結論
ジャパンエクセレントは、東京の中型オフィスと、札幌・仙台・名古屋・横浜などの主要都市のビル 33 棟を持つ REIT だ。取得価格は 2,974 億円、稼働は 98.1%。筆者の結論は割高である。今の値段は、鑑定の利回りが 3% 台という低金利の世界を、そのまま 10 年先へ延ばした値段だからだ。
スポンサーは日鉄興和不動産で、出資は第一生命と合わせて 12%。過去 5 年に増資は無く、NAV の約 7 割の値段で自己投資口を買って消却している。報酬は資産の残高に応じた部分と、利益に応じた部分があり、取得の報酬は無い。経営の姿勢は評価できる。
借入は約 1,360 億円。LTV は帳簿で 45.5%、時価では 35.6%。平均金利は 1.36% と、前の年の 0.74% から上がった。10 年金利が 3% に落ち着けば、借入の金利は 3.5% 前後になり、利払いは今の 2.8 倍になる。
物件の入れ替えも進む。台場や札幌の古いビルを売り、築の浅い物件を買うが、売却益は一度きりで、通常の分配には数えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、経営者の姿勢は合格点だ。増資をせず、NAV 割れの投資口を自ら買って消却している。売却では鑑定を上回る値段を取り、含み損のビルを整理した。オーナーとして付き合いたい運営である。
ただ、投資主が受け取るのは、賃料から利払いを引いた残りだけだ。借入は 1,360 億円で、平均 1.36% の金利が 3% 台半ばへ変わる。年の利払いは 18 億円から 51 億円へ増え、賃料の増額で埋めきれない。10 年の分配と 10 年後のビルの価値を合わせても、今の値段の半分ほどの価値にしかならない。
含み益 833 億円は、鑑定の利回りが低いうちの数字だ。ビルの利回りが 4% 台後半まで来れば、この含み益は消え、投資口は NAV を割っても安いとは言えなくなる。今はまだそこにない。
この REIT の誠実さは、割高という結論を変えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。企業にビルを貸し、賃料から経費と利払いを引いた残りを投資主に配る。2026 年 6 月期(半年)の賃貸事業収入は約 109 億円、そこから経費を引いた NOI、つまり物件の正味の賃料は約 70 億円だった。年額にすると、収入が 218 億円、NOI が 151 億円になる。
物件は 33 棟、取得価格で 2,974 億円。東京都心 6 区のオフィスを中心に、横浜、札幌、仙台、名古屋など地方の主要都市のビルと、住宅も持つ。規模は中型が多く、大型の都心ビルに比べて、築が古く、賃料の水準も低い物件が混じる。
賃料の改定では、増額できた割合が 69%、増額率は 5.7%、入れ替え時の増額率は 5.6% と、増額の流れが続く。稼働は 98.1% と高い。
借入は 1,361 億円。平均金利は 1.36%、固定の比率は 74.7%、残りの期間は 3.9 年。格付けは JCR の AA マイナス。手元の現金は信託内を含め 157 億円ほどある。含み益は 833 億円、含み益率は 29.9% だ。
優良さと弱いところ
物件の質は、東京の中型オフィスとしては標準的だ。稼働は高く、賃料の増額もできているが、都心の大型ビルのような代わりの無さは無い。地方の主要都市のビルは、景気で空室が動きやすい。賃料は市況で決まり、自分で値段を決める力は無い。
資本の使い方は誠実だ。過去 5 年は増資をせず、2022 年から 2025 年に自己投資口を買って消却した。入れ替えでは、含み損を抱えていた台場のビルを鑑定の 29% 高で売り、築の浅い物件を買っている。
報酬の形は中庸だ。資産の残高に応じた部分に加え、利益と償却を合わせた額の 4% が運用報酬に乗る。取得の報酬は無い。報酬は NOI の約 7% にとどまり、重くはない。
弱いのは、取得の 7 割がスポンサーからで、関与を含めると 9 割を超える点だ。ただスポンサーの出資は 12% あり、投資主と同じ側には立つ。
借入の重さは中程度で、純負債は NOI から報酬を引いた額の約 11 倍。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京のオフィス市場は、空室率が低く、賃料は上昇基調にある。この REIT の増額改定も 5% 台と大きい。ただ、大型の新築は 2027 年以降も続き、働く場所は分散する。筆者は中立の賃料の伸びを、物価の 3 分の 2、名目で年 2% 前後と置く。中型ビルは、新しい大型ビルに借り手を奪われやすく、地方の主要都市は伸びがさらに低い。経費は物価で増えるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
いちばん大きいのは金利だ。この REIT の鑑定の利回りは 3% 台で、含み益 833 億円はこの低い利回りに支えられている。10 年国債が 3% の世界で、不動産に求める利回りを 6%、NOI の長い伸びを 1.5% とすれば、中型・地方を含むビルは 4.5% 前後に落ち着く。大型の都心ビルより高い利回りが要る。
オフィスは、金利の上昇と利回りの上昇が同時に効きやすい用途である。
東京都心の大型ビルとの違いも押さえたい。中型や地方のビルは、新築の大型ビルが増えると、借り手が賃料の安さだけで選ぶ立場になり、賃料の交渉力が弱まる。
資本政策と M&A
利益のほぼ全部を配るのが REIT の決まりだ。成長の道は、増資で物件を買うか、物件を入れ替えるかのどちらかになる。この投資法人は、過去 5 年は増資をせず、入れ替えと自己投資口の買い入れに絞ってきた。
入れ替えは約 300 億円、資産の 1 割の規模で進む。台場や札幌大手町のビルを売り、赤坂の追加の持分、名古屋の物件、築 19 年の浦和の住宅を買った。売却益は 2026 年 12 月期に 21 億円、2027 年 6 月期に 3 億円を見込む。筆者は、この売却益を通常の分配には数えず、一度きりの上乗せとして別に扱った。
自己投資口は、NAV の約 7 割の値段で買える。NAV 割れでは、自己投資口の買い入れが最も確実な使い道だ。
取得はスポンサーのパイプラインにも頼る。ただ LTV は帳簿で 45.5% と、借り増しの余地は限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東京のオフィスは空室が低く、増額改定の流れは続く。この REIT の増額率は改定で 5.7%、入れ替えで 5.6% と大きく、賃料が物価並みに上がれば NOI は 10 年で 3 割近く伸びる。
資本政策も強い。増資をせず、NAV の約 7 割の値段で自己投資口を買って消却している。含み益は 833 億円あり、値段が NAV に近づくだけで大きく報われる。入れ替えでは含み損のビルを鑑定より高く売れており、築の浅い物件へ資産が若返る。
金利が 3% まで上がるとも限らない。固定の比率は 74.7%、格付けは AA マイナスで、調達の信用がある。報酬は NOI の 7% 弱と軽く、取得の報酬は無い。
中型ビルは、大型ほど新築の供給に押されにくく、割安な賃料の借り手が付きやすい。
実際、稼働は 98% を超え、賃料の増額が続いている。賃料の上昇が金利の上昇を上回れば、分配は増える。
売却で得た資金を築の浅い物件に振り向ける入れ替えが進めば、修繕費の重さも和らぎ、稼ぐ力は保たれる。
慎重な見方
低金利が作った値段だ。鑑定の利回りは 3% 台、10 年国債が 3% の世界ではほとんど差が無い。利回りが 4% 台後半へ上がれば、ビルの価値は 2 割を超えて下がる。借入があるので、投資主の取り分はその倍近い速さで減る。LTV は帳簿で 45.5% だが、時価では 35.6%、鑑定の利回りが上がるとこの余裕は消える。
利払いも重い。平均 1.36% の借入が 3% 台半ばに変われば、年の利払いは 2.8 倍になる。借入の金利は前年の 0.74% から既に倍近くに上がっており、この上昇は続く。
地方の主要都市のビルは、景気が悪くなれば空室が増え、賃料が下がる。中型で築の古いビルは、修繕の費用も重い。
分配金は売却益の上乗せを含む。売却益を除く分配は 2 割ほど少なく、この差は一度きりにすぎない。
さらに、取得の 7 割はスポンサーからで、関与を含めると 9 割を超える。条件が投資主に有利とは限らない。
どちらに重みを置いたか
強気にも言い分はあるが、勝負を決めるのは金利だ。10 年金利 3% を前提にする以上、利払いとビルの利回りの上昇は避けられない。中立を 37% に置き、悲観側を合わせて 35% とした。楽観は金利が今のまま止まる筋書きで 8%。スポンサーの癖は薄いので、悲観の確率は厚くしすぎなかった。筆者は、この REIT が誠実な運営だと認める。ただ結論は変わらず、割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 83,703 円1,080 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 48,537 円626 億円)。 今の値に割り戻すと 69,792 円900 億円、今との差 −43.8%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 8.4%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 267,950 円3,457 億円 | 64,953 円838 億円 | +168.0% | +10.4% | 26,632 円344 億円 |
| やや楽観 | 20% | 132,541 円1,710 億円 | 58,442 円754 億円 | +53.8% | +4.4% | 38,197 円493 億円 |
| 中立 | 37% | 81,307 円1,049 億円 | 51,621 円666 億円 | +7.0% | +0.7% | 49,184 円635 億円 |
| やや悲観 | 22% | 24,880 円321 億円 | 39,607 円511 億円 | −48.1% | −6.3% | 14,187 円183 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,550 円20 億円 | 29,531 円381 億円 | −75.0% | −12.9% | 4,041 円52 億円 |
| 加重平均 | 100% | 83,703 円1,080 億円 | 48,537 円626 億円 | +6.5% | +0.6% | 132,240 円1,706 億円 |
今の株価時価総額 124,200 円1,602 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.4% を下回るほど割高。
楽観 8% 金利が止まり、賃料が物価並みに上がる 利益 93 億円 · PBR 2.4 倍 · 株価時価総額 267,950 円3,457 億円
東京の本社需要が強く、増額改定が続く。賃料は物価並みの年 3% で上がり、稼働は 98.5% を保つ。NOI は 10 年で 3 割台半ば伸びる。
借り換えの金利は AA マイナスの格付けで 3.2% にとどまる。不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.02% のまま変わらない。時価総額は 3,457 億円と今の 2.1 倍になる。売却益の分配も続き、投資主の取り分は今の値段を上回る。
筆者はこの筋書きを、前提の金利から外れる分だけ低く見る。
入れ替えで築の浅い物件が増え、修繕の費用も抑えられる。
経費は物価並みに増えるが、収入の伸びがそれを上回り、減価償却を引いた後の利益も毎年増えていく。自己投資口の買い入れも続き、1 口あたりの価値が積み上がる。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,750(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.7%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 8.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 295 億円・営業利益 153 億円。稼働 98%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 190 − 資本的支出 41) ÷ キャップ 3.02% − 純負債 1490 = 3457 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.02% で、今の値付けが 10 年続く所(オフィスの下限 3.5% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:10 年金利が今の 3% 前後で止まり、増額改定が長く続く筋書き。前提の金利から外れるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価に近く伸び、利回りの上昇は小さい 利益 76 億円 · PBR 1.2 倍 · 株価時価総額 132,541 円1,710 億円
空室は低いまま推移し、賃料は年 2.5% で上がる。稼働は 98% を保つ。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びが上回り、NOI は 10 年で 2 割台半ば伸びる。
借入は 3.35% 前後へ借り換わり、利払いは今の 2.7 倍になる。純利益は今とほぼ同じか少し増える。ビルの利回りは 4.15% に上がり、ビルの価値は今の鑑定を大きく下回る。
増額改定による押し上げは続くが、物価の上昇には追いつかない。自己投資口の買い入れは続くが、金利が上がるほど余力は細る。
含み益の売却による分配の上乗せもあるが、通常の利益には数えない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,736(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.2%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 8.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 279 億円・営業利益 138 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 175 − 資本的支出 42) ÷ キャップ 4.15% − 純負債 1495 = 1710 億円。キャップは中立 4.55% から 0.4% 下げた。
確率:増額改定が進み、ビルの利回りの上昇が小さい筋書き。20%。
中立 37% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 59 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 81,307 円1,049 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3〜4 年で 3.5% へ借り換わる。年の利払いは今の 18 億円から 51 億円へ増える。賃料は年 2% で上がるが、新築の供給で稼働は 97% へ少し下がる。経費は物価並みの 3% で増え、NOI は 10 年で 1 割ほどしか伸びない。
減価償却は昔の取得原価のままなので、会計の利益は利払いの増加ほどは減らない。それでも純利益は今より 2 割ほど細る。修繕の費用は築年とともに 1.4 倍に膨らみ、償却を上回る。
ビルの利回りは 4.55% に上がり、ビルの価値は今の鑑定より 3 割以上低い。負債は減らないので、投資主の取り分は今の自己資本の 7 割ほどになる。NAV 割れで増資はせず、規模は据え置きだ。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,708(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.7%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 8.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 263 億円・営業利益 122 億円。稼働 97%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 159 − 資本的支出 43) ÷ キャップ 4.55% − 純負債 1500 = 1049 億円。キャップは中型・地方を含むオフィスの中立 4.55%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.45%)。今の鑑定の利回り 3.8% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 37%。
やや悲観 22% 供給過多で賃料が伸びず、利回りが上がる 利益 28 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 24,880 円321 億円
大型の新築ビルが続き、テナントは新しいビルへ移る。中型と地方のビルは賃料の改定で増額が取れず、平均の賃料は年 1% しか上がらず、稼働は 95% へ落ちる。経費は物価で増え、NOI は今より 8% 減る。
借入は 3.75% へ借り換わり、純利益は今の 4 割弱まで細る。分配は大きく減る。ビルの利回りは 4.8% へ上がり、ビルの価値は今の鑑定の 5 割台に下がる。LTV は 6 割に近づき、格付けの引き下げで借り換えの上乗せが増える。
スポンサーが物件を引き取る支えはありうるが、その値段が投資主に有利とは限らない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,652(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.8%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 8.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 234 億円・営業利益 93 億円。稼働 95%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 129 − 資本的支出 41) ÷ キャップ 4.80% − 純負債 1520 = 321 億円。キャップは中立 +0.25%。
確率:2027 年以降の大型供給と在宅の定着で、中型・地方のビルから借り手が離れる筋書き。22%。
悲観 13% 金利の上振れと不況が重なり、物件の価値が負債に迫る 利益 2 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 1,550 円20 億円
金利は 3% を超えて上がり、不動産の売りが重なる。借り換えの金利は 4.4% に上がり、利払いは今の 3.5 倍になる。不況で企業は床を減らし、稼働は 92%、賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。経費を年 2% に抑えても、NOI は 2 割減る。
純利益はほぼゼロになり、分配は止まる。配らずに残した現金で借入を少しずつ返す。ビルの利回りは 5.05% へ上がり、物件の価値は負債とほぼ並ぶ。投資主に残るのは、市況が戻れば取り戻せる見込みの分だけだ。清算されない限り、ビルを売って NAV を受け取ることはできない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,569(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.0%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 8.0%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 205 億円・営業利益 75 億円。稼働 92%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 110 − 資本的支出 36) ÷ キャップ 5.05% − 純負債 1450 = 20 億円。キャップは中立 +0.5%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:リーマン級の不況と金利の上振れが重なる筋書き。借入の重さと地方ビルの比率を考え 13% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィスビルの賃貸
東京の中型オフィスと地方の主要都市のビルを企業に貸す。ほかに住宅も持つ。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 8.0%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2,739 | 8.0% | 218 | 105 |
| 10 年後 中立 | 2,708 | 9.7% | 263 | 122 |
取り方:2026 年 6 月期の半期の賃貸事業収入 109 億円を 2 倍して年額 218 億円。帳簿価額 2,792 億円 × 期末の稼働 98.1% で数量、収入 ÷ 数量で価格。セグメントの利益は NOI 151 億円から減価償却 36 億円を引いた額。中立の価格の伸びが物価に届かないのは、オフィスの賃料が契約の更新ごとに遅れて上がり、物価の 3 分の 2 しか転嫁しないと見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 1.36% の借入が 3% 台半ばへ借り換わると、年の利払いは 32 億円ほど増える。今の年の利益の 4 割を超える。借入の金利は前年の 0.74% から既に上がっている。
ビルの利回りの上昇
鑑定の利回りは 3% 台と低く、10 年国債 3% の世界では保てない。利回りが 1 ポイント上がるとビルの価値は 2 割台半ば下がり、LTV は帳簿で 6 割に近づく。
スポンサーへの依存
取得の 7 割強はスポンサーからで、関与を含めると 9 割を超える。条件がスポンサーの事情に左右される。
地方ビルの空室
札幌・仙台・名古屋・横浜のビルは、景気の悪化で空室が増えやすい。賃料の下落は東京より大きい。
売却益の一度きりの性格
分配金は売却益の上乗せを含む。売却益を除く分配は 2 割ほど少なく、売った物件の賃料は消える。
修繕の費用
建築費は物価より速く上がる。築の古い中型ビルの修繕と更新は 10 年で 1.4 倍以上になり、償却を上回る。足りなければ借入が増える。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- ビルの利回りの上昇は小さく、借り換えの金利も 2.5% 前後にとどまる。中立よりやや楽観に近づき、割高の度合いは縮む。
- 増額改定の幅が 5% 台のまま続く
- NOI の伸びが利払いの増加を上回り、楽観の筋書きに近づく。
- NAV 割れのまま公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。これまでの方針の転換で、スポンサーの点数を大きく上げる。
- 自己投資口の買い入れを増やす
- NAV との差が縮まり、資本の使い方の評価を上げる。ただし借入で賄うなら金利の重さが増す。
- 格付けが AA マイナスを下回る
- 借り換えの上乗せが増え、やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 平均調達金利と固定金利の比率
- 増額改定の割合と増額率
- 継続鑑定の利回り(キャップレート)
- 自己投資口の買い入れと NAV との差
- 簿価 LTV
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回りより高い。NAV 割れ(今は NAV の約 7 割)を割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.15% を足した 8.65%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.65% → 8.40%。