結論
スターツプロシード投資法人は、首都圏と地方主要都市の賃貸住宅を 111 物件、取得価格で 1,038 億円持つ J-REIT だ。スポンサーはスターツコーポレーションで、投資口の 14% を持つ。筆者の結論は、今の値段はやや割安ということである。価値の計算は今の時価総額を 12% 上回る。
強みは賃料の伸びと含み益だ。新規入替え時の賃料は 8.8% 上がり、更新時も 2.6% 上がった。含み益は 246 億円と簿価の 25% に達する。物件は首都圏が 76% を占め、稼働は 97% 前後と高い。
弱みは借入と築年だ。総資産に対する借入比率は 53.6% と高く、鑑定ベースでも 45.2% だ。平均金利は 1.3% から 1.5% へ上がった。平均築年は 19.0 年で、定期借地権の物件も多い。分配には利益超過分配が混じり、純利益だけでは足りない。
投資口は NAV の 7 割で売られる。NAV は清算されない限り手にできないので、筆者は割安の根拠にしない。割安と見る理由は、賃料の伸びが利払いの増加を吸収できる点にある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、賃料が伸びていて、値段は NAV に対し大きく割り引かれている。それでも借入の重さと、築古の借地物件が引っかかる。NAV は、清算されない限り投資主には手に入らない。
今の分配は、利益超過分配が混じる。純利益は年 24 億円ほどで、これが実力だ。借入の平均金利 1.5% が 3.8% へ上がると、年の利払いは 8 億円から 22 億円まで増える。ただ、賃料の伸びで NOI も 10 年で 2 割増え、純利益は今の水準の 9 割ほどを保つ。
救いは、自己投資口を取得してきたことと、スポンサーが 14% を持つことだ。ただ、小さな規模では、増資をしても取得が進みにくい。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 1 割ほど上回る。割安とは言えるが、大きくはない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、賃貸住宅の賃料だ。2026 年 4 月期の半年で賃貸事業収入は 36.6 億円。償却を除く費用を引いた NOI は 27.6 億円だった。年にならすと NOI は 55.2 億円で、簿価 992 億円に対する利回りは 5.6% になる。
物件は 111 あり、首都圏が 76%、政令指定都市と地方主要都市が残りを占める。物件の多くは単身・小家族向けで、東京 10 物件、千葉 8 物件など、この数年の取得も首都圏が中心だ。期中の稼働率は 97.5%、期末は 96.9% だった。
賃貸住宅は 2 年の普通借家で、入れ替わる時に市場の賃料へ合わせ直す。当期は新規の入替えで 8.8% の増額、更新で 2.6% の増額だった。増額が成約する割合は 90.9% と高い。
成長の道具は、スポンサーのスターツグループの開発物件と、一時的に預かってもらう物件の購入、築古の売却だ。当期は取得も譲渡もなく、資産規模は横ばいだった。期末の後に、築古 1 物件の譲渡と新築 1 物件の取得がある。
賃貸住宅の比率は 98% を超え、収益は賃料に集中している。
優良さと弱いところ
物件の質は、住宅 REIT の中で標準的だ。首都圏が 76% を占め、東京 23 区の物件も多い。平均築年は 19.0 年で、定期借地権付きの物件が 5 棟ある。借地の物件は、期限が来ると価値が減る。
強みは三つある。一つめは、賃料の伸びで、新規入替えの増額が 8.8% と前期から 2.3 ポイント上がった。二つめは、含み益が 246 億円と厚いこと。三つめは、2025 年と 2024 年に自己投資口の取得と消却を行い、1 口の価値を守る動きがあることだ。
弱みも三つある。ひとつは、総資産の借入比率が 53.6% と高く、期末の金利を固定した割合は 76.8% から 72.9% へ下がること。ふたつめは、2 年以内に満期の来る借入が 3 割を超えること。みっつめは、運用報酬が NOI の 11% 超で、総資産に連動する形であることだ。
規模が小さく、取得の余地も限られる。資産の入れ替えが、含み益を分配に回す唯一の手段である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
賃貸住宅の需要は、賃金の上昇と首都圏への人口の集中で堅い。新築は建築費の高騰で供給が絞られ、稼働は 97% 前後と高い。新規入替え時の賃料の増額は、前期の 6.5% から 8.8% へ上がった。
住宅は、2 年の更新で賃料が市場に追随する。筆者は、中立で賃料は名目年 2.25% で伸びると見る。物価の 3% に届かないのは、更新時の増額が小さく、築年の進んだ物件で上げ余地が限られるからだ。
10 年国債が 3% の世界では、住宅の期待キャップは 3.75% に上がる。今の鑑定の NCF 利回りは 4.0% で、築古と借地の物件を含むため、中立のキャップは 4.1% と置く。
首都圏の需要は堅いが、築 20 年を超える物件が増えれば、修繕費の負担が重くなる。
賃料の上昇が続く間も、築年が進めば修繕費の負担は着実に増える。借地の物件は、期限が近づくほど売却の値段が下がる点にも注意が要る。
人口の減る地方では、築古の物件の稼働が落ちやすい。今は首都圏が中心なので影響は小さいが、10 年後には比率が変わりうる。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、入れ替えによる含み益の実現と、自己投資口の取得だ。譲渡益は分配に回し、利益超過分配は減価償却費の一部と、借地の物件の償却の差額を原資とする。
増資は、直近 5 年で 2022 年 11 月の公募 1 回のみだ。以後は 2024 年 12 月に自己投資口の取得を決め、2025 年 4 月に 10,062 口を消却した。NAV 割れでの増資はしていない。
借入は 559 億円で、総資産の 53.6%、鑑定ベースで 45.2% だ。金利を固定した割合は 76.8%、平均の残りは 2.6 年である。1 年以内の満期が 100 億円あり、2 年以内では 179 億円になる。格付けは JCR の A で、安定的だ。
報酬は、総資産に連動する運用報酬Ⅰ、利益に連動する運用報酬Ⅱ、取得額の 1.0% の取得報酬、譲渡益の 10% の譲渡報酬からなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料が強い。新規の入替えは 8.8%、更新時は 2.6% 上がり、増額が成約する割合は 90.9% だ。稼働は 97% 前後で、首都圏が 76% を占める。建築費が高く新築が増えにくいことも追い風になる。
含み益は 246 億円と簿価の 25%、NAV は時価総額の 1.4 倍だ。2025 年に 10,062 口を消却し、NAV 割れの増資はしていない。分配の下支えになる利益超過分配は、含み益で賄える。
スポンサーのスターツコーポレーションは 14% を持ち、9 件、141 億円超の物件の取得候補を持つ。買い入れ価格も、鑑定評価額を 3% ほど下回って取得できている。
今の値段は、これらの強みをほとんど織り込んでいない。借り換えの金利が 3.8% で収まれば、NOI の伸びで利払いの増加を吸収できる。
賃料の増額が続けば、重い借入の中でも NOI の伸びが利払いの増加を上回り、分配は少しずつ回復していく。
慎重な見方
借入が重い。総資産に対する借入比率は 53.6% で、鑑定ベースでも 45.2% だ。2 年以内に満期の来る借入が 3 割を超え、平均金利は 1.3% から 1.5% へ上がった。借り換えのたびに利払いが増える。
物件は築 19.0 年と古く、定期借地権の物件が 5 棟ある。修繕費が増え、借地の物件は期限が近づくと価値が減る。利益超過分配が混じり、純利益だけでは分配をまかなえない。
規模が小さく、増資をしても取得が進みにくい。取得はスポンサーのスターツグループの物件に依存し、買う側に選択の余地が少ない。
運用報酬は NOI の 11% 超で、総資産に連動する形のため、規模を追う誘因が働く。賃料の増額が止まれば、重い借入が一気に重荷に変わる。
金利が上がる局面では、借り換えのたびに利払いが膨らみ、賃料の伸びを食いつぶす恐れがある。
含み益があっても、売却の相手が見つからなければ現金に換えられず、借入の返済には使えない。
どちらに重みを置いたか
賃料の強さと値段の安さに強気の言い分がある。ただ、借入の重さ、築古の借地物件、小さな規模という弱みも大きい。中立は今の値段を 1 割ほど上回った。スポンサーの点数は 3 を下回ったので、悲観の確率は 10% に据えた。強気側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、強みが値段に十分入っていないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 329,365 円897 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 79,812 円217 億円)。 今の値に割り戻すと 200,347 円546 億円、今との差 +14.9%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 8.4%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 480,150 円1,308 億円 | 99,481 円271 億円 | +232.5% | +12.8% | 57,963 円158 億円 |
| やや楽観 | 22% | 433,530 円1,181 億円 | 93,607 円255 億円 | +202.4% | +11.7% | 115,970 円316 億円 |
| 中立 | 38% | 353,872 円964 億円 | 84,063 円229 億円 | +151.3% | +9.7% | 166,415 円453 億円 |
| やや悲観 | 20% | 208,138 円567 億円 | 64,607 円176 億円 | +56.5% | +4.6% | 54,549 円149 億円 |
| 悲観 | 10% | 98,746 円269 億円 | 44,050 円120 億円 | −18.1% | −2.0% | 14,280 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 329,365 円897 億円 | 79,812 円217 億円 | +134.8% | +8.9% | 409,177 円1,115 億円 |
今の株価時価総額 174,300 円475 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.4% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3% で伸び、金利も 3.5% 以下 利益 30 億円 · PBR 2.8 倍 · 株価時価総額 480,150 円1,308 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.5% で済む。入替えの増額が続き、賃料は年 3% で上がる。稼働は 97% を保つ。
スポンサーの開発物件の購入が進み、築年は若返る。経費は物価並みに増え、NOI は 10 年で 3 割強伸びる。純利益は今から 25% ほど増える。
物件の利回りは 3.85% まで下がり、物件の価値は鑑定を上回る。借入が重いぶん、物件の価値の上昇は投資主の取り分に大きく効く。
増資をしても、NAV を上回る値段で行われ、1 口の価値は薄まらない。
借入の返済が進み、総資産の借入比率も 50% を割る。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 962(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 99 億円・営業利益 58 億円。稼働 97%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 74 − 資本的支出 7) ÷ キャップ 3.85% − 純負債 440 = 1308 億円。キャップは中立 4.1% から 0.25% 下げた 3.85%(住宅の下限 3.25% には届かない)。
確率:首都圏の賃料も物価並みに上がり、借り換えが 3.5% で済む筋書き。借入が重く築年が進むので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.75% で伸び、借り換えは 3.65% 利益 27 億円 · PBR 2.5 倍 · 株価時価総額 433,530 円1,181 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.65% になる。収入は年 2.75% で伸びる。稼働は 96.5% を保つ。
利払いは年 21 億円ほどまで増えるが、NOI の伸びが吸収し、純利益は今より 1 割ほど増える。利益超過分配は、純利益で賄える範囲にとどまる。資本的支出は年 7 億円に収まる。
物件の利回りは 3.95% に上がる。物件の価値は鑑定をわずかに上回る。投資口が NAV に近づくまで、増資はしない。
借入の返済が進み、総資産の借入比率は 50% を割る方向へ下がっていく。
賃貸住宅の入れ替えは続き、築年の若返りが少しずつ進む。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 958(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.0%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 96 億円・営業利益 56 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 71 − 資本的支出 7) ÷ キャップ 3.95% − 純負債 445 = 1181 億円。キャップは中立 4.1% より 0.15% 低い 3.95%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いが増えるが、賃料の伸びで吸収 利益 22 億円 · PBR 2.1 倍 · 株価時価総額 353,872 円964 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3 年ほどで 3.8% へ借り換わる。年の利払いは今の約 8 億円から 22 億円ほどへ増える。収入は年 2.25% で伸び、稼働は 96% を保つ。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 2 割ほど伸びる。純利益は今の 9 割ほどにとどまる。利益超過分配は、毎期は続けない。
物件の利回りは 4.1% に上がり、物件の価値は鑑定をやや上回る。借入が重く、築年が進むぶん、投資主の取り分は物件の価値の変動に敏感だ。
増資は、投資口が NAV に近づくまで控える見通しだ。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 953(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 91 億円・営業利益 51 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 66 − 資本的支出 8) ÷ キャップ 4.10% − 純負債 460 = 964 億円。キャップは住宅の表 3.75%(要求利回り 5.75% − NOI の伸び 2.0%)に対し、今の鑑定の NCF 利回り 4.0% が高いため決まりで鑑定以上とし、築古と借地の分を見て 4.1%。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、収入は年 2.25% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 金利が高めに落ち着き、賃料が頭打ちになる 利益 11 億円 · PBR 1.2 倍 · 株価時価総額 208,138 円567 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 4.0% になる。入替えの増額が縮み、収入は年 1.25% しか伸びず、稼働は 94% に落ちる。築古の物件で賃料の減額が増える。資本的支出は年 8.5 億円に増える。
利払いは年 23 億円になり、純利益は今の半分に細る。分配は純利益だけになり、利益超過分配は止まる。借入の返済に現金を回し、新しい物件は買えない。
物件の利回りは 4.6% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本を 2 割ほど上回る水準まで縮む。
スポンサーの持ち分は変わらず、増資の余地も小さい。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 933(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.6%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 80 億円・営業利益 41 億円。稼働 94%・賃料 年 +1.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 56 − 資本的支出 8) ÷ キャップ 4.60% − 純負債 470 = 567 億円。キャップは中立 +0.5%。借入が重いので、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:金利が高めに落ち着き、入替えの増額が縮み、築古の稼働が落ちる筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 −5 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 98,746 円269 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.7% になる。不況で入居者が減り、稼働は 90% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまり、築古の物件で空室が増える。NOI は 2 割ほど減る。
利払いは年 27 億円になり、純利益は赤字になる。分配は止まる。資本的支出を絞り、借入の返済に現金を回す。物件の利回りは 4.85% に上がり、物件の価値は鑑定を大きく下回る。
物件の価値から借入を引いた投資主の取り分は、今の自己資本の 6 割ほどに縮む。清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
借地の物件は、期限が近づくほど売りにくくなる。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 893(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.6%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 68 億円・営業利益 29 億円。稼働 90%・賃料 年 +0.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 44 − 資本的支出 6) ÷ キャップ 4.85% − 純負債 500 = 269 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸住宅の賃貸
首都圏と地方主要都市の賃貸住宅 111 物件を、主に単身・小家族向けに 2 年の普通借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 961 | 7.6% | 73 | 41 |
| 10 年後 中立 | 953 | 9.5% | 91 | 51 |
取り方:2026 年 4 月期の半期の賃貸事業収入 36.6 億円(売却益なし)を 2 倍して年額 73.2 億円。簿価 992 億円(信託借地権を含む)× 稼働率 96.9% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 55.2 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 14.3 億円を引いた額。中立の価格が 1.25 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、更新時の増額が小さく、築年の進んだ物件で上げ余地が限られ、転嫁が物価の 5/6 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借入の重さと金利
総資産に対する借入比率は 53.6%、鑑定ベースで 45.2%。2 年以内に満期の来る借入が 3 割を超える。平均金利が 3% 台へ上がると、年の利払いは 8 億円から 22 億円ほどまで増え、純利益を圧迫する。
築古と借地の物件
平均築年は 19.0 年。定期借地権の物件が 5 棟あり、期限が近づくと価値が減る。修繕費が増え、売却の買い手もつきにくくなる。
利益超過分配
分配には毎期 1.1 億円ほどの利益超過分配が混じる。純利益は年 24 億円ほどで、分配の実力はそちらだ。2027 年 4 月期の予想では、1 口の純利益が 2% 減る。
小さな規模
規模は 1,000 億円ほどで、増資をしても取得が進みにくい。取得はスポンサーのスターツグループに依存し、買う側に選択の余地が少ない。
スポンサーの持ち分
スターツコーポレーションの持ち分は 14%。将来にこの持ち分を市場で売れば、投資口の値段は下がる。
運用報酬の重さ
運用報酬は NOI の 11% 超。総資産に連動する報酬と、取得額の 1.0% の取得報酬があり、規模を追う動機が働く。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。今の値段はさらに割安に入る。
- 入替え時の賃料の増額が 5% を割る
- NOI の伸びが物価を下回り、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を下げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得を再開する
- NAV を下回る値段での取得は 1 口の価値を守る。スポンサーの点数を上げる。
- 2 年以内の満期を借り換えて、固定の割合を高める
- 借り換えの金利の上振れに強くなり、k の借金の上乗せが下がる。
見ておくもの
- 新規入替え時と更新時の賃料の増額率
- 借り換えの金利と固定の割合
- 築 20 年超の物件の稼働率
- 利益超過分配の額と純利益の差
- 自己投資口の取得と増資の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは住宅の業種ノートの表に、今の鑑定の NCF 利回り 4.0% と築古の分を加えたもの。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.90% を足した 8.40%。事業は傾いていないので extra は置かない。