤27%、機能性アミン19%、特殊流体16%。
| 数量2025年価格で評価した世界の対象添加剤・アミン・特殊流体市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質販売数量) | 価格販売単価・製品構成指数(2025年=1。市場シェアを含まない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28.8 | 100.0% | 29 | 5 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 141.0% | 49 | 9 |
取り方:2025年10-Kによる売上28.80億ドルと調整後EBIT5.16億ドル。ケア添加剤10.94億ドル、塗料添加剤7.78億ドル、機能性アミン5.47億ドル、特殊流体4.61億ドル。Grand View Researchの2025年市場推定は塗料添加剤114億ドル、アミン239億ドル。航空・熱媒体やセルロース系特殊用途を約107億ドルの広義市場と見積もり、重複調整を含めた対象市場約460億ドル、実効シェア約6.3%とする。塗料添加剤だけなら売上対市場規模は約6.8%である。BASF、ダウ、エボニック、アルケマ、クラリアント、ハンツマンが主要競合で、個別の世界シェアは十分な公開数値がない。実出荷トン数と平均単価が非開示なので、用途別市場の一定価格売上を数量代理変数とした。
化学中間体(Chemical Intermediates)
オキソアルコール、酢酸誘導体、溶剤、可塑剤などを製造する。自社の特殊材料事業に原料を供給し、余剰生産分を外部販売する。2025年の外販売上の76%は中間体、24%は可塑剤。
| 数量2025年価格で評価した世界のオキソ・酢酸・溶剤・可塑剤市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質外販数量) | 価格平均販売単価指数(2025年=1。需給と原料価格による変動を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 19.3 | 1.00 | 19 | 0 |
| 10 年後 中立 | 22.1 | 1.34 | 30 | 2 |
取り方:2025年10-Kによる外部売上19.25億ドル、調整後EBITはマイナス0.38億ドル。中間体14.63億ドル、可塑剤4.62億ドル。Global Market Insightsの2025年世界オキソアルコール市場84.3億ドルを核に、酢酸誘導体・可塑剤・溶剤を含む広義の対象外販市場を約480億ドルと推定した。市場の製品範囲が完全には一致しないため、実効シェア約4.0%はモデル上の代理値である。オキソアルコールではBASFが15%超、BASF・OQケミカルズ・イーストマン・シノペック・LG化学の5社合計が約43%とする業界推計がある。実トン数は非開示。2025年は数量・価格がともに約5%減少し、2026年4〜6月には供給混乱で数量・構成が24%、価格が14%改善した。後者を長期単価の基準にしない。
繊維(Fibers)
紙巻きたばこのフィルター用酢酸セルロース・トウ、Naia衣料用繊維、不織布、アセテート原料を製造する。2025年の売上構成はトウ69%、衣料用繊維11%、酢酸系原料14%、不織布6%。
| 数量2025年価格で評価した世界の酢酸セルロース・トウと関連繊維市場×推定実効シェア(億ドル相当の実質出荷数量) | 価格契約販売単価指数(2025年=1。市場シェアを含まない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.5 | 100.0% | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 8.3 | 136.0% | 11 | 2 |
取り方:2025年10-Kによる売上10.50億ドル、調整後EBIT2.85億ドル。酢酸セルロース・トウの売上は69%に相当する7.25億ドル。Facts & Factorsの2025年世界トウ市場推定49.9億ドルに対し、同社の外販売上は約14.5%に相当する。衣料繊維・不織布・酢酸原料を含む周辺対象市場を約15億ドルと仮定し、合計約65億ドル、実効シェア約16.2%とした。関連市場の定義に幅があるので確定シェアではない。競合はセラニーズ、セルディア、ダイセル、済南大自然、中国の合弁生産者。市場全体の数量はたばこ消費量と生産能力再編で変わる。実トン数は非開示であり、業界市場と2025年の製品別構成を代理数量に使う。
リスクと懸念
分子再生技術の商業採算
キングスポートの分子再生設備は生産量を増やしたが、規模が大きくなれば必ず高収益になるわけではない。安価なバージン樹脂との価格差、廃プラスチック回収費、エネルギー費、製品の認証費用が採算を左右する。フランスの計画停止とロングビューの補助金打ち切りは、投資計画の不確実性を示す。将来の設備投資に対する税後増分利益率が資本コストを下回れば、売上が増えても株主価値は増えない。
化学中間体の供給過剰
化学中間体はアジアの新増設と中国の輸出にさらされる。2025年は数量・価格の低下で調整後営業損益が赤字となった。2026年の利ざや改善には中東の供給混乱という一時的要因が含まれる。競合の稼働率が戻って価格が低下すれば、利益の回復は失われる。米国の統合生産設備が原価面で優位でも、世界全体の供給過剰を解消できるわけではない。
たばこフィルター需要の構造的縮小
繊維部門の売上の約69%は酢酸セルロース・トウであり、主に紙巻きたばこのフィルターに使われる。世界の喫煙規制、健康意識、代替製品への移行は数量を長期的に押し下げる。生産能力の再編と長期契約は価格を支えても、需要の減少を止められない。工場の稼働率が下がると固定費が残り、部門の高い利益率が急速に縮む可能性がある。
純負債と借り換え金利
2025年末の純負債は約44億ドル、EBITDAの約3倍にあたる。現在の手元現金は事業の運転資金や借金の返済に必要であり、独立した余剰資産ではない。借り換え金利が5.75%程度に収束すると、現状より利払いが増える可能性がある。利益が弱い時期に配当と設備投資を同時に続ければ、財務の余裕が減る。新たな大型工場を借金で建設する判断には慎重さが必要である。
特殊材料の差別化の低下
SaflexやTritan、LLumarなどは高い品質と顧客認証で守られているが、競合も技術を改善する。PVBではクラレと積水化学、フィルムではスリーエムとエクスペル、特殊樹脂ではSKケミカルズなどが競争相手となる。中国を含む供給者が高性能品を低価格で提供できるようになれば、標準品から高機能品へ移るだけでは利益率を守れない。製品の差別化が弱まると、研究開発費と設備更新費の回収も難しくなる。
のれん・環境費用と資本配分
2025年末には約37億ドルののれんがあり、過去の買収による資産が大きい。特にフィルム事業では、長期成長率と割引率の前提によって減損が生じうる。化学工場には環境対策と設備維持の固定的な負担もある。新工場の回収が遅れたり、景気の谷で自社株買いを優先したりすれば、借金が残りながら帳簿上の資産価値だけが減る可能性がある。株式報酬を控除した正味の還元を見る必要がある。
今後の分かれ目
- 先端材料の数量・製品構成が年間5%以上伸び、キングスポートの再生設備が増分利益を継続して生んだら
- 再生材の商業採算が改善したと判断する。先端材料の中立市場シェアと営業利益率を引き上げ、やや楽観の確率を増やす。ただし追加設備の建設費と投下資本利益率を確認する。
- 化学中間体の営業利益率が3年間平均で8%以上を維持し、原料高や供給混乱による一時的な利ざやに頼らなかったら
- 低コストの統合設備による競争力が持続していると判断する。中立の部門利益率を引き上げ、純利益の安定性を高く評価する。
- 繊維部門の数量が毎年5%以上減り、Naiaなど非たばこ用途が減少を補えなかったら
- 生産能力の過剰と工場の稼働率低下を織り込み、繊維の中立売上と利益率を引き下げる。設備減損の可能性も高め、悲観側の確率を増やす。
- 純負債÷EBITDAが3倍を超える状態が続き、追加の再生工場建設を決定したら
- 将来の利払いと資本回収の不確実性を重く評価する。資本コストに機械的に上乗せせず、投資費用、純利益、還元余力を筋書きに反映して悲観の確率を増やす。
- 先端材料と添加剤の販売数量が3年続けて減少し、価格転嫁が物価上昇を下回ったら
- 特殊材料の顧客固定力が弱まっていると判断する。中立のシェアと価格を下げ、成熟後の成長率も引き下げる。競合の製品採用と新規供給能力を確認する。
- 営業キャッシュフローが年間12億ドル以上へ回復し、設備投資を抑えながら純負債が継続して減ったら
- 技術の投資回収と財務の改善が進んだと判断する。配当と買い戻しの正味還元を増やし、財務負担による悲観の幅を縮める。ただし工場維持費を過小評価しない。
見ておくもの
- 先端材料の数量・製品構成の成長率と、調整後EBIT利益率の回復
- キングスポート再生設備の稼働率、生産量、再生材の価格上乗せ、追加営業利益
- フランス・ロングビュー再生計画の投資決定、補助金、顧客販売契約、設備建設費
- 添加剤・機能製品の数量成長と原料費転嫁後の利益率
- 化学中間体の販売価格・数量・原料との利ざや、アジアの生産能力
- 繊維の酢酸セルロース・トウ出荷数量、長期契約価格、非たばこ用途の売上構成
- 純負債÷EBITDA、支払利息、運転資金、年間設備投資とフリー・キャッシュフロー
- 株式報酬と増資を控除した配当・自社株買いの正味還元
- 先端材料の競合であるクラレ、積水化学、エクスペル、SKケミカルズの新製品と生産能力
倍率と資本コストの決め方
現在の株価と市場のPERから10年後の倍率を決めていない。2025年の4事業の売上と利益を起点に、市場の実質数量、シェア、価格を別々に積み上げた。中立の数量は先端材料と添加剤で増え、化学中間体では緩やかな成長、繊維では減少する。価格は米国物価3.5%を基本とし、化学中間体と繊維には競争による不足分を反映した。倍率はk9.5%、各筋書きのROE、普通の堀のRONIC、数量と価格から導くgによる正当化PERから求めた。会社の調整後利益ではなく、株式報酬と償却を戻さないGAAP純利益を採用した。中立の自己資本は59.6+84−55=88.6億ドルで整合し、悲観は減損を含む累計利益を別に計算した。中立のROEは過去中央値を下回り、無理な改善を仮定していない。5つの時価総額は単調に減少し、悲観の価値は稼ぐ力の上限以下で資産の床以上である。現在の時価総額に近い結果は、価値を市場価格へ合わせたものではない。米国基準ではリース負債は既に貸借対照表に反映されており、固定的な支払いとして扱う。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に品質調整+1.5%を加え、資本コストを9.5%とする。継続企業の前提を否定する状態ではないため存続危機の特別上乗せはしない。市場ベータや現在の株価倍率は使わない。物価3.5%、長期金利5%、借り換え金利約5.75%を共通前提とし、個別の再生設備投資の失敗は数量・利益率・確率へ反映する。