結論
レゾナック・ホールディングスは、昭和電工が日立化成を買収して生まれた総合化学会社だ。筆者の結論は割高。半導体材料の成長は本物だが、今の株価はその成長を先取りしすぎている。
稼ぎの中心は、半導体チップを載せる基板まわりの後工程材料だ。基板用の銅張積層板、感光性絶縁材料、HBM(積層メモリー)向けの接着フィルムで、いずれも世界の上位に入る。この2年半で9つの事業を売り、2026年10月には石油化学も株式の現物配当で分離する。会社は半導体材料への集中を急いでいる。
ただ、足を引っ張る部分が残る。黒鉛電極は中国の過剰生産で苦戦し、買収で膨らんだ有利子負債は利益を食う。2025年12月期は半導体材料が過去最高益でも、全社の営業利益は前の期より縮んだ。
中立の筋書きでも、10年後の時価総額は約3.3兆円にとどまる(それまでの還元は別に約0.9兆円)。今は約2.85兆円で、これを上回るのは中立以上の筋書きだけだ。黒鉛電極の赤字化など、やや悲観以下が3割強ある。確率で重みづけた価値は、今の時価総額の6割台半ばになる。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の観点では、レゾナックは半導体パッケージ材料の設備投資という成長のための再投資負担と、日立化成買収で生じた負債の返済という2つの重荷を同時に抱えている。半導体・電子材料の増益が負債削減の原資を生み始めているのは良い兆候だが、黒鉛電極・機能化学品の循環的な弱さが再投資後に株主に残る利益の変動を大きくしており、バリュー投資家はこの収益の安定性の低さに相応の安全域を求めるはずだ。
堀の持続については、CCL・感光性絶縁材料・NCFといった個別の半導体材料で世界シェア上位を握る技術的な堀は評価できる一方、黒鉛電極・基礎化学品はコモディティに近く、中国の供給過剰が続く限り価格決定力は乏しい。2つの質の異なる堀が同じ会社に併存している状態であり、全社を単純に半導体材料専業企業と同じ高い倍率で評価することには慎重になるべきだとバリュー投資家は考えるだろう。
資本配分については、9事業の売却と石油化学事業の分離という「ベストオーナーであるか」を基準にした規律あるポートフォリオ入れ替えは、株主目線の経営として一定の評価ができる。一方で、今の株価はすでに半導体材料事業の高成長継続をかなり強く前提にした水準にあり、有利子負債の重さと黒鉛電極の循環リスクという負の要素が、その前提ほど織り込まれていない可能性がある。
何で稼ぐ会社か
収益の中核は半導体・電子材料事業で、半導体チップを切り出し基板に実装する後工程(パッケージング)向けの材料群を幅広く持つ。パッケージ基板用銅張積層板(CCL)はグローバル出荷金額で世界首位級、配線の絶縁に使う感光性絶縁材料(バッファコート・再配線材料)は出荷数量で世界首位級、広帯域メモリー(HBM)をロジックチップに積層接合する絶縁接着フィルム(NCF)でも高いシェアを持つ。顧客はTSMC・サムスン・SKハイニックス・インテルなど半導体メーカーに加え、イビデン・AT&S・ユニマイクロンなど基板メーカーが中心で、AIサーバー向けの先端パッケージング(チップレット・HBM)投資の拡大が単価の上昇を伴う成長要因になっている。
モビリティ・機能材料事業は、自動車部品(アルミ機能部材など)とリチウムイオン電池材料、機能性樹脂・コーティング材料・セラミックスなどを含み、電動化と自動車の電子化に業績が連動する。機能化学品・黒鉛電極事業には、電炉用の黒鉛電極(世界最大手級)と、化学品(基礎化学品・特殊ガスなど)が含まれ、黒鉛電極は鉄鋼生産の動向と中国メーカーの輸出攻勢に業績が強く振られる。
2026年10月1日付で石油化学事業を営む子会社クラサスケミカルの株式の80%超を株主へ現物配当する形で分離し、約20%の株式のみを継続保有する。この分離により、レゾナックは機能性化学メーカーとして半導体・電子材料への依存度を一段と高めた事業構造になる。地域別では、半導体・電子材料はアジアの半導体生産拠点向け、黒鉛電極は欧米・アジアの電炉鉄鋼メーカー向けが中心という、事業ごとに異なる地域リスクの構造を持つ。
優良さと弱いところ
半導体パッケージ材料は、顧客の生産ラインでの長期の品質認定(1〜2年単位の共同開発・認定プロセス)を経て初めて採用される性質があり、CCL・感光性絶縁材料・NCFなど複数の製品で世界シェア上位を握っていることは、認定の蓄積という技術的な堀を示す。一方で、黒鉛電極・基礎化学品はコモディティに近く、中国の供給過剰が続く限り価格決定力は限定的で、全社でみると堀の強さは事業ごとに大きく異なる。
ROEは2025年12月期で4.2%と低く、2018年の25%のような高収益期には届いていない。これは2020年の日立化成買収で膨らんだ有利子負債の重さと、黒鉛電極・住宅関連需要の落ち込みが重なった結果で、2026年は半導体・電子材料の急回復で純利益が大きく改善する見通しだが、純有利子負債は自己資本とほぼ同水準(0.98倍)、営業利益の支払利息に対する余裕も薄く、財務面の脆さは総合化学各社の中でも相対的に大きい。
経営陣はこの2年半で9つの事業を売却し、2026年には石油化学事業も分離するなど、「採算性・戦略適合性・ベストオーナーであるか」という3つの基準で事業を入れ替える規律を見せており、資本配分の意思決定は明確で速い。半導体材料への集中が進むほど、事業ポートフォリオ全体の質は高まる方向にあるが、集中が進むほど半導体サイクル単独への依存度も上がるというトレードオフを抱える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体パッケージング材料の世界市場は、AIサーバー・データセンター向けの先端パッケージ(チップレット・HBM)投資の拡大を受けて、2030年に前工程材料が560億ドル(2024年比46.6%増)、後工程材料が141億ドル(同43.9%増)に達するとの見通しがあり、レゾナックが強い後工程材料は年率6〜7%台の成長が続く見込みである。ただし半導体投資は歴史的に2〜4年周期で山と谷を作ってきた循環産業であり、AIという新しい需要の柱ができても循環そのものは消えない。
一方、黒鉛電極を含む機能化学品は正反対の局面にある。中国の鉄鋼需要の落ち込みと黒鉛電極の大規模増設により世界的な供給過剰が構造化し、レゾナックは2025年に中国・東南アジアの生産拠点を清算して日米欧の4拠点体制に縮小した。20%以上の値上げを打ち出したものの供給過剰の影響で浸透は難航しており、米国の住宅着工の弱さも機能化学品の一部需要を下押ししている。半導体材料とコモディティ化学という位相の異なる循環を併せ持つ構造は、2026年のように片方が強く片方が弱い局面を生みやすい。
競争の形は、CCL・感光性絶縁材料・NCFでは日本・米国・台湾企業による寡占で価格決定力が相対的に高く、味の素のABF(絶縁フィルムで世界シェア約95%)のような独占的な製品を持つ競合もいる。黒鉛電極は世界的に供給過剰で価格競争が厳しく、三菱ガス化学・住友ベークライトなど周辺材料を持つ総合化学各社との競争も、先端パッケージング材料の技術転換点(ガラスコア基板など)次第で勢力図が変わりうる。
資本政策と M&A
2026年12月期は有利子負債を前期比で削減する計画(ネットD/Eレシオ0.83倍→0.81倍、ネットDebt/EBITDA3.5倍→2.9倍)で、2020年の日立化成買収で膨らんだ負債の軽減を優先する資本政策を続けている。配当は2026年12月期に増配を予想しており、半導体・電子材料の増益に合わせて緩やかな増配を見込むが、負債削減との両立が当面の優先順位になる。
M&Aの歴史では、2019年末に発表・2020年に完了した日立化成の買収(総額約9600億円のTOB)が最大の事例で、2023年の社名変更・完全統合を経て今のレゾナックの事業基盤を作った。その後は大型M&Aより、採算性・戦略適合性・ベストオーナーであるかの3基準に基づく事業売却(2年半で9事業)と2026年10月の石油化学事業(クラサスケミカル)の分離を通じた「選択と集中」が資本配分の中心になっている。
黒鉛電極事業は中国・東南アジアからの撤退を終えたが、売却が「優先順位の高いオプション」として検討されており、市況と構造改革の進捗次第で次の大きな資本政策(事業売却)が動く可能性がある。負債の重さを踏まえると、今後の大型買収よりも、半導体材料の既存設備への投資と非中核事業の整理を軸にした資本配分が続くとみるのが妥当である。
点検済み:中立の営業利益率19.6%が会社予想(27年12月期14.3%)を大きく超え、全事業を今の水準(半導体28.2%・モビリティ1.9%・黒鉛電極赤字)より上げていたため、半導体28%・モビリティ4%・黒鉛電極0%に置き直した(全社17.8%。過去最高18.1%の下)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体パッケージング材料市場は、AIサーバー向けの先端パッケージ(チップレット・HBM)投資の拡大で2030年に前工程560億ドル・後工程141億ドルへ拡大する見通しがあり、レゾナックはCCL・感光性絶縁材料・NCFという複数の製品で世界シェア上位を握る。2026年上半期には半導体・電子材料のコア営業利益が前年同期比92%増の815億円に達し、この成長ペースが続けば、同事業だけで全社の利益水準を大きく引き上げる力を持つ。
経営陣は2年半で9つの事業を売却し、2026年10月には石油化学事業(クラサスケミカル)を株式の現物配当で分離するなど、採算性・戦略適合性・ベストオーナーであるかという3基準に基づく規律あるポートフォリオ入れ替えを続けており、黒鉛電極事業の売却という次の一手が実行されれば、全社はほぼ半導体材料専業に近い構造になる。そうなれば、コングロマリット・ディスカウントが縮小し、半導体材料専業企業に近い高い倍率で評価される余地が生まれる。
有利子負債も2026年12月期にネットD/Eレシオ0.83倍から0.81倍へ、ネットDebt/EBITDAは3.5倍から2.9倍へ改善する計画で、半導体・電子材料の増益が続く限り、負債削減のペースはさらに加速しうる。日立化成買収で築いた半導体材料の技術基盤と顧客基盤は、AIデータセンター投資という新しい需要の波に乗ることで、10年後にはより強い半導体材料企業としての地位を確立している可能性が高い。
慎重な見方
黒鉛電極事業は中国の鉄鋼需要の落ち込みと大規模な供給過剰にさらされ続けており、レゾナックは中国・東南アジアの生産拠点を清算したものの、20%以上の値上げは供給過剰の影響で浸透が難航している。この事業の売却が検討されているとはいえ、買い手が見つかるかどうか、売却価格が会社の期待に見合うかどうかは不確実で、売却できなければ構造的な収益の重荷として残り続ける。
日立化成買収で膨らんだ有利子負債は、純有利子負債が自己資本とほぼ同水準(0.98倍)まで積み上がっており、営業利益の支払利息に対する余裕も薄い。半導体・電子材料が好調な今はよいが、半導体投資は歴史的に2〜4年周期で山と谷を作ってきた循環産業であり、投資が一時的に腰折れすれば、負債の重さが利益の変動を増幅し、株主に残る利益を大きく圧迫するリスクがある。
半導体材料の競争環境も楽観しすぎるべきではない。中国メーカーが中位グレードの半導体材料で国産化を進めており、最先端品では当面日本企業への依存が続くとしても、10年という単位ではシェアが徐々に侵食されるリスクがある。味の素のABFのように単一製品で世界シェア95%を握る競合もおり、レゾナックの各製品のシェアが未来永劫同じ水準で続くとは限らない。今の株価はすでに半導体材料事業の高成長継続と黒鉛電極問題の解決をかなり強く前提にしており、どちらかが崩れれば評価は大きく縮む。
どちらに重みを置いたか
半導体パッケージ材料の技術的な堀とAIデータセンター投資の追い風では強気の見方が優勢だが、有利子負債の重さと黒鉛電極の供給過剰の長さでは慎重な見方の指摘も的を射ている。物価込みの名目で積み直しても、中立の10年後のROEは21%前後と資本コスト8.5%を上回るが、資本コストを超える分の半分だけが長く続くとみて正当化したPER(上限の8割)では、中立の時価総額は約3.3兆円にとどまり、確率で重みづけた本質価値は今の値段を36%ほど下回る。確率は中立を軸に、半導体材料のシェア拡大と黒鉛電極売却の実現を楽観・やや楽観に計35%、循環の反転と負債の重さをやや悲観・悲観に計33%置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 18,145 円3.44 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4,037 円7,660 億円)。 今の値に割り戻すと 10,710 円2.03 兆円、今との差 −17.5%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 34,538 円6.55 兆円 | 5,797 円1.10 兆円 | +210.9% | +12.0% | 4,840 円9,184 億円 |
| やや楽観 | 23% | 27,385 円5.20 兆円 | 5,270 円1.00 兆円 | +151.7% | +9.7% | 7,511 円1.43 兆円 |
| 中立 | 32% | 19,163 円3.64 兆円 | 4,356 円8,265 億円 | +81.3% | +6.1% | 7,526 円1.43 兆円 |
| やや悲観 | 21% | 6,805 円1.29 兆円 | 2,899 円5,500 億円 | −25.2% | −2.9% | 2,038 円3,867 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,172 円2,223 億円 | 1,054 円2,000 億円 | −82.8% | −16.2% | 267 円507 億円 |
| 加重平均 | 100% | 18,145 円3.44 兆円 | 4,037 円7,660 億円 | +71.0% | +5.5% | 22,182 円4.21 兆円 |
今の株価時価総額 12,975 円2.46 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 半導体材料専業に近い構造に転換し高い評価を得る 利益 3,657 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 34,538 円6.55 兆円
10年間でAI・先進パッケージング向けの半導体材料需要が繰り返し拡大し、レゾナックの世界シェアは11.5%まで上昇、先端品の構成が上がって価格(シェア)も市場平均を上回る速さで伸びる。半導体・電子材料の営業利益率33%を10年近く維持する。黒鉛電極事業は早期に売却され、残った機能化学品・モビリティ材料は高付加価値品に入れ替わって営業利益率も改善する。有利子負債は大きく圧縮され、全社としてほぼ半導体材料専業企業に近い構造となり、市場からの評価も専業企業に近づく、同社にとって最も理想的な10年になる。中国メーカーの追随は最先端グレードに届かず、レゾナックの技術的な堀は10年を通じて広がり続ける。
- 半導体・電子材料(前工程・後工程パッケージング材料):数量 73.9(レゾナックの数量相当:世界の半導体材料(前工程+後工程)の市場規模 × レゾナックのシェア(億ドル、今の値段のままの実質))× 価格 140.0%(1単位あたりの値段の指数(今を1.0。物価3%込みの名目で、10年で物価並みなら1.34倍))→ 売上 15,525 億円・営業利益 5,123 億円。市場規模1.76倍・シェア11.5%、営業利益率33%(数量は実質で今の1.79倍、値段の指数は1.4倍)
- モビリティ・機能材料(自動車部品・電池材料・樹脂・コーティング等):数量 29.0(モビリティ・機能材料の販売量(万トン、推定))× 価格 134(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 3,886 億円・営業利益 272 億円。単価は物価並み1.34倍、営業利益率7%
- 機能化学品・黒鉛電極:数量 46.2(機能化学品・黒鉛電極の販売量(万トン、推定))× 価格 65(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 3,003 億円・営業利益 150 億円。黒鉛電極売却で身軽化、営業利益率5%
倍率:事業の純利益 3,657 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.92 倍、時価総額 65,533 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年間、半導体材料のシェア拡大と黒鉛電極事業の売却・構造改革の両方が実現する必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 23% 半導体材料が主軸として定着、黒鉛電極は縮小均衡 利益 2,934 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 27,385 円5.20 兆円
レゾナックの世界シェアは10.8%まで上昇し、半導体・電子材料の営業利益率31.5%を維持して全社利益の主力事業としての地位を固める。黒鉛電極は縮小した生産体制のまま均衡に近づき、機能化学品の営業利益率は3.5%まで改善する。モビリティ・機能材料も電池材料・自動車部品の需要を取り込み安定した成長を続け、電子材料比率の高まりに伴って全社のROEも緩やかに改善する10年になる。有利子負債の削減は着実に進み、ネットD/Eレシオは1倍を大きく下回る水準まで下がり、株主還元の拡大余地も広がる。中国メーカーの追随は中位グレードにとどまり、最先端品でのレゾナックの地位は大きく揺らがない。
- 半導体・電子材料(前工程・後工程パッケージング材料):数量 64.6(レゾナックの数量相当:世界の半導体材料(前工程+後工程)の市場規模 × レゾナックのシェア(億ドル、今の値段のままの実質))× 価格 137.0%(1単位あたりの値段の指数(今を1.0。物価3%込みの名目で、10年で物価並みなら1.34倍))→ 売上 13,284 億円・営業利益 4,185 億円。市場規模1.61倍・シェア10.8%、営業利益率31.5%(数量は実質で今の1.56倍、値段の指数は1.37倍)
- モビリティ・機能材料(自動車部品・電池材料・樹脂・コーティング等):数量 28.0(モビリティ・機能材料の販売量(万トン、推定))× 価格 134(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 3,752 億円・営業利益 225 億円。営業利益率6%
- 機能化学品・黒鉛電極:数量 45.4(機能化学品・黒鉛電極の販売量(万トン、推定))× 価格 65(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 2,951 億円・営業利益 103 億円。縮小均衡で収益化、営業利益率3.5%
倍率:事業の純利益 2,934 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.71 倍、時価総額 51,961 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体材料需要が業界の主役として定着するという、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 32% 中立:半導体材料が成長を主導、黒鉛電極は構造的な低成長 利益 2,136 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 19,163 円3.64 兆円
10年後のレゾナックの世界シェアは実質の市場拡大に沿って10.2%になり、半導体・電子材料の営業利益率は28%を維持して全社利益の過半を支える主力事業として定着する。黒鉛電極は中国の過剰生産能力が続く中、構造改革で損益は収支とんとん(営業利益率0%)まで戻すが、かつての高収益期には届かない。モビリティ・機能材料は実質年1〜2%の緩やかな成長を続け、全社としては半導体材料への依存度が一段と高まった構造になる10年になる。有利子負債の削減は進むが、黒鉛電極事業を抱え続けるなら完全な専業企業にはならない。
- 半導体・電子材料(前工程・後工程パッケージング材料):数量 57.1(レゾナックの数量相当:世界の半導体材料(前工程+後工程)の市場規模 × レゾナックのシェア(億ドル、今の値段のままの実質))× 価格 134.0%(1単位あたりの値段の指数(今を1.0。物価3%込みの名目で、10年で物価並みなら1.34倍))→ 売上 11,475 億円・営業利益 3,213 億円。市場規模1.47倍・シェア10.2%、営業利益率28%(数量は実質で今の1.38倍、値段の指数は1.34倍)
- モビリティ・機能材料(自動車部品・電池材料・樹脂・コーティング等):数量 26.9(モビリティ・機能材料の販売量(万トン、推定))× 価格 134(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 3,605 億円・営業利益 144 億円。単価は物価並み1.34倍、営業利益率4%
- 機能化学品・黒鉛電極:数量 44.6(機能化学品・黒鉛電極の販売量(万トン、推定))× 価格 65(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 2,899 億円・営業利益 0 億円。単価は物価並み1.30倍、営業利益率0%
倍率:事業の純利益 2,136 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17.02 倍、時価総額 36,360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体材料市場の中心的な見通しと、黒鉛電極の構造的な供給過剰の継続を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 21% 黒鉛電極の構造不況が長期化し半導体材料も中位シェアを侵食される 利益 1,098 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 6,805 円1.29 兆円
中国の半導体材料国産化が中位グレードまで広がり、レゾナックの世界シェアは8.5%にとどまり、半導体・電子材料の営業利益率は22%まで下がる。黒鉛電極の供給過剰は10年たっても解消せず、機能化学品は営業利益率マイナス5%の構造的な赤字が続く。モビリティ・機能材料も自動車生産の伸び悩みで成長が鈍る、全社として過去10年ほどの成長力を失う10年になる。有利子負債の削減も利益の伸びが乏しいため計画より遅れ、黒鉛電極事業の売却も買い手が見つからず実現せず、資本配分の規律そのものが問われる局面になる。株主還元の拡大ペースも鈍り、半導体材料の設備投資の優先順位の見直しが迫られる。
- 半導体・電子材料(前工程・後工程パッケージング材料):数量 46.5(レゾナックの数量相当:世界の半導体材料(前工程+後工程)の市場規模 × レゾナックのシェア(億ドル、今の値段のままの実質))× 価格 128.0%(1単位あたりの値段の指数(今を1.0。物価3%込みの名目で、10年で物価並みなら1.34倍))→ 売上 8,925 億円・営業利益 1,964 億円。中位シェアを侵食され伸び悩み、営業利益率22%(数量は実質で今の1.13倍、値段の指数は1.28倍)
- モビリティ・機能材料(自動車部品・電池材料・樹脂・コーティング等):数量 25.0(モビリティ・機能材料の販売量(万トン、推定))× 価格 128(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 3,200 億円・営業利益 64 億円。単価は物価をやや下回る、営業利益率2%
- 機能化学品・黒鉛電極:数量 43.0(機能化学品・黒鉛電極の販売量(万トン、推定))× 価格 64(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 2,752 億円・営業利益 −138 億円。供給過剰が続き構造的な赤字、営業利益率-5%
倍率:ROE 13.0%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC=k 8.5%+残る割合 1/2×(13.0−8.5)=10.8%、長期の成長率 g 4.5%から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.5 倍。シェアを中国に侵食される筋書きで成長は物価並みに近く、有利子負債の削減も遅れるので、上限の8.1割の 11.76 倍に置いた。
確率:中国の半導体材料国産化が中位グレードにも及び、黒鉛電極の供給過剰も解消しないという、業界見通しの弱めのレンジに相当。
悲観 12% 半導体材料の優位と黒鉛電極の事業モデルが共に崩れる 利益 −300 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,172 円2,223 億円
中国の半導体材料メーカーが最先端グレードにも食い込み、レゾナックの世界シェアは6%まで落ち込み、半導体・電子材料の営業利益率は8%まで落ち込む。黒鉛電極は世界的な供給過剰が解消せず、機能化学品は構造的な営業損失が続く。モビリティ・機能材料も自動車生産の長期停滞で営業損失になり、全社として優良企業という評価が市場から外れる10年になる。日立化成買収で膨らんだ負債の重さが利益の低迷と重なり、資産の売却と政策保有株の処分で資本を確保する局面が続き、研究開発費の確保すら難しくなる。技術的な蓄積そのものは残るが、かつての独走状態には戻れない。
- 半導体・電子材料(前工程・後工程パッケージング材料):数量 28.7(レゾナックの数量相当:世界の半導体材料(前工程+後工程)の市場規模 × レゾナックのシェア(億ドル、今の値段のままの実質))× 価格 115.0%(1単位あたりの値段の指数(今を1.0。物価3%込みの名目で、10年で物価並みなら1.34倍))→ 売上 4,950 億円・営業利益 396 億円。最先端まで侵食され需要・シェアとも低下、営業利益率8%(数量は実質で今の0.69倍、値段の指数は1.15倍)
- モビリティ・機能材料(自動車部品・電池材料・樹脂・コーティング等):数量 23.0(モビリティ・機能材料の販売量(万トン、推定))× 価格 126(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 2,898 億円・営業利益 −87 億円。営業損失(営業利益率-3%)
- 機能化学品・黒鉛電極:数量 41.3(機能化学品・黒鉛電極の販売量(万トン、推定))× 価格 63(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 2,601 億円・営業利益 −312 億円。構造的な営業損失(営業利益率-12%)
倍率:電子材料の優位を失い黒鉛電極も赤字で利益がほとんど出ない筋書きなので、稼ぐ力でなく資産で測る。今の自己資本の一部が黒鉛電極・石化関連設備と買収時ののれんの減損で消え、残る半導体材料の設備・在庫・顧客基盤の売却価値を床に、この筋書きの自己資本に 0.45 倍を掛けた。
確率:中国の半導体材料国産化が最先端にも及び、かつ黒鉛電極の供給過剰が解消しないという複合シナリオ。技術優位の喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体・電子材料(前工程・後工程パッケージング材料)
半導体パッケージ基板用銅張積層板(CCL)、感光性絶縁材料、HBM向け絶縁接着フィルム(NCF)など、半導体の後工程を中心とする材料群。全社の利益の柱。
| 数量レゾナックの数量相当:世界の半導体材料(前工程+後工程)の市場規模 × レゾナックのシェア(億ドル、今の値段のままの実質) | 価格1単位あたりの値段の指数(今を1.0。物価3%込みの名目で、10年で物価並みなら1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 41.3 | 100.0% | 6,197 | 1,750 |
| 10 年後 中立 | 57.1 | 134.0% | 11,475 | 3,213 |
取り方:半導体材料(前工程+後工程)の世界市場規模を2026年時点で約510億ドルと置き(2024年比で前工程560億ドル・後工程141億ドルへの成長軌道から逆算)、レゾナックの半導体・電子材料事業の売上(2026年見通しで約6,200億円)をドル円150円で割って世界シェアを約8.1%と逆算した。数量は実質の市場規模、価格(シェア)は先端パッケージング材料への構成シフトで物価より速く上がる前提。 【単位の整理】数量は市場規模×シェア(510億ドル×8.1%相当)を億ドルに直した41.31、値段の指数は今を1.0とした。
モビリティ・機能材料(自動車部品・電池材料・樹脂・コーティング等)
自動車部品(アルミ機能部材)、リチウムイオン電池材料、機能性樹脂・コーティング材料・セラミックスなどを手掛ける事業。
| 数量モビリティ・機能材料の販売量(万トン、推定) | 価格1トンあたりの平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 26.0 | 100 | 2,600 | 50 |
| 10 年後 中立 | 26.9 | 134 | 3,605 | 144 |
取り方:セグメント構成比(モビリティ約14%・イノベーション材料約7%、石油化学分離後の比率に換算)から売上を約2,600億円と推定し、電池材料・自動車部品・機能性樹脂の業界平均的な単価感から1トンあたり単価を100万円、販売量を26万トンと逆算した。数量は電動化・車の電子化で実質年1〜2%程度の伸びを想定。
機能化学品・黒鉛電極
電炉用の黒鉛電極(世界最大手級)と基礎化学品・特殊ガスなどを手掛ける事業。鉄鋼生産の動向と中国メーカーの輸出攻勢に業績が連動する。
| 数量機能化学品・黒鉛電極の販売量(万トン、推定) | 価格1トンあたりの平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 57.0 | 50 | 2,850 | −200 |
| 10 年後 中立 | 44.6 | 65 | 2,899 | 0 |
取り方:セグメント構成比(ケミカル約14%、石油化学分離後の比率に換算)から売上を約2,850億円と推定し、黒鉛電極の世界的な供給過剰による価格低迷を踏まえて1トンあたり単価を50万円、販売量を57万トンと逆算した。黒鉛電極事業は2025年に中国・東南アジアの生産拠点を清算しており、価格は20%以上の値上げを試みているが供給過剰で浸透が難航し、当面は物価より遅れる前提。
リスクと懸念
黒鉛電極事業の世界的な供給過剰
中国の鉄鋼需要の落ち込みと黒鉛電極の大規模増設により世界的な供給過剰が構造化しており、レゾナックは中国・東南アジアの生産拠点を清算したものの、20%以上の値上げは浸透が難航している。黒鉛電極事業の売却が検討されているが、買い手が見つかるか、売却価格が会社の期待に見合うかは不確実である。
買収で膨らんだ有利子負債の重さ
2020年の日立化成買収で膨らんだ有利子負債は純有利子負債が自己資本とほぼ同水準(0.98倍)まで積み上がっており、営業利益の支払利息に対する余裕も薄い。半導体投資が一時的に腰折れすれば、負債の重さが利益の変動を増幅し、株主に残る利益を大きく圧迫するリスクがある。
半導体投資サイクルの反転
半導体投資は歴史的に2〜4年周期で山と谷を作ってきた循環産業であり、AIデータセンター投資という新しい需要の柱ができても循環そのものは消えていない。投資の急失速が起きれば半導体・電子材料事業の収益が急速に悪化し、負債の重さと相まって全社の財務に影響する。
中国の半導体材料国産化
中国は半導体パッケージ材料の中位グレードで国産化を進めており、最先端品では当面日本企業への依存が続くとみられるが、10年単位では中位グレードのシェアが徐々に侵食され、レゾナックの事業規模にも無視できない影響が及ぶリスクがある。
顧客の投資判断への依存
半導体・電子材料事業はTSMC・サムスン・SKハイニックスなど少数の大口顧客や、イビデン・AT&Sなど基板メーカーの設備投資計画に業績が直結しており、どの1社の投資計画の変更も受注に大きく影響する顧客集中リスクを抱えている。
石油化学事業分離後のポートフォリオの読みにくさ
2026年10月の石油化学事業(クラサスケミカル)の分離により事業構造が大きく変わり、今後も黒鉛電極など非中核事業の売却が続けば、投資家にとって会社の将来像がさらに変化しやすく、資本配分の方向性を読みにくくする副作用がある。
今後の分かれ目
- 黒鉛電極事業の売却が具体的に合意されたら
- 機能化学品セグメントの損益が改善し、全社の半導体材料への依存度がさらに高まる。楽観・やや楽観の確率を上げてよいが、売却価格次第で一時的な損失計上の可能性も確認する。
- 半導体材料市場の見通しが2030年の前工程560億ドル・後工程141億ドルを上回る形で上方修正され続けたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。ただし半導体・電子材料の倍率がすでに成長を織り込んでいるため、価値の伸び以上に評価が先行していないかは別に確認する。
- 純有利子負債が自己資本に対して明確に低下するペース(ネットD/Eレシオ0.7倍未満)に入ったら
- 財務の脆さに対する懸念が和らぎ、倍率の上限に対する掛け率(現在70〜85%)を引き上げる材料になる。
- 中国の半導体パッケージ材料国産化が中位グレードを超えて最先端グレードに及んだら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移し、半導体材料のシェア前提を下方修正する。
- 次の決算で半導体・電子材料のコア営業利益率が2026年上半期の水準から継続的に低下したら
- 半導体サイクルの反転が始まっているサインとみて、中立シナリオの前提を下方修正する。
- 台湾・韓国の半導体メーカーが相次いで先端パッケージング投資を延期したら
- 半導体・電子材料事業の成長前提を下方修正し、やや悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 半導体・電子材料事業の四半期コア営業利益率とAIサーバー向け先端パッケージング材料の受注動向
- 黒鉛電極事業の売却・構造改革の進捗と電炉用黒鉛電極の価格動向
- 純有利子負債・ネットD/Eレシオ・ネットDebt/EBITDAの四半期ごとの変化
- 半導体パッケージング材料の世界市場見通し(前工程・後工程)の更新
- 石油化学事業(クラサスケミカル)分離後の継続事業セグメントの開示内容
倍率と資本コストの決め方
数量は実質(世界の半導体材料市場規模・販売トン数)、価格は物価3%込みの名目(モビリティ・機能材料は中立で10年1.34倍、黒鉛電極は中国の過剰生産能力で10年1.30倍)で売上を積んだ。資本コストは基本7.5%+quality+1%(循環+0.5、重い借金+0.5)の8.5%。倍率は、資本コストを超えるROEの半分だけが長く続く(RONIC=k+0.5×(ROE−k))とみて、新しく投じる資金の稼ぎだけを薄める正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)を上限に、その8割に置いた(純有利子負債が自己資本並みで、EVで見ると営業利益の20倍超になるため上限すれすれにしない)。やや悲観は1÷kの下限、悲観は減損後に売れる資産で測り、過去のPBRの底からは置いていない。今のPER98倍・PBR4.08倍は最後に比べただけで、寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.33→17.92 倍・やや楽観 PER 14.17→17.71 倍・中立 PER 13.6→17.02 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0%(市況事業の循環 +0.5、買収後の重い借金 +0.5)を足して 8.5%。半導体材料の成長と黒鉛電極の市況を併せ持つ会社で、借金の重さは k に、実行リスクや黒鉛電極の供給過剰は筋書きの利益率と悲観の確率に入れた。事業が傾いてはいないので extra は足さない。
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- レゾナック、半導体好調も黒鉛電極不振で69%減益(EE Times Japan)
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