結論
霞ヶ関ホテルリート投資法人は、2025 年 8 月に上場した、ホテル特化の J-REIT だ。保有は築浅の 15 ホテルで、取得価格は 492 億円、鑑定評価額は 555 億円。スポンサーは開発会社の霞ヶ関キャピタルである。筆者の結論は、今の値段はやや割高ということだ。価値の計算は、今の時価総額を 11% ほど下回る。
強みは、築年の浅さと、含み益、変動賃料の伸びにある。鑑定評価額は簿価を 61 億円上回り、今の値段は NAV の 8 割にある。大規模な改修は当面かからず、稼ぎの多くが分配に回る。
弱みは三つある。ひとつは、15 ホテルすべての賃借人が、スポンサーグループの運営会社であること。ふたつめは、石垣島の 1 ホテルが取得価格の 38% を占め、九州・沖縄に偏ること。みっつめは、稼ぎが決算 2 期分しかなく、固定賃料の期間が終わったあとの賃料が見えないことだ。
スポンサーは開発した物件を投資法人に売る立場で、投資口の保有は上位 10 位に入らない。借入の平均金利は 1.80% と低く、2029 年 1 月期に約 95 億円の満期が来る。
上場後の資料が少なく、年換算の数字は筆者の推定を含む。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、築浅のホテルは設備の傷みが少なく、当面は現金が残りやすい。しかし、稼ぎは決算 2 期分で、運営会社が 1 社に偏る。堀というより、スポンサーとの関係で成り立つ事業だ。
過去 1 年の分配は、今の値段に対し 6.5% ほどの利回りだ。借入の平均金利は 1.80% と低く、これが分配を支えている。借り換えが 3.8% 前後に進むと、年の利払いは 5 億円から 10 億円に増える。
スポンサーは、開発した宿を投資法人に売ることで資金を回収する。投資法人は、その物件の買い手であり、賃料の払い手もスポンサー系だ。値段と賃料の両方がスポンサーの都合に左右される構造だ。
NAV は物件の鑑定が高い今の姿で、清算されない限り投資主の手には入らない。今の値段は NAV の 8 割だが、筆者は割安の根拠にしない。
10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 11% ほど下回る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ホテルの賃料だ。投資法人が持つのは建物と土地で、運営会社に貸して賃料を受け取る。15 物件の賃借人は、すべて fav hospitality group(2026 年 9 月に FHG hotels に社名変更)で、スポンサーの霞ヶ関キャピタルの子会社群にあたる。
賃料は二つの形に分かれる。糸島・長崎・石垣・鹿児島天文館の 4 ホテルは、開業から日が浅いため、2027 年 8 月までの固定賃料期間を置く。残る 11 ホテルは、ホテルの利益に連動する変動賃料で、最低保証賃料が付く。2027 年 1 月期の予想は、固定(最低保証を含む)が 12.8 億円、変動が 4.6 億円だ。
物件は全国に散らばる。九州が 5 物件で総資産の 31%、沖縄の seven x seven 石垣が 36% を占める。ほかは高松・飛騨高山・伊勢・広島・函館・東京の宿泊特化型で、多人数で泊まれる客室が特徴だ。
2026 年 7 月期の営業収益は 16.6 億円、営業利益は 11.1 億円、当期純利益は 8.4 億円。過去の稼ぎは決算 2 期分で、1 期目は取得後の 171 日しかない。2 期を年に直した賃貸収入は 34 億円、NOI(賃料から費用を引いた稼ぎ)は 30 億円で、簿価 494 億円に対する利回りは 6.0% になる(筆者の推定を含む)。
優良さと弱いところ
物件の質は、築年が浅いことが最大の強みだ。2020〜2023 年に開業した宿が中心で、設備の傷みが少なく、2026 年 7 月期の資本的支出は 0.4 億円にとどまる。鑑定評価の還元利回りは、東京の 2 物件が 4% 台前半、地方は 4.7〜5.1% だ。
運営は省人化に特徴がある。フロントと飲食を兼務し、客室あたりの宿泊人数は 3.2 人と多い。ホテルの粗利益に当たる GOP 比率は 54% で、変動賃料の元手になる。
弱みは三つある。ひとつは、賃借人がすべてスポンサー系の 1 社であること。ふたつめは、石垣島のホテルが取得価格の 38% を占め、1 物件の振れが大きいこと。みっつめは、開業から 2〜3 年の宿が多く、安定した稼ぎの水準が実績で確かめられていないことだ。
RevPAR(客室 1 室あたりの売上)は、変動賃料の 11 物件で過去 1 年に 14% 上がったが、開業後の伸びが混じる。今の稼ぎをそのまま中立に置かず、固定賃料が終わったあとの賃料は、確かな資料が無いため、筆者が保守的に見積もった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホテルは、訪日客と国内の宿泊の両方で稼ぐ。2025 年の訪日客は過去最高の 4,268 万人で、政府は 2030 年に 6,000 万人を目標にしている。2026 年 1〜6 月は中国客が減り、全体は前年を 2% 下回った。一方で、韓国と台湾の客は大きく増えた。
この投資法人の物件では、2026 年 1〜6 月のインバウンドの宿泊日数が前年同期比で 35% 増えた。地方の観光地は、政府が訪日客の分散を進める後押しも受ける。
ただし、開業直後の宿の KPI は、開業から数年は大きく伸びる。その伸びが落ち着くと、変動賃料の増え方も鈍る。人手不足と人件費の上昇も重い。運営会社の利益が削られると、利益に連動する変動賃料が先に減る。
新しいホテルの開業は地方でも続く。スポンサー自身も 22 の宿を開業し、さらに多くを計画しており、供給が増える側でもある。
業種の表では、ホテルの NOI は名目年 2.25% で伸び、期待キャップは 5.0%、下限は 4.0% だ。ここでは固定賃料が 7 割強あり、変動賃料の伸びは開業効果が落ちるので、賃料の伸びは中立で年 2.0% とやや低く置いた。
資本政策と M&A
借入は 226 億円で、有利子負債を鑑定評価額で割った比率は 41%、総資産に対しては 44%。固定金利の比率は 71%、平均金利は 1.80%、平均の残りは 2.5 年だ。格付は JCR の A- で、メガバンクと地方銀行 16 行が貸し手に並ぶ。
満期は 2027 年 7 月期に約 21 億円、2029 年 1 月期に約 95 億円が来る。2 年以内の満期は全体の 9% と小さいが、2.5 年後に 4 割強が集中する。変動金利の借入は 66 億円で、政策金利が 0.25% 上がるごとに利払いは 0.8 億円ほど増える。
増資は、2025 年 8 月の上場時の公募 276 億円だけで、その後の増資はない。上場時の値段は 1 口 10 万円だった。
運用報酬は、総資産に連動する部分と、NOI と 1 口利益に連動する部分、投資口の値動きの部分でできている。取得報酬の上限は 1.0% で、2026 年 7 月期の実額は 0.3 億円と軽い。
分配は、減価償却費の 25% ほどを利益超過分配で上乗せし、上限は 40%を目途とする。築浅で改修が少ない間は、現金の出が小さく、この上乗せが成り立つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
築年が 3〜6 年と浅く、資本的支出は減価償却のごく一部で済む。キャッシュが残り、利益超過分配でさらに上乗せできる。
2026 年 7 月期は、変動賃料の増加で分配が当初予想を 7% 上回った。2027 年 1 月期と 7 月期は、RevPAR の 4% 増を見込み、分配はさらに伸びる。
固定賃料の 4 ホテルは、予定より 1 年早く、安定した稼ぎの水準にほぼ届いた。変動賃料に移れば、RevPAR が 1% 上がるごとの分配への効きは、1.2% から 2.4% に高まる。
スポンサーのパイプラインは 3,100 億円あり、5 年で資産を 3,000 億円まで増やす目標だ。今の投資法人の規模の 6 倍で、成長の余地は大きい。
含み益は 61 億円、NAV の 8 割という値段は、増資のハードルを高くするが、既存の投資主には割安の安全域になる。楽観の筋書きでは、時価総額は 580 億円に達する。
慎重な見方
15 ホテルの賃借人は、すべてスポンサー系の 1 社だ。運営会社の業績が崩れると、固定賃料でも払えなくなる恐れがある。最低保証賃料が付いても、払い手が 1 社なら、守りにならない。
石垣島のホテルは取得価格の 38%、九州・沖縄は総資産の 7 割近い。1 つの地域や 1 物件の不振が、全体を揺らす。
開業から日が浅く、稼ぎの水準は決算 2 期分しか確かめられていない。固定賃料の期間が終わると、賃料の水準が下がる恐れがある。
借入 226 億円の平均金利は 1.80% で、3.8% 前後に借り換わると、年の利払いは倍になる。2029 年 1 月期に 95 億円の満期が集中する。
投資口の保有は、スポンサーが上位 10 位に入らない。スポンサーは開発した宿を売る側で、投資主とは利害が重ならない。
悲観の筋書きでは、賃料が年 3% ずつ縮み、時価総額は 37 億円と、今の 1 割強に落ちる。
新規上場のため、不況での稼ぎの底は実績で確かめられていない。スポンサー系の運営会社が崩れたとき、別の運営会社に替えて同じ賃料を取れる保証は無い。
どちらに重みを置いたか
築年の浅さと、含み益、伸びる変動賃料には根拠がある。一方で、賃借人が 1 社に偏り、決算が 2 期分しかないことは、価値の見積もりを難しくしている。中立の価値は今の時価総額を 11% ほど下回り、やや割高の範囲にある。スポンサーの点数は 3.4 で、悲観の確率を 5 ポイント上げた。筆者は、スポンサーとの利害のずれが値段に十分入っていないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 120,324 円345 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 54,874 円158 億円)。 今の値に割り戻すと 83,833 円241 億円、今との差 −9.9%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 9.4%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 201,689 円579 億円 | 70,016 円201 億円 | +192.2% | +11.3% | 27,171 円78 億円 |
| やや楽観 | 22% | 168,945 円485 億円 | 65,140 円187 億円 | +151.7% | +9.7% | 51,499 円148 億円 |
| 中立 | 33% | 138,988 円399 億円 | 60,263 円173 億円 | +114.2% | +7.9% | 65,753 円189 億円 |
| やや悲観 | 20% | 75,938 円218 億円 | 45,284 円130 億円 | +30.3% | +2.7% | 24,244 円70 億円 |
| 悲観 | 15% | 12,889 円37 億円 | 30,654 円88 億円 | −53.2% | −7.3% | 6,531 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 120,324 円345 億円 | 54,874 円158 億円 | +88.4% | +6.5% | 175,198 円503 億円 |
今の株価時価総額 93,000 円267 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.4% を下回るほど割高。
楽観 10% 変動賃料への移行が進み、賃料が年 3% で増える 利益 23 億円 · PBR 2.0 倍 · 株価時価総額 201,689 円579 億円
訪日客は 2030 年に向けて伸び、地方の観光地にも広がる。開業から日の浅い宿の稼ぎが育ち、固定賃料の 4 ホテルが変動賃料に移って、賃料は年 3% で伸びる。
借り換えは 3.5% で済み、年の利払いは 9 億円と今の倍になる。それでも NOI は 30 億円から 40 億円へ 34% 増え、純利益は 23 億円に伸びる。
物件の利回りは 4.8% に下がり、時価総額は 579 億円と今の 2 倍を超える。
増資は NAV を上回る値段で行われ、希薄化は小さい。スポンサーのパイプラインから割安な取得も進み、1 口あたりの分配が積み上がる。
- ホテルの賃貸:数量 494(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.2%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.8%)。変動賃料の増減と、固定賃料の見直しを合わせた値)→ 売上 45 億円・営業利益 34 億円。稼働 100%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 40 − 資本的支出 2) ÷ キャップ 4.80% − 純負債 210 = 579 億円。キャップは中立 5.3% から 0.5% 下げた 4.8% (ホテルの下限 4.0% には届かない)。
確率:訪日客と客室単価の上昇が続き、固定賃料の 4 ホテルも変動賃料に移って、賃料が年 3% 伸びる筋書き。ホテルは景気の振れが大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.7% 利益 20 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 168,945 円485 億円
訪日客はアジアを中心に伸び、中国客の減少も癒える。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.99 になる。借り換えは 3.7% で、年の利払いは 9.5 億円になる。
NOI は 37 億円と 26% 増え、純利益は 20 億円と今をやや上回る。資本的支出は年 2.3 億円で、今の 0.5 億円より大きく増える。
物件の利回りは 5.05% に上がる。時価総額は 485 億円で、今の 1.8 倍ほどになる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。取得の余地はあるが、増資の値段が NAV を割れば、希薄化が重くなる。
- ホテルの賃貸:数量 489(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.8%)。変動賃料の増減と、固定賃料の見直しを合わせた値)→ 売上 43 億円・営業利益 32 億円。稼働 99%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 38 − 資本的支出 2) ÷ キャップ 5.05% − 純負債 212 = 485 億円。キャップは中立 5.3% より 0.25% 低い 5.05% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より訪日客の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 33% 賃料は物価に負け、利払いが 2 倍になる 利益 17 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 138,988 円399 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.8% へ借り換わる。年の利払いは今の 5 億円から 10 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.98 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 30 億円から 35 億円へ 18% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 17.5 億円から 17 億円へわずかに減る。
物件の利回りは 5.3% に上がる。資本的支出は、築 10 年を超える宿の家具・設備の更新を見込み、年 2.5 億円とする。
時価総額は 399 億円で、今の 1.5 倍ほどになる。ただし 10 年の長さに割り引くと、今の値段を 1 割ほど下回る。
- ホテルの賃貸:数量 484(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.3%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.8%)。変動賃料の増減と、固定賃料の見直しを合わせた値)→ 売上 40 億円・営業利益 29 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 35 − 資本的支出 2) ÷ キャップ 5.30% − 純負債 215 = 399 億円。キャップは今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 5.3%)に合わせた 5.3%。ホテルの表 5.0% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 33%(スポンサーの点数 3.4 で悲観に 5 ポイント回した)。
やや悲観 20% 訪日客が頭打ちになり、固定賃料が据え置きにとどまる 利益 8 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 75,938 円218 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 4.1% になる。訪日客の伸びは止まり、開業の効果も出尽くし、賃料は 10 年で今と同じ水準にとどまる。稼働の係数は 0.95 に落ちる。
変動賃料は縮み、NOI は 27 億円と今の 1 割減。年の利払いは 10.5 億円で、純利益は 8 億円と今の半分に縮む。資本的支出は年 2.4 億円に抑える。
物件の利回りは 5.55% に上がる。時価総額は 218 億円と、今の 8 割にとどまる。
運営会社は 1 社で、賃料の見直しを迫られても、分散で吸収する先がない。
- ホテルの賃貸:数量 469(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.8%)。変動賃料の増減と、固定賃料の見直しを合わせた値)→ 売上 32 億円・営業利益 21 億円。稼働 95%・賃料 年 +0.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 27 − 資本的支出 2) ÷ キャップ 5.55% − 純負債 222 = 218 億円。キャップは中立 +0.25%。変動賃料の縮みと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:訪日客の伸びが止まり、開業効果が落ち着き、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 15% 運営会社の不振と金利の上振れ 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 12,889 円37 億円
不況や地政学のリスクで訪日客が落ち込み、運営会社の業績が悪化する。固定賃料と最低保証賃料の見直しを迫られ、賃料は年 3% ずつ縮んで、10 年後に今より 3 割ほど低い水準になる。稼働の係数も 0.90 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.8% になる。年の利払いは 12 億円で、NOI は 17 億円と今の 4 割強減る。純利益は赤字に沈み、分配は出せなくなる。資本的支出は 1.8 億円に絞る。
物件の利回りは 5.8% に上がる。時価総額は 37 億円と、今の 1 割強に縮む。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
- ホテルの賃貸:数量 445(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.0%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.8%)。変動賃料の増減と、固定賃料の見直しを合わせた値)→ 売上 22 億円・営業利益 12 億円。稼働 90%・賃料 年 -3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 17 − 資本的支出 2) ÷ キャップ 5.80% − 純負債 228 = 37 億円。キャップは中立 +0.5%。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分はわずかに残る。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3.4 なので、悲観の確率を基本の 10% から 5 ポイント上げて 15%。賃借人が 1 社のため、運営会社の不振が直接の打撃になる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホテルの賃貸
築浅のホテル 15 物件を、固定賃料と、ホテルの利益に連動する変動賃料(最低保証付き)の組み合わせで、スポンサー系の運営会社に貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸収入の比(今 6.8%)。変動賃料の増減と、固定賃料の見直しを合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 494 | 6.8% | 34 | 25 |
| 10 年後 中立 | 484 | 8.3% | 40 | 29 |
取り方:決算 2 期分(2026 年 1 月期は取得後 171 日、7 月期は 181 日)から、年の賃貸収入を 34 億円と推定した(1 期目は 184 日に直した)。簿価 494 億円 × 係数 1.00 が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用を引いて 30 億円、セグメントの利益は減価償却 5 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、固定賃料が 7 割強を占め、変動賃料も開業効果が落ち着くため(業種ノート)。
リスクと懸念
賃借人が 1 社にかたよる
15 物件すべての賃借人がスポンサー系の運営会社 1 社。運営会社の不振で、賃料の払いと見直しの両方が不安定になる。
固定賃料の期間が終わったあとの賃料
4 ホテルの固定賃料期間は 2027 年 8 月までの予定。変動賃料に移ったあとの賃料水準は、実績が無く、下がる恐れがある。
石垣島と九州・沖縄への集中
seven x seven 石垣が取得価格の 38%、九州・沖縄が総資産の 7 割近い。天候・災害・地域の需要の振れが、全体に響く。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 1.80%。3.8% 前後へ上がると、年の利払いは 5 億円から 10 億円に増える。2029 年 1 月期に約 95 億円の満期が来る。
決算が 2 期分しかない
上場から 1 年余りで、稼ぎの季節性や、安定した水準が確かめられていない。年換算の数字には推定を含む。
スポンサーとの利害のずれ
スポンサーは開発した宿を投資法人に売る側で、賃借人でもある。投資口の保有は上位 10 位に入らず、取得の値段や賃料の条件がスポンサー寄りになる恐れがある。
今後の分かれ目
- 固定賃料の 4 ホテルが変動賃料に移り、賃料が最低保証を上回って安定する
- 稼ぎの水準が確かめられ、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は適正に近づく。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 運営会社の業績が悪化し、賃料の見直しや支払いの遅れが出る
- 悲観側の確率を上げる。賃借人が 1 社のため、分配への影響が大きい。
- スポンサーから高い値段で物件を取得する、または NAV 割れで増資する
- スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- スポンサーが投資口を大きく買い増す
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- 固定賃料 4 ホテルの変動賃料への移行と賃料水準
- 変動賃料 11 物件の RevPAR・GOP の半期の推移
- 運営会社(FHG hotels)の業績と財務
- 2029 年 1 月期の満期の借り換え条件
- スポンサーからの物件取得の値段と、スポンサーの出資比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは今の NCF 利回り 5.3%(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った)に合わせた。ホテルの業種ノートの表 5.0% より高い。決算が 2 期分しかなく、年換算の数字は推定を含む。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.93% を足した 9.43%。賃借人が 1 社に偏るリスクは、スポンサーの点数と悲観の筋書きに入れたので extra は置かない。