結論
トーセイ・リートは、不動産再生のトーセイがスポンサーの複合型 REIT だ。東京・神奈川・埼玉・千葉の住宅とオフィスを中心に 64 物件、取得価格で 844 億円を持つ。筆者の結論は、今の値段は適正の範囲にあるということだ。価値の計算は今の値段を 8% ほど下回るが、誤差の内にある。
この REIT のよい所は、物件の値付けに無理が少ないことだ。築 30 年を超える建物が多く、鑑定の NCF 利回りは 4.5% ある。多くの REIT のように、利回りが 10 年金利と変わらない値段で物件を抱えているわけではない。金利が 3% の世界でも、物件の価値は鑑定から大きくは崩れない。
弱いのは借入だ。平均の金利は 1.3% で、残りの期間は 2.5 年しかない。格付けは A で、借り換えの金利は 3.8% 前後になる。10 年後の年の利払いは今の 5 億円から 18 億円に増え、純利益は 2 割ほど細る。今の値段は、この利払いの増加をおおむね織り込んでいると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この REIT は値段に見合った中身を持つ。物件は古いが、安く買っていて、鑑定の利回りは高い。金利が 3% の世界でも、物件の価値が大きく崩れる心配は小さい。スポンサーが 18% を持ち、投資主と同じ船に乗っているのもよい。
ただ、安全域と呼べるほどの割引はない。借入の期間が短く、格付けは A だ。10 年後の利払いは今の 3 倍を超え、純利益は今の 29 億円から 24 億円ほどに減る。賃料の伸びが利払いの増加の半分ほどを埋める形だ。
築古の建物は、修繕の費用が建築費とともに膨らむ。資本的支出が想定以上に増えれば、物件の価値も分配も削られる。
筆者は、今の値段を適正とみる。評価を上げるのは、借入の期間を延ばす動きと、NAV を上回る値段での増資だ。NAV を下回る割当が続けば、評価は下げる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、首都圏の中古の住宅とオフィスの賃料だ。2026 年 4 月期の半年で営業収益は 37.6 億円、償却を除く費用を引いた NOI は 26.5 億円だった。NOI の 51% を住宅、42% をオフィス、7% を商業施設が稼ぐ。
物件の多くは、スポンサーのトーセイが買い取って改修した中古の建物だ。オフィスは築 34〜38 年の中規模ビルが中心で、都心の大型ビルとは客層が違う。中小企業が借り手になり、賃料は大型ビルより安い。期末の稼働率はオフィスが 97.6%、住宅が 96.7% だった。
住宅は東京経済圏の単身・ファミリー向けで、更新と入替のたびに賃料を上げている。直近の半年では、入替の住戸で賃料が 5% ほど上がった。一方で、一部の物件で退去が重なり、住宅の稼働は 1 ポイントあまり下がった。
借入は 438 億円で、平均の残りの期間は 2.5 年と短い。2026 年 6 月にはスポンサーに 2,700 口を割り当て、その資金で住宅を 1 棟買った。成長の道具は、スポンサーからの物件の買い取りと、建物の改修による賃料の引き上げだ。
優良さと弱いところ
物件の質は複合型 REIT の中で下の方だが、値段との釣り合いは悪くない。築 30 年を超える建物が多く、修繕と更新の費用は年々増える。それでも、取得の値段が低いので、帳簿に対する NOI の利回りは 6% を超える。
強みは二つある。一つめは、スポンサーのトーセイが 18% を持っていることだ。上場 REIT のスポンサーとしては持分が厚く、投資主と同じ船に乗っている。二つめは、改修で古い建物の賃料を引き上げる運用の腕で、テナントの入替のたびに賃料が上がっている。
弱みも二つある。ひとつは借入の期間の短さと格付けの低さだ。残りの期間は 2.5 年、格付けは A で、借り換えの上乗せが大きい。ふたつめは、スポンサーへの割当がどれも NAV を下回る値段だったことだ。直近 5 年で 4 回、NAV の 8〜9 割の値段で口数を増やした。スポンサーの持分は増えたが、ほかの投資主の取り分はそのたびに薄まった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
首都圏の中古の住宅とオフィスは、新築の供給が細る中で需要が底堅い。建築費が 10 年で 4 割上がり、新しく建てる物件の賃料は高くなる。中古の物件はその受け皿になり、賃料を上げやすい。
住宅は 2 年の更新と入替で、賃料が物価にほぼ追いつく。東京経済圏の人口は横ばいで、単身の世帯は増える。筆者は、住宅の賃料は中立で年 2.5% 伸びると見る。オフィスは事情が違う。中規模の築古ビルは、新しいビルとの競争で賃料を上げにくい。在宅の定着も効く。中立で年 1.5% と見る。
金利の 10 年は、不動産の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、住宅の期待キャップは 3.75%、地方・築古のオフィスは 4.75% だ。NOI の比で混ぜると 4.25% になる。この REIT の今の鑑定の NCF 利回りは 4.5% で、すでにそれを上回る。築古の物件を安く買う方針が、金利の上昇への備えにもなっている。
一方で、築古の建物は修繕費が建築費とともに膨らむ。資本的支出は 10 年で今の 1.5 倍になると筆者は見る。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、スポンサーへの第三者割当と、スポンサーからの物件の買い取りだ。直近 5 年の増資は 4 回で、すべてトーセイなどへの割当だった。値段はどれも 1 口の NAV の 8〜9 割で、公募のように市場で売り出すことはしていない。
割当で投資口の需給は崩れないが、NAV を下回る値段は、ほかの投資主の取り分を薄める。会社は、割当でスポンサーの持分を高め、同じ船に乗る形を強めると説明する。
借入は総資産の 48% と運用の上限に近い。2027 年 4 月期には内部留保を取り崩して分配を保つ予定で、利払いの増加がすでに分配を圧迫し始めている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
物件の値付けに無理がない。今の鑑定の NCF 利回りは 4.5% で、用途を混ぜた期待キャップの 4.25% を上回る。多くの REIT は利回り 3% 台の鑑定で物件を抱え、金利の上昇で価値が 2 割削られる。この REIT は、その下げをほとんど受けない。
住宅は賃料が物価に追いつきやすい。入替のたびに賃料が上がり、首都圏の単身の需要は細らない。築古のオフィスも、建築費の高騰で新しいビルの賃料が上がれば、受け皿として賃料を上げやすくなる。
スポンサーのトーセイは 18% を持ち、利害は投資主と同じ向きだ。トーセイは不動産再生で物件を安く仕入れる力があり、その物件を REIT に回す。割当の値段は NAV を下回るが、スポンサーが自分のお金で口数を買い増している点は、ほかの REIT のスポンサーにはない姿勢だ。借入の期間は短いが、裏を返せば、金利が落ち着けば早く安い金利に借り換えられる。物件を担保にした借入の比率は鑑定の 43% で、売れる物件の厚みもある。
慎重な見方
借入が短すぎる。残りの期間は 2.5 年で、1 年内に借入の 2 割が返済を迎える。格付けは A で、借り換えの金利は 3.8% 前後になる。10 年後の利払いは今の 3 倍を超え、純利益は 2 割細る。2027 年 4 月期には、すでに内部留保を取り崩して分配を保つ予定だ。
築古の建物は、修繕と更新の費用が重くなる。オフィスは築 34〜38 年で、設備の大きな更新が近い。建築費は物価より速く上がり、資本的支出は 10 年で今の 1.5 倍を超えうる。中規模の古いビルは、新しいビルとの競争で賃料も上げにくい。
スポンサーへの割当は 5 年で 4 回、どれも NAV を下回る値段だった。スポンサーは安く口数を増やし、物件も売りつける。持分が厚いことは、利害が投資主とそろうことを必ずしも意味しない。スポンサーにとっては、物件を売る相手と運用報酬の払い手が同じ REIT だ。売る値段が高いほど、スポンサーは得をする。鑑定の利回りが高く見えるのも、築古の建物の先行きの費用を鑑定が十分に見ていないからかもしれない。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも数字の裏付けがある。物件の利回りの高さは、金利の上昇への備えとして強い。一方、借入の期間と格付けの弱さも動かない事実だ。二つが打ち消し合い、中立を最も厚く置いた。スポンサーの点数が 3 を超えるので、悲観に 15% を置いた。確率は中立を軸に、わずかに悲観側へ寄せた。強気の見方が勝つには、借入の期間を延ばす動きが要る。慎重な見方が勝つのは、オフィスの大きな更新が重なった時だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 174,121 円660 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 67,025 円254 億円)。 今の値に割り戻すと 113,761 円431 億円、今との差 −7.3%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 9.4%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 270,865 円1,027 億円 | 81,761 円310 億円 | +187.4% | +11.1% | 28,210 円107 億円 |
| やや楽観 | 20% | 229,721 円871 億円 | 77,013 円292 億円 | +150.0% | +9.6% | 61,347 円233 億円 |
| 中立 | 37% | 189,632 円719 億円 | 70,947 円269 億円 | +112.4% | +7.8% | 96,414 円366 億円 |
| やや悲観 | 20% | 127,916 円485 億円 | 59,342 円225 億円 | +52.6% | +4.3% | 37,452 円142 億円 |
| 悲観 | 15% | 71,738 円272 億円 | 46,419 円176 億円 | −3.7% | −0.4% | 17,724 円67 億円 |
| 加重平均 | 100% | 174,121 円660 億円 | 67,025 円254 億円 | +96.5% | +7.0% | 241,147 円914 億円 |
今の株価時価総額 122,700 円465 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.4% を下回るほど割高。
楽観 8% 住宅の賃料が物価並みに伸び、利回りが下がる 利益 33 億円 · PBR 2.4 倍 · 株価時価総額 270,865 円1,027 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.5% で済む。住宅は入替と更新で賃料が物価並みに上がり、築古のオフィスも新しいビルの賃料高に引かれて上がる。賃料全体は年 2.6% で伸び、稼働は 98% を保つ。
首都圏の中古物件の取引は活発で、物件の利回りは 4.1% に下がる。スポンサーの改修物件の買い取りも続き、NAV を上回る値段での増資も視野に入る。
利払いは今の 3 倍に増えるが、賃料の伸びがそれを埋め、純利益は今をやや上回る。物件の価値は鑑定を上回り、投資主の取り分は大きく増える。
- 複合(住宅・オフィス・商業)の賃貸:数量 809(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 12.1%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 9.4%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 98 億円・営業利益 57 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.6%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 68 − 資本的支出 10) ÷ キャップ 4.10% − 純負債 380 = 1027 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.48% より低く、用途の下限を混ぜた 3.6% より高い。
確率:金利が 3% を下回って落ち着き、首都圏の中古物件の利回りが下がる筋書き。借入の弱さから上振れは限られ 8%。
やや楽観 20% 住宅が強く、利回りは今より少し下がる 利益 29 億円 · PBR 2.0 倍 · 株価時価総額 229,721 円871 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借り換えは 3.65% になる。住宅の賃料は年 3% 近く上がり、オフィスは年 1.5% ほど。賃料全体は年 2.3% で伸び、稼働は 97.5% を保つ。
経費は年 3% で増え、NOI は 10 年で 2 割強伸びる。利払いは今の 5 億円から 18 億円に増え、純利益は今とほぼ同じになる。
物件の利回りは 4.3% で、今の鑑定よりやや低い。物件の価値は鑑定並みを保ち、借入の比率は少しずつ下がる。スポンサーの割当は NAV に近い値段に戻る。分配は今の水準を保ち、投資口の値段は NAV に近づいていく。
- 複合(住宅・オフィス・商業)の賃貸:数量 805(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.8%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 9.4%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 95 億円・営業利益 54 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.3%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 65 − 資本的支出 11) ÷ キャップ 4.30% − 純負債 382 = 871 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.48% より少し低い。
確率:住宅の賃料の伸びが想定を上回り、物件の利回りが少し下がる筋書き。20% とした。
中立 37% 借り換えで純利益が 2 割細り、利回りは今の鑑定並み 利益 24 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 189,632 円719 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 2〜3 年のうちに 3.8% へ借り換わる。年の利払いは今の約 5 億円から 18 億円に増える。賃料は住宅が年 2.5%、オフィスが年 1.5% で伸び、稼働は 96.5% へ少し下がる。
経費は年 3% で増え、NOI は 10 年で 15% 伸びる。純利益は今の 29.6 億円から 24 億円ほどに減り、分配も同じだけ細る。
物件の利回りは 4.5% で今の鑑定とほぼ同じだ。物件の価値は鑑定並みを保つ。築古の建物の修繕で資本的支出は今の 1.5 倍に増え、その分は減価償却の現金で賄う。増資は NAV を下回る間は控える。
- 複合(住宅・オフィス・商業)の賃貸:数量 796(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.4%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 9.4%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 91 億円・営業利益 50 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 61 − 資本的支出 12) ÷ キャップ 4.50% − 純負債 385 = 719 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.48% に合わせた 4.5%。用途の表を NOI の比で加重した 4.25%(住宅 51%×3.75%、築古のオフィス 42%×4.75%、商業 7%×5.0%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利 3% に落ち着き、賃料が物価の 3 分の 2 で伸びる筋書き。最もありうるので 37%。
やや悲観 20% オフィスの賃料が止まり、借り換えが高くつく 利益 15 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 127,916 円485 億円
10 年金利は 3% を少し上回り、A 格の借り換えは 4.1% になる。築古のオフィスは新しいビルとの競争で賃料が止まり、空室も増える。住宅の賃料は伸びるが、賃料全体は年 1.2% にとどまる。稼働は 95% に下がる。
経費は年 3% で増え、NOI は今とほぼ同じだ。利払いは 20 億円に増え、純利益は今の半分ほどになる。
物件の利回りは 4.8% に上がり、物件の価値は鑑定を 1 割ほど下回る。分配が細り、スポンサーの割当も止まる。物件の売却で借入を返す動きが始まるが、築古の物件は買い手が限られ、売る値段は鑑定を下回る。
- 複合(住宅・オフィス・商業)の賃貸:数量 784(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.6%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 9.4%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 83 億円・営業利益 42 億円。稼働 95%・賃料 年 +1.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 53 − 資本的支出 11) ÷ キャップ 4.80% − 純負債 390 = 485 億円。キャップは中立 +0.3%。
確率:築古のオフィスが新しいビルに客を取られ、借り換えの上乗せが大きい筋書き。20% とした。
悲観 15% 金利が上振れし、築古の建物の更新が重くのしかかる 利益 6 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 71,738 円272 億円
金利が上振れし、借り換えは 4.5% になる。景気が崩れ、中小企業が借り手の築古オフィスで退去が続く。住宅も一部の物件で稼働が落ち、賃料は 10 年でほとんど伸びない。稼働は 92% まで下がる。
NOI は今より 2 割近く減り、利払いが純利益の大半を食う。分配は今の 2 割ほどに細り、修繕の費用も削らざるをえない。
物件の利回りは 5.2% に上がり、物件の価値は鑑定を 2 割下回る。それでも鑑定の利回りが高かった分、物件の価値は純負債を上回り、投資主の取り分は残る。ここが、鑑定の利回りが 3% 台の REIT との大きな違いだ。
- 複合(住宅・オフィス・商業)の賃貸:数量 759(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.6%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 9.4%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 73 億円・営業利益 33 億円。稼働 92%・賃料 年 +0.2%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 44 − 資本的支出 10) ÷ キャップ 5.20% − 純負債 395 = 272 億円。キャップは中立 +0.7%。
確率:スポンサーの点数が 3.2 で 3 以上(+5 ポイント)。借入が短く A 格なので 15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
複合(住宅・オフィス・商業)の賃貸
東京・神奈川・埼玉・千葉の中古の住宅 43 物件、中規模オフィス 17 物件、商業施設 3 物件を貸す。多くはスポンサーのトーセイが改修した築古の建物。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する営業収益の比(今 9.4%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 801 | 9.4% | 75 | 43 |
| 10 年後 中立 | 796 | 11.4% | 91 | 50 |
取り方:2026 年 4 月期の半年の営業収益 37.63 億円を 2 倍して年 75.25 億円。帳簿価額は期末 818.3 億円に 2026 年 6 月に割当の資金で買った住宅 7 億円を足した 825.3 億円、× 2026 年 8 月末の稼働率 97.1% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 53.0 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 9.9 億円を引いた額。中立の賃料の伸びは年 2.0%(住宅 51%×2.5%、オフィス 42%×1.5%、商業 7%×1.5%)で、価格は 10 年で 1.22 倍と物価の 1.34 倍に届かない。築古の中規模オフィスは新しいビルとの競争で賃料を上げにくいため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えによる利払いの増加
平均の金利は 1.3%、残りの期間は 2.5 年と短い。1 年内に 88 億円が返済を迎える。格付けは A で、借り換えは 3.8% 前後。10 年後の年の利払いは今の 5 億円から 18 億円ほどに増え、純利益を 2 割削る。
築古の建物の更新費用
オフィスは築 34〜38 年が中心で、空調や外装の大きな更新が近い。建築費は物価より速く上がり、資本的支出は今の 1.5 倍を超えうる。
NAV を下回る割当の続き
直近 5 年でスポンサーへの割当が 4 回、どれも NAV の 8〜9 割の値段だった。続けば、ほかの投資主の取り分は薄まる。
中規模オフィスの競争
中小企業が借り手の築古ビルは、新しいビルの供給と在宅の定着で賃料を上げにくい。景気が崩れれば、退去が先に出る。
今後の分かれ目
- 借入の期間を 4 年以上に延ばし、格付けが上がる
- 借り換えの上乗せが小さくなり、価値は上に振れる。
- 住宅の賃料が年 3% 近く伸び続ける
- NOI の伸びが利払いの増加を埋め、やや楽観に近づく。
- NAV を上回る値段で増資する
- 1 口の価値が増え、スポンサーの点数を下げる。
- 築古のオフィスで大型の更新工事が重なる
- 資本的支出が膨らみ、悲観側の確率を上げる。
- 10 年金利が 3.5% を超えて定着する
- 借り換えの金利も物件の利回りも上がり、やや悲観に寄る。
見ておくもの
- 借り換えの金利と残りの期間
- 住宅の入替・更新の賃料の上げ幅
- オフィスの稼働と賃料
- 資本的支出の推移
- スポンサーへの割当の値段と NAV の比
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップで割り、負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を加重した 4.25% と今の鑑定の NCF 利回り 4.48% の高い方で 4.5%。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は変わらない。
資本コスト 9.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.89% を足した 9.39%。事業は傾いていないので extra は置かない。