結論
星野リゾート・リート投資法人は、星のや・界・リゾナーレ・OMO と、その他のホテルを持つ J-REIT だ。71 物件で、鑑定評価額は 2,757 億円。星野リゾートが運営する物件は取得価格の 47% を占める。筆者の結論は、今の値段は大きく割高ということである。価値の計算は、今の時価総額を 46% 下回る。
強みは、運営の質と含み益だ。星野リゾートは地域の魅力を磨いて単価を上げる運営に長けている。鑑定評価額は簿価を 377 億円上回り、借入の固定比率は 93% と高い。投資口の値段は 1 口の NAV の 7 割台にある。
弱みは三つある。ひとつは、鑑定の利回りが低いことだ。賃料から改装費を引いた稼ぎは、鑑定評価額に対し 3.5% しかない。10 年国債が 3% の世界では、物件の価値がそこから 3 割ほど下がる。ふたつめは、改装の費用が償却を上回り続けること。みっつめは、大阪の 2 ホテルが万博の反動と中国客の減少で苦戦していることだ。
借入 1,050 億円の平均金利は 1.3% と低く、借り換えのたびに利払いが 2 倍以上に膨らむ。スポンサーの出資は 4.5% で、増資は NAV を下回る値段で行われた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、旅館・リゾートは運営会社の腕で稼ぎが決まる事業だ。星野リゾートの運営力は本物で、堀と呼べる。ただし、投資法人はその利益の一部を、賃料の形で受け取るにすぎない。
過去 1 年の分配は、今の値段に対し 5.7% の利回りだ。借入の平均金利は 1.3% で、これが分配を支えている。借入が 3.6% 前後に借り換わると、年の利払いは 12 億円から 40 億円に増える。
さらに、鑑定評価額に対する賃料の稼ぎが低い。改装費を引くと 3.5% で、10 年国債が 3% の世界では価格が付かない水準だ。物件の価値は 3 割ほど縮み、借入が重く効く。
NAV は物件の鑑定が高い今の姿で、清算されない限り投資主の手には入らない。今の値段は NAV の 7 割台だが、筆者は割安の根拠にしない。
10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 4 割以上下回る。値段が半分近くまで下がって初めて、買う理由が生まれる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ホテルの賃料だ。投資法人が持つのは建物と土地で、運営会社に貸して賃料を受け取る。賃料の 58% は固定で、残る 42% は施設の売上や利益に連動する変動賃料になる。2026 年 4 月期の営業収益は 93 億円、NOI(賃料から費用を引いた稼ぎ)は 79 億円だった。
物件は 71 ある。星のや 5、界 12、リゾナーレ 2、OMO 2 など、星野リゾートが運営する物件が取得価格の 47% を占める。残りはロードサイド型のコンフォートイン 23、ANA クラウンプラザ 3、グランドハイアット福岡、グランドプリンスホテル大阪ベイ、the b 5 などだ。
2025 年 11 月には、三重県の複合温泉リゾート「アクアイグニス/湯の山 素粋居」を 60 億円で取得した。一方で、那覇のソルヴィータホテルは 2026 年 11 月に売却する予定だ。
稼ぎ方は物件で違う。星のや富士や界 遠州は運営が好調で、鑑定評価が上がった。星のや沖縄は、再設定した割増しの固定賃料で下支えしている。一方で OMO7 大阪とグランドプリンスホテル大阪ベイは、万博の反動と中国客の減少で稼ぎが落ちた。
過去 1 年の営業収益は 180 億円、NOI は 150 億円。簿価 2,379 億円に対する NOI の利回りは 6.3% になる。
優良さと弱いところ
物件の質は、立地の個性が強い。星のや軽井沢・京都・富士、界 箱根・加賀など、そこにしかない体験を売る宿が柱だ。単価が高く、地域の魅力で客を集めるので、価格競争に巻き込まれにくい。一方で、地方の温泉地やリゾートが多く、築年も古い。
強みは三つある。ひとつめは、星野リゾートの運営力だ。界 箱根や遠州では、客室の改装で単価を上げた実績がある。ふたつめは、借入の 93% が固定で、短期の借り換えリスクが小さいこと。みっつめは、含み益が 377 億円と、簿価の 16% あることだ。
弱みも三つある。ひとつは、改装の費用が 54 億円と、減価償却 41 億円を上回り続けることだ。温泉旅館は設備の傷みが早い。ふたつめは、賃料の 4 割が運営の業績に連動すること。みっつめは、運営会社が星野リゾートに偏ることだ。
2026 年 4 月期は、星のや沖縄の稼働が 80% に近づき、客単価も上がった。ただし大阪では、OMO7 大阪の稼ぎが予定の水準にとどいていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホテルは、訪日客と国内の宿泊の両方で稼ぐ。2025 年の訪日客は過去最高の 4,268 万人で、政府は 2030 年に 6,000 万人を目標にしている。2026 年 1〜3 月は中国客が減ったが、他の国の客が穴を埋め、全体は前年並みを保った。
旅館・リゾートは、都市型より需要の波が小さい面がある。滞在日数が長く、客単価が高く、予約が早い。ただし、人手不足と人件費の上昇が重い。星野リゾートは平日を中心に稼働を絞る時期を設け、界の物件で総労働時間を 5% 減らした。
中東情勢による原油の値上がりと、航空燃油の上乗せ運賃の上昇も、客の旅行費を押し上げる。人件費の上昇が続けば、施設の利益に連動する変動賃料が先に削られる。
大阪は特殊な局面にある。2025 年の万博で宿泊が増えた反動と、中国客の減少が重なり、2026 年 1〜3 月の大阪府の宿泊者は 13% 減った。この投資法人の OMO7 大阪とグランドプリンスホテル大阪ベイが打撃を受けた。
業種の表では、ホテルの NOI は名目年 2.25% で伸び、期待キャップは 5.0%、下限は 4.0% だ。ここでは賃料の 58% が固定なので、賃料の伸びは年 1.8% に置いた。
資本政策と M&A
資本政策は、NAV が 1 倍以上のときにだけ増資をする方針だ。実際の増資は、2021 年 11 月と 2022 年 6 月、2024 年 6 月に行った。2024 年 6 月は、値段が NAV を大きく下回った。そのあとの投資口の値段は NAV を割ったままで、増資は止まっている。
借入は 1,050 億円で、有利子負債を鑑定評価額で割った比率は 38%。固定金利の比率は 93%、平均の残りは 3.8 年、平均金利は 1.3% だ。日銀の気候変動オペを使った借入や、投資法人債の発行で金利を抑えている。ただし 2028 年 4 月期までに約 310 億円が満期を迎える。
報酬は、運用報酬を半年に 7 億円受ける。NOI に対して 9% ほどで、取得報酬もある。
分配は、2026 年 10 月期に圧縮積立金を取り崩し、前期より低い水準の分配を保つ予定だ。分配の目標は今の水準より数% 高い所に置いていて、達成の時期は 1 年遅れた。一時的な物件の入れ替えと、約 100 億円の取得余力を使って、高い利回りの物件を探す考えだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
星野リゾートの運営力は、日本の旅館・リゾートで最も高い評価を得ている。界 箱根や遠州で、客室の改装によって単価を上げた実績がある。2026 年夏に界 松本が改装を終え、同じ型を横に広げる。
含み益は 377 億円、借入は 93% が固定で、短期の金利上昇に強い。格付けは JCR が A+、R&I が A だ。借り換えのたびに分散して満期を管理している。
分配は 2026 年 4 月期に過去最高の水準の分配を出した。2028 年 4 月期はさらに 2% 増やす予想で、コロナ禍前の水準に 1 期早く戻る。コンフォート 3 物件に変動賃料を入れた効果も、年に 6% ほど見込める。
今の値段は NAV の 7 割台で、分配金の利回りは 5.7% ある。物件の入れ替えで利回りを高める余地もある。
約 100 億円の取得余力があり、DBJ と組んだ共同ファンドが開発した物件を、将来の取得候補に持つ。
星のや沖縄は稼働が 80% に近づき、星のや富士は 72% を超えるインバウンド比率の高い宿として評価が上がった。
慎重な見方
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。賃料から改装費を引くと 3.5% で、10 年国債が 3% の世界では説明がつかない。キャップが 5% まで上がると、物件の価値は鑑定を 3 割ほど下回る。借入が重く効いて、投資主の取り分は 2 割ほどに縮む。
借入 1,050 億円の平均金利は 1.3%。3.6% 前後に借り換わると、年の利払いは 3 倍以上になる。2028 年 4 月期までに約 310 億円の満期が来る。
改装の費用は減価償却を上回り続ける。温泉旅館は設備の傷みが早く、現金が出ていく。賃料の 4 割が運営の業績に連動し、人件費と燃料費の上昇で先に削られる。
大阪では OMO7 大阪とグランドプリンスホテル大阪ベイが苦戦し、2026 年 10 月期の分配は圧縮積立金の取り崩しで支えている。
スポンサーの出資は 4.5% にとどまり、増資は NAV を下回る値段で行われた。
稼ぎが落ちた局面で投資口の値段が NAV を割り続ければ、増資も使えない。外部成長の道が閉じる点も重い。
どちらに重みを置いたか
星野リゾートの運営力と、固定の高い借入には根拠がある。ただ、鑑定評価額に対する稼ぎが低く、改装費の重さと金利の上昇が、投資主の取り分を大きく削る。中立の価値は今の値段を大きく下回った。スポンサーの点数は 3.2 で、悲観の確率を 5 ポイント上げた。筆者は、運営の質は値段に入っているが、物件の価値の下落と利払いの増加は入っていないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/10 期)
確率で加重した株価時価総額 140,908 円825 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 109,359 円640 億円)。 今の値に割り戻すと 129,383 円758 億円、今との差 −43.1%、 期待の年率 +1.0%(資本コスト 9.1%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 425,523 円2,492 億円 | 142,923 円837 億円 | +150.1% | +9.6% | 56,845 円333 億円 |
| やや楽観 | 22% | 209,346 円1,226 億円 | 130,799 円766 億円 | +49.6% | +4.1% | 74,832 円438 億円 |
| 中立 | 33% | 147,021 円861 億円 | 120,212 円704 億円 | +17.6% | +1.6% | 88,187 円516 億円 |
| やや悲観 | 20% | 18,783 円110 億円 | 84,695 円496 億円 | −54.5% | −7.6% | 20,696 円121 億円 |
| 悲観 | 15% | 171 円1 億円 | 64,546 円378 億円 | −71.5% | −11.8% | 9,707 円57 億円 |
| 加重平均 | 100% | 140,908 円825 億円 | 109,359 円640 億円 | +10.1% | +1.0% | 250,266 円1,466 億円 |
今の株価時価総額 227,300 円1,331 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.1% を下回るほど割高。
楽観 10% 訪日客が伸び、賃料が年 2.8% で増える 利益 92 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 425,523 円2,492 億円
訪日客は 2030 年に向けて伸び、国内の旅行単価も上がる。星野リゾートの改装が単価を押し上げ、賃料は年 2.8% で伸びる。大阪も万博の反動から戻る。
借り換えは 3.4% で済み、年の利払いは 38 億円と今の 3 倍になる。それでも NOI は 150 億円から 197 億円へ 31% 増え、純利益は 92 億円に伸びる。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.47% のまま変わらない。時価総額は 2,492 億円と今の 1.9 倍になる。
増資は NAV を上回る値段で行われ、希薄化は小さい。
- ホテル・旅館の賃貸:数量 2,379(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.0%(規模に対する営業収益の比(今 7.6%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 238 億円・営業利益 148 億円。稼働 100%・賃料 年 +2.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 197 − 資本的支出 72) ÷ キャップ 3.47% − 純負債 1110 = 2492 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.47% で、今の値付けが 10 年続く所(ホテルの下限 4% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:訪日客と客室単価の上昇が続き、変動賃料が年 2.8% 伸びる筋書き。ホテルは景気の振れが大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.3% で伸び、借り換えは 3.5% 利益 78 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 209,346 円1,226 億円
訪日客はアジアを中心に伸び、中国客の減少も癒える。賃料は年 2.3% で伸び、稼働の係数は 0.99 になる。借り換えは 3.5% で済み、年の利払いは 39 億円になる。
NOI は 183 億円と 22% 増え、純利益は 78 億円と今をわずかに上回る。資本的支出は年 72 億円と今の 1.3 倍に増える。
物件の利回りは 4.75% に上がる。物件の価値は鑑定を 2 割ほど下回る水準になる。
改装の費用は借入で賄い、純負債は 1,120 億円に増える。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
- ホテル・旅館の賃貸:数量 2,356(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.5%(規模に対する営業収益の比(今 7.6%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 224 億円・営業利益 134 億円。稼働 99%・賃料 年 +2.3%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 183 − 資本的支出 72) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1120 = 1226 億円。キャップは中立 5.0% より 0.25% 低い 4.75% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より訪日客の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 33% 賃料は物価に負け、利払いが 3 倍になる 利益 65 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 147,021 円861 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.6% へ借り換わる。年の利払いは今の 12 億円から 40 億円へ増える。賃料は年 1.8% で伸び、稼働の係数は 0.98 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 150 億円から 171 億円へ 14% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 76 億円から 65 億円へ 14% 減る。
物件の利回りは 5.0% に上がり、物件の価値は鑑定を 3 割ほど下回る。資本的支出は年 71 億円と償却の 1.5 倍で、足りない分は借入で賄う。
増資は、投資口が NAV に近づくまで控える見通しだ。
- ホテル・旅館の賃貸:数量 2,332(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.1%(規模に対する営業収益の比(今 7.6%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 211 億円・営業利益 123 億円。稼働 98%・賃料 年 +1.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 170 − 資本的支出 71) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 1130 = 861 億円。キャップはホテルの表 5.0% (要求利回り 7.25% − NOI の伸び 2.25%)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.5%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 1.8% で伸びる筋書き。最もありうるので 33%(スポンサーの点数 3.2 で悲観に 5 ポイント回した)。
やや悲観 20% 訪日客が頭打ちになり、金利が高めに落ち着く 利益 24 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 18,783 円110 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.9% になる。訪日客の伸びは止まり、大阪の苦戦も長引き、賃料は 10 年で今と同じ水準にとどまる。稼働の係数は 0.95 に落ちる。
変動賃料は縮み、NOI は 131 億円と今の 1 割以上減る。年の利払いは 43 億円で、純利益は 24 億円と今の 3 割に縮む。資本的支出は年 65 億円に抑える。
物件の利回りは 5.25% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本の 1 割に満たない。
スポンサーの出資は 4.5% で、増資で希薄化が進む恐れがある。
- ホテル・旅館の賃貸:数量 2,260(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.6%(規模に対する営業収益の比(今 7.6%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 171 億円・営業利益 84 億円。稼働 95%・賃料 年 +0.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 131 − 資本的支出 65) ÷ キャップ 5.25% − 純負債 1140 = 110 億円。キャップは中立 +0.25%。変動賃料の縮みと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:訪日客の伸びが止まり、新規供給が重なり、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 15% 訪日客の落ち込みと金利の上振れ 利益 −13 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 171 円1 億円
不況や地政学のリスクで訪日客が落ち込み、賃料は 10 年後に今より 2 割ほど低い水準になる。固定費が重く、施設の利益は大きく減り、変動賃料はほぼ消える。賃料は年 2% ずつ縮み、稼働の係数も 0.93 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.5% になる。年の利払いは 49 億円で、NOI は 96 億円と今の 4 割近く減る。純利益は赤字に沈み、分配は出せなくなる。資本的支出は 45 億円に絞る。
物件の価値は借入を下回り、投資主の取り分は消える。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
- ホテル・旅館の賃貸:数量 2,213(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.2%(規模に対する営業収益の比(今 7.6%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 137 億円・営業利益 51 億円。稼働 93%・賃料 年 -2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 96 − 資本的支出 45) ÷ キャップ 5.50% − 純負債 1080 = 1 億円。キャップは中立 +0.5%。物件の価値が純負債を下回るので、時価総額は再建の見込みの分だけを置く。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3.2 なので、悲観の確率を基本の 10% から 5 ポイント上げて 15%。ホテルは景気と訪日客の振れが最も大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホテル・旅館の賃貸
星野リゾート運営の旅館・リゾートと、その他ホテル 71 物件を、固定賃料と変動賃料(施設の売上・利益に連動)の組み合わせで運営会社に貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する営業収益の比(今 7.6%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 2,379 | 7.6% | 180 | 109 |
| 10 年後 中立 | 2,332 | 9.1% | 211 | 123 |
取り方:過去 1 年(2025 年 10 月期+2026 年 4 月期)の営業収益 180 億円を数量・価格に分けた。簿価(鑑定評価額から含み益を引いた 2,379 億円)× 係数 1.00 が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用を引いて 150 億円、セグメントの利益は減価償却 41 億円と運用報酬などを引く前の額。中立の価格は 10 年で 1.19 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、固定賃料が 58% あり、変動賃料も新規供給と稼働の正常化で伸びが鈍るため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する賃料の稼ぎは、改装費を引くと 3.5%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 5% まで上がると、物件の価値が 3 割ほど縮み、含み益 377 億円が消える。
借り換えによる利払いの増加
平均の金利は 1.3%。3.6% 前後へ上がると、年の利払いは 12 億円から 40 億円まで増える。2028 年 4 月期までに約 310 億円の満期が来る。
改装の費用の重さ
年の資本的支出は 54 億円で、減価償却の 1.3 倍。温泉旅館は設備の傷みが早い。界 松本の改装など大型の工事が続き、借入で賄えば利払いが増える。
変動賃料と運営会社への偏り
賃料の 42% が施設の売上・利益に連動し、運営は星野リゾートが 47% を占める。人件費・燃料費の上昇で、変動賃料から先に削られる。
大阪の苦戦
OMO7 大阪とグランドプリンスホテル大阪ベイが、万博の反動と中国客の減少で苦戦している。大阪府の宿泊者は 2026 年 1〜3 月に 13% 減った。
スポンサーとの距離
星野リゾートの出資は 4.5%。増資は NAV を下回る値段で行われ、取得の一部は星野リゾートと DBJ の共同ファンドから。NAV 割れでの増資は 1 口の価値を薄める。
今後の分かれ目
- 訪日客の伸びが続き、星野リゾート運営物件の客室単価が年 4% 以上伸びる
- 変動賃料が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は適正に近づく。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 大阪の宿泊需要が戻らず、OMO7 大阪の変動賃料が下がる
- 悲観側の確率を上げる。変動賃料の比率が 4 割あり、分配への影響が大きい。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- スポンサーが投資口の買い増しを行う
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- 星野リゾート運営物件の RevPAR・変動賃料の月次の推移
- 大阪の 2 ホテルの運営実績
- 借り換えの金利と 2028 年 4 月期までの満期
- 改装の費用と回収の実績
- スポンサーの出資比率と増資の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップはホテルの業種ノートの表 5.0% で、今の NCF 利回り 3.5%(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った)より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.1% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.64% を足した 9.14%。ホテルの景気の振れは cycle に入れたので extra は置かない。