結論
アッヴィは、免疫(スキリージ・リンヴォック・ヒュミラ)、神経(ブレイラー・ボトックス治療・ウブレルビー・クリプタ・ビアリー)、腫瘍(ベネクレクスタ・イムブルビカ・エラヘア)、美容(ボトックス美容・ジュビダーム)を持つ米国最大級のバイオ医薬会社である。2025 年は売上 612 億ドル(前年比 +8.6%)で、ヒュミラが後発薬で半減する中でも、スキリージ(176 億ドル、+50%)とリンヴォック(83 億ドル、+39%)が穴を埋めた。2026 年は上半期から売上が 1 割増で、通期を約 676 億ドルへ引き上げている。純利益が 2025 年に 42 億ドルと小さいのは、買収した仕掛かり研究への支払い(50 億ドル)と無形資産の償却のためで、事業の稼ぐ力を表していない。
事業の質は高い。ヒュミラの特許切れという 2023 年の大きな崖を、自社で育てた 2 つの免疫薬で越えた実績がある。ただしバリュー投資の観点で見るべきは次の崖である。スキリージの物質特許は 2033 年、ブレイラーは 2029 年前後、ボトックスとブレイラーは 2027〜2028 年に Medicare の薬価交渉が始まる。そして肥満薬のような単一の次の柱はまだ見えず、110 億ドルの現金でアポジーを買ったばかりで、純負債は 700 億ドル台に増える。
数量 × 価格で積み上げると、10 年後の中立は売上 934 億ドル・純利益 288 億ドルで、2030 年代前半に利益の伸びが止まる。倍率は利益ベースの正当化 PER(10 年の中立で 20.2 倍。g 4.0%・ROE 34%・k 8.0%)の 7.5 割、15.2 倍に置いた。特許切れと薬価政策の分、堀の厚さの割に低めにしている。悲観側の確率を重ねた本質価値は、今の時価総額(5,060 億ドル)を約 42% 下回り、「割高」。優れた事業だが、純負債が大きく、悲観では今の 2 割ほどになるので、安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後を問う。免疫の慢性疾患の薬は今後 10 年も使われ、リンヴォックは 2037 年まで特許で守られ、事業が消える心配は小さい。ただし堀は「特許が守っている間」の独占であり、広がる堀というより、時間が限られた堀である。2033〜2035 年にスキリージが特許と薬価交渉の両方で価格を失う時点で、次の柱が立っているかが問われる。
オーナー利益を見る。2025 年の GAAP 純利益は 42 億ドルと小さいが、仕掛かり研究への支払いと無形資産の償却は、実際の事業の稼ぎを小さく見せる。償却は現金が出ない一方で、買収した薬の寿命を表す。本稿では償却を足し戻し、平常の IPR&D は費用として引いたものを純利益とし、2028 年の中立で 261 億ドルとみる。フリーキャッシュフロー 178 億ドルは配当 117 億ドルで 3 分の 2 を使い、残りは負債の返済と買収の頭金で消える。
安全域の観点では、中立の筋書きの 10 年後の時価総額は今の約 0.86 倍で、還元を加えても年率は 2% 前後にとどまる。資本コスト 8% に届かず、悲観側の確率(10 年で 38%)を重ねると、本質価値は今の時価総額を約 4 割下回る。経営は買収で薬を伸ばす手腕が確かで配当も誠実だが、借金を使う買収が続く点が心配。予測のしやすさは中、事業への確信は高いが、今の値段への確信は持てない。
何で稼ぐ会社か
売上の 4 割強(2025 年 259 億ドル)はスキリージとリンヴォックである。スキリージは IL-23 を抑える注射薬で、乾癬・乾癬性関節炎・クローン病・潰瘍性大腸炎に使われ、リンヴォックは JAK 阻害の飲み薬で、関節リウマチ・アトピー性皮膚炎・潰瘍性大腸炎などに使われる。2026 年 4〜6 月期は両剤で 80 億ドル(前年同期比 +24%)。ヒュミラは 2023 年の後発薬参入から落ち続け、2025 年は 45 億ドル(−49.5%)、2026 年 4〜6 月期は 7.6 億ドル(−36%)まで縮んだ。
神経は 108 億ドルで、統合失調症・双極性障害のブレイラー(36 億ドル)、ボトックスの治療用(38 億ドル、慢性片頭痛・けいれん)、片頭痛のウブレルビーとクリプタ(合計 23 億ドル)、パーキンソン病のビアリー(5 億ドル)が柱。腫瘍は 67 億ドルで、血液がんのベネクレクスタ(28 億ドル、増加)とイムブルビカ(29 億ドル、薬価交渉と競合で急減)、卵巣がんのエラヘア、エプキンリー(ジェンマブと共同)が成長品。美容はボトックス美容とジュビダームで 49 億ドルだが、消費の弱さで 2025 年は −6%。そのほか眼科、消化器のクレオン・リンゼスなどで約 84 億ドル。
米国の販路は保険と薬局で、価格は保険会社・薬剤給付管理会社とのリベート交渉で決まる。研究開発は売上の 15% 前後で、2026 年はアポジー(アトピー性皮膚炎の IL-13 抗体、109 億ドル)に加え、がんの ADC(抗体薬物複合体)やパーキンソン病薬タバパドンを育てている。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第 1 は特許で、リンヴォックは和解により米国の後発薬が 2037 年まで出ず、スキリージも物質特許が 2033 年まで続く。第 2 は医師と患者に定着した処方で、免疫の慢性疾患は薬を変えにくく、複数の適応(皮膚・関節・腸)にまたがる品揃えで保険会社との交渉でも強い。第 3 は販売と開発の規模で、免疫・神経・美容・がんを持ち、買収した薬を自社の販路で大きくする力がある(ヒュミラ、ボトックス、ブレイラーがその例)。
資本効率は見かけでは測れない。自己資本はマイナス(自社株買いの累積と買収に伴う費用)で ROE は意味を持たない。事業そのものは、調整後の営業利益率が 47% 前後(IPR&D を除く)と高いが、買収で積み上げた無形資産の償却が年 80 億ドル台あり、GAAP の利益は大きく削られる。経営陣は買収した薬を伸ばして配当を毎年増やしてきたが、2024〜2025 年のエムラクリジパムの失敗(統合失調症、セレベル買収)のように、買った開発品が外れた例もある。
弱点は 3 つ。第 1 にスキリージとリンヴォックへの集中(売上の 4 割強、利益の 6 割前後)。第 2 に政策で、イムブルビカ・ブレイラー・リンゼス・ボトックスが Medicare の薬価交渉の対象になり、価格を決める力が弱まる。第 3 に借金で、買収のたびに純負債が 600 億〜700 億ドル台に積み上がり、配当(年約 120 億ドル)と合わせるとフリーキャッシュフローに余裕が小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
免疫の薬(IL-23・JAK・TNF など)は、乾癬・乾癬性関節炎・炎症性腸疾患・アトピー性皮膚炎・関節リウマチなど患者の多い慢性疾患向けで、生物学的製剤を使う人の割合がまだ低い(乾癬の中等症以上でも 3 割前後)ため、数量はなお伸びる。業界ノートの置き方では、免疫・神経など特許で守られた成長主力は、売上の伸びが 2026〜2030 年は年 0〜+2%、2031 年以降は年 +4%、純価格は年 −1% で下がる。アッヴィはこの中でも成長が強く、2029 年まで 2024 年基準で年 1 桁台後半の売上成長を会社自身が掲げている。
循環でいえば、スキリージとリンヴォックが急成長の中盤にいる。リンヴォックは JAK 阻害の飲み薬として、アトピー性皮膚炎・全身性エリテマトーデス・円形脱毛症などへ適応を広げ、スキリージは潰瘍性大腸炎・クローン病でシェアを取る。一方で競合も増える。ジョンソン・エンド・ジョンソンの飲み薬イコトロキンラ(Icotyde)は乾癬で飲み薬の選択肢を出し、イーライリリーはイクセキズマブ、サノフィとリジェネロンはデュピクセント、メルクやロシュは TL1A 抗体で追う。ヒュミラの後発薬(バイオシミラー)は、薬剤給付管理会社の採用が進んで価格が崩れた。
価格を決める力は、米国の薬価政策で弱まる。Medicare の薬価交渉は、ブレイラー・リンゼス(2027 年)、ボトックス(2028 年。アッヴィは提訴中)と進み、バイオ医薬は承認から 11 年で交渉の対象になるため、スキリージの適用は 2030 年前後の選定、2032 年ごろの価格が見込まれる。分かれ目は、イコトロキンラなど飲み薬の浸透、リンヴォックの新しい適応、スキリージの特許(2033 年)と和解、美容需要の回復である。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2025 年は配当 117 億ドル・自社株買い 10 億ドル、株数はほぼ横ばい(株式報酬による増加を自社株買いで打ち消す程度)。配当は毎年増やしており、フリーキャッシュフロー(2025 年 178 億ドル)の約 65% を使う。
M&A は同社の成長戦略の中心で、2020 年にアラガンを約 630 億ドルで買収(ボトックス・ブレイラー・ジュビダームを得た)、その後イムノジェン(エラヘア)、セレベル(パーキンソン病薬タバパドン、統合失調症のエムラクリジパムは 2024 年に失敗)、2026 年にアポジー(109 億ドル・現金・借入で調達)を買収した。大型買収の成功は半々で、アラガンは成功、セレベルの一部は失敗だった。借金は買収のたびに増え、純負債は 631 億ドルから 700 億ドル台前半になる見込みで、新しい借入は 5.75% 前後で借り換わる。
今後の鍵は、スキリージとリンヴォックの次の柱を、買収でどれだけ失敗なく買えるか。大型買収が続けば負債が増え、配当の増額余地が狭まる。アッヴィが買われる側になる可能性は、時価総額 5,000 億ドル台で現実的でない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スキリージとリンヴォックは、2025 年の 259 億ドルから 2027 年に 310 億ドル超を会社が見込み、2026 年 4〜6 月期も +24% で、通期予想を引き上げ続けている。生物学的製剤を使っていない患者が乾癬でも炎症性腸疾患でも多く、数量の余地は大きい。リンヴォックは和解で米国の後発薬が 2037 年まで出ず、スキリージも 2033 年まで特許が続くため、10 年間の大半で独占が保たれる。
さらにリンヴォックはアトピー性皮膚炎・全身性エリテマトーデス・円形脱毛症・巨細胞性動脈炎などへ適応を広げ、最終的に年 200 億ドル近くを狙える。ボトックスと美容は消費が戻れば年 1 桁台後半の成長に戻り、タバパドン・エラヘア・エプキンリー・ベネクレクスタなどの新しい柱が育つ。ヒュミラの崖を無傷で越えた経営陣が、アポジーの IL-13 抗体(アトピー性皮膚炎)を第 3 の免疫の柱に育てれば、2030 年代もさらに利益が増える。調整後の営業利益率は 47% 前後で、規模の効果でもう少し上がる。
慎重な見方
成長の中身は、価格が支える成長ではなくなった。スキリージ・リンヴォックの価格は会社自身が「低い 1 桁台のマイナス」が続くと言い、米国の薬価政策は Medicare の交渉をバイオ医薬にも広げ、最恵国待遇の議論も続く。イコトロキンラ(ジョンソン・エンド・ジョンソンの飲み薬)の乾癬での浸透、TL1A 阻害薬など炎症性腸疾患の新薬、さらにスキリージ自体のバイオシミラー(2033〜2035 年)は、免疫の二本柱の価格と数量を同時に削る。
利益の質にも不安が残る。2025 年の GAAP 純利益は 42 億ドルで、調整後との差は、買収の償却と仕掛かり研究への支払いに 130 億ドル以上あり、これは毎年出る。ブレイラーは 2027 年に薬価交渉、2029 年前後に後発薬、ボトックスは 2028 年の薬価交渉、イムブルビカは急減し、神経・腫瘍・美容の合計 220 億ドルが前向きの成長を出しにくい。美容は 2025 年に −6%、エムラクリジパムは失敗した。そのうえ 109 億ドルを借りてアポジーを買い、純負債は 700 億ドル台に積み上がる。今の時価総額は調整後の利益の 20 倍近いが、成長の鈍化を考えると高い。
どちらに重みを置いたか
免疫の二本柱の強さは強気の見方が上回る。ただし 10 年の議論は慎重な見方が強く、スキリージの特許切れ(2033 年)と薬価交渉が 10 年の終盤に重なり、次の柱がまだ確定していない。10 年の確率は中立 30% を最大にし、やや悲観を 25%、悲観を 13% と厚めに置いた(楽観 10%・やや楽観 22%)。結論は「優れた事業だが、利益ベースの正当化 PER の 7.5 割で測ると今の値段は割高。純負債が大きく安全域は薄い」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 232.04 ドル4,114 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 83.67 ドル1,484 億ドル)。 今の値に割り戻すと 164.42 ドル2,915 億ドル、今との差 −42.3%、 期待の年率 +1.0%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 455.28 ドル8,072 億ドル | 98.70 ドル1,750 億ドル | +94.3% | +6.9% | 55.40 ドル982 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 337.10 ドル5,977 億ドル | 93.06 ドル1,650 億ドル | +50.8% | +4.2% | 94.64 ドル1,678 億ドル |
| 中立 | 30% | 246.58 ドル4,372 億ドル | 87.42 ドル1,550 億ドル | +17.1% | +1.6% | 100.20 ドル1,777 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 124.90 ドル2,214 億ドル | 76.14 ドル1,350 億ドル | −29.5% | −3.4% | 50.26 ドル891 億ドル |
| 悲観 | 13% | 54.99 ドル975 億ドル | 62.04 ドル1,100 億ドル | −59.0% | −8.5% | 15.21 ドル270 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 232.04 ドル4,114 億ドル | 83.67 ドル1,484 億ドル | +10.7% | +1.0% | 315.71 ドル5,597 億ドル |
今の株価時価総額 285.19 ドル5,056 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:免疫の 3 本目の柱が育ち、スキリージの特許切れも小さく済む 利益 461 億ドル · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 455.28 ドル8,072 億ドル
2035 年、スキリージ・リンヴォックの合計は 624 億ドル(患者 430 万人 × 1 人あたり 14,500 ドル)。リンヴォックは 2037 年まで特許で守られて年 200 億ドル近く、スキリージも特許の和解で後発薬の参入が遅れる。アポジーの IL-13 抗体と、ADC・パーキンソン病薬などの新薬群が合計 200 億ドルに育つ。神経は 190 億ドル、腫瘍は 100 億ドル、美容は 90 億ドルで、売上は 1,282 億ドル(2025 年の 2.1 倍)、営業利益率は約 43%。純価格は物価に届かないが、数量が埋める。倍率は正当化 PER 20.6 倍の 8.5 割の 17.5 倍に置いた。
- 免疫の成長薬(スキリージ・リンヴォック):数量 430(治療を受ける患者数(万人))× 価格 14,500(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 624 億ドル・営業利益 374 億ドル。6 割のシェアに近い数量
- ヒュミラ:数量 30.0(治療患者数(万人))× 価格 2,600(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 4 億ドル
- 神経(ブレイラー・ボトックス治療・片頭痛薬・ビアリー):数量 78.0(治療患者数(万人))× 価格 24,350(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 190 億ドル・営業利益 76 億ドル。タバパドンが貢献
- 腫瘍(ベネクレクスタ・イムブルビカ・エラヘア・エプキンリー):数量 80.0(治療患者数(万人))× 価格 12,500(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 100 億ドル・営業利益 30 億ドル。新薬が育つ
- 美容(ボトックス美容・ジュビダーム):数量 2,000(年間の施術数(万回))× 価格 450(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 90 億ドル・営業利益 23 億ドル
- その他(眼科・消化器・肝炎ほか):数量 850(治療患者数(万人))× 価格 824(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 70 億ドル・営業利益 17 億ドル
- 新薬群(アポジー・タバパドンなど 2026 年以降の新薬):数量 70.0(治療患者数(万人))× 価格 28,600(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 200 億ドル・営業利益 76 億ドル。アポジー等が柱
倍率:正当化 PER は 20.6 倍(g 4.0%、RONIC 22.7%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 37.4% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 17.5 倍(8.5 割)に置いた。堀は普通:免疫の二本柱(スキリージ・リンヴォック)で堀は厚いが、スキリージ(2033 年)・リンヴォック(2037 年)の特許切れと薬価交渉の山が先にあり、次の柱も確定していないので強い堀(2/3)とは見ない。利益の質がよい筋書き。上限の 8.5 割に置く。純利益は GAAP。
確率:10 年間、免疫の数量が伸び続け、スキリージの特許切れ後も和解と複数の適応で価格が保たれ、アポジーなどの新しい柱が 200 億ドル規模に育つ展開。1 割。
やや楽観 22% やや楽観:リンヴォックが柱、新しい免疫薬も育つ 利益 371 億ドル · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 337.10 ドル5,977 億ドル
2035 年、スキリージとリンヴォックは合計 545 億ドル(患者 395 万人 × 1 人あたり 13,800 ドル)。スキリージの特許切れの影響は 2034 年以降に限られ、リンヴォックが伸びて穴を埋める。新薬群は 150 億ドル、神経は 170 億ドル、腫瘍は 86 億ドル、美容は 79 億ドル。売上は 1,102 億ドル(2025 年の 1.8 倍)、営業利益率は約 40%。アポジーの IL-13 抗体はアトピー性皮膚炎でデュピクセントの後を追い、ADC とパーキンソン病薬も立ち上がる。配当は毎年増え、10 年の還元は配当を中心に 1,650 億ドル。成長は年 1 桁台前半に落ち着き、2037 年のリンヴォック特許切れの後 2 年は利益が伸びない。倍率は正当化 PER 20.1 倍の 8 割の 16.1 倍に置いた。
- 免疫の成長薬(スキリージ・リンヴォック):数量 395(治療を受ける患者数(万人))× 価格 13,800(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 545 億ドル・営業利益 316 億ドル
- ヒュミラ:数量 27.0(治療患者数(万人))× 価格 2,550(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 3 億ドル
- 神経(ブレイラー・ボトックス治療・片頭痛薬・ビアリー):数量 74.0(治療患者数(万人))× 価格 23,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 170 億ドル・営業利益 65 億ドル
- 腫瘍(ベネクレクスタ・イムブルビカ・エラヘア・エプキンリー):数量 72.0(治療患者数(万人))× 価格 11,900(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 86 億ドル・営業利益 24 億ドル
- 美容(ボトックス美容・ジュビダーム):数量 1,850(年間の施術数(万回))× 価格 427(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 79 億ドル・営業利益 19 億ドル
- その他(眼科・消化器・肝炎ほか):数量 820(治療患者数(万人))× 価格 793(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 65 億ドル・営業利益 15 億ドル
- 新薬群(アポジー・タバパドンなど 2026 年以降の新薬):数量 58.0(治療患者数(万人))× 価格 25,900(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 150 億ドル・営業利益 52 億ドル
倍率:正当化 PER は 20.1 倍(g 4.0%、RONIC 20.6%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 33.1% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 16.1 倍(8 割)に置いた。堀は普通:免疫の二本柱(スキリージ・リンヴォック)で堀は厚いが、スキリージ(2033 年)・リンヴォック(2037 年)の特許切れと薬価交渉の山が先にあり、次の柱も確定していないので強い堀(2/3)とは見ない。上限の 8 割に置く。純利益は GAAP。
確率:リンヴォックとスキリージの数量が 2030 年代前半まで伸び、新薬群が 150 億ドルになる展開。薬価交渉の影響は限定的。
中立 30% 中立:免疫は特許切れ前に頭打ちで、成熟した大手バイオとして評価される 利益 288 億ドル · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 246.58 ドル4,372 億ドル
2035 年、スキリージとリンヴォックは合計 468 億ドル(患者 360 万人 × 1 人あたり 13,000 ドル。価格は 2025 年より 25% 低い)。リンヴォックは特許の中、スキリージは薬価交渉(2032 年ごろ)とバイオシミラー(2034 年以降)で価格を失い始める。神経は 150 億ドル(ブレイラーは後発薬で 6 億ドルに縮み、ボトックス治療・ビアリー・タバパドン・クリプタが支える)、腫瘍は 72 億ドル(ベネクレクスタが後発薬で縮み、エラヘア・エプキンリー・新薬が補う)、美容は 68 億ドル、新薬群は 110 億ドル。売上は 934 億ドル(2025 年の 1.5 倍)、営業利益率は約 37%、純利益は 288 億ドル。倍率は正当化 PER 20.2 倍の 7.5 割の 15.2 倍に置いた。
- 免疫の成長薬(スキリージ・リンヴォック):数量 360(治療を受ける患者数(万人))× 価格 13,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 468 億ドル・営業利益 257 億ドル。価格は 2025 年より 25% 低い
- ヒュミラ:数量 25.0(治療患者数(万人))× 価格 2,400(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル
- 神経(ブレイラー・ボトックス治療・片頭痛薬・ビアリー):数量 70.0(治療患者数(万人))× 価格 21,400(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 150 億ドル・営業利益 54 億ドル。後発薬で縮む部分あり
- 腫瘍(ベネクレクスタ・イムブルビカ・エラヘア・エプキンリー):数量 65.0(治療患者数(万人))× 価格 11,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 72 億ドル・営業利益 18 億ドル
- 美容(ボトックス美容・ジュビダーム):数量 1,700(年間の施術数(万回))× 価格 400(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 68 億ドル・営業利益 15 億ドル
- その他(眼科・消化器・肝炎ほか):数量 800(治療患者数(万人))× 価格 750(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 60 億ドル・営業利益 13 億ドル。縮小
- 新薬群(アポジー・タバパドンなど 2026 年以降の新薬):数量 45.0(治療患者数(万人))× 価格 24,400(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 110 億ドル・営業利益 33 億ドル。アポジー等が育つ
倍率:正当化 PER は 20.2 倍(g 4.0%、RONIC 21.0%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 34.0% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 15.2 倍(7.5 割)に置いた。堀は普通:免疫の二本柱(スキリージ・リンヴォック)で堀は厚いが、スキリージ(2033 年)・リンヴォック(2037 年)の特許切れと薬価交渉の山が先にあり、次の柱も確定していないので強い堀(2/3)とは見ない。中立は上限の 7.5 割に置く。10 年後の利益は特許切れと薬価交渉の山を越えた後の値で、次の柱も確定していない。純利益は GAAP。
確率:業界ノートの中立(特許で守られた成長主力は 2031 年以降に売上が年 +4%、純価格は年 −1%)にほぼ沿うが、免疫の集中度が高く、スキリージの特許(2033 年)が視野に入る分は割り引く。
やや悲観 25% やや悲観:スキリージの価格が早く崩れ、免疫の二本柱が 370 億ドルへ 利益 167 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 124.90 ドル2,214 億ドル
2035 年、スキリージとリンヴォックは合計 368 億ドル(患者 320 万人 × 1 人あたり 11,500 ドル)。スキリージの米国価格が薬価交渉と後発薬で 4 割以上下がり、リンヴォックの新しい適応は期待に届かない。神経は 125 億ドル、腫瘍は 55 億ドル、美容は 56 億ドル(競合とボトックスの価格下落)、新薬群は 65 億ドル。売上は 726 億ドル、営業利益率は約 28%。アポジー買収の借入の負担も残り、さらに数年かけて買収で穴を埋めようとするが、買収の成功率が下がって価値が壊れる。成長が止まり、配当の増額も止まる。ヒュミラが 2023 年以降に示したとおり、価格は一度崩れると戻らない。倍率は正当化 PER 18.9 倍の 7 割の 13.3 倍に置いた(特許切れの後 3 年の年 −3% は上限の割合で反映)。
- 免疫の成長薬(スキリージ・リンヴォック):数量 320(治療を受ける患者数(万人))× 価格 11,500(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 368 億ドル・営業利益 184 億ドル。バイオシミラーで価格崩れ
- ヒュミラ:数量 22.0(治療患者数(万人))× 価格 2,250(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 2 億ドル
- 神経(ブレイラー・ボトックス治療・片頭痛薬・ビアリー):数量 65.0(治療患者数(万人))× 価格 19,200(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 125 億ドル・営業利益 40 億ドル
- 腫瘍(ベネクレクスタ・イムブルビカ・エラヘア・エプキンリー):数量 55.0(治療患者数(万人))× 価格 10,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 55 億ドル・営業利益 11 億ドル
- 美容(ボトックス美容・ジュビダーム):数量 1,500(年間の施術数(万回))× 価格 373(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 56 億ドル・営業利益 10 億ドル。競争
- その他(眼科・消化器・肝炎ほか):数量 740(治療患者数(万人))× 価格 703(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 52 億ドル・営業利益 10 億ドル。縮小
- 新薬群(アポジー・タバパドンなど 2026 年以降の新薬):数量 30.0(治療患者数(万人))× 価格 21,700(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 65 億ドル・営業利益 14 億ドル。育たない
倍率:正当化 PER は 18.9 倍(g 4.0%、RONIC 16.5%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 25.0% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 13.3 倍(7 割)に置いた。堀は普通:免疫の二本柱(スキリージ・リンヴォック)で堀は厚いが、スキリージ(2033 年)・リンヴォック(2037 年)の特許切れと薬価交渉の山が先にあり、次の柱も確定していないので強い堀(2/3)とは見ない。新薬の補充が足りず入れ替えが遅れる筋書き。上限の 7 割に置く。純利益は GAAP。
確率:スキリージが薬価交渉と飲み薬・TL1A 阻害薬で数量と価格の両方を失い、新薬群が育たない展開。ヒュミラの 10 年が示した道に近い。
悲観 13% 悲観:構造的に負け、免疫の二本柱が価格を失い、新しい柱も育たない 利益 78 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 54.99 ドル975 億ドル
2035 年、免疫の純価格は 1 人あたり 9,500 ドルまで崩れ(2025 年の 4 割台)、患者 270 万人でスキリージとリンヴォックは合計 256 億ドル。ヒュミラは 3 億ドルまで縮み、神経は 95 億ドル、腫瘍は 40 億ドル、美容は 40 億ドル、新薬群は 25 億ドルにとどまる。買収した開発品の減損が続き、売上は 501 億ドル(今の 8 割)、営業利益率は 20% 弱。この間の還元は最初の 5 年の利益から払い、後半は配当の維持が精いっぱい。時価総額は、純利益 78 億ドルに、縮む会社の式(g −1%・ROE 15%)の 12.5 倍をかけた水準(975 億ドル、今の約 2 割)。
- 免疫の成長薬(スキリージ・リンヴォック):数量 270(治療を受ける患者数(万人))× 価格 9,500(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 256 億ドル・営業利益 128 億ドル。価格が 4 割台へ
- ヒュミラ:数量 15.0(治療患者数(万人))× 価格 2,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル
- 神経(ブレイラー・ボトックス治療・片頭痛薬・ビアリー):数量 58.0(治療患者数(万人))× 価格 16,400(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 95 億ドル・営業利益 28 億ドル。減損
- 腫瘍(ベネクレクスタ・イムブルビカ・エラヘア・エプキンリー):数量 48.0(治療患者数(万人))× 価格 8,300(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 7 億ドル
- 美容(ボトックス美容・ジュビダーム):数量 1,300(年間の施術数(万回))× 価格 308(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 6 億ドル。競争
- その他(眼科・消化器・肝炎ほか):数量 700(治療患者数(万人))× 価格 600(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 42 億ドル・営業利益 7 億ドル。縮小
- 新薬群(アポジー・タバパドンなど 2026 年以降の新薬):数量 14.0(治療患者数(万人))× 価格 17,900(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 2 億ドル。失敗
倍率:正当化 PER は 12.5 倍(g -1.0%、RONIC 11.5%。RONIC は k 8.00% に、事業の ROE 15.0% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 12.5 倍(10 割)に置いた。堀は普通:免疫の二本柱(スキリージ・リンヴォック)で堀は厚いが、スキリージ(2033 年)・リンヴォック(2037 年)の特許切れと薬価交渉の山が先にあり、次の柱も確定していないので強い堀(2/3)とは見ない。構造的に負けた筋書き(g −1%・ROE 15%)なので、この筋書きの g での正当化 PER の値をそのまま使う(上限の割合は掛けない)。純利益は GAAP。
確率:10 年の間に、薬価政策・飲み薬と抗体の新薬・バイオシミラーで免疫の価格が崩れ、買収した開発品も外れて、優良企業ではなくなる展開。景気後退ではなく構造的な負け。13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
免疫の成長薬(スキリージ・リンヴォック)
IL-23 阻害薬スキリージと JAK 阻害薬リンヴォック。売上の 4 割強、利益の過半を占める成長の柱。
| 数量治療を受ける患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 150 | 17,244 | 259 | 116 |
| 10 年後 中立 | 360 | 13,000 | 468 | 257 |
取り方:2025 年のスキリージ 176 億ドル+リンヴォック 83 億ドルを、世界の治療患者 約 150 万人(推定。スキリージ 約 100 万人・リンヴォック 約 50 万人)で割った純単価。 価格は低い 1 桁台のマイナスが続く(会社の見通し)うえ、薬価交渉と競合で、中立で 10 年 0.75 倍と物価に逆らって下がる(物価並みなら 3 年 1.11 倍)。数量は生物学的製剤を使う患者の割合の上昇(乾癬・炎症性腸疾患・アトピー性皮膚炎の浸透)で年 +18% 前後。営業利益は全社の間接費・償却の割り当て後。
ヒュミラ
TNF 阻害薬ヒュミラ。2023 年の後発薬参入から急減中の旧主力。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 90.0 | 5,044 | 45 | 23 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 2,400 | 6 | 2 |
取り方:2025 年の売上 45 億ドル(−49.5%)を、患者 約 90 万人(推定)で割った純単価。薬剤給付管理会社のバイオシミラー採用で数量も単価も落ち続け、中立で 2028 年に 55 万人 × 2,900 ドル。 価格は物価並みに上げず、バイオシミラーとの競争で下がる(10 年 0.48 倍)。
神経(ブレイラー・ボトックス治療・片頭痛薬・ビアリー)
統合失調症・双極性障害のブレイラー、ボトックス治療用、片頭痛のウブレルビーとクリプタ、パーキンソン病のビアリーなど。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 17,950 | 108 | 32 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 21,400 | 150 | 54 |
取り方:2025 年の神経 108 億ドル(ブレイラー 36・ボトックス治療 38・ウブレルビー 13・クリプタ 10・ビアリー 5・その他)を、患者 約 60 万人(推定)で割った純単価。 価格は 2027 年のブレイラーとリンゼス、2028 年のボトックスの薬価交渉で物価並みに上げられず、中立で 10 年 1.19 倍(物価並みなら 1.11 倍・1.41 倍)。数量は患者数で年 +6%(ビアリー・クリプタなどの浸透)。
腫瘍(ベネクレクスタ・イムブルビカ・エラヘア・エプキンリー)
血液がんのベネクレクスタ・イムブルビカ、卵巣がんのエラヘア、リンパ腫のエプキンリーなど。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 11,100 | 67 | 15 |
| 10 年後 中立 | 65.0 | 11,000 | 72 | 18 |
取り方:2025 年の腫瘍 67 億ドルを、患者 約 60 万人(推定)で割った純単価。 価格はイムブルビカの交渉価格(2026 年適用)で下がり、成長品への入れ替わりで 1 人あたりの平均も下がる(中立で 3 年 0.95 倍)。ベネクレクスタ・エラヘア・エプキンリーが数量を伸ばす。
美容(ボトックス美容・ジュビダーム)
ボトックス美容、ジュビダームなどのフィラー。消費の弱さで 2025 年は −6%。
| 数量年間の施術数(万回) | 価格1 回あたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,215 | 400 | 49 | 10 |
| 10 年後 中立 | 1,700 | 400 | 68 | 15 |
取り方:2025 年の美容 49 億ドルを、年間の施術 約 1,215 万回(推定)で割った 1 回あたり約 400 ドル。 価格は競合(ガルデルマ・ダクシファイなど)と消費の弱さで物価に届かず、中立で 10 年 1.0 倍。会社は 2025 年基準で年 1 桁台後半の成長を掲げるが、足元の 2026 年 4〜6 月期は +0.3% にとどまる。
その他(眼科・消化器・肝炎ほか)
眼科(オゾデックス・ルミガン)、消化器(クレオン・リンゼス)、肝炎薬、そのほか。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 844 | 84 | 18 |
| 10 年後 中立 | 800 | 750 | 60 | 13 |
取り方:2025 年の売上 612 億ドルから上記を引いた残り 約 84 億ドル(眼科 21・クレオン 15・リンゼス 9・肝炎薬・その他)を、治療患者 約 1,000 万人(推定)で割った平均。リンゼスは 2027 年の薬価交渉、2029 年前後に後発薬が見込まれる。 価格は物価並みに上がらず(中立で 10 年 0.89 倍)、数量も眼科の縮小で緩やかに減る。
新薬群(アポジー・タバパドンなど 2026 年以降の新薬)
2026 年以降に出る新薬の合計(アポジーの IL-13 抗体、タバパドン、ADC など)。今は小さい。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.0 | 4,000 | 2 | −5 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 24,400 | 110 | 33 |
取り方:2025 年に発売した薬(エムレリスなど)の合計 約 2 億ドル。立ち上がり期で販売費が重く赤字。 今の単価が低いのは、発売初年で患者の治療期間が短い(年の途中から使う)ため。将来は通年の治療・適応の拡大で単価が上がるが、中立で 3 年は発売初期の低単価の患者が増えて 0.75 倍。2028 年は 12 億ドル、2035 年は 110 億ドル(アポジーの IL-13 抗体・タバパドン・ADC・肥満薬の提携品など)が中立。
リスクと懸念
スキリージの特許切れと薬価交渉
スキリージの物質特許は 2033 年で、バイオ医薬の Medicare 薬価交渉は承認から 11 年後に始まるため、2030 年前後に選ばれ 2032 年ごろに価格が下がる見込み。次の柱が立つ前に、売上の 3 割弱が一気に価格を失えば、2030 年代の利益が止まる。2025 年のヒュミラの崩れ(1 年で −49.5%)が前例。
免疫の価格と競合(飲み薬・TL1A・バイオシミラー)
会社自身が低い 1 桁台の価格の下落が続くと言い、ジョンソン・エンド・ジョンソンの飲み薬イコトロキンラが乾癬で浸透すれば数量も削られる。メルク・ロシュの TL1A 抗体が炎症性腸疾患へ入る。イーライリリーやサノフィも免疫に厚く、価格競争が広がれば成長の中身が崩れる。
米国の薬価政策(IRA・最恵国待遇・関税)
ブレイラーとリンゼス(2027 年)、ボトックス(2028 年。アッヴィが提訴中)が Medicare の交渉で価格が下がる。最恵国待遇が民間保険に広がれば、純価格が 2 年で 1〜2 割下がる。アッヴィは既に交渉済みのイムブルビカの急減(2026 年 4〜6 月期 −29%)を経験している。
買収の失敗と負債
アポジーの 109 億ドルは借入で払い、純負債は 600 億ドル台から 700 億ドル台前半になる。セレベルのエムラクリジパムは失敗した。新しい借入は約 5.75% で借り換わり、買収が続けば配当の増額余地が狭まる。開発品が外れれば減損と IPR&D 費用で GAAP の利益が大きく振れる。
ブレイラーの後発薬と神経・美容の鈍化
ブレイラー(2025 年 36 億ドル)は 2027 年の薬価交渉と 2029 年前後の後発薬(時期は和解の推定)で縮む。ボトックス美容は消費の弱さで 2025 年に美容全体が −6%、2026 年 4〜6 月期も +0.3% と鈍く、競合(ガルデルマなど)が価格を下げる。
倍率の縮み
今の PER は GAAP で 120 倍(IPR&D と償却のため)、調整後でも約 20 倍で、成熟した大手製薬の 13〜19 倍より高い。成長が年 1 桁台に落ち、特許切れが近づくほど倍率は成熟した水準へ近づく。利益が増えても倍率が 3 割下がれば時価総額は伸びない。
今後の分かれ目
- スキリージ・リンヴォックの合計が 2027 年に 310 億ドルを超え、イコトロキンラの浸透が小さいと確認されたら
- 3 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。免疫の数量の伸びが価格の下落を上回る。
- 最恵国待遇や IRA の対象が民間保険・スキリージへ早く広がり、免疫の米国純価格が 2 年で 15% 以上下がったら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、中立の免疫の価格を 1 割下げて見る。
- リンヴォックが全身性エリテマトーデス・円形脱毛症などで承認され、年 150 億ドルを超える勢いになったら
- 10 年の楽観側へ確率を動かす。2037 年の特許切れまでの収益が厚くなる。
- アポジーの IL-13 抗体が第 3 相でデュピクセントに並ぶ効果を示したら
- 新薬群の 10 年後の売上を中立の 110 億ドルから 150 億ドル超へ見直す。
- スキリージの特許をめぐり、リンヴォックと同じ 2037 年までの和解が成立したら
- 10 年の悲観・やや悲観の確率を下げ、PER を 2〜3 倍上げてよい。
- ボトックスが薬価交渉で価格を大きく下げられる(または裁判で除外が認められる)
- 神経と美容の中立を動かす。除外なら美容・神経の価格の下押しが小さくなる。
見ておくもの
- スキリージ・リンヴォックの四半期売上と純価格、乾癬でのイコトロキンラのシェア
- 2027 年の会社目標(スキリージ 200 億ドル超・リンヴォック 110 億ドル超)の達成度
- ブレイラー・リンゼス・ボトックスの薬価交渉の結果とアッヴィの提訴
- アポジー買収の完了、純負債と配当の増額の幅
- タバパドンの承認、エラヘア・エプキンリーの成長
- ボトックス美容・ジュビダームの前年比
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 5,060 億ドル・GAAP の PER 120 倍を見る前に、7 つの事業(免疫の成長薬・ヒュミラ・神経・腫瘍・美容・その他・新薬群)を患者数(または施術数)× 1 人あたり純売上で積み上げ、営業利益率を置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は上限 20.2 倍(g 4.0%・ROE 34%・k 8.0%)の 7.5 割で 15.2 倍。帳簿の自己資本は薄く ROE が 40% を超えるので、事業の ROE は ROIC の式で出した。純利益は償却を足し戻した値なので、倍率では足し戻さない。今の倍率には寄せていない。結論は計算で出し、最後に今の値段と比べた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。免疫の二本柱への集中・薬価政策・特許切れ・買収による借金などの個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率(合計 38%)と悲観の深さで表した。存続は危うくないので上乗せ 0。