結論
フリーは、中小企業と個人事業主に会計・人事労務・申告のクラウドを月額で売る会社である。赤字の投資期を抜けて黒字が定着しつつあり、純現金も厚い。
筆者の結論は、事業の質は認めるが値段は大きく割高、である。会計・給与・申告は人が画面で操作する定型の事務で、AI エージェントが直接こなしやすい。席に課金する売り方は、画面が飛ばされると数量も価格も保てない。大手の会計・ERP が AI エージェントを標準で付ければ、値下げ圧力も強まる。成長で利益率が上がるという前提が、いちばん崩れやすい。
売上の約79%を占める法人は数量0.88倍・価格1.12倍、約21%の個人事業主は0.75倍・1.0倍に置いた。中立の売上は名目で1割ほど減り、実質では3割強減る。資本コストは基本7.5%に寿命などの上乗せ1%を足した8.75%、長期の成長率は名目0〜−1%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて39%置いた総合の価値は、今の時価総額を9割ほど下回る。AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無いので、楽観でも数量は1.0倍以下である。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は純現金のうち預りなどを除いた200億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フリーはまだ「利益が出る事業」の段階に入ったばかりだ。10年先には中堅の収益企業に育つ見込みが高いが、今の値段はその先の成功の大部分を前払いしている。
事業の質では、よい点が3つある。解約が少ないこと、粗利益率が高いこと、会計事務所という入口が育っていること。この3つが続けば、営業費の比率が下がり、利益は確実に増える。
気になる点は2つ。1つは、利益の中に株式報酬が大きく含まれること。もう1つは、強い堀と呼べるほどの競争優位がまだ見えないこと。会計は他社と機能が似通っており、乗り換えのコストは中ぐらいだ。経営の質を見る目は、これからの決算で確かめられる。
資本の使い方は、これから見る段階だ。黒字化したばかりで、還元の実績が短い。安全域は、中立の筋書きでも今の値段より低い価値しか出ない以上、見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、月額の利用料だ。法人向けは1社あたり年約12.7万円、個人事業主向けは年約2.1万円。会計と給与・請求・人事労務がセットで入り、使う機能が増えるほど単価が上がる。月額なので、売上は毎年積み上がって見通しやすい。
売上の8割以上が法人だ。法人の有料顧客は約27万社、個人事業主は約42万社。解約は月に法人0.5%、全体で1.0%と低い。会計事務所が顧問先に薦める「アドバイザー制度」の顧客は、解約がさらに4割少ない。
フリーは「記帳を自動化する」ことで中小企業に広がった。いまは人事労務、法人カード、融資・ファクタリングへと機能を広げている。法人カードの取扱高は前年から65%増えた。会計で入口を取り、そこから別の機能を売る。この順番が、1社あたりの売上を伸ばす仕組みだ。
費用の中心は営業と開発だ。売上の約半分を営業・広告に使い、粗利益率は82%と高い。この営業費の比率が下がっていくほど、利益が出る。会社はまさにそこを狙っている。ここ1年で営業費の比率は3ポイント下がり、その成果が出始めた。
優良さと弱いところ
堀は中ぐらいだ。会計データが積み上がり、会計事務所が使い慣れるほど乗り換えは面倒になる。法人の月の解約率0.5%は、この切り替えの難しさの現れだ。
ただし、堀は広くない。国内の会計ソフトは、法人でも個人でも弥生が首位級で、マネーフォワードと勘定奉行も肩を並べる。調査によれば、法人の利用率はフリーが約14%で4番手、個人事業主は約13%で2番手だ。どこかが突き抜けた形ではない。
資本効率は、まだ評価できない。過去7年のROEは平均してマイナスだ。直近でようやく黒字に転じ、自己資本は約200億円、ROEは5%にすぎない。
経営は創業者の佐々木大輔氏が約18%を持ち、長期の目線は期待できる。一方、株式報酬が多く、希薄化は続く。会社が出す利益は「調整後」で見ると26億円、費用に入れると11億円。差は株式報酬だ。筆者は、株主の目で見るなら後者を採る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のクラウド業務ソフト市場は、年に10%前後伸びる。中小企業のデジタル化、電子帳簿保存法、インボイス制度が背中を押してきた。会計・人事労務は削りにくい支出で、景気の波にも比較的強い。需要は底堅いが、各社が同じ客を奪い合う。
競争は激しい。会計では弥生が個人事業主で圧倒的に強く、法人でも首位を争う。マネーフォワードはバックオフィス全体の総合力で追い、勘定奉行(オービックビジネスコンサルタント)は会計事務所の信頼が厚い。ラクスは請求や経費で隣接する。上位が機能で並ぶと、競争は値引きと紹介料になる。
最大の変化は生成AIだ。仕訳の自動化は強い追い風にも、価格破壊にもなる。AIが帳簿づけを完全に肩代わりすれば、ソフトの入り口の価値は薄れる。フリーはAIエージェントやMCP連携(外部のAIから操作する仕組み)を先に出し、約1.8万社が使う。この先行を、他社が同じ速度で追わないとは限らない。AIは追い風と逆風の両方を運んでくる。
会計事務所はもう一つの主戦場だ。事務所がどのソフトを標準にするかで、顧客の流れが決まる。
資本政策と M&A
資本政策は、攻めから還元に変わりつつある。上限50億円の自社株買いを決め、経営陣は「株価が企業価値を大きく下回る」と述べている。ただし、買った株の多くは株式報酬の払い出しに回る。
配当は無配だ。黒字化したばかりで、成長への投資を優先している。借金は少なく、純現金は219億円ある。
M&Aは小型が中心だ。ファクタリング事業などをグループに取り込んだ。大型の買収で事業を大きく変える動きはない。
株主は、創業者の佐々木氏が約18%、海外ファンドのJoho Capitalが約9%、コラ・マネジメントが約7%。支配株主はいなく、TOBの可能性もゼロではない。
点検済み:中立の営業利益率22.5%(法人は今の赤字から24%)が、売上が縮み営業費が重い同じ筋書きの文章と食い違い、会社の2028年6月期予想(13%台)も超えていたため、法人10%・個人事業主25%(全社12.5%)に置き直した。会社の長期目標20〜30%は繰り返し延期されており採らない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
フリーは、中小企業の会計と人事の入口を握る可能性がある。売上は28%伸び、解約は月0.5%(法人)と低い。会社が今期に出した売上522億円・調整後営業利益57億円の見通しは、前年から利益が2倍になる計算だ。2028年6月期には売上成長と利益率の合計が40%を超える目標も維持している。
成長の中身が良い。会計事務所経由で解約が4割低い顧客が増え、人事労務やカードという追加の機能が売れている。営業費の比率は3ポイント改善した。広告にお金をかけなくても顧客が増える形に近づいている。法人カードや融資など、会計の外にも売れるものが育つ点も大きい。
AIでも先を走る。AIが仕訳を自動で作る機能とMCP連携を早く出し、約1.8万社が使っている。帳簿づけの自動化が進むほど、顧客のデータを多く持つフリーが有利になる。長期の営業利益率20〜30%という会社の目標が実現すれば、利益は今の数十倍になる。これが実現する余地は、小さくない。
慎重な見方
利益がまだ小さい。直近の営業利益は11億円、純利益も11億円で、時価総額2,200億円の1%にもならない。会社が示す「調整後」の数字は、株式報酬を費用から外した見た目の利益だ。実際には株主の取り分を毎年削っている。さらに、7年続いた赤字の累積は大きい。
競争が激しい。法人でも個人でも、弥生とマネーフォワードが同じ水準の機能で戦っている。上位が並ぶ市場では、値引きと紹介料の競争になり、営業費の比率が下がらない。会社の計画は繰り返し延期された。2023年版は2027年6月期に売上500億円としていたが、2025年版では2028年6月期に変わった。
最大の問題は生成AIだ。帳簿づけが自動化されれば、会計ソフトの入口としての価値は薄れる。AIの機能は誰にでも付く。先行は、長続きしない差になりやすい。
今期のフリーキャッシュフローも赤字だった。会社は一過性と説明するが、拡大期にはよく起きることだ。ただ、現金が増える形がまだ見えていない。
AI エージェントが会計、人事労務、申告を丸ごとこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。成長を前提にした営業費が残れば、黒字は消える。
AI エージェントが会計、人事労務、申告を丸ごとこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。成長を前提にした営業費が残れば、黒字は消える。
AI エージェントが会計、人事労務、申告を丸ごとこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。成長を前提にした営業費が残れば、黒字は消える。
AI エージェントが会計、人事労務、申告を丸ごとこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。成長を前提にした営業費が残れば、黒字は消える。
AI エージェントが会計、人事労務、申告を丸ごとこなす世界では、席と画面に払う理由が薄れる。成長を前提にした営業費が残れば、黒字は消える。
どちらに重みを置いたか
赤字を脱した成長と厚い純現金では強気の見方が優勢だが、会計・人事労務・申告の画面処理を AI エージェントが直接こなす筋書きでは慎重な見方が重い。席に課金する売り方は、画面が飛ばされる世界で数量も価格も保ちにくく、利益率が上がる前提も崩れる。資本コストは基本7.5%に1.25%を足して8.5%とし、長期の成長率は名目0〜−1%。やや悲観・悲観を合わせて39%の重みを置いた総合は、今の時価総額を9割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,178 円699 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 138 円82 億円)。 今の値に割り戻すと 712 円422 億円、今との差 −82.0%、 期待の年率 −10.4%(資本コスト 6.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,580 円1,530 億円 | 284 円168 億円 | −27.5% | −3.2% | 200 円119 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,197 円1,303 億円 | 236 円140 億円 | −38.4% | −4.7% | 438 円260 億円 |
| 中立 | 36% | 1,041 円617 億円 | 117 円70 億円 | −70.7% | −11.5% | 417 円247 億円 |
| やや悲観 | 26% | 707 円419 億円 | 108 円64 億円 | −79.4% | −14.6% | 212 円126 億円 |
| 悲観 | 13% | 337 円200 億円 | 38 円22 億円 | −90.5% | −21.0% | 49 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,178 円699 億円 | 138 円82 億円 | −66.7% | −10.4% | 1,316 円780 億円 |
今の株価時価総額 3,950 円2,342 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 7% AI エージェントを味方にして、中小企業の会計基盤を守る 利益 92 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,580 円1,530 億円
中小企業の会計と人事労務で、freee は AI エージェントが仕訳を下書きしても使い続けられる基盤であり続ける。法人の席は数量1.0倍、価格は1.17倍まで上がり、個人事業主向けも横ばい圏を保つ。売上は今より1割強増え、営業利益は120億円台に乗る。ただし AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無く、楽観でも数量は1.0倍以下とみる。広告費の比率が下がり、黒字が広がる。この筋書きでも成長の物語は止まる。 最も大きい「法人」は、数量が今の1.00倍、価格が1.19倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.13倍(実質0.84倍)、純利益は92億円になる。
- 法人(中堅・小規模の会社):数量 25.5(有料の法人顧客数(万社))× 価格 16(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 398 億円・営業利益 96 億円。数量1.00倍・価格1.19倍・営業利益率24%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 個人事業主:数量 34.5(有料の個人事業主顧客数(万人))× 価格 2.35(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 81 億円・営業利益 32 億円。数量0.86倍・価格1.06倍・営業利益率39%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 36.6% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 1,358 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観でも数量は1.0倍以下。AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示(金額)が無いので、高成長が続く筋書きにはしない。
やや楽観 18% 黒字は定着するが、席の数が伸びない 利益 77 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,197 円1,303 億円
法人の席は数量0.94倍、価格は1.14倍。個人事業主向けは確定申告の自動化が進み、競争で上げられず数量も0.80倍。売上は今より1割弱減って営業利益は100億円強。営業利益率は2割台の前半に届く。筆者は、赤字を脱して黒字が定着したことは評価するが、この筋書きでも、売上が10年で数倍になる前提の今の値段は正当化できないとみる。 最も大きい「法人」は、数量が今の0.94倍、価格が1.15倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.03倍(実質0.77倍)、純利益は77億円になる。 営業利益は107億円で、今の11億円の984%に当たる。
- 法人(中堅・小規模の会社):数量 24.0(有料の法人顧客数(万社))× 価格 15(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 364 億円・営業利益 80 億円。数量0.94倍・価格1.15倍・営業利益率22%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 個人事業主:数量 32.1(有料の個人事業主顧客数(万人))× 価格 2.29(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 73 億円・営業利益 27 億円。数量0.80倍・価格1.03倍・営業利益率37%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.6% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.2%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 1,143 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会計と人事労務の席が踏みとどまり、黒字が広がる筋書き。開示が無いので数量は1.0倍以下に抑えた。
中立 36% 中立:売上は名目で1割ほど縮み、利益は小さい 利益 36 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 1,041 円617 億円
法人の席は数量0.88倍に縮み、価格は物価に届かず1.12倍。AI エージェントが会計と人事労務を直接こなし、画面の席は減る。個人事業主向けは数量0.75倍、価格は競争で1.0倍のまま。売上は名目で1割ほど減って実質では3割強減り、営業利益率は1割強(会社の2028年6月期予想13%台より低い)。営業利益は50億円前後で、自己資本は厚くなるが高い成長を前提にした営業費が残る。新しく投じるお金の稼ぎは名目の成長が小さいので先で薄れる。 最も大きい「法人」は、数量が今の0.88倍、価格が1.12倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.94倍(実質0.70倍)、純利益は36億円になる。 営業利益は50億円で、今の11億円の4.6倍に当たる。
- 法人(中堅・小規模の会社):数量 22.4(有料の法人顧客数(万社))× 価格 15(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 331 億円・営業利益 33 億円。数量0.88倍・価格1.12倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 個人事業主:数量 30.0(有料の個人事業主顧客数(万人))× 価格 2.22(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 67 億円・営業利益 17 億円。数量0.75倍・価格1.00倍・営業利益率25%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 529 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:席の数が緩やかに縮み、価格も物価に届かないという、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 26% AI エージェントが会計と申告を直接こなし、席が減る 利益 35 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 707 円419 億円
会計・人事労務の定型処理が AI エージェントに移り、大手の会計・ERP も AI エージェントを標準で付ける。席の解約と値引きが重なり、法人の席は数量0.70倍、価格は1.03倍。営業費の重さが残り、営業利益率は1割台前半。売上は今より3割減って営業利益は45億円ほど。成長で稼いできた高い利益率の前提が崩れ、純利益は30億円強で還元も小さい。個人事業主向けも確定申告の自動化に値引きを迫られる。 最も大きい「法人」は、数量が今の0.72倍、価格が1.06倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.73倍(実質0.54倍)、純利益は35億円になる。 営業利益は48億円で、今の11億円の440%に当たる。
- 法人(中堅・小規模の会社):数量 18.4(有料の法人顧客数(万社))× 価格 14(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 257 億円・営業利益 34 億円。数量0.72倍・価格1.06倍・営業利益率13%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 個人事業主:数量 24.6(有料の個人事業主顧客数(万人))× 価格 2.11(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 52 億円・営業利益 15 億円。数量0.61倍・価格0.95倍・営業利益率28%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 35 億円(現金の税後利息を除く)・事業の ROE 9.3%。AI エージェント代替で会計・人事労務・申告の席(ID)課金が AI エージェントに置き換わり、数量が縮み価格も物価に届かない(席・画面を前提にした型)とみて。長期の成長率 g を名目 -1.0% と置き、RONIC = k 6.75% + 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.9%、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.7 倍。上限の 8.5 割に置き、事業 35 億円 × 10.0 倍 + 余った現金 0 億円(戻り方込み)で時価総額 344 億円、全体の PER に直して 10.0 倍。
確率:中小企業の会計・給与・申告は定型的で、AI エージェントが直接こなしやすい。実現しやすいと見て2割台半ばに置いた。
悲観 13% AI エージェントが事務を丸ごと肩代わりし、売上は3分の1 利益 3 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 337 円200 億円
AI エージェントが会計、人事労務、申告まで直接こなし、席課金の売上が半分以下になる。売上は今の3分の1、営業利益はほぼゼロに近い。成長を前提にした営業費が残り、利益は消える。実質無借金で純現金があるので、株主の取り分の床は純現金のうち前受の利用料や消費税の預りなどを除いた200億円ほど残る。稼ぐ力ではなく、この資産の厚さが悲観の値段を決める。 最も大きい「法人」は、数量が今の0.40倍、価格が0.95倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.36倍(実質0.27倍)、純利益は3億円になる。 営業利益は4億円で、今の11億円の35%に当たる。
- 法人(中堅・小規模の会社):数量 10.1(有料の法人顧客数(万社))× 価格 13(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 127 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍・価格0.95倍・営業利益率0%(AI エージェント代替の型:席課金)
- 個人事業主:数量 13.5(有料の個人事業主顧客数(万人))× 価格 1.89(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 26 億円・営業利益 4 億円。数量0.34倍・価格0.85倍・営業利益率15%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 200 億円(今の純現金219億円のうち、前受収益・消費税などの預りと運転資金を除いて売れる資)を床として、今の自己資本 211 億円に対する PBR 0.95 倍で時価総額 200 億円とした。AI エージェント代替で会計・人事労務・申告の画面と席が使われなくなり、売上が半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:AI エージェントが会計・人事労務・申告を直接こなし、席課金が半分以下に縮む筋書き。やや悲観と合わせて3割台後半にとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人(中堅・小規模の会社)
会計・人事労務・請求・法人カードなどを月額で提供する、有料の法人顧客向けの事業。
| 数量有料の法人顧客数(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 25.5 | 13 | 335 | −3 |
| 10 年後 中立 | 22.4 | 15 | 331 | 33 |
取り方:年度末の法人有料顧客27.5万社の期中の平均を約25.5万社と置いた。売上は法人ARR347億円と法人カード等の売上から推定。営業利益は開示がなく、全社の営業利益11億円から個人の推定を引いた。 数量は実物(有料の法人顧客数)。1 社あたり売上 1.63 倍は、物価並みの 1.34 倍に、人事労務やカードなど追加製品の併用で実質 2 割ほど伸びる分を加えた値。 型は席(ID)課金の業務SaaS。AI エージェント代替で会計・人事労務の画面操作が減るので数量0.85倍、価格は物価1.34倍に届かず1.08倍と置いた。売上の約79%がこの型。 型は席(ID)課金の業務SaaS。AI エージェント代替で会計・人事労務の画面操作が減るので数量0.88倍、価格は物価1.34倍に届かず1.12倍(税務の記録として半分は残る)と置いた。売上の約79%がこの型。
個人事業主
確定申告・会計を中心にした、個人事業主向けの月額サービス。
| 数量有料の個人事業主顧客数(万人) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 40.0 | 2.22 | 89 | 14 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 2.22 | 67 | 17 |
取り方:年度末の個人事業主約42万、期中の平均を約40万と置いた。全体のARR436億円から法人347億円を引いた約89億円を個人の売上とみた。営業利益は営業費が軽いため推定で16%。 型は席(個人事業主の契約)課金。確定申告や請求を AI エージェントが直接こなすので、数量0.75倍・価格1.0倍(競争で上げられない)と置いた。売上の約21%がこの型。
リスクと懸念
AI エージェントによる会計・人事労務・申告の置き換え
会計・給与・確定申告は定型的な画面処理で、AI エージェントが直接こなしやすい。席(ID)に課金する売り方は、画面が飛ばされると数量も価格も保てない。大手の会計・ERP が AI エージェントを標準で付ければ値下げ圧力も強まる。売上の約79%は法人の席、約21%は個人事業主で、10年の売上は名目で1割ほど減、実質で3割強減とみた。
弥生・マネーフォワードとの価格競争
法人でも個人でも、競合が同水準の機能で戦っている。顧客獲得のための値引きや紹介料の競争になれば、営業費の比率が下がらず、会社が目指す利益率に届かない。
株式報酬による株主の取り分の目減り
調整後営業利益26.6億円に対して、株式報酬などを費用に入れると営業利益は11億円にまで下がる。株式報酬は新株や自社株で払われ、株主の取り分を毎年削る。自社株買いの多くはこの払い出しに回る。
利益の実績の短さ
黒字になったのは2025年6月期からで、利益はまだ小さい。2018年から7年間の赤字が積み上がり、10年先の利益率は予測の幅が大きい。計画の達成年度は2027年から2028年へ延びた経緯もある。
会計事務所という入口への依存
解約を減らす力は、会計事務所が顧問先にフリーを勧めてくれることから来ている。事務所が別のソフトを標準にすれば、顧客の流れが変わる。事務所はAIで自前の仕組みに移る可能性もある。
フリーキャッシュフローの振れ
2026年6月期の調整後フリーキャッシュフローはマイナス3.5億円だった。会社は一過性と説明するが、消費税の支払いや未払金の期ずれで、現金の動きは大きく振れやすい。
今後の分かれ目
- 法人の月次解約率が0.5%を大きく上回って上がり始めたら
- 会計事務所経由の堀が崩れていると見て、やや悲観・悲観の確率を高める。
- 営業費(販売費)の比率が計画どおり毎年下がり、株式報酬込みの営業利益率が15%を超えたら
- 中立から、やや楽観に重みを移す。
- 黒字企業向けの大型買収で、事業を大きく広げる発表が出たら
- 買収価格と事業の稼ぎを見直し、資本配分の評価を変える。
- 創業者や大株主が大きく売却、または買い増したら
- 支配構造と経営の長期の目線を見直す。
- freee の AI エージェント機能が、金額で開示できる売上や受注として積み上がったら
- 楽観・やや楽観の数量を1.0倍超に直し、確率を上げて見直す。開示が無い間は楽観も数量1.0倍以下にとどめる。
見ておくもの
- 法人の有料顧客数と月次解約率
- 法人のARPUの伸び(上位プランと追加機能の売れ方)
- 株式報酬込みの営業利益率
- 会計事務所経由の新規顧客の割合
- AIエージェントの利用社数とそれによる追加料金
倍率と資本コストの決め方
法人と個人事業主に分け、AI エージェント代替の型(席課金)で数量・価格・利益率を置いた。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k6.75%、g名目0〜−1%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく純現金+売れる資産の床。純利益÷営業利益は過去の水準に近い比で置いた。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.18→14.81 倍・やや楽観 PER 11.18→14.81 倍・中立 PER 11.8→14.81 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。