結論
三菱地所物流リートは、首都圏と近畿圏を中心に 36 の物流施設を持つ REIT だ。取得価格の合計は 2,790 億円で、鑑定評価額は 3,322 億円。筆者の結論は、適正の範囲にあるということである。価値の計算は今の値段より 2% ほど低く、差は誤差の内にある。
強みは賃料の改定と財務だ。2026 年 8 月期まで 17 期続けて賃料を上げ、直近の改定は平均 4.8% の増額だった。借入は鑑定評価額に対して 37% で、固定の比率は 87.8%、格付けは JCR の AA だ。金利が上がる局面でも、他の REIT より傷みが浅い。
弱みは二つある。ひとつは、借入の平均金利が 0.95% と低く、残りは 3.6 年で、10 年たてばほぼ全部が 3% 台の金利に替わること。年の利払いは 10 億円から 40 億円を超え、純利益の 4 割強が消える。もうひとつは、今の分配に売却益が含まれることだ。売却益を除くと 1 口の分配は公表より 15% ほど薄い。
投資口は NAV を 24% 下回り、会社は自己投資口の取得で応えている。ただ、NAV は清算されない限り手にできない。筆者は、割安の根拠として使わない。今の値段は、金利が 3% で落ち着き、賃料が物価の 3 分の 2 で上がる前提と、ほぼ釣り合っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、財務と賃料の力は REIT の中で上位に入る。借入が軽く、17 期続けて賃料を上げ、格付けも高い。持ち続けて困る銘柄ではない。
ただ、値段に安全域はない。今の分配金は売却益で底上げされている。売却益を除いた純利益は年 72 億円だ。10 年金利 3% の世界では、借入の平均金利が 0.95% から 3.4% へ上がり、利払いだけで年 30 億円ほど増える。純利益は 1 割強減る見通しだ。
好材料は賃料の改定だ。更新のたびに 5% 前後の増額が続けば、NOI の伸びは物価を上回る。この力が景気の波を越えて 10 年続くかが、見立ての分かれ目になる。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段とほぼ同じになる。割安でも割高でもない。筆者が見るのは、更新時の増額が供給の戻る 2028 年以降も続くかどうかだ。値段が 1 割下がれば、買ってよい水準に入る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、物流施設を通販・小売・物流会社に貸す賃料だ。2026 年 8 月期の半年で賃貸事業収入は約 81 億円、償却を除く費用を引いた NOI は約 66 億円。年にならすと NOI は 133 億円で、帳簿価額 2,715 億円に対する利回りは 4.9% になる。経費が収入の 2 割弱と軽いので、賃料の伸びがほぼそのまま NOI に乗る。
物件は 36 か所で、首都圏の MJロジパークを核に、近畿圏と福岡にも持つ。三菱地所が開発した物件が 66.2%、三菱地所の資産運用会社が外から見つけてきた物件が 33.8% だ。期末の稼働率は 96.7%、期中の平均は 98.7%。福岡の一部の物件は稼働が 5 割で、全体の稼働を押し下げた。
契約は定期借家で、更新のたびに市場の賃料へ合わせ直す。2026 年 8 月期まで 17 期続けて賃料を上げ、過去 3 年の平均の増額率は 6.2%。契約の満了が第 24 期以降に集まっており、改定の機会は多い。平均の残りの契約期間は 4 年ほどだ。
成長の道具は、三菱地所の開発物件を優先して買う権利と、売却益の還元だ。当期は大東の物件を 31 億円で買い、加須の 2 物件を 29 億円で売って 6.7 億円の益を出した。印西の持分売却の益も、次の期から分配に上乗せする。
優良さと弱いところ
物件の質は物流 REIT の中で中位から上位だ。三菱地所が開発した新しい施設が中心で、首都圏の立地が厚い。ただ全体の稼働は 96.7% と、最上位の銘柄より 2 ポイントほど低い。福岡の物件が稼働 5 割と足を引っ張った。
強みは三つある。一つめは財務で、借入の比率は鑑定ベースで 37%、固定の比率は 87.8%、格付けは AA だ。二つめは取得の規律で、当期に買った大東の物件は鑑定評価額を 2 割以上下回る値段だった。三つめは、三菱地所が 4.15% を出資していることだ。
弱みも三つある。ひとつは、スポンサー開発の物件が 66% を占め、買う値段の交渉がスポンサー寄りになりやすいこと。ふたつめは、運用報酬が総資産と NOI に連動し、NOI の 13% と重いこと。みっつめは、出資が 4.15% と、同じ船に乗る度合いとしては薄いことだ。
ただ報酬には、投資口価格が東証 REIT 指数を下回れば報酬が減る新しい仕組みがある。J-REIT で初めての試みだ。資本的支出は年 3 億円と軽い。築が浅いからで、築 10 年を過ぎれば増える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流施設の需要は、通販の拡大と在庫を持つ倉庫の自動化で長く伸びてきた。ただ 2024〜26 年は、首都圏と近畿圏で大量の新築が重なり、空室が上がった。建築費の高騰で 2027 年の新築は、ピークの数分の一に細る見通しだ。
供給が細ると、新しい施設の賃料は高くなり、既存の施設の賃料もそれに寄る。この REIT の増額改定は、その動きの入口と読める。ただ、2028 年以降に新築が戻ると、上げ幅は縮む。筆者は、中立で賃料は名目年 2% と見る。物価の 3% に届かないのは、供給の波が賃料を抑えるからだ。
物流施設の取引市場では、スポンサーと REIT の取引が多い。REIT の投資口が NAV を下回る間は、外から物件を買う成長は進みにくい。自己投資口の取得か、物件の入れ替えによる売却益の還元が先になる。この REIT の動きも、その形だ。
金利の 10 年は、物流不動産の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、物流の期待キャップは 4.25% まで上がる。今の鑑定の NCF 利回りは 3.9% だ。この差が、物件の価値を鑑定より下げる。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、自己投資口の取得と物件の入れ替えだ。2025 年 4 月から 7 月にかけて 25,444 口を買い、8 月に消却した。NAV を下回る値段で買う使い方で、1 口の価値を増やす。借入の返済に回せる現金も厚い。
増資は、2021 年から 2022 年に公募と第三者割当で 3 回行い、その後は行っていない。資金は新しい物件の取得に使った。足元の NAV 割れでは、増資を選ばない方針をとっている。
借入は簿価で 42.7%、鑑定ベースでは 37% だ。平均の金利は 0.95%、残りの期間は 3.6 年。2026 年 7 月に第 3 回の投資法人債(グリーンボンド)を 22 億円発行した。定期預金に預けて受取利息を増やす運用も続ける。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料の改定が強い。17 期続けて増額し、過去 3 年の平均は 6.2% だ。契約の満了が第 24 期以降に集まっていて、相場との差を埋める機会が多い。2027 年は新築が細り、賃料はさらに上がりやすい。経費が軽いので、増収がほぼそのまま利益に残る。
財務が軽い。鑑定ベースの借入比率は 37% で、固定の比率は 87.8%、格付けは AA だ。借り換えが 3.4% になっても、投資主の取り分は大きく残る。鑑定評価額と帳簿価額の差は 600 億円を超え、売却益の還元の原資にもなる。
三菱地所は物流施設の開発で大手だ。物件の情報が優先して回り、当期の大東の取得は鑑定評価額を 2 割以上下回る値段だった。NAV を 24% 下回る今は、自己投資口の取得が 1 口の価値を直接増やす。
報酬の仕組みも新しい。投資口価格が東証 REIT 指数を下回れば運用会社の報酬が減る。投資主と運用会社の利害が近づく形だ。
慎重な見方
金利の 10 年は避けられない。平均 0.95% の借入が 3.4% に替われば、年の利払いは 10 億円から 40 億円を超える。純利益は 1 割強減る。鑑定の NCF 利回りは 3.9% と、10 年国債 3% では低すぎる。キャップが 4.25% に上がれば、物件の価値は 1 割弱下がる。
今の分配は見かけより厚い。売却益と利益超過分配を足して、売却益を除いた純利益より 1 割ほど上に出ている。1 口の分配は売却益を除くと公表より 15% 薄い。次の期の予想にも、印西の売却益の上乗せが含まれる。
2028 年以降は新築が戻る。大きな増額は続かず、稼働も 97% 台に下がる。福岡の物件のように稼働が 5 割の施設もある。運用報酬は総資産と NOI に連動して NOI の 13%。取得は三菱地所の開発物件が 66% を占め、買う値段の交渉は不利になりやすい。
三菱地所の出資は 4.15% と薄い。同じ船に乗る度合いは弱く、NAV 割れの増資が重なれば 1 口の価値は薄まる。
どちらに重みを置いたか
財務と賃料の力で強気に分があるが、金利の前提は動かせない。中立は今の値段とほぼ同じになった。スポンサーの点数は 3 を下回ったので、悲観の確率は 10% に据えた。楽観側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、適正の範囲の中ほどにあり、値段が 1 割下がれば魅力が出る位置にあると見る。賃料の改定の強さが、金利の逆風と釣り合っている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 159,191 円2,364 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 48,311 円717 億円)。 今の値に割り戻すと 106,616 円1,583 億円、今との差 +0.4%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 256,160 円3,804 億円 | 60,404 円897 億円 | +198.1% | +11.5% | 31,656 円470 億円 |
| やや楽観 | 22% | 210,503 円3,126 億円 | 55,151 円819 億円 | +150.1% | +9.6% | 58,444 円868 億円 |
| 中立 | 38% | 163,366 円2,426 億円 | 50,370 円748 億円 | +101.3% | +7.2% | 81,220 円1,206 億円 |
| やや悲観 | 20% | 102,019 円1,515 億円 | 40,269 円598 億円 | +34.0% | +3.0% | 28,458 円423 億円 |
| 悲観 | 10% | 47,811 円710 億円 | 29,427 円437 億円 | −27.3% | −3.1% | 7,724 円115 億円 |
| 加重平均 | 100% | 159,191 円2,364 億円 | 48,311 円717 億円 | +95.4% | +6.9% | 207,501 円3,081 億円 |
今の株価時価総額 106,200 円1,577 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 供給の細りで賃料が物価並みに上がる 利益 92 億円 · PBR 2.6 倍 · 株価時価総額 256,160 円3,804 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.1% で済む。2027 年の供給の細りが賃料を押し上げ、更新のたびに増額が続く。賃料は年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。
経費は物価並みに増えるが軽く、NOI は 10 年で 4 割近く伸びる。純利益は今から 3 割弱増える。三菱地所の物件を NAV 以上の値段の増資で買う余地も出るが、この筋書きでは規模を据え置き、質を上げる。
物件の利回りは 3.6% まで下がり、物件の価値は鑑定を上回る。借入が軽いので、投資主の取り分は今の値段を大きく上回る。
- 物流施設の賃貸:数量 2,688(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.1%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 222 億円・営業利益 155 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 183 − 資本的支出 3) ÷ キャップ 3.60% − 純負債 1185 = 3804 億円。キャップは物流の下限 3.5% に近い 3.6%。
確率:2027 年の供給の細りと強い改定が続き、金利も 3% 以下で収まる筋書き。借入が軽く、17 期続く増額の勢いがあるので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.25% 利益 78 億円 · PBR 2.1 倍 · 株価時価総額 210,503 円3,126 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.25% になる。供給の波は残るが、賃料は更新ごとに年 2.5% で上がる。稼働は 98% を保つ。
利払いは年 40 億円ほどまで増え、純利益はほぼ今の水準を保つ。売却益の上乗せは数期で終わり、その後の分配は純利益に利益超過分配を足した水準になる。賃料の増額が続くので、緩やかに増える。資本的支出は築が進むにつれ年 4 億円まで増える。
物件の利回りは 3.85% に上がる。物件の価値は鑑定よりやや高く、軽い借入のおかげで投資主の取り分は今の値段を上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 2,660(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.1%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 209 億円・営業利益 142 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 170 − 資本的支出 4) ÷ キャップ 3.85% − 純負債 1200 = 3126 億円。キャップは物流の中立 4.25% より 0.4% 低い 3.85%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 64 億円 · PBR 1.6 倍 · 株価時価総額 163,366 円2,426 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の約 10 億円から 42 億円へ増える。賃料は年 2% で上がり、稼働は 97.5% へ少し上がる。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 2 割ほどしか伸びない。減価償却は取得原価のままで、修繕を積んだ分だけ少し増える。純利益は今の 1 割強減り、分配は売却益の上乗せが終わったあと、今の水準から 1 割弱下がる。
物件の利回りは 4.25% に上がり、物件の価値は鑑定より 1 割ほど低い。借入が軽いので、投資主の取り分は今の自己資本を大きく上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 2,647(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.1%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 198 億円・営業利益 130 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 159 − 資本的支出 4) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 1220 = 2426 億円。キャップは物流の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り約 3.9% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 供給が戻り、稼働と賃料が頭打ちになる 利益 41 億円 · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 102,019 円1,515 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.65% になる。2028 年以降に新築が戻り、賃料は年 1% しか伸びず、稼働は 95.5% に落ちる。築が進み、資本的支出は年 5.5 億円に増える。
利払いは年 45 億円になり、純利益は今の 6 割ほどに細る。利益超過分配は止まり、分配は純利益だけになる。借入の返済に現金を回し、新しい物件は買えない。更新時の増額は止まり、改定は据え置きに近い水準になる。
物件の利回りは 4.75% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本とほぼ同じ水準まで縮む。
- 物流施設の賃貸:数量 2,592(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.1%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 176 億円・営業利益 107 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 137 − 資本的支出 5) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1260 = 1515 億円。キャップは中立 +0.5%。借入は軽いが、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:2028 年以降の新築の戻りで稼働が下がり、借り換えが重くなる筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 8 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 47,811 円710 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.3% になる。不況で通販と物流会社が床を返し、稼働は 88% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。NOI は 2 割弱減る。
利払いは年 53 億円になり、純利益はほぼ消える。分配は純利益の水準まで下がり、利益超過分配も止める。資本的支出を絞り、借入の返済と空室の手当てに現金を回す。物件の利回りは 5% に上がり、物件の価値は鑑定の 6 割ほどになる。
借入が軽いので、物件の価値は借入を上回って残るが、投資主の取り分は今の自己資本の半分以下だ。清算されない限り、施設を売って NAV を受け取ることはできない。
- 物流施設の賃貸:数量 2,389(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.1%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.1%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 147 億円・営業利益 81 億円。稼働 88%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 110 − 資本的支出 4) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 1400 = 710 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流施設の賃貸
首都圏・近畿圏を中心とする新しい大型物流施設を、通販・小売・物流会社に定期借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.1%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 2,625 | 6.1% | 161 | 104 |
| 10 年後 中立 | 2,647 | 7.5% | 198 | 130 |
取り方:2026 年 8 月期の半期の賃貸事業収入 80.6 億円を 2 倍して年額 161.1 億円。帳簿価額 2,715 億円(貸借対照表の賃貸等不動産)× 期末の稼働 96.7% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 132.6 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 28.2 億円を引いた額。中立の価格が 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、定期借家の更新が数年ごとで、2028 年以降の新築の戻りで転嫁が物価の 2/3 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 0.95% の借入が 3.4% へ借り換わると、年の利払いは 30 億円ほど増え、今の純利益の 4 割強が消える。固定の比率は 87.8% と高いが、残りは 3.6 年で、10 年でほぼ全部が新しい金利になる。
売却益に頼る分配
直近の 1 口の分配には売却益の 15% ほどが含まれる。次の期の予想にも印西の売却益の上乗せがあり、それが終われば分配は純利益の水準へ戻る。
供給の波
建築費の高騰で 2027 年の新築は細るが、2028 年以降に戻る。空室が上がれば、更新での増額が止まる。福岡のように稼働が 5 割の物件もあり、期末の稼働は 96.7%。
物流施設の利回りの上昇
今の鑑定の NCF 利回りは 3.9% で、10 年国債 3% との差が小さい。利回りが 1 ポイント上がると、施設の価値は 2 割強下がる。
スポンサー開発物件への偏り
取得は三菱地所の開発物件が 66.2% を占め、買う値段の交渉はスポンサーに寄る。運用報酬は NOI の 13% と軽くない。
築が進む設備の更新
今の資本的支出は年 3 億円と軽いが、築が進めば増える。建築費の上昇で、更新費は物価より速く増える。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、やや楽観に近づく。今の値段は割安の側に入る。
- 更新での賃料の増額が 2028 年以降も 5% 前後を保つ
- NOI の伸びが物価を上回り、楽観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得を続ける
- NAV 割れの値段で 1 口の価値を増やす使い方で、スポンサーの点数を下げる。
- 売却益の上乗せが終わり、1 口の分配が公表より 15% ほど下がる
- 分配の見かけの低下で投資口が売られても、価値の数字は動かない。
見ておくもの
- 更新時の賃料改定率と稼働率
- 平均調達金利と固定比率
- 売却益を除いた 1 口の分配
- 三菱地所の出資比率と取得の利回り
- 首都圏・近畿圏の物流施設の新築供給
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回り 3.9% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.50% を足した 8.00%。事業は傾いていないので extra は置かない。