結論
メディパルHDは、売上3.8兆円の国内最大の医薬品卸である。病院や薬局へ薬を届ける仕事で、営業利益率は1.4%しかない。筆者の結論は、今の値段は本質価値とほぼ並ぶ「適正」、というものだ。資本コストは堅い事業らしく7.0%(基本7.5%から安定した需要で0.5%下げ)に置く。事業は堅い。ただ、稼ぐ力がこれから大きく伸びる見通しは立てにくい。
稼ぎの柱は三つある。医療用医薬品の卸が売上の3分の2、子会社PALTACの化粧品・日用品・市販薬の卸が3分の1、動物薬などが残りだ。営業利益の半分はPALTACが出す。この会社を読む鍵はここにある。
2026年7月、そのPALTACへの公開買付けが成立し、持ち分は9割を超えた。買付額は約1,630億円。厚かった手元の現金が、事業の買い増しに回った形だ。ほぼ同時に、英国の運用会社シルチェスターが、社長の解任と特別配当・自社株買いを求めて臨時株主総会の開催を請求した。資本の使い方を、株主が正面から問い直している。
それでも本質価値は大きくは動かない。薬価は毎年下がり、人件費と物流費は物価と一緒に上がる。利幅は薄くなる側に傾く。PALTACの取り込みと株主還元の増加が、その分を補う。筆者は、純利益の17〜18倍前後が妥当な水準と見る。今の値段はその水準をやや下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くないが、買い手が払える値段は限られる」事業だ。10年後も薬は届け続けるので、事業は残る。だが、利益の源泉は薄利の配送業で、堀は規模の壁にとどまる。オーナーが自由に使える利益は、設備投資を引いた後で純利益の6〜7割ほどと筆者は見る。物流センターと自動化に、毎年かなりの投資が要るからだ。
経営の資本の使い方は、評価が割れる。PALTACの買い増しは、出資比率の高い子会社の利益を取り込む合理的な手だ。買い値に対する利回りは5%台半ばと、借入の金利を上回る。だが、それまでの現金のため込みは、株主の資金を低い利回りで寝かせてきた姿でもある。オーナーの目では、現金の使い道をいま株主が決めさせようとしている状況は好ましくない。
安全域は小さい。今の値段は、確率で重みづけた本質価値より1割ほど安い。薬価と費用の綱引きで利益が大きく動く事業ではないので、下振れは限られる。それでも、上振れの余地もはっきりしない。ただ、安さだけで積極的に買う理由にはなりにくい。
何で稼ぐ会社か
メディパルは三つの卸を束ねる持株会社だ。最大は医療用医薬品の卸で、売上3.8兆円のうち約2.5兆円を占める。製薬会社から薬を仕入れ、全国の病院・診療所・薬局へ毎日配る。薬の値段は国が決める薬価で、卸の取り分は薬価と仕入値のわずかな差と、物流の効率で決まる。この事業の営業利益率は1.0%だ。
二つ目が子会社のPALTAC。化粧品・日用品・市販薬をドラッグストアなどへ届ける国内最大手で、売上は約1.2兆円ある。大きな物流センターに投資し、自動化で作業を減らしてきた。営業利益率は2.1%と医療用の2倍で、連結営業利益の半分を稼ぐ。
三つ目は動物用医薬品と食品加工原材料の卸で、売上は約1,200億円。利益率は2%だ。小さいが、人の薬と違って薬価に縛られない。
顧客は病院と薬局が中心になる。ここに診断薬・試薬・医療機器の卸、AIによる需要予測や自動発注のデジタル事業が加わる。会社はこれらを成長の柱に置く。ただ、利益への貢献はまだ小さい。中期計画では、新規事業や医療機器・試薬を「重点事業」と位置づけ、経常利益を1,000億円へ引き上げる目標を掲げた。目標はまだ届いていない。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、規模と物流網である。全国に配送拠点を持ち、1日に何度でも小口で薬を届ける。薬は欠品が許されないので、確実に届くこと自体が価値になる。新規参入は難しく、大手4社が市場の大半を握る。ただし、これは堀というより参入の壁に近い。価格は国と製薬会社が決め、卸が値上げで利益を守る力は弱い。
利幅の薄さが最大の弱点だ。医療用の営業利益率は1.0%、会社全体でも1.4%にとどまる。人件費と物流費は物価と一緒に上がるが、薬価は毎年下がる。費用が先に上がれば、利益はすぐ削られる。2026年3月期も、大手4社がそろって営業利益を減らした。
資本効率も平凡だ。自己資本利益率は10年間、4%台後半から7%台で動き、中期計画の目標9%には届いていない。株主側の試算では、現金と投資株が自己資本の8割を超えていた(2026年3月末)。経営は手堅く、大きな買収の失敗は筆者の調べた範囲では見当たらない。ただ、現金をためる姿勢が株主から強く批判されている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医薬品卸は、数量が伸び、価格が下がる市場だ。国内の医療用医薬品は薬価ベースで約11.5兆円(2024年度、調査会社IQVIA)。高齢化で処方の数量は増え、スペシャリティ医薬品、つまり患者数が少なく高額な薬や、ワクチンが売上を押し上げる。一方で薬価は毎年のように改定され、卸の売上は数量の伸びほどには増えない。2026年度の改定では、薬剤費ベースで約4%の引き下げが入った。
競争は4社の寡占である。2026年3月期の売上は、メディパルが3.8兆円、アルフレッサが3.1兆円、スズケンが2.5兆円、東邦HDが1.6兆円。4社合計は約11兆円で、営業利益は前期比5%減の約1,420億円だった。メディパルの医療用卸は、市場の約2割を握る計算になる。
価格の力は卸にない。流通改善ガイドラインの改訂で、単品ごとの価格交渉や、流通に必要な経費の価格への反映が進められている。成果が出れば粗利は守られる。出なければ、費用高が利益を食う。
PALTACの市場は別の動きをする。ドラッグストアの売上は2025年度に10.6兆円となり、前年から約6%伸びた。店舗は2.4万を超え、食品の販売が最も伸びている。PALTACは日用品と食品の一括配送で、この流れに乗ろうとしている。人口は減るが、売り場の主役が小売の他業態からドラッグストアへ移る力がそれを上回っている。
資本政策と M&A
資本政策は今、大きな転換点にある。会社は総還元性向40%(5年累計)を掲げ、2026年7月には年間配当を大きく引き上げた。予想配当性向は約42%だ。政策保有株は、2027年3月末までに純資産の10%以下・500億円以下へ減らす計画を持つ。
最大の出来事がPALTACの完全子会社化だ。応募は大きく、メディパルの議決権比率は92.64%に達した。TOBの買付額は約1,630億円、残る株主への取得を含めると総額は約1,900億円と筆者は見積もる。資金調達の費用が出ており、借入を使ったとみられる。買収費用も重なり、今期の営業利益は押し下げられた。それでも今期の純利益予想は430億円へ上がった。PALTACの利益が全額、親会社に入るからだ。
もう一つの出来事が、筆頭株主シルチェスターの動きだ。同社は発行済み株式の約12%を持つ。6月の定時株主総会での提案に続き、9月に臨時株主総会の招集を請求し、社長の解任・特別配当・950億円までの自社株買いを求めた。会社は10月13日に総会の基準日を設けた。10月1日付で今川国明氏が社長に就いた。トップ交代は14年ぶりで、2027年度からの新しい中期計画に向けた体制だという。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金の使い道が変わる。これが最大の上振れ要因だ。2026年3月末で、純現金は約2,900億円あった。PALTACの買い増しで使った後でも、まだ約900億円の純現金と、政策保有株がある。株主から特別配当と950億円の自社株買いを求められ、社長も交代した。配当と自社株買いが増えれば、自己資本利益率は上がり、倍率も上がる。
PALTACの完全子会社化は、利益を押し上げる。これまで利益の約半分は外部株主に流れていた。それが全額、メディパルのものになる。PALTACは日用品と食品を一括で運ぶ仕組みを広げており、ドラッグストアが伸びる限り数量は増える。
医療用の卸も、数量はスペシャリティ医薬品とワクチンで伸びている。流通改善ガイドラインが効けば、単品ごとの価格交渉が進み、粗利は守られる。物流の自動化と需要予測で費用を抑えれば、営業利益率は1%を超えて戻る。
4社寡占は崩れない。参入者はおらず、中小の卸の統合は終わった。守りの事業なのに、今の値段は純資産の1倍を割る水準にある。株主還元の増加が確かになれば、この割安は埋まる。
慎重な見方
利幅が構造的に細る。医療用卸の営業利益率は1.0%で、人件費と物流費は物価と同じ速さで上がる。薬価は毎年下がり、卸の売上は伸びない。費用を価格に転嫁する力はなく、2026年3月期は大手4社そろって減益だった。今期も営業利益率はさらに下がる見通しだ。
PALTACの買い増しは、利益を増やす一方で、PALTACという一本足への依存を強める。ドラッグストア大手が自社で物流を持てば、PALTACの取り分は減る。利益の半分を握る事業が、少数の大口顧客に左右される構造は変わらない。
株主還元への期待は、すでに値段に入っている。特別配当や自社株買いは、会社の稼ぐ力を高めない。現金を株主に返しても、倍率はそのまま上がらない。しかも臨時株主総会をめぐる混乱は、経営の不確実性を高める。新社長の下で新しい中期計画が出るまで、戦略の方向は見えない。
さらに10年先を見れば、2040年前後に高齢者人口が減り始める。数量の伸びは止まり、毎年の薬価引き下げだけが残る。オンライン服薬指導やメーカーの直接配送が広がれば、卸の機能そのものが縮む。今の値段は、利幅の細りを織り込んでいない。
どちらに重みを置いたか
利幅の細りと資本効率の低さという慎重な指摘が、やや強い。現金の使い方が変わる点は確かな上振れ要因だが、それは倍率を押し上げるより、株主に返る金額を増やす効果が大きい。本業の稼ぐ力が伸びなければ、倍率は上がらない。そのため確率は中立に4割弱を置き、悲観寄りに少し厚く寄せた。10年の悲観は、薬価と中抜きの両方で構造的に負ける姿として、12%を置いた。資本コストを堅い事業らしく7.0%に置いた結果、本質価値は今の値段を1割弱下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,253 円8,706 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,561 円3,196 億円)。 今の値に割り戻すと 3,339 円6,836 億円、今との差 +5.3%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 6.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,843 円1.40 兆円 | 2,052 円4,200 億円 | +180.6% | +10.9% | 712 円1,457 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,561 円1.14 兆円 | 1,856 円3,800 億円 | +134.0% | +8.9% | 1,483 円3,037 億円 |
| 中立 | 36% | 4,676 円9,572 億円 | 1,612 円3,300 億円 | +98.4% | +7.1% | 2,264 円4,634 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,892 円5,921 億円 | 1,319 円2,700 億円 | +32.9% | +2.9% | 1,011 円2,069 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,797 円3,679 億円 | 1,075 円2,200 億円 | −9.4% | −1.0% | 345 円705 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,253 円8,706 億円 | 1,561 円3,196 億円 | +83.4% | +6.3% | 5,814 円1.19 兆円 |
今の株価時価総額 3,170 円6,489 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 還元と高付加価値で、稼ぐ力が戻る 利益 702 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 6,843 円1.40 兆円
10年のうちに、バイオ医薬品や再生医療等製品など、高額で扱いに手間のかかる薬の取扱いが広がる。卸は温度管理と配送の機能で、薬価差ではなく手数料に近い収益を得る。医療用の営業利益率は1.05%へ戻り、数量も高額薬で伸びる。
PALTACはドラッグストアの成長と食品の一括配送で、売上が物価を超えて伸び、営業利益率は2.5%に上がる。新社長のもとで、物流投資の利回りと株主還元の方針が明確になり、10年で約4,200億円を株主に返す。連結の純利益は700億円に届き、倍率も上がる。医療用の高付加価値化が進むと、配送は単なる運搬ではなく、温度管理や在宅配送までを含む医療サービスに近づく。他の大手3社との差も、小さな単位で届ける網の厚みに表れる。
- 医療用医薬品等の卸:数量 2.8(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.97(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 27,441 億円・営業利益 288 億円。医療用卸:数量 1.15 倍・価格 0.97 倍、営業利益率 1.05%
- 化粧品・日用品・市販薬の卸(PALTAC):数量 1.5(ドラッグストア等向け日用品・化粧品・市販薬の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.38(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 20,877 億円・営業利益 522 億円。PALTAC:数量 1.22 倍・価格 1.38 倍、営業利益率 2.50%
- 動物用医薬品・食品加工原材料等の卸:数量 0.1(取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.38(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 1,813 億円・営業利益 45 億円。動物薬等:数量 1.12 倍・価格 1.38 倍、営業利益率 2.50%
倍率:事業の純利益 681 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,125 億円。全体の PER 18.32 倍、時価総額 13,601 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:薬価の下がりを高額薬と流通改善で補い、PALTACも伸びる、すべてがうまくいく姿。確率は1割に届かない。
やや楽観 20% PALTACが伸び、医療用は守る 利益 588 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 5,561 円1.14 兆円
PALTACは、人口が減る国内でも、ドラッグストアの売り場の拡大とインバウンドで数量が増える。値段は物価並みに上がり、営業利益率は2.2%を保つ。医療用卸は、数量の伸びが薬価の下がりを補い、営業利益率は0.95%で落ち着く。
連結の純利益は約590億円。還元は10年で約3,800億円と、純利益の7割近くを返す。自己資本利益率は8%となり、倍率はやや上がる。動物薬や診断薬・試薬など関連事業も、薬価に縛られない収益として少しずつ育つ。ただし利益の中心は、10年たってもPALTACと医療用卸だ。株主から求められた資本効率の改善にも、会社が一定の答えを出した姿になる。
- 医療用医薬品等の卸:数量 2.8(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.95(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 26,174 億円・営業利益 249 億円。医療用卸:数量 1.12 倍・価格 0.95 倍、営業利益率 0.95%
- 化粧品・日用品・市販薬の卸(PALTAC):数量 1.4(ドラッグストア等向け日用品・化粧品・市販薬の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.34(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 19,108 億円・営業利益 420 億円。PALTAC:数量 1.15 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 2.20%
- 動物用医薬品・食品加工原材料等の卸:数量 0.1(取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.34(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 1,698 億円・営業利益 37 億円。動物薬等:数量 1.08 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 2.20%
倍率:事業の純利益 567 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,125 億円。全体の PER 17.31 倍、時価総額 10,940 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:PALTACの成長が続き、医療用卸が利幅を保つ姿。確率2割。
中立 36% 売上は緩やかに増え、利幅は少し細る 利益 512 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 4,676 円9,572 億円
医療用卸は、高齢者人口がピークに近づくなかで、数量が10年で1割ほど増える。薬価は累積で7%ほど下がり、売上は2.5兆円台でほぼ横ばいとなる。費用は物価で3割以上増え、営業利益率は0.85%まで下がる。
PALTACは数量が1割増え、値段は物価並みに1.34倍となり、売上は1.8兆円になる。営業利益率は2.0%を保つ。連結の営業利益は約610億円、純利益は約510億円。還元は10年で約3,300億円。自己資本利益率は7%弱と、資本コスト6.75%とほぼ並ぶ水準に落ち着く。今と比べて大きく違うのは、高齢者人口の頭打ちが見え始める点だ。数量の伸びは年0.5〜1%に鈍る。それでもPALTACと関連事業が全体を支え、株主還元の厚さで、1株あたりの価値は緩やかに増える。
- 医療用医薬品等の卸:数量 2.7(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.93(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 25,166 億円・営業利益 214 億円。医療用卸:数量 1.10 倍・価格 0.93 倍、営業利益率 0.85%
- 化粧品・日用品・市販薬の卸(PALTAC):数量 1.4(ドラッグストア等向け日用品・化粧品・市販薬の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.34(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 18,278 億円・営業利益 366 億円。PALTAC:数量 1.10 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 2.00%
- 動物用医薬品・食品加工原材料等の卸:数量 0.1(取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.34(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 1,651 億円・営業利益 33 億円。動物薬等:数量 1.05 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 2.00%
倍率:事業の純利益 491 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,125 億円。全体の PER 16.21 倍、時価総額 9,084 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は高齢化で緩やかに増え、薬価は毎年下がる。費用は物価で上がる。利幅は少し細り、PALTACの伸びが補う。最も確からしい姿として約4割を置いた。
やや悲観 24% 薬価の累積と費用高で、利益が目減りする 利益 404 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 2,892 円5,921 億円
薬価の引き下げが毎年続き、累積で1割以上になる。物流は人手不足で費用が膨らむ。医療用卸の営業利益率は0.7%まで下がり、営業利益は160億円台に落ちる。
PALTACは、ドラッグストア大手の価格交渉力が強まり、利益率が1.7%に下がる。高齢者人口の減少で、数量の伸びも止まる。連結の純利益は約400億円。還元は10年で約2,700億円。成長が止まり、自己資本利益率が5%台に落ちた会社として、倍率は低く見られる。資本の使い方でも、買収や物流投資で稼ぎが十分に伸びず、現金の一部は低い利回りのまま残る。株主還元は続けるが、稼ぐ力が伸びないので、倍率の回復は望みにくい。
- 医療用医薬品等の卸:数量 2.6(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.90(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 23,247 億円・営業利益 163 億円。医療用卸:数量 1.05 倍・価格 0.90 倍、営業利益率 0.70%
- 化粧品・日用品・市販薬の卸(PALTAC):数量 1.3(ドラッグストア等向け日用品・化粧品・市販薬の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.30(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 16,765 億円・営業利益 285 億円。PALTAC:数量 1.04 倍・価格 1.30 倍、営業利益率 1.70%
- 動物用医薬品・食品加工原材料等の卸:数量 0.1(取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.30(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 1,525 億円・営業利益 26 億円。動物薬等:数量 1.00 倍・価格 1.30 倍、営業利益率 1.70%
倍率:事業の純利益388億円・事業 ROE 6.1% は k 6.75% 以下なので、上限は 1÷k=14.3倍。成長せず投じた資本の稼ぎも低い会社として、1÷kの7.5割に置いた。上限の約8割の10.7倍に置いた。
確率:毎年の薬価引き下げと費用の上昇は、いまの決算が示す方向で、起きやすい。慎重な見方の方が強いと見て、2割台半ばを置いた。
悲観 12% 中抜きと人口減で、卸の機能が縮む 利益 285 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 1,797 円3,679 億円
製薬会社が一部の薬を直接配送し、オンライン服薬指導も広がる。卸の取扱量は減り、薬価は10年で15%下がる。医療用卸の営業利益率は0.45%まで落ち、営業利益は100億円を割る。
PALTACも、大手ドラッグストアが物流を内製し、取引が減る。利益率は1.5%に下がる。連結の純利益は約290億円と半分近くに落ち、もう優良企業とは呼べない。還元は10年で2,200億円に抑えられる。株価は純資産の約0.5倍まで売られる。資本政策でも、大型の買収や投資が実を結ばず、株主還元を続ける余力が細る。高齢者人口の減少も重なり、数量と取り分の両方が下がる。会社は縮小均衡に入り、規模の優位が価格に結びつかなくなる。
- 医療用医薬品等の卸:数量 2.3(国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 0.85(薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない))→ 売上 19,864 億円・営業利益 89 億円。医療用卸:数量 0.95 倍・価格 0.85 倍、営業利益率 0.45%
- 化粧品・日用品・市販薬の卸(PALTAC):数量 1.2(ドラッグストア等向け日用品・化粧品・市販薬の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア)× 価格 1.20(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる))→ 売上 14,136 億円・営業利益 212 億円。PALTAC:数量 0.95 倍・価格 1.20 倍、営業利益率 1.50%
- 動物用医薬品・食品加工原材料等の卸:数量 0.1(取扱量(今の値段で測った兆円))× 価格 1.20(商品の卸値の水準を今を 1 とした指数)→ 売上 1,408 億円・営業利益 21 億円。動物薬等:数量 1.00 倍・価格 1.20 倍、営業利益率 1.50%
倍率:事業の純利益274億円・事業 ROE 4.1% は k 6.75% 以下なので、上限は 1÷k=14.3倍。構造的に負けた筋書き。ROEが資本コストを大きく下回り利益も薄いので、1÷kの6割に置いた。厚い純現金は余った現金として別に足している。上限の約6割の8.6倍に置いた。
確率:10年の悲観は、薬価の下がりに加え、メーカーの直接配送や大手チェーンの内製化など、構造的に負ける姿。10年は何が起きても不思議ではないため、12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医療用医薬品等の卸
製薬会社から薬を仕入れ、全国の病院・診療所・薬局へ配送する。メディセオなどが担う中核事業。
| 数量国内の医療用医薬品市場(薬価ベース・実質、兆円)× 自社シェア | 価格薬価・売値の水準を今を 1 とした指数(薬価改定で下がり、新薬の高い値段で上がる。物価では動かない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.5 | 1.00 | 24,600 | 243 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 0.93 | 25,166 | 214 |
取り方:市場規模は調査会社 IQVIA の 2024 年度の薬価ベース約 11.5 兆円(実質は今の薬価のまま)。メディパルの医療用卸の売上 2.46 兆円を市場で割ると、シェアは約 21.4%。数量はこの 2.46 兆円分の取扱量(市場 11.5 兆円 × シェア 21.4%)、価格は薬価と売値の水準の指数で今を 1 とした。1 兆円 = 10,000 億円で換算する。
化粧品・日用品・市販薬の卸(PALTAC)
ドラッグストアやスーパーへ化粧品・日用品・市販薬・食品を届ける国内最大手。2026 年に完全子会社化。
| 数量ドラッグストア等向け日用品・化粧品・市販薬の卸経由の流通量(卸値ベース・実質、兆円)× 自社シェア | 価格商品の卸値の水準を今を 1 とした指数(物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 1.00 | 12,400 | 264 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 1.34 | 18,278 | 366 |
取り方:ドラッグストアの 2025 年度の売上は 10.6 兆円(JACDS)。調剤を除く物販を卸値に直し、スーパーなど他の小売向けも含めて、卸経由の市場を約 7 兆円と推定した。PALTAC の売上 1.24 兆円はそのうち約 17.7% にあたる。この市場の推計は筆者の見積もりで、開示値ではない。数量は 7 兆円 × 17.7% = 1.24 兆円分の取扱量、価格は卸値の指数。
動物用医薬品・食品加工原材料等の卸
動物病院向けの薬、食品メーカー向けの加工原材料などを扱う関連事業。
| 数量取扱量(今の値段で測った兆円) | 価格商品の卸値の水準を今を 1 とした指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 1.00 | 1,173 | 23 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 1.34 | 1,651 | 33 |
取り方:開示に市場規模とシェアが無いので、取扱量は今の売上 1,173 億円分(0.1173 兆円)を基準にした推計とする。小さな事業なので、数量は人口と同じ緩やかな動き、価格は物価並みとして先を置く。
リスクと懸念
薬価の引き下げと流通改善の不発
薬価は毎年のように改定され、卸の売上は数量の伸びほど増えない。流通改善ガイドラインで、単品ごとの価格交渉や必要経費の反映が進まなければ、卸の粗利は細る。医療用卸の営業利益率が1.0%から0.7%に落ちるだけで、営業利益は3割減る。
人件費と物流費の高騰
物流は人手不足で、運転手と倉庫の人件費が物価以上に上がっている。2026年3月期は、メディパルを含む大手4社が増収減益だった。費用の上昇を価格に載せにくい構造なので、この傾向は続きやすい。自動化と物流の共同化で追いつけるかが問われる。
PALTAC一本足の拡大
買い増しで、PALTACの利益のほぼ全額がメディパルのものになる。連結営業利益の半分を握る事業が、ドラッグストア大手の動向に左右される。大手チェーンが自前の物流を広げれば、取扱量と利益率の両方が下がる。
株主総会と経営の不確実性
筆頭株主が社長の解任と大規模な還元を求め、トップは10月に交代した。新しい経営陣の下で、新しい中期計画が2027年度から始まる。総会の結果や、要求への会社の答え次第で、資本政策も事業の優先順位も変わりうる。
買収資金と金利
PALTACの買い増しは、一部を借入で賄った。借り換えの金利は3.5%前後まで上がる前提で、金融費用が増える。買い増しで得られる利回り(5%台半ば)を下回れば、価値を壊す。統合の費用も当面は利益を押し下げる。
高齢化の天井と中抜き
高齢者人口は2040年前後に減り始め、処方の数量の伸びは止まる。製薬会社の直接配送や、オンライン服薬指導の普及で、卸の機能が薄まる可能性もある。10年を超える長期では、数量と取り分の両方が下がる恐れがある。
今後の分かれ目
- 流通改善ガイドラインが効いて、単品ごとの価格交渉が定着した
- 医療用卸の粗利が守られ、営業利益率は1%台前半で安定する。楽観とやや楽観の確率を上げ、倍率も上限に近づける。
- 薬価の中間年改定が毎年の本格改定になり、深さも増した
- 卸の売上と粗利が同時に削られる。やや悲観と悲観の確率を厚くし、医療用の利益率を0.7%前後で見る。
- 臨時株主総会で、特別配当や大型の自社株買いが可決された、または会社が同等の還元を打ち出した
- 自己資本が圧縮され、自己資本利益率が上がる。還元の合計を上方に直す。ただし稼ぐ力は変わらないので、倍率は据え置く。
- 新しい中期計画(2027年度から)が営業利益の大きな伸びと資本効率の目標を示した
- 経営の資本の使い方が変わったと判断し、強気の筋書きの確率を上げる。数字の裏付け(物流投資の利回り)が弱ければ、確率は動かさない。
- ドラッグストア大手が自前の物流網を広げ、PALTACの取引が減り始めた
- PALTACの数量と利益率を下方に直す。利益の半分を担う事業なので、全体の10年の筋書きを悲観寄りにする。
- PALTACとの統合で、物流費の削減やデータの活用による利益の上積みが数字で見えた
- 営業利益率が想定を上回る。やや楽観の筋書きの確率を引き上げる。
見ておくもの
- 2027年度から始まる新しい中期計画の営業利益・自己資本利益率・株主還元の目標
- 臨時株主総会の結果と、特別配当・自社株買いに対する会社の答え
- 薬価改定(中間年を含む)の下げ幅と、流通改善ガイドラインの運用
- 医療用卸の営業利益率(1.0%)と、PALTACの営業利益率(2.1%)の推移
- PALTAC買い増し後の純現金と、借入の金利負担
- ドラッグストアの売上と店舗数の伸び、大手チェーンの物流の内製化
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益の質と資本効率から決め、今の株価では測っていない。資本コストは6.75%(基本7.5%、quality 合計 -0.5%)。事業のROEは7%前後でこれと並び、上限は1÷kの約14倍、中立はその85%に置いた。余った現金は事業の備えを引いた残りだけを、戻り方(半分)込みで足した。悲観は事業の稼ぐ力から出し、谷のPBRは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.9→18.32 倍・やや楽観 PER 14.6→17.31 倍・中立 PER 14.3→16.21 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.00% → 6.75%。