結論
いちごホテルリート投資法人は、全国のビジネスホテルを中心に 29 物件を持つ J-REIT だ。鑑定評価額は約 923 億円で、運用はいちごグループが担う。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正ということである。価値の計算は、今の時価総額を 7% ほど下回る。
強みは、含み益と増えてきた稼ぎだ。鑑定評価額は簿価を約 204 億円上回り、今の値段は 1 口の NAV の 6 割弱にある。スポンサーが投資口の 3 割を持ち、同じ船に乗っている点も安心材料だ。
弱みは三つある。ひとつは、賃料の 5 割弱が宿泊の売上に連動する変動賃料で、今が過去最高に近い水準にあること。ふたつめは、借入 380 億円の平均金利が借り換えで 1.42% から 1.74% に上がり、まだ上がる余地が大きいこと。みっつめは、運用報酬が NOI の 17% ほどと重いことだ。
このため、賃料の伸びは物価に届かず、利払いが増える筋書きを中心に置いた。今の値段は NAV を割っているが、筆者は割安の根拠にしない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、ビジネスホテルは堀が浅い事業だ。同じ立地で似た宿が増えると、単価で競うことになる。運営会社の腕より、景気と訪日客の波が稼ぎを決める。
過去 1 年の純利益は、売却益を除くと 21.7 億円で、今の時価総額に対し 6.3% の利回りになる。ただしこの利益は、平均金利 1.74% の借入が支えている。借り換えが進むと、年の利払いは 8 億円から 17 億円に増える。
さらに、今の稼ぎは過去最高に近く、景気の山を中立に置くと価値を高く見すぎる。賃料の伸びを年 2.0% に抑え、稼働も 0.98 に落とした。
NAV は物件の鑑定が高い今の姿で、清算されない限り投資主の手には入らない。今の値段は NAV の 6 割弱だが、筆者は割安の根拠にしない。
10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段より 7% ほど低い。ほぼ適正な範囲に入る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ホテルの賃料だ。投資法人が持つのは建物と土地で、運営会社に貸して賃料を受け取る。賃料は固定部分と、宿泊の売上や利益に連動する変動部分でできている。2026 年 7 月期は固定が 12.6 億円、変動が 11.9 億円で、変動が 5 割弱を占めた。
物件は全国に 29 ある。札幌・仙台・横浜・名古屋・大阪・福岡などの都市のビジネスホテルと、箱根・鈴鹿など観光地の宿が中心だ。コンフォートホテルなどのチェーン型が多く、星野リゾートのような高単価のブランド旅館とは性格が違う。
2026 年 7 月期は、日本橋箱崎のホテルを 15.8 億円で売り、2.8 億円の売却益を出した。同じ期に、札幌大通の Nest Hotel と横浜の THE KNOT の 2 物件が改装のため休業した。10 月 16 日には、札幌大通の運営管理会社を大和ハウスリアルティマネジメントに替えると発表した。
過去 1 年の賃貸事業収益は 56 億円、NOI は 50 億円。簿価 719 億円に対する NOI の利回りは 7.0% になる。
半期ごとの振れは大きい。2026 年 1 月期の NOI は 27 億円、7 月期は 23 億円で、変動賃料の季節性と休業が効いた。
優良さと弱いところ
物件の質は、都市のビジネスホテルが中心で、稼働が安定しやすい。2026 年 7 月期の客室稼働率は 85% 前後、変動賃料型の 18 ホテルの RevPAR(客室 1 室あたりの売上)は前年同期比で 5.5% 下がった。中国からの訪日客の減少が重かった。
強みは三つある。ひとつめは、含み益が約 204 億円と簿価の 28% あること。ふたつめは、スポンサーが投資口の 3 割を持つこと。みっつめは、固定賃料が 5 割強あり、稼ぎの底が極端に薄くはないことだ。
弱みも三つある。ひとつは、変動賃料が 5 割弱あり、訪日客や景気の振れに連動すること。ふたつめは、築年が進んだ地方のビジネスホテルが多く、改装の費用がかかること。みっつめは、借入の固定比率が 62% と星野リゾート・リートほど高くないことだ。
今の稼ぎは過去最高に近い水準にあり、筆者は中立に置かない。景気が一巡したあとの水準で、10 年の筋書きを組んだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホテルは、訪日客と国内の宿泊の両方で稼ぐ。2025 年の訪日客は過去最高の 4,268 万人で、政府は 2030 年に 6,000 万人を目標にしている。2026 年に入って中国客が減り、他の国の客が穴を埋めて、全体は前年並みを保った。
都市のビジネスホテルは、客室単価が日ごとに動くので、物価の上昇を価格に移しやすい。ただし、人手不足と人件費の上昇が重い。運営会社の利益が削られると、利益に連動する変動賃料が先に減る。
新しいホテルの開業が都市で続き、需要を分け合う。大阪では 2025 年の万博の反動も出た。
今は客室稼働率が高く、客室単価が過去最高に近い。景気の山にある可能性が高く、筆者はこの水準をそのまま中立に置かない。
業種の表では、ホテルの NOI は名目年 2.25% で伸び、期待キャップは 5.0%、下限は 4.0% だ。ここでは変動賃料が 5 割弱あるので、賃料の伸びは中立で年 2.0% とやや低く置いた。
宿泊の需要は、訪日客の増減、為替、航空運賃、国内の景気で動く。1 つの要因が崩れても、全体が崩れるとは限らない。
資本政策と M&A
借入は 380 億円で、有利子負債を鑑定評価額で割った比率は 41%。固定金利の比率は 62%、平均の残りは 3.1 年だ。2028 年 7 月期までに約 100 億円、全体の 26% が満期を迎える。
2026 年 8 月に 82 億円を借り換え、平均金利は 1.42% から 1.74% に上がった。まだ低い金利の借入が多く、借り換えのたびに利払いが膨らむ。
運用報酬は、2026 年 7 月期に 3.6 億円、前期は売却報酬を含めて 5.4 億円。予想は半期で 4 億円ほどで、NOI に対して 17% ほどになる。J-REIT の中では重い部類だ。
増資は、2023 年 8 月にスポンサーのいちごへの第三者割当を行った。値段は NAV の 82% で、既存の投資主に不利に働く。それ以降の公募はない。
分配は、2027 年 1 月期と 7 月期の純利益の予想が、それぞれ 10 億円ほどだ。売却益を除いた今の水準より、わずかに低い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
訪日客は 2030 年に向けて伸び、ビジネスホテルの客室単価も上がっている。2026 年 7 月期も稼働は 85% 前後を保ち、休業中の 2 物件が戻れば NOI が積み上がる。
含み益は約 204 億円、スポンサーのいちごが 3 割を持ち、運用の方針は投資主と利害が重なる。物件の入れ替えでは、日本橋箱崎を簿価を上回る値段で売り、売却益を分配に回した。売却で得た資金は、改装や有利な物件の取得にも回せる。
今の値段は NAV の 6 割弱で、分配金の利回りも高い。2023 年にスポンサーが NAV の 82% で投資口を引き受けたが、それより安い値段で今も取引されている。
札幌大通の運営管理会社を大和ハウスリアルティマネジメントに替え、運営の質を上げる動きもある。
変動賃料の比率が高いので、訪日客が伸びれば上振れの幅も大きい。物件の利回りが 4.5% まで下がる楽観の筋書きでは、時価総額は 840 億円に達する。
慎重な見方
今の稼ぎは、過去最高に近い水準にある。賃料の 5 割弱は変動賃料で、景気や訪日客の波がそのまま分配に届く。中国客の減少で、変動賃料型の 18 ホテルは RevPAR が 5.5% 下がった。
借入 380 億円の平均金利は、2026 年 8 月の借り換えで 1.42% から 1.74% に上がった。3.8% 前後まで上がれば、年の利払いは 8 億円から 17 億円に増える。2028 年 7 月期までに約 100 億円の満期が来る。
運用報酬は NOI の 17% ほどと重く、稼ぎの一部がスポンサーに流れる。2023 年の第三者割当は NAV の 82% で、既存の投資主には不利だった。
築年が進んだビジネスホテルが多く、改装の費用は続く。休業中の 2 物件の再開が遅れれば、予想の分配に届かない。
やや悲観の筋書きでは、賃料が 10 年で伸びず、NOI は 45 億円に落ちる。時価総額は 275 億円と、今の 8 割にとどまる。
どちらに重みを置いたか
含み益とスポンサーの出資には根拠がある。一方で、変動賃料の比率と過去最高に近い稼ぎ、借り換えによる利払いの増加が、価値を削る。中立の価値は今の時価総額を 7% ほど下回り、ほぼ適正の範囲にある。スポンサーの点数は 2.9 で、悲観の確率は基本のままとした。筆者は、NAV 割れは割安の根拠にならず、値段は妥当だが安くはないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 159,224 円522 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 56,904 円186 億円)。 今の値に割り戻すと 97,952 円321 億円、今との差 −5.4%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 9.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 277,776 円910 億円 | 74,481 円244 億円 | +240.3% | +13.0% | 35,226 円115 億円 |
| やや楽観 | 22% | 209,400 円686 億円 | 67,765 円222 億円 | +167.8% | +10.4% | 60,976 円200 億円 |
| 中立 | 38% | 169,413 円555 億円 | 61,355 円201 億円 | +123.0% | +8.3% | 87,692 円287 億円 |
| やや悲観 | 20% | 83,943 円275 億円 | 39,682 円130 億円 | +19.4% | +1.8% | 24,725 円81 億円 |
| 悲観 | 10% | 42,124 円138 億円 | 32,967 円108 億円 | −27.4% | −3.2% | 7,509 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 159,224 円522 億円 | 56,904 円186 億円 | +108.8% | +7.6% | 216,128 円708 億円 |
今の株価時価総額 103,500 円339 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 訪日客が伸び、賃料が年 3% で増える 利益 27 億円 · PBR 2.2 倍 · 株価時価総額 277,776 円910 億円
訪日客は 2030 年に向けて伸び、国内の宿泊も堅調に続く。休業中の改装が実り、変動賃料が上振れして、賃料は年 3% で伸びる。
借り換えは 3.5% で済み、年の利払いは 16 億円と今の 2 倍になる。それでも NOI は 50 億円から 67 億円へ 34% 増え、純利益は 27 億円に伸びる。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 4.25% のまま変わらない。時価総額は 910 億円と今の 2.7 倍になる。
増資は NAV を上回る値段で行われ、希薄化は小さい。休業中の 2 物件も戻り、稼働の係数は 1.00 を保つ。
- ホテルの賃貸:数量 719(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.5%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.8%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 76 億円・営業利益 56 億円。稼働 100%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 67 − 資本的支出 14) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 330 = 910 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 4.25% で、今の値付けが 10 年続く所(ホテルの下限 4% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:訪日客と客室単価の上昇が続き、変動賃料が年 3% 伸びる筋書き。ホテルは景気の振れが大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.7% 利益 23 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 209,400 円686 億円
訪日客はアジアを中心に伸び、中国客の減少も癒える。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.99 になる。借り換えは 3.7% で、年の利払いは 17 億円になる。
NOI は 63 億円と 26% 増え、純利益は 23 億円と今をわずかに上回る。資本的支出は年 14.5 億円と今の 1.3 倍に増える。
物件の利回りは 4.75% に上がる。時価総額は 686 億円で、今の 2 倍ほどになる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。改装の費用は借入で賄い、純負債は 320 億円から 333 億円に増える。
- ホテルの賃貸:数量 712(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.0%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.8%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 72 億円・営業利益 51 億円。稼働 99%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 63 − 資本的支出 14) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 333 = 686 億円。キャップは中立 5.0% より 0.25% 低い 4.75% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より訪日客の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 2 倍になる 利益 19 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 169,413 円555 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.8% へ借り換わる。年の利払いは今の 8 億円から 17 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.98 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 50 億円から 59 億円へ 18% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 22 億円から 19 億円へ 14% 減る。
物件の利回りは 5.0% に上がる。資本的支出は年 14 億円と今の 1.3 倍で、減価償却の 1.2 倍にあたる。
時価総額は 555 億円で、今の 1.6 倍ほどになる。ただし 10 年の長さに割り引くと、今の値段を 1 割弱下回る。
- ホテルの賃貸:数量 705(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.6%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.8%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 67 億円・営業利益 47 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 59 − 資本的支出 14) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 335 = 555 億円。キャップはホテルの表 5.0% (要求利回り 7.25% − NOI の伸び 2.25%)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 4.3%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数 2.9 は 3 に届かず、悲観の確率は基本のまま)。
やや悲観 20% 訪日客が頭打ちになり、金利が高めに落ち着く 利益 4 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 83,943 円275 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 4.1% になる。訪日客の伸びは止まり、新規供給が重なり、賃料は 10 年で今と同じ水準にとどまる。稼働の係数は 0.95 に落ちる。
変動賃料は縮み、NOI は 45 億円と今の 1 割減。年の利払いは 18 億円で、純利益は 4 億円と今の 2 割に縮む。資本的支出は年 13 億円に抑える。
物件の利回りは 5.25% に上がる。時価総額は 275 億円と、今の 8 割にとどまる。
スポンサーの出資は 3 割あり、増資が必要になっても、スポンサーが引き受ける余地はある。
- ホテルの賃貸:数量 683(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.8%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 54 億円・営業利益 34 億円。稼働 95%・賃料 年 +0.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 45 − 資本的支出 13) ÷ キャップ 5.25% − 純負債 335 = 275 億円。キャップは中立 +0.25%。変動賃料の縮みと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:訪日客の伸びが止まり、新規供給が重なり、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 訪日客の落ち込みと金利の上振れ 利益 −8 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 42,124 円138 億円
不況や地政学のリスクで訪日客が落ち込み、賃料は年 2% ずつ縮んで、10 年後に今より 2 割ほど低い水準になる。固定費が重く、施設の利益は大きく減り、変動賃料はほぼ消える。稼働の係数も 0.93 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.8% になる。年の利払いは 21 億円で、NOI は 34 億円と今の 3 割強減る。純利益は赤字に沈み、分配は出せなくなる。資本的支出は 9 億円に絞る。
物件の利回りは 5.5% に上がる。時価総額は 138 億円と、今の 4 割に縮む。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
- ホテルの賃貸:数量 669(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.4%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.8%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 43 億円・営業利益 24 億円。稼働 93%・賃料 年 -2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 34 − 資本的支出 9) ÷ キャップ 5.50% − 純負債 322 = 138 億円。キャップは中立 +0.5%。分配が止まり、物件の価値から借入を引いた額が縮む。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 2.9 で 3 に届かないので、悲観の確率は基本の 10%。ホテルは景気と訪日客の振れが最も大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホテルの賃貸
全国のビジネスホテルなど 29 物件を、固定賃料と変動賃料(施設の売上・利益に連動)の組み合わせで運営会社に貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 7.8%)。客室単価の伸びと変動賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 719 | 7.9% | 56 | 40 |
| 10 年後 中立 | 705 | 9.6% | 67 | 47 |
取り方:過去 1 年(2026 年 1 月期+7 月期)の賃貸事業収益 56 億円(売却益を除く)を数量・価格に分けた。簿価 719 億円 × 係数 1.00 が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用を引いて 50 億円、セグメントの利益は減価償却 10 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、変動賃料が過去最高に近い水準から落ち着き、新規供給で伸びが鈍るため(業種ノート)。
リスクと懸念
変動賃料と景気の山
賃料の 5 割弱が運営会社の売上・利益に連動する。今の稼ぎは過去最高に近い水準で、景気や訪日客が落ち込むと分配が大きく減る。
借り換えによる利払いの増加
2026 年 8 月の借り換えで平均金利は 1.42% から 1.74% に上がった。3.8% 前後へ上がると、年の利払いは 8 億円から 17 億円まで増える。2028 年 7 月期までに約 100 億円の満期が来る。
運用報酬の重さ
運用報酬は NOI の 17% ほど。売却や取得のたびに報酬がかかり、稼ぎの一部がスポンサーに流れる。
中国客の減少と大阪・札幌の改装
変動賃料型の 18 ホテルの RevPAR は前年同期比で 5.5% 下がった。札幌大通と横浜の 2 物件は改装のため休業しており、再開が遅れれば予想の分配に届かない。
築年と改装の費用
築年が進んだ地方のビジネスホテルが多く、改装の費用は続く。年の資本的支出は減価償却を上回る水準になる。
スポンサーとの取引
2023 年 8 月に NAV の 82% で、スポンサーのいちごへ第三者割当を行った。既存の投資主の取り分は薄まった。
今後の分かれ目
- 訪日客の伸びが続き、変動賃料型ホテルの RevPAR が年 4% 以上伸びる
- 変動賃料が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割安に近づく。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 休業中の改装 2 物件の再開が遅れ、RevPAR の下落が続く
- 悲観側の確率を上げる。変動賃料の比率が 5 割弱あり、分配への影響が大きい。
- NAV 割れで公募増資や第三者割当を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- スポンサーが投資口の買い増しを行う
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- 変動賃料型ホテルの RevPAR・変動賃料の半期の推移
- 休業中の札幌大通・横浜の再開と稼働
- 借り換えの金利と 2028 年 7 月期までの満期
- 運用報酬の NOI に対する比率
- スポンサーの出資比率と増資の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップはホテルの業種ノートの表 5.0% で、今の NCF 利回り 4.3%(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った)より高い。今の稼ぎは過去最高に近いので中立に置かず、賃料の伸びと稼働を抑えた。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.33% を足した 9.83%。ホテルの景気の振れは cycle に入れたので extra は置かない。