結論
大和証券リビング投資法人は、賃貸住宅 3,000 億円とヘルスケア施設 900 億円ほどを持つ J-REIT だ。日本ヘルスケア投資法人が日本賃貸住宅投資法人などと合併して生まれた。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正ということである。価値の計算は今の時価総額を 4% ほど下回る。
強みは含み益と賃料だ。含み益は 1,105 億円と簿価の 3 割に達する。賃貸住宅の入替え時の賃料は 13.2% 上がり、更新時も 4.4% 上がった。会社は、築古とヘルスケアを売って含み益を分配に回し、賃貸住宅を 9 割へ高める戦略を進める。
弱みは借入と分配の質だ。総資産に対する借入比率は 51.1% と高く、金利を固定した割合は 52% にとどまる。今の分配は売却益に支えられ、売却益を除く純利益は年 88 億円ほどである。来期は売却益が減り、予想の純利益は 14% 減る。
投資口は NAV を 3 割ほど下回る。ただ NAV は清算されない限り手にできない。筆者は割安の根拠にしない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、賃貸住宅は持ち続けられるが、ヘルスケアと借入の重さが引っかかる。含み益は厚い。ただ、清算されない限り投資主には手に入らない。
今の分配は売却益に支えられている。売却益を除く純利益は年 88 億円ほどで、予想の来期は売却益が半分に減る。借入の平均金利 1.05% が 3% 台へ上がると、年の利払いは 22 億円から 70 億円まで増える。
救いは、売却益の一部を使って、築浅の賃貸住宅へ入れ替える戦略に筋があることだ。ただ、売却で規模を保つ運営は、買い手がつく相場に頼る。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段をわずかに下回る。割安とは言えない。値段が 1 割下がれば、筆者は買ってよい水準と見る。
含み益は慰めにならず、分配の質と借入の返済の道筋で判断する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、賃貸住宅の賃料と、ヘルスケア施設の固定賃料だ。2026 年 3 月期の半年で賃貸事業収入は 125 億円。償却を除く費用を引いた NOI は 98 億円だった。年にならすと NOI は 195 億円で、簿価 3,803 億円に対する利回りは 5.1% になる。
賃貸住宅は 2,997 億円で、ワンルーム中心に 13,600 戸ある。関東が 6 割、近畿が 26%、東京 23 区は 45% だ。ヘルスケア施設は 944 億円で、有料老人ホームが中心。運営事業者に長期で一括して貸し、賃料は固定である。
賃貸住宅は 2 年の普通借家で、入れ替わる時に市場の賃料へ合わせ直す。当期は入替えで 13.2%、更新で 4.4% の増額だった。ヘルスケアは賃料が固定なので、物価の上昇を収入に反映しにくい。
成長の道具は、物件の入れ替えだ。当期は 17 物件、253 億円を鑑定評価額より 3.4% 高く売り、12 物件、213 億円の新しい物件を買った。売却益の 25 億円は分配に回した。
投資対象の中心は、東京 23 区と大都市圏の賃貸住宅だ。
優良さと弱いところ
物件の質は、住宅 REIT の中で標準的だ。平均築年は賃貸住宅で 14.3 年と若い。ただ築 20 年を超える物件が 3 割ある。東京 23 区は 45% で、近畿や札幌、福岡の物件が 4 割を占める。
強みは三つある。一つめは、含み益が 1,105 億円と厚いこと。二つめは、賃貸住宅の入替え時の賃料の強さだ。三つめは、スポンサーの大和証券グループ本社が 15.9% を持ち、増資の際にも投資口を引き受けて、同じ船に乗っていることである。
弱みも三つある。ひとつは、ヘルスケア施設の賃料が固定で、運営事業者の稼ぐ力に左右され、物価の上昇を転嫁しにくいこと。ふたつめは、総資産の借入比率が 51% と高く、金利を固定した割合が 52% と低いこと。みっつめは、運用報酬が NOI の 11% 超と重いことだ。
分配は売却益で厚く見える。売却益を除く純利益は年 88 億円ほどで、これが実力だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
賃貸住宅の需要は、賃金の上昇と都市への人口の集中で堅い。新築は建築費の高騰で供給が絞られ、稼働は 97% 台と高い。入替え時の賃料の増額は 13% 台まで上がった。
住宅は、2 年の更新で賃料が市場に追随する。筆者は、中立で住宅の賃料は名目年 2.5% と見る。物価の 3% に届かないのは、更新時の増額が小さいからだ。ヘルスケア施設は賃料が固定で、中立は年 0.5% しか伸びないと置く。収入全体では年 2% 前後になる。
ヘルスケアは、高齢化で需要が伸びる一方、運営事業者の賃料負担力が焦点だ。賃料に対する運営事業者の稼ぎは平均 1.5 倍で、入居率は 79% にとどまる。人手不足と人件費の上昇が、事業者の収益を削る。
10 年国債が 3% の世界では、住宅の期待キャップは 3.75%、ヘルスケアは 4.5% に上がる。加重した中立のキャップは 3.9% だ。今の鑑定の利回りは 3.6% 台で、この差が物件の価値を鑑定より下げる。
住宅の供給が絞られる間は賃料の追い風が続くが、その分は金利の上昇で相殺されやすい。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、物件の入れ替えと含み益の顕在化だ。賃貸住宅を 9 割程度に高めるため、ヘルスケア施設と地方の築古を売り、築浅の賃貸住宅を買う。当期の還元は、売却益の分配が中心だった。
増資は、直近 5 年に 2021 年、2022 年、2023 年の 3 回あり、2023 年は NAV を 2 割近く下回る値段だった。2025 年 9 月には、2 万口あまりの自己投資口を消却した。増資の際は、スポンサーが投資口の一定数を引き受ける。
借入は 2,047 億円で、総資産の 51.1%、鑑定ベースで 41.7% だ。金利を固定した割合は 51.7%、平均の残りは 3.6 年である。格付けは JCR の AA、R&I の AA− で、ともに安定的だ。
報酬は、資産評価額の 0.2%、税引前利益の 8%、取得の 1.0〜1.5%、売却の 0.5% からなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃貸住宅の賃料が強い。入替え時は 13.2%、更新時は 4.4% 上がり、稼働は 98% だ。賃料は 2 年で市場に追随するので、物価が上がればその分が収入に早く表れる。建築費が高く新築が増えないことも追い風になる。
含み益は 1,105 億円と厚く、売却は鑑定評価額を 3.4% 上回った。売却益を原資に築浅の賃貸住宅へ入れ替えれば、築年が若返り、内部成長が高まる。
スポンサーの大和証券グループ本社は 15.9% を持ち、増資にも応じる。2025 年には自己投資口を消却した。NAV に対し 3 割の割引は大きい。
格付けは AA と AA− で、借入先は分散している。
売却で得た資金を築浅の住宅に回せるため、分配の質も高まっていく。
分配の下支えとして、含み益の実現が毎期使える点も大きい。
住宅の需給は引き締まったままで、賃料の増額が続けば、金利の上昇分を NOI の伸びで吸収できる余地もある。
慎重な見方
借入が重い。総資産に対する借入比率は 51.1% で、鑑定ベースでも 41.7% だ。金利を固定した割合は 52% にとどまる。借入の平均金利は 3% 台への借り換えで大きく上がり、純利益の 3 割近くが消える。
分配は見かけより厚い。売却益 25 億円が混じる。来期の予想では純利益が 14% 減る。売却益は相場が悪くなれば出ない。
ヘルスケア施設は賃料が固定で、物価を転嫁できない。運営事業者の入居率は 79% で、賃料負担力は 1.5 倍とぎりぎりだ。
運用報酬は NOI の 11% 超と重く、資産評価額に連動する部分と取得報酬がある。規模を追う誘因が働きやすい。
スポンサーの持ち分が厚くても、NAV 割れの増資が続けば 1 口の価値は薄まる。
借り換えの金利が想定より 0.5 ポイント上がるだけで、利払いは 10 億円超増える。
売却に頼る入れ替えは、買い手の資金繰りが悪化する局面では止まり、含み益も絵に描いた餅になる。
どちらに重みを置いたか
賃貸住宅の強さと含み益に強気の言い分がある。ただ、借入の重さ、売却益に頼る分配、ヘルスケアの固定賃料という弱みも大きい。中立は今の値段を 1 割ほど下回った。スポンサーの点数は 3 を下回ったので、悲観の確率は 10% に据えた。強気側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、強みと弱みが値段にほぼ入っていると見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 140,245 円3,346 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 30,975 円739 億円)。 今の値に割り戻すと 80,721 円1,926 億円、今との差 −2.3%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 213,617 円5,097 億円 | 40,024 円955 億円 | +207.1% | +11.9% | 25,364 円605 億円 |
| やや楽観 | 22% | 180,969 円4,318 億円 | 36,085 円861 億円 | +162.8% | +10.1% | 47,752 円1,139 億円 |
| 中立 | 38% | 148,698 円3,548 億円 | 32,355 円772 億円 | +119.2% | +8.2% | 68,800 円1,642 億円 |
| やや悲観 | 20% | 86,713 円2,069 億円 | 24,476 円584 億円 | +34.6% | +3.0% | 22,238 円531 億円 |
| 悲観 | 10% | 52,220 円1,246 億円 | 18,441 円440 億円 | −14.5% | −1.5% | 7,066 円169 億円 |
| 加重平均 | 100% | 140,245 円3,346 億円 | 30,975 円739 億円 | +107.3% | +7.6% | 171,220 円4,085 億円 |
今の株価時価総額 82,600 円1,971 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3% で伸び、金利も 3% 以下 利益 103 億円 · PBR 2.7 倍 · 株価時価総額 213,617 円5,097 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.1% で済む。住宅は入替えの増額が続いて年 3.5% で上がり、固定賃料のヘルスケアと合わせた収入は年 3% で伸びる。稼働は 97.5% を保つ。
ヘルスケアの売却は進み、賃貸住宅が 9 割に近づく。経費は物価並みに増え、NOI は 10 年で 3 割強伸びる。
物件の利回りは 3.55% まで下がり、物件の価値は鑑定に近づく。借入が重いぶん、物件の価値の上昇は投資主の取り分に大きく効く。
スポンサーが増資に応じやすい環境で、取得も再開する。
- 賃貸住宅・ヘルスケア施設の賃貸:数量 3,708(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.1%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。住宅は物価の転嫁、ヘルスケアは固定賃料を合わせた伸び)→ 売上 337 億円・営業利益 206 億円。稼働 98%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 262 − 資本的支出 25) ÷ キャップ 3.55% − 純負債 1590 = 5097 億円。キャップは加重した中立 3.9% から 0.35% 下げた 3.55%(住宅の下限 3.25% には届かない)。
確率:住宅の入替えの増額が続き、金利も 3% 以下で収まる筋書き。ヘルスケアが固定賃料で伸びが限られ、借入も重いので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.25% 利益 84 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 180,969 円4,318 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.25% になる。収入は年 2.5% で伸びる。稼働は 97% を保つ。
利払いは大きく増えるが、純利益は今の 95% ほどを保つ。売却益による還元は終わり、分配は純利益の水準になる。資本的支出は年 26 億円に収まる。
物件の利回りは 3.7% に上がる。物件の価値は鑑定をやや下回る。投資口が NAV に近づくまで、増資はしない。
物件の入れ替えは続き、築年の若返りが少しずつ進む。
賃貸住宅の比率は 8 割台後半まで上がり、収入の質が少し改善する。
借入の返済が進み、総資産の借入比率も 50% を割る方向へ下がっていく。
- 賃貸住宅・ヘルスケア施設の賃貸:数量 3,689(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.6%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。住宅は物価の転嫁、ヘルスケアは固定賃料を合わせた伸び)→ 売上 319 億円・営業利益 189 億円。稼働 97%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 245 − 資本的支出 26) ÷ キャップ 3.70% − 純負債 1595 = 4318 億円。キャップは加重した中立 3.9% より 0.2% 低い 3.7%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 66 億円 · PBR 1.9 倍 · 株価時価総額 148,698 円3,548 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3〜4 年のうちに 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の約 22 億円から 74 億円へ増える。収入は年 2% で伸び、稼働は 96.5% を保つ。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 17% ほど伸びる。分配は売却益の還元が終わって、純利益の水準まで下がる。
物件の利回りは 3.9% に上がり、物件の価値は鑑定より低い。借入が重く、固定賃料のヘルスケアが物価を転嫁できないぶん、投資主の取り分は物件の価値の変動に敏感だ。
増資は、投資口が NAV に近づくまで控える見通しだ。
- 賃貸住宅・ヘルスケア施設の賃貸:数量 3,670(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。住宅は物価の転嫁、ヘルスケアは固定賃料を合わせた伸び)→ 売上 302 億円・営業利益 173 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 228 − 資本的支出 27) ÷ キャップ 3.90% − 純負債 1605 = 3548 億円。キャップは住宅 3.75%(要求利回り 5.75% − NOI の伸び 2.0%)とヘルスケア 4.5% を NOI の比(84 対 16)で加重した 3.9%。今の鑑定の利回り約 3.6% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、収入は年 2% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 金利が高めに落ち着き、賃料が頭打ちになる 利益 29 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 86,713 円2,069 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.65% になる。入替えの増額が縮み、収入は年 1% しか伸びず、稼働は 94% に落ちる。ヘルスケアの運営事業者の一部が賃料の減額を求める。築が進み、資本的支出は年 30 億円に増える。
利払いは年 79 億円になり、純利益は今の 3 分の 1 に細る。分配は純利益だけになり、大きく下がる。借入の返済に現金を回し、新しい物件は買えない。
物件の利回りは 4.4% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本を 1 割ほど上回る水準まで縮む。
スポンサーの持ち分は変わらず、増資の余地も小さい。
- 賃貸住宅・ヘルスケア施設の賃貸:数量 3,575(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。住宅は物価の転嫁、ヘルスケアは固定賃料を合わせた伸び)→ 売上 267 億円・営業利益 139 億円。稼働 94%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 192 − 資本的支出 30) ÷ キャップ 4.40% − 純負債 1625 = 2069 億円。キャップは中立 +0.5%。借入が重いので、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:金利が高めに落ち着き、入替えの増額が縮み、ヘルスケアの事業者が苦しむ筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 −13 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 52,220 円1,246 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.3% になる。不況で入居者が減り、稼働は 90% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまり、ヘルスケアの運営事業者は賃料の減額を求める。
利払いは年 92 億円になり、純利益は赤字になる。分配は止まる。資本的支出を絞り、借入の返済に現金を回す。物件の利回りは 4.65% に上がり、物件の価値は鑑定を大きく下回り、NOI は 2 割弱減る。
物件の価値から借入を引いた投資主の取り分は、今の自己資本の 3 分の 2 に縮む。清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
- 賃貸住宅・ヘルスケア施設の賃貸:数量 3,422(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。住宅は物価の転嫁、ヘルスケアは固定賃料を合わせた伸び)→ 売上 231 億円・営業利益 108 億円。稼働 90%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 160 − 資本的支出 24) ÷ キャップ 4.65% − 純負債 1690 = 1246 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸住宅・ヘルスケア施設の賃貸
賃貸住宅(約 13,600 戸)と有料老人ホームなどのヘルスケア施設を、住宅は 2 年の普通借家、ヘルスケアは運営事業者への長期固定賃料で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。住宅は物価の転嫁、ヘルスケアは固定賃料を合わせた伸び | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,711 | 6.8% | 251 | 143 |
| 10 年後 中立 | 3,670 | 8.2% | 302 | 173 |
取り方:2026 年 3 月期の半期の賃貸事業収入 125.3 億円(売却益を除く)を 2 倍して年額 250.7 億円。簿価 3,803 億円 × 稼働率 97.6% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 195.5 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 52.2 億円を引いた額。中立の賃料の伸びは、住宅年 2.5%(収入の約 8 割)とヘルスケア年 0.5%(固定賃料、約 2 割)を合わせて年 2.0% と置いたため、10 年で 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かない。
リスクと懸念
借入の重さと金利
総資産に対する借入比率は 51.1%、鑑定ベースで 41.7%。金利を固定した割合は 51.7% と低い。平均金利が 3% 台へ上がると、年の利払いは 22 億円から 70 億円ほどまで増え、純利益の 3 割近くが消える。
売却益に頼る分配
2026 年 3 月期は売却益 25 億円が混じり、売却益を除く純利益は年 88 億円ほど。来期の予想は、売却益の減少で純利益が 14% 減る。売却は相場が悪ければ進まない。
ヘルスケアの固定賃料
ヘルスケア施設は 944 億円で賃料が固定。物価を転嫁できない。運営事業者の入居率は 79%、賃料に対する稼ぎは平均 1.5 倍で、人件費が上がると賃料の減額を求められる。
NAV 割れの増資
直近 5 年に増資を 3 回行い、2023 年は NAV の 8 割台の値段だった。再び NAV を下回る値段で増資すれば、1 口の価値が薄まる。
住宅の利回りの上昇
今の鑑定の NCF 利回りは 3.6% 台と低く、10 年国債 3% との差が小さい。利回りが 1 ポイント上がると、物件の価値は 2 割強下がる。
運用報酬の重さ
運用報酬は NOI の 11% 超。資産評価額の 0.2% に連動する部分と、取得時の 1.0〜1.5% の報酬があり、規模を追う動機が働く。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。今の値段は割安の側に入る。
- 入替え時の賃料の増額が 10% を割る
- NOI の伸びが物価を下回り、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで再び公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を下げ、悲観の確率を上げる。
- ヘルスケア施設の売却が鑑定評価額を上回って進む
- 含み益の顕在化と賃貸住宅への集中が進み、中立の見立てを少し引き上げる。
- 金利を固定した割合を 7 割に高める
- 借り換えの金利の上振れに強くなり、k の借金の上乗せが下がる。
見ておくもの
- 入替え時と更新時の賃料の増額率
- 金利を固定した割合と借り換えの金利
- ヘルスケアの売却の値段と進み具合
- 運営事業者の入居率と賃料負担力
- NAV に対する増資の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは住宅とヘルスケアの業種ノートの表を NOI の比で加重したもので、今の鑑定の利回り 3.6% 台より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.29% を足した 8.79%。事業は傾いていないので extra は置かない。