結論
森ヒルズリートは、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、アークヒルズなど、森ビルが開発した都心のビルを持つ REIT だ。物件の 9 割が東京都心 5 区にあり、稼働は 99.0%。ただ筆者の結論は割高である。今の値段は、鑑定の利回りが 2% 台後半という、金利が極端に低い世界の評価をそのまま 10 年先へ延ばした値段だからだ。
この REIT には他にない特徴がある。オフィス賃料の約 7 割が、スポンサーの森ビルが借り手になる固定賃料のマスターリースだ。空室の心配は森ビルが背負い、賃料は契約の更新まで動かない。収益は安定するが、金利が上がる世界で賃料を上げて追いかける力は、更新の時期に縛られる。
借入は約 1,900 億円。LTV は帳簿で 46%、残りの期間は 3.4 年と短い。10 年金利が 3% に落ち着けば、年の利払いは今の 3.5 倍になり、利益の 3 分の 1 が消える。ビルの利回りも 2% 台後半から 4% 台前半へ上がる。
増資を一切せず、NAV の 7 割の値段で自己投資口を買う姿勢は評価できる。それでも金利の壁は動かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、物件の質と経営者の姿勢はどちらも合格点だ。一級のビルを持ち、増資をせず、NAV 割れの投資口を自ら買って消している。オーナーとして付き合いたい運営である。
ただ、投資主が受け取るのは、賃料から利払いを引いた残りだけだ。借入は 1,900 億円で、平均 0.91% の金利が 3% 台前半へ変わる。年の利払いは 18 億円から 64 億円へ増え、賃料の増額では埋めきれない。10 年の分配と 10 年後のビルの価値を合わせても、今の値段の 4 割ほどの価値にしかならない。
固定賃料のマスターリースは、安定という点では心強い。だが安定は、安く買える理由にはならない。値段が NAV に対して今よりさらに下がり、ビルの利回りが 4% を超える水準まで来れば、一級の物件群は魅力的な持ち物になる。今はまだそこにない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。東京都心の大型ビルを企業に貸し、賃料から経費と利払いを引いた残りを投資主に配る。2026 年 7 月期(半年)の賃貸事業収入は約 99 億円、そこから経費を引いた NOI、つまり物件の正味の賃料は約 73 億円だった。
物件は取得価格で 4,149 億円。六本木ヒルズ森タワー、アーク森ビル、愛宕グリーンヒルズ、虎ノ門ヒルズ森タワーなど、森ビルが開発した大型の複合ビルの一部を持つ。ほかに住宅 2 棟と、ラフォーレ原宿の底地、つまり土地だけの権利がある。東京都心 5 区が 91% を占め、J-REIT で最も都心に偏る。
オフィスの賃料は 2 つの型に分かれる。約 7 割は固定型のマスターリースで、森ビルが一括して借り、固定の賃料を払う。契約が満了する 2027 年から 2031 年に、その時の市場賃料へ見直される。残りはテナントから直接受け取るパススルー型で、改定のたびに賃料が上がっている。
借入は 1,906 億円。平均の金利は 0.91%、残りの期間は 3.4 年。固定は約 7 割で、格付けは JCR の AA。手元の現金は 170 億円ほどある。
優良さと弱いところ
物件の質は国内で最上位の一角だ。六本木ヒルズと虎ノ門ヒルズの森タワーは、多くの優良企業が本社を置くビルで、代わりが無い。稼働は 99.0% と高く、パススルーの契約も増額で更新できている。ただし賃料を自分で決める力は無い。オフィスの賃料は市況で決まり、固定型の賃料は更新まで動かない。
資本の使い方は誠実だ。増資はせず、NAV を大きく割る投資口を買って消却している。2025 年 12 月には、スポンサーから虎ノ門ヒルズ森タワーの持分を鑑定より 17% 安く取得した。譲渡益は全て分配に回している。
弱いのは、スポンサーとの距離の近さだ。取得は全て森ビルから、賃料の約 7 割も森ビルとのマスターリース。取引の条件を決める側が、投資主と同じ側に立っているとは限らない。ただ森ビルは 22% を持つ筆頭投資主で、利害は一致している。
借入の重さは気になる。純負債は NOI から報酬を引いた額の約 14 倍で、同じ用途の中でも重い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京都心のオフィス市場は、空室率が 2% 台まで下がり、賃料は上昇基調にある。大企業の本社機能の需要は強く、森ヒルズリートのパススルー物件は、改定で 7%、入れ替えで 2〜11% の増額を取っている。固定型のマスターリースは、鑑定の賃料が今の契約賃料を 4% 前後上回り、更新時に増額が見込まれる。
筆者は、これを 10 年続く上昇とは見ない。大型ビルの新築は 2027 年以降も続き、働く場所は分散する。中立の賃料は物価の 3 分の 2、名目で年 2% 前後と置く。経費は物価で増えるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
いちばん大きいのは金利だ。この REIT の鑑定の利回りは 2.4〜3.2%、10 年国債が 3% の世界でこの差は保てない。不動産に求める利回りを 6%、NOI の長い伸びを 1.75% とすれば、都心の大型ビルは 4.25% 前後に落ち着く。鑑定の利回りが特に低い分、ビルの値段の下落幅は同じ用途でも大きい。
オフィスは、金利の上昇と利回りの上昇が同時に効きやすい用途である。
資本政策と M&A
利益のほぼ全部を配るのが REIT の決まりだ。成長の道は、増資で物件を買うか、物件を入れ替えるかのどちらかになる。この投資法人は、増資をやめて入れ替えと自己投資口の買い入れに絞ってきた。
入れ替えの中心は、ラフォーレ原宿の底地の分割売却だ。5% ずつ売り、含み益 100 億円ほどを分配に回している。2030 年までの分配はこれで支えられている。筆者は、この売却益を通常の分配には数えず、一度きりの上乗せとして別に扱った。
自己投資口は 2026 年に 8.9 億円を買って消却した。NAV の 7 割の値段で買うのは、投資主にとって確実な使い道だ。
取得は森ビルのパイプラインから、競争入札なしで鑑定を下回る値段で行える。ただ LTV は帳簿で 46% と、借り増しの余地は限られる。会社は一時的に 50% へ上げて 300 億円の取得余力を作る考えだが、金利の上昇期にそれは重い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
一等地のビルは増えない。六本木ヒルズと虎ノ門ヒルズは、森ビルが街ごと育てており、周辺の開発が進むほど価値が上がる。固定型マスターリースの賃料は、鑑定の賃料より 4% 前後低く、2027 年からの更新で増額が続く。パススルー物件は改定のたびに賃料が上がっており、賃料が物価並みに上がれば、NOI は 10 年で 3 割近く伸びる。
資本政策も強い。増資をせず、NAV の 7 割の値段で自己投資口を買って消却している。含み益は 1,100 億円あり、値段が NAV に近づくだけで大きく報われる。スポンサーの森ビルは 22% を持ち、物件を鑑定より安く渡してくれる。
金利が 3% まで上がるとも限らない。固定の比率は約 7 割あり、格付けは AA。ラフォーレ原宿の売却益で、分配金も当面は維持される。
オフィスの賃料は、本社機能の移転先が限られる都心で、最も強く上がる。
実際、パススルー物件の賃料は、改定でも入れ替えでも増額が続いており、レントギャップ、つまり契約賃料と市場賃料の差は 9% に広がった。この差が埋まるだけで賃料は伸びる。
慎重な見方
低金利が作った値段だ。鑑定の利回りは 2.4〜3.2%、10 年国債が 3% の世界ではほとんど差が無い。利回りが 4% 台前半へ上がれば、ビルの価値は 3 割以上下がる。借入が重いので、投資主の取り分はその倍以上の速さで減る。LTV は帳簿で 46% だが、時価では 36%、鑑定の利回りが上がるとこの余裕は消える。
利払いも重い。平均 0.91% の借入が 3% 台前半に変われば、年の利払いは 3.5 倍になる。残りの期間は 3.4 年と短く、借り換えが早く来る。
固定賃料のマスターリースは、更新まで賃料が動かない。物価が 3% で上がっても、賃料は止まったままだ。しかも借り手は森ビルで、スポンサーとの交渉で賃料が決まる。
分配金の維持は、ラフォーレ原宿の売却益に頼っている。売却益を除く分配は 2 割ほど少なく、この差は一度きりの上乗せにすぎない。
さらに、築の古いアーク森ビルなどは、修繕の費用が重くなる。買い替えで得る新しい物件の利回りは低く、売って買うほど稼ぐ力は薄まる。
どちらに重みを置いたか
物件の質では強気に分があるが、勝負を決めるのは金利だ。10 年金利 3% を前提にする以上、利払いとビルの利回りの上昇は避けられない。中立を 37% に置き、悲観側を合わせて 35% とした。楽観は金利が今のまま止まる筋書きで 8%。スポンサーの癖は薄いので、悲観の確率は厚くしすぎなかった。筆者は、この REIT が同じ用途の中で最も都心に偏った、質の高い持ち物だと認める。ただ結論は変わらず、割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 64,576 円1,214 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 43,058 円809 億円)。 今の値に割り戻すと 57,994 円1,090 億円、今との差 −50.2%、 期待の年率 −0.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 255,569 円4,804 億円 | 53,040 円997 億円 | +165.1% | +10.2% | 24,689 円464 億円 |
| やや楽観 | 20% | 92,088 円1,731 億円 | 49,316 円927 億円 | +21.5% | +2.0% | 28,281 円532 億円 |
| 中立 | 37% | 57,615 円1,083 億円 | 45,485 円855 億円 | −11.4% | −1.2% | 38,147 円717 億円 |
| やや悲観 | 22% | 18,407 円346 億円 | 37,718 円709 億円 | −51.8% | −7.0% | 12,348 円232 億円 |
| 悲観 | 13% | 2,660 円50 億円 | 29,419 円553 億円 | −72.4% | −12.1% | 4,170 円78 億円 |
| 加重平均 | 100% | 64,576 円1,214 億円 | 43,058 円809 億円 | −7.5% | −0.8% | 107,634 円2,023 億円 |
今の株価時価総額 116,400 円2,188 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 金利が止まり、都心の賃料が物価並みに上がる 利益 89 億円 · PBR 2.5 倍 · 株価時価総額 255,569 円4,804 億円
都心の本社需要が強く、固定型マスターリースは 2027 年からの更新で市場賃料まで引き上げられる。パススルー物件も含め、賃料は物価並みの年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。NOI は 10 年で 3 割強伸びる。
借り換えの金利は AA の格付けで 3.3% にとどまる。不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 2.33% のまま変わらない。時価総額は 4,804 億円と今の 2.1 倍になる。ラフォーレ原宿の売却益の分配も続き、投資主の取り分は今の値段を上回る。
筆者はこの筋書きを、前提の金利から外れる分だけ低く見る。
- オフィスビルの賃貸:数量 3,926(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 5.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 266 億円・営業利益 171 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 197 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 2.33% − 純負債 1930 = 4804 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 2.33% で、今の値付けが 10 年続く所(オフィスの下限 3.5% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:10 年金利が今の 3% 前後で止まり、固定型の更新で賃料が大きく増額される筋書き。前提の金利から外れるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価に近く伸び、利回りの上昇は小さい 利益 76 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 92,088 円1,731 億円
都心の空室は低いまま推移し、賃料は年 2.5% で上がる。稼働は 98.5% を保つ。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びが上回り、NOI は 10 年で 2 割台半ば伸びる。
借入は 3.35% 前後へ借り換わり、利払いは今の 3.5 倍になる。純利益は今より細る。ビルの利回りは 3.9% に上がり、ビルの価値は今の鑑定を大きく下回る。
固定型の更新による増額は一度きりの押し上げで、その先の伸びは物価に追いつかない。自己投資口の買い入れは続くが、金利が上がるほど余力は細る。
含み益の売却による分配の上乗せもあるが、通常の利益には数えない。
- オフィスビルの賃貸:数量 3,907(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.5%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 5.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 252 億円・営業利益 157 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 183 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 3.90% − 純負債 1935 = 1731 億円。キャップは中立 4.25% から 0.35% 下げた。
確率:固定型の更新で増額が進み、ビルの利回りの上昇が小さい筋書き。20%。
中立 37% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 61 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 57,615 円1,083 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3〜4 年で 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の 18 億円から 64 億円へ増える。賃料は年 2% で上がるが、新築の供給で稼働は 97.5% へ少し下がる。経費は物価並みの 3% で増え、NOI は 10 年で 1 割台半ばしか伸びない。
減価償却は昔の取得原価のままなので、会計の利益は利払いの増加ほどは減らない。それでも純利益は今の 3 分の 2 に細る。修繕の費用は築年とともに 1.4 倍に膨らみ、償却を上回る。
ビルの利回りは 4.25% に上がり、ビルの価値は今の鑑定より 4 割近く低い。負債は減らないので、投資主の取り分は今の自己資本の 6 割ほどになる。NAV 割れで増資はせず、規模は据え置きだ。
- オフィスビルの賃貸:数量 3,867(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.1%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 5.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 238 億円・営業利益 143 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 168 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 1940 = 1083 億円。キャップは都心の大型の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り 2.8% より大幅に高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 37%。
やや悲観 22% 供給過多で賃料が伸びず、利回りが上がる 利益 32 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 18,407 円346 億円
大型の新築ビルが続き、テナントは新しいビルへ移る。固定型マスターリースの更新では、森ビルが市況を理由に賃料を据え置く。平均の賃料は年 1% しか上がらず、稼働は 95.5% へ落ちる。経費は物価で増え、NOI は今より 3% 減る。
借入は 3.7% へ借り換わり、純利益は今の 3 分の 1 まで細る。分配は大きく減る。ビルの利回りは 4.5% へ上がり、ビルの価値は今の鑑定の 5 割台に下がる。LTV は 6 割に近づき、格付けの引き下げで借り換えの上乗せが増える。
スポンサーが物件を引き取る支えはありうるが、その値段が投資主に有利とは限らない。
- オフィスビルの賃貸:数量 3,788(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.6%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 5.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 211 億円・営業利益 117 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 142 − 資本的支出 38) ÷ キャップ 4.50% − 純負債 1960 = 346 億円。キャップは中立 +0.25%。
確率:2027 年以降の大型供給と在宅の定着で、固定型の更新で増額が取れない筋書き。22%。
悲観 13% 金利の上振れと不況が重なり、物件の価値が負債に迫る 利益 1 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 2,660 円50 億円
金利は 3% を超えて上がり、不動産の売りが重なる。借り換えの金利は 4.5% に上がり、利払いは今の 4.5 倍になる。不況で企業は床を減らし、稼働は 93%、賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。経費を年 2% に抑えても、NOI は 15% 減る。
純利益はほぼゼロになり、分配は止まる。配らずに残した現金で借入を少しずつ返す。ビルの利回りは 4.75% へ上がり、物件の価値は負債とほぼ並ぶ。投資主に残るのは、市況が戻れば取り戻せる見込みの分だけだ。清算されない限り、ビルを売って NAV を受け取ることはできない。
- オフィスビルの賃貸:数量 3,688(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.0%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 5.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 186 億円・営業利益 99 億円。稼働 93%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 123 − 資本的支出 33) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1850 = 50 億円。キャップは中立 +0.5%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:リーマン級の不況と金利の上振れが重なる筋書き。借入の重さと残りの期間の短さを考え 13% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィスビルの賃貸
東京都心の大型複合ビルの一部を企業と森ビルに貸す。ほかに住宅 2 棟と土地の権利を持つ。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 5.0%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 3,914 | 5.0% | 197 | 123 |
| 10 年後 中立 | 3,867 | 6.1% | 238 | 143 |
取り方:2026 年 7 月期の半期の賃貸事業収入 99 億円(譲渡益を除く)を 2 倍して年額 197 億円。帳簿価額 3,966 億円 × 期末の稼働 98.7%(オフィス 99.0%・住宅 93.7%)で数量、収入 ÷ 数量で価格。セグメントの利益は NOI 146 億円から減価償却 23 億円を引いた額。中立の価格が 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料が契約の更新ごとに遅れて上がり、物価の 3 分の 2 しか転嫁しないと見るため(業種ノート)。固定型マスターリースは更新まで賃料が動かないが、10 年の間に全て更新を迎える。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 0.91% の借入が 3% 台前半へ借り換わると、年の利払いは 45 億円ほど増える。今の年の利益の半分近い。残りの期間は 3.4 年と短く、借り換えが早く来る。
ビルの利回りの上昇
鑑定の利回りは 2.4〜3.2% と極端に低く、10 年国債 3% の世界では保てない。利回りが 1 ポイント上がるとビルの価値は 3 割近く下がり、LTV は帳簿で 5 割を超える。
スポンサーへの依存
取得は全て森ビルから、オフィス賃料の約 7 割も森ビルとのマスターリース。条件が森ビルの事情に左右される。固定型の更新は 2027 年から 2031 年に集中する。
固定賃料の硬直
固定型マスターリースは更新まで賃料が動かない。物価が 3% で上がる世界では、更新までの間に実質の賃料が目減りする。
売却益の一度きりの性格
分配金はラフォーレ原宿の売却益で支えられている。売却益を除く分配は 2 割ほど少なく、売った土地の賃料は消える。
修繕の費用
建築費は物価より速く上がる。アーク森ビルなど築の古いビルの修繕と更新は 10 年で 1.4 倍以上になり、償却を上回る。足りなければ借入が増える。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- ビルの利回りの上昇は小さく、借り換えの金利も 2.5% 前後にとどまる。中立よりやや楽観に近づき、割高の度合いは縮む。
- 固定型マスターリースの更新で、鑑定並みの賃料まで増額される
- NOI の伸びが利払いの増加を上回り、楽観の筋書きに近づく。
- NAV 割れのまま公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。これまでの方針の転換で、スポンサーの点数を大きく上げる。
- 自己投資口の買い入れを増やす
- NAV との差が縮まり、資本の使い方の評価を上げる。ただし借入で賄うなら金利の重さが増す。
- 格付けが AA を下回る
- 借り換えの上乗せが増え、やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 平均調達金利と固定金利の比率
- 固定型マスターリースの更新条件
- 継続鑑定の利回り(キャップレート)
- 自己投資口の買い入れと NAV との差
- 簿価 LTV
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回りより大幅に高い。NAV 割れ(今は NAV の約 7 割)を割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.80% を足した 8.30%。事業は傾いていないので extra は置かない。