結論
Oneリートは、みずほ信託銀行がスポンサーの REIT で、東京経済圏を中心とした中小型オフィスと、全国のホテルを持つ。2026 年 3 月の公募増資で、ホテル 5 棟とオフィス 1 棟を 299 億円で買い、資産規模は 1,500 億円に達した。筆者の結論は割高である。今の値段は、鑑定の利回りが低い世界の評価と、ホテルの好調な売上を、そのまま 10 年先へ延ばした値段だからだ。
この REIT の舵は大きく切られた。築 30 年超のオフィスを売り、ホテルを買う。目標は、オフィスを 4 割以下、ホテルを 6 割以上にすることだ。ホテルは売上に連動する賃料が多く、好況では収益が伸びるが、不況やインバウンドの減少では賃料が大きく落ちる。
借入は増資後で約 800 億円。LTV は 49.4%、平均金利は 1.09%、残りの期間は 2.3 年と短く、変動金利の比率も 3 分の 1 ある。10 年金利が 3% に落ち着けば、年の利払いは今の 2 倍以上になり、利益は 3 割ほど減る。
増資の値段は NAV の 8 割強で、1 口の価値が薄まった。スポンサーの出資は 12% あり、投資主と同じ船に乗っている点は評価できる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、方向転換の巧みさは認めるが、安全域は無い。築古のオフィスを売り、利回りの高いホテルを買う動きは理にかなう。ただ、買った値段は NAV を大きく下回る投資口を発行して手当てした。
また、投資主が受け取るのは、賃料から利払いを引いた残りだけだ。借入は約 800 億円で、平均 1.09% の金利が 3% 台半ばへ変わると、年の利払いは 13 億円ほどから 31 億円へ増える。ホテルの変動賃料は、景気が悪くなれば減る。10 年の分配と 10 年後のビルの価値を合わせても、今の値段の半分ほどの価値にしかならない。
スポンサーの出資が 12% あることは、強みだ。ただ、ビルの利回りが 5% 近くまで来て、NAV をさらに大きく下回る値段になれば、魅力的な持ち物になる。今はまだそこにない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。企業にビルを、運営会社にホテルを貸し、賃料から経費と利払いを引いた残りを投資主に配る。2026 年 2 月期(半年)の賃貸事業収入は約 45 億円、そこから経費を引いた NOI は約 32 億円だった。増資で買った 6 棟が通年で寄与する 2027 年 2 月期の予想から年に直すと、NOI は 72 億円ほどになる。
物件は 2026 年 3 月の取得後で約 1,500 億円。オフィスが 75% を占めるが、ホテル 7 棟の比率が上がっていく。取得したのは、那覇首里城のダブルツリー、成田、福岡博多、札幌すすきののホテルなどで、平均の鑑定利回りは 6.16% と高い。ホテルの賃料は売上に連動する変動型が 6 棟で、季節で収入が振れる。
借入は 2026 年 2 月末で 654 億円、増資後は 150 億円を借りて約 800 億円。平均金利は 1.09%、固定の比率は 65.5%、残りの期間は 2.3 年。
運用会社は、みずほリートマネジメントだ。報酬は総資産の 0.3%、NOI の 2.5%、1 口の利益に連動する部分の 3 つに、取得・譲渡の 1% の報酬が加わる。
優良さと弱いところ
物件の質は、中程度だ。オフィスは東京経済圏と主要都市の中小型で、築 30 年を超える物件は売っている。稼働は 97.3% と高く、賃料の増額が続く。ホテルは新しいブランドへの改装で収益を上げる計画だが、運営会社の力と観光需要に頼る。賃料を自分で決める力は弱い。
資本の使い方には評価と疑問が混じる。4 年半ぶりの公募増資は、NAV の 8 割強の値段だった。ホテルを買うために投資主の価値を薄めたことになる。一方で、物件を売った益は内部留保に回し、分配の安定に使っている。
報酬には、取得価格の 1% の取得報酬がある。成長の局面では運用会社の取り分が増える形だ。ただスポンサーの子会社が 12% を持ち、利害は一致している。
弱いのは借入と、事業の方向の変化だ。純負債は NOI から報酬を引いた額の約 12 倍で、残りの期間も短い。オフィス中心の REIT として買った投資主には、ホテル中心への移行が想定外になりうる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京のオフィス市場は、空室率が低く、賃料は上昇基調にある。この REIT の賃料増額も過去最高の水準だ。ただ、大型の新築は 2027 年以降も続き、働く場所は分散する。筆者は中立の賃料の伸びを、物価の 3 分の 2、名目で年 2% 前後と置く。中小型のオフィスは、築が古く、地方の都市に偏るほど、借り手の確保が難しくなる。
ホテルは、訪日客の増加を追い風に、宿泊料が急速に上がった。ただ、宿泊料の水準は景気と為替、国際情勢に左右され、ホテルの収益は不況で大きく落ちる。賃料が売上に連動する変動型なので、賃料もそのまま落ちる。
いちばん大きいのは金利だ。10 年国債が 3% の世界で、不動産に求める利回りを 6%、NOI の長い伸びを 1.1% とすれば、中小型オフィスは 4.75% 前後、ホテルは 5.0% 前後に落ち着く。この REIT の鑑定の利回りはオフィスで 3% 台、ホテルで 4〜8% と幅がある。
オフィスとホテルは、どちらも金利と景気に敏感な用途である。
中小型オフィスは、築が古いほど修繕の費用が重く、売る時の買い手も限られる。
資本政策と M&A
利益のほぼ全部を配るのが REIT の決まりだ。成長の道は、増資で物件を買うか、物件を入れ替えるかのどちらかになる。この投資法人は、入れ替えと増資を組み合わせて、中期で資産規模 2,000 億円を目指す。
直近は 2026 年 3 月の公募増資で 129 億円を集め、ホテル 5 棟とオフィス 1 棟を買った。増資の値段は NAV の 8 割強で、発行口数は 2 割増えた。借入を 150 億円足し、LTV は 49.4%に落ち着いた。2025 年 12 月から 2026 年 1 月にかけては、築古のオフィス 2 棟を売り、京都のホテルを買っている。
京都のオフィスビルは、準共有持分を 4 回に分けて売る。売却益は 2029 年 2 月期まで合計 9 億円ほどになり、内部留保の取り崩しと合わせて分配を支える。筆者は、この売却益と取り崩しを通常の分配には数えず、一度きりの上乗せとして別に扱った。
今後の増資は、NAV 割れの局面でも成長を優先する可能性が高い。借入の余地は、LTV 50% 前後で限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
オフィスの賃料増額は過去最高で、築古の物件を売って質を上げている。稼働は 97.3% と高い。ホテルは訪日客の増加を追い風に、改装した物件の収益が伸びる。取得したホテルの利回りは平均 6.16% と、オフィスよりはるかに高く、NOI の伸びの中心になる。
スポンサーのみずほ信託銀行は 12% を持ち、金融系の安定した後ろ盾だ。物件の取得、資金調達の両面で追い風になる。増資で LTV が 49.4% に落ち着き、変動金利と固定金利を組み合わせる運営も柔軟だ。
含み益は 200 億円あり、売却益と内部留保の取り崩しで分配が守られる。中期で資産規模 2,000 億円を目指す成長の道筋もある。
金利が 3% まで上がるとも限らない。固定の比率が 65% あり、ホテルの賃料は物価の上昇に連動して上がる。
実際、改装したホテルの宿泊料は急速に上がり、賃料に反映されている。
築古のオフィスを売って質を上げ、利回りの高いホテルに入れ替える動きが続けば、1 口あたりの利益は着実に伸びる。
慎重な見方
低金利が作った値段だ。オフィスの鑑定の利回りは 3% 台、10 年国債が 3% の世界ではほとんど差が無い。利回りが 4% 台後半に上がれば、ビルの価値は 2 割台半ば下がり、借入があるので投資主の取り分はその倍近い速さで減る。LTV は 49.4%、残りの期間は 2.3 年と短い。
ホテルは、賃料が売上に連動する。不況やインバウンドの減少、為替の円高で、宿泊料と稼働が落ちれば、賃料もそのまま落ちる。オフィスと違って、固定の賃料で守られていない。
資本の使い方が投資主に不利だ。ホテルを買うために NAV の 8 割強で増資をし、口数を 2 割増やした。報酬は資産規模に連動し、取得の 1% もかかる。増資で資産が増えるほど運用会社の取り分が増える。
分配金は売却益と内部留保の取り崩しに頼る。巡航の利益は、利払いの増加で減る見通しだ。
さらに、築の古いオフィスの修繕費は重く、売却益の分配はいずれ尽きる。ホテルの改装工事の間は、賃料が入らない空白の期間も生まれる。
どちらに重みを置いたか
強気にも言い分はあるが、勝負を決めるのは金利と借入の重さだ。10 年金利 3% を前提にする以上、利払いとビルの利回りの上昇は避けられない。ホテルは景気の振れが大きく、悲観側を厚めにした。中立を 37% に置き、悲観側を合わせて 35% とした。楽観は金利が今のまま止まる筋書きで 8%。筆者は、この REIT の入れ替えの巧みさとスポンサーの出資は評価する。ただ結論は変わらず、割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 58,205 円567 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 29,542 円288 億円)。 今の値に割り戻すと 42,073 円410 億円、今との差 −43.5%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 9.6%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 161,243 円1,570 億円 | 39,335 円383 億円 | +169.2% | +10.4% | 16,046 円156 億円 |
| やや楽観 | 20% | 85,962 円837 億円 | 35,535 円346 億円 | +63.1% | +5.0% | 24,299 円237 億円 |
| 中立 | 37% | 56,795 円553 億円 | 31,530 円307 億円 | +18.6% | +1.7% | 32,680 円318 億円 |
| やや悲観 | 22% | 25,470 円248 億円 | 23,724 円231 億円 | −34.0% | −4.1% | 10,823 円105 億円 |
| 悲観 | 13% | 11,503 円112 億円 | 18,486 円180 億円 | −59.7% | −8.7% | 3,899 円38 億円 |
| 加重平均 | 100% | 58,205 円567 億円 | 29,542 円288 億円 | +17.8% | +1.7% | 87,747 円854 億円 |
今の株価時価総額 74,500 円725 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.6% を下回るほど割高。
楽観 8% 金利が止まり、ホテルとオフィスの賃料が伸びる 利益 41 億円 · PBR 2.2 倍 · 株価時価総額 161,243 円1,570 億円
訪日客と本社需要が強く、ホテルの変動賃料とオフィスの増額が続く。賃料は物価並みの年 3% で上がり、稼働は 98.5% を保つ。NOI は 10 年で 3 割台半ば伸びる。
借り換えの金利は 3.4% にとどまる。不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.47% のまま変わらない。時価総額は 1,570 億円と今の 2.1 倍になる。売却益と内部留保の分配も続き、投資主の取り分は今の値段を上回る。
筆者はこの筋書きを、前提の金利から外れる分だけ低く見る。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びがそれを上回り、償却を引いた後の利益も毎年増えていく。
- オフィス・ホテルの賃貸:数量 1,492(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.2%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.9%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 137 億円・営業利益 80 億円。稼働 98%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 99 − 資本的支出 17) ÷ キャップ 3.47% − 純負債 790 = 1570 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.47% で、今の値付けが 10 年続く所(オフィスの下限 3.5% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:10 年金利が今の 3% 前後で止まり、ホテルの好況が続く筋書き。前提の金利から外れるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価に近く伸び、利回りの上昇は小さい 利益 33 億円 · PBR 1.2 倍 · 株価時価総額 85,962 円837 億円
空室は低いまま推移し、賃料は年 2.5% で上がる。稼働は 98% を保つ。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びが上回り、NOI は 10 年で 2 割台半ば伸びる。
借入は 3.5% 前後へ借り換わり、利払いは今の 2.2 倍になる。純利益は今とほぼ同じになる。ビルの利回りは 4.55% に上がり、ビルの価値は今の鑑定を大きく下回る。
ホテルの改装による増額は続くが、為替と需要の振れは残る。自己投資口の買い入れより増資で成長する癖があり、1 口の価値が削られる心配は残る。
含み益の売却による分配の上乗せもあるが、通常の利益には数えない。
- オフィス・ホテルの賃貸:数量 1,485(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.8%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.9%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 130 億円・営業利益 74 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 92 − 資本的支出 18) ÷ キャップ 4.55% − 純負債 795 = 837 億円。キャップは中立 4.9% から 0.35% 下げた。
確率:賃料の増額が進み、ビルの利回りの上昇が小さい筋書き。20%。
中立 37% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 25 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 56,795 円553 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 2〜3 年で 3.6% へ借り換わる。年の利払いは今の 14 億円から 31 億円へ増える。賃料は年 2% で上がるが、新築の供給で稼働は 97% へ少し下がる。経費は物価並みの 3% で増え、NOI は 10 年で 1 割台半ばしか伸びない。
減価償却は昔の取得原価のままなので、会計の利益は利払いの増加ほどは減らない。それでも純利益は今の 4 分の 3 に細る。修繕と更新の費用は築年とともに 1.4 倍に膨らみ、償却と並ぶ。
ビルの利回りは 4.9% に上がり、ビルの価値は今の鑑定より 3 割ほど低い。負債は減らず、投資主の取り分は今の自己資本の 7 割台半ばになる。規模は据え置きと置いたが、増資で成長する癖があり、希薄化の心配は残る。
- オフィス・ホテルの賃貸:数量 1,470(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.4%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.9%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 123 億円・営業利益 66 億円。稼働 97%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 84 − 資本的支出 18) ÷ キャップ 4.90% − 純負債 800 = 553 億円。キャップは中小型オフィス 75%・ホテル 25% の加重の中立 4.9%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.1%)。今の鑑定の利回り 4.2% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 37%。
やや悲観 22% 供給過多と観光の減速で賃料が伸びず、利回りが上がる 利益 10 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 25,470 円248 億円
大型の新築ビルが続き、テナントは新しいビルへ移る。ホテルは円高と訪日客の減速で売上が落ち、変動賃料が減る。平均の賃料は年 1% しか上がらず、稼働は 95% へ落ちる。経費は物価で増え、NOI は今より 2 割弱増えるにとどまる。
借入は 3.9% へ借り換わり、純利益は今の 3 割まで細る。分配は大きく減る。ビルの利回りは 5.15% へ上がり、ビルの価値は今の鑑定の 6 割台に下がる。LTV は 6 割に近づき、借り換えの上乗せが増える。
スポンサーが物件を引き取る支えはありうるが、その値段が投資主に有利とは限らない。
- オフィス・ホテルの賃貸:数量 1,439(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.6%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.9%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 109 億円・営業利益 53 億円。稼働 95%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 70 − 資本的支出 16) ÷ キャップ 5.15% − 純負債 810 = 248 億円。キャップは中立 +0.25%。
確率:2027 年以降の大型供給と円高・訪日客の減速で、ホテルとオフィスの賃料が落ちる筋書き。22%。
悲観 13% 金利の上振れと不況が重なり、ホテルの賃料が落ちる 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 11,503 円112 億円
金利は 3% を超えて上がり、不動産の売りが重なる。借り換えの金利は 4.5% に上がり、利払いは今の 2.8 倍になる。不況で企業は床を減らし、観光客も減って、稼働は 92%、賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。経費を年 2% に抑えても、NOI は今より小さくなる。
純利益はゼロを割り込み、分配は止まる。配らずに残した現金で借入を少しずつ返す。ビルの利回りは 5.4% へ上がり、物件の価値は負債を少し上回る程度にまで縮む。投資主に残るのは、市況が戻れば取り戻せる見込みの分だけだ。清算されない限り、ビルを売って NAV を受け取ることはできない。
- オフィス・ホテルの賃貸:数量 1,394(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.9%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.9%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 96 億円・営業利益 44 億円。稼働 92%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 61 − 資本的支出 13) ÷ キャップ 5.40% − 純負債 770 = 112 億円。キャップは中立 +0.5%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:リーマン級の不況と金利の上振れが重なる筋書き。ホテルの振れと借入の重さを考え 13% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィス・ホテルの賃貸
東京経済圏と主要都市の中小型オフィス、全国のホテル 7 棟を貸す。ホテルの賃料は変動型が多い。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.9%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2027/02予想 | 1,474 | 6.9% | 101 | 56 |
| 10 年後 中立 | 1,470 | 8.4% | 123 | 66 |
取り方:2027 年 2 月期の会社予想(取得 6 棟が通年で寄与する最初の半期)を 2 倍して年額の賃料収入 101 億円(売却益を除く)、NOI 72 億円と置いた。帳簿価額 1,515 億円(期末の 1,224 億円に取得の 299 億円を足し譲渡分を引いた)× 稼働 97.3% で数量、収入 ÷ 数量で価格。セグメントの利益は NOI から減価償却 16 億円を引いた額。中立の価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料が契約の更新ごとに遅れて上がり、物価の 3 分の 2 しか転嫁しないと見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 1.09% の借入が 3% 台半ばへ借り換わると、年の利払いは 17 億円ほど増える。今の年の利益の半分を超える。残りの期間は 2.3 年と短く、変動金利の比率も 3 分の 1 ある。
ホテルの賃料の振れ
ホテルの賃料は売上に連動する変動型が多い。円高や訪日客の減速、不況で宿泊料と稼働が落ちれば、賃料もそのまま落ちる。ホテルは 6 割まで増やす方針だ。
ビルの利回りの上昇
オフィスの鑑定の利回りは 3% 台と低く、10 年国債 3% の世界では保てない。利回りが 1 ポイント上がるとビルの価値は 2 割台半ば下がり、LTV は 6 割に近づく。
NAV 割れの増資
2026 年 3 月に NAV の 8 割強で公募増資をした。成長を優先して再び増資すれば、1 口の価値が削られる。
売却益と内部留保への依存
分配は売却益と内部留保の取り崩しに支えられる。巡航の利益は利払いの増加で減る見通しだ。
運営会社への依存
ホテルは運営会社の力に収益が左右される。リブランドの工事と開業の遅れは、収入の空白を生む。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- ビルの利回りの上昇は小さく、借り換えの金利も 2.5% 前後にとどまる。中立よりやや楽観に近づき、割高の度合いは縮む。
- ホテルの賃料が物価を上回って伸び続ける
- NOI の伸びが利払いの増加を上回り、楽観の筋書きに近づく。
- NAV 割れのまま再び増資を行う
- 1 口の価値がさらに薄まる。スポンサーの点数を大きく上げる。
- 自己投資口の買い入れを始める
- NAV との差が縮まり、資本の使い方の評価を上げる。ただし借入で賄うなら金利の重さが増す。
- ホテルの比率が 6 割を超える
- 景気と為替への感応度が上がり、k と悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 平均調達金利と変動金利の比率
- ホテルの変動賃料の水準
- 継続鑑定の利回り(キャップレート)
- 増資と自己投資口の買い入れの方針
- 簿価 LTV
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回りより高い。NAV 割れ(今は NAV の約 8 割)を割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.06% を足した 9.56%。事業は傾いていないので extra は置かない。