結論
日本都市ファンド投資法人は、旧日本リテールファンドで、商業施設を中心に、オフィス・住宅・複合型を持つ総合型の J-REIT だ。158 物件で、取得価格は 1.3 兆円、鑑定評価額は 1.6 兆円。運用会社は米 KKR の傘下にある。筆者の結論は、今の値段は大きく割高ということである。価値の計算は、今の時価総額を 54% 下回る。
強みは、賃料増額の勢いと、財務の強さだ。契約の更新や入替で、全ての用途で賃料が 6〜10% 上がっている。格付は JCR が AA で、借入の平均金利は 0.95% と低く、94% が固定だ。含み益は 2,966 億円ある。
弱みは三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎが低いことだ。NOI から資本的支出を引いた額は、鑑定評価額の 3.2% しかない。10 年国債が 3% の世界では、物件の価値は 3 割近く下がる。ふたつめは、資本的支出が年 116 億円と重く、増え続けていること。みっつめは、借り換えのたびに利払いが 4 倍近くに膨らむことだ。
運用報酬は NOI の 14% と重く、KKR の出資は 0.9% にとどまる。2024 年の増資は NAV を 2 割ほど下回る値段で行われた。今の値段は NAV の 8 割だが、筆者は割安の根拠にしない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、商業施設は、立地さえ良ければ、テナントの交代が利く賃貸業だ。ただし、堀は立地にあり、投資法人の力ではない。運用会社は、売却益を還元し、取得を重ねて分配を伸ばす構造だ。
過去 1 年の分配は、今の値段に対し 5.6% の利回りだ。売却益の還元が 1 割ほど混じる。借入の平均金利は 0.95% で、これが利益を支えている。借り換えが 3.5% 前後に進むと、年の利払いは 57 億円から 220 億円に増える。
さらに、鑑定評価額に対する稼ぎが低い。資本的支出を引くと 3.2% で、10 年国債が 3% の世界では価格が付かない水準だ。物件の価値は 3 割近く縮み、借入が重く効く。
NAV は物件の鑑定が高い今の姿で、清算されない限り投資主の手には入らない。今の値段は NAV の 8 割だが、筆者は割安の根拠にしない。
10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 5 割ほど下回る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、商業施設・オフィス・住宅の賃料だ。投資法人が持つのは建物と土地で、テナントに貸して賃料を受け取る。2026 年 2 月期の営業収益は 521 億円で、うち売却益が 66 億円、賃貸 NOI(賃料から費用を引いた稼ぎ)は 311 億円だった。
物件は 158 ある。取得価格では、商業が 56%(7,390 億円)、オフィスが 23%、複合型が 17%、住宅が 3% で、ホテルが 1%。商業の中身は、表参道・心斎橋などのハイストリート、駅前、郊外のイオンモールなどだ。三大都市圏が 89%、東京圏が 58% を占める。
賃料は固定が基本で、商業の一部に売上連動の歩合賃料がある。商業は定期建物賃貸借が 92% で、更新のたびに賃料を引き上げやすい。賃料は市場に対し約 10% 低く、この差の解消が成長の柱だ。
売却益は、ほぼ全額を分配に回す方針だ。2026 年 2 月期は 66 億円の売却益のうち 38 億円を分配に回した。2026 年 3 月には、つくばのオフィスを 107 億円で取得し、文京区のオフィスを 45.5 億円で売った。
過去 1 年の賃貸収入は 900 億円、NOI は 617 億円。簿価 1.28 兆円に対する NOI の利回りは 4.8% になる。
優良さと弱いところ
物件の質は、商業の立地に強みがある。表参道・原宿・心斎橋のハイストリートは、出店需要が強く、更新や入替で賃料を 3 割ほど上げた物件もある。稼働率は 99% で、安定している。一方で、郊外の大型商業施設は築年が古く、1 社のテナントに依存する。
強みは三つある。ひとつめは、含み益が 2,966 億円と、簿価の 23% あること。ふたつめは、格付が JCR の AA、R&I の AA- で、借入の平均金利が 0.95% と低いこと。みっつめは、賃料が市場より低く、増額の余地が大きいことだ。
弱みも三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。ふたつめは、資本的支出が年 116 億円で、減価償却の 1.0 倍と重いこと。みっつめは、商業の売上と消費の動きに、歩合賃料が連動することだ。
2026 年 2 月期は、オフィスの賃料が 10% を超えて上がり、成長を牽引した。ただし、これは過去の低い賃料からの戻りで、10 年続く伸びではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
商業施設は、消費と訪日客で動く。都心のハイストリートは、ブランドの出店需要が強く、2021 年から賃料が大きく上がった。ただし、ハイストリートの店は売上の振れが大きく、歩合賃料のある店の一部は、前年を下回る月もある。
郊外の大型商業施設は、人口減と EC に押される。定期建物賃貸借で、賃料は固定に近いが、更新時に減額を迫られる恐れがある。
オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料が上がっている。大阪・名古屋も堅調だが、大型の新築供給が 2027 年以降も続く。住宅は、賃貸需要が強く、入替時の増額が 1 割近い。
総合型は、用途ごとの波が互いに打ち消し合う利点がある。ただし、全体を引っ張るのは商業で、NOI の 6 割を占める。
業種の表では、商業の期待キャップは 5.0%、オフィス(都心)は 4.25%、住宅は 3.75%、ホテルは 5.0%。NOI の比で加重した中立のキャップは 4.75% になる。賃料の伸びは、更新による増額で当面は強いが、10 年の中立では年 2.0% に置いた。
資本政策と M&A
借入は 6,296 億円で、有利子負債を鑑定評価額で割った比率は 40%、総資産に対しては 46%。固定金利の比率は 94%、平均金利は 0.95%、平均の残りは 4.0 年だ。JCR が AA、R&I が AA- の高い格付で、借入先も分散している。
2026 年 2 月期に 474 億円を借り換え、平均金利は 1.27% から 1.72% に上がった。満期は、2026 年 8 月期から 2028 年 2 月期までに約 1,545 億円、全体の 25% が来る。借り換えのたびに利払いが膨らむ。
増資は、2024 年に 214,300 口を、NAV の 8 割弱の値段で行った。取得を急ぐ場面で NAV 割れの増資を使うため、既存の投資主の NAV は薄まった。
運用報酬は、半期に 42 億円、年 84 億円で、NOI の 14% にあたる。J-REIT の中でも重い部類だ。
分配は、売却益の還元と圧縮積立金を使って、段階的に引き上げてきた。実力の 1 口利益に対して、還元額の上乗せが約 2 割ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料が市場より約 10% 低く、更新や入替で増額が通っている。2026 年 2 月期は、オフィスの増額が 10% を超え、商業は更新で 6%、入替で 3 割上がった。3 年で NOI を 9.7% 伸ばす計画で、これはほぼ確定に近い。
格付は JCR の AA。借入の平均金利は 0.95% と低く、94% が固定だ。借り換えは、1.72% で実行できた。コミットメントラインの未使用枠も 750 億円ある。
含み益は 2,966 億円、NAV の 8 割という値段は、安全域になる。売却益を毎期ほぼ全額、分配に還元する仕組みで、分配の底が上がる。
KKR のネットワークで、1 件 100〜150 億円規模の取得を重ね、外部成長でも分配を押し上げる。ハイストリートの出店需要は強く、賃料の上昇は当面続く。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% で伸び、キャップが 4.25% に下がり、時価総額は 9,660 億円と今の 1.3 倍になる。
慎重な見方
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。賃料から改装費を引くと 3.2% で、10 年国債が 3% の世界では説明がつかない。キャップが 4.75% まで上がると、物件の価値は鑑定を 3 割近く下回る。借入が重く効いて、投資主の取り分は 4 割ほどに縮む。
借入 6,296 億円の平均金利は 0.95%。3.5% 前後に借り換わると、年の利払いは 4 倍近くになる。2028 年 2 月期までに 25% が満期を迎える。
資本的支出は年 116 億円と、減価償却と同じ水準で、増え続けている。運用報酬は NOI の 14% と重い。
KKR の出資は 0.9% にとどまり、2024 年の増資は NAV の 8 割弱の値段だった。
やや悲観の筋書きでは、賃料が 10 年でほぼ伸びず、NOI は 537 億円に落ちる。時価総額は 1,121 億円と、今の 15% にすぎない。
悲観の筋書きでは、物件の価値が借入と預り敷金を下回り、投資主の取り分はほぼ消える。
どちらに重みを置いたか
賃料増額の勢いと、AA の格付、低い借入金利には根拠がある。ただ、鑑定評価額に対する稼ぎが低く、資本的支出の重さと金利の上昇が、投資主の取り分を大きく削る。中立の価値は今の時価総額を 5 割以上下回った。スポンサーの点数は 3.2 で、悲観の確率を 5 ポイント上げた。筆者は、賃料増額の勢いは値段に入っているが、金利の正常化の影響は入っていないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 68,794 円4,949 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 36,425 円2,620 億円)。 今の値に割り戻すと 51,295 円3,690 億円、今との差 −50.3%、 期待の年率 +0.2%(資本コスト 9.4%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 210,057 円1.51 兆円 | 48,267 円3,472 億円 | +150.3% | +9.6% | 25,832 円1,858 億円 |
| やや楽観 | 22% | 100,094 円7,200 億円 | 43,847 円3,154 億円 | +39.5% | +3.4% | 31,667 円2,278 億円 |
| 中立 | 33% | 68,634 円4,937 億円 | 39,273 円2,825 億円 | +4.6% | +0.4% | 35,609 円2,561 億円 |
| やや悲観 | 20% | 15,584 円1,121 億円 | 27,248 円1,960 億円 | −58.5% | −8.4% | 8,566 円616 億円 |
| 悲観 | 15% | 14 円1 億円 | 23,619 円1,699 億円 | −77.1% | −13.7% | 3,545 円255 億円 |
| 加重平均 | 100% | 68,794 円4,949 億円 | 36,425 円2,620 億円 | +2.0% | +0.2% | 105,220 円7,569 億円 |
今の株価時価総額 103,200 円7,423 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.4% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料増額が続き、年 3% で増える 利益 355 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 210,057 円1.51 兆円
賃料は市場より約 10% 低い所から戻り、更新と入替で増額が続く。オフィスも商業も強く、賃料は年 3% で伸びる。稼働は 100% に近く、取得も積み上がる。
借り換えは 3.3% で済み、年の利払いは 217 億円と今の 4 倍近くになる。それでも NOI は 617 億円から 829 億円へ 34% 増え、純利益は 355 億円と今をやや上回る。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.18% のまま変わらない。時価総額は 1 兆 5,110 億円と今の 2.0 倍になる。
増資は NAV を上回る値段で行われ、希薄化は小さい。
- 商業・オフィス・住宅の賃貸:数量 12,762(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.5%(規模に対する営業収益の比(今 7.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 1,209 億円・営業利益 697 億円。稼働 100%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 829 − 資本的支出 140) ÷ キャップ 3.18% − 純負債 6550 = 15110 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.18% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:賃料ギャップの解消が続き、オフィスと商業の賃料が年 3% 伸びる筋書き。賃料の増額余地が大きい総合型は、楽観の幅が大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.4% 利益 291 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 100,094 円7,200 億円
賃料の増額は 5 年ほど続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.995 になる。借り換えは 3.4% で、年の利払いは 224 億円になる。
NOI は 766 億円と 24% 増えるが、利払いの増加で、純利益は 291 億円と今の 14% 減になる。資本的支出は年 146 億円と今の 1.3 倍に増える。
物件の利回りは 4.5% に上がる。時価総額は 7,200 億円で、今の値段をわずかに下回る。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
- 商業・オフィス・住宅の賃貸:数量 12,699(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.0%(規模に対する営業収益の比(今 7.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 1,146 億円・営業利益 635 億円。稼働 100%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 766 − 資本的支出 146) ÷ キャップ 4.50% − 純負債 6570 = 7200 億円。キャップは中立 4.75% より 0.25% 低い 4.5% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 33% 賃料は物価に負け、利払いが 4 倍になる 利益 225 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 68,634 円4,937 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.5% へ借り換わる。年の利払いは今の 57 億円から 230 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.985 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 617 億円から 700 億円へ 13% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 340 億円から 225 億円へ 34% 減る。
物件の利回りは 4.75% に上がる。資本的支出は年 152 億円と、今の 1.3 倍で、減価償却を上回る。
時価総額は 4,937 億円で、今の 7 割弱になる。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 5 割ほど下回る。
- 商業・オフィス・住宅の賃貸:数量 12,571(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.6%(規模に対する営業収益の比(今 7.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 1,080 億円・営業利益 570 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 700 − 資本的支出 152) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 6600 = 4937 億円。キャップは業種の表を NOI で加重した 4.75% (商業 5.0%、オフィス 4.25%、住宅 3.75% など)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.2%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 33%(スポンサーの点数 3.2 で悲観に 5 ポイント回した)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 52 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 15,584 円1,121 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.8% になる。賃料ギャップの解消が一巡し、オフィスの供給と消費の鈍化で、賃料は 10 年で年 0.5% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.97 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 537 億円と今の 13% 減る。年の利払いは 249 億円で、純利益は 52 億円と今の 15% に縮む。資本的支出は年 146 億円に抑える。
物件の利回りは 5.0% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本の 2 割に満たない。
KKR の出資は 0.9% で、増資で希薄化が進む恐れがある。
- 商業・オフィス・住宅の賃貸:数量 12,379(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.4%(規模に対する営業収益の比(今 7.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 917 億円・営業利益 409 億円。稼働 97%・賃料 年 +0.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 537 − 資本的支出 146) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 6700 = 1121 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:賃料ギャップの解消が一巡し、オフィスの新規供給と消費の鈍化で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 15% 消費の落ち込みと金利の上振れ 利益 −134 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 14 円1 億円
不況で商業の売上が落ち、オフィスの空室が増える。賃料は年 1% ずつ縮み、稼働の係数も 0.94 に落ちる。郊外の商業施設では、テナントの撤退や減額が出る。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.5% になる。年の利払いは 293 億円で、NOI は 385 億円と今の 4 割近く減る。純利益は赤字に沈み、分配は出せなくなる。資本的支出は 100 億円に絞る。
物件の価値は借入と預り敷金を下回り、投資主の取り分は消える。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
- 商業・オフィス・住宅の賃貸:数量 11,997(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.4%(規模に対する営業収益の比(今 7.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 765 億円・営業利益 259 億円。稼働 94%・賃料 年 -1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 385 − 資本的支出 100) ÷ キャップ 5.25% − 純負債 6800 = 1 億円。キャップは中立 +0.5%。物件の価値が純負債を下回るので、時価総額は再建の見込みの分だけを置く。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3.2 なので、悲観の確率を基本の 10% から 5 ポイント上げて 15%。商業とオフィスが同時に弱る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
商業・オフィス・住宅の賃貸
商業施設・オフィス・住宅・複合型 158 物件を、定期借家(一部は歩合賃料付き)でテナントに貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する営業収益の比(今 7.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 12,686 | 7.0% | 900 | 504 |
| 10 年後 中立 | 12,571 | 8.6% | 1,080 | 570 |
取り方:過去 1 年(2025 年 8 月期+2026 年 2 月期)の営業収益から売却益を除いた 900 億円を数量・価格に分けた。簿価(鑑定評価額から含み益を引いた 1 兆 2,762 億円)× 係数 1.00 が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用を引いて 617 億円、セグメントの利益は減価償却 113 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、賃料増額の余地が当面あっても、10 年の長さで賃料ギャップが解消し、伸びが鈍るため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.2%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.75% まで上がると、物件の価値が 3 割近く縮み、含み益 2,966 億円が消える。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 0.95%。3.5% 前後へ上がると、年の利払いは 57 億円から 220 億円まで増える。2028 年 2 月期までに約 1,545 億円の満期が来る。
資本的支出の重さ
年の資本的支出は 116 億円で、減価償却と同じ水準。2 年で 3 割ほど増えている。築年の古い郊外の商業施設が多い。
商業の売上と消費への連動
商業は NOI の 6 割。歩合賃料と、ハイストリートの出店需要が、消費と訪日客に連動する。郊外の商業施設は、更新時に減額を迫られる恐れがある。
運用報酬と外部成長の質
運用報酬は NOI の 14% と重い。外部成長の取得は、利回りが 4.7〜6.1% と低めで、NAV 割れの増資を使う場面もある。
スポンサーとの距離
KKR グループの出資は 0.9%。2024 年の増資は NAV の 8 割弱の値段で、NAV 割れの増資は 1 口の価値を薄める。
今後の分かれ目
- 賃料の増額が想定を上回り、オフィス・商業の賃料が年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 郊外の商業施設で、大口テナントが撤退・減額する
- 悲観側の確率を上げる。NOI の 6 割を占める商業が崩れると、分配への影響が大きい。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- KKR グループが投資口の買い増しを行う
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- 契約更改・入替の賃料増減率(商業・オフィス・住宅)
- 借り換えの金利と 2028 年 2 月期までの満期
- 資本的支出の推移と、減価償却との比
- 歩合賃料の上位施設の売上
- スポンサーの出資比率と増資の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を NOI で加重した 4.75% で、今の NCF 利回り 3.2%(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った)より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.89% を足した 9.39%。用途の分散は cycle に反映したので extra は置かない。