結論
エスコンジャパンリートは、スーパーや家電量販店などが入る郊外の商業施設と、その土地だけを貸す底地を中心に 36 物件を持つ REIT だ。スポンサーは中部電力の子会社のエスコンである。筆者の結論は、今の値段はやや割高ということだ。価値の計算は今の値段を 2 割あまり下回る。
いちばんの理由は、賃料が伸びにくい一方で、借入の金利が早く上がることだ。賃料は固定が基本で、底地の契約は 20 年を超える長期のものが多い。物価が 3% で上がっても、賃料は年 1% あまりしか伸びない。
これに対し、借入は 8 割近くが変動金利で、金利の上昇がすぐに利払いに出る。直近の半年でも、支払利息は前の半年より 3 割増えた。10 年後の年の利払いは今の 6 億円から 18 億円に増え、純利益は今の 6 割ほどに縮む。今の値段は、10 年金利が今より低く戻り、利払いが増えない前提の値段だと筆者は見る。物件そのものは堅いだけに、借入の形が惜しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この REIT の物件は堅いが、値段に安全域はない。生活密着型の店はほぼ満室で、底地は修繕の費用もかからない。事業そのものは 10 年後も続く。
問題は、稼ぎが物価に連れないことと、借入の金利が早く上がることだ。純利益は今の年 24 億円から 15 億円ほどに減る。分配も同じだけ細る。賃料の伸びは費用と利払いの増加に追いつかない。
底地は安定した収入を生むが、裏を返せば伸びない収入だ。物価が 3% の世界では、固定の賃料は毎年実質で目減りする。インフレに弱い資産を、変動金利の借入で抱えている形である。
筆者が評価を変えるのは、底地の賃料に物価連動を入れる契約が広がった時と、ホテルなど物価に強い用途の比率が上がった時だ。そのどちらも、まだ始まったばかりだ。借入の固定化が、高い金利での固定にならないかも見ておきたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、生活に欠かせない店の賃料と地代だ。2026 年 7 月期の半年で賃貸事業収入は 30.5 億円、償却を除く費用を引いた NOI は 21.5 億円だった。物件の鑑定額でみると、建物のある商業施設が 5 割強、土地だけを貸す底地が 4 割弱、ホテルが 1 割を占める。
商業施設は、エスコンが開発した「tonarie」などの近隣型ショッピングセンターだ。スーパーやドラッグストア、飲食が入り、来館者は近所の住民が中心になる。物件は近畿が 4 割強、九州が 2 割、首都圏が 2 割弱と、地方の比重が高い。
底地は、ケーズデンキやニトリ、ヤマダ電機などの店が建つ土地を貸す形だ。建物は借り手が持つので、修繕の費用がかからない。契約は長く、賃料は固定で、物価にはほとんど連れない。
2026 年には底地 4 物件を売り、名古屋と新宿のホテル 2 物件を買った。ホテルの一部は売上に連動する賃料で、物価に強い用途を足す狙いだ。期末の稼働率は 99.7% で、上場以来ほぼ満室が続く。借入は 392 億円で、相手は大手銀行と地方銀行が中心だ。
優良さと弱いところ
物件の質は商業 REIT の中で中位だ。生活密着型の店は景気に左右されにくく、通販にも置き換わりにくい。稼働はほぼ満室で、テナントの退去は少ない。底地は建物の修繕の費用がかからず、収入が安定している。
強みは二つある。一つめは、取得の値段を鑑定以下にする方針を守っていることだ。鑑定と帳簿の差は 92 億円で、帳簿の 1 割強の含み益がある。二つめは、中部電力グループが 7.2% を持ち、2024 年には中電不動産が口数を引き受けたことだ。後ろ盾は厚い。
弱みは三つある。ひとつは賃料が物価に連れないこと。底地の賃料は長期の固定で、建物のある商業施設も固定賃料が基本だ。ふたつめは借入の金利の形で、固定の比率は 23% しかない。みっつめは、物件が地方の郊外に多く、人口の減少で来館者が細ることだ。この三つは、10 年の数字に直接効く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
郊外の生活密着型の商業施設は、商業の中でも需要が底堅い。食品や日用品は通販への置き換わりが遅く、近所の店に通う人は残る。ただ、地方の人口は年に 0.5% ずつ減り、来館者の数は 10 年で少しずつ細る。
賃料は、固定が基本で物価に連れにくい。改装や増床を理由にした増額交渉が中心で、筆者は、建物のある商業施設の賃料は中立で年 1.5% と見る。底地はさらに遅く、年 0.5% ほどだ。会社は底地の契約に物価連動の賃料を入れる検討を始めたが、長期の契約を変えるのは簡単ではない。ホテルは客室単価をつけ替えられ、年 2% で伸びると見る。用途を混ぜると、賃料の伸びは年 1.15% になる。
金利の 10 年は、物件の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、商業の期待キャップは 5.0%、底地は 4.25% ほどで、用途を混ぜると 4.65% になる。この REIT の今の鑑定の NCF 利回りは 4.3% で、物件の価値は鑑定を 1 割ほど下回る。
費用は物価で年 3% 増える。賃料の伸びが遅いので、NOI は 10 年で 2% ほどしか増えない。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、物件の入替とスポンサーの開発物件の取得だ。2026 年には収益の成熟した底地 4 物件を売り、ホテル 2 物件を買った。資産規模を 1,000 億円に増やす目標を掲げる。
増資は、2021 年 8 月の公募と、2024 年 6 月の中電不動産への第三者割当だ。割当の値段は当時の NAV を 1 割ほど下回っていたと筆者は見る。今は投資口が NAV を 2 割あまり下回り、公募はしにくい。
借入は総資産の 47% と上限に近く、固定の比率は 23% と低い。会社は固定の比率を段階的に引き上げる方針だが、今から固定にすれば、高い金利を長く払うことになる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
物件は景気に強い。スーパー、ドラッグストア、家電量販店は生活に欠かせず、通販にも置き換わりにくい。稼働は上場以来ほぼ満室で、テナントの退去は少ない。底地は建物の修繕の費用がかからず、借り手が撤退しても土地は残る。
取得の値段は鑑定以下を守り、含み益は帳簿の 1 割強ある。2026 年には底地を鑑定以上で売り、ホテルを買った。物価に強い用途への入替は、賃料の伸びを少しずつ引き上げる。底地の契約に物価連動の賃料を入れる検討も始めた。
スポンサーの後ろには中部電力がいる。2024 年には中電不動産が口数を引き受け、グループの持分は 7.2% になった。格付けは A- だが、借入の相手は大手銀行が中心で、借り換えに困る心配は小さい。金利の上昇が止まれば、変動金利の借入はむしろ利払いの減りに効く。NAV を 2 割あまり下回る今の値段は、物件の堅さを見落としている。物件を鑑定どおりに売れば、その差は投資主に戻る。底地の売却で実際にそれを示した。
慎重な見方
賃料が物価に連れない。底地は長期の固定で、建物のある商業施設も固定賃料が基本だ。物価が 3% で上がる世界では、賃料は毎年実質で目減りする。費用は物価で増えるので、NOI は 10 年でほとんど増えない。
借入は 8 割近くが変動金利で、金利の上昇がすぐに利払いに出る。直近の半年で支払利息は 3 割増え、次の期の分配は前の予想を下回る。2 年内に借入の 4 割が返済期限を迎え、借り換えの上乗せも重なる。10 年後の利払いは今の 3 倍になる。
物件は近畿と九州の郊外が中心で、人口が減る地域にある。来館者は細り、店の撤退が出れば、次の借り手を見つけるのに時間がかかる。底地の借り手が撤退すれば、土地の値段は鑑定を大きく下回る。今の値段は、こうした目減りを織り込んでいない。NAV の割引は、稼ぎが細る先行きへの値引きで、割安の印ではない。鑑定の利回りも、10 年金利が 3% の世界では低すぎる。物件の価値は鑑定を下回る。
どちらに重みを置いたか
物件の堅さという強気の見方の論点は正しいが、稼ぎが物価に連れないことと、変動金利の借入という慎重な見方の論点は、10 年の数字に直接効く。中立に 42% を置き、やや悲観側に厚めに寄せた。スポンサーの点数は 2.7 で 3 に届かないので、悲観は 10% にとどめた。強気の見方が勝つには、物価連動の賃料と借入の固定化が、金利が上がりきる前にそろう必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 108,893 円393 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 52,481 円189 億円)。 今の値に割り戻すと 78,450 円283 億円、今との差 −21.9%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 185,767 円670 億円 | 62,384 円225 億円 | +147.2% | +9.5% | 19,852 円72 億円 |
| やや楽観 | 20% | 147,504 円532 億円 | 58,503 円211 億円 | +105.2% | +7.5% | 41,201 円149 億円 |
| 中立 | 42% | 108,688 円392 億円 | 53,789 円194 億円 | +61.8% | +4.9% | 68,240 円246 億円 |
| やや悲観 | 20% | 74,030 円267 億円 | 46,580 円168 億円 | +20.1% | +1.9% | 24,122 円87 億円 |
| 悲観 | 10% | 40,758 円147 億円 | 38,817 円140 億円 | −20.7% | −2.3% | 7,957 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 108,893 円393 億円 | 52,481 円189 億円 | +60.7% | +4.9% | 161,373 円582 億円 |
今の株価時価総額 100,400 円362 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 物価連動の契約が広がり、利回りが下がる 利益 21 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 185,767 円670 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.6% で済む。底地の契約の見直しで物価連動の賃料が広がり、ホテルの比率も上がる。賃料全体は年 1.8% で伸び、稼働はほぼ満室を保つ。
郊外の生活密着型の店は通販に強く、物件の利回りは 4.0% に下がる。スポンサーの開発物件の取得で資産は 1,000 億円に近づく。
それでも利払いは今の 2.5 倍に増え、純利益は今の 9 割にとどまる。物件の価値が上がる分、投資主の取り分は増える。借入の固定化も早めに進み、金利の上振れの影響は小さく抑えられる。
- 複合(商業施設・底地・ホテル)の賃貸:数量 765(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.0%)。用途ごとの賃料の伸びを混ぜた値)→ 売上 73 億円・営業利益 43 億円。稼働 100%・賃料 年 +1.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 49 − 資本的支出 7) ÷ キャップ 4.00% − 純負債 372 = 670 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.29% より低く、用途の下限を混ぜた 3.8% より高い。
確率:底地の契約に物価連動が入り、金利が落ち着いて物件の利回りが下がる筋書き。賃料が固定中心なので 8%。
やや楽観 20% 入替が進み、賃料の伸びが少し上がる 利益 18 億円 · PBR 1.3 倍 · 株価時価総額 147,504 円532 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借り換えは 3.8% になる。底地を売ってホテルや住宅を買う入替が進み、商業施設の増額も続く。賃料全体は年 1.5% で伸び、稼働は 99.5% を保つ。
経費は年 3% で増え、NOI は 10 年で 8% 伸びる。利払いは今の 6 億円から 17 億円に増え、純利益は今の 75% ほどになる。
物件の利回りは 4.3% で、今の鑑定並みを保つ。分配は細るが、物件の価値は保たれる。借入の固定化が進み、利払いの見通しは立ちやすくなる。投資口の値段は今の水準を少し上回る。
- 複合(商業施設・底地・ホテル)の賃貸:数量 764(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.0%)。用途ごとの賃料の伸びを混ぜた値)→ 売上 71 億円・営業利益 41 億円。稼働 100%・賃料 年 +1.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 46 − 資本的支出 8) ÷ キャップ 4.30% − 純負債 373 = 532 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.29% 並み。
確率:ホテルへの入替と商業の増額が想定より進む筋書き。20% とした。
中立 42% 賃料が伸びず、変動金利の利払いが分配を 4 割削る 利益 15 億円 · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 108,688 円392 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は数年のうちに 4.0% へ借り換わる。変動金利の借入が多いので、利払いは早く増え、年 6 億円から 18 億円になる。賃料は年 1.15% で伸び、稼働は 99% を保つ。
経費は物価並みの年 3% で増えるので、NOI は 10 年で 2% しか伸びない。純利益は今の 24 億円から 15 億円ほどに減り、分配も 4 割細る。
物件の利回りは用途を混ぜて 4.65% に上がり、物件の価値は鑑定を 1 割ほど下回る。借入の比率が高いので、投資主の取り分は 2 割強縮む。増資は NAV に戻るまで控える。
- 複合(商業施設・底地・ホテル)の賃貸:数量 760(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.9%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.0%)。用途ごとの賃料の伸びを混ぜた値)→ 売上 68 億円・営業利益 38 億円。稼働 99%・賃料 年 +1.1%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 44 − 資本的支出 8) ÷ キャップ 4.65% − 純負債 375 = 392 億円。キャップは用途の表を加重した 4.65%(商業の建物 5.0%、底地 4.25%、ホテル 5.0%、医療 4.5%)。今の鑑定の NCF 利回り 4.29% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利 3% に落ち着き、賃料が年 1.15% しか伸びない筋書き。最もありうるので 42%。
やや悲観 20% 郊外の来館者が細り、増額が止まる 利益 10 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 74,030 円267 億円
10 年金利は 3% を少し上回り、借り換えは 4.3% になる。地方の郊外では来館者が細り、商業施設の増額は止まる。一部の店が撤退し、稼働は 98% に下がる。賃料全体は年 0.6% しか伸びない。
経費は年 3% で増え、NOI は今より 1 割近く減る。利払いは 19 億円に増え、純利益は今の 4 割ほどになる。
物件の利回りは 4.95% に上がり、物件の価値は鑑定を 2 割下回る。分配が細り、投資口の値段は戻らない。底地を売って借入を返す動きが続き、資産の規模は少しずつ縮む。ホテルへの入替も、取得の資金が足りずに止まる。
- 複合(商業施設・底地・ホテル)の賃貸:数量 752(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.0%)。用途ごとの賃料の伸びを混ぜた値)→ 売上 64 億円・営業利益 34 億円。稼働 98%・賃料 年 +0.6%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 39 − 資本的支出 8) ÷ キャップ 4.95% − 純負債 378 = 267 億円。キャップは中立 +0.3%。
確率:地方の人口減で来館者が細り、増額交渉が進まない筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと店の撤退で、分配がほぼ消える 利益 4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 40,758 円147 億円
金利が上振れし、借り換えは 4.7% になる。変動金利の借入が多く、利払いは早く膨らむ。郊外の家電量販店やスーパーの撤退が重なり、底地の一部は借り手が去る。稼働は 95% に下がり、賃料は 10 年で伸びない。
NOI は今より 2 割減り、利払いが純利益のほとんどを食う。分配は今の 2 割を下回り、物件を売って借入を返す。
物件の利回りは 5.4% に上がり、物件の価値は鑑定を 3 割近く下回る。それでも物件の価値は純負債を上回り、投資主の取り分は少し残る。底地は建物がない分、売り先を探しやすいのが救いだ。
- 複合(商業施設・底地・ホテル)の賃貸:数量 729(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.0%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.0%)。用途ごとの賃料の伸びを混ぜた値)→ 売上 58 億円・営業利益 30 億円。稼働 95%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 35 − 資本的支出 6) ÷ キャップ 5.40% − 純負債 382 = 147 億円。キャップは中立 +0.75%。
確率:スポンサーの点数は 2.7 で 3 に届かず上乗せはしない。借入の変動金利の比率が高いので 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
複合(商業施設・底地・ホテル)の賃貸
近畿・九州・首都圏の郊外の近隣型ショッピングセンター、家電量販店などの底地、名古屋と新宿のホテルなど 36 物件を貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.0%)。用途ごとの賃料の伸びを混ぜた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 765 | 8.0% | 61 | 38 |
| 10 年後 中立 | 760 | 8.9% | 68 | 38 |
取り方:2026 年 7 月期の半年の賃貸事業収入 30.48 億円(底地 4 物件の売却益 0.90 億円を除く)を 2 倍して年 60.96 億円。帳簿価額 767.3 億円 × 期末の稼働率 99.7% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 43.0 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 4.9 億円を引いた額。中立の賃料の伸びは年 1.15%(商業の建物 50%×1.5%、底地 37%×0.5%、ホテル 10%×2.0%、医療 2%×1.0%)で、価格は 10 年で 1.12 倍と物価の 1.34 倍に届かない。底地と商業は固定賃料が基本で、増額は改装や契約の見直しに限られるため(業種ノート)。
リスクと懸念
変動金利の借入
金利の固定化は 23% にとどまる。直近の半年で支払利息は前の半年より 3 割増えた。10 年後の年の利払いは今の 6 億円から 18 億円ほどに増え、純利益を 4 割削る。
賃料が物価に連れない
底地は長期の固定賃料で、商業施設も固定が基本だ。費用は物価で増えるので、NOI はほとんど伸びない。物価連動の契約はまだ検討の段階にある。
地方の郊外の人口減
物件は近畿と九州の郊外が中心だ。人口が減れば来館者が細り、店の撤退が出る。底地の借り手が去れば、土地は次の使い道を探すのに時間がかかる。
2 年内の借り換え
2 年内に借入の 4 割、157 億円が返済期限を迎える。格付けは A- で、借り換えの上乗せが大きい。
今後の分かれ目
- 底地の契約に物価連動の賃料が広がる
- 賃料の伸びが上がり、価値は上に振れる。
- 借入の固定化を進め、金利の上昇が止まる
- 利払いの増加が小さくなり、やや楽観に近づく。
- 10 年金利が 2% 台前半に戻る
- 変動金利の借入がむしろ追い風になり、今の値段は適正に近づく。
- 郊外の大型店の撤退が相次ぐ
- NOI が下がり、悲観側の確率を上げる。
- NAV を下回る値段で増資する
- 1 口の価値が薄まり、スポンサーの点数を上げる。
見ておくもの
- 支払利息と金利の固定化の比率
- 底地の物価連動の契約の件数
- 商業施設の賃料の増額の実績
- ホテルの賃料(GOP 連動分)
- 1 口当たり分配金の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップで割り、負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を加重した 4.65% で、今の鑑定の NCF 利回り 4.29% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は変わらない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.79% を足した 9.29%。事業は傾いていないので extra は置かない。