結論
スターアジア不動産投資法人は、オフィス・商業・住宅・物流・ホテルに分散した総合型の J-REIT だ。鑑定評価額 3,414 億円のうち、ホテルが 43%、オフィスが 26%、住宅が 14%、物流が 10%、商業が 8% を占める。スポンサーは外資系投資会社のスターアジアグループで、保有比率は 7.0%。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正(やや高め)というものだ。10 年後の物件の売値を、用途の表を NOI で加重した 4.59% の利回りで見ると、10 年後の価値と配当を今に引き直した額は 1,302 億円。今の時価総額 1,416 億円を 8% 下回る。
追い風はある。投資口は 1 口 NAV に対して投資口価格は 0.67 倍。含み益は 700 億円ある。ホテルの変動賃料は訪日客で伸び、オフィスと住宅は増額を続けている。
ただ、NOI の 45% を占めるホテルの賃料は、ほぼスポンサー系のポラリスが運営するホテルからの変動賃料だ。景気と訪日客の波に直接さらされ、テナントも一社に偏る。LTV は鑑定ベースで 40.7%、固定金利比率は 43% で、借り換えの重さも他より大きい。
市場が付けている利回りは 5.0% 前後と、筆者の置く中立の 4.59% より高い。この差が、NAV の割安に見えて割安でない理由だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この法人は「分散した資産を持つ運用会社が、売買の入替で収益を上げる」型だ。13 回の資産入替で築古の物件を売り、築浅の物件に替えてきた。この動きは評価できる。ただし、安全域がどこにあるかを見極める必要がある。
NAV の 0.67 倍は割安に見えるが、NAV の 4 割はホテルの鑑定だ。ホテルの鑑定は、運営者の将来の収益の想定に左右される。市場がホテルの鑑定を割り引くのは、そのためだ。
借入の側から見ると、LTV は鑑定で 40.7%、固定比率は 43%。借り換えで利払いが増える中、本業の利益は 91 億円から 86 億円へ、10 年かけて 5% ほど減る。大きな崩れではないが、分配の余裕は薄い。
10 年の分配と 10 年後の売値を今に引き直すと、今の値段は 8% ほど高い。大きな割高ではない。筆者は、ホテルとスポンサー系テナントの偏りを加味しても、適正の範囲と判断する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は賃料だ。直近 1 年(2026 年 1 月期+7 月期)の不動産賃貸事業収益は 194 億円。そこから運営費を引いた NOI(純収益)は 151 億円になる。物件の売却益は毎期あるが、繰り返せる収益ではないので除いて見る。
資産は 73 物件、取得価格で 2,719 億円。ホテルが 1,093 億円(40%)、オフィスが 749 億円(28%)、住宅が 340 億円、物流が 237 億円、商業が 300 億円ほどだ。NOI で見るとホテルが 45%、オフィスが 23%、住宅が 12%、物流が 11%、商業が 8%。
ホテルは 21 物件。うち 16 物件、取得価格 960 億円(ホテルの 87.8%)は、スターアジアグループ傘下のポラリス・ホールディングス(東証 3010)が借り手兼運営者で、賃料は固定賃料に変動分が乗る形が増えている。稼働率が 100% に見えるのは、ホテルが賃貸借で貸し出されているため。運営の稼働率は 22 期の想定で 89.9%、客室単価(ADR)は高水準。
全体の稼働率は 98.7%。東京圏の比率は 65.7%、平均築年数は 21.7 年。
資本的支出は直近 1 年で 15 億円と、減価償却の 23 億円を下回る。ここ数年は 8〜11 億円の半期が続いており、水準は低い。
優良さと弱いところ
この法人の優良さは、用途の分散と、賃料を増額できる運営力にある。オフィスは入替で 20%、更新で 5% の増額を実現し、住宅も入替で 12%、更新で 10% 上げている。費用の削減にも取り組み、直近の NOI は 2.0% 増えた。
強みの一つ目は、含み益だ。鑑定評価額は簿価を 700 億円上回り、1 口 NAV は純資産の 1.45 倍になる。二つ目は、ホテルの変動賃料。訪日客の増加が賃料に直接乗る仕組みで、固定賃料のままだった頃より伸びが大きい。
弱みは三つある。一つ目は、ホテルが NOI の 45% を占め、賃料の大半が一社(ポラリス)に偏ること。二つ目は、LTV が簿価で 47.4%、鑑定で 40.7% と高めで、固定金利の比率が 43% しかないこと。三つ目は、資本的支出が低く抑えられていて、今後の修繕で増える余地があることだ。
筆者は、事業の質を「並」と見る。分散と増額の力は評価するが、ホテルの比重とスポンサー系テナントへの偏りが、質を押し下げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホテル市場は、訪日客の増加で 2023 年から客室単価が上がり続けている。ただし、この法人のホテルは多くが賃貸借で、賃料は運営者の収益に連動する形が増えている。運営の稼働率と単価が落ちれば、賃料もそのまま落ちる。
オフィスは、東京圏中心で稼働率が 97.8% と高い。更新時の増額余地はあるが、築 30 年超の物件も混ざる。住宅は稼働率 96.9% で安定し、入替と更新のどちらでも増額が続く。
業種の表では、キャップレート(NCF ÷ 物件価値の利回り)はオフィス 4.25%、住宅 3.75%、物流 4.25%、商業 5.0%、ホテル 5.0%。NOI の比で加重すると 4.59% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割ると 3.97%。J-REIT 全体では、上場の値段から逆算したキャップレートの中央は 4.2% 前後。この法人は NAV の 0.67 倍で、逆算の利回りは 5% 前後と、中央を大きく上回る。市場は、ホテルの鑑定を割り引いて見ているとみてよい。
資本政策と M&A
借入は 1,389 億円(借入金 1,369 億円、投資法人債 20 億円)。総資産に対する比率(LTV)は 47.4%、鑑定評価額で割ると 40.7% だ。平均金利は 1.63%、固定金利比率は 42.8%、平均残存は 2.7 年。格付けは JCR が A+、R&I が A。
弱点は金利の変動だ。固定比率が低く、変動借入が約 6 割を占める。1 年内の返済予定は 232 億円(全体の 17%)で、借り換えの度に金利は市場に近づく。金利の上昇で、支払利息は 22 期の予想で 13 億円、半期ごとに増えていく。
投資口は、2024 年 8 月の第 7 回公募増資まで 8 回の公募を行ってきた。今は NAV を大きく下回る価格で、増資は難しい。資産の入れ替えは 13 回目を 2026 年 9 月に決定した。
運用報酬は直近 1 年で約 13 億円、NOI の約 9%。取得報酬と譲渡報酬は取引額の 1.0%(上限)。スターアジアグループは 7.0% を保有する。分配は内部留保(85 億円)の取り崩しを含み、配当性向は 101.9%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
投資口は NAV の 0.67 倍。含み益は 700 億円あり、鑑定が少し下がっても NAV は今の 0.9 倍前後を保つ。今の投資口価格は、その下に十分な余裕を持つ値段だ。
ホテルの変動賃料は、訪日客の伸びで上がっている。ポラリス運営の 14 ホテルは、22・23 期の RevPAR が実績比 5.5% 増の想定。固定賃料の物件から変動賃料への切り替えも進む。
オフィスと住宅は、入替で 12〜20%、更新で 5〜10% の増額を続けている。直近の NOI は費用の削減も合わせて 2.0% 増えた。
資産の入替も続く。築古で固定賃料のホテルを売り、築浅で変動賃料のホテルに替える。売却益は分配に回り、1 口あたりの分配に上乗せされる。
スポンサーのスターアジアグループは 7.0% を保有し、利益の向きが投資主と揃う。運用報酬の一部は分配に連動する。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% 伸び、キャップは今の鑑定の NCF 利回り 3.97% で止まる。時価総額は 3,366 億円と今の 2.4 倍になる。
慎重な見方
ホテルは NOI の 45% で、賃料の大半が、スポンサー系のポラリス運営だ。取得の相手も、売却の相手も、運営者も、同じグループに近い。賃料の決め方に利益相反の余地があり、景気や訪日客が落ちると、賃料も運営者の収益と一緒に下がる。
NAV の 0.67 倍という割安は、市場がホテルの鑑定を信用していないことの表れだ。ホテルの鑑定は直接還元で 5% 台の利回りで置かれるが、変動賃料の収益は景気で振れる。キャップが 5.1% に上がれば、物件の価値は 3,414 億円から 2,600 億円ほどに下がる。
借入は固定比率が 43% と低い。1 年内に 232 億円が満期になる。今は平均 1.63% でも、市場の水準の 3.5% に借り換えると、利払いは 22 億円から 49 億円に増える。
資本的支出は直近で減価償却を下回っている。築 21.7 年の平均で、更新が先送りされている可能性がある。建築費は物価より速く上がる。
悲観の筋書きでは、ホテルの変動賃料が落ち、稼働が 93% に下がる。借り換えが 4.5% になり、純利益は 18 億円まで縮む。時価総額は 514 億円まで縮む。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実を言っている。NAV の割安は本物だが、その鑑定をどこまで信じるかで結論が分かれる。筆者は、ホテルの比重とスポンサー系テナントの偏りを重く見て、スポンサーの点数を 3.2 とした。3 以上なので、悲観の確率を 10% から 15% に上げた。その上で、中立のキャップを 4.59% に置くと、今の値段は適正の範囲に収まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 70,011 円1,881 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 31,735 円853 億円)。 今の値に割り戻すと 48,444 円1,302 億円、今との差 −7.7%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 9.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 125,270 円3,366 億円 | 39,263 円1,055 億円 | +213.4% | +12.1% | 13,163 円354 億円 |
| やや楽観 | 20% | 99,665 円2,678 億円 | 36,472 円980 億円 | +159.3% | +10.0% | 27,227 円732 億円 |
| 中立 | 37% | 74,916 円2,013 億円 | 33,532 円901 億円 | +106.6% | +7.5% | 40,126 円1,078 億円 |
| やや悲観 | 20% | 47,339 円1,272 億円 | 28,805 円774 億円 | +45.0% | +3.8% | 15,229 円409 億円 |
| 悲観 | 15% | 19,129 円514 億円 | 20,878 円561 億円 | −23.8% | −2.7% | 6,001 円161 億円 |
| 加重平均 | 100% | 70,011 円1,881 億円 | 31,735 円853 億円 | +93.8% | +6.8% | 101,746 円2,734 億円 |
今の株価時価総額 52,500 円1,411 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ホテルの変動賃料が伸び、キャップは今の鑑定の利回りが続く 利益 117 億円 · PBR 2.4 倍 · 株価時価総額 125,270 円3,366 億円
訪日客が増え続け、ホテルの変動賃料が伸びる。オフィスと住宅も増額が続き、賃料は年 3% の伸びになる。稼働は 99% に近づく。
借り換えは A+ 格のおかげで 3.2% で収まり、年の利払いは 47 億円。NOI は 151 億円から 203 億円へ 35% 増え、純利益は 117 億円と今を上回る。
不動産の売買市場は低金利の値付けを続け、キャップは 3.97% のままだ。物件の価値が 4,600 億円に達し、時価総額は 3,366 億円と今の 2.4 倍になる。
借入余力が小さい中でも、入替による売却益と新規取得が続く。ただし、その分は計算に入れていない。
- ホテル・オフィス・住宅・物流・商業の賃貸:数量 2,687(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.7%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.2%)。賃料の改定と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 261 億円・営業利益 179 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 203 − 資本的支出 20) ÷ キャップ 3.97% − 純負債 1250 = 3366 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引き、鑑定評価額で割った 3.97%)。今の値付けが 10 年続く筋書きで、楽観はここまで下げてよい。
確率:訪日客の増加でホテルの賃料が伸び、キャップが今の鑑定の NCF 利回り 3.97% のまま 10 年続く筋書き。基本どおり 8% とした。
やや楽観 20% 賃料は年 2.5%、キャップは 4.25% まで下がる 利益 102 億円 · PBR 1.9 倍 · 株価時価総額 99,665 円2,678 億円
ホテルの変動賃料は伸び、オフィスと住宅は増額が続く。賃料は年 2.5% の伸びで、稼働率は 98.5% を保つ。
借り換えは 3.3%。年の利払いは 49 億円に増えるが、NOI は 190 億円と 26% 増え、純利益は 102 億円で今を上回る。
売買市場は、10 年金利 3% との差を 1.25 ポイントまで保つ。キャップは 4.25% に下がり、物件の価値は 3,900 億円を超える。時価総額は 2,678 億円。
ただし、ホテルの鑑定は運営者の収益の想定に左右されるので、全体のキャップは用途の表を大きく下回れない。
- ホテル・オフィス・住宅・物流・商業の賃貸:数量 2,673(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.3%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.2%)。賃料の改定と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 247 億円・営業利益 166 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 190 − 資本的支出 22) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 1265 = 2678 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(3.97%)より高い 4.25%。10 年金利との差が 1.25 ポイント残る前提。
確率:賃料が物価の 8 割ほど追随し、キャップが 4.25% まで下がる筋書き。ありうる上振れとして 20% とした。
中立 37% 賃料は年 2% で伸び、キャップが 4.59% に上がる 利益 86 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 74,916 円2,013 億円
借入は変動金利の比率が高く、借り換えで金利は市場の 3.5% に近づく。年の利払いは 22 億円から 52 億円に増える。稼働率は 98% に下がる。
賃料は年 2% で伸びる。ホテルの変動賃料とオフィス・住宅の増額が、固定賃料の鈍さを補う。経費は物価で年 3%。NOI は 151 億円から 177 億円へ、10 年で 17% 伸びる。そこから資本的支出 25 億円が出る。
減価償却は 24 億円、運用報酬などは 15 億円。純利益は 91 億円から 86 億円へ、5% 減る。分配は、内部留保の取り崩しがなくなり、今よりやや下がる。
物件の売値は、キャップ 4.59% で 3,300 億円ほど。そこから純負債 1,290 億円を引くと、時価総額は 2,013 億円になる。
- ホテル・オフィス・住宅・物流・商業の賃貸:数量 2,660(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.2%)。賃料の改定と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 234 億円・営業利益 153 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 177 − 資本的支出 25) ÷ キャップ 4.59% − 純負債 1290 = 2013 億円。キャップは業種の表を NOI で加重した 4.59%(ホテル・商業 5.0%、オフィス・物流 4.25%、住宅 3.75%)。今の NCF 利回り(3.97%)より高い。
確率:10 年金利が 3% 前後に落ち着き、賃料は年 2% で伸びる筋書き。最も起こりやすい。スポンサーの点数 3.2 のため、悲観の確率を基本の 10% から 15% に上げ、中立は 37% とした。
やや悲観 20% ホテルの賃料が弱まり、キャップが 4.84% に上がる 利益 61 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 47,339 円1,272 億円
ホテルの変動賃料が減り、一部のテナントが退去する。賃料の伸びは年 1% にとどまる。稼働率も 97% に下がる。
借り換えは 3.7%。年の利払いは 54 億円。NOI は 152 億円と今と同じ水準にとどまり、純利益は 61 億円に縮む。
分配は借入の返済を優先して絞り、内部留保も使い切る。入替による売却益も難しくなる。含み益は縮み、投資口価格は純資産を下回ったまま戻らない。
キャップは 4.84% に上がる。物件の価値は 2,600 億円ほどで、純負債 1,320 億円を引くと、時価総額は 1,272 億円だ。
- ホテル・オフィス・住宅・物流・商業の賃貸:数量 2,633(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.0%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.2%)。賃料の改定と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 210 億円・営業利益 129 億円。稼働 97%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 152 − 資本的支出 27) ÷ キャップ 4.84% − 純負債 1320 = 1272 億円。キャップは中立 4.59% に 0.25 ポイント上乗せして 4.84% (金利の上振れと、ホテルの鑑定の下げ)。
確率:訪日客の伸びが止まり、ホテルの変動賃料が減る筋書き。借り換えの上乗せも重なる。20% とした。
悲観 15% ホテルの賃料が崩れ、金利上昇で物件の価値が借入に近づく 利益 18 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 19,129 円514 億円
ホテルの変動賃料が落ち、運営者の収益が悪化して賃料の減額に応じる。全体の稼働率は 93% に下がり、賃料は年 0.5% 下がる。
借り換えは 4.5% になり、年の利払いは 65 億円。NOI は 119 億円と今の 8 割弱まで減り、純利益は 18 億円に縮む。
スポンサー系のテナントが一社に偏る中、賃料の減額は契約の見直しを伴う。分配は大きく減り、増資もできず、借入の返済を優先して物件を売る。
キャップは 5.15% まで上がり、物件の価値は 1,900 億円ほど。純負債 1,360 億円を引くと、時価総額は 514 億円にとどまる。
- ホテル・オフィス・住宅・物流・商業の賃貸:数量 2,524(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.2%)。賃料の改定と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 174 億円・営業利益 96 億円。稼働 93%・賃料 年 -0.5%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 118 − 資本的支出 22) ÷ キャップ 5.15% − 純負債 1360 = 514 億円。キャップは中立 4.59% に 0.56 ポイント上乗せして 5.15%。物件の価値が純負債に近づき、時価総額は自己資本の 4 割以下になる。
確率:スポンサーの点数 3.2 は 3 以上なので、悲観の確率を基本の 10% から 15% に上げた。ホテルの賃料の崩れと借り換え金利の上昇が同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホテル・オフィス・住宅・物流・商業の賃貸
国内 73 物件を持ち、ホテル(変動賃料)、オフィス、住宅、物流施設、商業から賃料を受ける。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.2%)。賃料の改定と、変動賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 2,679 | 7.2% | 194 | 127 |
| 10 年後 中立 | 2,660 | 8.8% | 234 | 153 |
取り方:直近 1 年(2026 年 1 月期+7 月期)の不動産賃貸事業収益 194 億円を数量・価格に分けた。売却益は繰り返せないので除く。数量は期末の不動産帳簿価額 2,714 億円に稼働率 98.7% を掛けた規模、価格は収入 ÷ 数量。NOI は運営費 43 億円を引いて 151 億円、セグメントの利益は減価償却 23 億円を引いた額。ホテルは変動賃料で、価格に景気の振れが出る。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、固定賃料の部分が物価に連動しにくいため(業種ノート)。
リスクと懸念
ホテルへの偏り
NOI の 45% がホテル。変動賃料は訪日客と景気に連動し、落ちる時は賃料がそのまま落ちる。
スポンサー系テナントの偏り
ホテル 21 物件のうち 16 物件(取得価格 960 億円)の借り手兼運営者がポラリス。賃料の決め方に利益相反の余地があり、運営者の収益が落ちれば賃料も下がる。
借り換えによる利払いの増加
固定比率は 43%。1 年内に 232 億円が満期になる。平均 1.63% から市場の 3.5% 前後に借り換わると、年の利払いは 22 億円から 52 億円になる。
ホテルの鑑定の信頼
NAV の 0.67 倍は、市場がホテルの鑑定を割り引いている表れ。鑑定が下がれば、含み益 700 億円が縮む。
資本的支出の低さ
直近 1 年で 15 億円と、減価償却の 23 億円を下回る。築 21.7 年の平均で、更新の先送りが続けば後で膨らむ。建築費は物価より速く上がる。
内部留保と売却益に頼る分配
今期の分配は配当性向 101.9% で、内部留保の取り崩しを含む。22 期は売却益が上乗せされ、23 期は予想で 1 口あたり 5% ほど下がる。
今後の分かれ目
- 10 年国債の利回りが 2% 台前半へ戻り、借り換えが 2.5% 前後で済む
- 利払いの増加が小さくなり、純利益が 100 億円近くを保つ。楽観側の確率を上げる。
- ポラリス運営ホテルの RevPAR が想定どおり 5% 台で伸びる
- ホテルの変動賃料が増え、NOI の伸びが年 3% に近づく。中立の見方を上げる。
- 訪日客が減り、ホテルの運営稼働率が 85% を下回る
- 変動賃料が減り、NOI の減りが想定より早まる。慎重側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- ポラリス以外のオペレーターと賃貸借を結ぶ物件が増える
- テナントの偏りが薄まり、スポンサーの点数を下げる。
見ておくもの
- ホテルの変動賃料と、ポラリス運営ホテルの RevPAR
- 借り換えの金利と、変動借入の比率
- オフィス・住宅の入替・更新の増額率
- 資本的支出と減価償却の比
- ポラリス以外のオペレーターの比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や NAV 倍率から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、純負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を NOI で加重した 4.59% で、今の鑑定の NCF 利回り 3.97% より高い。NAV(含み益)は床に使っていない。基本の資本的支出は、直近 1 年が 15 億円と低いため、減価償却に近い 25 億円まで引き上げた。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.99% を足して 9.49%。用途の分散は cycle に入れたので extra は置かない。