結論
アルフレッサHDは、売上3.1兆円の国内2位の医薬品卸である。病院や薬局へ薬を毎日届ける仕事で、営業利益率は1.2%しかない。筆者の結論は、今の値段はやや割高、というものだ。稼ぐ力は伸びないが、事業は堅く、厚い現金が下値を支えている。
売上の9割は医療用医薬品の卸が占める。国内の医療用医薬品の4分の1ほどを運ぶ計算だ。残りはドラッグストア向けの市販薬・日用品の卸、薬の製造、調剤薬局である。
弱点は利幅の薄さだ。薬の値段は国が決め、毎年のように下がる。人件費と物流費は物価と一緒に上がる。2027年3月期は営業利益が6%減る予想で、4〜6月はすでに2割近く減った。中期計画の営業利益435億円の目標は、遠い。
一方で、財布は厚い。手元の現金は借入を引いても1,600億円ほどあり、時価総額の4割にあたる。会社は配当を増やし、2026年5月には150億円の自社株買いもした。筆者は、この現金の使い方が株主の取り分を決めると見る。
資本コストは堅い事業らしく7.0%(基本7.5%から安定した需要で0.5%下げ)に置く。純利益の15倍前後に、余った現金を足したものが、筆者の考える本質価値だ。今の値段は、それを1割弱下回る程度だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くないが、利益に比べて資産が厚い」事業だ。10年後も薬は届け続けるので、事業は残る。だが利益の源泉は薄利の配送業で、堀は規模の壁にとどまる。オーナーが自由に使える利益は、物流センターへの投資を引いた後で、純利益の6〜7割と筆者は見る。
資本の使い方は、評価が割れる。配当と自社株買いを増やす方向は好ましい。だが、自己資本の3分の1を、現金と投資株の形で抱えてきた姿は、低い利回りで株主の資金を寝かせてきたことでもある。これからの数年で、その現金がどう動くかを、筆者は最も重く見る。
安全域は、厚くはない。事業だけを純利益の15倍で測り、余った現金を足すと、今の値段は1割弱下回る程度だ。薬価と費用の綱引きで利益が動く事業だが、下振れは限られる。上振れの余地ははっきりしない。割安と言い切れるほどの安さではない。
何で稼ぐ会社か
アルフレッサは、薬を届ける仕事を軸に四つの事業を持つ持株会社だ。最大は医療用医薬品の卸で、売上3.1兆円のうち2.8兆円を占める。製薬会社から仕入れ、全国の病院・診療所・薬局へ小口で何度でも配る。薬の値段は国が決める薬価で、卸の取り分は薬価と仕入値のわずかな差と、物流の効率で決まる。営業利益率は1.2%だ。
二つ目は、ドラッグストア向けの市販薬・日用品の卸で、売上は約2,700億円。国内最大手のPALTACと比べれば小さく、規模の力はまだ弱い。営業利益率は1.1%と、医療用と変わらない。
三つ目は薬の製造で、売上は約370億円。利益率は3%台と高い。群馬に新しい製剤棟を建て、2027年4月に動かす。他社から製造を請け負う仕事で、すでに30件を超える注文が入ったという。国内でバイオ後続品をつくる合弁の話も進む。
四つ目は調剤薬局で、売上は約370億円。このほか、再生医療などの新事業は先行費用で赤字が続く。会社は、物流の高度化、温度管理が必要な薬の輸送、病院向けのデジタル事業を成長の柱に置く。ただ、利益への貢献はまだ小さい。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、全国に張った物流網と、欠品を出さない信頼である。薬は切らせない商品なので、確実に届くこと自体が価値になる。新規参入は難しく、大手4社が市場の大半を握る。ただし、これは堀というより参入の壁にすぎない。値段は国と製薬会社が決め、卸が値上げで利益を守る力は弱い。
利幅の薄さが最大の弱点だ。人件費と物流費は物価と一緒に上がるが、薬価は毎年下がる。2026年3月期は、大手4社がそろって営業利益を減らした。アルフレッサは医療用卸の利益を増やした会社だが、全体では減益だった。
資本効率は平凡だ。純利益は一過性の益が入った年を除くと250億円前後で、自己資本の5%ほどにとどまる。資本コストにも届かない水準だ。前の中期計画は利益目標に届かなかった。経営は手堅く、大きな買収の失敗は筆者の調べた範囲では見当たらない。それでも、稼ぐ力の割に自己資本を厚く抱えてきた事実は、評価を下げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医薬品卸は、数量が伸び、値段が下がる市場だ。国内の医療用医薬品は薬価ベースで約11.5兆円(2024年度、調査会社IQVIA)。高齢化で処方の数量は増え、高額な専門薬とワクチンが売上を押し上げる。だが薬価は毎年のように改定され、卸の売上は数量の伸びほどには増えない。2026年度の改定では、薬剤費ベースで約4%の引き下げが入った。
競争は4社の寡占である。2026年3月期の売上は、メディパルが3.8兆円、アルフレッサが3.1兆円、スズケンが2.5兆円、東邦HDが1.6兆円。4社合計の営業利益は前期比5%減の約1,420億円だった。アルフレッサの医療用卸は、市場の約24%を運ぶ。会社は、専門領域の薬をかかりつけ医にも広げる戦略で、市場を上回って伸びたと説明している。
価格の力は卸にない。流通改善ガイドラインの改訂で、単品ごとの価格交渉や、物流の経費の価格への反映が進められている。成果が出れば粗利は守られる。出なければ、費用高が利益を食う。
2040年前後には高齢者人口が減り始める。数量の伸びは止まり、薬価の引き下げだけが残る。製薬会社の直接配送や、オンライン服薬指導が広がれば、卸の機能そのものが細る恐れもある。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから還元へ動いている。会社は配当を毎年増やす累進配当を掲げ、目安は自己資本配当率2.5%以上だ。2027年3月期の年間配当は増配の予想で、2026年5月には150億円の自社株買いも行った。純資産の1割を超えていた政策保有株は、1割未満へ減らす。
中期計画は、成長領域に700億円を投じ、事業の資金と売却の収入で、投資と還元に3年で1,200億円を充てる。ただ、2027年度から利益が大きく伸びる筋書きには、裏付けが乏しい。
買収は、小粒な積み上げが続く。メディカル品の卸では専業の卸を統合し、診断薬の卸も取得した。2026年7月には、米国の温度管理の輸送箱メーカーと資本業務提携を結んだ。大型の買収で価値を壊した過去は、見当たらない。
再編の芽は、4社寡占の中にある。ただ、独占禁止の目もあり、大手どうしの統合は現実的ではない。会社の意思で決まるのは、手元の現金をいつ、どれだけ株主に返すかだ。
10年の還元は、累進配当(株主資本配当率2.5%以上)と自社株買いを足した、純利益の合計とほぼ同じ水準。余った現金650億円は還元に使わない前提で別に数え、二重ではない。中計の3年1,200億円は利益を超えるが、10年でならして置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金が動けば、様相が変わる。2026年3月末の純現金は約1,600億円で、時価総額の4割にあたる。その後の自社株買いを引いても、事業に必要な分を超える現金が厚い。政策保有株も純資産の1割未満まで減らす計画で、売却の資金が加わる。配当と自社株買いが増えれば、自己資本利益率は上がり、倍率も上がる。
本業にも伸びしろがある。医療用卸は、専門領域の薬をかかりつけ医にも広げる戦略で、市場を上回って伸びた。業界1位を競うほどの規模があり、物流センターも新設した。流通改善ガイドラインが効けば、単品ごとの価格交渉が進み、粗利が守られる。
製造事業も、利益の質を変えうる。群馬の新しい製剤棟は2027年4月に動き、請負の注文はすでに30件を超えた。国内のバイオ後続品の製造は国の補助金に採択された。薬価に縛られない収益が、営業利益率3%台の事業を広げる。
4社寡占は崩れない。守りの事業なのに、今の値段は純資産の1倍を割る。還元の増加が確かになれば、この割安は埋まる。
慎重な見方
利幅が構造的に細る。医療用卸の営業利益率は1.2%で、人件費と物流費は物価と同じ速さで上がる。薬価は毎年下がり、卸の売上は伸びない。費用を価格に載せる力はなく、2027年3月期は営業利益が6%減る予想だ。4〜6月は2割近く減り、通期予想は据え置かれただけだった。
中期計画の目標は遠い。営業利益435億円は、今の水準から2割高い。前の計画も未達に終わった。成長領域に700億円を投じても、利益に結びつくのは先の話で、投資の利回りは見えない。再生医療などの新事業は、赤字が続く。
現金の期待は、すでに値段に入っている。現金を返しても稼ぐ力は上がらず、倍率は上がらない。しかも、自己資本利益率は資本コストに届かない。事業に必要な運転資金と、薬価と費用の綱引きに備える現金を差し引けば、余る分は見かけより小さい。
10年先を見れば、高齢者人口の減少、メーカーの直接配送、オンライン服薬指導が重なる。卸は、数量と取り分の両方を失いうる。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力の弱さを突く慎重な指摘が、やや強い。ただ、厚い現金と、還元へ向かう流れは確かな下支えだ。そのため本質価値は今の値段を1割ほど下回ると見るが、下値は厚い現金が支える。確率は中立に4割を置き、悲観寄りを少し厚くした。10年の悲観は、薬価と中抜きの両方で構造的に負ける姿として、12%を置いた。資本コストを堅い事業らしく7.0%とした結果、本質価値は今の値段を1割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,559 円4,501 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,458 円2,564 億円)。 今の値に割り戻すと 2,298 円4,042 億円、今との差 −3.1%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,991 円7,021 億円 | 1,819 円3,200 億円 | +145.0% | +9.4% | 465 円818 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,281 円5,770 億円 | 1,649 円2,900 億円 | +107.8% | +7.6% | 887 円1,561 億円 |
| 中立 | 36% | 2,892 円5,086 億円 | 1,535 円2,700 億円 | +86.6% | +6.4% | 1,594 円2,803 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,837 円3,232 億円 | 1,308 円2,300 億円 | +32.6% | +2.9% | 818 円1,438 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,089 円1,916 億円 | 1,023 円1,800 億円 | −10.9% | −1.2% | 254 円446 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,559 円4,501 億円 | 1,458 円2,564 億円 | +69.3% | +5.4% | 4,017 円7,065 億円 |
今の株価時価総額 2,372 円4,172 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 高付加価値と製造の拡大で、稼ぐ力が戻る 利益 384 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 3,991 円7,021 億円
10年のうちに、バイオ医薬品や再生医療等製品など、高額で扱いに手間のかかる薬が増える。卸は温度管理と配送の機能で、薬価差ではなく手数料に近い収益を得る。米国のEmberとの提携で運ぶ技術も磨かれる。医療用の営業利益率は1.25%を保つ。
製造事業は、群馬の新製剤棟とバイオ後続品の国内製造が軌道に乗り、売上が2倍近くに伸びて、営業利益率は5%になる。再生医療などの赤字も縮む。連結の純利益は380億円を超え、10年で3,200億円を株主に返す。余った現金も、この間に使い切られる。
他の大手3社との差は、温度管理と小口配送の網の厚みに表れる。ただ、10年先まで業界全体の利幅が戻る保証はなく、ここまで届く確率は低い。
- 医療用医薬品等の卸:数量 3.2(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.97(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 30,821 億円・営業利益 385 億円。医療用卸:数量 1.15 倍・価格 0.97 倍、営業利益率 1.25%
- セルフメディケーション卸(市販薬・日用品):数量 0.3(ドラッグストア等向け市販薬・日用品の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.34(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 4,287 億円・営業利益 60 億円。OTC・日用品卸:数量 1.20 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 1.40%
- 医薬品等の製造:数量 0.1(製造・受託の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.25(製品・受託料の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 930 億円・営業利益 46 億円。製造:数量 2.00 倍・価格 1.25 倍、営業利益率 5.00%
- 調剤薬局等:数量 0.0(処方箋の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.34(調剤報酬の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 524 億円・営業利益 8 億円。調剤薬局等:数量 1.05 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 1.50%
倍率:事業の純利益 375 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)650 億円。全体の PER 15.23 倍、時価総額 6,360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:薬価の下がりを高付加価値の取扱いと製造の拡大で補い、新事業も黒字になる、すべてがうまくいく姿。確率は1割に届かない。
やや楽観 18% 専門薬と製造が伸び、医療用は守る 利益 328 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 3,281 円5,770 億円
医療用卸は、数量が高額薬で1割強増え、営業利益率は1.15%で落ち着く。市販薬・日用品の卸はドラッグストアの成長に乗り、数量が15%増えて、値段は物価並みに上がる。
製造事業は受託の拡大で売上が1.7倍になり、営業利益率は4%台に上がる。連結の純利益は約330億円。還元は10年で2,900億円と、純利益の9割近くを返す。自己資本利益率は7%台に上がる。ただ利益の中心は、10年たっても医療用卸だ。
物流センターの新設と自動化で、費用の上昇は一部吸収できる。会社の中期計画の目標は10年の途中で達する形になる。
- 医療用医薬品等の卸:数量 3.1(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.95(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 29,399 億円・営業利益 338 億円。医療用卸:数量 1.12 倍・価格 0.95 倍、営業利益率 1.15%
- セルフメディケーション卸(市販薬・日用品):数量 0.3(ドラッグストア等向け市販薬・日用品の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.34(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 4,108 億円・営業利益 51 億円。OTC・日用品卸:数量 1.15 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 1.25%
- 医薬品等の製造:数量 0.1(製造・受託の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.22(製品・受託料の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 771 億円・営業利益 32 億円。製造:数量 1.70 倍・価格 1.22 倍、営業利益率 4.20%
- 調剤薬局等:数量 0.0(処方箋の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.34(調剤報酬の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 498 億円・営業利益 6 億円。調剤薬局等:数量 1.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 1.30%
倍率:事業の純利益 319 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)650 億円。全体の PER 13.91 倍、時価総額 5,086 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:製造の成長が続き、医療用卸が利幅を保つ姿。確率は2割弱。
中立 36% 売上は緩やかに増え、利幅は少し細る 利益 281 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,892 円5,086 億円
医療用卸は、高齢者人口がピークに近づくなかで、数量が10年で1割ほど増える。薬価は累積で7%ほど下がり、売上は2.8兆円台でほぼ横ばいとなる。費用は物価で3割以上増え、営業利益率は1.05%まで下がる。
市販薬・日用品の卸は数量が1割増え、値段は物価並みに1.34倍となり、売上は3,900億円になる。製造は受託の拡大で売上が1.8倍になる。連結の営業利益は約360億円、純利益は約280億円。還元は10年で約2,700億円で、純利益の合計とほぼ同じ。余った現金650億円は還元に使わず、別に数える。自己資本利益率は6%強と、資本コストをわずかに上回る水準に落ち着く。
- 医療用医薬品等の卸:数量 3.0(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.93(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 28,265 億円・営業利益 297 億円。医療用卸:数量 1.10 倍・価格 0.93 倍、営業利益率 1.05%
- セルフメディケーション卸(市販薬・日用品):数量 0.3(ドラッグストア等向け市販薬・日用品の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.34(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 3,930 億円・営業利益 43 億円。OTC・日用品卸:数量 1.10 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 1.10%
- 医薬品等の製造:数量 0.1(製造・受託の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.20(製品・受託料の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 670 億円・営業利益 23 億円。製造:数量 1.50 倍・価格 1.20 倍、営業利益率 3.50%
- 調剤薬局等:数量 0.0(処方箋の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.34(調剤報酬の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 498 億円・営業利益 6 億円。調剤薬局等:数量 1.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 1.20%
倍率:事業の純利益 272 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)650 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 4,400 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は高齢化で緩やかに増え、薬価は毎年下がる。費用は物価で上がる。利幅は少し細る。最も確からしい姿として約4割を置いた。
やや悲観 26% 薬価の累積と費用高で、利益が目減りする 利益 194 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 1,837 円3,232 億円
薬価の引き下げが毎年続き、累積で1割以上になる。物流は人手不足で費用が膨らむ。医療用卸の営業利益率は0.8%まで下がり、営業利益は200億円を割る。
市販薬・日用品の卸も、ドラッグストア大手の価格交渉力が強まり、利益率が1%を割る。連結の純利益は約190億円。還元は10年で2,300億円。成長が止まり、自己資本利益率が4%台に落ちた会社として、倍率は低く見られる。現金を抱えたまま稼ぎが伸びない姿でもある。
高齢者人口は頭打ちとなり、数量の伸びは小さくなる。成長領域への投資の回収も遅れ、新事業の赤字は長く残る。
- 医療用医薬品等の卸:数量 2.9(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.90(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 26,110 億円・営業利益 209 億円。医療用卸:数量 1.05 倍・価格 0.90 倍、営業利益率 0.80%
- セルフメディケーション卸(市販薬・日用品):数量 0.3(ドラッグストア等向け市販薬・日用品の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.30(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 3,570 億円・営業利益 34 億円。OTC・日用品卸:数量 1.03 倍・価格 1.30 倍、営業利益率 0.95%
- 医薬品等の製造:数量 0.0(製造・受託の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.10(製品・受託料の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 491 億円・営業利益 10 億円。製造:数量 1.20 倍・価格 1.10 倍、営業利益率 2.00%
- 調剤薬局等:数量 0.0(処方箋の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.30(調剤報酬の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 459 億円・営業利益 4 億円。調剤薬局等:数量 0.95 倍・価格 1.30 倍、営業利益率 0.80%
倍率:事業の純利益187億円・事業 ROE 4.1% は k 7.25% 以下なので、上限は 1÷k=14.3倍。成長せず投じた資本の稼ぎも低い会社として、1÷kの7.5割に置いた。上限の約8割の10.7倍に置いた。
確率:毎年の薬価引き下げと費用の上昇は、いまの決算が示す方向で、起きやすい。慎重な見方の方が強いと見て、2割台半ばを置いた。
悲観 12% 中抜きと人口減で、卸の機能が縮む 利益 99 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 1,089 円1,916 億円
製薬会社が一部の薬を直接配送し、オンライン服薬指導も広がる。卸の取扱量は減り、薬価は10年で15%下がる。医療用卸の営業利益率は0.5%まで落ち、営業利益は140億円を割る。
市販薬・日用品の卸も、取引先の内製化で数量が減る。連結の純利益は約100億円と6割落ち、もう優良企業とは呼べない。還元は10年で1,800億円に抑えられる。高齢者人口の減少も重なり、数量と取り分の両方が下がる。会社は縮小均衡に入り、規模の優位が価格に結びつかなくなる。
余った現金は、事業の縮小と還元の続行で目減りし、この間の還元は現金や保有株の売却で賄う。もう守りの優良株ではなくなる。
- 医療用医薬品等の卸:数量 2.6(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.85(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 22,311 億円・営業利益 112 億円。医療用卸:数量 0.95 倍・価格 0.85 倍、営業利益率 0.50%
- セルフメディケーション卸(市販薬・日用品):数量 0.3(ドラッグストア等向け市販薬・日用品の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.20(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 3,040 億円・営業利益 21 億円。OTC・日用品卸:数量 0.95 倍・価格 1.20 倍、営業利益率 0.70%
- 医薬品等の製造:数量 0.0(製造・受託の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.00(製品・受託料の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 372 億円・営業利益 0 億円。製造:数量 1.00 倍・価格 1.00 倍、営業利益率 0.00%
- 調剤薬局等:数量 0.0(処方箋の取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.20(調剤報酬の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 402 億円・営業利益 1 億円。調剤薬局等:数量 0.90 倍・価格 1.20 倍、営業利益率 0.30%
倍率:事業の純利益94億円・事業 ROE 2.0% は k 7.25% 以下なので、上限は 1÷k=14.3倍。構造的に負けた筋書き。ROEが資本コストを大きく下回り利益も薄いので、1÷kの6割に置いた。厚い純現金は余った現金として別に足している。上限の約6割の8.6倍に置いた。
確率:10年の悲観は、薬価の下がりに加え、メーカーの直接配送や人口減など、構造的に負ける姿。10年は何が起きても不思議ではないため、12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医療用医薬品等の卸
製薬会社から薬を仕入れ、全国の病院・診療所・薬局へ配送する中核事業。
| 数量国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア | 価格薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.8 | 1.00 | 27,631 | 333 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 0.93 | 28,265 | 297 |
取り方:市場規模は調査会社 IQVIA の 2024 年度の薬価ベース約 11.5 兆円(実質は今の薬価のまま)。医療用卸の外部売上 2.763 兆円を市場で割ると、シェアは約 24%。数量はこの 2.763 兆円分の取扱量、価格は薬価と売値の水準の指数で今を 1 とした。1 兆円 = 10,000 億円で換算する。診断薬・医療機器の卸もここに含まれる。
セルフメディケーション卸(市販薬・日用品)
ドラッグストアなどへ市販薬・化粧品・日用品を届ける卸。
| 数量ドラッグストア等向け市販薬・日用品の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア | 価格商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 1.00 | 2,666 | 30 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 1.34 | 3,930 | 43 |
取り方:ドラッグストアの 2025 年度の売上は 10.6 兆円(JACDS)。調剤を除く物販を卸値に直し、他の小売向けも含めて、卸経由の市場を約 7 兆円と推定した(同業メディパルの分析と同じ推計で、筆者の見積もり)。売上 2,666 億円は約 3.8% にあたる。数量は 7 兆円 × 3.8% = 0.2666 兆円分、価格は卸値の指数。
医薬品等の製造
ジェネリックや受託の製造。群馬に新製剤棟を建て、2027 年 4 月に稼働予定。
| 数量製造・受託の取扱量(今の値段で測った兆円) | 価格製品・受託料の水準を今を 1 とした指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.00 | 372 | 12 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 1.20 | 670 | 23 |
取り方:開示に市場規模とシェアが無いので、取扱量は今の外部売上 372 億円分(0.0372 兆円)を基準にした推計とする。新しい製剤棟で受託が増える分は数量に、受託料の上がりは価格に入れる。
調剤薬局等
調剤薬局の運営。再生医療などの新事業は赤字なので、全社の調整側に入れる。
| 数量処方箋の取扱量(今の値段で測った兆円) | 価格調剤報酬の水準を今を 1 とした指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.00 | 372 | 5 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1.34 | 498 | 6 |
取り方:小さな事業で、開示に市場規模が無い。取扱量は今の外部売上 372 億円分(0.0372 兆円)を基準にした推計。数量は人口と同じ緩やかな動き、価格は診療報酬の改定を含め物価よりやや低めに置く。
リスクと懸念
薬価の引き下げと流通改善の不発
薬価は毎年のように改定され、卸の売上は数量の伸びほど増えない。流通改善ガイドラインで単品ごとの価格交渉や必要経費の反映が進まなければ、卸の粗利は細る。医療用卸の営業利益率が1.2%から0.9%に落ちれば、その利益は4分の1減る。
人件費と物流費の高騰
物流は人手不足で、運転手と倉庫の人件費が物価以上に上がっている。2026年3月期は大手4社がそろって営業利益を減らし、アルフレッサも2027年3月期は減益予想だ。自動化と物流の共同化で追いつけるかが問われる。
成長領域への投資が利益に結びつかない
中期計画は成長領域に700億円を投じ、2028年3月期の営業利益を435億円へ引き上げる目標だ。今の水準より2割高い。前の計画も利益目標に届かなかった。再生医療などの新事業は先行費用で赤字が続く。投資の回収が遅れれば、資本効率はさらに下がる。
現金の使い道が定まらない
純現金は時価総額の4割に及ぶ。還元は増えているが、使い道が定まらなければ、現金は低い利回りのまま残る。逆に、運転資金に必要な分まで返せば、決済の余裕を失う。事業に必要な現金の大きさは、外から見えにくい。
大手のシェア争いと再編
医療用卸は4社寡占で、各社が値引きでシェアを取りに行けば、利幅はさらに薄くなる。取引先の病院・薬局チェーンの大型化で、価格交渉の力が買い手に寄る恐れもある。新しい大型物件の取り合いで、利益を削る値引きに走る場面も出る。
高齢化の天井と中抜き
高齢者人口は2040年前後に減り始め、処方の数量の伸びは止まる。製薬会社の直接配送や、オンライン服薬指導の普及で、卸の機能が薄まる可能性もある。10年を超える長期では、数量と取り分の両方が下がる恐れがある。
今後の分かれ目
- 流通改善ガイドラインが効いて、単品ごとの価格交渉が定着した
- 医療用卸の粗利が守られ、営業利益率は1%台前半で安定する。楽観とやや楽観の確率を上げ、倍率も上限に近づける。
- 薬価の中間年改定が毎年の本格改定になり、深さも増した
- 卸の売上と粗利が同時に削られる。やや悲観と悲観の確率を厚くし、医療用の利益率を0.8%前後で見る。
- 次の中期計画(2028年度から)で、現金を使った大型の自社株買いや特別配当が打ち出された
- 自己資本が圧縮され、自己資本利益率が上がる。還元の合計を上方に直す。ただし稼ぐ力は変わらないので、倍率は据え置く。
- 群馬の製剤棟が計画どおり動き、受託の注文が積み上がった
- 製造事業の営業利益が計画を上回る。製造の数量を上方に直し、やや楽観の確率を上げる。
- 新事業(再生医療、ヘルステック)の赤字が縮まらず、投資の回収が遅れた
- 全社の営業利益が計画に届かず、中立より悲観寄りの筋書きに確率を移す。
- 大手4社の間で値引きによるシェア争いが強まった
- 医療用卸の営業利益率が0.8%を割る恐れがある。やや悲観と悲観の確率を厚くする。
見ておくもの
- 2027年3月期の営業利益(予想339億円)と、薬価改定・流通改善ガイドラインの運用
- 医療用卸の営業利益率(1.2%)と、同業大手3社の利益率の動き
- 次の中期計画(2028年度から)の営業利益・自己資本利益率・還元の目標
- 配当(累進配当)と自社株買いの額、政策保有株の残高
- 群馬の製剤棟の稼働(2027年4月)と受託の受注件数
- 再生医療などの新事業の損益と、ヘルステック事業の会員・採用施設数
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益の質と資本効率から決め、今の株価では測っていない。資本コストは7.25%(基本7.5%、quality 合計 -0.5%)。事業のROEは6%弱でこれに届かず、成長しても価値は増えない。そのため倍率の上限は1÷kの約14倍で、中立はその85%に置いた。余った現金は事業の備えを引いた残りだけを、戻り方込みで足した。悲観は事業の稼ぐ力から出し、谷のPBRは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.3→15.23 倍・やや楽観 PER 12.9→13.91 倍・中立 PER 12.1→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.00% → 7.25%。