結論
三井不動産ロジスティクスパークは、三大都市圏の新しい大型物流施設を持つ REIT だ。2024 年 11 月にアドバンス・ロジスティクス投資法人と合併し、三井不動産と伊藤忠商事の二つのスポンサーを持つ。筆者の結論は、適正の範囲だが、割高の側の端である。
強みは賃料の改定だ。直近の期の改定は平均で 12.7% の増額だった。契約が相場より低い物件が多く、更新のたびに賃料が上がる余地がある。借入も軽く、鑑定評価額に対する比率は 34% にとどまる。
それでも割高の側に傾くのは、金利の前提を動かせないからだ。平均 0.88% の借入は 4 年ほどでほぼ全部が 3% 台の新しい金利に替わる。年の利払いは 50 億円以上増え、純利益の半分近くが消える。物件の利回りが業種ノートの水準へ上がれば、物件の価値も下がる。
もうひとつ、今の分配金には内部留保の取り崩しが含まれる。合併で生まれた留保は約 200 億円で、永久には続かない。今の値段は、金利が低いままという前提の値段だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、物件と借入の質は REIT の中で上位だ。新しい大型施設、軽い借入、二つのスポンサーという組み合わせは、持ち続けてよい部類に入る。
ただ、値段には安全域が足りない。今の分配金は、内部留保の取り崩しと売却益で底上げされている。それらを除いた分配は、純利益ベースで年 117 億円だ。10 年金利 3% の世界では、この利益がさらに半分近く減る。
好材料は賃料の改定だ。更新のたびに 1 割を超える増額が続けば、NOI の伸びは物価を上回る。この力が 10 年続くかが、見立ての分かれ目になる。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 1 割ほど下回る。差は小さいが、安全域とは言えない。値段が 1 割下がれば、買ってよい水準に入る。筆者が見るのは、更新時の増額が景気の波を越えて続くかどうかだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、物流施設を通販・小売・物流会社に貸す賃料だ。2026 年 7 月期の半年で営業収益は約 167 億円、経費を引いた NOI は約 129 億円だった。年にならすと NOI は 257 億円で、帳簿価額に対する利回りは 4.8% になる。経費が収入の 2 割強と軽く、賃料の伸びがそのまま NOI に乗る。
物件は首都圏と近畿圏の新しい施設が中心で、平均築年は浅い。MFLP の名で知られる、冷凍冷蔵や自動化に対応した大型施設が柱だ。稼働率は 98.4% で、次の期末には 100% を見込む。
契約は平均 7.1 年、残りは 3.7 年。定期借家で、更新のたびに市場の賃料へ合わせ直す。直近 3 期の改定率は 5.4%、6.8%、12.7% と上がってきた。物価の上昇が賃料に乗るまでの遅れが、いまは増額の形で表れている。
成長の道具は、両スポンサーが開発する物件を優先的に買う権利と、IPO 時に取得した物件の売却益の還元だ。横浜大黒の持分を 2 期に分けて売り、約 24 億円の益を分配に回す。
優良さと弱いところ
物件の質は物流 REIT の中でも高い部類だ。新築の大型施設が多く、自動化の設備を入れる借り手に選ばれやすい。稼働は 98% を超え、直近の改定は強い増額だった。
強みは後ろ盾の厚さだ。三井不動産は物流施設の開発で最大手、伊藤忠商事は商社として借り手の幅広い企業と取引がある。両者から優先的に物件の情報が来る。ただし、取得の値段が割安とは限らない。直近に取得した 3 物件の NOI 利回りは 4.3〜4.4% で、鑑定の利回りとほぼ同じだった。
弱みは三つある。ひとつは、スポンサー開発の物件を買う構造で、買う値段の交渉がスポンサーに寄ること。ふたつめは、運用報酬が総資産と営業利益の両方に連動し、NOI の 12% と軽くないこと。みっつめは、両スポンサーの出資が合わせて 5% 弱と薄いことだ。
資本的支出は年 15 億円と軽い。築が浅いからで、築 10 年を過ぎれば倍になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流施設の需要は、通販の拡大と在庫を持つ倉庫の自動化で長く伸びてきた。ただ 2024〜26 年は、首都圏と近畿圏で大量の新築が重なり、空室が上がった。建築費の高騰で 2027 年の新築の供給は、2023 年のピークの数分の一に細る見通しだ。
供給が細ると、新しい施設の賃料は高くなり、既存の施設の賃料もそれに寄る。直近の増額改定は、その動きの入口と読める。ただ、2028 年以降に新築が戻ると、上げ幅は縮む。筆者は、中立で賃料は名目年 2% と見る。物価 3% に届かないのは、供給の波が賃料を抑えるからだ。
物流施設の取引市場では、売り手のスポンサーと買い手の REIT の取引が多い。REIT の投資口が NAV を下回る間は、外から物件を買う成長は進みにくい。自己投資口の取得か、物件の売却益の還元が先になる。
金利の 10 年は、物流不動産の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、物流の期待キャップは 4.25% まで上がる。今の鑑定の NCF 利回りは 3.7% だ。この差が、物件の価値を鑑定より下げる。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、売却益の計画的な還元と、内部留保の取り崩しだ。合併でできた留保は、20 期の分配のあと約 200 億円残る。分配金の成長目標(年 4%)を、予定より 2 期早く満たした。
増資は、2022 年 2 月と 2023 年 8 月に公募で行った。2023 年 8 月は NAV の 1 割以内の値段だった。合併のあとは増資をしていない。
借入は簿価で 39.9%、物件の入れ替えのあと 41.2% を見込む。目安は 50% までだが、鑑定ベースでは 34% と軽い。格付けは高く、借入先は 31 社に広がる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料の改定が強い。直近の増額は平均 12.7% で、契約は相場より低い物件が多い。残りの契約期間は 3.7 年で、更新が毎年来る。2027 年は新築が細り、稼働は 100% を見込む。物価が賃料へ乗れば、NOI は 10 年で 4 割近く伸びる。経費が軽いので、増収がそのまま利益に残る。
借入が軽い。鑑定ベースの借入比率は 34% で、固定の比率は 86% ある。借り換えの金利が 3.4% になっても、投資主の取り分は大きく残る。売却益と内部留保の取り崩しで、10 年の間の分配も下がりにくい。
二つのスポンサーが物流の開発で最大級だ。物件の情報が優先して回り、投資口が NAV を回復すれば増資で物件を買える。NAV を 25% 下回る今は、自己投資口の取得だけでも 1 口の価値が増える。
建築費の高騰は、新築の賃料を押し上げる。既存の施設は、そのぶんの含み益を持つ。含み益は 1,100 億円を超え、売却益の還元の原資にもなる。
慎重な見方
金利の 10 年は避けられない。平均 0.88% の借入が 3.4% に替われば、年の利払いは 50 億円以上増え、純利益は半分近く減る。鑑定の NCF 利回りは 3.7% と、10 年国債 3% では低すぎる。キャップが 4.25% に上がれば、物件の価値は 1 割強下がる。
今の分配は見かけより厚い。内部留保の取り崩しと売却益を足して、純利益より 4 割厚くなっている。留保は約 200 億円で、数期で尽きる。尽きれば分配は純利益の水準に戻る。
2028 年以降は新築が戻る。上げ幅の大きい改定は続かず、稼働も 97% 台に下がる。運用報酬は総資産と営業利益に連動して NOI の 12%。取得はスポンサーの開発物件に偏り、買う値段の交渉は不利だ。
両スポンサーの出資は合わせて 5% 弱。同じ船に乗る度合いは弱く、NAV 割れでの増資が重なれば、1 口の価値は薄まる。金利が高止まりすれば、物件の売却益も出にくくなる。
どちらに重みを置いたか
物件の質と借入の軽さで強気に分があるが、金利の前提は動かせない。中立は今の値段を 1 割ほど下回る。スポンサーの点数は 3 を下回ったので、悲観の確率は 10% に据えた。楽観側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、割高の度合いは小さく、値段が下がれば魅力が出る位置にあると見る。賃料の改定の強さが、その差を小さくしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 135,055 円4,348 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 39,629 円1,276 億円)。 今の値に割り戻すと 89,527 円2,883 億円、今との差 −7.7%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 221,014 円7,116 億円 | 50,191 円1,616 億円 | +179.6% | +10.8% | 27,121 円873 億円 |
| やや楽観 | 22% | 180,048 円5,797 億円 | 45,377 円1,461 億円 | +132.4% | +8.8% | 49,593 円1,597 億円 |
| 中立 | 38% | 138,802 円4,469 億円 | 41,122 円1,324 億円 | +85.5% | +6.4% | 68,371 円2,201 億円 |
| やや悲観 | 20% | 83,455 円2,687 億円 | 32,488 円1,046 億円 | +19.5% | +1.8% | 23,189 円747 億円 |
| 悲観 | 10% | 39,072 円1,258 億円 | 25,033 円806 億円 | −33.9% | −4.1% | 6,411 円206 億円 |
| 加重平均 | 100% | 135,055 円4,348 億円 | 39,629 円1,276 億円 | +80.1% | +6.1% | 174,684 円5,624 億円 |
今の株価時価総額 97,000 円3,123 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 供給の細りで賃料が物価並みに上がる 利益 150 億円 · PBR 2.5 倍 · 株価時価総額 221,014 円7,116 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.1% で済む。2027 年の供給の細りが賃料を押し上げ、更新のたびに増額が続く。賃料は年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。
経費は物価並みに増えるが軽く、NOI は 10 年で 35% ほど伸びる。純利益は今から少し増える。両スポンサーの物件を NAV 以上の値段の増資で買う余地も出るが、この筋書きでは規模を据え置き、質を上げる。
物件の利回りは 3.6% まで下がり、物件の価値は鑑定を上回る。借入が軽いので、投資主の取り分は今の値段を大きく上回る。
- 物流施設の賃貸:数量 5,301(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.5%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.3%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 451 億円・営業利益 258 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 348 − 資本的支出 28) ÷ キャップ 3.60% − 純負債 1780 = 7116 億円。キャップは物流の下限 3.5% に近い 3.6%。
確率:2027 年の供給の細りと強い改定が続き、金利も 3% 以下で収まる筋書き。借入が軽く、賃料の改定が強いので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.25% 利益 121 億円 · PBR 2.0 倍 · 株価時価総額 180,048 円5,797 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.25% になる。供給の波は残るが、賃料は更新ごとに年 2.5% で上がる。稼働は 98% を保つ。
利払いは年 70 億円ほどまで増え、純利益は今の 1 割ほど増える。内部留保の取り崩しは数期で終わり、その後の分配は純利益の水準に戻る。賃料の増額が続くので、戻ったあとの分配は緩やかに増える。資本的支出は築が進むにつれ年 30 億円まで増え、償却の現金の一部を使う。
物件の利回りは 3.85% に上がる。物件の価値は鑑定よりやや低いが、軽い借入のおかげで投資主の取り分は今の値段を上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 5,247(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.1%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.3%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 425 億円・営業利益 232 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 322 − 資本的支出 30) ÷ キャップ 3.85% − 純負債 1800 = 5797 億円。キャップは物流の中立 4.25% より 0.4% 低い 3.85%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 96 億円 · PBR 1.5 倍 · 株価時価総額 138,802 円4,469 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の約 20 億円から 75 億円へ増える。賃料は年 2% で上がり、稼働は 97.5% へ少し下がる。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 2 割弱しか伸びない。減価償却は取得原価のままで、修繕を積んだ分だけ少し増える。純利益は今の 2 割弱減り、分配は内部留保の取り崩しが終わったあと、今の 3 割ほど減る。
物件の利回りは 4.25% に上がり、物件の価値は鑑定より 1 割強低い。借入が軽いので、投資主の取り分は今の自己資本を大きく上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 5,220(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.7%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.3%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 403 億円・営業利益 208 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 300 − 資本的支出 32) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 1840 = 4469 億円。キャップは物流の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り約 3.7% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 供給が戻り、稼働と賃料が頭打ちになる 利益 48 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 83,455 円2,687 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.65% になる。2028 年以降に新築が戻り、賃料は年 1% しか伸びず、稼働は 95.5% に落ちる。築が進み、資本的支出は年 36 億円に増える。
利払いは年 80 億円になり、純利益は今の 4 割ほどに細る。内部留保の取り崩しは終わり、分配は純利益だけになる。借入の返済に現金を回し、新しい物件は買えない。更新時の増額は止まり、改定はほぼ据え置きの水準になる。
物件の利回りは 4.75% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本とほぼ同じ水準まで縮む。
- 物流施設の賃貸:数量 5,113(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.0%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.3%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 358 億円・営業利益 163 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 254 − 資本的支出 36) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1920 = 2687 億円。キャップは中立 +0.5%。借入は軽いが、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:2028 年以降の新築の戻りで稼働が下がり、借り換えが重くなる筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 −12 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 39,072 円1,258 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.3% になる。不況で通販と物流会社が床を返し、稼働は 88% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。NOI は 2 割強減る。
純利益は赤字に沈み、分配は内部留保の残りと売却益で数期もつだけだ。資本的支出を絞り、借入の返済と空室の手当てに現金を回す。物件の利回りは 5% に上がり、物件の価値は鑑定の 6 割ほどになる。
借入が軽いので、物件の価値は借入を上回って残るが、投資主の取り分は今の自己資本の半分以下だ。清算されない限り、施設を売って NAV を受け取ることはできない。
- 物流施設の賃貸:数量 4,712(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.3%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.3%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 298 億円・営業利益 112 億円。稼働 88%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 200 − 資本的支出 30) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 2150 = 1258 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流施設の賃貸
首都圏・近畿圏を中心とする新しい大型物流施設を、通販・小売・物流会社に定期借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.3%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 5,269 | 6.3% | 334 | 171 |
| 10 年後 中立 | 5,220 | 7.7% | 403 | 208 |
取り方:2026 年 7 月期の半期の営業収益 166.8 億円(賃貸事業収入と付随収入)を 2 倍して年額 333.6 億円。帳簿価額 5,354 億円(貸借対照表の賃貸等不動産)× 稼働 98.4% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は営業収益 − 償却を除く賃貸事業費用で年 257.0 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 86.3 億円を引いた額。中立の価格が 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、定期借家の更新が数年ごとで、2028 年以降の新築の戻りで転嫁が物価の 2/3 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 0.88% の借入が 3.4% へ借り換わると、年の利払いは 55 億円ほど増え、今の純利益の 5 割近くが消える。固定の比率は 86% と高いが、残りは 4.1 年で、10 年でほぼ全部が新しい金利になる。
内部留保の取り崩し
直近の分配は、純利益に積立金の取り崩し 22 億円を足して出した。合併でできた留保は約 200 億円で、数期で尽きる。尽きれば分配は純利益の水準に戻る。
供給の波
建築費の高騰で 2027 年の新築は細るが、2028 年以降に戻る。空室が上がれば、更新での増額が止まる。
物流施設の利回りの上昇
今の鑑定の NCF 利回りは 3.7% で、10 年国債 3% との差が小さい。利回りが 1 ポイント上がると、施設の価値は 2 割強下がる。
スポンサー開発物件への偏り
取得は両スポンサーの開発物件が中心で、買う値段の交渉はスポンサーに寄る。直近の取得は NOI 利回り 4.3〜4.4% だった。運用報酬は NOI の 12%。
築が進む設備の更新
今の資本的支出は年 15 億円と軽いが、築 10 年を過ぎれば倍になる。建築費の上昇で、更新費は物価より速く増える。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、やや楽観に近づく。今の値段は適正の範囲に入る。
- 更新での賃料の増額が 2028 年以降も 1 割前後を保つ
- NOI の伸びが物価を上回り、楽観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得を始める
- NAV 割れの値段で 1 口の価値を増やす使い方で、スポンサーの点数を下げる。
- 内部留保が尽き、分配が純利益の水準に下がる
- 分配の見かけの低下で投資口が売られても、価値の数字は動かない。
見ておくもの
- 更新時の賃料改定率と稼働率
- 平均調達金利と固定比率
- 内部留保の残高
- 両スポンサーの出資比率と取得の利回り
- 首都圏・近畿圏の物流施設の新築供給
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回り 3.7% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.50% を足した 8.00%。事業は傾いていないので extra は置かない。