結論
NSWは企業システム、クラウド運用、車載向け組込みソフト、半導体設計を手掛ける独立系ITサービス会社だ。筆者の結論は「やや割安」である。AIエージェントが人月商売の数量を削る将来を厳しく見ても、半導体設計と現金の厚み、そして増配した実績が現在の時価総額に対する小さな安全域をつくっている。
利益が順調に伸びる会社だと単純には評価できない。2026年3月期は売上が増えたのに営業利益が減り、エンタープライズとサービスでは不採算案件や費用増が表面化した。人月と外注費が収益の土台である以上、顧客がAIで開発や運用を内製化すれば、技術者不足が追い風という従来の常識は逆転しうる。
一方で、車載・産業機器の組込み開発や半導体の論理設計・検証は、机上のコード生成だけでは納品が終わらない。安全性、現物との整合、製造後の不良対応まで顧客の責任に関わるため、需要の消滅は一般的な業務アプリより遅いと考える。ただし、それらも設計工数を売る部分はAIに置き換わり、完全な逃げ場ではない。
中期計画は2028年3月期の売上600億円、営業利益率12%を掲げる。しかし10年の中立では、計画を直線的に延ばさず、名目売上も現在より小さくなる。利益から積み上がる価値と現金の回収可能性を別々に数えると、確率加重した現在価値は約458億円となり、基準時価総額約405億円を約13%上回る。余裕は厚くなく、現金が成長投資に消えるなら結論は変わる。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、NSWを単なる「IT需要が伸びる会社」としては買わない。顧客の仕事を人員で処理し、納品した分だけ請求する構造が続く限り、売上高の過去の成長率は将来の株主利益を保証しない。AIで作業が短くなった価値を顧客が受け取り、受託側には競争と価格交渉だけが残る可能性があるからだ。
それでも全事業が同じ速度で代替されるわけではない。車載機器の実機試験、産業設備の安全性、半導体の設計検証は、顧客が実物の不具合を嫌うほど外部専門家の価値が残りやすい。長年の納入実績も新しい案件の入口になる。ただしこうした技能は重要であっても独占的な料金徴収権ではなく、設備投資を要しないというだけで高い永続成長率を与えるべきではない。
所有者として魅力的なのは資金調達をほぼ必要としない貸借対照表だ。純現金約196億円は、今の時価総額の約半分に相当する。保守的に運転資金を確保した残りを分けて評価し、利益に含まれる預金利息を除いて二重計上を避ける必要がある。長期の株主への配当・買戻しは、事業利益とは別の現金の回収として見なければならない。
もっとも、経営を支配する大株主が余剰をどう扱うかは株主が自由に決められない。2026年の大幅増配は良い兆候だが、将来の大型買収や投資で資金を減らせば価値は下がる。結論はやや割安でも、安全域は一度の投資失敗で消えうる程度にとどまる。堀のない成長に高い値を払いすぎないことと、実際に手元にある資産を無視しないことの両方が大切だ。
何で稼ぐ会社か
収益の主軸は、顧客の情報システムを設計し、実装し、動かし続ける対価である。エンタープライズソリューションは企業向け業務システムと金融・公共向け開発を担い、一部でシステム機器も販売する。ERPの標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」、クレジットカード関連システム、行政のデジタル化が案件の入り口だ。顧客は完成した仕組みを買うが、NSWの原価の多くは社員と協力会社の工数で決まる。
サービスソリューションはデジタル開発とクラウド・インフラ構築・運用からなる。製造現場の管理、データ活用、基盤移行に加え、監視や保守を継続して請け負うため、受注残高が一定の下支えになる。ただし利用者が料金を払い続ける独自の記録基盤や、解約率が公表された高い乗換障壁を持つSaaSと同一視することはできない。運用自動化が進めば、人を常駐させる収入は減りうる。
エンベデッドソリューションは車載、通信、産業機器向けの制御ソフトとミドルウエアを開発する。電気自動車やソフトウェア定義車両、宇宙・防衛の案件では、現物試験と機器メーカーとの調整が必要になる。デバイスソリューションは画像処理・通信向けLSIの上流設計から検証、レイアウト、試作・テストまでを扱う。半導体そのものを大量販売する完成品メーカーではなく、設計受託が依然として収益の中心である。
2026年3月期の連結売上は524億円、営業利益は53億円だった。技術者・管理要員は連結2,536人で、売上原価の労務費と外注費を合わせると約332億円になる。このため数量は実物のチップ枚数ではなく、受注案件に投入する社内・協力会社の請求可能な人年換算で評価する。契約人数は未開示なので、単位数量と請求単価は原価と公表人員からの分析上の推定であり、会社の実測値ではない。
優良さと弱いところ
強みは、顧客の業務システムから機器内部の制御、LSI設計まで技術領域が連なっていることだ。企業はシステムを頻繁には入れ替えず、車載や半導体ではテスト工程に蓄積した知識が品質事故を避ける助けになる。国内で何十年も開発実績を積み上げ、製造業と金融・公共の現場に接点を持つ点は、新規参入の営業障壁となっている。
ただし「値上げしても顧客が離れない堀」が立証されたとは言い難い。契約更新率や価格改定の実績が数字で示されず、独自データのネットワーク効果も確認できない。半導体設計にもノウハウはあるが、大手顧客は仕様と調達条件を握る。将来も顧客の記録を独占的に保管する会社として高く評価する根拠はない。従って堀は普通とみる。
直近10年以上で売上と営業利益を増やした実績はある。営業利益は2015年3月期の約18億円から2025年3月期に約61億円へ伸びたが、2026年3月期は約53億円に後退した。サービスソリューションの利益率は3.5%に落ち、事業品質の均一さに欠ける。人員増と広告宣伝費の急増が価格転嫁や採算改善に直結するか、まだ見極めが必要だ。
財務は明確な長所だ。2026年3月末の純現金は約196億円、自己資本比率は約77%で、技術の転換期に資金繰りに追い立てられる危険は小さい。一方、利益を長く留保して現金だけが増えればROEは薄まる。ROEの見かけの高さではなく、追加した人材・研究費・海外拠点が資本コストを超える利益を生むか、余剰を株主に返すかで経営の質を測りたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場はIDC Japanの推計で2025年に約7兆5,663億円、2030年には約10兆2,541億円へ拡大する見通しだ。大企業の基幹系刷新と公共システムの更新が目先の需要を支え、富士通、日立製作所、NEC、NTTデータなどの大手が主要案件を競う。NSWの企業向け・サービス向け合計売上を市場と比べると約0.42%であり、全国的な価格支配力を持つ規模ではない。別定義のガートナー2024年調査ではNTTデータ10.1%、NEC8.3%、富士通8.0%、日立7.7%と大手に集中する。ただしこの市場の分母はIDCと異なるため、NSWの0.42%と直接比較しない。
市場の名目成長と、受託会社が請求できる仕事量の成長は別物だ。AIエージェントが設計、プログラミング、試験、運用監視を一連の作業として行えば、顧客のIT支出が増えても人月数は減りうる。IDCの市場予測は当時の技術・購買行動を前提にしたものであり、そのまま2036年の人月単価と稼働人数に延長するのは危険だ。
エンタープライズの競争相手にはTIS、BIPROGY、DTS、NSD、クレスコなども入る。組込み開発ではシステナや機器メーカーの自社開発組織と競い、半導体設計では設計専門会社やメーカーの内製設計部隊との比較になる。組込み・LSI設計受託について統一定義の国内市場規模と企業別シェアは確認できず、NSWが高シェアだとは仮定していない。各分野の請求工数と半導体設計案件の採算を直接追う方が、広すぎる市場シェアを捏造するより適切だ。
市場の数量は、車載電子制御、半導体の高機能化、防衛の電子化が押し上げる一方、ソフトウェア作成時間の短縮が押し下げる。将来の顧客は「何人を何カ月雇うか」よりも「どの品質をいつまでに完成させるか」に対価を払うだろう。その移行を自社の成果報酬へ取り込める証拠はまだ薄いため、中立では人月型の数量を10年間でおおむね四分の一から四割縮め、値上げも物価の範囲に抑える。
資本政策と M&A
中期経営計画は2025年4月から3年間で、2028年3月期の売上600億円、営業利益率12%、ROE10%以上を目指す。研究開発とビジネス開発に50億円、人的資本に50億円を配分する構想で、費用計上分も含む最大100億円規模の投資だ。各事業への配分は示されているが、AI導入による工数削減分を自社の継続収入に変えた実績金額までは示されていない。
同計画の還元目標は配当性向30%以上であり、自社株買いの金額の約束はない。その後、2026年3月期の有価証券報告書では当面の配当性向50%を目安とする方針を明示し、年間配当は実際に増額された。以前の増配実績も踏まえ、余剰資金は最終的に株主へ戻ると評価する。ただし長期の還元額は将来の利益に応じて動き、今の高い配当額を10年間固定しない。
資本配分では、過去の小型子会社再編より今後の人材・海外パートナー・デバイス事業への投資成否が大きい。2026年8月の開示で大株主間の約13.6%の株式移動が予定され、多田・コーポレーションの保有比率は約47.2%となる。これは上場廃止を伴う公開買付けではないが、少数株主による経営への働きかけは容易ではない。投資採算と配当の継続を毎期検証したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最も強い材料は、顧客の課題が業務ソフトだけで終わらないことだ。NSWは情報システムの企画からクラウド運用、車載の制御、半導体設計まで開発をまたげる。大規模なシステム移行には要件整理と責任分担が不可欠であり、AIがコードを生成しても、規制、情報漏洩、機器故障に対する説明責任は消えない。半導体の論理検証や実機試験のような工程は特に顧客の品質認証と一体で、簡単な価格競争だけでは置き換わらない。
中期計画が掲げる標準機能を生かしたERP導入やデバイス提供型事業への転換が実るなら、単なる稼働人数と請求額の関係から少しずつ離れられる。2026年にはデバイスソリューションの営業利益が伸びており、製造分野の需要に応える技術は現に収益を生んでいる。広告宣伝費の一時的な増加と不採算案件の管理を乗り越えれば、会社の利益率は中期目標に近づき、成果の改善が株主に残る。
さらに借入に頼らない現金の厚さは顧客獲得や採用環境が悪い年の守りになる。2026年に配当性向の目安を引き上げたことも、単なる帳簿上の現金を実際の株主利益に変える第一歩だ。会社がAIの導入で自社の生産性を高め、顧客との契約単価を守れるなら、10年後の利益と累積配当の合計は現在の価格に対してかなり大きい。これはAI関連の新製品売上を確認したという主張ではなく、既存業務の採算改善という可能性を見たものだ。
慎重な見方
人月による受託という稼ぎ方は、AIエージェントの普及と最も正面からぶつかる。設計、コード作成、テスト、移行、運用監視を一体で自動化できれば、顧客が必要とするのは少数の業務責任者と高い計算資源だけになる。NSWが過去に人を増やし、単価を引き上げて売上を伸ばしてきた道筋は、そのまま維持できない。クラウド運用も独自の記録システムの権利を売るわけではなく、自動化に強い顧客やクラウド事業者に利益を奪われうる。
製品に近い事業も無傷ではない。半導体の設計自動化ツールと顧客の内製チームが進歩すれば、検証担当者を外部から調達する量は減る。車載ソフトもメーカー主導の標準プラットフォーム化が進み、部品ごとの個別開発工数が減少する。2026年には実際に二つのセグメントで大きな減益が起きており、工数削減より先に営業体制の費用が固定化すれば利益率は一気に薄くなる。
会社に豊富な現金があっても、それは少数株主が自由に引き出せる現金ではない。大株主の影響が強まるもとで、AI対応の買収や海外展開が不調でも長期間続く可能性がある。中期計画にはAI関連の売上金額や定量的な契約維持率がなく、成果報酬への転換が投資回収できるかは未証明だ。純現金を床に数えるのはよいとしても、事業の利益に高い永続成長を与える理由は見つからない。
どちらに重みを置いたか
事業の質だけなら慎重な見方が優勢である。人月型の受注が主力で、AIによる開発工数の減少を止める独自の記録基盤は確認できない。ただし長く持つ株主の価値は利益だけでなく、既存の現金と10年間の配当にもある。半導体設計の収益性と増配実績は、全面的な価値喪失を避ける材料になる。上側26%、中立34%、下側40%と下に寄せたのは、直近の不採算案件と大株主主導の投資配分に固有の不確実性があるためで、AIの影響を数量に織り込んだうえで確率で再度同じ損失を上乗せする意図ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 4,259 円634 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,187 円177 億円)。 今の値に割り戻すと 3,072 円458 億円、今との差 +19.9%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 6.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,829 円1,166 億円 | 1,779 円265 億円 | +274.9% | +16.3% | 673 円100 億円 |
| やや楽観 | 19% | 6,558 円977 億円 | 1,557 円232 億円 | +216.6% | +14.1% | 1,542 円230 億円 |
| 中立 | 34% | 4,971 円741 億円 | 1,289 円192 億円 | +144.2% | +10.8% | 2,128 円317 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,133 円318 億円 | 973 円145 億円 | +21.2% | +2.3% | 808 円120 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,571 円234 億円 | 537 円80 億円 | −17.8% | −2.2% | 295 円44 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,259 円634 億円 | 1,187 円177 億円 | +112.5% | +9.0% | 5,445 円811 億円 |
今の株価時価総額 2,563 円382 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 専門性が残りAI生産性を収益化 利益 69 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,829 円1,166 億円
業務アプリでは標準化が進むが、NSWは企画・試験・保守の責任をまとめて請け負うことで契約を維持する。ERPのFit to Standardや製造データの統合が軌道に乗り、顧客は単純なプログラミング作業だけでなく、完成後の稼働と品質に対価を払う。AIで社員と協力会社の作業を短縮しても、契約成果を保持し、浮いた原価が利益に残る。
車載では制御ソフトの安全試験と実機検証、LSIでは論理検証と試作・量産テストへの深い関与が続く。デバイス事業の設計単価が上がる一方、大規模な買収をせず既存顧客との関係を守る。人的資本や研究費の投資も成果を出し、2026年に落ちたサービス事業の利益率は回復する。
機器販売は既存顧客との一括調達で維持される。工数型の数量は各分野とも現在の範囲内にとどまり、名目単価も物価上昇までだが、利益率の改善が株主の持分を増やす。余剰現金は拡大投資に過度に使わず、配当と内部留保の両方で回収される。
- 企業・金融・公共システム開発:数量 1,100(請求可能な受託開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.18(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 195 億円・営業利益 26 億円。人年等の数量は現状の100%、名目単価は現状の134%。
- システム機器販売:数量 330(機器販売案件換算(件/年、分析推定))× 価格 0.07(1案件あたり販売額(億円、分析推定))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。機器案件数は現状の110%、販売単価は現状の120%。AI人月型とは区別する。
- デジタル開発・データ活用:数量 380(請求可能なデジタル開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.18(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 67 億円・営業利益 7 億円。人年等の数量は現状の100%、名目単価は現状の134%。
- クラウド基盤構築・運用:数量 700(運用・基盤構築の請求相当人年(自動化対象工数換算))× 価格 0.20(1人年あたりサービス売上(億円、機材・利用料を含む))→ 売上 137 億円・営業利益 13 億円。人年等の数量は現状の100%、名目単価は現状の134%。
- 車載・産業機器組込み開発:数量 800(請求可能な組込み設計人年(社員・外注換算))× 価格 0.19(1人年あたり顧客請求額(億円、検証・試験を含む))→ 売上 151 億円・営業利益 25 億円。人年等の数量は現状の100%、名目単価は現状の134%。
- LSI・半導体デバイス設計:数量 650(請求可能なLSI設計・検証人年(協力会社換算))× 価格 0.20(1人年あたり設計・検証売上(億円、試作等を含む))→ 売上 129 億円・営業利益 22 億円。人年等の数量は現状の100%、名目単価は現状の134%。
倍率:事業のROEは余剰現金とその税後利息を除くと約14.3%で、資本コスト6.75%を上回る。RONIC=k+0.5×(事業ROE−k)だが、AIエージェント代替による長期の名目g_longを0%に制限するため、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0675=14.81倍。純利益68.84億円から余剰現金185.0億円の税後利息1.4%相当を控除して倍率を掛け、現金は戻り方1.0で一度だけ加算する。現在の株価や同業PERは根拠に用いない。
確率:品質責任が重い車載・半導体を含め、主要顧客との契約を維持する必要がある。AI関連の新しい売上額は開示されないので、工数型の数量を現在より増やす楽観は採らない。
やや楽観 19% 高付加価値化で工数減を吸収 利益 56 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,558 円977 億円
企業向けの単純開発は減るが、顧客の基幹系刷新やクラウドの大規模移行が継続する。契約は標準機能を使う方式へ移り、NSWは開発工程より顧客業務の設計に力を使う。外注費が案件進捗に連動して調整され、工数は減っても利益率が安定する。
組込みではソフトウェア定義車両と産業機器の安全検証、デバイスでは設計・量産試験の複雑さが付加価値を保つ。半導体企業の内製化が進むので請求できる設計人年は減るものの、デバイスの過去の利益率をおおむね維持する。AIを自社の新たな製品として売った金額は確認されていないため、工数の数量が現在を超えて増える前提は採らない。
最大100億円規模の中期投資は一部が研究・人材費として定常化するが、独立した大型買収に現金を費やすことは避ける。配当性向の引上げが事業から得る利益を株主に回し、安定的に現金を積み上げる。
- 企業・金融・公共システム開発:数量 957(請求可能な受託開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.18(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 169 億円・営業利益 20 億円。人年等の数量は現状の87%、名目単価は現状の133%。
- システム機器販売:数量 315(機器販売案件換算(件/年、分析推定))× 価格 0.07(1案件あたり販売額(億円、分析推定))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。機器案件数は現状の105%、販売単価は現状の118%。AI人月型とは区別する。
- デジタル開発・データ活用:数量 334(請求可能なデジタル開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.17(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 58 億円・営業利益 5 億円。人年等の数量は現状の88%、名目単価は現状の131%。
- クラウド基盤構築・運用:数量 630(運用・基盤構築の請求相当人年(自動化対象工数換算))× 価格 0.20(1人年あたりサービス売上(億円、機材・利用料を含む))→ 売上 123 億円・営業利益 9 億円。人年等の数量は現状の90%、名目単価は現状の134%。
- 車載・産業機器組込み開発:数量 736(請求可能な組込み設計人年(社員・外注換算))× 価格 0.19(1人年あたり顧客請求額(億円、検証・試験を含む))→ 売上 139 億円・営業利益 22 億円。人年等の数量は現状の92%、名目単価は現状の134%。
- LSI・半導体デバイス設計:数量 605(請求可能なLSI設計・検証人年(協力会社換算))× 価格 0.20(1人年あたり設計・検証売上(億円、試作等を含む))→ 売上 120 億円・営業利益 19 億円。人年等の数量は現状の93%、名目単価は現状の134%。
倍率:事業のROEは余剰現金とその税後利息を除くと約12.6%で、資本コスト6.75%を上回る。RONIC=k+0.5×(事業ROE−k)だが、AIエージェント代替による長期の名目g_longを0%に制限するため、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0675=14.81倍。純利益55.79億円から余剰現金190.0億円の税後利息1.4%相当を控除して倍率を掛け、現金は戻り方1.0で一度だけ加算する。現在の株価や同業PERは根拠に用いない。
確率:車載・半導体の試験、クラウド移行に比較的粘着力があり、現在の不採算案件の修復と増配継続が両立するという条件つきの改善。
中立 34% 中立:人月数量は縮むが採算を保つ 利益 40 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,971 円741 億円
国内のIT刷新支出は続くが、顧客は生成・検証・運用の仕事をAIに移し、人月契約を徐々に減らす。企業向けの請求人年は現在の約65%、デジタル開発は約60%、クラウド運用は約73%まで減る。専門性のある組込みとLSI設計でも、試作・安全確認は残る一方、設計・検証の自動化で人年はおおむね四分の一減る。
NSWは採用・外注量を調整し、機器販売の小さな増収とデバイスの高採算によって全社利益の急落を避ける。単価改定は物価の範囲にとどまり、独自の共同利用基盤やAI製品の売上が新たな高成長を生むとは想定しない。研究・人材投資を続け、不採算案件の管理は直近より改善する。
名目の全社売上は現状をやや下回るが、利益額はおおむね維持する。大株主の下でも増配実績が続き、利益のおよそ半分が配当などで株主へ渡る。残りの資金は一部を事業に必要な運転資本に、他を現金として蓄える。10年より先の成長は見込まず、残った稼ぐ力だけを価値とする。
- 企業・金融・公共システム開発:数量 715(請求可能な受託開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.17(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 121 億円・営業利益 13 億円。人年等の数量は現状の65%、名目単価は現状の128%。AIエージェント代替を数量側に反映。
- システム機器販売:数量 285(機器販売案件換算(件/年、分析推定))× 価格 0.07(1案件あたり販売額(億円、分析推定))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。機器案件数は現状の95%、販売単価は現状の115%。AI人月型とは区別する。
- デジタル開発・データ活用:数量 228(請求可能なデジタル開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.16(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。人年等の数量は現状の60%、名目単価は現状の123%。AIエージェント代替を数量側に反映。
- クラウド基盤構築・運用:数量 511(運用・基盤構築の請求相当人年(自動化対象工数換算))× 価格 0.19(1人年あたりサービス売上(億円、機材・利用料を含む))→ 売上 98 億円・営業利益 6 億円。人年等の数量は現状の73%、名目単価は現状の131%。AIエージェント代替を数量側に反映。
- 車載・産業機器組込み開発:数量 576(請求可能な組込み設計人年(社員・外注換算))× 価格 0.19(1人年あたり顧客請求額(億円、検証・試験を含む))→ 売上 109 億円・営業利益 15 億円。人年等の数量は現状の72%、名目単価は現状の134%。AIエージェント代替を数量側に反映。
- LSI・半導体デバイス設計:数量 481(請求可能なLSI設計・検証人年(協力会社換算))× 価格 0.20(1人年あたり設計・検証売上(億円、試作等を含む))→ 売上 94 億円・営業利益 15 億円。人年等の数量は現状の74%、名目単価は現状の132%。AIエージェント代替を数量側に反映。
倍率:事業のROEは余剰現金とその税後利息を除くと約9.8%で、資本コスト6.75%を上回る。RONIC=k+0.5×(事業ROE−k)だが、AIエージェント代替による長期の名目g_longを0%に制限するため、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0675=14.81倍。純利益39.56億円から余剰現金195.0億円の税後利息1.4%相当を控除して倍率を掛け、現金は戻り方1.0で一度だけ加算する。現在の株価や同業PERは根拠に用いない。
確率:AIエージェント代替は数量とg_longに既に入れている。2026年の費用増が和らぐ一方、特定の自社ソフトに支配力を持たない現状が続くという最頻の筋書き。
やや悲観 26% 工数減と価格競争が重なる 利益 21 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,133 円318 億円
開発会社の競争は技術者数の確保から、AIを使ってどれだけ少人数で成果を納品できるかへ移る。大手SIerが企画から運用までを一括契約し、NSWは高採算工程を部分的に失う。企業システムとデジタル開発の請求人年は半減し、受注残を持つクラウドも運用自動化に押される。
車載・産業向けの実機作業とLSIの設計検証は完全には消えないが、メーカーの開発内製化が進む。顧客は費用削減を狙い、請求単価を物価より低く抑える。部門間で余剰技術者が生じ、採算が2026年のように一部に偏る。サービスの利益率は低迷し、営業利益は現在の半分程度まで縮む。
配当は利益に合わせて減り、大規模な自社株買いも実行されない。支配的な大株主は長期保有を続けるものの、事業再編や海外投資に現金が一部使われる。株主の残余価値は小さくなるが、純現金と一部の機器・設計案件が損失を和らげる。
- 企業・金融・公共システム開発:数量 561(請求可能な受託開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.15(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 84 億円・営業利益 6 億円。人年等の数量は現状の51%、名目単価は現状の113%。
- システム機器販売:数量 240(機器販売案件換算(件/年、分析推定))× 価格 0.06(1案件あたり販売額(億円、分析推定))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。機器案件数は現状の80%、販売単価は現状の108%。AI人月型とは区別する。
- デジタル開発・データ活用:数量 190(請求可能なデジタル開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.14(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。人年等の数量は現状の50%、名目単価は現状の110%。
- クラウド基盤構築・運用:数量 434(運用・基盤構築の請求相当人年(自動化対象工数換算))× 価格 0.17(1人年あたりサービス売上(億円、機材・利用料を含む))→ 売上 75 億円・営業利益 3 億円。人年等の数量は現状の62%、名目単価は現状の118%。
- 車載・産業機器組込み開発:数量 464(請求可能な組込み設計人年(社員・外注換算))× 価格 0.18(1人年あたり顧客請求額(億円、検証・試験を含む))→ 売上 83 億円・営業利益 9 億円。人年等の数量は現状の58%、名目単価は現状の127%。
- LSI・半導体デバイス設計:数量 403(請求可能なLSI設計・検証人年(協力会社換算))× 価格 0.18(1人年あたり設計・検証売上(億円、試作等を含む))→ 売上 73 億円・営業利益 8 億円。人年等の数量は現状の62%、名目単価は現状の123%。
倍率:事業のROEは余剰現金と税後利息を除くと約4.8%で資本コスト6.75%を下回る。10年後以降に成長価値を認める余地が薄いため、利益が生む価値の上限1÷k=14.81倍を下回る10.5倍で評価する。純利益20.92億円から余剰現金115.0億円に対応する税後利息を除いた稼ぐ力に倍率を用い、余剰現金を一度だけ加える。
確率:下に寄せる理由:2026年に実際にエンタープライズとサービスの採算が悪化し、大株主主導の投資判断の透明性にも限界があるため。AIの損失を確率で追加計上せず実行力の不確実性を表す。
悲観 14% 構造的敗北:人月の商売が崩れる 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,571 円234 億円
顧客がAIエージェントを標準の開発・運用基盤として導入し、外部へ払う工数を大幅に減らす。NSWの通常の企業システムは需要の穴埋めができず、デジタル開発の粗利は赤字になる。顧客の中には外注契約を終了する先も現れ、稼働人年の減少が早期に進む。
車載はメーカー主導の共通ソフトに置き換わり、LSI設計ではEDAの自動設計・検証機能が普及する。かつて高い利益を生んだデバイス部門でも、顧客が委託する作業が現行の半分近くに減る。案件単価は物価上昇に追いつかず、全社売上はほぼ半減して営業利益はゼロに近づく。
経営は人員再配置や海外拠点の縮小を迫られ、現金の一部が再編費用や低採算の新事業に吸収される。配当は削減されるが、解散寸前の破綻ではないため現金預金と換金可能な有価証券・土地が価値を支える。営業の稼ぐ力に過大な倍率を認めず、資産の売却可能性だけを床とする。
- 企業・金融・公共システム開発:数量 407(請求可能な受託開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.14(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 56 億円・営業利益 −1 億円。人年等の数量は現状の37%、名目単価は現状の104%。
- システム機器販売:数量 195(機器販売案件換算(件/年、分析推定))× 価格 0.06(1案件あたり販売額(億円、分析推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。機器案件数は現状の65%、販売単価は現状の103%。AI人月型とは区別する。
- デジタル開発・データ活用:数量 133(請求可能なデジタル開発人年(社員・外注換算))× 価格 0.13(1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 −2 億円。人年等の数量は現状の35%、名目単価は現状の100%。
- クラウド基盤構築・運用:数量 322(運用・基盤構築の請求相当人年(自動化対象工数換算))× 価格 0.16(1人年あたりサービス売上(億円、機材・利用料を含む))→ 売上 53 億円・営業利益 0 億円。人年等の数量は現状の46%、名目単価は現状の112%。
- 車載・産業機器組込み開発:数量 344(請求可能な組込み設計人年(社員・外注換算))× 価格 0.17(1人年あたり顧客請求額(億円、検証・試験を含む))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。人年等の数量は現状の43%、名目単価は現状の118%。
- LSI・半導体デバイス設計:数量 312(請求可能なLSI設計・検証人年(協力会社換算))× 価格 0.17(1人年あたり設計・検証売上(億円、試作等を含む))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。人年等の数量は現状の48%、名目単価は現状の114%。
倍率:現金預金195.5億円と投資有価証券20億円の7割14億円、土地34.93億円の7割約24.5億円を合わせた約234億円を換金可能資産の床とする。受取債権・棚卸・繰延税金資産・のれん等を別に足さず、今の自己資本378.9億円に対するPBR0.6176倍として表した。2036年の積み上がった自己資本に床倍率を掛けず、収益のPERではなく現在の資産の保守的な換金価値を採る。
確率:AI代替だけでなく、半導体の主要顧客の内製化、採算管理の失敗、資本配分の損失が重なる深い悲観。今の純現金と売れる実物資産を床にする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
企業・金融・公共システム開発
企業の業務システム、金融決済、公共システムの受託開発。機器販売を分けて人月型として評価する。
| 数量請求可能な受託開発人年(社員・外注換算) | 価格1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,100 | 0.13 | 146 | 16 |
| 10 年後 中立 | 715 | 0.17 | 121 | 13 |
取り方:2026年開示のビジネス62.81億円と金融・公共82.93億円を合計して145.74億円。連結従業員2,536人と外注費164.30億円の総能力から、当分野1100人年の請求相当量を試算。単価13.25百万円/人年。営業利益16.40億円は公表エンタープライズ利益16.98億円から機器販売推定0.58億円を控除した分析上の配分で、独立開示はない。国内ITサービス市場7兆5,663億円に対して当分野売上は約0.19%に相当し、TIS・BIPROGY・DTS等と競争する。AIエージェント代替の型は「人月・工数」。
システム機器販売
企業向けのIT機器や周辺商材を仕入れて販売する。自社開発の席課金サービスではない。
| 数量機器販売案件換算(件/年、分析推定) | 価格1案件あたり販売額(億円、分析推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.06 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 285 | 0.07 | 19 | 0 |
取り方:2026年開示のシステム機器売上17.74億円を使用。機器案件数は開示されないので、平均592万円程度のまとまった機器納入を300件とする暫定推定。受注高16.86億円、受注残16.95億円という会社実績とも同時に監視する。営業利益0.58億円はエンタープライズの公表利益を業務別に割り振るための分析上の仮置きである。主な競合は機器販社とクラウド事業者で、個別機器の市場シェア統計は確認できない。この部分はAI人月代替の直接の型に当たらないが、調達価格と機器需要がリスク。
デジタル開発・データ活用
製造DX、データ基盤、MES/SCADA、AI導入支援などの企画・構築を受託する。
| 数量請求可能なデジタル開発人年(社員・外注換算) | 価格1人年あたり顧客請求額(億円、協力会社作業を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 380 | 0.13 | 50 | 3 |
| 10 年後 中立 | 228 | 0.16 | 37 | 3 |
取り方:2026年開示のデジタルソリューション売上49.92億円、受注53.97億円を用いる。グループ人員・外注費から請求能力380人年、年平均13.14百万円と推定。サービス全体の営業利益5.33億円のうち2.50億円をこの分野へ分析上配分し、残りをクラウドに帰属させた。AIエージェント代替の型は受託・コンサル・工数。
クラウド基盤構築・運用
クラウド導入、インフラ構築、データセンター運用・保守および継続的な監視サービス。
| 数量運用・基盤構築の請求相当人年(自動化対象工数換算) | 価格1人年あたりサービス売上(億円、機材・利用料を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 0.15 | 102 | 3 |
| 10 年後 中立 | 511 | 0.19 | 98 | 6 |
取り方:2026年開示のクラウド・インフラサービス売上102.25億円、受注99.19億円、受注残55.32億円を使う。顧客契約数・席数は未公表なので、インフラ・運用の規模を700人年相当に変換し、平均14.61百万円/人年とする。機器・利用料を含む売上換算で純粋な人月単価ではない。サービス全体の営業利益5.33億円からデジタル分2.50億円を引いた2.83億円は分析上の配分である。運用・BPOを含むためAIエージェント代替の人月型に分類し、記録の正本型の低解約率などの証拠は確認できない。
車載・産業機器組込み開発
車載、産業機器、通信設備、宇宙・防衛向けのアプリケーション、ミドルウエア、ドライバを設計・検証する。
| 数量請求可能な組込み設計人年(社員・外注換算) | 価格1人年あたり顧客請求額(億円、検証・試験を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 0.14 | 113 | 16 |
| 10 年後 中立 | 576 | 0.19 | 109 | 15 |
取り方:2026年の組込みセグメント売上112.50億円、営業利益16.09億円、受注115.93億円を使用。グループ技術者と外注費から800人年相当の設計・実機検証量を試算し、単価14.06百万円。車載・機器メーカーの自社開発とシステナ等の専門会社が競合し、統一した国内受託市場シェアは未開示。実機の試験は残るが、ソフト設計の請求時間はAIで縮むため人月型に分類。
LSI・半導体デバイス設計
LSIの高位・論理設計、検証、論理合成、レイアウト、ボード試作・製造テストを受託する。
| 数量請求可能なLSI設計・検証人年(協力会社換算) | 価格1人年あたり設計・検証売上(億円、試作等を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 0.15 | 96 | 14 |
| 10 年後 中立 | 481 | 0.20 | 94 | 15 |
取り方:2026年のデバイスセグメント売上96.12億円、営業利益14.47億円、受注97.69億円を用いる。高位設計・レイアウト等を合計して650人年相当、単価14.79百万円と試算した。台湾等海外の協力会社・設計企業との競争に晒され、半導体完成品の販売枚数や特定市場シェアは会社から開示されない。試作の物的側面はあるが現在の中心は設計受託であり、AIエージェント代替の工数型とした。
リスクと懸念
AIエージェント代替
SI、BPO、運用監視、組込みソフト、LSI設計のいずれも請求できる人月・工数に依存する。AIがコード作成から試験・監視までつなぐと、市場のIT投資が増えても外注される工数は減る。デバイスや実機の確認は残るが、専門知識があることだけでは工数単価を守れない。
不採算案件と原価の硬直性
2026年3月期はサービスの利益率が3.5%まで低下した。開発遅延、仕様変更、再検査に伴う採算悪化は契約金額だけでは吸収しきれない。労務費と外注費の合計が大きく、需要縮小時に固定人員と販管費をすぐ減らせない場合、減収以上に営業利益が落ちる。
半導体設計の顧客集中と自動化
高利益率のデバイスソリューションはLSIの論理設計、レイアウト、検証に需要があることが前提だ。主要顧客が設計を内製化したり、EDAソフトにAIが統合されたりすると、同じ性能をより少ない外注時間で達成できる。完成品の独占的販売権を持つ半導体メーカーと同列には評価できない。
大株主支配と余剰現金の使途
2026年8月の株式移動により、多田・コーポレーションの議決権比率は約47.2%となる。安定保有は経営の継続性を支える一方、少数株主が資本配分に介入する力は限定される。余剰現金を低採算の投資や買収に費やせば、帳簿上の純現金が株主の価値として戻らない。
運用基盤のクラウド・ベンダー依存
クラウドの導入・保守には継続性があるが、主役のクラウド企業が自動化機能や管理サービスを標準搭載すると、外部の運用受託に払う費用が減る。NSW独自の共有インフラや長期解約率の数値が乏しい以上、運用契約の更新を強い堀と判断することはできない。
キャッシュ創出と利益の乖離
2026年3月期は営業利益の減少に加え、人材・研究・ブランド投資の負担が増している。売掛金と契約資産の回収、ソフトウェア投資、設備更新に現金が必要なら、純利益を半分留保しても余剰現金は予想ほど増えない。10年の価値は残余現金の額に敏感なため、キャッシュフローの質を確かめたい。
今後の分かれ目
- 企業向け・サービス向けの受注が2期連続で減少し、技術者の稼働人年も減った場合
- 人月型の市場シェア低下が想定より早いと判断し、やや悲観の確率を引き上げる。金額だけでなく受注残と案件単価の変化を確認する。
- 半導体設計の利益率が15%前後で安定し、顧客との継続案件数も増えた場合
- デバイスの数量減少幅を小さく見直す。ただしAI設計ツールを用いた売上が定量開示されない限り、楽観の人月数量を現在より増やすことはしない。
- 2028年3月期の営業利益率12%とROE10%以上を実績で達成した場合
- 高付加価値化と不採算案件の抑制が定着したかを調べ、将来の営業利益率を上方修正する。売上計画の達成だけではAIによる工数縮小の懸念は消えない。
- 配当性向50%近辺が続き、余剰現金の圧縮につながる自社株買いも始めた場合
- 現金の少数株主への帰属をさらに確かに評価できる。ただし自社株買いの価格と投資機会を比較し、単なるROEの見かけの改善は加点しない。
- 大型買収や海外展開で手元資金を大きく使い、買収後のROICが資本コストを下回った場合
- 余剰現金の回収価値を引き下げ、現金積み上げの筋書きを見直す。買収の規模より買った利益の持続性を重視する。
- 請負契約が工数課金から成果・品質・運用成果に基づく課金へ移り、その売上額が開示された場合
- 当該事業だけAI代替の数量前提と10年後以降の成長率を再検討する。契約の看板だけでなく回収額と継続率を確認する。
見ておくもの
- 4セグメント別の受注高・受注残高と受注粗利率、特にエンタープライズとサービスの不採算案件数
- 外注費と労務費を合わせた売上比率、協力会社人月の削減率と実際の契約単価
- 半導体設計受託の売上・営業利益率、設計ツール自動化による顧客内製化の兆候
- AIを使った成果報酬型業務の開示売上・解約率・継続契約期間
- 配当性向50%方針の実行、現金預金残高、2028年計画のROEと営業利益率
- 多田・コーポレーションの議決権比率と関連当事者取引、自己株取得やM&Aの投資採算
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額404.5億円と過去・同業のPERは、数量、単価、利益率、倍率を確定するまで一切の根拠に使っていない。2026年3月期の四つの報告セグメントを、会社が公表した機器販売・デジタル開発・クラウドの内訳で分け、各サービスの数量は連結社員数と外注費を用いた請求可能な人年に変換した。景気より構造変化としてAIによる工数減を10年間の数量に入れ、長期の名目成長率を0%にする一方、資本コストの寿命調整で二重に引かなかった。
中立以上の事業PERは過去の売買倍率ではなく、資本コスト6.75%、長期成長0%を用いるオーナー利益の式に従い14.81倍とした。余剰現金は税後利息を利益から除き、10年の残高に一度だけ足した。さらに配当・買戻しは10年間の累計を期間中央で割り引く。悲観は現金195.5億円、投資有価証券20億円の税後概算、土地34.93億円の換金割引から得た約234億円を床とし、売掛金や無形資産を重複加算していない。2028年3月期からの新リース基準の表示替えは価値を増やす要因としていない。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。10年国債3%と株式リスクプレミアム4.5%に、事業の循環と純現金を反映した品質調整マイナス0.75ポイントを加えた。