結論
阪急阪神リート投資法人は、関西圏の商業施設を中心にした J-REIT だ。38 物件、資産規模 1,829 億円。賃貸事業収入の 51% は地域密着型商業施設(スーパーなどの敷地や建物)、23% は都市型商業施設、14% は複合施設、オフィスは 11%。関西圏が 83%、商業用途の区画が 84% を占める。スポンサーは阪急阪神不動産で、14.9% を保有する。
筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。10 年後の物件の売値を、商業の表に合わせた 4.92% の利回りで見ると、10 年後の価値と配当を今に引き直した額は 545 億円。今の時価総額 868 億円を 37% 下回る。
追い風はある。借入は鑑定評価額の 39.6% と軽く、平均金利は 0.98%、固定比率は 84%、2 年内の満期は 17% にとどまる。稼働率は 98.9%。地域密着型商業は契約が長く、分配の土台が固い。投資口は 1 口 NAV の 0.66 倍まで売られている。
ただ、商業は賃料の伸びが年 1.5% 程度と遅い。経費が年 3% で伸びるため、NOI は 10 年で 6% しか増えない。鑑定の NCF 利回り 3.3% と、表のキャップ 4.9% の差が大きく、物件の値段が下がる余地が大きい。
市場が付けている利回りは NOI ベースで 5.0%。筆者の置く中立のキャップは、NCF ベースで 4.92%。この食い違いが、割安に見えて割安でない理由だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この法人は「安定した借り手と軽い借入で、手堅く分配を出す」型だ。地域密着型商業は契約が長く、借入は軽い。この安定は評価できる。ただし、安全域がどこにあるかを見極める必要がある。
NAV の 0.66 倍は割安に見える。しかし、NAV は鑑定の NCF 利回り 3.3% を前提にしている。借り換えで金利が 3% 台に上がる世界で、商業のキャップが 4.9% まで上がれば、物件の価値は 3 割以上減る。
賃料の伸びは年 1.5% と遅く、経費は年 3% で伸びる。NOI は 10 年で 6% しか増えない。借り換えで利払いが年 9 億円から 30 億円に増え、純利益は 46 億円から 29 億円へ 4 割近く減る。
10 年の分配と 10 年後の売値を今に引き直すと、今の値段は 4 割近く高い。筆者は、安定は認めるが、成長が遅い資産に今の値段は払いすぎと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は賃料だ。直近 1 年(2025 年 11 月期+2026 年 5 月期)の不動産賃貸事業収益は 127 億円。そこから運営費を引いた NOI(純収益)は 88 億円になる。物件の売却益は 2025 年 11 月期にあったが、繰り返せる収益ではないので除いて見る。
資産は 38 物件。賃貸事業収入の内訳は、地域密着型商業施設が 51%、都市型商業施設が 23%、複合施設が 14%、オフィスが 11%、その他が 1%。地域密着型の多くはスーパーやホームセンターの敷地で、長期の賃貸借が基本。都市型は梅田の HEP ナビオやなんばの物件などで、売上連動の歩合賃料が混ざる。
関西圏が 83%(取得価格ベース)、商業用途の区画が 84%。稼働率は 98.9%。ただしオフィスは 96.6% と、前期より 2.6 ポイント下がった。
第 42 期(2025 年 12 月〜2026 年 5 月)の分配は予想を上回り、第 43 期の予想はさらに増える。ホテルの歩合は想定を下回ったが、都市型商業の歩合が補った。
資本的支出は第 42 期が 7.8 億円。前期の数字が取れないため、2 倍して年 15.6 億円と置いた。減価償却は年 21 億円。
優良さと弱いところ
この法人の優良さは、スポンサーの沿線と、長期契約の商業にある。阪急阪神ホールディングスのグループの開発・取得情報を使い、関西圏の梅田・なんば・京都に物件を持つ。地域密着型商業は契約残存が長く、期中の改定や見直しで着実に賃料を上げてきた。
強みの一つ目は、財務の保守性だ。鑑定評価額で割った借入は 39.6%、平均金利は 0.98%、固定比率は 84%、2 年内の満期は 17%。格付けは JCR が AA−。二つ目は、運用報酬の軽さ。総資産の 0.15% と、分配金に連動する部分が中心で、取得報酬も 0.5% と半分。
弱みは三つある。一つ目は、賃料の伸びが遅いこと。商業は固定賃料が基本で、物価に追随しにくい。二つ目は、取得の約 7 割がスポンサーグループ経由で、値付けを比べる相手が少ないこと。三つ目は、築 40 年超の北野阪急ビルなど、更新費がかさむ物件が混ざることだ。
筆者は、事業の質を「並」と見る。安定は本物だが、成長が遅く、値段が先に織り込んでいる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
関西圏の商業は、人口の減少と EC の拡大を受けるが、日用品を扱うスーパーやドラッグストアは需要が底堅い。この法人の地域密着型商業は、こうした業態を借り手にした長期契約の敷地や建物が中心。都市型商業は訪日客の売上に連動する歩合賃料があり、景気の振れを受ける。
オフィスは梅田や東京の中規模ビルで、稼働率は 96.6%。賃料ギャップを使った増額余地は残るが、構成は 11% と小さい。
業種の表では、キャップレート(NCF ÷ 物件価値の利回り)は商業 5.0%、オフィス 4.25%。この法人は賃貸事業収入ベースで商業系が約 88%、オフィスが約 11% なので、加重すると 4.92% になる。敷地(底地)が多く、一般にキャップは建物より低い点は、表では織り込んでいない。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割ると 3.29%。J-REIT 全体では、上場の値段から逆算したキャップレートの中央は 4.2% 前後。この法人は NAV の 0.66 倍で、逆算の利回りは NCF ベースで 4.2% 前後と、中央に近い。市場は、鑑定をおおむね割り引いて見ている。
資本政策と M&A
借入は 868 億円(借入金 792 億円、投資法人債 76 億円)。総資産に対する比率(LTV)は 47.5%、鑑定評価額で割ると 39.6% だ。平均金利は 0.98%、固定比率は 83.6%、平均残存は 4.2 年。格付けは JCR が AA−、R&I が A+。
満期は分散している。1 年内に 46.5 億円(5%)、2 年内に累計 148.5 億円(17%)。今の金利は 1% 前後で、10 年のうちに全額が市場の 3% 台へ借り換わる。第 44 期の予想では、半期の支払利息は 5.8 億円に増える。
投資口は 695,200 口で、直近の公募増資の価格は未確認。投資口価格は NAV の 0.66 倍で、今は増資しにくい。物件の取得は、借入と敷金の活用、低利回り物件の売却でまかなう計画。
運用報酬は、総資産の 0.15% と、分配可能額 × NOI × 0.0011% の二本立て。直近は半期で 4.5 億円。取得報酬は取得価格の 0.5%。スポンサーの阪急阪神不動産は 14.9% を保有する。分配は圧縮積立金の取り崩しを少し含み、配当性向は 100.4%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
投資口は NAV の 0.66 倍まで売られた。分配の利回りは 5.3% と高い。鑑定評価額は簿価を 473 億円上回り、鑑定が少し下がっても NAV は今の 0.9 倍前後を保つ。
借入は軽い。鑑定評価額で割ると 39.6%、平均金利は 0.98%、2 年内の満期は 17%。AA− の格付けが借り換えの金利を抑える。
地域密着型商業は契約が長く、期中改定や見直しで賃料を上げてきた。小野原・豊中豊南・五条西小路などで増額を実現し、稼働率は 98.9%。運用報酬は軽く、スポンサーは 14.9% を保有して利益の向きが揃う。
スポンサーの梅田の開発も進む。物件の取得機会は、スポンサーグループから優先的に回る。2026 年 7 月から 12 月にかけての約 100 億円の取得は、分配金の成長要因になる。
楽観の筋書きでは、賃料が年 2.5% 伸び、キャップは今の鑑定の NCF 利回り 3.29% で止まる。時価総額は 1,977 億円と今の 2.3 倍になる。
慎重な見方
商業は賃料が固定で、物価に追随しにくい。賃料の伸びは年 1.5% 程度。経費は物価で年 3% 伸びるため、NOI は 10 年で 6% しか増えない。建築費の上昇で、資本的支出は今の 1.4 倍に膨らむ。
借り換えで利払いが増える。今の金利は 0.98% と低く、10 年のうちに市場の 3.4% 前後へ上がる。年の利払いは 9 億円から 30 億円に増え、純利益は 46 億円から 29 億円へ 4 割近く減る。
NAV の 0.66 倍という数字は、割安の証拠ではない。鑑定の NCF 利回りは 3.3% で、商業の表の 5.0%、加重した 4.92% より大きく低い。キャップが 4.92% に上がれば、物件の価値は鑑定の 2,193 億円から 1,450 億円ほどに下がる。
取得の約 7 割がスポンサーグループ経由で、値付けを比べにくい。今も、7 月から 12 月にかけて約 100 億円の取得を予定し、70 億円の借入を前提にしている。
悲観の筋書きでは、稼働が 96.5% に下がり、借り換えが 4.3% になる。純利益は消え、時価総額は 54 億円まで縮む。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実を言っている。借入の軽さと商業の安定は本物だが、成長が遅く、キャップが上がると値段が一気に下がる。筆者は、商業の表のキャップを物差しに置いたため、割高の幅は大きく出る。敷地(底地)が多く、一般にキャップが低めになる点は織り込めていない。スポンサーの点数は 2.6 で、悲観の確率は 10% のまま置いた。筆者は、割高と見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 97,109 円675 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 52,192 円363 億円)。 今の値に割り戻すと 78,387 円545 億円、今との差 −37.0%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 8.4%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 284,379 円1,977 億円 | 68,757 円478 億円 | +183.9% | +11.0% | 28,251 円196 億円 |
| やや楽観 | 20% | 173,475 円1,206 億円 | 61,277 円426 億円 | +88.7% | +6.6% | 46,951 円326 億円 |
| 中立 | 40% | 84,005 円584 億円 | 54,229 円377 億円 | +11.1% | +1.1% | 55,293 円384 億円 |
| やや悲観 | 22% | 24,022 円167 億円 | 42,434 円295 億円 | −46.6% | −6.1% | 14,620 円102 億円 |
| 悲観 | 10% | 7,768 円54 億円 | 34,091 円237 億円 | −66.4% | −10.3% | 4,186 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 97,109 円675 億円 | 52,192 円363 億円 | +20.0% | +1.8% | 149,301 円1,038 億円 |
今の株価時価総額 124,400 円865 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.4% を下回るほど割高。
楽観 8% 商業の増額が進み、キャップは今の鑑定の利回りが続く 利益 49 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 284,379 円1,977 億円
地域密着型商業の期中改定が続き、都市型商業の歩合賃料も伸びる。オフィスの賃料ギャップも埋まり、賃料は年 2.5% の伸びになる。稼働は 99% に近づく。
借り換えは AA− 格のおかげで 3.0% で収まり、年の利払いは 27 億円。NOI は 88 億円から 110 億円へ 25% 増え、純利益は 49 億円と今を上回る。
不動産の売買市場は低金利の値付けを続け、キャップは 3.29% のままだ。物件の価値が 2,800 億円に達し、時価総額は 1,977 億円と今の 2.3 倍になる。
低利回りの物件を売って、借入を軽く保つ。ただし、その効果は計算に入れていない。
- 関西圏の商業施設・オフィスの賃貸:数量 1,702(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.6%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 163 億円・営業利益 89 億円。稼働 99%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 110 − 資本的支出 17) ÷ キャップ 3.29% − 純負債 850 = 1977 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引き、鑑定評価額で割った 3.29%)。今の値付けが 10 年続く筋書きで、楽観はここまで下げてよい。
確率:地域密着型商業の期中改定と都市型の歩合が伸び、キャップが今の鑑定の NCF 利回り 3.29% のまま 10 年続く筋書き。基本どおり 8% とした。
やや楽観 20% 賃料は年 2%、キャップは商業の下限 4.0% まで下がる 利益 39 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 173,475 円1,206 億円
地域密着型商業の改定が続き、賃料は年 2% の伸びで、稼働率は 98.5% を保つ。
借り換えは 3.2%。年の利払いは 29 億円に増えるが、NOI は 101 億円と 15% 増え、純利益は 39 億円で今を下回る。
売買市場は、商業の下限 4.0% で値付けする。物件の価値は 2,060 億円ほどで、純負債 855 億円を引くと、時価総額は 1,206 億円。
ただし、郊外型や築古の商業は鑑定の値上がりが小さい。売買市場が商業の下限で値付けしても、全体のキャップは 4% を割れない。借入が軽いので、分配は守られるが、成長は遅いままだ。
- 関西圏の商業施設・オフィスの賃貸:数量 1,694(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.1%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 154 億円・営業利益 80 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 101 − 資本的支出 19) ÷ キャップ 4.00% − 純負債 855 = 1206 億円。キャップは商業の下限 4.0% で、今の鑑定の NCF 利回り(3.29%)より高い。
確率:賃料が物価の 6 割ほど追随し、キャップが商業の下限 4.0% まで下がる筋書き。ありうる上振れとして 20% とした。
中立 40% 賃料は年 1.5% で伸び、キャップが 4.92% に上がる 利益 29 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 84,005 円584 億円
借入は今の 1% 前後から、市場の 3.4% へ順に借り換わる。年の利払いは 9 億円から 30 億円に増える。稼働率は 98% に下がる。
賃料は年 1.5% で伸びる。商業の固定賃料は物価に追随しにくい。経費は物価で年 3%。NOI は 88 億円から 93 億円へ、10 年で 6% しか伸びない。そこから資本的支出 22 億円が出る。
減価償却は 21.5 億円、運用報酬などは 12.5 億円。純利益は 46 億円から 29 億円へ、4 割近く減る。分配は、圧縮積立金の取り崩しがなくなり、今より 4 割ほど下がる。
物件の売値は、キャップ 4.92% で 1,450 億円ほど。そこから純負債 865 億円を引くと、時価総額は 584 億円になる。
- 関西圏の商業施設・オフィスの賃貸:数量 1,685(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 146 億円・営業利益 72 億円。稼働 98%・賃料 年 +1.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 93 − 資本的支出 22) ÷ キャップ 4.92% − 純負債 865 = 584 億円。キャップは業種の表を収入の比で加重した 4.92%(商業系 5.0%、オフィス 4.25%)。今の NCF 利回り(3.29%)より高い。
確率:10 年金利が 3% 前後に落ち着き、賃料は年 1.5% で伸びる筋書き。最も起こりやすい。スポンサーの点数は 2.6 で 3 未満のため、悲観の確率は基本の 10% のまま、中立は 40% とした。
やや悲観 22% 商業の賃料が頭打ちになり、キャップが 5.17% に上がる 利益 13 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 24,022 円167 億円
商業の期中改定が止まり、一部のテナントが減額を求める。賃料の伸びは年 0.5% にとどまる。稼働率も 97% に下がる。
借り換えは 3.6%。年の利払いは 32 億円。NOI は 78 億円と今より 11% 減り、純利益は 13 億円に縮む。
分配は借入の返済を優先して絞り、圧縮積立金も使い切る。含み益は縮み、投資口価格は純資産を下回ったまま戻らない。スポンサー経由の取得も止まり、外部成長の型が働かなくなる。借入は軽いので、すぐに行き詰まりはしないが、分配の増額は望めない。
キャップは 5.17% に上がる。物件の価値は 1,050 億円ほどで、純負債 880 億円を引くと、時価総額は 167 億円だ。
- 関西圏の商業施設・オフィスの賃貸:数量 1,668(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 131 億円・営業利益 57 億円。稼働 97%・賃料 年 +0.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 78 − 資本的支出 24) ÷ キャップ 5.17% − 純負債 880 = 167 億円。キャップは中立 4.92% に 0.25 ポイント上乗せして 5.17% (金利の上振れと、商業の売り)。
確率:EC の拡大とテナントの出店抑制で、商業の賃料が頭打ちになる筋書き。借り換えの上乗せも重なる。22% とした。
悲観 10% 商業の賃料が崩れ、金利上昇で物件の価値が借入に近づく 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 7,768 円54 億円
商業のテナントが減額と退去を求め、歩合賃料も落ちる。全体の稼働率は 96.5% に下がり、賃料は年 0.2% 下がる。
借り換えは 4.3% になり、年の利払いは 38 億円。NOI は 71 億円と今の 8 割弱まで減り、純利益はゼロになる。
分配は止まり、増資もできず、借入の返済を優先して物件を売る。売却は買い手が細る局面で、値付けも下がる。AA− の格付けは維持できても、借り換えの条件は厳しくなり、投資口価格は NAV を大きく下回ったまま回復しない。スポンサーの支えは、物件の買い支えまでは及ばない。
キャップは 5.42% まで上がり、物件の価値は 945 億円ほど。純負債 890 億円を引くと、時価総額は 54 億円にとどまる。
- 関西圏の商業施設・オフィスの賃貸:数量 1,659(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.3%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 122 億円・営業利益 50 億円。稼働 96%・賃料 年 -0.2%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 71 − 資本的支出 20) ÷ キャップ 5.42% − 純負債 890 = 54 億円。キャップは中立 4.92% に 0.50 ポイント上乗せして 5.42%。物件の価値が純負債に近づき、時価総額は自己資本の 1 割以下になる。
確率:スポンサーの点数 2.6 は 3 未満なので、悲観の確率は基本の 10% のまま。商業の賃料の減額と借り換え金利の上昇が同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
関西圏の商業施設・オフィスの賃貸
国内 38 物件を持ち、地域密着型商業施設(51%)、都市型商業施設(23%)、複合施設(14%)、オフィス(11%)から賃料を受ける。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,701 | 7.5% | 127 | 67 |
| 10 年後 中立 | 1,685 | 8.7% | 146 | 72 |
取り方:直近 1 年(2025 年 11 月期+2026 年 5 月期)の不動産賃貸事業収益 127 億円を数量・価格に分けた。売却益は繰り返せないので除く。数量は期末の帳簿価額 1,720 億円に稼働率 98.9% を掛けた規模、価格は収入 ÷ 数量。NOI は運営費 39 億円を引いて 88 億円、セグメントの利益は減価償却 21 億円を引いた額。簿価が古い取得で低く、価格は高めに出る。中立の価格は 10 年で 1.16 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、商業の固定賃料が物価に連動しにくいため(業種ノート)。2026 年 7〜12 月に予定される約 100 億円の取得は入れていない。
リスクと懸念
賃料の伸びの遅さ
商業は固定賃料が基本で、物価に追随しにくい。経費が年 3% で伸びると、NOI は賃料より遅く、10 年で 6% しか増えない。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 0.98%。10 年のうちに 3.4% 前後へ借り換わると、年の利払いは 9 億円から 30 億円になる。純利益は 4 割近く減る。
キャップレートの上昇
鑑定の NCF 利回りは 3.3%。商業の表の 5.0% に近づけば、物件の価値は 3 割以上減る。
スポンサー経由の取得
累計の取得の約 7 割がスポンサーグループ経由。値付けを比べにくく、利益相反の余地が残る。
資本的支出の増加
直近は半期 7.8 億円で、減価償却の 21 億円の年額を下回る。築 40 年超の物件の更新が続けば膨らむ。建築費は物価より速く上がる。
オフィスの稼働の低下
オフィスの稼働率は 96.6% と、前期より 2.6 ポイント下がった。構成は 11% と小さいが、賃料ギャップの増額が止まる可能性がある。
今後の分かれ目
- 10 年国債の利回りが 2% 台前半へ戻り、借り換えが 2.5% 前後で済む
- 利払いの増加が小さくなり、純利益が 40 億円近くを保つ。楽観側の確率を上げる。
- 地域密着型商業の期中改定が年 3% 近くまで広がる
- NOI の伸びが年 2% を超える。中立の見方を上げる。
- 都市型商業の歩合が落ち、オフィスの稼働率が 95% を下回る
- NOI の減りが想定より早まる。慎重側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 低利回りの物件を売って、借入を返済する
- LTV が下がり、利払いの増加が小さくなる。中立の見方を上げる。
見ておくもの
- 地域密着型商業の期中改定の増額率
- 借り換えの金利と、満期の分散
- オフィスの稼働率と賃料ギャップ
- 資本的支出と減価償却の比
- スポンサー経由の取得の割合
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や NAV 倍率から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、純負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を収入の比で加重した 4.92% で、今の鑑定の NCF 利回り 3.29% より高い。NAV(含み益)は床に使っていない。基本の資本的支出は、前期の数字が取れず第 42 期を 2 倍した年 15.6 億円なので、今の 1.4 倍の 22 億円に置いた。
資本コスト 8.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.87% を足して 8.37%。用途の分散は cycle に入れたので extra は置かない。