結論
日本プライムリアルティ投資法人は、東京建物が運用する J-REIT だ。取得価格の 80% が東京中心のオフィス、17% が商業施設、2% がホテル。65 物件で資産は 5,521 億円、鑑定評価額は 6,709 億円。筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。10 年の価値は、今の時価総額を 4 割余り下回る。
強みは、立地の良さと稼働の高さだ。東京が 84%、稼働率は 99.2% で、オフィスの賃料は 30 か月連続で上がっている。借入は有利子負債を鑑定評価額で割った LTV が 36%、格付けは JCR の AA と R&I の AA-。含み益は 1,454 億円ある。
弱みは、鑑定評価額に対する稼ぎが低いことだ。賃貸の稼ぎ(NOI)から改修費を引くと 3.2% しかなく、10 年国債が 3% の世界では物件の価値を保ちにくい。借入の平均金利は 1.00% と低く、借り換えで利払いが 3 倍以上に増える。
今の値段は NAV の 0.86 倍で安く見えるが、NAV は低い金利の上の鑑定で、割安の根拠にしない。スポンサーの点数は 2.3 で、悲観の確率は基本のままにした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この投資法人は、東京のオフィスに絞って持ち、築年を若返らせる、堅実な運用者だ。堀と呼べるほどの強みはないが、立地と稼働の高さ、低い借入、増資を NAV の近くで行う姿勢には筋が通っている。
問題は、今の低い金利を前提にした利益だ。借入の平均金利は 1.00% で、3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 23 億円から 83 億円に増える。純利益は 154 億円から 117 億円へ、2 割余り削られる。
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.2% だ。キャップが 4.43% まで上がれば、物件の価値は鑑定を 3 割弱下回る。含み益 1,454 億円は、その分だけ消える。
今の値段は NAV の 0.86 倍で安く見える。だが NAV は低い金利の上の鑑定で、筆者は割安の根拠にしない。10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 4 割余り下回る。
オフィスが 8 割の一点集中で、景気が悪くなれば全体が一度に落ちる。金利の上昇に最も弱い型だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、東京中心のオフィスビルの賃料だ。投資法人は建物と土地を持ち、テナントに貸して賃料を受け取る。直近 1 年の賃貸事業収入は 374 億円で、そこから償却を除く費用を引いた NOI(賃貸の稼ぎ)は 242 億円だった。
物件は 65 ある。取得価格の内訳は、オフィスが 80%、商業施設が 17%、ホテルが 2%。エリアは東京都心が 46%、東京周辺部が 38%、地方が 16%。上位は中野セントラルパークイースト、新宿センタービル、大手町タワー(底地)、オリナスタワー、東京スクエアガーデンだ。
契約は、オフィスの面積の 79% が普通借家、残りが定期借家。契約期間は平均 2.8 年と短く、2 年未満の契約が 23%、3 年未満までで 54%。賃料は更新のたびに市場へ寄せやすい。賃料の形は固定が 86%、歩合を足す形が 13%。
物件の取得は、スポンサーの東京建物の開発物件を使う。2020 年以降は 1,198 億円と 561 億円を取得し、築 28 年の古い物件を売って築 13 年の物件を買い、築年を若返らせている。直近 1 年の売却益は 36 億円で、一部を圧縮積立金として貯め、分配に回す。
運用報酬は年 16 億円で、NOI の 7% にとどまる。
優良さと弱いところ
物件の質は、東京のオフィスという一点に強みがあり、同じ一点が弱みにもなる。東京都心は空室率が 1.95% まで下がり、平均賃料は 30 か月連続で上がった。稼働は 99% を超え、テナントの賃料は更新で増える。
強みは三つある。ひとつめは、立地と築年だ。取得物件の築年は平均 13 年で、売却物件は 28 年。ふたつめは、含み益が 1,454 億円あり、鑑定評価額が簿価の 1.28 倍あること。みっつめは、借入が軽いこと。LTV は鑑定で 36%、格付けは AA で、公募増資に頼らず取得できる余力が約 670 億円ある。
弱みも三つある。ひとつは、オフィスが 80% を占め、景気と在宅勤務の浸透で空室が増えれば、全体が同時に落ちること。ふたつめは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。NOI から改修費を引くと 3.2% で、物件の価値は金利に敏感だ。みっつめは、地方と商業が 3 割あり、ここは賃料が伸びにくいことだ。
物件別の鑑定では、直接還元利回りが 2.8% から 4.0% に並ぶ。低い金利の上の値段で、金利が上がればこの利回りが先に動く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料が上がる局面にある。ただし大型の新築供給が 2027 年以降も続き、在宅の定着で床の需要は実質で横ばいと見る。賃料は契約の更新で遅れて上がり、物価の 3 分の 2 ほどしか転嫁しない。
業種の表では、都心の大型オフィスの期待キャップが 4.25%、地方・築古が 4.75%、商業とホテルが 5.0%。この投資法人は、東京オフィスが取得価格の約 67%、郊外と地方のオフィスが約 14%、商業が 17%、ホテルが 2% なので、中立のキャップは 4.43% になる。郊外・地方のオフィスは 4.5% に置いた。
今の鑑定の利回りは、NOI から改修費を引いて鑑定評価額で割ると 3.2% で、表より 1.2 ポイントほど低い。これは 10 年金利が 2% 前後の世界の値段で、3% に上がれば表に近づく。
賃料の伸びは、オフィスが年 2.0%、商業が年 1.5%、ホテルが年 2.25% で、加重した中立は年 2.0%。経費は物価で年 3% 伸びるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
資本政策と M&A
借入は 2,430 億円。有利子負債を鑑定評価額で割った LTV は 36.2%、簿価では 43.2%、時価では 34.3%。固定金利の比率は 84.2%、平均金利は 1.00%、平均の残りは 4.4 年。
2028 年 6 月期までの 2 年に、約 500 億円(約 2 割)の満期が来る。2026 年 6 月期の新規の借入金利は 1.49% で、返済分の 0.73% より 0.76 ポイント高い。会社は 3〜6 年の固定金利と長期変動金利を使い分け、返済期日を分散する。
増資は、直近 5 年で 2 回。2022 年 1 月と、2025 年 12 月の 10 万口の公募(発行価格は NAV の約 1.0 倍)だ。どちらも新しい物件の取得に使い、NAV 割れの増資ではなく、分配と NAV はそのあと増えた。自己投資口の取得と消却も、2025 年上半期に行った。
運用報酬は年 16 億円で、NOI の 7%。算定式は取得価格総額の 0.045%、総収入の 1.2%、分配金の 3.8% に連動する部分、売却益の 12.5% に分かれる。東京建物と関連会社の持分は投資口の 3.6% だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
立地が良く、稼働が高い。東京が 84%、稼働率は 99.2% で、東京都心の空室率は 1.95% まで下がり、賃料は 30 か月連続で上がっている。賃料の増額は更新ごとに続き、会社は分配金を年 4% 以上伸ばす目標を掲げた。
含み益は 1,454 億円で、含み益率は 28%。鑑定評価額は半数の物件で上がった。築 28 年の物件を売って築 13 年の物件を買い、築年を若返らせて改修費を抑える。
借入が軽い。LTV は鑑定で 36%、格付けは AA。時価 LTV を 40% までと置いた場合の取得余力は約 670 億円あり、増資に頼らず物件を買える。
スポンサーの東京建物から取得できる開発物件の候補は、資産の 8 割弱にのぼる。増資は NAV の近くで行い、分配も NAV も増えた。運用報酬は NOI の 7% と軽い。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% で伸び、キャップが 3.95% に下がり、時価総額は 4,928 億円と今の 1.35 倍になる。
慎重な見方
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。NOI から改修費を引くと 3.2% で、10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.43% まで上がる。物件の価値は鑑定を 3 割弱下回り、含み益 1,454 億円は消える。
借入 2,430 億円の平均金利は 1.00%。3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 23 億円から 83 億円へ 3.5 倍になる。約 500 億円が 2 年で満期を迎える。純利益は 154 億円から 117 億円へ減る。
オフィスが 80% を占め、景気が悪くなれば、空室と賃料の下落が同時に来る。大型の新築供給が 2027 年以降も続き、在宅勤務の定着で床の需要は伸びない。契約期間は平均 2.8 年と短く、下落も早く物件に響く。
やや悲観の筋書きでは、賃料の伸びが年 1% にとどまり、稼働が 96% に落ち、時価総額は 1,722 億円と今の 5 割弱になる。悲観では、物件の価値が借入と預り敷金を下回り、投資主の取り分はほとんど残らない。
どちらに重みを置いたか
立地、稼働、低い借入、NAV の近くで行う増資には、はっきりした根拠がある。ただ、鑑定評価額に対する稼ぎは 3.2% と低く、オフィスへの一点集中が景気と金利の両方に弱い。借り換えで利払いは 3 倍以上に増え、キャップも上がる。中立の価値は今の時価総額を 4 割余り下回った。筆者は、NAV に対する安さは値段に入っているが、金利の正常化は入っていないと見る。スポンサーの点数は 2.3 で、悲観の確率は基本のままにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 75,206 円3,045 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 31,935 円1,293 億円)。 今の値に割り戻すと 54,461 円2,205 億円、今との差 −39.5%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 163,829 円6,633 億円 | 39,519 円1,600 億円 | +125.9% | +8.5% | 20,335 円823 億円 |
| やや楽観 | 22% | 97,463 円3,946 億円 | 36,357 円1,472 億円 | +48.7% | +4.0% | 29,440 円1,192 億円 |
| 中立 | 38% | 75,011 円3,037 億円 | 33,418 円1,353 億円 | +20.5% | +1.9% | 41,203 円1,668 億円 |
| やや悲観 | 20% | 42,532 円1,722 億円 | 26,947 円1,091 億円 | −22.8% | −2.6% | 13,896 円563 億円 |
| 悲観 | 10% | 3,705 円150 億円 | 18,969 円768 億円 | −74.8% | −12.9% | 2,267 円92 億円 |
| 加重平均 | 100% | 75,206 円3,045 億円 | 31,935 円1,293 億円 | +19.0% | +1.8% | 107,141 円4,338 億円 |
今の株価時価総額 90,000 円3,644 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3% で伸び、キャップが今の 3.19% のまま 利益 166 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 163,829 円6,633 億円
東京都心の空室が締まり、更新ごとの賃料の増額が続く。賃料は年 3% で伸び、稼働は 99% を保つ。
借り換えは 3.3% で済む。年の利払いは 80 億円と今の 3.4 倍になる。それでも NOI は 242 億円から 324 億円へ 34% 増え、純利益は 166 億円と今より 1 割ほど増える。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.19% のまま変わらない。時価総額は 6,633 億円と今の 1.8 倍になる。
築年の若返りで資本的支出を抑え、増資を使わずに取得余力の約 670 億円で物件を買い増す。
商業とホテルでも、訪日客と物販の回復で歩合賃料が上乗せされ、全体の賃料の伸びを下支えする。
- 東京中心のオフィス賃貸:数量 5,202(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.6%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。賃料の増額と、附加使用料の増減を合わせた値)→ 売上 502 億円・営業利益 273 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 324 − 資本的支出 42) ÷ キャップ 3.19% − 純負債 2220 = 6633 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.19% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:東京のオフィス賃料の増額が続き、金利が落ち着く筋書き。オフィスへの偏りで上振れの幅が大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.35% 利益 141 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 97,463 円3,946 億円
賃料の増額が数年続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.985 になる。借り換えは 3.35% で、年の利払いは 82 億円になる。
NOI は 298 億円と 23% 増え、純利益は 141 億円と今を 1 割弱下回る。資本的支出は年 42 億円と今の 1.5 倍に増える。
物件の利回りは 4.15% に上がる。時価総額は 3,946 億円で、今の 1.08 倍になる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
東京都心の空室は締まったままで、売却益の一部を貯めた圧縮積立金が分配を支えるが、利払いの増加を打ち消すほどではない。
- 東京中心のオフィス賃貸:数量 5,176(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.2%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。賃料の増額と、附加使用料の増減を合わせた値)→ 売上 476 億円・営業利益 248 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 298 − 資本的支出 42) ÷ キャップ 4.15% − 純負債 2225 = 3946 億円。キャップは中立 4.43% より 0.28% 低い 4.15% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 3.5 倍になる 利益 117 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 75,011 円3,037 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は数年で 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の 23 億円から 83 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.98 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 242 億円から 273 億円へ 13% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 154 億円から 117 億円へ 2 割余り減る。
物件の利回りは 4.43% に上がる。資本的支出は年 40 億円と、今の 1.4 倍に増える。
時価総額は 3,037 億円で、今を 2 割弱下回る。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 4 割余り下回る。
- 東京中心のオフィス賃貸:数量 5,149(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.8%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。賃料の増額と、附加使用料の増減を合わせた値)→ 売上 451 億円・営業利益 225 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 273 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 4.43% − 純負債 2225 = 3037 億円。キャップは業種の表を NOI の比で加重した 4.43% (都心オフィス 4.25%、郊外・地方オフィス 4.5%、商業・ホテル 5.0%)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.2%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数が 2.3 で、悲観の確率は基本のまま 10%)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 64 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 42,532 円1,722 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.6% になる。大型の新築供給と在宅勤務の浸透で空室が増え、賃料は 10 年で年 1.0% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.96 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 222 億円と今の 8% 減る。年の利払いは 87 億円で、純利益は 64 億円と今の 4 割に縮む。資本的支出は年 38 億円に抑える。
物件の利回りは 4.68% に上がる。時価総額は 1,722 億円で、今の 5 割弱になる。
契約期間が平均 2.8 年と短いため、賃料の下落は物件に早く響く。
- 東京中心のオフィス賃貸:数量 5,044(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。賃料の増額と、附加使用料の増減を合わせた値)→ 売上 400 億円・営業利益 176 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 222 − 資本的支出 38) ÷ キャップ 4.68% − 純負債 2220 = 1722 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:オフィスの需要の弱さと新築の供給で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 賃料の下落と稼働の低下、金利の上振れ 利益 −30 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 3,705 円150 億円
不況でオフィスの空室が増える。賃料は年 1% ずつ縮み、稼働の係数は 0.92 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.25% になる。年の利払いは 108 億円で、NOI は 145 億円と今の 6 割に減る。純利益は 30 億円の赤字となり、分配は止まる。資本的支出は 32 億円に絞る。
物件の価値は、借入と預り敷金を引くとほぼ残らず、投資主の取り分は計算上マイナスになる。再建や増資で持ちこたえる余地を見て、時価総額は 150 億円を置いた。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
スポンサーの支援や、物件の売却で借入を減らす道は残るが、この筋書きでは頼らない。
- 東京中心のオフィス賃貸:数量 4,834(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.5%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。賃料の増額と、附加使用料の増減を合わせた値)→ 売上 314 億円・営業利益 100 億円。稼働 92%・賃料 年 -1.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 145 − 資本的支出 32) ÷ キャップ 4.93% − 純負債 2349 = 150 億円。キャップは中立 +0.5%。賃料の下落と稼働の低下で NOI が 4 割減り、物件の価値から借入を引いた額がほぼ消える。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 2.3 なので、悲観の確率は基本の 10%。不況でオフィスの空室が増え、同時に金利が上振れする筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
東京中心のオフィス賃貸
東京都心を中心に 65 物件(オフィス 80%、商業 17%、ホテル 2%)を、普通借家と定期借家でテナントに貸す。契約は平均 2.8 年で、更新のたびに賃料を市場へ寄せる。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。賃料の増額と、附加使用料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 5,213 | 7.2% | 374 | 198 |
| 10 年後 中立 | 5,149 | 8.8% | 451 | 225 |
取り方:過去 1 年(2025 年 12 月期+2026 年 6 月期)の賃貸事業収入 374 億円(売却益 37 億円を除く)を数量・価格に分けた。簿価 5,254 億円 × 稼働率 99.2% が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用 132 億円を引いて 242 億円、セグメントの利益は減価償却 44 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料の転嫁が契約の更新で遅れ、物価の 3 分の 2 ほどしか通らないため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.2%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.43% まで上がると、物件の価値が 3 割弱縮み、含み益 1,454 億円が消える。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 1.00%。3.4% 前後へ上がると、年の利払いは 23 億円から 83 億円へ増える。2028 年 6 月期までに約 500 億円の満期が来る。
オフィスへの偏り
オフィスは取得価格の 80%。景気の悪化や在宅勤務の浸透で空室が増えれば、全体が同時に落ちる。契約期間は平均 2.8 年と短い。
大型の新築供給
東京の大型の新築供給は 2027 年以降も続く。空室が締まっている今の賃料の上昇は、続かないおそれがある。
圧縮積立金と売却益への依存
直近 1 年の売却益は 36 億円。分配は売却益の一部を貯めた積立金で支えており、売れる物件が減ると分配の伸びが鈍る。
スポンサー依存の取得
保有物件の 53% がスポンサーからの取得で、パイプライン物件は 79%。取得価格が鑑定評価額を上回っていないかは、取得の都度見る必要がある。
今後の分かれ目
- オフィスの賃料の増額が想定を上回り、年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 東京の空室率が 5% を超え、2 期続けて賃料の増額が止まる
- オフィスの需要の頭打ちが確かめられ、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで再び公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。分配と NAV が減れば、スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得が進み、NAV 倍率が 0.8 倍台まで下がる
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- 東京オフィスの空室率と、更新時の賃料増減
- 借り換えの金利と 2028 年 6 月期までの満期
- 資本的支出と、減価償却との比
- 資産の入れ替えの実績と、売却益の還元
- スポンサーからの取得の値段と、増資・自己投資口の判断
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を NOI の比で加重した 4.43% で、今の NCF 利回り 3.2% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.01% を足した 8.51%。オフィスへの偏りは cycle に反映したので extra は置かない。