結論
NTT 都市開発リートは、東京のオフィスと賃貸住宅を持つ複合型の J-REIT だ。資産は 62 件、取得価格で 2,952 億円。うち約 9 割が東京 23 区にある。スポンサーは NTT グループ唯一の総合不動産会社である NTT 都市開発で、格付けは AA だ。
筆者の結論は、今の投資口価格は割高というものだ。10 年後の物件の売値を、今の鑑定の利回りより高い 4.1% で見ると、時価総額を支える価値は 1,000 億円前後にしかならない。
理由は借金の金利にある。有利子負債は 1,472 億円で、平均金利はまだ 0.92%。これが借り換えで 3.5% になると、年の利払いは 14 億円から 52 億円に膨らむ。純利益は 77 億円から 44 億円へ、4 割以上消える。
救いもある。入替時の賃料は、オフィスで 10.7%、住宅で 15.2% 上がった。老朽ビルはスポンサーへ鑑定より高く売れ、売却益は 37 億円出た。
それでも 1 口純資産の 0.81 倍という値段は、安全域とは呼べない。鑑定そのものが、10 年金利 3% とほぼ同じ利回りの上に立っているからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この法人は「良い立地の、ふつうの不動産」を持つ器だ。東京のビルとマンションは 10 年後も借り手がつく。ただ、上乗せの利回りが薄い。
鑑定評価額に対する収益は 3.1% と、借入の新しい金利 3.5% より低い。借り換えが終われば、借入で物件を持つ意味は薄れ、純利益は 4 割消える。
鑑定の含み益は 788 億円あるが、これは少数の投資主が自由に取り出せるお金ではない。NAV 割れは割安の根拠にならない。
10 年の分配と 10 年後の売値を今に引き直すと、今の値段は 4 割ほど高い。筆者は、買うなら NAV の 6 割ほどまで待ちたい。
経営の資本の使い方は、悪くない。老朽資産を売って築浅に替え、自己投資口の取得枠も設けた。ただ、これだけでは金利の逆風は消せない。オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、安全域が薄いので、今の値段では持ちたくない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は賃料だ。投資法人が持つのはビルとマンションで、テナントと入居者から家賃を受け取る。直近 1 年の賃貸収入は 237 億円。そこから物件の運営費を引いた NOI(純収益)は 139 億円になる。
資産は 62 件。取得価格ベースで、オフィスが 64%、レジデンス(賃貸住宅)が 29%、残りは秋葉原 UDX を裏付けにした優先出資証券だ。東京オペラシティビル、品川シーズンテラス、グランパークなど大型の都心オフィスが柱で、都心 5 区が 66%、東京 23 区まで広げると約 9 割を占める。
オフィスは大型で景気に敏感、住宅は小粒で安定、と役割を分けている。稼働率は直近で 98.2%。オフィスは稼働率より賃料を優先する方針に切り替え、入替時に賃料を 10.7% 上げた。住宅の入替賃料は 15.2% の上昇だ。
資産入替も進める。築 46 年のランディック第2新橋ビルを NTT 都市開発へ 100 億円で売り、37 億円の売却益を得た。代わりに築浅の住宅 2 件を 22 億円で買っている。
修繕費は直近の大規模修繕が一巡し、2026 年 10 月期から減る見通しだ。ただし資本的支出(資産価値を保つ工事費)は年 28 億円で、減価償却の 33 億円に近い。
優良さと弱いところ
この法人の優良さは、立地と後ろ盾にある。東京の大型オフィスと住宅という、10 年後も需要が残る場所に集中している。格付けは AA で、NTT 都市開発のクレジットも借入の金利を抑える助けになる。
弱みは三つある。一つ目は、築年の古さだ。平均築年は 25.5 年で、資本的支出が減価償却に近いほど重い。二つ目は、借入の短さ。平均残存は 3.7 年で、今後 2 年で約 437 億円、全体の 3 割が満期を迎える。三つ目は、鑑定評価額に対する収益の低さだ。NOI から資本的支出を引いた利回りは 3.1% しかない。
スポンサーとの関係は、悪くはないが気は抜けない。取得の 85% が NTT 都市開発からだ。ただし売却も同じ相手に鑑定より高く戻せている。NTT 都市開発の持ち分は 6.35% で、自己投資口の取得枠 20 億円もある。
筆者は、事業の質を「並の上」と見る。景気で振れるオフィスが 7 割を占め、強い堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京のオフィス市場は、空室率が 3% 前後まで締まり、賃料は上げ局面にある。ただし大型の新築供給は 2027 年以降も続き、在宅勤務の定着で床の需要は実質で横ばいだ。賃料は契約更新で遅れて上がり、空室が増えれば止まる。
賃貸住宅は 2 年の更新と入替で、賃料が物価にほぼ追随する。この法人の入替時の増額は 15.2% あり、東京の住宅の強さを映している。
業種の表では、都心の大型オフィスのキャップレート(NCF ÷ 物件価値の利回り)は 4.25%、住宅は 3.75% だ。この法人は NOI の 7 割がオフィス系、3 割が住宅なので、加重すると 4.11% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割ると 3.1%。10 年国債の利回り 3% とほぼ同じで、借り換え金利 3.5% を下回る。鑑定は値動きが遅れて出る数字なので、中立の筋書きにそのままは使えない。
J-REIT 全体では、上場の値段から逆算したキャップレートの中央は 4.2% 前後。この法人の NAV 倍率 0.81 は、その中央よりやや高い評価だ。
資本政策と M&A
借入は 1,472 億円。総資産に対する比率(LTV)は 47.9%、鑑定評価額で割ると 41% だ。平均金利は 0.92% と低く、固定比率は 90.3%、格付けは JCR の AA。
弱点は期間の短さだ。平均残存年数は 3.7 年。2028 年 4 月期までに約 437 億円、全体の 3 割が満期になる。2026 年 4 月期に借りた 83 億円の金利は 1.68% で、既存の借入より高い。
投資口は 2021 年 11 月と 2023 年 11 月に公募増資を行った。2023 年の発行総額は約 91 億円。2026 年の 10 月期には、上限 20 億円の自己投資口取得を始める。
運用報酬は直近 1 年で約 9.6 億円、NOI の 7%。配当は純利益の 9 割ほど。足りない分は圧縮積立金の取り崩しで補い、今の水準を維持する計画だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産入替が効いている。老朽ビルを鑑定より高く売り、築浅の住宅に替えた。売却益は 3 期で約 20 億円出た。
賃料の上げ代がある。オフィスは入替で 10.7%、住宅は 15.2% 上げた。2026 年 10 月期は修繕費が 4 割減るので、1 口あたりの利益は 15% ほど戻る見通しだ。
借入の平均金利は 0.92%、AA 格で、3.5% まで上がっても調達できる。含み益は 788 億円あり、LTV は鑑定ベースで 41%、余力がある。
NTT 都市開発は単独スポンサーで、売却も取得も鑑定を意識した値段になっている。自己投資口取得も始まる。
楽観の筋書きでは、賃料が年 2.8% 伸び、10 年後のキャップが今の 3.1% で止まる。時価総額は 3,446 億円と今の 2 倍になる。
都心のオフィスで賃料のギャップが残っているなら、10 年で名目の NOI が 3 割以上伸びる余地は確かにある。
慎重な見方
鑑定の利回りが低すぎる。NOI から資本的支出を引くと 3.1% で、新しい借入金利 3.5% より低い。この値段が 10 年続く前提は置きにくい。
利払いは 14 億円から 52 億円へ膨らむ。平均残存が 3.7 年と短く、2 年で 3 割が満期になる。純利益は 77 億円から 44 億円へ消える。
修繕費は一巡しても、資本的支出が減価償却に近く、築 25 年超の資産が 7 割を占める。現金は出ていく一方だ。
スポンサーが NTT 都市開発の単独であるため、取得の 85% が 1 社に偏る。売却も同じ相手では、値段を比べる相手がいない。
悲観の筋書きでは、稼働率が 92% に下がり、借り換えが 4.5% になる。分配は止まり、時価総額は物件価値と借入が相殺して消える。
運用報酬の形も気になる。報酬は資産規模や利益に連なる部分があり、賃料が伸びない年でも一定の費用が出ていく。
資産の 7 割がオフィス系なので、悪い年にはこの形がそのまま現れる。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実を言っているが、数字の重さは慎重な見方が上だ。入替の効果は 1 口あたり 1 割弱の増益で、利払いの増加による 4 割の減益を打ち消せない。スポンサーの点数は 2.9 で、悲観の確率は基本の 10% のままにした。やや悲観の確率は、鑑定の利回りが借入金利を下回る事実を重く見て、22% へ寄せている。筆者は、今の値段は金利が低いままの前提だと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 99,397 円1,459 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 44,350 円651 億円)。 今の値に割り戻すと 69,887 円1,026 億円、今との差 −42.1%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 9.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 234,704 円3,446 億円 | 57,212 円840 億円 | +141.9% | +9.2% | 23,353 円343 億円 |
| やや楽観 | 20% | 161,078 円2,365 億円 | 52,103 円765 億円 | +76.6% | +5.9% | 42,636 円626 億円 |
| 中立 | 40% | 100,938 円1,482 億円 | 46,314 円680 億円 | +22.0% | +2.0% | 58,901 円865 億円 |
| やや悲観 | 22% | 36,438 円535 億円 | 34,940 円513 億円 | −40.9% | −5.1% | 15,703 円231 億円 |
| 悲観 | 10% | 136 円2 億円 | 31,398 円461 億円 | −73.9% | −12.6% | 3,153 円46 億円 |
| 加重平均 | 100% | 99,397 円1,459 億円 | 44,350 円651 億円 | +19.1% | +1.8% | 143,747 円2,111 億円 |
今の株価時価総額 120,700 円1,772 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 賃料が年 2.8% 伸び、今の鑑定の利回りが続く 利益 76 億円 · PBR 2.5 倍 · 株価時価総額 234,704 円3,446 億円
オフィスの空室は締まり続け、入替の賃料増額が年 2.8% の伸びに結びつく。稼働率は 99% に近づく。
借り換えは AA 格のおかげで 3.3% で収まり、年の利払いは 49 億円。NOI は 139 億円から 183 億円へ 32% 増え、純利益は 76 億円と今とほぼ同じ水準を保つ。
不動産の売買市場は低金利の値付けを続け、キャップは今の鑑定の NCF 利回り 3.12% のままだ。物件の価値が 4,700 億円超となり、時価総額は 3,446 億円と今の約 2 倍になる。
自己投資口取得で口数が減る分は計算に入れていない。
- オフィス・住宅・優先出資証券の賃貸:数量 2,739(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.5%(規模に対する収益の比(今 8.7%)。賃料の改定と、優先出資証券の配当を合わせた値)→ 売上 315 億円・営業利益 145 億円。稼働 99%・賃料 年 +2.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 183 − 資本的支出 36) ÷ キャップ 3.12% − 純負債 1265 = 3446 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引き、鑑定評価額で割った 3.12%)。今の値付けが 10 年続く筋書きで、楽観はここまで下げてよい。
確率:入替時の増額が続き、キャップが今の 3.1% のまま 10 年続く筋書き。借り換えが 3.3% で済む前提も含む。基本のとおり 8% とした。
やや楽観 20% 賃料は年 2.4%、キャップは 3.6% まで下がる 利益 61 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 161,078 円2,365 億円
賃料の増額が数年続き、年 2.4% の伸びになる。稼働率は 98% を保つ。
借り換えは 3.4%。年の利払いは 50 億円に増えるが、NOI は 168 億円と 21% 増え、純利益は 61 億円で踏みとどまる。
売買市場は、10 年金利 3% との差を 0.6 ポイントまで保つ。キャップは 3.6% に下がり、物件の価値は 3,700 億円を超える。時価総額は 2,365 億円。
ただし賃料の伸びは物価の 3% に届かず、資本的支出も建築費の上昇で年 37 億円に膨らむ。
分配は純利益の範囲でまかなえるが、増資で口数を増やす余地は小さく、1 口あたりの成長は賃料の伸びに頼る形になる。
- オフィス・住宅・優先出資証券の賃貸:数量 2,711(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.1%(規模に対する収益の比(今 8.7%)。賃料の改定と、優先出資証券の配当を合わせた値)→ 売上 300 億円・営業利益 129 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.4%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 168 − 資本的支出 37) ÷ キャップ 3.60% − 純負債 1270 = 2365 億円。キャップは用途の下限 3.25% より高い 3.6%。今の鑑定の NCF 利回り(3.1%)を超え、10 年金利との差が 0.6 ポイント残る前提。
確率:賃料が物価の 8 割ほど追随し、キャップが 3.6% まで下がる筋書き。ありうる上振れとして 20% とした。
中立 40% 賃料は年 2% で伸び、利払いが 3 倍半になる 利益 44 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 100,938 円1,482 億円
借入が 3.5% に借り換わり、年の利払いは 14 億円から 52 億円に増える。稼働率は新規の供給で 96.5% に下がる。
賃料は年 2.0% で伸びる。経費は物価で年 3%。NOI は 139 億円から 152 億円へ、10 年で 10% 伸びるだけだ。そこから資本的支出 38 億円が出る。
減価償却は 38 億円、運用報酬などは 18 億円。純利益は 77 億円から 44 億円へ、4 割以上減る。分配は今の半分近くに下がる。
物件の売値は、キャップ 4.11% で 2,770 億円ほど。そこから純負債 1,290 億円を引くと、時価総額は 1,482 億円になる。
- オフィス・住宅・優先出資証券の賃貸:数量 2,669(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.6%(規模に対する収益の比(今 8.7%)。賃料の改定と、優先出資証券の配当を合わせた値)→ 売上 284 億円・営業利益 113 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 152 − 資本的支出 38) ÷ キャップ 4.11% − 純負債 1290 = 1482 億円。キャップは業種の表を NOI で加重した 4.11%(オフィス 4.25%、住宅 3.75%)。今の NCF 利回り(3.1%)より高い。
確率:10 年金利が 3% 前後に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最も起こりやすい。スポンサーの点数 2.9 のため、悲観の確率は基本の 10% のままとした。
やや悲観 22% 賃料の伸びが止まり、キャップが 4.4% に上がる 利益 10 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 36,438 円535 億円
大型オフィスの供給が続き、賃料の伸びは年 1.0% にとどまる。稼働率も 94.5% に下がる。
借り換えは 3.7%。年の利払いは 54 億円。NOI は 120 億円と今より 13% 減り、純利益は 11 億円に縮む。
分配は借入の返済を優先して絞る。圧縮積立金も使い切る。
キャップは 4.41% に上がる。物件の価値は 1,800 億円を切り、純負債 1,300 億円を引くと、時価総額は 535 億円だ。
この筋書きは、金利が高止まりし、オフィスの買い手が減る局面で起こる。今の 3 割の水準だ。
- オフィス・住宅・優先出資証券の賃貸:数量 2,614(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.6%(規模に対する収益の比(今 8.7%)。賃料の改定と、優先出資証券の配当を合わせた値)→ 売上 252 億円・営業利益 82 億円。稼働 94%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 120 − 資本的支出 39) ÷ キャップ 4.41% − 純負債 1300 = 535 億円。キャップは中立 4.11% に 0.3 ポイント上乗せして 4.41% (金利の上振れと、オフィスの売り)。
確率:新築供給で都心オフィスの賃料が頭打ちになり、キャップが上がる筋書き。借り換えの上乗せも重なる。22% とした。
悲観 10% 空室の増加と金利上昇で、物件の価値が借入に近づく 利益 −22 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 136 円2 億円
景気の後退でオフィスの空室が増え、稼働率は 92% に下がる。賃料は据え置きだ。
借り換えは A 格並みの 4.5% になり、年の利払いは 66 億円。NOI は 97 億円と今の 7 割まで減り、純利益は 22 億円の赤字になる。
キャップは 4.75% まで上がり、物件の価値は 1,340 億円ほど。純負債 1,330 億円をほぼ食い、時価総額は再建の見込みの分にとどまる。
分配は止まり、借入の返済に回る。
自己投資口の取得も止まり、スポンサーの支えだけが残る。清算されない限り、少数の投資主が NAV を受け取ることはできない。
- オフィス・住宅・優先出資証券の賃貸:数量 2,545(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(規模に対する収益の比(今 8.7%)。賃料の改定と、優先出資証券の配当を合わせた値)→ 売上 222 億円・営業利益 59 億円。稼働 92%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 96 − 資本的支出 33) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1330 = 2 億円。キャップは中立 4.11% に 0.64 ポイント上乗せして 4.75%。物件の価値が純負債とほぼ並び、時価総額は再建の見込みの分だけ。
確率:スポンサーの点数 2.9 なので悲観の確率は基本の 10%。オフィスの空室と借り換え金利の上昇が同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィス・住宅・優先出資証券の賃貸
東京中心のオフィス・賃貸住宅 61 件と、秋葉原 UDX の優先出資証券 1 銘柄を持ち、賃料と配当を受ける。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する収益の比(今 8.7%)。賃料の改定と、優先出資証券の配当を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 2,716 | 8.7% | 237 | 106 |
| 10 年後 中立 | 2,669 | 10.6% | 284 | 113 |
取り方:直近 1 年(2025 年 10 月期+2026 年 4 月期)の賃貸事業収益と受取配当金 237 億円を数量・価格に分けた。数量は帳簿価額(不動産 2,566 億円+優先出資証券 200 億円)に稼働率 98.2% を掛けた規模、価格は収入 ÷ 数量。NOI は運営費 98 億円を引いて 139 億円、セグメントの利益は減価償却 33 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、賃料の転嫁が契約更新で遅れて 2/3 であること、優先出資証券の配当が横ばいであることのため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えによる利払いの急増
平均金利は 0.92%、平均残存は 3.7 年。3.5% に借り換わると、年の利払いは 14 億円から 52 億円になる。2028 年 4 月期までに約 437 億円、3 割が満期を迎える。
鑑定の利回りの低さ
NOI から資本的支出を引いた利回りは、鑑定評価額に対して 3.1%。新しい借入金利を下回る。キャップが 4.1% へ上がると、物件の価値は 2 割以上減る。
オフィスの新築供給と在宅勤務
NOI の 7 割がオフィス系。2027 年以降も都心の大型供給が続き、床の需要は実質で横ばい。稼働率より賃料を優先する方針は、空室が増えると転びやすい。
築年の古さと資本的支出
平均築 25.5 年で、資本的支出は年 28 億円、減価償却の 33 億円に近い。建築費は物価より速く上がるので、現金を食う。
スポンサーへの依存
取得の 85% が NTT 都市開発から。売買が一社に偏り、値段を比べる相手がいない。売却益 37 億円も同じ相手からだ。
圧縮積立金に頼る分配
今の分配水準は、圧縮積立金の取り崩し(102 百万円、264 百万円)を前提とする。積立金は 2026 年 4 月末で 14 億円しかなく、尽きると分配は利益に合わせて下がる。
今後の分かれ目
- 10 年国債の利回りが 2% 台前半へ戻り、借り換えが 2.5% 前後で済む
- 利払いの増加が小さくなり、純利益が 60 億円台を保つ。楽観側の確率を上げる。
- オフィスの入替賃料が 2 桁の増額を数年続ける
- NOI の伸びが年 3% に近づき、物価に追いつく。中立の見方を上げる。
- 借り換えで平均金利が 2% を超えて急上昇する
- 純利益の減りが想定より早まる。慎重側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- NTT 都市開発以外の第三者から物件を取得する
- 取得の偏りが薄まり、スポンサーの点数を下げる。
見ておくもの
- 入替時の賃料増額の幅(オフィス・住宅)
- 借り換えの金利と、2028 年 4 月期までの満期
- 鑑定のキャップレートの変更
- 資本的支出と減価償却の比
- 自己投資口の取得の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や NAV 倍率から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、純負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を NOI で加重した 4.11% で、今の鑑定の NCF 利回り 3.1% より高い。NAV(含み益)は床に使っていない。株価が高くても低くても、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.68% を足して 9.18%。物件の用途の分散は cycle に入れたので extra は置かない。