結論
BHPは世界最大級の総合鉱山会社で、豪州の鉄鉱石とチリ・豪州の銅が利益の柱である。長期で見ても事業は必要だが、現在の企業価値には安全域が乏しく、割高と判断する。鉄鉱石を安く掘り、銅の生産を広げる力は本物である一方、売値は顧客ではなく世界の市況が決める。
2026年6月期には銅が基礎EBITDAの54%を占め、鉄鉱石は43%を生んだ。銅鉱山の増産とカナダのJansenカリ鉱石事業は、10年後の収益を押し上げうる。しかし、Jansenは投資額が153億ドルへ膨らみ、2026年には23億ドルの減損を計上した。増産がそのまま株主価値の増加にはならないことを示している。
2026年9月四半期の銅生産は前年同期比19%減ったが、実現銅価格は53%上がった。今の高い銅価格を恒久とみなすと危険である。中立では2036年の銅生産を250万トンへ増やし、鉄鉱石の低コスト優位も残すが、実質価格は平準化する。10年後の純利益は154億ドル、期間の正味還元は860億ドルを見込む。
資本コスト9.5%で5通りを割り引くと、本質価値は約1082億ドルとなる。添付の2026年10月23日時点の時価総額約1981億ドルを約45%下回る。世界の電化が成功しても、その利益のかなりの部分が新しい鉱山への投資と資源保有国に渡ることが、株主の取り分を抑える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地中の金属に価値があるだけでは不十分である。鉱石を掘り、港まで運び、維持費と税金を払い、さらに次の鉱山を開く費用を残した後、長く持つ株主にいくら渡せるかが本質だ。BHPのWAIOは低コストの物流一体型資産であり、銅鉱山も高い資本利益率を実証した。この事業そのものは10年後も重要で、全面的に衰える会社とは考えない。
しかし、鉱山はブランド品と違って自分で売値を決められない。銅の需要が年率2%余り伸びても、高値が新しい供給を呼び込めば、増えた需要を超過利益として独り占めできない。2026年の銅価格急騰は利益の質を上げたのではなく、既存設備を通る単価を押し上げた面が強い。現在の営業利益率が永続すると見るより、好調な年の現金を次の増産へ回した後の収益を見るべきだ。
最も吟味したいのは、Jansenの増分投資の利回りである。年850万トンの能力と60年超の資源寿命は魅力だが、費用の上振れで第2期の内部収益率は約11%にとどまる。資本コスト9.5%との差は薄く、さらに値下がりすれば株主価値を増やさない。中立の2036年には年間の営業利益を約12億ドルと見込み、総投資153億ドルに対する税前の単純利回りも8%未満である。オズ・ミネラルズ買収や銅の増設も、既存鉱山の効率改善部分は高く評価するが、高値で資産を買い続けることまでは評価できない。
BHPは借金で苦しむ会社ではない。むしろ有能な鉱山会社を、世界経済が順調なときの利益で過大評価することがリスクだ。現金配当は価値に含めつつ、枯渇する埋蔵量のその先を無限の利益として数えない。そうすると、良い会社であるという判断と、今の企業価値には安全域がないという判断は両立する。
何で稼ぐ会社か
BHPの売り物は鉄鉱石、銅、製鉄用石炭であり、新たにカリ鉱石が加わる。鉄鉱石は西豪州のWAIOに鉱山、専用鉄道、港湾を一体で持ち、主として中国やアジアの製鉄会社に売る。銅はチリのエスコンディダとスペンス、豪州のオリンピック・ダムやカラパテナが中心で、電線、送電網、建物、車両に使われる。銅事業には金、銀、ウランなどの副産物や第三者商品の販売も含まれる。
2026年6月期の会社開示では、銅の売上は約290億ドル、鉄鉱石は約239億ドル、石炭は約56億ドルであった。銅は195万トン、鉄鉱石は2億6500万トンを生産した。鉄鉱石の実現FOB価格はトン当たり約85ドル、銅の実現価格はポンド当たり約5.74ドルだった。銅事業の売上には副産物と販売取引を含み、鉱石の数量に純粋な銅相場を掛けただけとは一致しない。
石炭は高品位の製鉄用石炭をBMA合弁事業で供給し、一般炭をNSW州のマウント・アーサーで掘る。一般炭鉱は2030年6月の閉山予定なので、10年後の生産は見込まない。石炭から抜けた分を補うのがカナダ・サスカチュワン州のJansenである。第1期は2027年半ばに初生産、第2期は2031年度末に初生産を予定し、合計年850万トンの能力を目指す。
稼ぎ方は数量と市況価格の差から、採掘、輸送、精錬、ロイヤルティ、維持投資の費用を引くという単純なものだ。ただし固定設備が巨大なため、価格が2割動くと利益はそれ以上に動く。2026年の銅部門は基礎EBITDA利益率が70%だったが、これは製品の独占的な値上げ力ではなく、鉱山のコストと高い金属価格が重なった結果である。
2026年の部門別基礎営業利益から、本社費、建設中の損失、特別項目など約19億ドルを差し引くと、添付factsの営業利益約258億ドルと概ねつながる。これはIRの調整前利益と添付の集計基準が異なるための橋渡しであり、将来も調整を独立に見積もる。
優良さと弱いところ
最大の強みは、後から参入する会社には再現しにくい低コストの資産群である。WAIOは鉱山、鉄道、港を結んだ巨大な物流網を持ち、2026年の現金採掘コストはトン当たり約20ドルだった。会社は主要大手の中で7年続けて最も低い水準だと説明する。許認可と巨額の先行投資も参入障壁になるため、同じ価格下落でも高コスト鉱山より長く耐えられる。
銅では埋蔵量、選鉱設備、水・電力、鉱区権を押さえ、エスコンディダなどの増設を既存拠点で進められる。2026年の銅部門の基礎投下資本利益率は26%、鉄鉱石は55%で、資本コストを大きく上回った。ただし2026年の高価格は将来の増分利益率を保証しない。Jansen第2期の会社推定内部収益率は約11%で、資本コストとの差は小さい。
堀、つまり他社にまねしにくい強みは鉱山の質と物流にあり、顧客が銅や鉄鉱石の相場を超える値段を払い続ける力ではない。リオ・ティント、ヴァーレ、フォーテスキュー、フリーポート・マクモランが供給を増やせば価格を受け入れるしかない。埋蔵量は採るほど減り、今の堀を保つにも探鉱と更新が要る。
財務は純負債約85億ドル、EBITDAに対し約0.3倍で、急な市況悪化にも余裕がある。少数株主にとっては特別な複数議決権や支配株主による利益移転よりも、エスコンディダ等の非支配持分、鉱山所在地の税制、巨額の開発費が取り分を左右する。AIエージェント代替の対象となる人月販売や席課金事業はなく、AIはむしろ電力設備を通じた銅需要に効く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銅の世界鉱山生産は2026年に約2350万トンと見込まれ、BHPの約195万トンは操業報告ベースで約8%に当たる。エスコンディダなどの非支配持分を除いた経済持分シェアはこれより小さい。国際銅研究会は2027年の銅地金市場を小幅な供給過剰と予想する一方、BHPは送電網と電化により銅の総需要が現在の約3400万トンから2050年に5000万トン超になると見る。需要が増えても、アフリカ、モンゴル、インドネシアの新鉱山とスクラップの増加が価格の天井を作る。
鉄鉱石ではBHPの年約2億6500万トンは海上貿易の概ね6分の1である。競合のヴァーレは2025年に約3億3600万トン、リオ・ティントのピルバラは約3億2700万トン、フォーテスキューは2026年度に約2億トンを出荷した。中国の建設減速と電炉でのスクラップ利用の拡大が需要を抑える一方、インドと東南アジアの鉄鋼生産は増える。ギニアのシマンドゥ鉱山の供給は中長期の価格下押し要因である。
製鉄用石炭の海上貿易は2026年に約3億2000万トンと見込まれ、BMAの持分換算約1900万トンは約6%となる。インドの高炉投資は支えだが、電炉と水素還元製鉄が普及すれば需要は細る。一般炭の海上貿易は約10億6000万トンで、BHPの約1600万トンは小さな存在である。しかも自社鉱山は2030年に閉じるため、長期利益には頼れない。
カリ鉱石の世界出荷は2026年に約7400万〜7700万トンと見られる。Jansenが年850万トンまで立ち上がれば、世界の約1割に相当する新規供給者となる。競合はニュートリエン、モザイク、ロシア・ベラルーシの生産者で、供給増に伴う値下がりが怖い。土壌の養分補充という確かな需要があっても、増産が即座に高い資本利益率を生むとは限らない。
資本政策と M&A
BHPの資本配分は、まず設備の維持と財務の健全性を守り、基礎的な株主帰属利益の最低50%を配当に回す方針である。超過資金は追加配当、自社株買い、成長投資に振り向ける。純負債の管理目標は100億〜200億ドルだが、2026年6月期末には約87億ドルまで減った。2026年6月期に発表した配当は約87億ドルで、2016年の資本配分枠組み導入後の累計還元は1150億ドルを超える。
投資先の選び方には功罪がある。豪州の石炭資産を売り、2022年には石油事業を分離したことで、資本は銅と鉄鉱石へ寄った。2023年に買収したオズ・ミネラルズの鉱山群は豪州銅事業の拡張基盤になった。一方、Jansen第1期と第2期の合計予算は153億ドルへ増え、2026年に23億ドルの減損が発生した。案件の内部収益率が高く見えても、建設費と立ち上げの遅れで株主の利益は削られる。
2026年にはアンタミナ銀の将来生産を対象とするストリーミング契約で43億ドルを先取りし、WAIO電力設備の49%持分から20億ドルを得た。資金を早く回収する工夫だが、将来の銀収入と電力使用料を同時に残せるわけではない。アングロ・アメリカンとの統合案は2025年11月に検討終了を公表しており、成立済みの買収として織り込まない。2027年度の設備・探鉱費は約110億ドルを予定するが、10年分の自社株買いに数量の約束はない。
以下の10年間の還元見通しは、配当と買戻しから株式報酬と増資による希薄化相当額を差し引いた正味の金額であり、会社がその額を約束したものではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
銅への投資がBHPの事業構造を変え始めている。2026年に銅は基礎EBITDAの半分を超え、同部門の営業資産は高い利益を生んだ。エスコンディダの新選鉱場、スペンスの浸出改善、南豪州の一体運営によって、鉱山品位の低下を補いながら生産を増やせる。会社は2035年ごろまでに銅生産を約4割引き上げる可能性を示しており、既存設備を活用する増分投資なら新規参入より高い利回りを得やすい。
世界の電力網、データセンター、電気自動車、再生可能エネルギーへの投資は銅を大量に使う。国際銅研究会が短期の供給過剰を見ても、大型鉱山は許認可から操業まで長い時間を要する。高い価格が何年も続けば、BHPは数量と価格の両方で現金を増やせる。鉄鉱石はギニアの新供給に直面するが、WAIOの鉄道・港湾・低コストという組み合わせは容易に崩れない。インドなどの成長も中国の需要減を一部補う。
Jansenは工事費超過があっても、完成すれば鉱山寿命が60年を超え、カナダの低コスト供給者として肥料市場の約1割を担う。ロシアやベラルーシの供給制約が続けばカリ鉱石の価格も強い。BHPは巨額投資を借入金だけに頼らず進められ、2026年には銀の将来収益や電力網の持分を現金化した。低コストの複数資源を束ね、景気の谷でも次の投資を進める資金力は、長期の株主に有利である。
慎重な見方
最大の問題は、市況の山を事業の堀と見間違えやすいことだ。2026年9月四半期には銅の数量が19%減っても価格は53%上がり、決算上の収益性を支えた。国際銅研究会は2027年の地金需給を供給過剰と見ており、銅の実質価格が今の水準を維持できる保証はない。アフリカ、モンゴル、インドネシアの増産やスクラップ回収が進めば、BHPが投じた新しい設備からの増分利益は縮む。
鉄鉱石でも中国の建設投資の鈍化、スクラップの増加、ギニアのシマンドゥの供給が重なる。数量を維持できても、鉱石品位とエネルギー費が悪化すれば営業利益率は下がる。製鉄用石炭はインド向けが支えるが、豪州のロイヤルティと露天掘りの剥土費が重い。一般炭は2030年に閉山するため、現在の現金収入が10年後まで残らない。
Jansenの建設費が当初想定を上回り、2026年に23億ドルの減損を出したことは見逃せない。第2期の内部収益率は約11%で、巨額の元手を抱えた鉱山として余裕が小さい。競合のニュートリエンとモザイクが増産すると、完成後の稼働率と単価の両方が下がりうる。サマルコの鉱滓ダム事故ではブラジルの賠償に加えて英国訴訟が続き、配当可能な現金を奪うリスクが残る。
低い借金は破綻を防ぐが、高い投資収益率を保証しない。鉄鉱石も銅も値段を自ら上げられない以上、高い需要予測だけを根拠に株主が高い価格を支払う理由にはならない。
どちらに重みを置いたか
銅の需要拡大とWAIOの低コスト優位は確かなため、会社がなくなるような極端な予想は採らない。ただし2026年の銅相場の高さ、Jansenの投資超過、シマンドゥの新規供給には根拠があり、上振れより下振れをやや重く見る。楽観とやや楽観で29%、中立35%、やや悲観と悲観で36%とした。鉄鉱石と銅を両方持つ点は単一鉱種の会社より強いが、価格受容と埋蔵量の枯渇という弱点は消えない。確率加重後の価値は足元の時価総額に届かず、良い鉱山群という事実だけでは安全域を認められない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 59.76 ドル1,521 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 32.23 ドル820 億ドル)。 今の値に割り戻すと 44.58 ドル1,134 億ドル、今との差 −43.7%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 135.10 ドル3,438 億ドル | 51.09 ドル1,300 億ドル | +135.2% | +10.8% | 16.76 ドル426 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 86.82 ドル2,209 億ドル | 41.27 ドル1,050 億ドル | +61.8% | +6.0% | 25.62 ドル652 億ドル |
| 中立 | 35% | 56.67 ドル1,442 億ドル | 33.80 ドル860 億ドル | +14.3% | +1.7% | 31.66 ドル806 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 32.72 ドル832 億ドル | 23.58 ドル600 億ドル | −28.9% | −4.2% | 13.51 ドル344 億ドル |
| 悲観 | 12% | 21.23 ドル540 億ドル | 15.72 ドル400 億ドル | −53.3% | −8.9% | 4.43 ドル113 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 59.76 ドル1,521 億ドル | 32.23 ドル820 億ドル | +16.2% | +1.8% | 91.98 ドル2,341 億ドル |
今の株価時価総額 79.16 ドル2,014 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:銅の不足と鉱山増産が同時に続く 利益 350 億ドル · PER 9.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 135.10 ドル3,438 億ドル
2036年には電化と送電網投資により銅の世界鉱山需要が約3400万トンに近づき、BHPは約300万トンを生産する。操業ベースのシェアは約9%となり、エスコンディダの新選鉱場と南豪州銅事業の増設が計画を上回る。銅の実効価格はトン当たり2万5500ドルとなり、金・銀の副産物も寄与する。銅部門は60%の営業利益率を守る。
鉄鉱石はインドの鋼材需要が中国の減速を補い、出荷は2億9500万トンへ増える。WAIOの低コストと港湾の一体運営で利益率55%を維持する。製鉄用石炭は高品位品の需給が締まり、Jansenは850万トンを安定販売する。一般炭は予定通り閉山し、収益に含めない。
銅増設に買収や合弁の追加投資が必要でも、大型鉱山の立ち上がりが世界の需要増に遅れるなら、既存資産の利回りは高い。10年間のGAAP純利益累計2100億ドルから正味1300億ドルを還元し、自己資本は約1309億ドルへ厚くなる。2036年の純利益350億ドルは、サマルコの追加支出を平準化しても十分な水準となる。
- 銅・副産物:数量 3,000(銅生産量(千トン、会社の操業報告ベース))× 価格 25,500(銅生産1トン当たり実効売上(ドル/トン、副産物・第三者販売込み))→ 売上 765 億ドル・営業利益 459 億ドル。世界の鉱山需要の伸びとBHPシェアの増加を両方実現
- 鉄鉱石:数量 295(鉄鉱石生産量(百万トン、帰属生産表示))× 価格 140(販売調整込みの実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 413 億ドル・営業利益 227 億ドル。インドと東南アジアの鋼材需要が鉄鉱石を支える
- 製鉄用石炭:数量 22.0(BHP持分換算の製鉄用石炭生産量(百万トン))× 価格 355(平均実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 78 億ドル・営業利益 20 億ドル。高品位炭の供給制約で単価上昇
- 一般炭:数量 0.0(一般炭生産量(百万トン))× 価格 147(実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。2030年閉山により数量ゼロ
- Jansenカリ鉱石:数量 8.5(カリ鉱石MOPの販売量(百万トン))× 価格 620(カリ鉱石の実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 53 億ドル・営業利益 25 億ドル。Jansen両段階がフル稼働し価格も強い
倍率:k9.5%、g1%は銅の需要増と名目価格上昇が鉱山枯渇・更新投資で相殺される長期純成長。ROE26.7%、弱い堀で残存率1/3とするとRONIC約15.2%。正当化PERの永続式は約11.1倍だが、資源20年の年金上限は9.43倍である。銅の増産と高値を実現する最良の状態なので上限の約100%に当たる9.4倍。GAAP純利益350億ドルを使用し、余剰現金の加算はない。
確率:銅の鉱山新設は許認可に時間がかかり、南豪州やエスコンディダの増設に加えてヴィクーニャ等も実際に進む必要がある。長期の供給不足が解消しない可能性はあるが、金属価格が実質で高値を保つのは限定的と考え9%とした。
やや楽観 20% やや楽観:銅増産の大半が計画通り進む 利益 232 億ドル · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 86.82 ドル2,209 億ドル
銅の世界鉱山生産は約3100万トンへ増え、BHPの生産は275万トンとなる。エスコンディダの品位低下を新選鉱場で補い、豪州のカラパテナとオリンピック・ダムの処理能力を上げる。実効銅価格は2万1500ドルで、2026年の価格から物価上昇と同程度に伸びる。副産物を含む営業利益率は54%となり、銅の高い現金創出が続く。
鉄鉱石は中国の減少をインドなどが相殺し、BHPの出荷は2億8500万トンへ増える。リオ・ティントやヴァーレとの競争は続くが、WAIOの低コストが48%の営業利益率を支える。製鉄用石炭は主にインド向けが伸び、一般炭は予定通り閉山する。Jansenは計画に近い830万トンを売り、肥料需要は供給増を吸収する。
2036年の営業利益は約484億ドル、株主帰属純利益は232億ドルになる。10年間のGAAP純利益累計は約1580億ドルと見込み、正味1050億ドルの配当などを支払っても自己資本は約1039億ドルへ増える。リスクの残る新規大型買収はなく、増分投資の中心を既存銅鉱山に置くことで価値を守る。
- 銅・副産物:数量 2,750(銅生産量(千トン、会社の操業報告ベース))× 価格 21,500(銅生産1トン当たり実効売上(ドル/トン、副産物・第三者販売込み))→ 売上 591 億ドル・営業利益 319 億ドル。銅の伸びは世界需要と既存鉱山でのシェア拡大
- 鉄鉱石:数量 285(鉄鉱石生産量(百万トン、帰属生産表示))× 価格 118(販売調整込みの実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 336 億ドル・営業利益 161 億ドル。中国からインドへ需要が入れ替わる
- 製鉄用石炭:数量 20.5(BHP持分換算の製鉄用石炭生産量(百万トン))× 価格 300(平均実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 62 億ドル・営業利益 12 億ドル。高品位炭の需要維持
- 一般炭:数量 0.0(一般炭生産量(百万トン))× 価格 147(実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。2030年閉山
- Jansenカリ鉱石:数量 8.3(カリ鉱石MOPの販売量(百万トン))× 価格 550(カリ鉱石の実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 46 億ドル・営業利益 19 億ドル。Jansenが計画に近い稼働率
倍率:k9.5%、g1%は価格の物価相当の上昇と資源の再投資による取り分の減少を合わせた長期名目成長。ROE22.3%、弱い堀の残存率1/3からRONIC約13.8%。正当化PERの永続式は約10.9倍だが、鉱山20年の年金上限9.43倍が優先する。既存設備の銅増産が成功する一方、Jansenの回収に不確実さが残るので上限の95%に当たる9.0倍。純利益はGAAP、余剰現金の別加算なし。
確率:エスコンディダ、南豪州、スペンスの投資案件には既存設備があり、会社の2035年の増産目標は根拠がある。ただしJansenと新鉱区の費用超過を無視できないので、達成確率は全面成功の楽観より高い20%とする。
中立 35% 中立:銅の増産を認め、市況は実質で平準化 利益 154 億ドル · PER 8.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 56.67 ドル1,442 億ドル
2036年の銅生産は250万トンとなる。世界の鉱山生産が約3000万トンへ増える中、BHPの操業ベースのシェアはおおむね現状の8%台を保つ。エスコンディダの新選鉱場と南豪州増産は進むが、品位低下や工期遅れを引いて会社の最大目標より控えめにする。実効銅単価は1万8500ドルで、10年の物価上昇率を下回る。
鉄鉱石はシマンドゥとヴァーレの供給増を受け、実効単価は97ドルにとどまる。BHPの出荷は2億7500万トンと小幅増だが、営業利益率は43%へ下がる。製鉄用石炭はインド需要で採掘を維持し、一般炭は2030年の予定通り閉山する。Jansenは2027年と2031年の立ち上げ後に780万トンを販売するが、利益率33%にとどまる。
連結営業利益は約325億ドル、GAAP純利益は154億ドルとする。2027年の銅生産減やJansenの建設負担を挟むため、10年間の累計純利益は約1210億ドルとなる。正味860億ドルを配当・買戻し等で還元し、自己資本は約859億ドルへ増える。良質な鉱山を持ち続けても、商品の価格を自分で上げる堀は生まれない。
- 銅・副産物:数量 2,500(銅生産量(千トン、会社の操業報告ベース))× 価格 18,500(銅生産1トン当たり実効売上(ドル/トン、副産物・第三者販売込み))→ 売上 463 億ドル・営業利益 217 億ドル。世界の需要増を追うがシェアはほぼ横ばい
- 鉄鉱石:数量 275(鉄鉱石生産量(百万トン、帰属生産表示))× 価格 97(販売調整込みの実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 267 億ドル・営業利益 115 億ドル。海上供給増で実質価格が下がる
- 製鉄用石炭:数量 19.0(BHP持分換算の製鉄用石炭生産量(百万トン))× 価格 260(平均実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 49 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量は現状近く、高炉需要は弱め
- 一般炭:数量 0.0(一般炭生産量(百万トン))× 価格 147(実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。2030年閉山
- Jansenカリ鉱石:数量 7.8(カリ鉱石MOPの販売量(百万トン))× 価格 450(カリ鉱石の実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 35 億ドル・営業利益 12 億ドル。供給増を吸収するが高利益率には届かない
倍率:k9.5%、長期g1%は名目価格の年3.5%程度の上昇から鉱石品位低下、鉱山更新、鉄鉱石と石炭の実質縮小を差し引いた事業成長。期間末ROE17.9%、弱い堀の残存率1/3よりRONIC約12.3%。正当化PERの永続式約10.8倍に対し、埋蔵量20年・g1%の年金上限9.43倍を優先する。価格平準化とJansenの回収リスクを考え上限の90%の8.5倍。GAAP純利益を基準にし、減価償却や一時費用を倍率に二重上乗せしない。
確率:銅の需要増は電化と設備更新という長期の要因に支えられるが、2026年の高価格は供給を誘う。会社の銅増産目標の一部を認め、鉄鉱石の実質価格には競争による下押しを織り込むのが最も自然なので、中心として35%を配した。
やや悲観 24% やや悲観:銅の新規投資が伸びず、鉄鉱石が供給過多 利益 82 億ドル · PER 7.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 32.72 ドル832 億ドル
銅の世界鉱山生産は約2900万トンへ増えるが、BHPは品位低下と許認可遅れで210万トンの生産にとどまる。シェアは7%台へ低下し、実効銅価格は1万5500ドルとなる。南豪州とチリの増分投資は元手がかかる割に稼げず、銅部門の営業利益率は35%へ縮む。フリーポートなどの既存設備増産にも後れを取る。
鉄鉱石は中国のスクラップ利用とシマンドゥの大量供給で実質価格が落ち、WAIOの生産も2億5500万トンにとどまる。低コストの優位は残るが、営業利益率は38%に低下する。原料炭は豪州の高い税と費用で利益が乏しくなり、一般炭は閉山する。Jansenは650万トンしか売れず、カリ鉱石の増産競争が価格を抑える。
営業利益は約177億ドル、GAAP純利益は82億ドルとなり、自己資本利益率は約10%まで下がる。期間の純利益は約905億ドル、配当などの正味還元は600億ドルへ抑えるため、自己資本は約814億ドルとなる。大型買収や新規鉱山で取り返そうとすると、さらに資本配分が悪化する。
- 銅・副産物:数量 2,100(銅生産量(千トン、会社の操業報告ベース))× 価格 15,500(銅生産1トン当たり実効売上(ドル/トン、副産物・第三者販売込み))→ 売上 326 億ドル・営業利益 114 億ドル。新鉱山の遅れで世界シェアを失う
- 鉄鉱石:数量 255(鉄鉱石生産量(百万トン、帰属生産表示))× 価格 84(販売調整込みの実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 214 億ドル・営業利益 81 億ドル。中国需要縮小とSimandou増産で価格圧迫
- 製鉄用石炭:数量 16.0(BHP持分換算の製鉄用石炭生産量(百万トン))× 価格 235(平均実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 38 億ドル・営業利益 3 億ドル。高品位品でも採掘費用が重い
- 一般炭:数量 0.0(一般炭生産量(百万トン))× 価格 147(実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。2030年閉山
- Jansenカリ鉱石:数量 6.5(カリ鉱石MOPの販売量(百万トン))× 価格 390(カリ鉱石の実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 25 億ドル・営業利益 6 億ドル。カナダでの生産立ち上げが遅れる
倍率:k9.5%、g1%、ROE10.1%、弱い堀からRONIC約9.7%。永続式のPER約10.5倍より鉱山の20年年金上限約9.43倍が低い。再投資の超過利益が乏しく、銅のシェア減少と鉄鉱石の過剰供給が構造化しているため、上限の83%にあたる7.8倍へ割り引く。中立8.5倍より低く、正味還元も市況悪化に応じて縮めている。
確率:世界経済は成長しても中国の製鉄需要が減り、銅の鉱山開発も失敗することは珍しくない。高コストの設備投資を続ける間の市況下落を重く見て24%を与えるが、WAIOの費用競争力があるので恒久的な事業消滅とはしない。
悲観 12% 悲観:価格と設備投資に負け、資産処分価値が支え 利益 30 億ドル · PBR 1.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 21.23 ドル540 億ドル
2036年の銅生産は160万トンへ減り、世界の約2700万トンに対するシェアは6%弱へ下がる。品位低下、重大な操業中断、南豪州とチリの拡張失敗が重なる。実効価格は1万2000ドルと現時点の名目単価も下回り、営業利益率は25%になる。鉄鉱石は2億1000万トン、単価78ドルとなり、港湾の低コストだけでは中国需要と新鉱山供給による価格下落を防げない。
製鉄用石炭は年1200万トンまで縮み、ほとんど利益を出さない。一般炭は閉山し、Jansenは500万トンの出荷にとどまる。工事費の再上振れ、サマルコ訴訟の追加負担、鉱山閉鎖費によって本社調整費が膨らむ。営業利益は約63億ドル、GAAP純利益は30億ドルに縮み、もはや高収益の鉱山会社ではない。
期間の単純な利益推移なら純利益は約645億ドルだが、途中で約245億ドルの鉱山減損と追加支払いが生じ、10年間のGAAP累計は約400億ドルとなる。正味還元も約400億ドルに縮み、自己資本は現在とほぼ同じ509億ドルで止まる。採算が薄い事業の永続利益ではなく、WAIOの物流と鉱区、銅鉱山、Jansenの売却可能価値を税引後で評価する。
- 銅・副産物:数量 1,600(銅生産量(千トン、会社の操業報告ベース))× 価格 12,000(銅生産1トン当たり実効売上(ドル/トン、副産物・第三者販売込み))→ 売上 192 億ドル・営業利益 48 億ドル。生産とシェアが大幅に低下
- 鉄鉱石:数量 210(鉄鉱石生産量(百万トン、帰属生産表示))× 価格 78(販売調整込みの実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 164 億ドル・営業利益 46 億ドル。供給過剰の下で稼働量も減る
- 製鉄用石炭:数量 12.0(BHP持分換算の製鉄用石炭生産量(百万トン))× 価格 200(平均実効売上単価(ドル/トン))→ 売上 24 億ドル・営業利益 0 億ドル。採掘地の縮小で固定費が重い
- 一般炭:数量 0.0(一般炭生産量(百万トン))× 価格 147(実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。2030年閉山
- Jansenカリ鉱石:数量 5.0(カリ鉱石MOPの販売量(百万トン))× 価格 350(カリ鉱石の実効販売単価(ドル/トン))→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。Jansenの低稼働と減損
倍率:ROEは約5.9%でk9.5%を下回り、通常の利益年金価値は事業の売れる価値を下回る。過去の谷のPBRではなく、売れる鉱山と物流の税後推定540億ドルを悲観の床とし、基準となる現在の自己資本509.2億ドルに約1.061倍を適用する。2036年の自己資本も累積GAAP利益400億ドルと正味還元400億ドルで509.2億ドルに一致する。倍率は正で、中立より低い価値を与える。
確率:銅と鉄鉱石が同時に実質価格を大きく下げ、Jansenでも追加減損を出す事態はまれだが、資源の10年には避けきれない。財務は強く債務不履行までは想定しないため12%とする。最悪の値付けは旧来の市場倍率でなく、税引後に売れる実物資産で支える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
銅・副産物
エスコンディダ、スペンス、南豪州銅鉱山の製品と金・銀・ウラン等の副産物、第三者取引。収入は銅の実現相場だけでなく副産物・販売取引も含む。
| 数量銅生産量(千トン、会社の操業報告ベース) | 価格銅生産1トン当たり実効売上(ドル/トン、副産物・第三者販売込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 1,953 | 14,867 | 290 | 157 |
| 10 年後 中立 | 2,500 | 18,500 | 463 | 217 |
取り方:BHP 2026年20-FのCopper売上29,031百万ドルと操業報告の銅生産1,952.8千トンを使用。実効単価14,866.5ドルは売上を生産量で割ったもので、同社開示の銅実現価格5.74ドル/ポンド(約12,655ドル/トン)に金・銀・ウランなどの副産物約45億ドルと第三者製品を含む。営業利益は部門のUnderlying EBIT約156.6億ドルを使い、特別損益と本社費は全社で調整。エスコンディダの100%生産量を含むため経済的持分シェアと異なる。
鉄鉱石
西豪州WAIOの鉱山・鉄道・港湾とサマルコの鉄鉱石。中国などの製鉄企業向けが主力で、供給網の低コストが強み。
| 数量鉄鉱石生産量(百万トン、帰属生産表示) | 価格販売調整込みの実効売上単価(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 265 | 90 | 239 | 123 |
| 10 年後 中立 | 275 | 97 | 267 | 115 |
取り方:BHP 20-FのIron Ore売上23,883百万ドルと生産264.7百万トンから実効売上単価90.23ドル/トンを計算。会社のWAIO実現FOB価格84.56ドル/湿トンとの差は生産・販売時点、品位・製品構成、サマルコなどの違いを含むため、2036年も実効売上単価として比較する。Underlying EBIT約123.1億ドルを使用。
製鉄用石炭
豪州BMA合弁事業による高品位原料炭。日本・インドなどの高炉に供給し、価格は海上貿易の石炭相場に従う。
| 数量BHP持分換算の製鉄用石炭生産量(百万トン) | 価格平均実効売上単価(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 18.6 | 208 | 39 | 2 |
| 10 年後 中立 | 19.0 | 260 | 49 | 6 |
取り方:BHP 20-FのBMA売上3,876百万ドルを2026年持分生産18.6百万トンで割り実効208.39ドル/トン。会社の平均実現単価210.21ドル/トンに近い。石炭セグメント全体のUnderlying EBIT約0.58億ドルを一般炭との収益性差から概算配分し、製鉄用を1.5億ドルとする(配分は推定)。
一般炭
NSW州のマウント・アーサー炭鉱。2030年6月に採掘終了を予定し、2036年の生産と売上はすべてゼロとする。
| 数量一般炭生産量(百万トン) | 価格実効販売単価(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 16.4 | 105 | 17 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 147 | 0 | 0 |
取り方:2026年20-FのNSWEC売上1,714百万ドルと生産16.4百万トンから104.51ドル/トン。会社実現価格104.28ドルと整合。営業利益は石炭全体のUnderlying EBIT約0.58億ドルから製鉄用の推定1.5億ドルを引いた約マイナス0.9億ドルで、事業別の厳密開示ではない。2030年度閉山予定は会社開示。
Jansenカリ鉱石
カナダのサスカチュワン州で建設中。第1期4.15百万トン、第2期4.36百万トンの能力を目指す。
| 数量カリ鉱石MOPの販売量(百万トン) | 価格カリ鉱石の実効販売単価(ドル/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 0.0 | 342 | 0 | −3 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 450 | 35 | 12 |
取り方:BHP 20-FによればJansenは2026年6月期に未生産で、カリ鉱石市場のVancouver FOB現物価格は約342ドル/トン。売上0、Potash基礎EBITDA損失3.26億ドルを建設段階の費用の代理値とする。第1期2027年半ば、第2期2031年度後半に初生産の計画で、2036年数量は実際の稼働率から予測する。
リスクと懸念
銅価格の反落と品位低下
2026年9月四半期には銅の実現価格が前年より53%高かったが、生産は19%少なかった。エスコンディダの鉱石品位低下は既に計画に織り込まれ、新選鉱場の効果が遅れると、数量が伸びず実質価格だけ下がる。アフリカ・モンゴルの新鉱山とスクラップの増加は価格を押し下げる。
鉄鉱石と中国依存
WAIOの低コストと港湾設備は強いが、中国の不動産投資の鈍化と電炉の普及が鉄鉱石需要を抑える。ギニアのシマンドゥやヴァーレの増産で海上供給が増えると、トン当たり価格が下がる。数量を維持しても、設備更新と剥土費が増えれば営業利益の落ち方は売上より大きくなる。
Jansenの増分資本利益率
第1期・第2期で153億ドルの投資を予定し、既に23億ドルの減損を計上した。第2期の会社推定内部収益率は11%にとどまり、費用超過やカリ鉱石価格低下への余裕は大きくない。2027年と2031年の立ち上げが遅れれば、維持投資と金利負担を負いながら回収だけが後ろにずれる。
サマルコ事故の追加賠償と操業安全
2015年のサマルコ鉱滓ダム崩壊に伴うブラジルの長期賠償に加え、英国の集団訴訟が続いている。2025年11月の英国裁判所の責任判断後も、因果関係と賠償額の審理が残る。2026年にはエスコンディダとBMAで死亡事故があり、操業停止、許認可、管理費の追加が生じうる。
資源ナショナリズムと炭素規制
チリのロイヤルティ、豪州クイーンズランド州の石炭税、先住民の土地権、用水の許認可は現金収益に直接響く。銅の値段が上がっても政府の取り分が増えれば利益は比例して伸びない。脱炭素は銅を増やす一方、原料炭と一般炭の事業寿命を縮め、閉山と環境対策の支出を早める。
資産売却で将来の現金を先取りする危険
アンタミナ銀の将来収益を43億ドルで現金化し、WAIO電力設備持分も20億ドルで売却した。短期の純負債を軽くする効果はあるが、将来の銀の取り分や電力料金の支払いを忘れてはならない。こうした一時収入を毎年のオーナー利益と取り違えると、配当の持続性を過大評価する。
鉱山枯渇と大型買収の資本配分
WAIOの確認済み鉄鉱石埋蔵量約33.7億トンは現在の年産約2.65億トンで割ると約13年分であり、資源量から確認埋蔵量へ移す探査と許認可が必要だ。銅の新規鉱区の買収や採掘権の確保も価格高騰期には高くつく。割高な資源取得は、既存鉱山の高い利益率を株主の長期収益に変えられなくする。
今後の分かれ目
- 2028年までにエスコンディダ新選鉱場の投資決定が進み、南豪州の銅増産も予定通り動く
- 2036年の銅生産は250万トンの中立から275万トン超へ近づく。Jansenの収益が伴えば、やや楽観の純利益と期間還元が現実味を増す。
- 銅の実質単価が2026年比2割以上下がり、既存鉱山の品位回復が遅れる
- 中立からやや悲観へ移る。銅事業の営業利益率が下がり、2036年の純利益は100億ドルを割る。
- シマンドゥとヴァーレの増産により鉄鉱石価格の実質下落が30%を超える
- WAIOの物流の強さでも値段の低下を打ち消せない。製鉄用石炭も弱ければ、やや悲観から悲観の価格・利益率へ接近する。
- Jansen第1期が2027年半ば、第2期が2031年度に立ち上がり、年800万トン以上を安定販売する
- カリ鉱石事業が年間十数億ドルの営業利益を補い、中立の収益構成が完成する。ただし売値と追加投資額が上振れなければ大きな価値増とはみなさない。
- Jansenの追加投資費用が増えて第2期の内部収益率が9.5%を下回る
- 資本コストを稼げない投資となり、減損と配当余力の減少が重なる。悲観側の確率を引き上げる。
- サマルコ英国訴訟で大幅な追加支払いが確定し、豪州・チリの税負担も増える
- 利益の減少に加えて10年間の正味還元額が削られ、中立の自己資本と株主価値は下がる。
- 銅・鉄鉱石の単価が物価上昇を上回り、投下資本利益率が20%以上を保つ
- 価格受容という弱点は残っても、既存鉱山の増分投資が超過収益を生み、やや楽観から楽観の現金創出に近づく。
見ておくもの
- 銅の実現価格(ドル/ポンド)とエスコンディダの選鉱原鉱品位、四半期生産量
- WAIOの生産量、現金採掘コスト(ドル/トン)、鉄鉱石の実現FOB価格とシマンドゥ出荷
- Jansen第1期・第2期の完成度、累積投資と実際の操業費、販売トン数
- 2027年度の設備・探鉱費約110億ドルに対する投資後フリーキャッシュフロー
- 銅・鉄鉱石・石炭の資本利益率と鉱山開発の増分投資収益率
- サマルコ英国訴訟とブラジルの賠償キャッシュアウト、閉山引当金
- 最低50%の配当方針と純負債100億〜200億ドルの目標の遵守
- エスコンディダ、南豪州、ギニア、カナダの鉱山の資源量・埋蔵量更新
倍率と資本コストの決め方
先に2026年のセグメント生産量、実効売上単価、費用構造を確認し、銅増産とJansenの立ち上げをそれぞれ積み上げた。中立では銅の実質単価を今より下げ、鉄鉱石にはシマンドゥの供給を反映した。倍率は現在や過去のPERから求めず、資本コスト9.5%、成長率1%、弱い堀の残存超過利益1/3、埋蔵量の年金上限20年から決めた。計算上の年金上限9.43倍に対し、平準化利益の質を踏まえ中立8.5倍とした。株主に渡る正味配当は別に割り引き、現在の純負債を余剰現金として二重加算していない。2026年のGAAP純利益には減損・賠償費用を含み、これを無視した調整後利益を基準にしていない。株価と市場の倍率からシナリオを逆算していない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の8.0%に品質差1.5ポイントを加えた9.5%。リオ・ティントと同水準である。鉱山の循環と価格受容を反映し、サマルコ訴訟とJansen工事リスクは資本コストへ重複加算せず筋書きに織り込む。