結論
福岡リートは、福岡・九州に特化した日本初の地域型 J-REIT だ。キャナルシティ博多などの商業施設が取得価格の 46%、オフィスが 35%、ホテルや住宅・物流が 19%を占める。スポンサーは福岡の総合デベロッパー、福岡地所グループだ。
筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。10 年後の物件の売値を、地方の商業施設に見合う 4.8% の利回りで見ると、時価総額を支える価値は 900 億円弱にとどまる。
追い風はある。福岡市は人口が増え続け、天神・博多の再開発も進む。オフィスの賃料は入替で 19%、改定で 7% 上がる余地がある。含み益は 640 億円あり、借入の平均金利も 0.81% と低い。
ただ、地方型の物件は、需要が落ちる局面で値が付きにくい。郊外型の商業施設は築 20 年を超えている。スポンサーからの買い物が 6 割を占める点も気になる。
借り換えで利払いは 8 億円から 33 億円に増える。比率が低い LTV のおかげで、純利益の減り方は他の法人より小さい。それでも、割高の判断は動かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この法人は「成長都市の地域密着型のオーナー」だ。福岡という稼ぐ土地を知る運用会社が、保守的な借入で物件を持つ。この姿勢は、持ち続ける価値がある。ただし価格が純資産を超えて買われる場面では、安全域がなくなる。今の 0.84 倍は割安に見えるが、含み益を前提にした値で、鑑定が下がれば消える。経営者の質と、借入の保守性が支えだ。
ただし、地方型の物件は、売る時に買い手が細る。キャップが 4.8% まで上がると、鑑定の 3.3% からは 3 割以上の値下がりになる。
借り換えで利払いは 8 億円から 33 億円に増えるが、LTV が低いので、純利益の減りは 2 割に収まる。この点は、同じ複合型の中でも優れている。
10 年の分配と 10 年後の売値を今に引き直すと、今の値段は 4 割ほど高い。筆者は、福岡の成長を認めた上で、地方型の売値の弱さを重く見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は賃料だ。直近 1 年の賃貸収益は約 201 億円。そこから運営費を引いた NOI(純収益)は 125 億円になる。物件の売却益は毎期あるが、繰り返せる収益ではないので除いて見る。
資産は 37 物件、取得価格で 2,312 億円。商業施設が 1,061 億円(46%)、オフィスが 817 億円(35%)、その他(ホテル・住宅・物流)が 434 億円(19%)だ。商業施設の柱は、キャナルシティ博多・B、パークプレイス大分、サンリブシティ小倉、木の葉モール橋本。多くは売上に連動する歩合の賃料が混ざる。
オフィスは福岡の天神・博多エリアが中心で、稼働率は 98.6%。賃料改定の余地は大きく、入替で 19%、改定で 7% の増額が見込める。ホテルは福岡ワシントンホテルのリニューアルが終わり、那覇のホテルは訪日客で歩合賃料が伸びる。
全体の稼働率は 98.5%。福岡地所グループから取得した物件は 16 件、1,415 億円で、全体の 6 割に当たる。
資本的支出は直近 1 年で 35 億円と、減価償却の 34 億円と同水準だ。ホテルのリニューアルが重なった。
優良さと弱いところ
この法人の優良さは、地域の情報力にある。福岡・九州の不動産に詳しい福岡地所グループが、物件の取得を支える。福岡市は人口が増え続け、天神・博多は再開発が相次ぐ。オフィスの需要が供給を上回る年が続いている。
強みの一つ目は、財務の保守性だ。LTV は鑑定ベースで 35% と低く、借入余力が 347 億円ある。平均金利は 0.81% で、AA− の格付けを持つ。二つ目は、含み益 640 億円と、1 口純資産の 1.5 倍のNAV。
弱みは三つある。一つ目は、商業施設の郊外型が多く、人口の減る地方都市を含むこと。二つ目は、福岡地所グループとの取引が資産の 6 割を占め、利益相反の疑いが残ること。三つ目は、運用報酬が NOI の 10% を超えることだ。
筆者は、事業の質を「並」と見る。福岡の成長は本物だが、物件は郊外型の商業と築 20 年超が多い。強い堀、つまり他社がまねできない強みは、地域の情報力に限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
福岡のオフィス市場は、2025 年に 3 年ぶりに需要が供給を上回った。空室率は低位で、天神ビッグバンの再開発が続くが、築古ビルの建て替えも同時に進み、供給は絞られている。この法人のオフィスは稼働率 98.6% で、賃料改定の余地が大きい。
商業施設は、福岡都市圏のモール・路面型と、九州各地の郊外型に分かれる。キャナルシティ博多は国内外の観光客を呼ぶ。一方、郊外型は人口の減少と EC に押される。賃料は固定が基本だが、売上連動の部分が景気で動く。
業種の表では、オフィスのキャップレート(NCF ÷ 物件価値の利回り)は地方・築古で 4.75%、商業は 5.0%。この法人はオフィス 36%、商業 44%、その他 20% なので、加重すると 4.8% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割ると 3.3%。J-REIT 全体では、上場の値段から逆算したキャップレートの中央は 4.2% 前後。この法人の NAV 倍率 0.84 は、その中央よりやや高い評価だ。
訪日客は、福岡と那覇のホテルの歩合賃料を押し上げている。
資本政策と M&A
借入は 964 億円。総資産に対する比率(LTV)は 42.4%、鑑定評価額で割ると 35% だ。平均金利は 0.81%、固定比率は 89.4%、平均残存は 3.8 年。格付けは JCR が AA−、R&I が A+。
弱点は満期の集中だ。1 年内に 125 億円、2 年内に約 265 億円(全体の 27%)が期限を迎える。今の借入の大半は 0.5〜1.0% の固定金利で、借り換えで金利は 3% 台に上がる。
投資口は、2024 年 9 月に公募増資と第三者割当で 7 万 6,000 口(9%)増やした。その前の増資は 2018 年。2025 年には 5 億円の自己投資口を取得した。
運用報酬は直近 1 年で約 13 億円、NOI の 10%。配当は、売却益と内部留保を含めて維持する方針で、2027 年 8 月期以降は 現在の分配水準の維持を目標とする。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
福岡は、国内で数少ない人口が増える大都市圏だ。天神・博多の再開発で、オフィスは需要が供給を上回っている。この法人のオフィス稼働率は 98.6%、賃料改定の余地は入替で 19%、改定で 7% ある。
財務は J-REIT の中でも保守的だ。LTV は鑑定ベースで 35%、借入余力は 347 億円。平均金利は 0.81% と低く、AA− の格付けが借り換えの金利を抑える。
含み益は 640 億円、1 口 NAV は 20 万円で、投資口価格は 0.84 倍。含み益を売却益に変える入替も続く。2027 年 8 月期以降は、売却益に頼らない 今の分配水準を保つことを目標にする。
福岡地所グループは、福岡で再開発を主導する。物件の取得機会が優先して回り、自己投資口の取得も行う。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% 伸び、キャップは 3.25% で止まる。時価総額は 3,062 億円と今の 2 倍になる。
慎重な見方
地方型の物件は、売る時に弱い。キャップが動くと、含み益は簡単に消える。含み益 640 億円は鑑定の前提が崩れれば半分以下になり、1 口 NAV の下支えも弱まる。投資口価格が NAV を下回っているのは、市場がその危うさを見ているからだ。商業施設は、郊外型で築 20 年超が多い。人口の減る地方都市を含み、EC に押される。キャップが 4.8% まで上がれば、物件の価値は 3 割以上減る。
福岡地所グループとの取引が資産の 6 割に及ぶ。売買の値段を比べる相手が少なく、利益相反を疑う余地が残る。運用報酬は NOI の 10% を超える。
借入は 2 年以内に 27% が満期になる。今の固定金利は 0.5〜1.0% が中心で、3.4% に借り換えると、利払いは 8 億円から 33 億円に膨らむ。
資本的支出は直近で減価償却を上回った。ホテルの改装が一巡しても、築古の商業施設の更新が続く。建築費は物価より速く上がる。
悲観の筋書きでは、稼働率が 93.5% に下がり、賃料は据え置き。借り換えが 4.3% になり、純利益はゼロに近づく。時価総額は 75 億円まで縮む。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実を言っているが、価格の重さは慎重な見方が上だ。福岡の成長と低い LTV は、他の法人にない強みだ。ただ、地方型の売値の弱さは、キャップの置き方に効く。スポンサーの点数は 3.25 で、悲観の確率を基本の 10% から 15% に上げた。筆者は、成長の話は認めるが、値段が先に払いすぎていると見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 138,482 円1,203 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 66,709 円580 億円)。 今の値に割り戻すと 100,756 円875 億円、今との差 −40.0%、 期待の年率 +2.0%(資本コスト 9.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 352,432 円3,062 億円 | 85,173 円740 億円 | +160.5% | +10.0% | 35,008 円304 億円 |
| やや楽観 | 20% | 234,456 円2,037 億円 | 78,612 円683 億円 | +86.4% | +6.4% | 62,614 円544 億円 |
| 中立 | 37% | 137,543 円1,195 億円 | 72,397 円629 億円 | +25.0% | +2.3% | 77,678 円675 億円 |
| やや悲観 | 20% | 56,053 円487 億円 | 55,593 円483 億円 | −33.5% | −4.0% | 22,329 円194 億円 |
| 悲観 | 15% | 8,632 円75 億円 | 41,781 円363 億円 | −70.0% | −11.3% | 7,562 円66 億円 |
| 加重平均 | 100% | 138,482 円1,203 億円 | 66,709 円580 億円 | +22.1% | +2.0% | 205,191 円1,783 億円 |
今の株価時価総額 168,000 円1,460 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 福岡の成長で賃料が年 3% 伸び、今の鑑定の利回りが続く 利益 75 億円 · PBR 2.8 倍 · 株価時価総額 352,432 円3,062 億円
福岡のオフィス需要が供給を上回り続け、入替の増額が積み上がる。商業の歩合賃料とホテルの変動賃料も伸び、賃料は年 3% の伸びになる。稼働率は 99% に近づく。
借り換えは AA− 格のおかげで 3.2% で収まり、年の利払いは 31 億円。NOI は 125 億円から 170 億円へ 36% 増え、純利益は 75 億円と今を上回る。
不動産の売買市場は低金利の値付けを続け、キャップは 3.25% のままだ。物件の価値が 4,000 億円を超え、時価総額は 3,062 億円と今の 2 倍を超える。
借入余力の 347 億円で、新規取得も進む。ただし、その分は計算に入れていない。
- 福岡・九州の商業施設・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 2,121(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 12.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 9.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 271 億円・営業利益 129 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 170 − 資本的支出 38) ÷ キャップ 3.25% − 純負債 985 = 3062 億円。キャップは用途の下限 3.25% にあたり、今の鑑定の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引き、鑑定評価額で割った 3.25%)とほぼ同じ。今の値付けが 10 年続く筋書きで、楽観はここまで下げてよい。
確率:天神・博多の再開発と訪日客が賃料を押し上げ、キャップが今の鑑定の 3.25% のまま 10 年続く筋書き。基本どおり 8% とした。
やや楽観 20% 賃料は年 2.6%、キャップは 3.9% まで下がる 利益 64 億円 · PBR 1.8 倍 · 株価時価総額 234,456 円2,037 億円
福岡のオフィスと那覇のホテルが伸び、商業は横ばいから緩やかな増加になる。賃料は年 2.6% の伸びで、稼働率は 98% を保つ。
借り換えは 3.3%。年の利払いは 32 億円に増えるが、NOI は 157 億円と 26% 増え、純利益は 64 億円で踏みとどまる。
売買市場は、10 年金利 3% との差を 0.9 ポイントまで保つ。キャップは 3.9% に下がり、物件の価値は 3,000 億円を超える。時価総額は 2,037 億円。
ただし、郊外型の商業施設は鑑定の値上がりが小さく、全体のキャップは用途の表を大きく下回れない。
- 福岡・九州の商業施設・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 2,104(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 12.3%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 9.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 259 億円・営業利益 117 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.6%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 157 − 資本的支出 39) ÷ キャップ 3.90% − 純負債 990 = 2037 億円。キャップは用途の下限 3.25% より高い 3.9%。今の鑑定の NCF 利回り(3.25%)を超え、10 年金利との差が 0.9 ポイント残る前提。
確率:賃料が物価の 9 割ほど追随し、キャップが 3.9% まで下がる筋書き。ありうる上振れとして 20% とした。
中立 37% 賃料は年 2.2% で伸び、キャップが 4.8% に上がる 利益 53 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 137,543 円1,195 億円
借入が 3.4% に借り換わり、年の利払いは 8 億円から 33 億円に増える。稼働率は新しい供給で 97.5% に下がる。
賃料は年 2.2% で伸びる。オフィスの増額が、商業の固定賃料の鈍さを補う。経費は物価で年 3%。NOI は 125 億円から 145 億円へ、10 年で 16% 伸びる。そこから資本的支出 40 億円が出る。
減価償却は 40 億円、運用報酬などは 19 億円。純利益は 66 億円から 53 億円へ、2 割減る。分配は、売却益と内部留保の支えがなくなり、今より 2 割ほど下がる。
物件の売値は、キャップ 4.80% で 2,200 億円ほど。そこから純負債 1,000 億円を引くと、時価総額は 1,195 億円になる。
- 福岡・九州の商業施設・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 2,089(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 9.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 247 億円・営業利益 105 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 145 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 4.80% − 純負債 1000 = 1195 億円。キャップは業種の表を NOI で加重した 4.80%(商業 5.0%、地方オフィス 4.75% など)。今の NCF 利回り(3.25%)より高い。
確率:10 年金利が 3% 前後に落ち着き、賃料は年 2.2% で伸びる筋書き。最も起こりやすい。スポンサーの点数 3.25 のため、悲観の確率を基本の 10% から 15% に上げ、中立は 37% とした。
やや悲観 20% 地方型の需要が弱まり、キャップが 5.1% に上がる 利益 24 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 56,053 円487 億円
郊外型の商業は歩合賃料が減り、一部のテナントが退去する。賃料の伸びは年 1.1% にとどまる。稼働率も 96% に下がる。
借り換えは 3.6%。年の利払いは 35 億円。NOI は 117 億円と今より 7% 減り、純利益は 24 億円に縮む。
分配は借入の返済を優先して絞り、内部留保も使い切る。売却益に頼る入替も難しくなる。含み益は縮み、投資口価格は純資産を下回ったまま戻らない。増資で物件を買い増す成長の型は止まり、福岡地所からの供給も細る。
キャップは 5.10% に上がる。物件の価値は 1,500 億円ほどで、純負債 1,015 億円を引くと、時価総額は 487 億円だ。
- 福岡・九州の商業施設・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 2,057(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.6%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 9.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 219 億円・営業利益 77 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.1%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 117 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 5.10% − 純負債 1015 = 487 億円。キャップは中立 4.80% に 0.3 ポイント上乗せして 5.10% (金利の上振れと、地方型の売り)。
確率:郊外型の商業が人口減少と EC に押され、福岡以外の物件の売却も難しくなる筋書き。借り換えの上乗せも重なる。20% とした。
悲観 15% 地方型の需要の崩れと金利上昇で、物件の価値が借入に近づく 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 8,632 円75 億円
郊外型の商業で退去が続き、ホテルの歩合賃料も落ちる。全体の稼働率は 93.5% に下がり、賃料は据え置きだ。
借り換えは A 格並みの 4.3% になり、年の利払いは 42 億円。NOI は 94 億円と今の 7 割台まで減り、純利益はゼロになる。
福岡地所グループの支援も、この局面では物件の買い支えまでは及ばない。分配は大きく減り、増資もできず、借入の返済を優先して物件を売る。キャップは 5.35% まで上がり、物件の価値は 1,100 億円ほど。純負債 1,040 億円を引くと、時価総額は再建の見込みの分にとどまる。
分配は止まり、借入の返済に回る。福岡地所グループの支えが唯一の下支えになる。
- 福岡・九州の商業施設・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 2,003(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.5%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 9.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 191 億円・営業利益 56 億円。稼働 94%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 94 − 資本的支出 34) ÷ キャップ 5.35% − 純負債 1040 = 75 億円。キャップは中立 4.80% に 0.55 ポイント上乗せして 5.35%。物件の価値が純負債に近づき、時価総額は自己資本の 1 割以下になる。
確率:スポンサーの点数 3.25 は 3 以上なので、悲観の確率を基本の 10% から 15% に上げた。商業の退去と借り換え金利の上昇が同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
福岡・九州の商業施設・オフィス・ホテル等の賃貸
福岡・九州を中心に商業施設・オフィス・ホテル・住宅・物流施設 37 物件を持ち、固定賃料と歩合賃料で受ける。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 9.5%)。賃料の改定と、歩合賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2,111 | 9.5% | 201 | 91 |
| 10 年後 中立 | 2,089 | 11.8% | 247 | 105 |
取り方:直近 1 年(2025 年 8 月期+2026 年 2 月期)の不動産賃貸事業収益 201 億円を数量・価格に分けた。売却益は繰り返せないので除く。数量は貸借対照表計上額 2,143 億円に稼働率 98.5% を掛けた規模、価格は収入 ÷ 数量。NOI は運営費 76 億円を引いて 125 億円、セグメントの利益は減価償却 34 億円を引いた額。簿価が取得年の古い土地・建物で低く、価格は他の法人より高めに出る。中立の価格は 10 年で 1.24 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、商業の固定賃料が物価に連動しにくいため(業種ノート)。
リスクと懸念
地方型の物件の売りにくさ
郊外型の商業施設は築 20 年超で、人口の減る都市を含む。需要が落ちる局面では、稼働の低下と売却の難しさが同時に来る。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 0.81%。3.4% に借り換わると、年の利払いは 8 億円から 33 億円になる。2 年内の満期は全体の 27%。
福岡地所グループとの取引
取得の 6 割がスポンサーグループから。売買の値段を比べる相手が少なく、利益相反が起こりうる。運用報酬は NOI の 10% を超える。
歩合賃料の景気への感応
商業の売上連動賃料とホテルの変動賃料は、景気と訪日客の波を受ける。固定賃料の部分は物価に追いつきにくい。
資本的支出の膨らみ
直近 1 年で 35 億円と、減価償却と同水準。ホテルの改装が一巡しても、築古の商業の更新が続く。建築費は物価より速く上がる。
売却益と内部留保に頼る分配
今期の分配には、売却益と内部留保が含まれる。本業の利益は分配の約 9 割。売却できる物件が減れば、分配は本業の利益に合わせて下がる。
今後の分かれ目
- 10 年国債の利回りが 2% 台前半へ戻り、借り換えが 2.5% 前後で済む
- 利払いの増加が小さくなり、純利益が 60 億円台を保つ。楽観側の確率を上げる。
- 福岡のオフィスの入替賃料が 20% 前後の増額を数年続ける
- NOI の伸びが年 3% に近づく。中立の見方を上げる。
- 郊外型の商業テナントが退去し、稼働率が 95% を下回る
- NOI の減りが想定より早まる。慎重側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 福岡地所グループ以外の第三者から物件を取得する
- 取得の偏りが薄まり、スポンサーの点数を下げる。
見ておくもの
- 福岡のオフィスの賃料改定・入替の増額率
- 借り換えの金利と、2 年内の満期
- 商業施設の稼働率と歩合賃料
- 資本的支出と減価償却の比
- 福岡地所グループからの取得の割合
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や NAV 倍率から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、純負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を NOI で加重した 4.80% で、今の鑑定の NCF 利回り 3.25% より高い。NAV(含み益)は床に使っていない。基本の資本的支出は、直近 1 年がホテル改装で膨らんでいるため、今の 1.16 倍にとどめた。
資本コスト 9.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.65% を足して 9.15%。用途の分散は cycle に入れたので extra は置かない。