結論
東海道リートは、静岡を中心に愛知・三重・滋賀など東海道沿いの住宅、工場、物流施設、底地を 34 物件、取得価格で 742 億円持つ REIT だ。静岡の建設会社ヨシコンがメインスポンサーにつく。筆者の結論は、今の値段は適正の範囲にあるということだ。価値の計算は今の値段を 5% ほど下回るが、誤差の内にある。
よい所は、物件の値付けが高い利回りの所にあることだ。地方の物件を中心に持つので、今の鑑定の NCF 利回りは 4.6% ある。10 年金利が 3% の世界になっても、物件の価値は鑑定から大きく崩れない。
弱いのは借入の形だ。金利を固定した借入は 6.6% しかなく、残りの期間は 1.6 年と短い。金利の上昇は、ほぼそのまま利払いに出る。10 年後の年の利払いは今の 8 億円から 18 億円に増え、純利益は今の 8 割ほどになる。今の値段は、この利払いの増加をおおむね織り込んでいると筆者は見る。安くも高くもない値段だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この REIT は値段なりの中身を持つ。物件は地方にあるが、利回りの高い値段で買っている。工場の近くの住宅と物流は、地域の製造業が続く限り需要がある。スポンサーも買い増しを続け、投資主と同じ側に立つ。
気になるのは借入だ。固定の比率が 6.6% しかなく、金利の上昇がすぐに利払いに出る。10 年後の利払いは今の 2 倍を超え、純利益は今の 20 億円から 17 億円ほどに減る。毎年の公募で NAV を下回る値段の増資を続けてきたのも、評価を下げる点だ。
今の値段は、こうした弱みをおおむね織り込んでいる。安全域と呼べる割引はないが、割高でもない。
筆者が評価を上げるのは、借入の固定化が低い金利のうちに進んだ時と、NAV を上回る値段で増資ができた時だ。合併の話が具体的になれば、その条件も見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、地方の産業地域の住宅と、工場・物流施設の賃料だ。2026 年 2 月の公募で 5 物件を買い、資産規模は上場時の 2.5 倍の 747 億円になった。会社の予想から売却益を除くと、年の NOI は 43 億円ほどになる。
物件は帳簿の額で 6 割が住宅などの生活インフラ、4 割弱が工場・物流・底地などの産業インフラだ。住宅は名古屋・静岡・豊橋・草薙などのファミリー向けと単身向けで、ヨシコンが開発した「エンブル」の名の物件が多い。産業インフラは、いなべや松阪、セントレアの物流施設、四日市のオフィス、工場の底地などだ。2026 年には静岡の駅前のホテルも買った。
借り手は、地域の製造業とその社員が中心になる。東海道は製造業で働く人の比率が高く、工場の近くの住宅と物流には根強い需要がある。期末の稼働率は 98.2% で、住宅は 99% を超える。
借入は 392.5 億円で、地方銀行を含む多くの銀行から借りる。平均の金利は 1.98% と、J-REIT の中では高い。それでも変動金利が大半で、これからさらに上がる。
優良さと弱いところ
物件の質は J-REIT の中で下の方だが、値段は質に見合っている。物件はすべて地方にあり、取引の相手も地域の会社が多い。それでも、取得の値段が低いので、帳簿に対する NOI の利回りは 5.5% ある。
強みは二つある。一つめは、地域に根差したスポンサー群だ。ヨシコンをはじめ 10 社のスポンサーが、地元の物件の情報を持ち込む。二つめは、スポンサーの姿勢だ。ヨシコンは 6.6% を持ち、2026 年 9 月にはさらに 9.9 億円まで買い増すと伝えてきた。投資主と同じ船に乗る形を強めている。
弱みは三つある。ひとつは借入の形で、固定の比率が 6.6%、残りの期間が 1.6 年しかない。ふたつめは、増資の値段だ。2025 年と 2026 年の公募は、どちらも 1 口の NAV を下回った。みっつめは、地方の人口の減少だ。住宅の需要は産業に支えられているが、10 年で少しずつ細る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東海道の産業地域は、自動車や機械の工場が集まる日本の製造業の中心だ。工場の近くでは、社員向けの住宅と、部品や製品を運ぶ物流施設に根強い需要がある。地方でも人口の減り方は全国より緩い。
住宅の賃料は、2 年の更新と入替で物価に追いつく。ただ地方では、首都圏ほど賃料を上げにくい。筆者は、この REIT の住宅の賃料は中立で年 2% 伸びると見る。工場や物流、底地は長期の契約が多く、賃料は年 1.25% ほどしか伸びない。用途を混ぜると、賃料の伸びは年 1.7% になる。費用は物価で年 3% 増えるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
金利の 10 年は、物件の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、地方の住宅の期待キャップは 4.0%、地方の工場・物流は 4.5% ほどで、用途を混ぜると 4.25% になる。この REIT の今の鑑定の NCF 利回りは 4.6% で、すでにそれを上回る。地方の物件を高い利回りで買ってきた分、金利の上昇の影響は小さい。
地方の不動産の取引は、首都圏より買い手が少ない。物件を売る時の値段は、鑑定を下回りやすい。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、毎年 2 月の公募増資と物件の取得だ。2023 年から 2026 年まで 4 年続けて公募をし、資産規模を上場時の 2.5 倍にした。ただ 2025 年は NAV の 9 割弱、2026 年は 95% の値段で、既存の投資主の取り分を薄めた。
2026 年 9 月には規約を変え、合併の報酬の規定を新しく設ける案を出した。合併を決めたわけではないが、規模の小さい REIT が合併で生き残りを図る動きは業界で増えている。
借入は総資産の 48% で、上限の 50% に近い。会社は金利の固定化と借入の長期化を進める方針だが、今から固定にすれば高い金利を長く払う。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
物件の値付けに無理がない。今の鑑定の NCF 利回りは 4.6% で、10 年金利が 3% の世界の期待キャップを上回る。都心の REIT は利回り 3% 台の鑑定で物件を抱え、金利の上昇で価値が 2 割削られる。この REIT は、その下げをほとんど受けない。
東海道の製造業は強く、工場の近くの住宅と物流には根強い需要がある。住宅の稼働は 99% を超え、入替のたびに賃料が上がる。ヨシコンは 6.6% を持ち、さらに 9.9 億円まで買い増す。スポンサーが自分のお金で投資口を買うのは、値段が安いと見ているからだ。
合併の報酬の規定を設けたことも、選択肢を広げる。規模の大きい REIT との合併なら、借入の条件が良くなり、投資口の値段が NAV に近づく道が開ける。NAV を 2 割下回る今の値段は、その上振れを見ていない。会社の予想で分配が減るのも、金利の上昇が一巡するまでの話で、賃料の改定が追いつけば戻る。
慎重な見方
借入の形が危うい。金利を固定した借入は 6.6% しかなく、残りの期間は 1.6 年だ。金利の上昇がそのまま利払いに出る。会社の予想でも、次の 2 期で分配は 1 割減る。格付けは A- で、借り換えの上乗せも大きい。
毎年の公募は、規模を追う増資だ。2025 年は NAV の 9 割弱、2026 年は 95% の値段で口数を増やした。資産規模が増えるほど、規模に連動する運用報酬は増える。投資主の取り分は、そのたびに薄まった。
物件は地方にあり、買い手が少ない。いざ売る時の値段は、鑑定を大きく下回りうる。住宅の需要を支える工場が海外に移れば、住宅も物流も空室が出る。合併の報酬の規定は、スポンサーと運用会社の取り分を先に決めるもので、投資主のためとは限らない。変動金利の借入と地方の物件という組み合わせは、金利の上昇と景気の悪化が同時に来た時に最も弱い。その時、分配と物件の価値が一緒に落ちる。
どちらに重みを置いたか
物件の利回りの高さという強気の見方の論点と、変動金利と NAV 割れの公募という慎重な見方の論点は、どちらも数字で裏付けられる。二つは打ち消し合い、中立を最も厚く置いた。スポンサーの点数が 3 を超えるので悲観に 15% を置き、確率は中立を軸にわずかに悲観側へ寄せた。合併が具体的になれば、確率の置き方を見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 128,244 円495 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 46,162 円178 億円)。 今の値に割り戻すと 83,041 円320 億円、今との差 −3.4%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 9.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 199,264 円769 億円 | 56,488 円218 億円 | +197.4% | +11.5% | 20,460 円79 億円 |
| やや楽観 | 20% | 166,096 円641 億円 | 52,861 円204 億円 | +154.6% | +9.8% | 43,791 円169 億円 |
| 中立 | 37% | 139,925 円540 億円 | 48,715 円188 億円 | +119.3% | +8.2% | 69,797 円269 億円 |
| やや悲観 | 20% | 97,688 円377 億円 | 40,941 円158 億円 | +61.2% | +4.9% | 27,726 円107 億円 |
| 悲観 | 15% | 51,824 円200 億円 | 32,390 円125 億円 | −2.1% | −0.2% | 12,632 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 128,244 円495 億円 | 46,162 円178 億円 | +102.8% | +7.3% | 174,406 円673 億円 |
今の株価時価総額 86,000 円332 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 製造業が強く、住宅の賃料が物価に近く伸びる 利益 23 億円 · PBR 1.9 倍 · 株価時価総額 199,264 円769 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.6% で済む。東海道の製造業は国内回帰で工場を増やし、社員向けの住宅と物流の需要が強まる。住宅の賃料は年 2.5% 強、賃料全体は年 2.3% で伸び、稼働は 98.5% を保つ。
地方の物件にも買い手が増え、物件の利回りは 4.2% に下がる。NAV を上回る値段で増資ができるようになり、1 口の分配も増える。
利払いは今の 2 倍に増えるが、賃料の伸びがそれを埋め、純利益は今を少し上回る。物件の価値は鑑定を上回り、投資主の取り分は大きく増える。
- 複合(住宅・工場・物流・底地)の賃貸:数量 764(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.3%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 70 億円・営業利益 45 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.3%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 53 − 資本的支出 6) ÷ キャップ 4.20% − 純負債 360 = 769 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.61% より低く、用途の下限を混ぜた 3.4% より高い。
確率:東海道の製造業が国内回帰で強まり、住宅と物流の賃料が上がる筋書き。借入の弱さから上振れは限られ 8%。
やや楽観 20% 借入の固定化が進み、賃料が年 2% で伸びる 利益 20 億円 · PBR 1.6 倍 · 株価時価総額 166,096 円641 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借り換えは 3.8% になる。借入の固定化と長期化が早めに進み、利払いの見通しが立つ。住宅の賃料は年 2.5%、工場と物流は年 1.5% ほどで、賃料全体は年 2% で伸びる。稼働は 98% を保つ。
経費は年 3% で増え、NOI は 10 年で 18% 伸びる。利払いは 17 億円に増え、純利益は今とほぼ同じになる。
物件の利回りは 4.45% で、今の鑑定をやや下回る。物件の価値は鑑定並みを保ち、スポンサーの買い増しも続く。投資口の値段は NAV に近づいていく。
- 複合(住宅・工場・物流・底地)の賃貸:数量 760(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.9%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.3%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 68 億円・営業利益 43 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 50 − 資本的支出 6) ÷ キャップ 4.45% − 純負債 364 = 641 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.61% より少し低い。
確率:借入の固定化が早く進み、住宅の賃料が想定より強い筋書き。20% とした。
中立 37% 変動金利の利払いで純利益が 2 割弱細り、利回りは今の鑑定並み 利益 17 億円 · PBR 1.3 倍 · 株価時価総額 139,925 円540 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 1〜2 年のうちに 4.0% へ借り換わる。変動金利の借入が多いので、利払いは早く増え、年 8 億円から 18 億円になる。賃料は住宅が年 2%、工場と物流が年 1.25% で伸び、稼働は 97.5% へ少し下がる。
経費は年 3% で増え、NOI は 10 年で 12% 伸びる。純利益は今の 20 億円から 17 億円ほどに減り、分配も同じだけ細る。
物件の利回りは 4.65% で、今の鑑定とほぼ同じだ。物件の価値は鑑定並みを保つ。増資は NAV を下回る間は控え、規模は今のまま据え置く。
- 複合(住宅・工場・物流・底地)の賃貸:数量 756(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.3%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 66 億円・営業利益 40 億円。稼働 98%・賃料 年 +1.7%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 48 − 資本的支出 6) ÷ キャップ 4.65% − 純負債 368 = 540 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.61% に合わせた 4.65%。用途の表を NOI の比で加重した 4.25%(地方の住宅 57%×4.0%、工場・物流 40%×4.5%、ホテル 3%×5.0%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利 3% に落ち着き、賃料が年 1.7% で伸びる筋書き。最もありうるので 37%。
やや悲観 20% 工場の縮小で産業インフラの賃料が止まる 利益 11 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 97,688 円377 億円
10 年金利は 3% を少し上回り、A- の借り換えは 4.3% になる。製造業の海外移転で一部の工場が縮み、物流と工場の賃料は止まる。住宅の需要も地域で少しずつ細り、稼働は 96% に下がる。賃料全体は年 1% しか伸びない。
経費は年 3% で増え、NOI は今とほぼ同じだ。利払いは 19 億円に増え、純利益は今の半分ほどになる。
物件の利回りは 4.95% に上がり、物件の価値は鑑定を 1 割ほど下回る。分配が細り、毎年の公募も止まる。規模に連動する報酬も伸びず、スポンサーの関心が薄れる。
- 複合(住宅・工場・物流・底地)の賃貸:数量 745(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.1%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.3%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 60 億円・営業利益 35 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 43 − 資本的支出 6) ÷ キャップ 4.95% − 純負債 372 = 377 億円。キャップは中立 +0.3%。
確率:製造業の海外移転で工場の需要が細り、借り換えの上乗せが大きい筋書き。20% とした。
悲観 15% 金利の上振れと地域の産業の縮みで、分配がほぼ消える 利益 5 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 51,824 円200 億円
金利が上振れし、借り換えは 4.7% になる。変動金利の借入が多く、利払いは早く膨らむ。景気が崩れ、東海道の工場で生産の縮小と撤退が重なる。物流の空室が増え、住宅も社員の減少で稼働が落ちる。稼働は 93% まで下がり、賃料は 10 年で伸びない。
NOI は今より 1 割強減り、利払いが純利益のほとんどを食う。分配は今の 2 割ほどに細り、物件を売って借入を返す。
地方の物件は買い手が少なく、物件の利回りは 5.6% に上がる。物件の価値は鑑定を 2 割強下回る。それでも鑑定の利回りが高かった分、物件の価値は純負債を上回り、投資主の取り分は残る。
- 複合(住宅・工場・物流・底地)の賃貸:数量 721(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.3%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 54 億円・営業利益 30 億円。稼働 93%・賃料 年 +0.2%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 37 − 資本的支出 5) ÷ キャップ 5.60% − 純負債 378 = 200 億円。キャップは中立 +0.95%。地方の物件は売りの局面で買い手が少なく、都心より上げ幅を大きく置いた。
確率:スポンサーの点数が 3.4 で 3 以上(+5 ポイント)。借入の 9 割超が変動金利なので 15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
複合(住宅・工場・物流・底地)の賃貸
静岡・愛知・三重・滋賀など東海道の住宅、工場・物流施設、底地、ホテルなど 34 物件を、地域の製造業とその社員などに貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.3%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 762 | 7.3% | 56 | 36 |
| 10 年後 中立 | 756 | 8.7% | 66 | 40 |
取り方:2026 年 2〜4 月の取得で直近の半期 ×2 では 1 年分にならないため、会社の予想(2027 年 1 月期と 7 月期)の賃貸事業収入を合計し、売却益と匿名組合の配当を除いた年 55.9 億円を今の値とした(筆者の推定)。新物件の固定資産税は 2027 年 7 月期から費用になるので、2027 年 1 月期の分も足して費用をならした。帳簿価額 775.7 億円 × 期末の稼働率 98.2% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は年 42.9 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 7.2 億円を引いた額。中立の賃料の伸びは年 1.7%(住宅 57%×2.0%、工場・物流・底地 40%×1.25%、ホテル 3%×2.0%)で、価格は 10 年で 1.18 倍と物価の 1.34 倍に届かない。地方の住宅は首都圏ほど賃料を上げにくく、工場と底地は長期の固定賃料のため(業種ノート)。
リスクと懸念
変動金利の借入
金利を固定した借入は 6.6% しかなく、残りの期間は 1.6 年。金利の上昇がそのまま利払いに出る。10 年後の年の利払いは今の 8 億円から 18 億円ほどに増え、純利益を 2 割弱削る。
NAV を下回る公募の続き
2023 年から毎年 2 月に公募をし、2025 年と 2026 年は NAV を下回る値段だった。規模を追う増資が続けば、1 口の価値は薄まる。
地域の製造業への依存
物件はすべて東海道の地方にあり、需要は地域の製造業に支えられる。工場の海外移転や縮小が続けば、住宅も物流も空室が増える。
地方の物件の売りにくさ
地方の不動産は買い手が少なく、売る値段は鑑定を下回りやすい。借入を返すために物件を売る局面では、損失が出やすい。
今後の分かれ目
- 借入の固定化と長期化が低い金利のうちに進む
- 利払いの見通しが立ち、価値は上に振れる。
- 規模の大きい REIT との合併が発表される
- 借入の条件と投資口の値段の改善が見込める。合併の比率と報酬を見て評価し直す。
- NAV を上回る値段で公募ができる
- 1 口の価値が増え、スポンサーの点数を下げる。
- 東海道の大きな工場の撤退が続く
- 物流と住宅の需要が細り、悲観側の確率を上げる。
- 短期金利が 2% を超えて上がる
- 変動金利の利払いが早く増え、やや悲観に寄る。
見ておくもの
- 金利の固定化の比率と借入の残りの期間
- 1 口当たり分配金の会社予想
- ヨシコンの投資口の買い増しの結果
- 住宅の入替・更新の賃料の上げ幅
- 合併の報酬の規定と再編の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップで割り、負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を加重した 4.25% と今の鑑定の NCF 利回り 4.61% の高い方で 4.65%。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は変わらない。
資本コスト 9.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.68% を足した 9.18%。事業は傾いていないので extra は置かない。