結論
オリックス不動産投資法人は、オリックスグループをスポンサーとする総合型の J-REIT だ。オフィスが取得価格の 50%、ホテルが 19%、商業が 13%、住宅が 13%を占める。121 物件で、鑑定評価額は 9,878 億円。筆者の結論は、今の値段はやや割高ということだ。10 年の価値は、今の時価総額を 28% 下回る。
強みは、賃料の増額が速いことと、含み益の厚さだ。オフィスの入替時の賃料は 11% 上がり、含み益は 2,704 億円と簿価の 38% にある。借入の平均金利は 1.07% で、有利子負債は鑑定評価額の 35% にとどまる。
弱みは三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎが NOI から資本的支出を引いて 3.5% と低いこと。ふたつめは、満期が 2 年で 26% 来て、借り換えで利払いが 3 倍に増えること。みっつめは、ホテルの半分が USJ のオフィシャルホテル 2 棟で、変動賃料のため需要の振れを受けることだ。
今の値段は NAV の 0.80 倍だが、NAV は低い金利の上の鑑定だ。スポンサーの点数は 2.4 で、悲観の確率は基本のままにした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この投資法人は、都心のオフィスと関西のホテルに寄せた不動産賃貸業だ。堀と呼べるほどの強みはないが、賃料の増額を実行する力と、築古を売って新しい物件に入れ替える運用には筋が通っている。
問題は、今の低い金利を前提にした利益だ。借入の平均金利は 1.07% で、3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 35 億円から 110 億円ほどに増える。純利益は 2 割ほど削られる。
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.5% だ。キャップが 4.57% まで上がれば、物件の価値は鑑定を 2 割ほど下回る。含み益 2,704 億円は、その分だけ薄くなる。
今の値段は NAV の 0.80 倍で、安く見える。だが NAV は低い金利の上の鑑定で、筆者は割安の根拠にしない。10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 3 割弱下回る。
ホテルの変動賃料は、需要が良い間は強みだが、悪くなると収入が細る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、オフィス・ホテル・商業・住宅・物流の賃料だ。投資法人は建物と土地を持ち、テナントに貸して賃料を受け取る。直近 1 年の賃貸事業収入は 554 億円で、そこから償却を除く費用を引いた NOI(賃貸の稼ぎ)は 385 億円だった。
物件は 121 ある。内訳はオフィス 55、ホテル 11、商業 25、住宅 25、物流 5。取得価格の比はオフィスが 50.5%、ホテルが 19.0%、商業が 13.2%、住宅が 12.7%、物流が 4.7%。首都圏が 61% で、東京都心 6 区は 33%。名古屋・大阪・札幌など地方の主要都市にも広く持つ。
ホテルは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルホテル 2 棟(ホテル ユニバーサル ポート、同ヴィータ)が中心だ。賃料は固定賃料に、ホテルの営業利益に連動する変動賃料を足す形で、運営会社はオリックスグループ。残りのホテルは固定賃料が多い。
2025 年 8 月期から、8 物件を 923 億円で買い、3 物件を 351 億円で売った。売却した物件は平均築 37 年、取得した物件は平均築 10 年だ。稼働率は全体で 99.1%。
運用会社の運用報酬は年 32 億円で、NOI の 8% だ。
優良さと弱いところ
物件の質は、都心のオフィスと、関西のホテルに強みがある。一方で、地方のオフィスと、築年の古い物件が残る。入れ替えで築年は改善しているが、まだ道半ばだ。
強みは三つある。ひとつめは、賃料の増額が速いこと。オフィスの入替時の賃料は 11% 上がり、既存物件だけで年 2.2% 伸びた。ふたつめは、含み益が 2,704 億円あり、含み益率が 38% と高いこと。みっつめは、借入が軽いことだ。有利子負債は鑑定評価額の 35%で、格付けは JCR が AA、R&I が AA-。
弱みも三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。NOI から資本的支出を引くと 3.5% で、10 年国債が 3% の世界では物件の価値を保ちにくい。ふたつめは、ホテルの USJ 向け 2 棟で、取得価格の約 1 割を占め、万博の需要が剥がれると賃料が減ること。みっつめは、修繕費と資本的支出が増えており、利益を押し下げることだ。
売却益を使って、内部留保(約 46 億円)を積み、将来の分配の下支えにしている点は、投資主には良い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料が上がっている。ただし大型の新築供給が続き、在宅の定着で床の需要は実質で横ばいだ。地方都市は需要が弱く、築年の古い物件は賃料が伸びにくい。ホテルは、訪日客が増え、客室単価は物価に追随する。ただし、固定費が重く、需要が落ちると利益が大きく減る。商業は、都市型で賃料が伸びる。住宅は、更新と入替で賃料が物価に追随する。
業種の表では、都心の大型オフィスの期待キャップが 4.25%、住宅が 3.75%、物流が 4.25%、商業とホテルが 5.0%。オリックスのオフィスは地方を 4 割近く含むので、4.5% に置いた。NOI の比(オフィス 45%、ホテル 23%、商業 14%、住宅 13%、物流 5%)で加重すると、中立のキャップは 4.57% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引くと 3.5% で、表より低い。これは 10 年金利が 2% 前後の世界の値段で、3% に上がれば表に近づく。
賃料の伸びは、オフィス・ホテルが年 2.0%、住宅が年 2.5%、商業が年 1.5% で、加重した中立は年 2.0%。経費は物価で年 3% 伸びるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
資本政策と M&A
借入は 3,477 億円で、有利子負債を鑑定評価額で割った比率(LTV)は 35.2%。総資産に対しては 46.8% だ。固定金利の比率は 90.8%、平均金利は 1.07%、平均の残りは 4.1 年。
2028 年 2 月期までの 2 年に、約 905 億円(26%)の満期が来る。会社は、満期が来る借入の調達コストが 30bps 上がると、分配金が 0.4% ほど減ると見る。長期の変動金利も一部入れて、金利の動きに合わせて組み替えている。
増資は、少なくとも過去 5 年は行っていない。取得は、売却益と手元資金で賄う。投資口の分割(1 口を 2 口に)を 2025 年に実施した。
運用報酬は年 32 億円で、NOI の 8%。オリックス不動産は投資口の 1.58% を持つ。2026 年 2 月期は売却益の一部を内部留保に積み、分配金は予想を上回った。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料の増額が速い。オフィスの入替時の賃料は 11% 上がり、既存物件だけで年 2.2% 伸びた。新しく取得した物件も、計画を上回る増額を実現している。ホテルでは、USJ の 2 棟が過去最高の賃料収入を計上した。
借入が軽い。有利子負債は鑑定評価額の 35% で、格付けは AA。借入の平均金利は 1.07% で、固定の比率が 90.8% と高い。
含み益は 2,704 億円で、含み益率は 38%。会社は、含み益を実現する売却を続け、売却益を分配と内部留保に回している。内部留保は約 46 億円ある。
増資はしておらず、1 口の価値を薄めていない。今の値段は NAV の 0.80 倍で、含み益の厚みは大きい。
スポンサーの開発した物件と、オリックスグループの 1,000 億円を超えるパイプラインが、物件の入れ替えを支える。築 37 年の物件を売って築 10 年の物件を買う入れ替えで、NOI は年 28 億円増えた。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% で伸び、キャップが 4.1% に下がり、時価総額は 8,241 億円と今の 1.7 倍になる。
慎重な見方
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。賃料から改修費を引くと 3.5% で、10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.57% まで上がる。物件の価値は鑑定を 2 割ほど下回り、含み益 2,704 億円は薄くなる。
借入 3,477 億円の平均金利は 1.07%。3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 3 倍ほどになる。2 年で 26% の約 905 億円が満期を迎える。
ホテルの需要が落ちる。USJ のオフィシャルホテル 2 棟は、2025 年の万博で需要が押し上げられた。万博が終われば、変動賃料は減りやすい。固定費が重く、需要が 3 割落ちれば営業利益は 6 割以上減る。
地方のオフィスと築年の古い物件は、賃料が伸びにくく、資本的支出が嵩む。
やや悲観の筋書きでは、賃料の伸びが年 1% にとどまり、時価総額は 3,445 億円と今の 7 割になる。悲観では、投資主の取り分は 820 億円まで減る。
どちらに重みを置いたか
賃料の増額の速さ、含み益の厚さ、築古を売って新しい物件に入れ替える運用には、はっきりした根拠がある。ただ、鑑定評価額に対する稼ぎが低く、借り換えで利払いが 3 倍ほどに増え、キャップの上昇が物件の価値を削る。ホテルの変動賃料は、景気と訪日客の波にさらされる。中立の価値は今の時価総額を 3 割弱下回った。筆者は、NAV に対する安さは値段に入っているが、金利の正常化は入っていないと見る。スポンサーの点数は 2.4 で、悲観の確率は基本のままにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 95,493 円5,271 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 35,353 円1,951 億円)。 今の値に割り戻すと 64,468 円3,559 億円、今との差 −27.2%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 182,468 円1.01 兆円 | 43,661 円2,410 億円 | +155.2% | +9.8% | 22,613 円1,248 億円 |
| やや楽観 | 22% | 121,126 円6,686 億円 | 40,345 円2,227 億円 | +82.2% | +6.2% | 35,524 円1,961 億円 |
| 中立 | 38% | 96,397 円5,321 億円 | 36,867 円2,035 億円 | +50.4% | +4.2% | 50,640 円2,795 億円 |
| やや悲観 | 20% | 62,411 円3,445 億円 | 30,236 円1,669 億円 | +4.6% | +0.4% | 18,529 円1,023 億円 |
| 悲観 | 10% | 14,855 円820 億円 | 20,544 円1,134 億円 | −60.0% | −8.8% | 3,540 円195 億円 |
| 加重平均 | 100% | 95,493 円5,271 億円 | 35,353 円1,951 億円 | +47.7% | +4.0% | 130,846 円7,223 億円 |
今の株価時価総額 88,600 円4,891 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3% で伸び、キャップが今の 3.53% のまま 利益 255 億円 · PBR 2.8 倍 · 株価時価総額 182,468 円1.01 兆円
オフィスは空室が締まり、入替のたびに賃料が上がる。ホテルは訪日客が増え、変動賃料が伸びる。賃料は年 3% で伸び、稼働は 99% を保つ。
借り換えは 3.3% で済む。減価償却の現金で借入を 490 億円ほど返し、年の利払いは 104 億円と今の 3 倍弱にとどまる。NOI は 385 億円から 517 億円へ 34% 増え、純利益は 255 億円と今より 1 割ほど増える。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.53% のまま変わらない。時価総額は 1 兆 72 億円と今の 2.1 倍になる。
ただし賃料が物価を上回る年 3% で伸びるには、ホテルの需要が 10 年続く必要がある。
- オフィス・ホテル・商業等の賃貸:数量 7,101(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.5%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.8%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 743 億円・営業利益 415 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 517 − 資本的支出 52) ÷ キャップ 3.53% − 純負債 3095 = 10072 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.53% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:オフィスとホテルの賃料増額が続き、金利が落ち着く筋書き。総合型は用途の分散で上振れの幅が大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.35% 利益 219 億円 · PBR 1.9 倍 · 株価時価総額 121,126 円6,686 億円
賃料ギャップの解消が数年続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.985 になる。借り換えは 3.35% で、年の利払いは 105 億円になる。
NOI は 478 億円と 24% 増え、純利益は 219 億円と今をわずかに下回る。資本的支出は年 52 億円と今の 1.4 倍に増える。
物件の利回りは 4.35% に上がる。時価総額は 6,686 億円で、今の 1.4 倍になる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。ホテルの変動賃料は、増える年もあれば減る年もある。
- オフィス・ホテル・商業等の賃貸:数量 7,065(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.0%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.8%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 704 億円・営業利益 378 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 478 − 資本的支出 52) ÷ キャップ 4.35% − 純負債 3105 = 6686 億円。キャップは中立 4.57% より 0.22% 低い 4.35% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 3 倍になる 利益 180 億円 · PBR 1.5 倍 · 株価時価総額 96,397 円5,321 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は数年で 3.4% へ借り換わる。減価償却の現金で借入を 470 億円ほど返し、年の利払いは今の 35 億円から 107 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.975 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 385 億円から 438 億円へ 14% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 227 億円から 180 億円へ 2 割減る。
物件の利回りは 4.57% に上がる。資本的支出は年 52 億円と、今の 1.4 倍に増える。
時価総額は 5,321 億円で、今を 1 割ほど上回る。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 3 割弱下回る。
- オフィス・ホテル・商業等の賃貸:数量 6,994(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.5%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.8%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 664 億円・営業利益 340 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 438 − 資本的支出 52) ÷ キャップ 4.57% − 純負債 3115 = 5321 億円。キャップは業種の表を NOI で加重した 4.57% (オフィス 4.5%、ホテル 5.0%、商業 5.0%、住宅 3.75% など)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.5%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数が 2.4 で、悲観の確率は基本のまま 10%)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 107 億円 · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 62,411 円3,445 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.6% になる。地方のオフィスは賃料が伸びず、ホテルの変動賃料は万博後の反動で細り、賃料は 10 年で年 1.0% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.96 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 366 億円と今の 5% 減る。年の利払いは 113 億円で、純利益は 107 億円と今の半分以下に縮む。資本的支出は年 50 億円に抑える。
物件の利回りは 4.82% に上がる。時価総額は 3,445 億円で、今の 7 割になる。
分配は内部留保を取り崩して保つが、限りがある。借入は 4 年ほどで組み替え続けるため、金利の高止まりがそのまま利益に響く。
- オフィス・ホテル・商業等の賃貸:数量 6,886(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.6%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.8%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 592 億円・営業利益 269 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 366 − 資本的支出 50) ÷ キャップ 4.82% − 純負債 3110 = 3445 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が縮む。
確率:オフィスの需要の弱さとホテルの需要の鈍化で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 賃料の下落とホテルの失速、金利の上振れ 利益 −26 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 14,855 円820 億円
不況でオフィスの空室が増え、ホテルの需要が落ち込む。賃料は年 1% ずつ縮み、稼働の係数は 0.92 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.25% になる。年の利払いは 137 億円で、NOI は 249 億円と今の 65% に減る。純利益は 26 億円の赤字となり、分配は止まる。資本的支出は 44 億円に絞る。
物件の価値は借入と預り敷金を引くと小さくなり、投資主の取り分は 820 億円まで減る。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
ホテルの変動賃料は、固定費の重さで需要の落ち込みよりも大きく減る。
- オフィス・ホテル・商業等の賃貸:数量 6,599(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.0%(規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.8%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 465 億円・営業利益 155 億円。稼働 92%・賃料 年 -1.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 249 − 資本的支出 44) ÷ キャップ 5.07% − 純負債 3226 = 820 億円。キャップは中立 +0.5%。賃料の下落と稼働の低下で NOI が 4 割近く減り、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 2.4 なので、悲観の確率は基本の 10%。オフィスの空室とホテルの需要の落ち込みが同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィス・ホテル・商業等の賃貸
オフィス・ホテル・商業・住宅・物流の 121 物件を、定期借家でテナントに貸す。ホテルの一部は固定賃料に変動賃料を足す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.8%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 7,108 | 7.8% | 554 | 300 |
| 10 年後 中立 | 6,994 | 9.5% | 664 | 340 |
取り方:過去 1 年(2025 年 8 月期+2026 年 2 月期)の賃貸事業収入 554 億円(売却益を除く)を数量・価格に分けた。簿価 7,173 億円 × 稼働率 99.1% が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用 168 億円を引いて 385 億円、セグメントの利益は減価償却 85 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、賃料ギャップの解消が一巡したあと、伸びが鈍るため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.5%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.57% まで上がると、物件の価値が 2 割ほど縮み、含み益 2,704 億円が薄くなる。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 1.07%。3.4% 前後へ上がると、年の利払いは 35 億円から 100 億円台へ増える。2028 年 2 月期までに約 905 億円(26%)の満期が来る。
ホテルの変動賃料
ホテルは取得価格の 19%。USJ のオフィシャルホテル 2 棟は、GOP に連動する変動賃料で、2025 年の万博で押し上げられた。需要が落ちると、固定費の重さで収入が大きく減る。
地方・築古物件の資本的支出
地方のオフィスと築年の古い物件が残る。売却と入替で改善は進むが、設備の更新が続き、修繕費は 2026 年 2 月期に 18 億円と前期より 3 割増えた。
運用報酬とスポンサーの出資
運用報酬は NOI の 8%。予想では 2027 年に 40 億円まで増える。オリックス不動産の出資は 1.58% と小さい。
内部留保に頼る分配
売却益を内部留保に積み、分配の下支えにしている。内部留保には限りがあり、売却益が出ない年は取り崩しが増える。
今後の分かれ目
- オフィスとホテルの賃料の増額が想定を上回り、年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- USJ のホテル 2 棟の変動賃料が、2 期続けて前年を下回る
- ホテルの需要の頭打ちが確かめられ、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得を始め、オリックス不動産が出資を増やす
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- オフィス・ホテルの賃料増減率(入替・更新)
- 借り換えの金利と 2028 年 2 月期までの満期
- ホテルの変動賃料と GOP の推移
- 資本的支出と修繕費の推移
- 内部留保の残高と、売却益の還元
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を NOI で加重した 4.57% で、今の NCF 利回り 3.5% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.26% を足した 8.76%。用途の分散は cycle に反映したので extra は置かない。