結論
サムティ・レジデンシャル投資法人は、全国の地方都市を中心に、単身・小家族向けの賃貸住宅を 189 物件、1,700 億円ほど持つ J-REIT だ。サムティが物件を供給し、大和証券グループ本社が 4 割の投資口を持つ。筆者の結論は、今の値段はやや割安ということである。価値の計算は今の時価総額を 27% 上回る。
強みは賃料の伸びだ。入替え時の賃料は 9.1% 上がり、更新時の増額も 33% の戸数に及ぶ。調整後の賃料単価は 1 年で 1.9% 上がった。含み益は 271 億円ある。物件は築 12.8 年と若い。
弱みは借入と地方都市の比率だ。総資産に対する借入比率は 51.4% と高く、金利を固定した割合は 51% にとどまる。平均金利は 1.46% で、借り換えのたびに上がる。再来期の純利益の予想は、前期から 14% 減る。地方都市は 71% を占め、利回りは首都圏より高い。
投資口は NAV の 6 割台で売られる。NAV は清算されない限り手にできないので、筆者は割安の根拠にしない。割安と見る理由は、賃料の伸びと配当の回復余地である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、賃料が伸びていて、値段は NAV に対し大きく割り引かれている。それでも借入の重さと、地方都市の弱さが引っかかる。NAV は、清算されない限り投資主には手に入らない。
今の分配は、利益超過分配が混じる。純利益は年 38 億円ほどで、これが実力だ。借入の平均金利 1.46% が 3% 台へ上がると、年の利払いは 13 億円から 36 億円まで増える。ただ、賃料の伸びで NOI も 10 年で 2 割増え、純利益はおおむね今の水準を保つ。
救いは、スポンサーの大和証券グループ本社が 4 割を持ち、資金調達を支えていることだ。ただ、4 割の持ち分は将来の売りの懸念にもなる。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 3 割近く上回る。値段が 2 割上がっても、筆者は妥当と見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、賃貸住宅の賃料だ。2026 年 7 月期の半年で賃貸事業収入は 59.7 億円。償却を除く費用を引いた NOI は 45.4 億円だった。年にならすと NOI は 90.9 億円で、簿価 1,713 億円に対する利回りは 5.3% になる。
物件は 189 あり、住宅が 98.6% を占め、残りは民泊施設だ。部屋はシングルとコンパクトが 89% で、賃貸可能な戸数は 11,531 戸。地域は、首都圏が 29%、札幌・名古屋・大阪・福岡などの主要地方都市が 47%、その他の地方都市が 24% である。
賃貸住宅は 2 年の普通借家で、入れ替わる時に市場の賃料へ合わせ直す。当期は入替えで 9.1% の増額、更新で 33% の戸数が 2.4% 上がった。稼働率は期中平均で 96.7% だ。
成長の道具は、スポンサーのサムティが開発する S-RESIDENCE や S-FORT の購入と、築古の売却だ。当期の取得と譲渡は小さく、今後の取得も 27 億円、譲渡は 14 億円の規模にとどまる。資産規模は 1,729 億円ほどで横ばいが続く。
優良さと弱いところ
物件の質は、住宅 REIT の中で標準的だ。平均築年は 12.8 年と若く、築 20 年を超える物件は 12% にとどまる。ただ、地方都市が 71% を占め、首都圏は 29% だ。地方は賃料の水準が低く、人口の減る街では稼働が崩れやすい。
強みは三つある。一つめは、賃料の伸びで、入替え時の増額が 10 期で 1.1% から 9.1% まで上がった。二つめは、含み益が 271 億円と簿価の 16% あること。三つめは、サムティが 15.1%、大和証券グループ本社が 40.2% を持ち、投資主と同じ船に乗っていることだ。
弱みも三つある。ひとつは、総資産の借入比率が 51.4% と高いこと。ふたつめは、金利を固定した割合が 51%、平均の残りが 3.0 年と短く、借り換えで利払いが増えること。みっつめは、取得の 93% がスポンサーの関与する物件で、買い方に自由度が少ないことだ。
分配には利益超過分配が混じる。今期は 1 口の分配の 6% ほどがそれで、純利益だけでは足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
賃貸住宅の需要は、賃金の上昇と都市への人口の集中で堅い。新築は建築費の高騰で供給が絞られ、地方でも稼働は 96% 台と高い。入替え時の賃料の増額は、主要地方都市と首都圏の両方で 1 割に近づいた。
住宅は、2 年の更新で賃料が市場に追随する。筆者は、中立で賃料は名目年 2.25% で伸びると見る。物価の 3% に届かないのは、更新時の増額が小さく、地方の賃料に上げ余地が限られるからだ。調整後の賃料単価は、直近 1 年で 1.9% 上がった。
10 年国債が 3% の世界では、住宅の期待キャップは 3.75% に上がる。ただ地方都市は、首都圏より利回りが 0.5〜1 ポイント高い。今の鑑定の NCF 利回りは 4.0% で、地方が多いぶん中立のキャップは 4.1% と置く。
人口の減る地方では、築古の物件の稼働が落ちやすい。築 20 年を超える物件が 12% なので、今は小さいが、10 年後には増える。
地方は物件ごとの差が大きく、駅から遠い築古ほど、空室期間が長引きやすい。
賃料の上昇が続く間も、築年が進めば修繕費の負担は着実に増える。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、スポンサーの開発物件の購入と、築古の売却による入れ替えだ。ここ 2 年は取得も譲渡も小さく、規模は 1,700 億円台で動かない。会社は、毎年資産の 1〜3% を譲渡して含み益を実現する方針だ。
増資は、直近 5 年に 2021 年と 2022 年の公募、2024 年の第三者割当の 3 回あった。2022 年までの公募は NAV に近い値段だったが、2024 年 9 月の第三者割当は NAV の 8 割だった。以後の増資はない。
借入は 916 億円で、総資産の 51.4%、鑑定ベースで 46.2% だ。金利を固定した割合は 51.1%、平均の残りは 3.0 年で、2 年以内に満期が来る分が 3 割を超える。格付けは JCR の A+ で、安定的だ。
報酬は資産運用報酬が年 9.5 億円で、NOI の 10% ほどになる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料が強い。入替え時は 9.1% 上がり、更新時の増額が 33% の戸数に及ぶ。調整後の賃料単価は 1 年で 1.9% 上がり、稼働は 96.7% だ。建築費が高く、新築が増えにくいことも追い風になる。
含み益は 271 億円と簿価の 16%、NAV は時価総額の 1.6 倍だ。スポンサーのサムティと大和証券グループ本社が 55% を持ち、2025 年以降は増資をしていない。分配の下支えになる利益超過分配は、含み益で賄える。
地方都市の鑑定の利回りは首都圏より高く、買い入れ価格も鑑定評価額を 4% 下回って取得できている。借入の返済が進めば、金利の上昇も吸収できる。
今の値段は、これらの強みをほとんど織り込んでいない。
借り換えの金利が 3.4% で収まれば、NOI の伸びで利払いの増加を吸収できる。
地方の主要都市は人口の流入が続き、賃貸住宅の需要が底堅い点も支えになる。
賃料の増額が続けば、重い借入の中でも NOI の伸びが利払いの増加を上回り、分配は少しずつ回復していく。
慎重な見方
借入が重い。総資産に対する借入比率は 51.4% で、鑑定ベースでも 46% だ。金利を固定した割合は 51% にとどまる。借入の平均金利は 3% 台への借り換えで大きく上がり、2028 年 1 月期の純利益は前期から 14% 減る予想だ。
地方都市が 71% を占める。人口の減る街の物件は稼働が落ちやすく、売却の買い手もつきにくい。利益超過分配が混じり、純利益だけでは分配をまかなえない。
大和証券グループ本社は 40.2% を持つ。持ち分を市場で売れば、投資口の値段は下がる。取得の 93% はスポンサーが関与する物件で、買う側に選択の余地が少ない。
運用報酬は NOI の 10% ほどで、規模が増えないぶん利回りの重荷になる。
賃料の増額が止まれば、重い借入が一気に重荷に変わる。
地方の物件は売却の相手が限られ、含み益を現金に換えるのに時間がかかる。
金利が上がる局面では、借り換えのたびに利払いが膨らみ、賃料の伸びを食いつぶす恐れがある。
どちらに重みを置いたか
賃料の強さと値段の安さに強気の言い分がある。ただ、借入の重さ、地方都市の弱さ、大和証券グループ本社の持ち分の重さという弱みも大きい。中立は今の値段を 3 割ほど上回った。スポンサーの点数は 3 を下回ったので、悲観の確率は 10% に据えた。強気側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、強みが値段に入っていないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 164,958 円1,407 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 42,907 円366 億円)。 今の値に割り戻すと 103,857 円886 億円、今との差 +29.5%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 8.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 241,695 円2,061 億円 | 53,593 円457 億円 | +268.2% | +13.9% | 29,529 円252 億円 |
| やや楽観 | 22% | 217,186 円1,852 億円 | 50,427 円430 億円 | +233.7% | +12.8% | 58,875 円502 億円 |
| 中立 | 38% | 180,011 円1,535 億円 | 45,267 円386 億円 | +180.9% | +10.9% | 85,605 円730 億円 |
| やや悲観 | 20% | 100,032 円853 億円 | 35,064 円299 億円 | +68.4% | +5.4% | 27,019 円230 億円 |
| 悲観 | 10% | 45,970 円392 億円 | 22,399 円191 億円 | −14.8% | −1.6% | 6,837 円58 億円 |
| 加重平均 | 100% | 164,958 円1,407 億円 | 42,907 円366 億円 | +159.2% | +10.0% | 207,865 円1,773 億円 |
今の株価時価総額 80,200 円684 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3% で伸び、金利も 3.4% 以下 利益 53 億円 · PBR 2.4 倍 · 株価時価総額 241,695 円2,061 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、A+ の格付けで借り換えは 3.4% で済む。入替えの増額が続き、賃料は年 3% で上がる。稼働は 97% を保つ。
スポンサーの開発物件の購入が再開し、築年は若返る。経費は物価並みに増え、NOI は 10 年で 3 割強伸びる。純利益は今から 4 割ほど増える。
物件の利回りは 3.85% まで下がり、物件の価値は鑑定を上回る。借入が重いぶん、物件の価値の上昇は投資主の取り分に大きく効く。
大和証券グループ本社の持ち分が薄まる局面でも、増資は NAV を上回る値段で行われる。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 1,661(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.7%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 161 億円・営業利益 98 億円。稼働 97%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 123 − 資本的支出 14) ÷ キャップ 3.85% − 純負債 760 = 2061 億円。キャップは中立 4.1% から 0.25% 下げた 3.85%(住宅の下限 3.25% には届かない)。
確率:地方の賃料も物価並みに上がり、借り換えが 3.4% で済む筋書き。借入が重く地方が多いので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.75% で伸び、借り換えは 3.55% 利益 48 億円 · PBR 2.2 倍 · 株価時価総額 217,186 円1,852 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.55% になる。収入は年 2.75% で伸びる。稼働は 96.5% を保つ。
利払いは年 35 億円ほどまで増えるが、NOI の伸びが吸収し、純利益は今より 25% 増える。利益超過分配は、純利益で賄える範囲にとどまる。資本的支出は年 15 億円に収まる。
物件の利回りは 3.95% に上がる。物件の価値は鑑定をわずかに上回る。投資口が NAV に近づくまで、増資はしない。
借入の返済が進み、総資産の借入比率は 50% を割る方向へ下がっていく。
賃貸住宅の入れ替えは続き、築年の若返りが少しずつ進む。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 1,653(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 156 億円・営業利益 94 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 118 − 資本的支出 14) ÷ キャップ 3.95% − 純負債 767 = 1852 億円。キャップは中立 4.1% より 0.15% 低い 3.95%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いが増えるが、賃料の伸びで吸収 利益 39 億円 · PBR 1.8 倍 · 株価時価総額 180,011 円1,535 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3〜4 年のうちに 3.7% へ借り換わる。年の利払いは今の約 13 億円から 36 億円ほどへ増える。収入は年 2.25% で伸び、稼働は 96% を保つ。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 2 割ほど伸びる。純利益は今の水準にほぼ並ぶ。利益超過分配は、毎期は続けない。
物件の利回りは 4.1% に上がり、物件の価値は鑑定をやや上回る。借入が重く、地方の賃料が頭打ちになりやすいぶん、投資主の取り分は物件の価値の変動に敏感だ。
増資は、投資口が NAV に近づくまで控える見通しだ。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 1,644(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.0%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 148 億円・営業利益 86 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 110 − 資本的支出 15) ÷ キャップ 4.10% − 純負債 775 = 1535 億円。キャップは住宅の表 3.75%(要求利回り 5.75% − NOI の伸び 2.0%)に対し、今の鑑定の NCF 利回り 4.0% が高いため決まりで鑑定以上とし、地方が 71% の分を見て 4.1%。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、収入は年 2.25% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 金利が高めに落ち着き、地方の賃料が頭打ちになる 利益 22 億円 · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 100,032 円853 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.9% になる。入替えの増額が縮み、収入は年 1.25% しか伸びず、稼働は 94% に落ちる。地方の築古で賃料の減額が増える。資本的支出は年 17 億円に増える。
利払いは年 38 億円になり、純利益は今の 6 割弱に細る。分配は純利益だけになり、利益超過分配は止まる。借入の返済に現金を回し、新しい物件は買えない。
物件の利回りは 4.6% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本と同じ水準まで縮む。
スポンサーの持ち分は変わらず、増資の余地も小さい。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 1,610(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 132 億円・営業利益 70 億円。稼働 94%・賃料 年 +1.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 93 − 資本的支出 17) ÷ キャップ 4.60% − 純負債 800 = 853 億円。キャップは中立 +0.5%。借入が重いので、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:金利が高めに落ち着き、入替えの増額が縮み、地方の稼働が落ちる筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 −4 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 45,970 円392 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.6% になる。不況で入居者が減り、稼働は 90% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまり、地方の物件で空室が増える。NOI は 2 割ほど減る。
利払いは年 45 億円になり、純利益は赤字になる。分配は止まる。資本的支出を絞り、借入の返済に現金を回す。物件の利回りは 4.85% に上がり、物件の価値は鑑定を大きく下回る。
物件の価値から借入を引いた投資主の取り分は、今の自己資本の半分ほどに縮む。清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
大和証券グループ本社が持ち分を売れば、値段はさらに下がる。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 1,541(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 111 億円・営業利益 50 億円。稼働 90%・賃料 年 +0.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 73 − 資本的支出 13) ÷ キャップ 4.85% − 純負債 840 = 392 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸住宅の賃貸
全国の地方都市と首都圏の賃貸住宅 189 物件(11,531 戸)を、主に単身・小家族向けに 2 年の普通借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 7.2%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 1,656 | 7.2% | 120 | 69 |
| 10 年後 中立 | 1,644 | 9.0% | 148 | 86 |
取り方:2026 年 7 月期の半期の賃貸事業収入 59.7 億円(売却益なし)を 2 倍して年額 119.5 億円。簿価 1,713 億円 × 稼働率 96.7% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 90.9 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 22.4 億円を引いた額。中立の価格が 1.25 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、更新時の増額が小さく、地方の賃料に上げ余地が限られ、転嫁が物価の 5/6 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借入の重さと金利
総資産に対する借入比率は 51.4%、鑑定ベースで 46.2%。金利を固定した割合は 51.1% と低い。平均金利が 3% 台へ上がると、年の利払いは 13 億円から 36 億円ほどまで増え、純利益を圧迫する。
地方都市の弱さ
地方都市が 71% を占める。人口の減る街では稼働が落ちやすく、売却の買い手もつきにくい。地方の鑑定の利回りは首都圏より高く、物件の価値の変動も大きい。
利益超過分配
2026 年 7 月期の分配には利益超過分配が混じる。純利益は年 38 億円ほどで、分配の実力はそちらだ。2028 年 1 月期の純利益の予想は前期から 14% 減る。
大和証券グループ本社の持ち分
大和証券グループ本社は 40.2% を持ち、連結子会社の位置づけ。将来にこの持ち分を市場で売れば、投資口の値段は下がる。サムティの 15.1% も同様の懸念がある。
スポンサー頼みの取得
取得の 93% がスポンサーの関与する物件。スポンサーの開発が細れば、規模は増えない。買い入れ価格の割安さも続くとは限らない。
運用報酬の重さ
資産運用報酬は年 9.5 億円で、NOI の 10% ほど。規模が増えないと、報酬の重さが利回りに響く。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。今の値段はさらに割安に入る。
- 入替え時の賃料の増額が 5% を割る
- NOI の伸びが物価を下回り、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を下げ、悲観の確率を上げる。
- 大和証券グループ本社が持ち分を売り出す
- 投資口の需給が悪くなり、短期の値段が下がる。ただ価値の計算は変わらない。
- 金利を固定した割合を 7 割に高める
- 借り換えの金利の上振れに強くなり、k の借金の上乗せが下がる。
見ておくもの
- 入替え時と更新時の賃料の増額率
- 金利を固定した割合と借り換えの金利
- 地方都市の稼働率
- 利益超過分配の額と純利益の差
- 大和証券グループ本社の持ち分
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは住宅の業種ノートの表に、今の鑑定の NCF 利回り 4.0% と地方の比率を加えたもの。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.71% を足した 8.21%。事業は傾いていないので extra は置かない。